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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W36
管理番号 1318268 
異議申立番号 異議2014-900243 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-08-29 
確定日 2016-08-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5673922号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5673922号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5673922号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成25年12月10日に登録出願され,第36類「インターネットを通じて行う賃貸マンションに関する情報の提供,インターネットを通じて行う賃貸アパートに関する情報の提供,その他の不動産の賃貸に関する情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,資金の貸付」を指定役務として,同26年4月25日に登録査定,同年5月30日に設定登録されたものである。

第2 引用標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章は,「007」の文字(以下「引用標章1」という。)及び別掲2のとおりの構成よりなる標章(以下「引用標章2」という。)である。以下,これらをまとめて「引用標章」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第15号が適用されるべき点について
本件商標は,申立人の周知著名な名称・標章である「007」の文字を含んでいる。そして,本件商標の構成中のピンクと白の地模様及び女性のシルエットは,映画「007」シリーズの構えられた銃口の中に主人公のシルエットが登場するオープニングシーン(ガンバレル・シークエンス)を想起させるものであることから,本件商標全体からは,映画「007」シリーズを容易に想起させるものである(甲8,甲30)。
また,申立人は,様々な企業とタイアップを行っており,「007」の名称及び標章は,様々な商品・役務に使用されている(甲16?甲28)。
したがって,本件商標がその指定役務について使用されれば,これに接する取引者・需要者は,申立人の業務に係る役務,又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し,役務の出所について混同する蓋然性が極めて高い。
なお,「007」の名称・標章は,現在のみならず,本件商標が出願された時点においても広く知られていたことはいうまでもない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号が適用されるべき点について
本件商標は,我が国をはじめ世界中で周知著名な「007」の文字を含んでいるため,本件商標は「007」と類似する商標である。
仮に,本件商標の使用が出所混同を生じるおそれがないとしても,本件商標は周知著名な「007」の価値に乗じようとする意図又は「007」の価値を希釈化させる意図をもって出願されたと見るのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号が適用されるべき点について
本件商標は,我が国をはじめ世界中で周知著名である「007」を含むものである。そして,本件商標の構成中の,ピンクと白の地模様及び女性のシルエットは,映画「007」シリーズのガンバレル・シークエンスを想起させるものであり,本件商標は,映画「007」シリーズを極めて強く意識し考案されたものであり,映画「007」シリーズを容易に認識させるものである。
また,「007」の名称及び標章は,映画「007」シリーズを表すものとして周知著名であるだけでなく,強い顧客吸引力を獲得した非常に商業的価値の高いものである。このような名称及び標章と何らの関係を有しない者が,これを自己の商標の一部に採択使用することは,その周知著名な名称・標章に化体した名声や信用に故なく便乗するものといわざるを得ない。
本件商標を登録することは,指定役務について商標権者にその独占的使用を認めることとなり,公正な取引秩序を乱し,ひいては国際信義にも反するものといわざるを得ない。本件商標は,公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると判断すべきものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 むすび
以上の理由から,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号によって,その登録は取り消されるべきである。

第4 本件商標の取消理由
1 審判長は,平成28年4月22日付けで商標権者に対し,理由を示して本件商標を取り消すべき旨の通知をした。その理由は,要旨次のとおりである。
2 映画「007シリーズ」及び引用標章の著名性について
証拠及び申立人の主張並びに職権調査によれば,以下のとおり認められる。
(1)申立人は,イギリスの作家イアン・フレミングによる長編スパイ小説を原作とする映画「007シリーズ」に関する著作権を米国のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー社(以下「MGM社」という。)と共同所有し,また,同映画に関する世界的な商品化権を単独で管理している米国企業である(甲9)。
(2)上記イアン・フレミングによる長編スパイ小説中の「カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」(1953年著)のなかで生み出された主人公「ジェームズ・ボンド」は,イギリス情報部のエース諜報員であり,「007」のコードネームを持ち,この「ジェームズ・ボンド」を主人公にした小説はシリーズ化され,多数の作品が出版された(甲2?4)。
「ジェームズ・ボンド」を主人公にした小説シリーズは,1962年に映画化されたのを契機に,2012年までの50年間に23作品の映画が作成され,これらの映画作品は世界中で公開され人気を博し,それらすべての作品が高い興行成績を残している(甲5,6)。
そして,上記一連の映画作品は,我が国において「007」の文字を含んだ邦画タイトルのもとで上映され,そのため,当該一連の映画作品は「007シリーズ」として我が国において広く一般に愛好され人気を博している(甲5,7)。また,ニュースや記事などでは,映画「007シリーズ」を単に「007」とのみ記載されることも多く,少なくとも映画関連の分野では,「007」の文字のみであっても,映画「007シリーズ」を直ちに想起する程に著名となっている(甲8?12)。
(3)映画「007シリーズ」では,その顧客吸引力による高い宣伝効果・経済効果を期待して,多数の企業が多額の出資によりタイアップしており,自社ブランド商品を劇中で登場させたり,自社ブランド商品とのタイアップ商品を販売したりしており,そのタイアップにおいては,タイアップキャンペーン及びタイアップ商品に引用標章2が使用されることも多い(甲17?24,26?29)。
(4)映画「007シリーズ」では,ほとんどの作品の冒頭に,「構えられた銃口の中にジェームズ・ボンドのシルエットが登場するシーン」が映されていること,映画「007シリーズ」のDVDパッケージには,「007」の文字とピストルの一部(銃身と引き金)をシルエット化した図形とを組み合わせた引用標章2が基本的に使用されていることから,いまや映画関連の分野でなくとも,「007」の文字に加えて,ピストルのシルエットが使用されると,両者の強い関連性から映画「007シリーズ」を連想,想起させるものといえる(甲8,30,職権調査)。
(5)以上のことを総合勘案すると,引用標章は,申立人が著作権をMGM社と共同所有する著名な映画「007シリーズ」を直ちに想起させ,かつ,申立人が単独で管理する同映画シリーズに関する商品化事業に係る商品を表示する標章として,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,日本国内における需要者の間に広く認識されていたものというべきである。また,「007」の文字とピストルの一部(銃身と引き金)をシルエット化した図形とが同時に使用されると,引用標章2と同様に,両者の強い関連性から映画「007シリーズ」を連想,想起させるものというべきである。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)本件商標は,別掲1のとおりの構成からなるところ,構成中の文字部分より,「チンタイゼロゼロセブン」及び「ナナツノゼロサービスブッケン」の称呼を生じるものである。
次に,観念についてみるに,本件商標の文字部分からは,特定の観念が生じるとは認められないものの,本件商標の構成中の最も大きく顕著に書された「賃貸007」の文字部分は,これが親しまれた観念を有する一連の成語とは認められないばかりでなく,「賃貸」と「007」の文字が漢字と数字との文字種の違いから,一見して「007」の文字を含む商標であると認識し得るものといえる。さらに,本件商標は,その構成中には人物がピストルを構えているシルエット図形をも含むことから,「007」の文字及び該図形の両構成要素が相まって,「映画『007シリーズ』」の観念も生じるというべきである。
(2)一方,引用標章は,上記第2のとおりの構成よりなるところ,その構成文字に相応して「ゼロゼロセブン」の称呼が生じ,上記2のとおり「映画『007シリーズ』」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用標章とを対比すると,両者は外観において明らかに相違するものである。
次に,本件商標と引用標章の称呼についてみると,本件商標は「チンタイゼロゼロセブン」及び「ナナツノゼロサービスブッケン」の称呼を生じるのに対して,引用標章は「ゼロゼロセブン」の称呼を生じものであるから,両者は称呼においても明らかに相違するものである。
しかしながら,本件商標と引用標章の観念についてみると,本件商標からは,引用標章と同じ「映画『007シリーズ』」の観念も生じるものであるから,両者は観念を共通にするものである。
してみれば,本件商標と引用標章とは,外観及び称呼において相違するものの,観念を共通にする類似の商標であるといえる。
(4)そして,上記2(5)のとおり,引用標章は,申立人が著作権をMGM社と共同所有する著名な映画「007シリーズ」を直ちに想起させ,かつ,申立人が単独で管理する同映画シリーズに関する商品化事業に係る商品を表示する標章として,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,日本国内における需要者の間に広く認識されていたものであるところ,本件商標の構成中には,「007」の文字だけでなく,人物がピストルを構えているシルエット図形をも含むものである以上,映画「007シリーズ」及び引用標章の存在を知らずに本件商標を採択したものとは到底考え難く,むしろ,本件商標は,映画「007シリーズ」及び引用標章を強く意識したうえで,引用標章に化体した名声,信用,顧客吸引力にただ乗りして,剽窃的に,その構成中に「007」文字及び人物がピストルを構えているシルエット図形を採択し,不正の利益を得る目的,すなわち不正の目的をもって使用するものであるといわざるを得ない。
(5)したがって,本件商標は,その指定役務について,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものと認められる。

第5 商標権者の意見
審判長は,上記第4の取消理由に対して,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,商標権者は,何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
本件商標についてした上記第4の取消理由は,妥当なものと認められるものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから,他の申立ての理由について判断するまでもなく,同法第43条の3第2項により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標 (色彩については原本参照)



別掲2 引用標章2


異議決定日 2016-07-01 
出願番号 商願2013-96816(T2013-96816) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W36)
最終処分 取消  
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 幸一
田村 正明
登録日 2014-05-30 
登録番号 商標登録第5673922号(T5673922) 
権利者 中央企画株式会社
商標の称呼 チンタイゼロゼロセブン、チンタイゼロゼロシチ、チンタイゼロゼロナナ、ナナツノゼロサービスブッケン、チンタイダブルオーセブン 
代理人 山崎 行造 

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