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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z41
管理番号 1318127 
審判番号 取消2015-300290 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-04-20 
確定日 2016-07-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4274998号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4274998号商標の指定役務中、第41類「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4274998号商標(以下「本件商標」という。)は,「ターゲット・バードゴルフ」の文字を標準文字で表してなり,平成10年2月13日に登録出願,第41類「ゴルフの教授,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供,ゴルフ用具の貸与」を指定役務として,同11年5月21日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成27年5月1日にされたものである。
また,本件審判請求の登録前3年以内の期間である同24年5月1日から同27年4月30日までの期間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,弁駁書,上申書及び口頭審理陳述要領書において,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,第41類「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれにも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)指定役務についての登録商標の使用
被請求人は,ターゲット・バードゴルフについての本件商標の使用証拠にすぎない乙第1号証及び乙第2号証を挙げ,本件商標が「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」に使用されている証拠としている。
しかし,ターゲット・バードゴルフがゴルフと同一であるということができないこと,ターゲット・バードゴルフがゴルフとは異なることはその呼称から明らかである。
被請求人は,答弁書の「本件商標の使用の事実」における「使用に係る役務」の記載において「『ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催』は,本件商標の指定役務の『ゴルフの興行の企画・運営又は開催』に含まれるものです。」と主張している。
被請求人は,この役務が,本件商標の指定役務の『ゴルフの興行の企画・運営又は開催』に含まれるものです。」との主張の根拠として成田市のホームページ(https://www.city.narita.chiba.jp/sisei/sosiki/shosport/std0031.html)の記載を指摘しており,この記載には,1969年にアポロ11号の月面着陸をヒントにし,ターゲットバード用ゴルフボールを考案したこと,「パシッと発進し,フワーリと着地する」これが,現在のターゲット・バードゴルフボールの原型であり,ゴルフの練習用として利用する人も多く,1985年頃から全国的に普及し始めた,こと等が指摘されている。
しかし,当該ホームページの記載をもって,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」に「ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催」が含まれ,指定役務についての登録商標の使用がされたとすることは適切ではない。
なぜなら,当該ホームページの記載は1960年当時の事情に関する記載にすぎず,1985年頃からターゲット・バードゴルフ自体が独自に全国的に普及し始め,独自の競技として「常設コースも群馬県玉村や昭和村,山梨県一宮町など全国に多くのコースがあり,ブラジルサンパウロにもあります。」とする記載である。
通常,商標法第50条所定の商標不使用取消審判において商標を使用している役務が,請求人が取消しを求めた「指定役務」に含まれるか否かを判断するに当たっては,商標権者等の使用に係る当該役務について,単に形式的,画一的に考察すべきでなく,取引の実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察しなければならない(平成23年(行ケ)第10028号審決取消請求事件)。
また,商標法上特には明記されていないが,請求人が取消しを求めた「指定役務」に登録商標が使用される役務が含まれるか否かを判断するにあたっては,商標法第54条第2項において,不使用取消審判の審決確定の効果が,同審判請求の日から発生することを考慮すれば,審判請求の日である平成27年4月20日を基準に,取引の実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察する必要がある。
(2)指定役務に係る取引の実情
ア 本件において,指定役務に係る取引の実情を検討する場合には,ターゲット・バードゴルフの興行が開催される場所とゴルフの興行が開催される場所及びターゲット・バードゴルフの興行に参加するための料金とゴルフの興行に参加するための料金について考慮する必要がある。役務とは他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきものをいうとされているから,この他人たる興行に参加する者は,興行が開催される場所へ行く必要があり,その興行に参加するために,料金を支払う必要があるからである。
イ ターゲット・バードゴルフ及びゴルフの開催場所について
ターゲット・バードゴルフは,ターゲット・バードゴルフ専用場若しくはグラウンドにターゲット・バードゴルフのコースを設置し興行が行われている。ターゲット・バードゴルフは,合成樹脂製の羽根つきのボールをターゲット・バードゴルフ用クラブで打っていき,傘を逆さにしたようなホールに入れて,少ない打数を競う,スポーツである(甲1,甲2)。すなわち,グラウンドであっても,ホールを設置することが出来るため,ターゲット・バードゴルフの専用場でなくても,競技を開催することができる。一方,ゴルフの興行は,広大な土地をゴルフ場として開発した専用のゴルフコースで行われ,ターゲット・バードゴルフの専用場若しくはグラウンドで行われる様なことはあり得ない。
ウ ターゲット・バードゴルフ及びゴルフの興行に参加するための料金について
被請求人が提出された証拠には,その日に開催された興行に参加するための料金(参加費)が記載されていないが,一般的にターゲット・バードゴルフの興行に参加するためには,参加費として約1,000円から1,500円支払う必要がある(甲3)。一方,ゴルフの興行に参加するための料金は,曜日にもよるが平均約2万円程度である。そうすると,ターゲット・バードゴルフの興行に参加する費用は,ゴルフの興行に参加する費用よりもはるかに安価であるといえる。
エ 以上のことから,被請求人が証拠として提示した,埼玉県熊谷市荒川緑地第3,4運動広場TBG場については,熊谷市内のグラウンドであり(乙1,22及び23頁),群馬県利根郡みなかみ町月夜野TBG場については,ターゲット・バードゴルフの常設場(乙,26頁)であるから,その場所で本件商標の指定役務であるゴルフの興行が開催されることはない。
さらに,ゴルフの興行に参加するための費用は,ターゲット・バードゴルフの興行に参加するための費用よりも格段に高いといえ,これらの事実からしても,取引の実情に鑑みれば,乙第1号証及び乙第2号証によって,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について,本件商標を使用した事実を証明をしたとすることはできないといわざるを得ない。
(3)需要者の認識について
需要者の認識を検討する際には,ゴルフ及びターゲット・バードゴルフそれぞれの競技の特徴及び両競技における歩行距離について考慮する必要があり,需要者は,ターゲット・バードゴルフの競技を行う者及び行おうとしている者であると解すべきである。これらの者にとって,競技を始めるに当たり,その者自身の体力,身体制御能力は当然に考慮したものであるか又はするべきものであるからである。
ア ターゲット・バードゴルフとゴルフの競技の特徴について
ターゲット・バードゴルフは,クラブを一本のみ用い,ボールをアドバンテージホールに入れた場合は,そのままホールアウトし,セカンドホールの中にボールを入れた場合は,一打付加してホールアウトする。さらに,アドバンテージホールが宙に浮いた状態になっているため,ターゲット・バードゴルフの特有の能力としてホールアウトの際には,近距離からボールを浮かせるという能力が必要となる。一方,ゴルフは,クラブを14本用い,1打毎に性質の異なるそれらの複数のクラブからその状況に最も適したクラブを選択し使用するという道具的手段の正しい選択が要求される点に競技上の本質がある。
イ ターゲット・バードゴルフにおける競技とゴルフの競技の歩行距離の差異について
ターゲット・バードゴルフの競技において,ホール距離はショートホールで30?50m,ミドルホールで45?70m,ロングホールで60?90mあり,全18ホール行うから,歩く距離もおおよそ1.5?2.0kmである(甲1,甲2)。一方,ゴルフは,全国ゴルフ場の平均ヤーテージは,6,703ヤードであるから,歩行距離はおおよそ8?10kmであろうと推測される(甲4)。ゴルフとターゲット・バードゴルフの歩行距離を比較すると,ターゲット・バードゴルフの方がはるかに短いといえ,高齢者,女性等の体力に自信がない需要者であっても,気軽にはじめられる競技であるといえる。
ウ 以上のことから,需要者は,ターゲット・バードゴルフは独特の身体制御能力を求められるが,ゴルフほどの体力を要求される競技とは認識しておらず,1打毎に性質の異なる14本のクラブからその状況に最も適したクラブを選択し使用するという競技上の本質に応じた身体制御能力が求められる競技とは認識していないということがいえる。この点に鑑みれば,本件に関わる需要者は,ゴルフとターゲット・バードゴルフは各々固有の別個の競技であると認識していると解すべきである。
(4)取引者の認識について
ア 本件に関わる取引者の認識について検討する際は,ターゲット・バードゴルフ用品に関わる者,練習等を含め,競技を行う場所を提供する者について考慮する必要があり,取引者は,ターゲット・バードゴルフ用のボールの製造販売(製造には開発も含む,以下同じ),及びターゲット・バードゴルフ用シャフトの製造販売を行う者,及びターゲット・バードゴルフ用コース並びにゴルフコースの運営者,さらには,ゴルフ練習場の運営者をいうと解すべきである。これらの者がターゲット・バードゴルフ及びゴルフに関する取引をする者と客観的に認められる。
イ ターゲット・バードゴルフに使用するボール及びクラブに係る取引者の認識について
ターゲット・バードゴルフに使用するボールはゴルフボールにバドミントンの羽根をつけたような形状をしており,ボール部分についてはその外観にゴルフボールとの類似性が認められる。しかし,ターゲット・バードゴルフに使用するボールは,合成樹脂であることと定められており(甲2),材質について特には規定のないゴルフボールとは異なる(甲5)。またゴルフボールにはルール上の制限はあるものの前提として圧倒的な飛距離を実現できる構造,材料が適用される。また,飛距離を抑え,落下スピードを制御するために設けられたターゲット・バードゴルフの特徴であるバドミントンに似た羽根は,ゴルフの興行で使用されるゴルフボールに用いられることは決してない。したがって,使用ボールについてのターゲット・バードゴルフ用ボールの製造販売に求められる知識とゴルフボールの製造販売に用いられる知識とは全く異なっているといえる。
また,ターゲット・バードゴルフに使用するクラブは,ターゲット・バードゴルフ専用クラブとして販売されている(甲6)。
ウ ゴルフコース若しくはゴルフ練習場の経営者の認識について
ゴルフコースにおいて,ターゲット・バードゴルフの興行が開催されることはない。そうすると,ゴルフコースの経営者は,ゴルフとターゲット・バードゴルフとは別個の競技であると認識しているといえる。さらに,ゴルフ練習場において,ターゲット・バードゴルフの練習場としてのサービスは提供されるものではないから,ゴルフ練習場の経営者は,ゴルフとターゲット・バードゴルフとは別個の競技であると認識しているといえる。
以上のことから,取引者は,ゴルフとターゲット・バードゴルフとは別個の競技であると認識しているということができる。
(5)社会通念について
社会通念について検討する際には,一般紙への掲載,競技管轄団体及び公的機関との関わり等の観点から考慮する必要がある。これにより社会一般で受け入れられている常識又は見解を客観的に評価することができる。
ア ターゲット・バードゴルフが紹介された新聞記事について
ターゲット・バードゴルフは,甲第7号証ないし甲第9号証のように一般紙に掲載されている。したがって,ターゲット・バードゴルフはその競技自体が独自の競技であると認識されているということができる。
イ 一般社団法人ターゲット・バードゴルフ協会について
本協会は,我が国におけるターゲット・バードゴルフ界を統括し,これを代表する団体として,ターゲット・バードゴルフの普及振興を図り,合わせて海外のターゲット・バードゴルフ団体との連携も図り,もって国民の心身の健全な発達を生涯スポーツの振興に寄与することを目的とするために設立された協会である(甲10)。当協会は公益社団法人日本プロゴルフ協会並びに日本ゴルフ協会とは全く関係のない別組織であり,我が国において,ゴルフとターゲット・バードゴルフのそれぞれを管轄する団体は異なるものであるといえる。さらに,各都道府県にターゲット・バードゴルフ協会が設立されている。この各都道府県のターゲット・バードゴルフ協会はいずれも前述の2つのゴルフ協会とは何らの関係も有さず,設立されている。
ウ 公益財団法人日本レクリエーション協会の認定競技について
ターゲット・バードゴルフは,公益財団法人日本レクリエーション協会のホームページ中の世界あそび事典に紹介されている(甲11)。さらに,一般社団法人日本ターゲット・バードゴルフ協会に対し公益財団法人日本レクリエーション協会から後援名義使用の承諾がされている(甲12)。
エ 東京都後援名義使用について
東京都ターゲット・バードゴルフ協会に対し東京都知事から東京都後援名義の使用についての承認がされている(甲3)。東京都が後援名義等の使用を承認することのできる行事は,後援名義等の使用が東京都の施策の推進に寄与すると認められるものであるから(東京都の後援名義等の使用等について第2後援名義等の使用承認基準等についてより),ターゲット・バードゴルフは,東京都の後援名義等の使用承認基準を満たしているといえる。
以上のことから,社会通念上,ターゲット・バードゴルフという競技はゴルフに含まれているとは認識されておらず,ターゲット・バードゴルフという競技自体が独立して競技として認められているものといえる。なお,ゴルフを模して考案された各種ゴルフの総称を「ミニゴルフ」というといった紹介がなされているものもあるが,商標法上においては,これらから直ちにゴルフを模して考案された各種ゴルフは,全てゴルフの一部であると解釈するのは誤りであるということを付け加えておく。なぜなら,それぞれの競技に,取引の実情,取引者,需要者,社会通念が存在することは明らかであるから,ゴルフに含まれるか否かについては,個別具体的に判断されるべきだからである。
(6)以上のとおり,ゴルフにターゲット・バードゴルフは含まれないと解すべきであり,乙第1号証及び乙第2号証を例外的にゴルフに関する使用証拠として採用することにはその妥当性はなく,また,そのような主張を例外的に採用する必要性は何等存在しない。
また,乙第1号証及び乙第2号証を見れば,これらの大会の開催者は,ゴルフの興行を開催するということは全く意図せず,参加した者もターゲット・バードゴルフの競技の性質を理解し,参加していたことは明らかである。
したがって,被請求人が提出した乙第1号証及び乙第2号証は,指定役務である「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について本件商標の使用事実を証明する証拠とすることはできず,乙第1号証及び乙第2号証によっては,本件商標を使用していることは立証されていない。
3 口頭審理陳述要領書(平成28年1月22日付け)
(1)「ターゲット・バードゴルフ」は「ゴルフ」に含まれるか否か
被請求人は,口頭審理陳述要領書における「「1」『ターゲット・バードゴルフ』は『ゴルフ』に含まれるか否か」という点に関し,「両者は,クラブでボールを打ち,打数の少なさを競うスポーツである点で共通しており,ターゲット・バードゴルフはゴルフに含まれると認識されるものです。」としている。
しかし,係る両競技の形式的基本要素にのみ着目して「ターゲット・バードゴルフはゴルフに含まれる」とする論法を容認することは極めて珍妙な結果を生じることとなる。
例えば,庭球と卓球は,「Tennis」と「Table Tennis」と英語で呼称されているが,同一の競技である,あるいは一方が一方を含むと認識されるものではない。しかし,被請求人の論法によれば「両者は,対向するプレーヤーがラケットでボールを打ち合い,得点の多さを競うスポーツである点で共通しており,卓球は庭球に含まれる」という結論が成立することとなる。この様な被請求人の結論はこれらの競技に係る者の認識に反することは明らかであり,これは単に両競技の形式的基本要素にのみ着目して形式的,画一的に考察し,取引の実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察しない結果生じる結論である。
請求人は,この「ターゲット・バードゴルフ」及び「ゴルフ」の現状について多様な観点から具体的に検討し,「ターゲット・バードゴルフ」及び「ゴルフ」に関する実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察した結果を,弁駁書及び上申書において明らかにした。すなわち,ゴルフの興行とターゲット・バードゴルフの興行は同一の場所で開催されることはあり得ない。
これは極めて重要な事実であり,ターゲット・バードゴルフを行おうとする者がゴルフ場として開発した専用のゴルフコースに行き,ターゲット・バードゴルフを競技することはできず,一方,ゴルフを行おうとする者がターゲット・バードゴルフ専用場に赴き,ゴルフを競技することはできない。
(2)被請求人の主張の許容性について
被請求人は,「請求人は,弁駁書の第7頁において,『審判合議体にあっても係る主張を承認することは,現に有効に存続する本件商標が商漂法第4条第1項第16号違反となる無効理由を有するということを前提とした当を失した判断を行うこととなるものであり,これも到底承服することはできません。』と述べているが,そもそも,それが不使用取消審判の判断に影響を与える理由が全く見当たりません。」としている。
しかし,以上の請求人の指摘は,「ターゲット・バードゴルフ」及び「ゴルフ」に関する実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察した場合には被請求人の「ターゲット・バードゴルフはゴルフに含まれる」とする形式的基本要素にのみ着目した主張を容認する必要が全くないだけでなく,係る主張には社会的許容性もないことを明らかにしたものである。
すなわち「『ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催』は,本件商標の指定役務の『ゴルフの興行の企画・運営又は開催』に含まれるものです。」との被請求人の主張は,その主張自体が法的矛盾を内包し,そもそも社会的許容性を有しないものであることを指摘したものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると,答弁し,その理由を,答弁書及び口頭審理陳述要領書において,要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用事実の要点
本件審判は,登録第4274998号商標の指定役務中,第41類「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」について,不使用による商標登録の取消請求がなされたものであるが,本件商標の通常使用権者である「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」は,本件審判請求の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る指定役務中「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について,本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用の事実
ア 商標の使用者
本件商標の通常使用権者は次のとおりである。
(ア)住所 山形県鶴岡市家中新町10-30
名称 全日本ターゲット・バードゴルフ協会
代表者 渡邊 秀成
(イ)住所 茨城県水戸市元吉田町1684-3
名称 関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会
代表者 荻野 行広
乙第1号証「ターゲット・バードゴルフ全国大会パンフレット」の表紙には,「ターゲット・バードゴルフ全国大会」の文字が表示されており,その主催が,全日本ターゲット・バードゴルフ協会であることが示されている。
乙第2号証「TBG交流大会in群馬パンフレット」の表紙には,「TBG交流大会in群馬」が,全日本ターゲット・バードゴルフ協会及び関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会によって主催されたことが示され,8頁には,この大会の名称が「ターゲット・バードゴルフ交流大会in群馬」と表示されている。
乙第1号証の裏表紙及び乙第2号証の表紙裏には,被請求人の広告が載せられており,被請求人と通常使用権者が密接な関係であったことをうかがい知ることができる。商標の通常使用権許諾契約は,口頭による同意をもって成立する無方式契約であり,商標権者と通常使用権者たる「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」は,相互の信頼関係により本契約を維持してきたが,当該契約の成立及び存在を立証するため,覚書(乙3,乙4)を提出する。
「覚書」には,被請求人が「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」に本件商標の使用を許諾していた旨の記載がされている(乙3,乙4)。
なお,全日本ターゲット・バードゴルフ協会及び関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会は,法人格を有していないが,通常使用権者が自然人又は法人でなければならないとする根拠はなく,法人格なき社団であっても登録異議の申立てをすることができ,登録無効の審判を請求することができること(商標法第77条において準用する特許法第6条参照)等からすれば,当該組織は通常使用権者となり得るものである。
イ 使用に係る役務
本件商標は,「ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催」について使用している。
ターゲット・バードゴルフについて,成田市のホームページには次の記載がある(http://www.city.narita.chiba.jp/sisei/sosiki/shosport/std0031.html)。ターゲット・バードゴルフの歴史は,一サラリーマンゴルファーの発想からはじまった。埼玉県川口市在住の野嶋孝重氏が,ゴルフを始めた1960年当時(昭和35年),ゴルフの練習場が非常に少なかった状況であった。そこで,「何とか,お金がかからず安全に,狭い場所でもゴルフができないものか」と思案中,1969年にアポロ11号が月面に着陸したときの模様をヒントに,あれこれ工夫した結果,ゴルフボールにバドミントンの羽根をつけるアイデアが浮かんだわけである。「パシッと発進し,フワーリと着地する」これが,現在のターゲット・バードゴルフボールの原型である。スイングや競技方法からはほぼ通常のゴルフと同じなので,ゴルフの練習用として利用する人も多く,1985年頃から全国的に普及し始めた。常設コースも群馬県玉村や昭和村,山梨県一宮町など全国に多くのコースがあり,ブラジルサンパウロにもある。
「ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催」は,本件商標の指定役務の「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」に含まれるものである。
したがって,乙第1号証及び乙第2号証には,請求に係る指定役務「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について,本件商標が使用されたことが記載されている。
ウ 使用に係る商標
乙第1号証に示す商標は,「ターゲット・バードゴルフ全国大会」の文字からなる商標である。
この商標は,「ターゲット・バードゴルフ」の文字からなる本件商標と相違するが,「ターゲット・バードゴルフ全国大会」の文字における「全国大会」の文字は全国から参加者が集まる大会を意味するものであり,この文字自体では識別標識としての機能を果たすことができないので,自他商品又は役務を識別する商標としての「ターゲット・バードゴルフ」の文字からなる本件商標の本質的機能は損なわれていないとみるべきである。また,乙第2号証(8頁)に示す商標は,「ターゲット・バードゴルフ交流大会in群馬」の文字からなる商標であり,当該文字における「交流大会」の文字は交流を深めるための大会を意味し,「in群馬」の文字は大会の開催地を表すものであるから,これらの文字自体では識別標識としての機能を果たすことができないので,自他商品又は役務を識別する商標としての「ターゲット・バードゴルフ」の文字からなる本件商標の本質的機能は損なわれていないとみるべきである。
してみれば,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について使用された「ターゲット・バードゴルフ全国大会」又は「ターゲット・バードゴルフ交流大会in群馬」の文字からなる商標における程度の変更使用は,取引社会の通念に照らして本件商標と同一性を有するものと判断するべきものである。通常使用権者の使用に係る商標「ターゲット・バードゴルフ全国大会」又は「ターゲット・バードゴルフ交流大会in群馬」は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標(商標法第50条第1項)であるといえる。
エ 使用時期
乙第1号証には,「日時平成26年11月9日(日)?10日(月)」と記載され,乙第2号証には,「日時平成26年10月19日(日)?20日(月)」と記載されている。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者により指定役務中「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について使用されたことが明らかである。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年1月4日付け)
(1)請求人の弁駁書及び上申書の主張に対する意見
ア 「ターゲット・バードゴルフ」は「ゴルフ」に含まれるか否か
請求人は,「ターゲット・バードゴルフ」と「ゴルフ」の違いを述べているが,両者に相違があることに異論はない。
しかし,「ゴルフ」とは,コースにおいてクラブでボールを打ち,ホールと呼ばれる穴にいかに少ない打数で入れられるかを競う球技の一種であり,ターゲット・バードゴルフは,請求人が提出した証拠から明らかなように,ゴルフボールにバドミントンのような羽をつけたボールをクラブで打ち,打数の少なさを競うスポーツであり,両者は,クラブでボールを打ち,打数の少なさを競うスポーツである点で共通しており,ターゲット・バードゴルフはゴルフに含まれると認識されるものである。
そして,請求人が上申書(平成27年10月23日)で引用する平成23年(行ケ)第10028号審決取消請求事件の判例は,原告(審判請求人)の主張する例があったとしても,被告商品が「くるみを用いた菓子」と認識,理解されるとの判断に,およそ影響を与えることはない,という事例である。
これを本件に当てはめてみると,「ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」が,審判請求人が取消しを求めた「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」に含まれるか否かを判断するに当たっては,使用に係る当該役務について,単に形式的,画一的に考察すべきでなく,取引の実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察すべきであるから,たとえ,ターゲット・バードゴルフがゴルフと相違する点があったしても,そのような判断が,具体的な取引の実情等に照らし,需要者,取引者の社会通念を前提として,「ターゲット・バードゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」が「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」と認識,理解されるとの判断に,およそ影響を与えることはないというべきであるから,請求人の上記主張は,その主張自体失当であるとすべきものである。
イ 商標法第4条第1項第16号について
請求人は,弁駁書において,「審判合議体にあっても係る主張を承認することは現に有効に存続する本件商標が商標法第4条第1項第16号違反となる無効理由を有するということを前提とした当を失した判断を行うこととなるものであり,これも到底承服することはできません。」と述べているが,そもそも,それが不使用取消審判の判断に影響を与える理由が全く見当たらない。
(2)合議体の暫定的見解に対する意見
ア 本件商標は競技の普通名称であるとの見解に対して
合議体の暫定的見解として,「ターゲット・バードゴルフ」の文字は,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称と認められているが,不使用取消審判は,商標の登録の目的ないし期待に反し,使用されていない登録商標を整理することにより商標制度の目的を発揮できるようにすることをねらって設けられた制度であり,登録商標が普通名称であるか否かは,不使用取消審判の判断に影響を与えるものではない。この点につき,東京高裁平成3年2月28日判決(平成2年(行ケ)第48号)では次のように判示している。
「なるほど,商標権の侵害の成否を論ずるときは,第三者による登録商標の使用が識別標識としての使用でなければ登録商標の本質的機能は何ら損なわれないのであるから,商標権の侵害が成立するためには第三者が登録商標を識別標識として使用したことを要するといい得る。しかしながら,商標の不使用を事由とする商標登録取消しを論ずるときには,前述のような制度の存在理由に鑑みても,商標法第50条所定の登録商標の使用は,商標がその指定商品について何らかの態様で使用されておれば十分であって,識別標識としての使用(すなわち,商品の彼比識別など商標の本質的機能を果たす態様の使用)に限定しなければならぬ理由は,全く考えられない。それゆえ,本件使用標章を被告らが主張するような態様で使用することが,識別標識としての使用に該当するか否かはさて措き,『指定商品についての使用』に該当することは前述のとおりであるから,原告の右主張も採用できない。」
上記判決を受けて,審判2013-300086号の審決では,次のように判断されている。
「商標法第50条第1項の規定に基づく登録商標の取消審判における商標の使用については,審決取消訴訟における判決において『登録商標は,これを付する商品の具体的な性状に応じ,適宜に変更を加えて使用されるのがむしろ通常であるから,そのような変更が当該登録商標の有する独自の識別性に影響を与えていない限り,なお同一の範囲に属する標章と認識するのが,商品需要者あるいは取引者の通念というべきである。そして,商標の不使用を事由とする商標登録取消しの制度の存在理由(全く使用されていないような登録商標は,第三者の商標選択の余地を狭めるから,排他的な権利を与えておくべきでないとするのが,主たる理由と考えられる。)に鑑みると,登録商標と称呼及び観念を同じく外観も酷似する標章(これを,“社会通念上,登録商標と同一の標章”と称することもできよう。)の使用が,同条にいう“登録商標の使用”に該当すると解すべきことは当然であるが,それにとどまらず,登録商標の構成に変更が加えられたために外観が必ずしも登録商標と酷似するとはいえない標章であっても,構成の変更が,登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく,当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない限度にとどまるものであるときは,その標章の使用をもって商標法第50条にいう“登録商標の使用”に該当すると解して差支えないとするのが正当である(パリ条約第5条C(2)の規定を参照)。』と判示され,また『商標の不使用を事由とする商標登録取消しを論ずるときには,“前述のような制度の存在理由に鑑みても,商標法第50条所定の登録商標の使用”は,商標がその指定商品について何らかの態様で使用されておれば十分であって,識別標識としての使用(すなわち,商品の彼比識別など商標の本質的機能を果たす態様の使用)に限定しなければならぬ理由は,全く考えられない。』と判示されているところである(以上,東京高裁平成3年2月28日判決 平成2年(行ケ)第48号)。」
また,産業構造審議会知的財産政策部会の第29回商標制度小委員会では,「登録後に識別力を喪失した商標の取消制度の創設について」という議題で意見が示されている。その議事録を乙第5号証として,その配付資料を乙第6号証として提出する。乙第5号証には,「初めから出願せずに普通名称になってから出願し,特許庁で拒絶され,裁判所でも請求が棄却される場合がある一方,普通名称化していない段階で出願し,その後普通名称となったという事例もあるだろう。前者と後者との根本的な違いは,商標制度を最初から活用したかどうかであり,前者の登録が認められないなら後者も取り消されていいではないかというのは,一つの理屈かもしれないが,商標制度を最初から活用して普通名称化したものと,普通名称となった段階で商標登録出願をしたものとは,質的に違っているのではないか。このような意味では,安易に取消制度を導入するというのは慎重になるべきではないか。」との意見が示されている。
乙第6号証には,「登録後に識別力を喪失した登録商標については,商標法第26条第1項によってその効力が制限されるが,当該商標の取消制度がないことから,普通名称又は品質表示等として需要者に認識・使用されている場合や慣用商標となっている場合であっても登録商標として存続することになり,無用な紛争が生じるおそれがあるのではないかとの指摘がある。」とある。
「当該商標の取消制度がない」とは,商標法第50条不使用取消審判では,登録後に識別力を喪失した登録商標を取り消すことができないことを前提としている以外に考えられない。なお,登録前にすでに識別力を喪失している登録商標は,無効審判によって無効にすべきものである。
イ 本件商標はスポーツ大会の名称であるとの見解に対して
合議体の暫定的見解として,乙第1号証の「ターゲット・バードゴルフ全国大会パンフレット」の文字は,スポーツ大会の名称であるとされている。
例えば,商標法第1条第3号(審決注:「商標法第3条第1項第3号」の誤記と思われる。)の審査基準では,「書籍の題号については,題号がただちに特定の内容を表示するものと認められるときは,品質を表示するものとする。」とされており,同様に,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」についてその大会の名称は,ただちにその内容表示するものと認められると解釈する余地があるかもしれない。しかし,審査基準では,さらに,「新聞,雑誌等の定期刊行物の題号は,原則として,自他商品の識別力があるものとする。」と記載されている。これを本件に適用してみると,乙第1号証には「平成26年 創立記念第1回 ターゲット・バードゴルフ全国大会」と示されており,これは,定期的に大会を開催することを示唆しており,審査基準を類推してみると,「新聞,雑誌等の定期刊行物の題号」に準じて自他役務の識別力があるものとすべきである。もっとも,上述したように,自他役務の識別力の有無は,不使用取消審判とは無関係である。
ウ 本件商標は開催団体等の名称であるとの見解に対して
合議体の暫定的見解として,「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」「埼玉県ターゲット・バードゴルフ協会」「熊谷市ターゲット・バードゴルフ協会」「ALLJAPAN TARGE BIRD GOLF ASSOCIATION」の文字は,開催団体等の名称であるとされている。
商標法第26条には,商標権の効力が及ばない範囲として,自己の名称を普通に用いられる方法で表示する商標が挙げられている。しかし,同条の規定ですら「普通に用いられる方法で表示する商標」に限られているところ,乙第1号証及び乙第2号証に示す商標は,パンフレットの表紙に示されており,「普通に用いられる方法で表示する商標」であるということはできない。しかも,役務について使用する商標は,商品がその製造者・販売者を離れて市場を流通するのと異なり,役務提供者から離れて流通することはあり得ないので,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」という役務は,その役務提供者と密接不可分の関係にあり,自己の名称を表示していても,商品について使用する商標よりも,自他役務の識別力を発揮しやすいと考えられるので,パンフレットの表紙に表示した使用態様は,識別標識として使用したものとすべきものである。もっとも,上述したように,自他役務の識別力の有無は,不使用取消審判とは無関係である。

第4 当審の判断
1 当事者の提出した証拠
(1)乙第1号証は,「平成26年 創立記念第1回 ターゲット・バードゴルフ全国大会」と題するパンフレットである。
そして,その表紙には,「日時 平成26年11月9日(日)?10日(月)」,「主催 全日本ターゲット・バードゴルフ協会」,「主管 埼玉県ターゲット・バードゴルフ協会」及び「熊谷市ターゲット・バードゴルフ協会」の文字,並びに「・ALL JAPAN TARGET-BIRD GOLF・ASOOCIATION」の記載がある。
また,そのパンフレットの内容には,「大会日程,開会式次第,競技規則(全国大会用ルール),参加者名簿,コース」等が掲載されており,最後のページには,複数の写真と「-澄み渡る青空、体を動かせば、こころもはずむ-四季を問わずに楽しめる、ターゲット・バードゴルフ。あなたも、どうぞ。」の文字や「楽しみと/笑顔と、/健康と。」の文字,その下に「TARGET BIRD GOLF」の文字が表示されており,また,下部には,「製造販売元 ターゲット・バードゴルフ考案会社/株式会社ウインストン」等の文字,及び,住所,電話番号,FAX番号が記載されている。
(2)乙第2号証は,「第23回 関東甲信越ブロック/平成26年度 TBG交流大会in群馬」と題するパンフレットである。
そして,その表紙には,「日時 平成26年10月19日(日)?20日(月)」,「主催 全日本ターゲット・バードゴルフ協会/関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」及び「主管 群馬県ターゲット・バードゴルフ協会」の文字,並びに,鳥をデザインしたかのような図形を囲むように,「■TARGET BARDGOLF ASSOCIATION GUNMAKEN」の文字の記載がある。
また,そのパンフレットの内容には,「開会式次第,開催要領,競技規則,参加者名簿,コースレイアウト」等が掲載されており,表紙の裏面のページには,複数の写真と「-澄み渡る青空、体を動かせば、こころもはずむ-四季を問わずに楽しめる、ターゲット・バードゴルフ。あなたも、どうぞ。」の文字や「楽しみと/笑顔と、/健康と。」の文字,その下に「TARGET BIRD GOLF」の文字が表示されており,また,下部には,「製造販売元 ターゲット・バードゴルフ考案会社/株式会社ウインストン」等の文字,及び,住所,電話番号,FAX番号が記載されている。
加えて,26ページには,「コースレイアウト」とあり,その右横に「ターゲット・バードゴルフ常設コース」の文字の記載がある。
(3)乙第3号証及び乙第4号証は,平成27年6月18日付の「覚書」である。これには,被請求人が「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」に遅くとも平成26年9月1日には,本件商標の使用を許諾していた旨の記載がある。
(4)甲第1号証は,日本ターゲット・バードゴルフ協会事務局長鈴木康夫氏による解説文的な文書であるところ,これには,「ターゲット・バードゴルフの楽しみ方・教え方PART.1」の見出しの下,「ターゲット・バードゴルフとは?」の項において,「合成樹脂製の羽根付きのボールをゴルフ用のウエッジクラブ(1本のみ使用)で打っていき,傘を逆さにしたようなホールに入れて,少ない打数を競う,ゴルフをミニ化したようなスポーツです。」の記載がある。
(5)甲第6号証は,チラシとして「ターゲット・バードゴルフ専用クラブ」の見出しの下,「※ ご希望のヘッドとシャフトを組み合わせてご指示下さい。※ お気に入りのヘッドに,ご希望のシャフトを交換すると素晴らしいクラブに変身致します。H24:5判」の記載がある。
(6)甲第8号証は,新聞名及び日付の明らかではない新聞記事であるところ,これには,「クローズアップ」の見出しのもと,「風を読む奥深い魅力」の項に,「ターゲット・バードゴルフ(TBG)は,ボールが飛びすぎないようにバトミントンのシャトルのような羽根が付いた『シャトルボール』をゴルフのピッチングウエッジクラブで打ち,直径約110センチ,深さ約50センチのかごに入れる競技。18ホールを回って打数を競うなど,基本的なルールはゴルフと同じで,『手軽にできるゴルフ』として人気が高まっている。」の記載がある。
2 当審における職権調査
(1)「ターゲット・バードゴルフ」の文字について
ア 「現代用語の基礎知識 2015(自由国民社)」の「ターゲットバードゴルフ」の項において,「ゴルフボールにバドミントンの羽をつけたボールを使用するゴルフ。略してTBG。」の記載がある。
イ 「朝日現代用語 知恵蔵 2006(朝日新聞社)」の「ターゲット・バードゴルフ」の項において,「ミニゴルフの一種。シャトルボール(羽根付きボール)をゴルフクラブで打ち,パラソルを逆さまにしたような形のホールに入れて勝敗を競う。打数の少ない方が勝ち。ボールを打つ動作やフェアウエー上のルールなどはゴルフとほぼ同様だが,羽根付きボールを使用するので,滞空時間が長く安全性が高い。1ラウンドは,ショート,ミドル,ロングの各コースを組み合わせた18ホールが基本だが,場所に応じて減らすこともできる。」の記載がある。
ウ 2013年9月14日付け 東京新聞朝刊 地方版(武蔵野版)22ページ「『ターゲット・バードゴルフ』気軽にゴルフ気分 八王子で国体デモ競技」の見出しの下,「【東京都】羽根付きのゴルフボールを使う『ターゲット・バードゴルフ(TBG)』が,東京国体でデモンストレーション競技として行われることに,地元関係者の期待が高まっている。・・・全国の競技人口は約11万人。」の記載がある。
エ 「笹川スポーツ財団」のウェブサイトにおいて,「ターゲット・バードゴルフ」の見出しの下,「歴史と沿革」の項において,「日本人が編みだした日本発祥のスポーツです。・・・誕生当初はニアピン競技でしたが,徐々に工夫と改良が重ねられ,現在のような道具を使い,ゴルフをミニ化したようなスポーツとなりました。」及び「2005年の岡山国体にはデモンストレーション競技として初参加しています。2008年4月現在,全国44都府県に地域協会が設立され,愛好者は約10万人にのぼります。また,1999年以降,ハワイ,オーストラリア,中国,タイ,韓国などと国際交流も積極的に行っています。」の記載がある。
(http://www.ssf.or.jp/library/dictionary/dic4_targetbirdgolf.html)
オ 「狭山市公式ウェブサイト」のウェブサイトにおいて,「(13)ターゲット・バードゴルフ」の見出しの下,「ターゲット・バードゴルフとは?(埼玉県ターゲットバードゴルフ協会)」の項において,「ゴルフボールにバトミントンのシャトルを付けたような形のボールを普通のゴルフクラブで打ち,パラソルを逆さまにしたようなホールに入れるミニゴルフです。本格的なゴルフスイングの軽快さと,アメニティスポーツとしての要素も含まれ,初心者でも楽しめる手軽なスポーツです。ターゲット・バードゴルフは「ターゲット(標的)」「バード(鳥)」「ゴルフ」の三語を合わせた名称で,略称TGBといい,文部科学省に認定され,生涯スポーツとして幅広く愛好されています。狭い場所でゴルフが楽しめるようにと考案されたスポーツで,埼玉県川口市がTGB発祥の地です。」の記載がある。
(https://www.city.sayama.saitama.jp/manabu/event/sports/recreationtaikai/TBG.html)
カ 「東京都ターゲットバードゴルフ協会」のウェブサイトにおいて,「会長ご挨拶」の見出しの下,「我が国で生まれたニュースポーツ,ターゲット・バードゴルフ(TBG)が,年々盛んになり,全国的に順調に発展していることを,愛好者の皆様と共に慶びたいと思います。・・・現在全国45都道府県の350市区町村に地域協会組織を持つに至りました。東京都におきましても,各地域の愛好者の皆様のご努力と関係者並びに行政のご支援により,24の地域組織で約1,000人の方々が,日常的にその活動を繰り広げています。」の記載がある。
(http://tokyotbg.a.la9.jp/)
(2)小括
以上によれば,「ターゲット・バードゴルフ」に関しては,2015年現在,全国45都道府県の350市区町村に地域協会が設立され,愛好者が11万人にものぼり,また,国際交流も行われていることなどからすると,「ターゲット・バードゴルフ」の文字は,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の名称として,需要者に広く知られているものというのが相当である。
3 上記1及び2によれば,以下のとおり判断することができる。
(1)「ターゲット・バードゴルフ」について
上記2によれば,「ターゲット・バードゴルフ」については,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技として,一定の競技人口があり,その競技をするための道具も販売されるなどしており,また,その競技組織も日本全国にその拠点を有する事情が認められるから,「ターゲット・バードゴルフ」の名称は,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称と認められる。
そして,ミニゴルフといわれる競技については,ルールなどが相違する種々のものがあるとしても,一般にその競技の基本的要素を考えると,これらはゴルフから派生したものといえるから,広い意味での競技としての「ゴルフ」の概念に含まれるものとして考えられていることを否定できないことからすると,「ターゲット・バードゴルフ」は,ゴルフの概念に含まれるといってさしつかえないものである。
(2)本件商標の使用者について
「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」は,覚書により平成26年9月1日以降,本件商標の通常使用権者であることが認められる(乙3,乙4)。
(3)本件商標の使用について
ア 乙第1号証において使用されている表紙の「ターゲット・バードゴルフ全国大会」の文字は,「ターゲット・バードゴルフ」という競技名としてのミニゴルフ大会の名称として表示されているものであり,また,「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」,「埼玉県ターゲット・バードゴルフ協会」及び「熊谷市ターゲット・バードゴルフ協会」の文字,並びに「・ALL JAPAN TARGET-BIRD GOLF・ASOOCIATION」の文字は,いずれも開催団体等の名称であって,仮に,本件商標と同一の文字及び本件商標が欧文字表記された文字がその大会の名称や団体の名称に含まれていたとしても,それは,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称としての文字が,あくまでその大会の名称や団体の名称の一部を構成するものであって,本件商標「ターゲット・バードゴルフ」の使用ということはできないから,これらが,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標の使用と認められない。
イ 乙第2号証において使用されている表紙の「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」,「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」及び「群馬県ターゲット・バードゴルフ協会」の文字,並びに「TARGET BARDGOLF ASSOCIATION GUNMAKEN」の欧文字は,いずれも開催団体等の名称であって,仮に,本件商標と同一の文字及び本件商標が欧文字表記された文字がその大会の名称や団体の名称に含まれていたとしても,それは,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称としての文字が,あくまでその大会の名称や団体の名称の一部を構成するものであって,本件商標「ターゲット・バードゴルフ」の使用ということはできないから,これらが,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標の使用と認められない。
ウ 乙第2号証の26ページに使用されている「ターゲット・バードゴルフ常設コース」の文字は,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技であるターゲット・バードゴルフの競技の施設名称であることを需要者に理解させるものであって,商標としての本件商標の使用と認められない。
エ 乙第1号証の裏表紙及び乙第2号証の表紙の裏面に使用されている「TRGET BIRD GOLF」の文字は,ミニゴルフの普通名称である「ターゲット・バードゴルフ」の文字を欧文字に変えて表記したものであって,該紙面のターゲット・バードゴルフを行っている写真や「-澄み渡る青空、体を動かせば、こころもはずむ-四季を問わずに楽しめる、ターゲット・バードゴルフ。あなたも、どうぞ。」の文字や「楽しみと/笑顔と、/健康と。」の文字と共に記載されているものであるから,ターゲット・バードゴルフというミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称を欧文字で表したものとして需要者に理解されるものであって,本件審判の取消請求に係る指定役務について,商標としての本件商標の使用と認められない。
オ その他のいずれの証拠においても,本件審判の取消請求に係る指定役務中,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標と認められる商標の使用は見当たらない。
(4)小括
以上のとおり,被請求人の提出した全証拠によっては,本件商標の通常使用権者である「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」によって,本件審判の取消請求に係る指定役務について,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が使用されている事実を認めることはできない。
4 被請求人の主張について
(1)本件商標が競技の普通名称であるとの見解に対して
被請求人は,東京高裁平成3年2月28日判決(平成2年(行ケ)第48号)を挙げて,「不使用取消審判は,商標の登録の目的ないし期待に反し,使用されていない登録商標を整理することにより商標制度の目的を発揮できるようにすることをねらって設けられた制度であり,登録商標が普通名称であるか否かは,不使用取消審判の判断に影響を与えるものではない。」旨主張し,また,「産業構造審議会知的財産政策部会 第29回商標制度小委員会」の資料である,「登録後に識別力を喪失した商標の取消制度の創設について」(乙6)及び,その委員会の議事録(乙5)を提出して,「商標法第50条不使用取消審判では,登録後に識別力を喪失した登録商標を取り消すことができないことを前提としている以外に考えられない。なお,登録前にすでに識別力を喪失している登録商標は,無効審判によって無効にすべきものである」旨,主張している。
しかしながら,本件においての判断は,商標の使用態様が普通名称であることのみをもって,本件商標の使用を認めないとしているものではなく,提出された被請求人の全証拠からは,本件商標である「ターゲット・バードゴルフ」のみで使用したものではなく,被請求人が主張する商標の使用態様は,本件商標の使用とはいえないものであって,本件の指定役務である「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について,本件商標である「ターゲット・バードゴルフ」の文字又はこれと社会通念上同一の商標の使用と認められない。
したがって,被請求人の主張は,採用することはできない。
(2)本件商標がスポーツ大会の名称であるとの見解に対して
被請求人は,「審査基準では,『新聞,雑誌等の定期刊行物の題号は,原則として,自他商品の識別力があるものとする。』と記載されている。そうすると,乙第1号証には『平成26年 創立記念第1回 ターゲット・バードゴルフ全国大会』と示されており,これは,定期的に大会を開催することを示唆しており,審査基準を類推してみると,『新聞,雑誌等の定期刊行物の題号』に準じて自他役務の識別力があるものとすべきである。」旨,主張している。
しかしながら,上記審査基準は,新聞,雑誌等の商品の「書籍の題号」についての審査基準であり,本件商標の指定役務中の「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」についてのものではない。
そして,本件商標と同一の文字がその大会の名称に含まれていたとしても,それは,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称としての文字が,あくまで大会の名称の一部を構成するものであって,本件商標の使用ということはできないから,その大会の名称は,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標の使用と認められない。
したがって,被請求人の主張は,採用することはできない。
(3)本件商標が開催団体等の名称であるとの見解に対して
被請求人は、「商標法第26条には,商標権の効力が及ばない範囲として,自己の名称を普通に用いられる方法で表示する商標が挙げられている。しかし,同条の規定ですら『普通に用いられる方法で表示する商標』に限られているところ,乙第1号証及び乙第2号証に示す商標は,パンフレットの表紙に示されており,『普通に用いられる方法で表示する商標』であるということはできない。しかも,役務について使用する商標は,商品がその製造者・販売者を離れて市場を流通するのと異なり,役務提供者から離れて流通することはあり得ないので,『ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供』という役務は,その役務提供者と密接不可分の関係にあり,自己の名称を表示していても,商品について使用する商標よりも,自他役務の識別力を発揮しやすいと考えられるので,パンフレットの表紙に表示した使用態様は,識別標識として使用したものとすべきものである。」旨,主張している。
しかしながら,本件商標は,商標法第26条に規定する「自己の名称」とは認められず,また,乙第1号証及び乙第2号証に書かれている,「全日本ターゲット・バードゴルフ協会」及び「関東甲信越ブロック ターゲット・バードゴルフ協議会」等の文字は,単にターゲット・バードゴルフを主催する団体の名称を表示しているものと需要者に理解されるにすぎず,仮に,本件商標と同一の文字がその団体の名称に含まれていたとしても,それは,ミニゴルフの一種としてのスポーツ競技の普通名称としての文字が,あくまで団体の名称の一部を構成するものであって,上記名称が識別標識として使用されているものであるとしても,本件商標の使用ということはできない。
そうすると,これらの名称は,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標の使用と認められない。
したがって,被請求人の主張は,採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり,被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについて,本件商標の使用をしていたことを証明したものと認められない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により,請求に係る指定役務である第41類「ゴルフの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」についての登録を取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2016-06-09 
出願番号 商願平10-10753 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z41)
最終処分 成立 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
大井手 正雄
登録日 1999-05-21 
登録番号 商標登録第4274998号(T4274998) 
商標の称呼 ターゲットバードゴルフ、ターゲットバード 
代理人 開口 宗昭 
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所 
代理人 開口 宗昭 
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