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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W29
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W29
管理番号 1318229 
審判番号 不服2016-85 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-04 
確定日 2016-08-08 
事件の表示 商願2015-12537拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「治部丼」の文字を標準文字で表してなり、第29類「肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),加工野菜及び加工果実,カレー・シチュー又はスープのもと」を指定商品として、平成27年2月12日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『治部丼』の文字を標準文字で普通に用いられる方法で表してなるが、その構成中の『治部』の文字は、本願指定商品との関係において、『石川県金沢を代表する郷土料理のひとつ』である『鴨肉又は鶏肉等の煮物』料理を表す『治部煮』を想起させ、また、『丼』の文字は、料理名の一つである『どんぶりもの』を表すことから、本願商標全体よりは『鴨肉又は鶏肉の煮物を使用したどんぶりもの』程の意味合いを理解させるものといえる。してみれば、本願商標をその指定商品中『鴨肉又は鶏肉の煮物(治部煮)』に使用しても、本願商標に接する取引者・需要者は、単に『どんぶりもの用の鴨肉又は鶏肉の煮物(治部煮)』程の意味合いを認識するにとどまり、単に該商品の用途、品質を表示したもので自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、「治部丼」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「丼」の文字は、「どんぶりばちに飯を盛り、その上に具をのせた料理。」を意味する漢字であり、また、「治部」の文字は、「治部省の略。また、治部省官吏の総称。」を意味するものであるが、該文字を使用した「治部煮」が「石川県金沢の郷土料理で、とろみをつけた鴨肉の煮物のこと。」を表すもの(いずれも「広辞苑第六版」岩波書店発行)として一般に認識されているものである。
そして、別掲の新聞記事情報及びインターネット情報のとおり、「治部丼」、「治部定食」、「治部御膳」、「治部鍋」、「治部そば」、「治部うどん」及び「治部ラーメン」などのように、「治部煮」を用いた「治部○○」と称する商品が取り扱われていることが認められる。
してみると、本願の指定商品の分野である食料品においては、本願商標の構成中の「治部」の文字は、「石川県金沢の郷土料理である治部煮」のことを容易に想起させるものといえる。
そうすると、「治部」と「丼」の文字とを一連に「治部丼」と表してなる本願商標は、これに接する看者に、「治部煮の丼物」であることを認識させるものである。
してみれば、本願商標は、その指定商品中の「鴨肉の煮物」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「丼物用の鴨肉の煮物(治部煮)」であることを把握、理解するにとどまるから、商品の用途、品質を表示するにすぎないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商品の用途、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記指定商品「鴨肉の煮物」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「治部」の文字は、「治部省」をはじめとして複数の意味があり、「丼」の前に来る語が材料又は料理名に限られないことから、必ずしも「治部煮」であるとは限らない旨主張する。
しかしながら、本願商標は、その文字全体から、「治部煮の丼物」の意味合いを容易に理解、認識させるものであること、上記(1)の認定のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
イ 請求人は、「治部おでん」及び「じぶなべ」が商標登録されており、「なべ」は「丼」と同様に調理器具・食器であり、「おでん」は「丼」と同様に料理名であるから、本願商標も過去の登録事例と事案を異にするものではない旨主張する。
しかしながら、商標登録出願に係る商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するかどうかは、当該商標の構成態様と指定商品又は指定役務の取引の実情等に基づいて個別具体的に判断されるべきものであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるべきものである。
そこで、請求人の挙げた登録例を検討するに、「治部おでん」については、「おでん」が煮込み料理であり、「治部煮」と「おでん」のように異なる煮込み料理を記載されていると理解するとは考え難いものであるから、「治部」の文字から「治部煮」であることを認識するとはいい難いものであり、「じぶなべ」については「じぶ」の文字部分が平仮名であり、直ちに「治部」の漢字を想起するものとはいい難いものである。
そうすると、請求人の主張する登録例は、いずれも、本願とは事案を異にするものといわざるを得ないものであり、それら登録例の存在によって、上記(1)の判断は何ら左右されないというべきである。
したがって、請求人の上記主張も採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (下線は当合議体が付与。)
1 「治部丼」の例
(1)2009年9月28日付け日本経済新聞に、「治部煮、金沢??伝統のとろみ上品な甘さ(名品探訪)」の見出しの下、「加賀百万石の歴史にはぐくまれた金沢の食文化。数多い郷土料理の中でも、地元の人が代表的な1品として挙げるのが『治部煮(じぶに)』だ。おわんの中には主役の鴨(かも)肉のほか金沢特産のすだれ麩(ふ)、シイタケや里芋などの野菜が盛られる。食材にとろみのある煮汁がよく染み込む。かみ締めるほどに上品な甘さが口の中に広がる。煮物には珍しく、薬味にワサビを添えるのが一般的だ。・・・金沢市内では老舗料亭など多くの店で扱う定番メニュー。青木さんが運営する郷土料理店『四季のテーブル』は真空パックの治部煮をインターネット通販で扱い、贈答用に人気という。店情報▽店名 四季のテーブル・・・▽価格 『鴨じぶ』は1人前が3パック入りで3700円。鴨肉の代わりに鶏肉を使う『鶏じぶ』は同3100円。▽一言 ご飯にかける『治部丼』も美味」との記載がある。
(2)「兼六園/ランチ&スイーツ」のウェブサイトにおいて、「兼六園のお昼ごはん」の見出しの下、「ミニ治部丼 加賀抹茶ゼリー付 城山亭」との記載があり、治部煮が上にのった丼の商品の写真がある。
(http://kenrokuen.or.jp/wp/wp-content/uploads/lunch2016-sp.pdf)
(3)「ぐるなび」のウェブサイトにおいて、「新旧加賀料理と酒 『金澤もんよう』」の見出しの下、「【鴨治部丼】 加賀料理『鴨の治部煮』を丼にしました。味噌汁漬物付き。」との記載と商品の写真がある。
(http://r.gnavi.co.jp/ghjwmg0c0000/lunch/)
2 「治部定食」の例
(1)「金沢なごみ亭北都」のウェブサイトにおいて、「金沢美味の膳」の見出しの下、「治部定食1,390円 金沢名物の治部煮をあっさり味の鴨肉で。(治部単品 950円)」との記載がある。
(http://kanazawa-hokuto.com/oshinagaki.html)
(2)「食べログ」のウェブサイトにおいて、「山ぎし(やまぎし)」の見出しの下、「鴨治部定食(¥2,600)」との記載があり、治部煮が椀に盛られている定食の写真がある。
(http://tabelog.com/ishikawa/A1702/A170201/17000840/)
(3)「兼六園めぐり」のウェブサイトにおいて、「清水亭(しみずてい)」の見出しの下、「本店では、お食事、郷土料理の治部煮が付いた治部定食、麺類、丼物をご提供しています。」との記載がある。
(http://kenrokuen.or.jp/chamise/shimizutei/)
(4)「河野美代子のいろいろダイアリー」のウェブサイトにおいて、「そごうの加賀百万石展、イートインでの 『治部定食』1260円。治部煮がとてもおいしくて。甘めのに煮汁の底にわさびが入っていました。それをまぶして食べると、一段とおいしくて。」との記載があり、治部煮が椀に盛られている定食の写真がある。
(http://miyoko-diary.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-ed40.html)
3 「治部御膳」の例
(1)「加賀麩 不室屋」のウェブサイトにおいて、「『加賀伝承料理 治部煮の器展』開催のご案内」の見出しの下、「このたび、当家所蔵の治部椀を展示し、特別メニュー『鴨治部御膳』を提供することとなりました。」との記載があり、治部煮が椀に盛られている食膳の写真がある。
(http://www.fumuroya.co.jp/news/news_0092.html)
(2)「割烹 菊よし さか井」のウェブサイトにおいて、「鴨治部御膳」の見出しの下、「鴨治部煮(すだれ麩、椎茸竹の子、鴨水菜)、焼物、小鉢、ご飯、汁物、果物 治部煮はワサビを混ぜて召し上がれば一層風味も増します。 2,100円」との記載があり、治部煮が椀に盛られている食膳の写真がある。
(http://kanazawa-city.net/kikuyoshi/)
(3)「facebook」のウェブサイトにおいて、「三越グルメ」の見出しの下、「【《予告☆》 いしかわ百万石物語展、はじまります!】・・・ その<金城樓>が、【いしかわ百万石物語展】に初登場! 写真の『松花堂御膳』の他に、加賀伝承料理の鴨治部が楽しめる『治部御膳』もございます。」との記載がある。
(https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=853145074746279&id=221140191280107)
4 「治部鍋」の例
(1)「旅ぐるたび」のウェブサイトにおいて、「治部鍋」の見出しの下、「治部(じぶ)とは石川県金沢市伝統の鴨肉を使用した料理。加賀地方では鴨は古くから幕府に献上されるなど、高級食材として根づいている。治部鍋は鴨肉を醤油を使った出汁で煮込み、具は根菜や豆腐のほか、加賀特産であるすだれ麩も欠かせない。薬味にわさびを使用するのも特徴的だ。鴨鍋との違いは鴨肉に粉をまぶすこと。鴨の旨みをとじ込め、つるりと滑らかな食感になり、一口噛むとコクのある鴨のエキスが染み出す。」との記載と商品の写真がある。
(http://gurutabi.gnavi.co.jp/i/i_3467/)
(2)「じゃらん」のウェブサイトにおいて、「◆じゃらん限定【鴨治部鍋&のど黒】加賀百万石を極める◆石川県の美食を、食べにいらっし/ダイニング食 加賀山代温泉 みどりの宿 萬松閣」の見出しの下、「【合鴨治部鍋】石川県金沢市の代表的な郷土料理として知られる治部煮は本来、鴨肉を使った鍋焼きのことだったそうで、食材である鴨肉を『じぶじぶ』と煎りつけるように作られることから『治部』と呼ばれたとの説があります。」との記載と商品の写真がある。
(http://www.jalan.net/yad336421/plan/plan01714825/)
(3)「みちグル」のウェブサイトにおいて、「寒いときに食べたい北陸地方のおすすめの鍋料理5選」の見出しの下、「新鮮な鴨肉を味わえる石川県の伝統食治部鍋・・・石川県金沢市で江戸時代から伝わる郷土料理です。鴨肉に小麦粉をまぶし、金沢特産のすだれ麩、きのこ類などと一緒に醤油、みりん、砂糖、酒を合わせただし汁で煮込みます。まぶした粉でとろみのある食感になり、噛むととじ込められた肉の旨みが口いっぱいに広がります。」との記載と商品の写真がある。
(https://michiguru.com/michi_blog/hokuriku-naberyouri/)
5 「治部そば、治部うどん、治部ラーメン等」の例
(1)「兼六園めぐり」のウェブサイトにおいて、「治部煮」の見出しの下、「加賀の郷土料理として有名な「治部(じぶ)煮」。小麦粉をまぶした鶏肉やお野菜をだし汁で煮て、とろみを付け、上にのせたワサビを崩しながらいただきます。 具材の旨味を閉じ込めたとろとろの餡とわさびのアクセントが効いた自慢の郷土料理です。 兼六園の茶店では、定番の治部煮をはじめ、治部そば、治部うどん、治部ラーメンなど、色々なバリエーションがあり、何度食べても新しい発見がある逸品です。」との記載と商品の写真がある。
(http://kenrokuen.or.jp/gourmet/)
(2)「Hankyu」の ウェブサイトにおいて、「初出店 料亭『山ぎし』が仕立てた天然鴨の治部煮」の見出しの下、「加賀の郷土料理、鴨の治部煮を大聖寺で人気の料亭『山ぎし』が天然鴨で作りました。加賀の治部煮に欠かせない、だしがたっぷり浸み込んだすだれ麩の味わいも格別です。江戸時代から行われてきた伝統的な『坂網猟』でとった希少な鴨の治部すきもご用意。坂網鴨をはじめ、天然鴨は旨み溢れる柔らかな赤身とさっぱりした脂身が特徴です。1)天然鴨治部煮御膳(天然鴨治部煮、鴨ロース〈合鴨〉、小鉢、ごはん、吸物、香の物、1人前)2,808円 2)天然鴨治部そば(1人前)1,944円 3)坂網鴨治部すきコース(坂網鴨治部すき、鴨肝しぐれ煮、よもぎ蕎麦、1人前)5,940円[各日限定15]」との記載と商品の写真がある。
(http://www.hankyu-dept.co.jp/honten/h/kanazawa2016/page01.html)




審理終結日 2016-06-10 
結審通知日 2016-06-14 
審決日 2016-06-27 
出願番号 商願2015-12537(T2015-12537) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (W29)
T 1 8・ 13- Z (W29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平澤 芳行 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 高橋 幸志
原田 信彦
商標の称呼 ジブドン、ジブドンブリ 
代理人 横井 敏弘 

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