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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09283541
審判 全部申立て  登録を維持 W09283541
審判 全部申立て  登録を維持 W09283541
審判 全部申立て  登録を維持 W09283541
管理番号 1317263 
異議申立番号 異議2015-900063 
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-02-20 
確定日 2016-07-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5719856号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5719856号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5719856号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成26年7月3日に登録出願,第9類「業務用ビデオゲーム機のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な業務用ビデオゲーム機用プログラム,娯楽装置(硬貨投入式)用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な娯楽装置(硬貨投入式)用プログラム,スロットマシン用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能なスロットマシン用プログラム,家庭用テレビゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な携帯用液晶画面ゲーム機用プログラム,ダウンロード可能な電子計算機用プログラム,ダウンロード可能な携帯電話機用プログラム,電気通信機械器具,レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,遊園地用機械器具用のプログラムを記憶させた記録媒体,ダウンロード可能な遊園地用機械器具用のプログラム,遊戯用器具用のプログラムを記憶させた記憶媒体,ダウンロード可能な遊戯用器具用のプログラム」,第28類「業務用コイン投入式ビデオゲーム機,業務用磁気カード式ビデオゲーム機,複数の遊戯用端末を設けた業務用ビデオゲーム機,業務用ビデオゲーム機の筐体,業務用ビデオゲーム機の部品及び付属品,その他の業務用ビデオゲーム機,遊園地用機械器具,家庭用テレビゲーム機,スロットマシン,スロットマシンの筐体,ぱちんこ器具,その他の遊戯用器具,娯楽装置(硬貨投入式),携帯用液晶画面ゲーム機,その他のおもちゃ,人形」,第35類「インターネットによる広告及び広告の代理,広告業,パチンコホールの経営に関する情報の提供,スロットマシン・ぱちんこ器具その他の遊戯用器具の販売に関する情報の提供,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,スロットマシン・ぱちんこ器具その他の遊戯用器具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類「パチンコホールにおいてスロットマシンで遊技した遊技客の遊技結果・遊技履歴に関する情報の提供,インターネット・携帯電話機を利用したスロットマシンの攻略法・遊技方法に関する情報の提供,インターネット・携帯電話機を利用した娯楽施設に関する情報の提供,インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれに関する情報の提供,娯楽施設の提供,放送番組の制作,ゲーム大会の企画・運営・開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),スロットマシンの貸与,ぱちんこ器具の貸与,その他の遊戯用器具の貸与」を指定商品及び指定役務として,同年10月14日に登録査定,同年11月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は,以下の5件であり,いずれの商標権も現に有効に存続している。
1 登録第1590890号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 「UNIVERSAL」の欧文字を横書きしてなる商標
指定商品 第9類「映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」
登録出願日 昭和48年2月26日
設定登録日 昭和58年5月26日
2 登録第3007755号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 「UNIVERSAL」の欧文字を横書きしてなる商標
指定役務 第41類「映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,娯楽施設の提供」
登録出願日 平成4年8月10日
設定登録日 平成6年10月31日
3 登録第4194750号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 別掲2に示すとおりの構成よりなる商標
指定商品 第9類「録音済みコンパクトディスク,その他のレコード,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,録画済みCD?ROM」
登録出願日 平成8年11月27日
設定登録日 平成10年10月2日
4 登録第4347608号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成 別掲2に示すとおりの構成よりなる商標
指定役務 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,アミューズメントパークによる娯楽施設の提供,テーマパークによる娯楽施設の提供,エンターテイメントセンターによる娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,スキー用具の貸与,スキンダイビング用具の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催,庭園の供覧,洞窟の供覧,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組等の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組等の制作のために使用されるものの操作,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,遊戯用具の貸与,遊技場器械器具の貸与,遊園地用機械器具の貸与,絵画の貸与,娯楽施設・映画に関する情報の提供」
登録出願日 平成8年11月27日
設定登録日 平成11年12月24日
5 登録第5521602号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成 別掲3に示すとおりの構成よりなる商標
指定商品及び指定役務
第9類「録音済みのオーディオカセットテープ,録画済みのビデオカセットテープ,録音済みのオーディオテープ,映画及びテレビ番組を録画した録画済みのビデオテープ,音楽を録音した録音済みコンパクトディスク,映画及びテレビ番組を録音又は録画したDVD及びCD-ROM,ダウンロード可能なビデオ・テレビ番組・映画,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」
第41類「テレビ番組及び映画の制作及び配給,テレビ番組の企画・制作・配給,オンデマンドによるビデオ・テレビ番組及び映画の提供,コンピュータネットワークによる写真・映画・ビデオ作品・テレビ番組及びゲームの提供(ダウンロードを伴わないもの。),インタラクティブゲーム・ビデオゲーム・携帯ゲームの提供,娯楽の提供,オンラインゲーム・ウェブサイト上でのゲーム・インタラクティブゲーム・ビデオゲーム・携帯ゲームの提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,運動施設の提供,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」
登録出願日 平成23年12月20日
設定登録日 平成24年9月14日

以下,引用商標1ないし5を一括して「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
(1)引用商標に係る「UNIVERSAL」の著名性について
申立人,ユニバーサル シティ スタジオズ エルエルシーは,1912年に設立された米国の映画製作会社であり,世界三大エンターテインメントグループとして知られている。特に「ジョーズ」(1975年),「ジョーズ2」(1978年),「ジョーズ3」(1983年),「E.T.」(1982年),「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年),「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」(1989年),「バック・トウ・ザ・フューチャーPART3」(1990年),「ウォーター・ワールド」(1995年),「ジュラシックパーク」(1993年),「ロストワールド/ジュラシックパーク」(1997年),「ジュラシックパークIII」(2001年)及び「ボーン・アルティメイタム」(2007年)等のアカデミー賞受賞作品や高い観客動員数を誇る作品を制作して世界に発信しており,これら申立人の作品は全米のみならず日本においても多数の観客を動員し,また,ビデオ・DVD・サウンドトラック化され繰り返し親しまれている。近年は,アニメーションも注目を集め,申立人の関連会社であるユニバーサル・ピクチャーズが制作した3Dアニメ映画は,米国において2010年に上映開始後,週末3日間で約5600万ドルもの興業成績を記録し,我が国においても,同映画のキャラクター「ミニオン」の関連商品も売られるなど人気を博している。
また,全世界に配給した映画作品の冒頭部分において,地球の図形を背景にし,白抜きの欧文字「UNIVERSAL」を配したロゴ(引用商標3及び4に表されるものと同じ態様)を投影し,かかる表示は申立人が制作した数多くの映画作品を鑑賞した世界中の人々の目に触れてきた。また,ビデオやDVDに格納されて販売されている申立人の作品の包装や,映画宣伝用のポスターやパンフレットにおいても,当該ロゴは顕著に表示されている。
さらに,申立人はその設立初期から,映画の製作スタジオを一般に公開し,1964年にはユニバーサル・スタジオ・ハリウッドとしてオープンし,今日まで1億人以上のゲストが訪れている。また,大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは,申立人のテーマパークとして2001年3月にオープンするや高い人気を獲得し,2014年度には,1270万人の入場者数を記録し,過去最高を更新している。
このように,引用商標に係る「UNIVERSAL」(ユニバーサル)は,申立人の略称として,映画製作はもちろんのこと,映画のテーマパークの提供,映画・音楽・ゲームなどの豊富なメディアの制作と配給という総合的な娯楽に関連する商品・役務に継続的に使用された結果,本件商標の登録出願時には既に,広く知られ著名性を獲得するに至っていたというべきである。
(2)本件商標と引用商標との類似性について
ア 本件商標の要部
本件商標の構成において,「UNIVERSAL」の欧文字部分は,本件商標の上段に肉太の欧文字で表記されているのに対し,「BROS.」及び羽を模した図形部分は,「UNIVERSAL」の文字幅に比して4分の1程度小さく記載され,また,フォントも異なる。また,最下部の「ユニバーサルブロス」の片仮名部分は,上記の文字部分より一定間隔の空白が設けられており,「UNIVERSAL」や「BROS」との一体性を感じさせるものではないことからすると,外観上,「UNIVERSAL」は,他の部分から分離した構成であることは明らかであり,他の部分に比して,看る者の注意を最も強く引く主体的な部分であるといえる。
また,「BROS.」は,「兄,弟」等の意味を有する英語「BROTHERS」の略語である。
さらに,本件商標の「BROS.」は,大きく主体的に表された「UNIVERSAL」との一体性に欠け,むしろ,「UNIVERSAL」の付記性又は付飾性を感じさせるものといえるから,本件商標にあっては,「BROS.」の文字部分自体が自他商品・役務の出所識別のために格別の意義を有するものとはいえない。
これらのことからすると,本件商標のうち,「UNIVERSAL」の欧文字部分は,これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできず,本件商標のうち,「UNIVERSAL」の部分だけを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
イ 本件商標及び引用商標の類否
(ア)本件商標の構成
本件商標の要部は,「UNIVERSAL」の欧文字部分である。
加えて,「UNIVERSAL」の文字は,申立人の著名な略称として広く知られ,また申立人の業務に係る音楽・映画関連の商品・役務等に使用される商標として著名であることから,その著名性を受けて,本件商標に接する需要者,取引者にとっては,おのずと,本件商標の「UNIVERSAL」部分が強く記憶に残り,該部分が,本件商標の要部として認識されるものと思料する。
したがって,本件商標の要部である「UNIVERSAL」の欧文字部分から,「ユニバーサル」の称呼が生じ,著名な申立人の略称との観念が生じるというべきである。
(イ)引用商標の構成
引用商標1及び2は,「UNIVERSAL」の欧文字から構成される商標である。
引用商標3及び4は,地球を立体的に模した図形及びその地球の周辺がきらめくような様子を表す帯状の図形が配され,それらの図形部分に重なるように,「UNIVERSAL」の白抜きした欧文字が横に配置されてなる商標である。
引用商標5は,地球を模した図形が配され,それの図形部分に重なるように「UNIVERSAL」の太字の欧文字が横に配置されてなる商標である。
引用商標1ないし5からは,「ユニバーサル」の称呼が生じ,既述のとおり,「UNIVERSAL」は,申立人の業務に係る商品及び役務の出所表示として使用され商標的機能を有しており,需要者等においても出所表示として広く認識されているというべきである。
ウ 指定商品又は指定役務の類否
本件商標に係る第9類の指定商品及び第41類の指定役務は,引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。
エ 本件商標と引用商標の類否
本件商標の要部である「UNIVERSAL」と引用商標を対比すると,本件商標の要部からは,「ユニバーサル」の称呼及び申立人の著名な略称としての観念が生じる。これに対し,引用商標からは,いずれもその構成文字に照応して「ユニバーサル」の称呼及び申立人の略称としての観念が生じる。したがって,両者は,同一の称呼及び観念が生じる。
よって,本件商標は,引用商標とは,本件商標の要部から生じる称呼及び観念が同一であり,また,指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標でもあるため,商標全体として対比した場合にも,引用商標に類似するものである。
(3)小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標とは称呼及び観念が同一の類似商標である。また,本件商標に係る第9類の指定商品及び第41類の指定役務は,引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。
したがって,本件商標は,上記指定商品及び指定役務については,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性
(1)引用商標の周知著名性
上述したとおり,引用商標に係る「UNIVERSAL」(ユニバーサル)は,申立人の略称として,映画製作はもちろんのこと,映画のテーマパークの提供,映画・音楽・ゲームなどの豊富なメディアの制作と配給という総合的な娯楽に関連する商品又は役務に継続的に使用された結果,本件商標の登録出願時には既に,我が国を始め,世界各国において取引者,需要者の間で周知著名となっていたものであり,また,その周知著名性は,現在においても継続しているものである。
(2)引用商標の独創性
引用商標は,上述の構成よりなるところ,申立人の著名な略称という観念を想起させる商標というべきであり,申立人の事業を表す独自の商標であり,その独創性・識別性は極めて高いというべきである。
(3)本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標は,称呼上及び観念上の類似性の程度は極めて高いといわなければならない。
(4)本件商標の指定商品等と引用商標を使用する商品等との関連の程度,商品等の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品及び指定役務は,主としてエンターテイメントの分野で使用されるものである。
他方,引用商標は,主に音楽・映画に関連する商品であるレコードや録画済みビデオディスク及びビデオテープ等や,映画の上映や娯楽施設の提供等,エンターテイメント分野に関する役務について使用されるものであるため,本件商標の第9類,第28類,第35類及び第41類に係る指定商品及び指定役務とは,その需要者の範囲や取引・流通経路も一致することの多いものであることが推認される。
(5)小括
上記のように,引用商標は,申立人の著名な略称であり,本件商標は,引用商標と称呼上及び観念上,非常に相紛らわしく,類似性の程度の極めて高い商標である。
また,本件商標の指定商品又は指定役務と引用商標を使用する商品・役務とは,同一又は類似の商品であり,非常に高い関連性を有している。
そうすると,本件商標は,その指定商品又は指定役務について使用された場合には,これに接した取引者,需要者は,申立人の周知著名商標「UNIVERSAL」(ユニバーサル)を想起,連想し,当該商品・役務が,申立人の業務に係る商品・役務であるかのように認識され,あるいは申立人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように誤認され,その出所について混同を生じるおそれのあることは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 結語
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)事実認定
証拠(本件商標の登録出願前のものと明確に認められるものに限る。)及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。
ア 映画の紹介に係るウェブサイト及び申立人に係るウィキペディア(甲7,甲8,甲10及び甲12)において,その文中に「ユニバーサル」との語が使用されてはいるものの,これらは,「ユニバーサル・スタジオ」,「ユニバーサル映画」,「ユニバーサル・ピクチャーズ」に関するインターネット情報の記事中で使用されているものである。
また,音楽・映像ソフトのレンタル店である「TSUTAYA」等のウェブサイト(甲13?甲15,甲17)において,引用商標3ないし5に近似した商標が,我が国でも大ヒットした有名な映画である「ジョーズ」,「バック・トゥ・ザ・フューチャー」,「ジュラシック・パーク」及び「怪盗グルーのミニオン危機一発」(甲8,9,12)のDVDパッケージに表示され,当該DVDがレンタルないし販売されているとしても,その表示自体は,地球の図形を背景にして「UNIVERSAL」の語を横書きしてなる一体のロゴ商標と認識されるものであって,「UNIVERSAL」の語が単独で認識されるような態様であるとは認められない。
そして,「UNIVERSAL」の語の使用(宣伝広告の量)は,これにとどまり,その他,引用商標が申立人の商品又は役務の商標として使用されていることを端的に示す証拠の提出はない。
なお,ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのバリアフリーガイド(甲19)には,施設の案内図の中に,引用商標5に近似した態様の図形が他のイラストとともに描かれているが,この案内図の一部として描かれた当該図形が申立人の商品や役務の商標として使用されているとは認められない。
イ 以上を総合して検討すれば,提出された証拠からは,本件商標の登録出願前に,申立人に係る有名な映画のDVDパッケージに,引用商標3ないし5に近似した商標,すなわち,地球の図形を背景にして「UNIVERSAL」の語を横書きしてなる一体のロゴ商標が表示され,当該DVDがレンタルないし販売されていたことから,本件商標の指定商品及び指定役務に係る取引者,需要者の間でも,引用商標3ないし5については相当程度知られていたと推認できるとしても,「UNIVERSAL」(ユニバーサル)の語自体は,「普遍的な,全世界の」等の意味を有する一般的な語であって,格別に強い印象を与えるものとはいえないことから,引用商標に係る「UNIVERSAL」(ユニバーサル)の文字だけでは,申立人の略称として周知となっていたとまでは認めることができない。
この点について,申立人は,「UNIVERSAL」(ユニバーサル)は,申立人の略称として,映画製作はもちろんのこと,映画のテーマパークの提供,映画・音楽・ゲームなどの豊富なメディアの制作と配給という総合的な娯楽に関連する商品又は役務に継続的に使用された結果,本件商標の出願時である2014年には既に,我が国を始め,世界各国において取引者,需要者の間で周知著名となっていたと主張する。
しかしながら,「Universal」ないし「ユニバーサル」の語が,申立人(グループ会社を含む。)の略称として使用されているのは,フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」及びインターネット情報(ぴあ映画生活)(甲7,甲8,甲10及び甲12)の記事中にとどまるものであり,他の甲各号証においても,「Universal」ないし「ユニバーサル」の語が申立人の略称として使用されていると認め得る記載はないことから,これらの語は申立人を連想・想起させることはないというべきである。
したがって,申立人の上記主張は,採用できない。
(2)小括
以上によれば,提出された証拠からは,本件商標の登録出願前に,申立人に係る有名な映画のDVDパッケージに,引用商標3ないし5に近似した商標,すなわち,地球の図形を背景にして「UNIVERSAL」の語を横書きしてなる一体のロゴ商標が表示され,当該DVDがレンタルないし販売されていたことから,本件商標の指定商品及び指定役務に係る取引者,需要者の間でも,引用商標のうち,引用商標3ないし5については相当程度知られていたとしても,引用商標に係る「UNIVERSAL」(ユニバーサル)の語は,本件商標の登録出願前に,申立人の略称として,本件商標の取引者,需要者の間で周知著名となっていたとはいえない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,「UNIVERSAL」の欧文字を肉太で表し,その中央下部に小さく「BROS.」の文字を表し,かつ,その左右には槍の穂先状の図形を配し,さらに,その下にやや間隔を空けて,小さく「ユニバーサルブロス」の片仮名を横書きした構成からなるところ,上記の「BROS.」の文字及びその左右に槍の穂先状の図形を配した部分は,その上部にある「UNIVERSAL」の文字部分とは,両端をそろえ,かつ,近接して配されていることに加え,これらの欧文字部分の読みを表したものと認められる「ユニバーサルブロス」の片仮名部分も同じ書体・間隔で横一連に表されていること及びこの部分から生じる「ユニバーサルブロス」の称呼も何ら冗長ではないことから,上部に二段で表された欧文字部分は,一体のものとして把握されるとみるのが相当である。
そうすると,本件商標は,欧文字部分とその読みを表した下部の片仮名部分から「ユニバーサルブロス」の称呼のみが生じ,特定の観念を生じないというべきである。
(2)引用商標について
引用商標は,それぞれ前記した構成からなるものであるところ,これらからは,その構成中の「UNIVERSAL」の欧文字から,「ユニバーサル」の称呼,「普遍的な,全世界の」等の観念が生じるものである。
なお,申立人は,引用商標に係る「UNIVERSAL」(ユニバーサル)からは,申立人の略称としての観念が生じると主張しているが,前記1のとおり,「UNIVERSAL」(ユニバーサル)の文字から申立人の略称との観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに,それぞれの構成は前記したとおりのものであるから,「BROS.」(ブロス)の有無等の相違により,本件商標と引用商標とは,外観上,明確に区別できる。
次に,称呼について検討するに,本件商標からは「ユニバーサルブロス」の称呼が,引用商標からは,それぞれ「ユニバーサル」の称呼が生じるから,後半の「ブロス」の音の有無により,本件商標と引用商標とは,称呼上も明らかに相違する。
さらに,本件商標は,特定の観念を生じないものであるから,引用商標とは比較できず,観念上も相紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれからみても,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
前記1のとおり,申立人が提出した証拠からは,本件商標の登録出願前に,本件商標の取引者,需要者の間において,引用商標のうち,引用商標3ないし5が相当程度に知られていたとしても,引用商標に係る「UNIVERSAL」(ユニバーサル)の語は,申立人の略称として,周知著名となっていたとはいえない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
前記2のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれからみても,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
(3)小括
以上によれば,引用商標に係る「UNIVERSAL」,あるいは,その片仮名表記である「ユニバーサル」の各文字は,前記(1)のとおり,本件商標の登録出願前に,本件商標の取引者,需要者間において,申立人の略称として取引者・需要者の間で周知著名となっていたとはいえないし,たとえ,引用商標3ないし5が相当程度に知られていたとしても,本件商標と引用商標とは,前記(2)のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものであるから,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者が,その商品及び役務について,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように連想,想起することはなく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標3及び引用商標4


別掲3 引用商標5




異議決定日 2016-07-13 
出願番号 商願2014-55617(T2014-55617) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W09283541)
T 1 651・ 261- Y (W09283541)
T 1 651・ 263- Y (W09283541)
T 1 651・ 271- Y (W09283541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 田中 亨子
田村 正明
登録日 2014-11-21 
登録番号 商標登録第5719856号(T5719856) 
権利者 株式会社ユニバーサルエンターテインメント
商標の称呼 ユニバーサルブロス、ユニバーサル、ブロス 
代理人 春田まり子 
代理人 佐藤 太亮 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 細井 勇 
代理人 河嶋 慶太 
代理人 伊藤 亮介 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 

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