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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3043
審判 全部申立て  登録を維持 W3043
審判 全部申立て  登録を維持 W3043
審判 全部申立て  登録を維持 W3043
審判 全部申立て  登録を維持 W3043
管理番号 1317249 
異議申立番号 異議2015-900353 
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-07 
確定日 2016-07-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第5783739号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5783739号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5783739号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成27年4月24日に登録出願、第30類「うどんめん,そばめん」及び第43類「麺などを主とする飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同年6月16日に登録査定され、同年8月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、引用する登録商標は、以下の8件である。
1 登録第5516427号商標(以下「引用商標1」という。)は、「白石温麺」の文字を太字で縦書きし、その右側に振り仮名を付すように、小さく「しろいしうーめん」の平仮名を縦書きしてなり、平成21年10月15日に登録出願され、第30類「うどんめん,そうめん,ひやむぎ」を指定商品として、同24年5月2日に商標法第3条第2項が適用されて登録査定、同年8月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 登録第1806432号商標(以下「引用商標2」という。)は、黒塗り円図形の中に白抜きで円輪郭と「白」の文字を太字で表し、その下部に「白石温麺」の文字を太字で縦書きした構成よりなり、昭和50年6月24日に登録出願され、商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成8年12月24日、同17年12月27日及び同28年1月5日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、その指定商品については、同18年11月1日に、第30類「うどんめん,そばめん,そうめんのめん,そうめんのべんとう,中華そばめん」とする、商標権の指定商品の書換の登録がなされており、現に有効に存続しているものである。
3 商標登録出願2014-10631(以下「引用商標3」という。)は、「白石温麺」の文字を太字で縦書きしてなり、第30類「うどんめん,そばめん,中華そばめん,そうめん」を指定商品として、平成26年2月13日に登録出願され、現在、審査継続中のものである。
4 登録第5516426号商標(以下「引用商標4」という。)は、「温麺」の文字を筆書き風の太字で横書きし、その下部に振り仮名を付すように、小さく「うーめん」の平仮名を横書きしてなり、平成21年10月15日に登録出願され、第30類「うどんめん,そうめん,ひやむぎ」を指定商品として、同24年5月2日に商標法第3条第2項が適用されて登録査定、同年8月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
5 登録第1806430号商標(以下「引用商標5」という。)は、円輪郭内に「白」の文字を表し、その下部に「温麺」(「麺」の文字は旧字体で表されている。)の文字を縦書きした構成よりなり、昭和50年6月24日に登録出願され、商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成8年12月24日、同17年12月27日及び同28年1月5日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、その指定商品については、同18年11月1日に、第30類「うどんめん,そばめん,そうめんのめん,中華そばめん」とする、商標権の指定商品の書換の登録がなされており、現に有効に存続しているものである。
6 商標登録出願2014-10510(以下「引用商標6」という。)は、「温麺」の文字を筆書き風の太字で横書きしてなり、第30類「うどんめん,そばめん,中華そばめん,そうめん」を指定商品として、平成26年2月13日に登録出願され、現在、審査継続中のものである。
7 登録第3207346号商標(以下「引用商標7」という。)は、「白石うーめん味処」の文字を横書きしてなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同8年10月31日に設定登録、その後、同18年11月14日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
8 登録第5487543号商標(以下「引用商標8」という。)は、「饂麺」の文字を標準文字により表してなり、平成21年10月15日に登録出願され、第30類「うどんのめん,そばのめん,そうめんのめん,ひやむぎのめん,中華そばのめん,スパゲッティのめん,即席うどんめん,即席そばめん,即席そうめん,即席ひやむぎ,即席中華そばめん,即席ラーメン,即席スパゲッティ,調理済のうどん,調理済のそばめん,調理済のそうめん,調理済のひやむぎ,調理済の中華そばめん,調理済のラーメン,調理済のスパゲッティ,そばつゆ,めんつゆ」及び第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,会議室の貸与」を指定商品及び指定役務として、同24年4月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
1 申立ての理由の要点と根拠
(1)本件商標は、引用商標と類似するものであって、また、第30類の指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項により、その登録を取り消すべきである。
(2)本件商標は、奥州白石温麺協同組合の業務に係る商品を表示する需要者の間に広く認識されている商標「白石温麺」及び「温麺」に類似しているものであるから、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項により、その登録を取り消すべきである。
2 本件商標の使用について
本件商標の使用をホームページ調査及び現地調査した結果、当該事業内容を示す「白石温麺茶屋」のホームページ写しによると、奥州白石名物である「白石温麺」や「温麺」を主とする飲食物を提供するとともに、当該「白石温麺」や「温麺」をお土産品として販売しているかの如く宣伝・広告しているが、実際には自らの手作り生麺である「茶屋のめん」を調理した飲食物を提供しているだけでなく、お土産品としても当該「茶屋のめん」の詰合せ品を販売しているだけで、奥州白石温麺協同組合や組合員が昔から製造販売している乾麺「白石温麺」や「温麺」を使用した飲食物は一切提供もしていないし、同商品の販売もしていない。すなわち、看板に偽りのある飲食業や物販業を行っている実態を確認している(甲2)。
また、甲第151号証に示すとおり、昭和53年以来、現在に至るまで「白石温麺茶屋」なる屋号を使用して長年飲食店を営業している事実があり、平成27年11月末日まで38年間は、有限会社白石温麺茶屋が事業主体であったが、それ以後は、事業譲渡を受けた株式会社松川弁当店が当該事業を引き継ぎ、2016年(平成28年)4月1日からリニューアルオープンして現在も営業をしている。
これに対して、本件商標権者は、前記の事業主体とは異なる者であり、白石温麺協同組合の組合員ではなく、「白石温麺」などの麺類を製造もしてなく、麺類を提供する飲食業をしている事実もない。
しかも本件商標の登録出願日は、平成27年4月24日と最近のことである。
なぜ、最近になって長年他人が経営してきた事業の屋号を、本件商標権者が冒認してまで出願、登録した理由が理解できない。
したがって、当該商標権を権利行使してきた場合、実際事業を行なっている白石温麺製造業者や前記飲食業者など関係者の間で問題や混乱が起こることが予測される。
3 本件商標を取消すべき根拠と具体的理由
(1)本件商標は、その構成中に他人所有の周知な登録商標「白石温麺」又は「温麺」を含んでいるにもかかわらず、当該登録商標の存在を看過した点に重大な事実誤認がある。
本件商標は、商標が「白石/温麺/茶屋」であり、その商品の区分と指定商品は、「30類、うどんめん、そばめん」である。
しかし、この登録はこれまで特許庁が「白石温麺」や「温麺」について識別力があると認定して何度も登録商標としてきた判断と矛盾するものである。
しかるに、本件商標は、引用商標1ないし6が登録商標として存在している事実を看過すると共に、当該登録商標「白石温麺」や「温麺」は、申立人が永年にわたり継続して盛んに使用してきた事実を看過している。このように本件商標は、事実誤認に基づいて、誤って登録したものである。
申立人としては、このように事実誤認によって、明確な理由なく、「白石温麺」や「温麺」といった約400年の歴史ある宮城県白石地域の地場産業を理由なく否定されるのは、到底承服できない。
特許庁において、もし「温麺」という商標を構成する表意文字が持つ意味から「温かい麺」を品質表示と認定したとすれば、それは意味を誤解したものである。なぜなら「温かい麺」は、「うどん」なのか、「そば」なのか「そうめん」なのかなど麺の種類が特定されていないうえ、温かくなったのか煮たのか焼いたのか茄でたのかその調理法も特定されていないため、その麺類自体の品質を具体的に特定したり、説明したりできるものではない。
そもそも「温麺」は、日本語の辞典にも辞書にもない造語であり、うどん、そうめん、そばめんなどといった麺の種類を示す名称でもない。また調理などの加工により温かくして食する麺類の総称として一般に使用されている用語でもない。
実際にも申立人の商品「温麺」は、掛け紙やパンフレットなどで「夏は冷たく」「冬は温かく」して食するものであることが明記されているように、必ずしも「温かくして食する麺」の意味では使用されていない。伝統的な「温麺」の主なものが「そうめん」であるが、当該「そうめん」は主に夏に冷やして食するのが一般的である。したがって、本件商標の「温麺」について消費者は昔から「温かい麺」といった品質表示とは認識しておらず、宮城県白石地方の特産品である「温麺」(温たたかい思いやりのある麺)を示すと認識されてきた長い歴史的事実がある。
このように「温麺」というのは、宮城県白石地域の特産品として、奥州白石温麺協同組合及びその組合員が製造販売する独特の麺類を示す商標である。
(2)本件商標は、登録商標である引用商標1ないし8との間で商標法第4条第1項第11号について検討していない審理不尽がある。
本件商標の出願情報を特許庁のデータで調査すると審査経過において、登録商標である引用商標1ないし8との間で、商標法第4条第1項第11号について検討した形跡がない。
本件商標の構成部分である「白石温麺」や「温麺」が識別力のある登録商標であること(要部であること)を踏まえて、引用商標との間の類否を検討すると、次のように判断される。
本件商標は、その構成要素の中に他人の登録商標であり要部である「白石温麺」又は「温麺」を含んでいる以上、全体観察だけでなくこの部分は分離観察をすべきである。その結果、両者は要部である「白石温麺」又は「温麺」の部分が共通しているので称呼及び外観において類似している商標と判断される。しかも、両者の指定商品についても「麺類」と共通しているのでこの点でも類似していること明らかである。
よって、本件商標は、引用商標1ないし8との関係で商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)本件商標は、引用商標1ないし8に係る「白石温麺」「温麺」が、約400年の歴史がある宮城県白石地域の伝統名産品の商標であり、昭和27年頃から奥州白石温麺協同組合が独占排他的に使用している周知商標であることを看過している。
ア「温麺」「白石温麺」の由来
「温麺」「うーめん」は、元禄14年(1701年)頃、奥州白石地域で加茂久左衛門により開発された乾麺であるとされている。この奥州白石地域で開発された乾麺は、商標「温麺」「白石温麺」とされ、主として「うーめん」「しろいしうーめん」と称呼されて、約400年間にわたって同地域で継続して盛んに製造販売されているものである。このため、「温麺」「白石温麺」は、宮城県白石地方の伝統名産品として需要者の間で広く知られたものになっている。以下、その歴史を概説する。
昭和31年9月に行われた温麺創始350年記念式典の記念出版として発行された白石市史2.「奥州白石温麺史」(甲16)によると、「温麺」のはじまりは天正年間に奥州白石地域に住んでいた鈴木味右衛門なる者が油を使わない新しい乾麺の製造方法を開発して胃を病む父にすすめ、病を治すことができた。この話が当該地域を治めていた藩主片倉小十郎に伝わり、献上したところ、親孝行の温かい思いやりを賞でられて「温麺」と名付けられたと伝えられている。
その後、鈴木味右衛門はより簡単な乾麺の製造法を開発して商品化し、これに「饂麺」「温麺」なる商標を付して製造販売するようになった。それ以来鈴木家は、大正時代にいたるまで15代に渡って鈴木味右衛門を名乗りこの「饂麺」・「温麺」を製造販売続けてきた。この間、藩主片倉小十郎公や仙台藩の伊達政宗に献上したり、国際博覧会に数回出陳して賞を受けたり、明治25年には宮内省に献じたことなどが史実として記録されている。これが、現在の宮城県白石地方の名産品「白石温麺」「温麺」「うーめん」となっている。
なお、創業当時使用されていた「温麺」なる商標は、当初「うんめん」「うむめん」と呼ばれていたが、その後次第に「うーめん」と称呼されるようになったものである。
明治時代の後期になり、温麺が白石地域の地場産業となり、多くの業者が温麺を製造販売するようになるとともに、近代化するに伴い、「温麺」や「白石温麺」を当組合の商標として使用されるようになった。
イ 組合商標として使用する体制の確立
明治の終わり頃には、温麺製造業者が多数出現してきたため、白石温麺同業組合(申合せ組合)が設立され、大正6年には「奥州白石温麺同業組合」となり、その後法制の改正に伴い昭和14年には「奥州白石製麺工業組合」となり、更に戦後の法律により昭和27年4月26日に奥州白石温麺協同組合が設立されて現在に至っている。その間これらの組合員は、一貫して、当該「温麺」「白石温麺」を商標として使用してきた。その結果、「温麺」「白石温麺」は、宮城県白石地方の名産品とされるようになった。
上記のように、「温麺」「白石温麺」と称される商品を製造販売する製麺業者が集まって組合を設立し、原料の共同入手や製造法の共同研究や共同販売をする会社の設立などをするようになって以来、当該組合の組合員だけが「温麺」「白石温麺」なる商標を使用しているのが実態である。特に昭和27年に奥州白石温麺協同組合が設立されて以来、「温麺」「白石温麺」などについて商標登録をするように努めてきた。そのため、組合員以外の第三者が同一又は類似の商標を無断使用するのを法的に禁止できるように商標保護体制を構築し、組合の共同ブランド化を図ってきている。
ウ 申立人の登録商標としての保護
商標「温麺」「白石温麺」の法的保護については、組合が当初団体商標を取得していたが、団体商標制度の廃止に伴い、商標登録をして組合員に使用許諾をするようになった。そのために組合員の共通商標である「温麺」「白石温麺」については組合名義で商標登録するようになり、権利化した登録商標については組合が中心になって商標管理をするようにした。その一例として次のようなものがある。
当初は、共通使用していたレッテル態様の商標「白(マル)温麺(図形)」は登録777099号(商公昭42-13446号)として、また商標「白(マル)白石温麺」は登録1030485号「白(マル)白石温麺」(商公昭55-21941号)として登録商標を所有していたが、これらは、レッテルのデザインが変更されたことにより権利消滅させた。
現在有効に存続している「温麺」を構成要素とする登録商標として、登録1806430号「白(マル)温麺」(甲7)及び商標登録第5516426号「温麺/うーめん」(甲6)とを所有している。
また、現在有効に存続している「白石温麺」を構成要素とする登録商標として、登録1806432号「白(マル)白石温麺」(甲4)及び登録5516427号「白石温麺/しろいしうーめん」(甲3)を所有している。
上記のように申立人は、昭和42年頃から「温麺」「白石温麺」に関する商標を常に複数登録し、維持している。したがってこれらの商標権の効力として、もし第三者が「温麺」や「白石温麺」と同一又は類似の商標を無断使用した場合には権利侵害とみなされることになる。つまり、他人は商標「温麺」「白石温麺」と同一又は類似の商標を長い間無断で使用することができない環境になっていた。
しかも、申立人は、これら商標登録について登録商標管理規約(甲17)を定めて商標管理をしており、他人が当該商標を無断使用した場合には、その都度、差止請求をしてきた(甲18ないし甲20)。また、マスコミが一般名称的な使用法をした場合には、稀釈化行為であるとして通告書を送ってそのような稀釈化行為をやめさせる(甲21)ようにしてきている。
更に、当該組合員以外にローソンやセブンイレブンなど大手のコンビニ関連会社で登録商標「温麺」や「白石温麺」の使用を希望する場合には、原料である温麺の提供を条件にして、登録商標使用許諾契約書を取り交わして商標使用を許諾している(甲22ないし甲24)。
そのため、これまで実態として本願商標を第三者が無断で使用している状態には無いといえる。
エ 引用商標1ないし6の使用実態を示す証拠
以上のように申立人が登録商標「白石温麺」及び「温麺」について約半世紀にわたり商標権を常に所有して現在に至るまで当該登録商標「白石温麺」を実質的に独占排他的に継続して使用しているうえ、他人が無断で使用しないように商標管理をしてその自他商品識別力を維持する努力をしてきている(甲25ないし甲68)。
オ 引用商標1ないし6「白石温麺」及び「温麺」が周知商標であることを示す証拠
申立人が登録商標「白石温麺」及び「温麺」を、昭和27年4月26日より長年にわたりうどんめん、そばめん、中華そばめん、そうめん等に継続して盛んに使用してきた結果、需要者の間で広く知られた状態になっており、需要者が申立人の業務にかかる商品を表示するものであることを認識するものになっている(甲116ないし甲144)。
(4)本件商標は、登録商標である引用商標1ないし6との間で商標法第4条第1項第10号及び同第15号について検討していない審理不尽がある。
引用商標1ないし6の登録商標「白石温麺」や「温麺」は、前述してきたように約400年の歴史がある宮城県白石地域の特産品であり、少なくとも昭和27年に同地域の製麺業者が集まって奥州白石温麺協同組合が設立されて以来、当該奥州白石温麺協同組合とその組合員のみが継続して製造販売してきた麺類の商標として永年盛んに使用してきた結果、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標である。このことは引用商標1も引用商標4も商標法第3条第2項が適用されているところから特許庁も認めてきたことである(甲3及び甲6)。
したがって、本件商標は、他人(申立人)の周知な登録商標「白石温麺」「温麺」を含む商標である。このように他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている登録商標を含むため、本件商標を使用した場合、周知な登録商標「白石温麺」「温麺」とは需要者の間で混同を生ずるおそれのある商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 「白石温麺」及び「温麺」の文字の周知性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおり判断できる。
(1)「白石温麺」及び「温麺」とこれらの文字に関する商標について
元禄14年(1701年)頃、奥州白石地域で加茂久左衛門により開発され、該地域で開発された乾麺は、伝統名産品として「温麺」「白石温麺」とされ、主として「うーめん」「しろいしうーめん」と称呼されて、約400年間にわたって同地域で継続して製造販売されているものであり、この間、藩主片倉小十郎公や仙台藩の伊達政宗に献上したり、国際博覧会に数回出陳して賞を受けたり、明治25年には宮内省に献じたことなどが史実として記録されていることが伺える。
そして、商標「温麺」及び「白石温麺」の法的保護については、組合(申立人)名義で商標登録するようになり、権利化した登録商標については組合が中心になって、商標管理をするようになった。
申立人は、過去には、商標登録777099号等の登録商標を所有しており、昭和42年頃から「温麺」及び「白石温麺」に関する商標を常に複数登録し、維持している。
なお、申立人は、これら商標登録について登録商標管理規約を定めて商標管理をし、組合員等と登録商標使用許諾契約を取り交わして商標を使用しているところ、他人が当該商標を無断使用した場合には、その都度、差止請求を行い、一般名称的な使用法をした場合には、稀釈化行為であるとして通告書を送っている(甲16ないし甲24)。
(2)引用商標が周知商標であるとして提出した証拠等について
ア 「証明書」について
申立人は、「証明願」の文字を表題とする書面において、登録商標を昭和27年4月26日より長年にわたり、うどんめん、そばめん、中華そばめん、そうめん等に継続して盛んに使用してきた結果、需要者の間で広く知られた状態になっており、需要者が申立人の業務にかかる商品を表示するものであることを認識するものになっていることを、第三者が証明する旨を内容とした「証明書」を提出している(甲116ないし甲144)。
しかしながら、提出された証拠は、いずれも、申立人作成に係る同一内容の「証明願」の下部に、「上記の各事項は、事実に相違ないことを証明いたします。」と印刷されたもので、署名者の記名押印がされるという方式及び内容のものであって、当該署名者らが如何なる具体的な資料のもとで、上記証明内容について「相違ない」ことを証することができたのか定かではないといわざるを得ないから、その内容についての証明力は必ずしも高いものとみることはできず、かかる証明をもって、「白石温麺」及び「温麺」の文字が、申立人の商品を表示する商標として広く認識されるに至ったことを首肯し得るとすることはできない。
イ 甲第153号証ないし甲第174号証について
申立人は、近年における各組合員による商標の使用事実として、ウェブページ、パンフレット、取引書類等の種々の書面を甲第153号証ないし甲第174号証として提出している。
しかしながら、提出された証拠よっては、商標を使用している事実はあるとしても、パンフレット、カタログ等については、その頒布された部数、頒布地域及び頒布の方法等が不明であり、かつ、期間及び規模も明らかにされていない。
また、売上伝票及び納品書等については、取引された事実は確認できるものの、その数量は、例えば、多くても、株式会社松田製粉の2014年8月12日付け伝票(甲173)において、全体で8400個であり、その他のものでは、数個にすぎないものであり、決して、多数、取引されていたとはいえないものである。
そして、甲第154号証については、経済産業省の補助事業に、「白石温麺」が、「ふるさと名物」として認定された事実であるものの、その事実が、本願商標が、需要者の間で広く知られていることの、直接的な証拠とまではいえないものである。
ウ 甲第175号証ないし第184号証について
甲第175号証ないし第184号証は、「白石温麺」が紹介された雑誌及び新聞情報である。
しかしながら、提出された雑誌は、発行部数は不明であるし、全部で6誌程であり、掲載回数も一回のみであり、購読者に注目され記憶にとどめるほどであるとはいいがたいものである。
また、新聞への掲載事実も、4回程で、紙面の一部分に掲載されているものであって、決して、購読者に注目され、記憶にとどめるほどであったとはいい難いものである。
エ 申立人による白石温麺の生産状況について
申立人は、甲第185号証によって、奥州白石温麺組合(組合員)が過去9年間にわたって白石温麺を生産・販売した状況(出荷量、出荷額、出荷地域割合、出荷先割合)について、近年の出荷量は、約2000トンで、出荷額が7億円?8億円であり、県内だけでなく、東北地方、関東地方、その他に出荷されている旨を主張している。
しかしながら、職権による調査によれば、製麺業界全体では、2013年度(平成25年度)の乾麺類生産量は、1?9月期累計で15万9864トンであり(2014年(平成26年)1月10日付け「日本食糧新聞」12頁)、上記出荷量は、その1パーセント程度と極めて少ないものであるから、上記事実によっては、本願商標が、需要者の間で広く認識されているということはできない。
オ その他
申立人は、大手のコンビニ関連会社と、登録商標使用許諾契約書を取り交わして商標使用を許諾しているとして、甲第22号証ないし甲第24号証を提出している。
また、白石市は、「白石温麺うーめん」の普及促進と地域経済の発展を目指し、平成26年3月に、「奥州白石温麺うーめん振興条例」を制定している(甲152)。
しかしながら、商標の使用許諾を行ったとしても、本願商標を付した商品の販売地域、販売数量や、広告宣伝の方法、量等が不明であり、また、条例が定められているとしても、そのことのみをもっては、需要者の間で広く認識されるに至ったということはできないものである。
(3)小括
以上のことから、提出された証拠によっては、申立人に係る商標「白石温麺」及び「温麺」が、宮城県白石市の特産品として、一定程度の消費者に知られているとしても、一般の消費者に全国的に知られているとは認められないことはもとより、東北地方においても広く知られているとは認められないから、申立人の商標「白石温麺」及び「温麺」が、需要者の間に広く認識されるに至ったものということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、別掲のとおり、手書き風の二重線で表された矩形の中に、縦書きした「白石」、「温麺」及び「茶屋」の文字を、右上方から、左下方へ、一文字ずつ下がるように配し、その矩形の下方に、建物を表した図形を配した構成からなるところ、上段の矩形部分と下段の建物図形とを、常に一体のものとして、看取、把握されるとはいい難く、それぞれが分離し、自他商品及び役務の識別標識として機能し得るものである。
そして、上段部分においては、一つの矩形内に配された文字が、同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体に表されており、該文字に相応して生じる「シロイシオンメンチャヤ」の称呼も特別冗長でもなく、無理なく一連に称呼されるものである。
また、その構成中の「白石」の文字は、「宮城県南西部、白石盆地の南部を占める市。」の意味を、「茶屋」の文字は、「客に飲食・遊興させることを業とする家。」等の意味を有する語(いずれも株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)であって、「温麺」の文字は、それぞれの漢字の意味合いから「温かい麺」ほどの意味を容易に想起し得るものである(以下「白石」及び「温麺」の文字について同様。)。
そして、下段の建物図形とも相まって、本件商標からは、「白石市にある温かい麺を提供する茶屋」程の意味合いを想起させるというのが相当である。
さらに、本件商標は、たとえ、その構成中の「白石」及び「温麺」の文字が、申立人の使用する「白石温麺」及び「温麺」と同じ文字であるとしても、かかる本件商標の構成において、該文字部分が申立人の商標を表示したものとして直ちに認識されることはなく、むしろ、「白石」、「温麺」及び「茶屋」の各構成文字全体をもって、一体不可分の造語を表したものとして認識し、把握されるとみるのが相当である。
加えて、本件商標は、その構成中「白石」及び「温麺」の文字部分が、「白石温麺」又は「温麺」として認識され、取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足る証拠の提出もない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「シロイシオンメンチャヤ」の称呼のみが生じ、「白石市にある温かい麺を提供する茶屋」の観念を生じるものというのが相当である。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、「白石温麺」の文字を太字で縦書きし、その右側に振り仮名を付すように、小さく「しろいしうーめん」の平仮名を縦書きしてなるところ、該平仮名部分は、「白石温麺」の読みを特定したものと無理なく理解できるものである。
そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して、「シロイシウーメン」の称呼を生じ、「白石市の温かい麺」程の観念を生じるものというのが相当である。
イ 引用商標2は、黒塗り円図形の中に白抜きで円輪郭と「白」の文字を太字で表し、その下部に「白石温麺」の文字を太字で縦書きした構成よりなるところ、上段の円図形と下段の文字部分は、常に一体のものとして、看取、把握されるとはいい難く、それぞれが分離し、自他商品の識別標識として機能し得るものであるから、全体から生じる「マルシロシロイシオンメン」の称呼のほか、それぞれの図形及び文字部分に相応して、「マルシロ」及び「シロイシオンメン」の称呼をも生じ、「白石市の温かい麺」程の観念を生じるものというのが相当である。
ウ 引用商標3は、「白石温麺」の文字を太字で縦書きしてなるところ、該文字に相応して、「シロイシオンメン」の称呼を生じ、「白石市の温かい麺」程の観念を生じるものというのが相当である。
エ 引用商標4は、「温麺」の文字を筆書き風の太字で横書きし、その下部に振り仮名を付すように、小さく「うーめん」の平仮名を横書きしてなるところ、該平仮名部分は、「温麺」の読みを特定したものと無理なく理解できるものである。
そうすると、引用商標4は、その構成文字に相応して、「ウーメン」の称呼を生じ、「温かい麺」程の観念を生じるものというのが相当である。
オ 引用商標5は、円輪郭内に「白」の文字を表し、その下部に「温麺」(「麺」の文字は旧字体で表されている。)の文字を縦書きした構成よりなるところ、上段の円図形と下段の文字部分は、常に一体のものとして、看取、把握されるとはいい難く、それぞれが分離し、自他商品の識別標識として機能し得るものであるから、全体から生じる「マルシロオンメン」のほかに、それぞれの図形及び文字部分に相応して、「マルシロ」及び「オンメン」の称呼をも生じ、「温かい麺」程の観念を生じるものというのが相当である。
カ 引用商標6は、「温麺」の文字を筆書き風の太字で横書きしてなるところ、該文字に相応して、「オンメン」の称呼が生じ、「温かい麺」程の観念を生じるものというのが相当である。
キ 引用商標7は、「白石うーめん味処」の文字を横書きしてなるところ、該文字に相応して、「シロイシウーメンアジドコロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
ク 引用商標8は、「饂麺」の文字を標準文字により表してなるところ、これは、「汁で煮たうどん」(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)の意味を有するものであるから、該文字に相応して、「ウンメン」の称呼を生じ、「汁で煮たうどん」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較するに、外観においては、両商標は、その構成において、明らかに区別し得る差異を有するものである。
そして、称呼においては、本件商標から生じる「シロイシオンメンチャヤ」の称呼と、引用商標から生じる、「シロイシウーメン」、「マルシロ」、「マルシロシロイシオンメン」、「シロイシオンメン」、「ウーメン」、「マルシロオンメン」、「オンメン」、「シロイシウーメンアジドコロ」及び「ウンメン」の称呼とは、その構成音、音数などが明らかに相違するものであるから、両者は、明確に聴別されるものである。
さらに、観念においては、本件商標が「白石市にある温かい麺を提供する茶屋」の観念を生じるのに対し、引用商標1ないし6及び8は、それぞれ「白石市の温かい麺」、「温かい麺」又は「汁で煮たうどん」の観念を生じるから、両商標は、観念上、別異のものというべきである。
また、引用商標7からは、特定の観念が生じないから、これと本件商標とを、観念上比較することができず、両商標は、観念において類似するということができない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、類似するところはないものであるから、これらを総合勘案すれば、本件商標と引用商標を同一又は類似の商品及び役務に使用したとしても、両商標は、商品及び役務の出所について誤認混同を生ずるおそれのない、互いに非類似の商標というのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
前記1のとおり、申立人に係る「白石温麺」及び「温麺」が、宮城県白石市の特産品として、一定程度の消費者に知られているとしても、一般の消費者に全国的に知られているとは認められないことはもとより、東北地方においても広く知られているとは認められないから、需要者の間に広く認識されるに至ったものということはできないものであって、さらに、前記2のとおり、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念において、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから、他人の業務と混同を生じるおそれのない商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
4 申立人の主張について
申立人は、引用商標1及び引用商標4は、商標法第3条2項が適用されて登録されているものであるから、本件商標は、他人の周知な登録商標を含む商標であり、本件商標を使用した場合、申立人の登録商標「白石温麺」及び「温麺」とは、需要者の間で混同を生ずるおそれのある商標である旨を主張している。
しかしながら、引用商標1及び4が、商標第3条第2項が適用されて登録されているとしても、提出された証拠によっては、引用商標が使用された結果、全国的にみて、需要者の間に広く認識されるに至っているとは認めがたいものである。
そして、本件商標から、その構成上、「白石温麺」及び「温麺」を分離抽出する理由はないものであるから、該文字部分と他の商標との類否判断をすることは許されないものというべきである。
そうとすると、本件商標と引用商標とが類似し、又は出所の混同を生じるおそれがあるとは、認められない。
よって、申立人の主張は、採用できない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
本件商標(登録第5783739号商標)


異議決定日 2016-06-24 
出願番号 商願2015-45179(T2015-45179) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W3043)
T 1 651・ 262- Y (W3043)
T 1 651・ 263- Y (W3043)
T 1 651・ 255- Y (W3043)
T 1 651・ 271- Y (W3043)
最終処分 維持 
前審関与審査官 平澤 芳行 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 大井手 正雄
山田 正樹
登録日 2015-08-07 
登録番号 商標登録第5783739号(T5783739) 
権利者 笹島 ちさと
商標の称呼 シライシウーメンジャヤ、シライシオンメンジャヤ、シライシウーメン、シライシオンメン、ウーメンジャヤ、オンメンジャヤ、ウーメン、オンメン、チャヤ 
代理人 大津 洋夫 
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