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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1318254 
異議申立番号 異議2015-900338 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-23 
確定日 2016-08-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5781392号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5781392号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5781392号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年2月4日に登録出願、第30類「神奈川県鎌倉市で製造又は販売されるチョコレート,神奈川県鎌倉市で製造又は販売されるチョコレートを使用してなる菓子」を指定商品として、同年6月29日に登録査定され、同年7月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下のとおりである。
1 国際登録第1271749号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2015年(平成27年)1月16日に、Franceにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、日本国を指定する国際登録において指定された「bread; pastry and confectionery」を含む第30類、「retail sale services for pastry, confectionery, cookies, biscuits and other foodstuffs based on cocoa」を含む第35類、第41類及び第43類の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2015年(平成27年)7月16日に国際商標登録出願されたものである。
2 申立人が、30類「チョコレート」等に使用している「L’ATELIER」、「DU」及び「CHOCOLAT」の文字からなる商標又はこれらの文字を要部とする商標
(1)フランス商標登録第96606276号(甲65、別掲3のとおりの構成からなる商標、以下「引用商標2」という。)
(2)フランス商標登録第123953699号(甲65、別掲4のとおりの構成からなる商標、以下「引用商標3」という。)
(3)フランス商標登録第98733703号(甲65、別掲5のとおりの構成からなる商標、以下「引用商標4」という。)
(以下、引用商標1ないし引用商標4を総称する場合は、単に「引用商標」という場合がある。)

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第15号及び同法第38条第1項に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第94号証を提出した。(以下「甲第○号証」の表示は、「甲○」と簡略する。)
1 申立人及び引用商標について
(1)申立人の歴史
申立人の前身は、1950年に、フランス・バスク地方のバイヨンヌで、パイ、タルト、チョコレート、アイスクリームに特化した菓子事業を立ち上げたことに始まる。その後、1982年に、現在の会社「サス オンドリイユ」を設立した。そして、「サス オンドリイユ」の代表権は、2014年に、現在のカトゥリン・ビヌアラに引き継がれている(甲1)。
申立人の事業内容・規模は、1982年1月4日に設立され、ココア、チョコレート、砂糖菓子の製造・販売を事業目的とし、資本金121110ユーロ、売上高9480396ユーロ(2014年)である(甲2)。
(2)フランスのバイヨンヌとチョコレートの関係
18世紀の終わりまでに、バイヨンヌ産のチョコレートの評判は不動のものとなり、パリを始めとしてフランス各地で販売され、バイヨンヌはフランスのチョコレートの故郷として知られるようになった(甲3)。
(3)引用商標の日本での使用実績
引用商標が付された申立人製造のチョコレートは、「MERCATO INC.」(東京都世田谷区多摩堤1-24-9-314在)によって、日本で輸入販売されている(甲4)。2014年の取引額は、申立人から「MERCATO INC.」に発せられた請求書でみる限り、80万円前後である(甲4)。請求書からは輸入販売されたチョコレートに引用商標が付されていたかどうか不明であるが、引用商標は申立人のハウスマークであり(甲5、甲6)、また、請求書に記載された商品名「BQT 220g Valentin’s Boucquet」、「CHOKARIA」を申立人のホームページで確認すると、各々に引用商標が付されているので(甲5、甲6)、日本で輸入販売されたチョコレートにも引用商標が付されていたものと推認される。そして、「MERCATO INC.」の関係者によると、彼らはネット通販業者を介してそれらを日本で販売している。
(4)引用商標のフランスでの周知・著名性
申立人は、引用商標の下でチョコレートを製造販売している。直営の小売店舗数は、フランス国内に38店舗、海外に2店舗を数え、その内、バイヨンヌ及びその近郊に13店舗が集中している(甲7、甲8)。加えて、引用商標は、申立人が製造販売するチョコレートに使用されているばかりでなく、申立人の屋号(営業上の名称)として、各店舗の看板に使用されており(甲9、甲10)、また、申立人は、バイヨンヌの自社店舗の一つにチョコレート博物館(ワークショップを含む。)を併設しており(甲11)、その博物館への訪問者数は、バイヨンヌを訪れる観光客のトップ5に入る程の人気となっているので(甲12)、引用商標がフランス人の目に留まる機会は非常に多いとみられる。さらに、引用商標がフランスのネットサイトや雑誌で取り上げられた件数は膨大な数に上っており(甲13?甲64)、また、引用商標の登録はフランスの内外に及ぶ(甲65)。
これらの使用事実に鑑み、フランス国家産業財産権庁は、引用商標がフランスにおいて周知・著名化している事実を認めている(甲66)。
(5)引用商標の日本での周知・著名性
引用商標の日本での周知・著名性を述べる前に、我が国のチョコレート業界を取り巻く2つの状況について述べる。
ア チョコレート業界の技術提携
我が国のチョコレートメーカー(「ショコラティエ」と呼ばれるチョコレート製造職人を含む。)は、近年の需要者の味覚の高級化・多様化に応えるべく、チョコレート先進国である西欧のチョコレートメーカーと積極的に技術提携を図ることにより、西欧のチョコレートメーカーの進んだ技術や技を取り入れている(甲67?甲73)。
イ 海外の高級チョコレートブーム
我が国では、ここ数年、海外の高級チョコレートの人気が定着している。特にバレンタインデーの時期になると、フランス、ベルギー、スペイン等世界各国の人気ブランドの高級チョコレートが、全国のデパートを始めとする有名店において多数販売され、大盛況となっている(甲74?甲76)。
また、バレンタインデーの時期以外にも、女性が自分のために購入するいわゆる「自分チョコ」や「ご褒美チョコ」、女性が友達に贈る「友チョコ」として、海外高級チョコレートの需要は増えている(甲77)。そして、最近では、コンビニやスーパーでも、この人気に応えるため、海外高級チョコレートを輸入販売するようになっている(甲78)。
ウ このような状況に応えるため、我が国のチョコレート取引業者(メーカーを含む。)は、以前にも増して、海外のチョコレートに関する情報を収集する必要が生じている。この観点からすると、海外で周知・著名なチョコレートは、我が国のチョコレート取引業者にとって有益な情報を与えてくれることが多いから、そのようなチョコレートの商標は我が国のチョコレート業者にとっても同様に広く認識されていることが少なくないものと思料される。
そうすると、引用商標も、上述したように、フランスでチョコレートにつき周知・著名化している商標であるから、我が国のチョコレート業者にとっても同様に周知・著名化しているものと推認される。
なお、申立人は日本の株式会社高島屋からチョコレートの催事販売に招かれており、平成28年1月末から引用商標が付されたチョコレートの販売を予定しているが(甲79)、これは正にフランスで周知・著名な引用商標が日本のチョコレート取引業者に広く認識されていたことを示すものである。
エ このような状況は、チョコレート需要者に対しても、近年の日本人の海外旅行ブームと相まって、西欧の高級チョコレートブランドに精通する契機を与えている。インターネット検索エンジンの「YAHOO JAPAN」に「バイヨンヌ チョコレート」を入力すると、12100件ものサイトに辿りつくことができるが(平成28年1月24日現在)(甲80)、その中で引用商標が付されたチョコレートや申立人が運営するチョコレート博物館を紹介している個人のサイトは少なくない(甲81?甲90)。また、主要な旅行ガイドブックにも、これらの紹介がされている(甲91)。大手のインターネット旅行サイトにおいても、これらの紹介記事や日本人の書込みが多数見られる(甲92)。
これらの事実は、引用商標がチョコレートについてフランスで周知・著名化している事実を多くの日本人需要者が認識していることを示すものである。
2 本件商標について
本件商標の文字部分に関し、上段の「鎌倉」と中段の「くらん」が筆書き風の書体からなっており、下段の「kamakura KURAN」が「鎌倉くらん」の称呼を示していることからすると、フランス語の文字「l’atelier de chocolat」は、最も小さな文字で表わされていることと相まって、視覚上、他の文字と分離して看取され得る文字である。加えて、「鎌倉くらん」又は「kamakura KURAN」から生じる「カマクラクラン」の称呼と「l’atelier de chocolat」から生じる「ラトリェドゥショコラ」の称呼とが一連に称呼されることは、称呼として極めて冗長であるから、簡易迅速を旨とする取引社会においてはあり得ない。
したがって、「l’atelier de chocolat」は、「鎌倉くらん」又は 「kamakura KURAN」から独立して称呼され得る文字である。
また、「l’atelier de chocoiat」は、「チョコレートのアトリエ(工房)」を意味するが、「アトリエ(工房)」とは、通常、画家・美術家・工芸家・建築家などの芸術家が仕事を行うための専用の作業場を意味するものである(甲93)から、「l’atelier de chocolat」がチョコレートの製造所程度の意味合いを連想、想起させることがあるとしても、かかる意味合いが本件商標の指定商品との関係において、特定の品質や用途等を直接的、かつ、具体的に表示するとまではいい難いものである。さらに、「l’atelier de chocolat」の語がその商品の品質等を具体的に表すものとして、取引上、普通に使用されている事実を発見することもできない。
そうすると、本件商標の「l’atelier de chocolat」の文字は、これに接する取引者、需要者に、その構成全体をもって一種の造語を表わしたものとして把握、理解されるというべきである。
3 引用商標と本件商標のフランス語の文字部分との差異について
引用商標「L’ATELIER DU CHOCOLAT」を本件商標のフランス語の文字部分「l’atelier de chocolat」と比較すると、中央の文字に相違がある(前者は「DU」であり、後者は「de」である。)。
しかし、フランス語の文法によると、de(英語のof又はfromに相当)の後ろに定冠詞「le」(男性単数の名詞に付く。)が来ると、両者がくっついて、「縮約形」(くっついた形)の「du」になるので(甲94)、「DU」と「de」の違いは、「CHOCOLAT」の前に定冠詞が置かれているか、いないかによって生じる違いにすぎない。
したがって、観念は同一であり、称呼も「ラトリェドゥショコラ」で一致し得る。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)商標法第4条第1項第15号によると、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、商標登録を受けることができない。
そして、同規定に対する特許庁の解釈として、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」とは、いわゆる広義の混同、すなわち「その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいう」としており(同規定の審査基準1)、さらに、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるかどうかの判断基準として、以下の点を総合的に考慮するとしている(同規定の審査基準2)。
(イ)その他人の標章の周知度(広告、宣伝等の程度又は普及度)
(ロ)その他人の標章が創造標章であるかどうか
(ハ)その他人の標章がハウスマークであるかどうか
(ニ)企業における多角経営の可能性
(ホ)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
そこで、引用商標を上記基準に当てはめてみると、上記1ないし3の事実より、以下の結論が導かれる。
(イ)引用商標は、フランスで「チョコレート」に周知・著名化していており、日本の取引者、需要者にもその周知・著名の事実が広く認識されている。
(ロ)引用商標の構成文字「L’ATELIER DU CHOCOLAT」は、「チョコレートのアトリエ(工房)」を意味するが、一種の造語である。
(ハ)引用商標は、申立人の店舗の看板として使用されている他、申立人のハウスマークとしても使用されている。
(ニ)両商標が使用されている商品は、ともに「チョコレート」であるから、企業における多角経営の可能性を問うまでもない。
(ホ)両商標が使用されている商品は、ともに「チョコレート」であるから、両商品の関連性を問うまでもない。
(2)結論
上記1ないし3の事実及び上記4の商標法第4条第1項第15号の解釈に鑑みると、本件商標の出願日の平成27年2月4日において、本件商標が付されたチョコレートに接した取引者、需要者は、商標中に「l’atelier de chocolat」の文字があることから、フランスでチョコレートに周知・著名な商標「L’ATELIER DU CHOCOLAT」を想起、連想し、本件商標が付されたチョコレートは、申立人が製造販売するチョコレート「L’ATELIER DU CHOCOLAT」と何らかの関係(技術提携関係等)があるものとして捉えることが少なくないといえるから、本件商標は、同項第15号に規定する「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録された商標であるから、その登録は取り消されて然るべきものである。
5 商標法第4条第1項第8号について
本件商標中の「l’atelier de chocolat」の文字は、引用商標の「L’ATELIER DU CHOCOLAT」の文字とは完全には一致しないが、両商標の違いは、2番目の文字の「de」と「DU」にあるにすぎず、いずれも「ラトリェドゥショコラ」の称呼を生じ得る綴りであり、かつ、両商標の観念も同一である。そうすると、本件商標に接した取引者、需要者は、本件商標中の「l’atelier de chocolat」の文字を申立人の屋号(営業上の名称)を示したものとして認識、把握し、申立人を想起、連想するものと認められるので、申立人の承諾を得ることなく本件商標が使用されることは、申立人の人格的利益を不当に害することになる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録された商標でもあり、その登録は取り消されて然るべきものである。
6 商標法第4条第1項第10号について
上記1ないし3の事実に鑑みると、引用商標は、本件商標の出願日以前より、フランスで「チョコレート」に周知・著名であり、日本では通常「ラトリェドゥショコラ」と称呼され得る。そして、本件商標も「神奈川県鎌倉市で製造又は販売されるチョコレート」を指定商品とし、本件商標中のフランス語の部分「l’atelier de chocolat」は、他の文字部分から独立して「ラトリェドゥショコラ」と称呼され得る。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録された商標でもあり、その登録は取り消されて然るべきものである。
7 商標法第38条第1項について
引用商標には、我が国を指定国とする国際登録第1271749号が含まれており、その先願権発生日は、平成27年1月16日である。これに対し、本件商標の出願日は、平成27年2月4日である。そして、両商標の類似性及び両指定商品の同一性は、上述したとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第38条第1項の規定に違反して登録された商標でもあり、その登録は取り消されて然るべきものである。

第4 当審の判断
1 申立人の提出に係る甲各号証及び申立人の主張によれば、以下の事実が認められる。なお、甲1ないし甲64は仏語等の原文のみで訳文の提出がない。
(1)申立人によれば、申立人は、フランスのバスク地方バイヨンヌで1950年に立ち上げられた菓子メーカーを引き継いで、1982年に設立されたフランスのチョコレートメーカーである。
(2)甲1ないし甲3は、申立人によれば、自社案内用パンフレット及び会社概要であるところ、「L’ATELIER DU CHOCOLAT(R)」(「(R)」は丸付きのRである。)の文字の記載があるものの、その作成時期を含め、内容は不明である。
(3)甲5及び甲6は、申立人によれば、申立人のホームページの写し等であるところ、「L’ATELIER du CHOCOLAT」の文字が大きく表示され、チョコレートの包装及び包装用シールに、引用商標1が表示されているものの、記事の掲載時期及び具体的な記事の内容は不明である。
(4)申立人の店舗及び申立人が運営するチョコレート博物館において、店舗の営業表示(看板)及び博物館の館名に「L’ATELiER DU CHOCOLAT」又は「L’ATELIER du CHOCOLAT」の文字(態様は異なる)が使用され(甲9?甲11)、同博物館がバイヨンヌの訪問先ベスト5であることが記載されている(甲12)。
(5)甲13ないし甲60は、2011年のネットサイトや雑誌の記事情報の写しであるところ、記事中に、「L’Atelier du Chocolat」又は「l’Atelier du Chocolat」の文字があるものの、具体的な記事の内容は不明であり、引用商標と構成態様が同一の表示は見当たらない。
また、甲61ないし甲64は、2012年ないし2014年の申立人のカタログであるところ、カタログ中に、「L’ATELIER DU CHOCOLAT」の文字があるものの、該カタログの具体的な内容は不明であり、引用商標と構成態様が同一の表示は見当たらない。
(6)甲67ないし甲92はネットサイトの記事情報であるところ、我が国のチョコレートメーカーが西欧のチョコレートメーカーと技術提携を図っていること(甲67?甲73)や海外のチョコレートが我が国のデパート、有名店、スーパーで販売されていること(甲74?甲78)が記載されている。
(7)申立人のチョコレートは、申立人によれば、2014年において、東京都在の「MERCATO INC.」によって日本へ輸入されており、2014年の取引額は80万円前後である(甲4)。
(8)2016年高島屋チョコレートカタログにおいて、新規商品として申立人の商品が紹介され、引用商標1が表示されている(甲79)。
(9)インターネット検索(日本語)において、バイヨンヌの「アトリエ・ドウ・ショコラ」、「アトリエ・デュ・ショコラ」、「ラトリエ・デュ・ショコラ」又は「L’Atelier du Chocolat」に関する事項が記載されている(甲81?甲92)が、そのほとんどは旅行に関するブログである。
2 引用商標の周知性について
上記1によれば、申立人は、少なくとも会社設立の1982年以降、今日までフランス国内において「チョコレート」を製造販売していると推認できる。
そして、申立人の自社パンフレット、ホームページ及び店舗名において、「L’ATELIER DU CHOCOLAT」の文字(一部の文字を大文字又は小文字に変更したものを含む。以下、同じ。)を使用している事実は認められるものの、該文字をいつから使用しているのか定かでなく、引用商標については、申立人のホームページ(甲5、甲6)において引用商標1の使用が確認されるにすぎない。
また、2011年から2013年のフランス語の雑誌等(甲13?甲64)において、「L’ATELIER DU CHOCOLAT」の文字(一部の文字を大文字又は小文字に変更したものを含む。)が記載されているものの、その数は決して多いとはいえないし、また、記事の具体的な内容が不明であるから、該文字が商標として使用されているかも不明である。
そして、我が国においては、2011年に申立人の商品が輸入されたことは認められるものの(甲4、甲79)、申立人が提出した全証拠をみても、引用商標を表示した「チョコレート」に関する我が国における取引の実情について、売上高は、申立人によれば、2014年において80万円前後であるが、2014年以外の年の売上高は明らかでなく、また、我が国における販売の期間、シェア、引用商標が使用された商品の宣伝広告の内容なども明らかではない。
そうすると、申立人が提出した全証拠によっては、引用商標が使用された事実を客観的・具体的に把握することができないといわざるを得ないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知の程度を特定できない。
なお、申立人は、我が国で広く知られた証拠として、「チョコレート業界の技術提携」及び「海外のチョコレートブーム」などのチョコレート業界を取り巻く状況を挙げて、引用商標がフランス国で周知であるから、我が国でも周知である旨主張しているが、申立人の独自の見解に基づく主張であって、これを採用し得る根拠がない。
以上を総合勘案すると、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
3 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、三本の波形風図形の右側に「鎌倉」の文字とその下に「鎌倉」の文字に比べて大きく筆書き風の「くらん」の文字を書し、これらの図形及び文字の下に「Kamakura KURAN l’atelier de chocolat」の文字を書してなるところ、該図形部分と文字部分が必ずしも一体のものとして把握されるというべき事情は見いだせない。
そして、本件商標の文字部分において、「くらん」の文字と「KURAN」の文字が他の文字に比べて大きく表示されていることから、両文字が着目されるものといえる。
さらに、その構成中の「くらん」及び「KURAN」の文字は、特定の意味を有しない一種の造語といえるものであるが、「鎌倉」及び「Kamakura」の文字は、「神奈川県南東部の市」として広く知られた地名を表すものであるから、一般に商品の産地若しくは販売地を表すものとして認識されるものであり、また、比較的平易なフランス語である「l’atelier de chocolat」の文字は、「チョコレートのアトリエ(工房)」の意味合いから「チョコレートの製造所」であることを表したものにすぎないから、「鎌倉」、「Kamakura」及び「l’atelier de chocolat」の文字は、いずれも出所識別標識としての機能を有さないものとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、「くらん」又は「KURAN」の文字部分が捨象されて「鎌倉」、「Kamakura」又は「l’atelier de chocolat」の各文字部分のみをもって取引に資されるとはいい難いから、これらの文字部分のみに相応した出所識別標識としての称呼及び観念は生じないと判断するのが相当である。
(2)本件商標と引用商標の類似性
引用商標は、別掲2ないし別掲5のとおりの構成からなるものであり、本件商標とはその構成態様が顕著に異なるものであるから、本件商標と引用商標は、外観において相紛れるおそれはない。
また、引用商標は、いずれも、「L’ATELIER」、「du」及び「CHOCOLAT」又は「L’ATELIER」、「DU」及び「CHOCOLAT」の文字を有するものであるが、上記(1)のとおり、本件商標の構成中、「l’atelier de chocolat」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないから、本件商標と引用商標は、この点においても相紛れるおそれはない。
以上を総合して考察すると、本件商標は、引用商標と類似しない商標といわざるを得ない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2のとおり、引用商標は、申立人商品「チョコレート」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標とはいえないものであって、また、上記3のとおり、本件商標と引用商標とは、類似しないものであるから、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはないというべきである。
そうすると、本件商標は、これを本件登録異議の申立てに係る指定商品について使用しても、その取引者、需要者をして、該商品が申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第10号該当性について
商標法第4条第1項第10号は、「需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって」を要件とするところ、引用商標は、上記2のとおり、申立人の業務に係る商品を表す商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者間に広く認識されるに至っているということはできないものであり、また、上記3のとおり、本件商標と引用商標とは類似しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人は、「本件商標に接した取引者、需要者は、本件商標中の『l’atelier de chocolat』の文字を申立人の屋号(営業上の名称)を示したものとして認識、把握し、申立人を想起、連想するものと認められるので、申立人の承諾を得ることなく本件商標が使用されることは、申立人の人格的利益を不当に害することになるから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録された商標である。」旨申し立てている。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号の趣旨は、人格的利益を保護することにあるところ、「l’atelier de chocolat」の文字は、申立人の名称ではないこと明らかであって、また、申立人の提出した証拠からは「l’atelier de chocolat」の文字が、申立人の略称であって、かつ、著名であると認めるに足る事実は見いだすことができない。
そうすると、本件商標は、その構成中に、「l’atelier de chocolat」の文字を有するとしても、商標法第4条第1項第8号に該当するということはできない。
7 商標法第8条第1項該当性について
申立人は、本件商標が商標法第38条第1項に該当するとして、前記第2(1)に記載の引用商標1を引用しているが、引用商標1は、本件商標の登録査定時において未登録であり、その申立の根拠とする条項は、同法第8条第1項の誤りと認められるから、以下、同法第8条第1項の該当性について判断する。
本件商標と引用商標1とは、上記3のとおり、類似しない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第8条第1項に該当しない。
8 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第10号、同項第8号及び同法第8条第1項のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)(色彩は原本を参照されたい。)




別掲2(引用商標1)




別掲3(引用商標2)(色彩は原本を参照されたい。)




別掲4(引用商標3)(色彩は原本を参照されたい。)




別掲5(引用商標4)(色彩は原本を参照されたい。)




異議決定日 2016-07-29 
出願番号 商願2015-10228(T2015-10228) 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W30)
T 1 651・ 271- Y (W30)
T 1 651・ 25- Y (W30)
T 1 651・ 4- Y (W30)
最終処分 維持 
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2015-07-24 
登録番号 商標登録第5781392号(T5781392) 
権利者 鎌倉チョコレート株式会社
商標の称呼 カマクラクラン、クラン、ラトリエドゥショコラ、アトリエドゥショコラ、ラトリエ、アトリエ、ケイ 
代理人 鈴木 礼至 
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