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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W394042
審判 全部申立て  登録を維持 W394042
審判 全部申立て  登録を維持 W394042
審判 全部申立て  登録を維持 W394042
審判 全部申立て  登録を維持 W394042
管理番号 1317241 
異議申立番号 異議2015-900372 
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-10 
確定日 2016-06-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第5791831号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5791831号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5791831号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年2月3日に登録出願され,第39類「電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング,熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング,再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」,第40類「再生可能エネルギーによる発電・発熱」及び第42類「再生可能エネルギーによる発電・発熱・管理システムのためのコンピュータプログラムの設計・作成又は保守,再生可能エネルギーを用いた発電・発熱装置を含む設備の設計,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,再生可能エネルギー政策・技術に関する調査及び研究,電気・熱に関する試験又は研究,小規模・分散型電力及び熱の売買用・監視用ウェブサイトの開発,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」を指定役務として,同年8月26日に登録査定,同年9月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する商標は,以下の5件であり,審査継続中の商標登録出願2015-14075を除いて,いずれも登録商標として現に有効に存続しているものである(以下,引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第3104821号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成4年6月11日に登録出願,第39類「電気の供給」を指定役務として,同7年12月26日に設定登録され,その後,同18年4月11日及び同27年8月18日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
2 登録第3104822号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,平成4年6月11日に登録出願,第39類「電気の供給」を指定役務として,同7年12月26日に設定登録され,その後,同18年4月11日及び同27年8月18日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
3 登録第4972773号商標(以下「引用商標3」という。)は,「エネルギア」の片仮名を上段に「EnerGia」の欧文字(「G」の文字は「n」以降の文字と同じ大きさで表されている。以下,同じ。)を下段に,それぞれ横書きしてなり,平成17年10月31日に登録出願,第42類「気象情報の提供,建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,社会保険に関する手続の代理,計測器の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,理化学機械器具の貸与,製図用具の貸与」を指定役務として,同18年7月28日に設定登録され,その後,同28年4月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
4 登録第5076473号商標(以下「引用商標4」という。)は,引用商標3と同一の構成であって,「エネルギア」の片仮名を上段に「EnerGia」の欧文字(「G」の文字は「n」以降の文字と同じ大きさで表されている。以下,同じ。)を下段に,それぞれ横書きしてなり,平成18年5月16日に登録出願,第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越の代行,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,ガスの供給,水の供給,熱の供給,倉庫の提供,駐車場の提供,有料道路の提供,係留施設の提供,飛行場の提供,駐車場の管理,荷役機械器具の貸与,自動車の貸与,船舶の貸与,車いすの貸与,自転車の貸与,航空機の貸与,機械式駐車装置の貸与,包装用機械器具の貸与,金庫の貸与,家庭用冷凍冷蔵庫の貸与,家庭用冷凍庫の貸与,冷凍機械器具の貸与,ガソリンステーション用装置(自動車の修理又は整備用のものを除く。)の貸与」を指定役務として,同19年9月14日に設定登録されたものである。
5 商標登録出願2015-14075(以下「引用商標5」という。)は,「エナジア」の片仮名を標準文字で表してなり,平成27年2月17日に登録出願され,第35類「広告業,チラシの企画・作成,電気製品に関する商品の展示会の企画・運営及び開催,商品の販売促進又は役務の提供促進のための企画若しくは実行の代理に関する情報の提供,トレーディングスタンプの発行,家庭用電化製品の販売に関する情報の提供,商品の販売に関する情報の提供,生産設備の改修・改善に関する経営上の助言及び指導,経営の診断又は経営に関する助言,会員制の組織による商品の販売に関する情報の提供,財務書類の作成又は監査若しくは証明に関する情報の提供,職業のあっせん,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,広告用具の貸与」,第37類「電気工事,家庭用電気温水器の設置工事,住宅建設工事,リフォーム工事,システムキッチン設置工事,台所・浴室等のリフォーム工事,浴槽及び浴室ユニットの設置工事,建設工事,住宅のリフォーム工事の仲介,電気工事に関するコンサルティング,建築工事に関する助言,ボイラー・冷暖房・配電設備等の建築物附帯設備の運転及び点検,その他の建築設備の運転・点検・整備,火災報知機の修理又は保守,業務用電気温水器の修理又は保守,暖冷房装置の修理又は保守,ボイラー修理又は保守,冷凍機械器具の修理又は保守,電気通信機械器具(「電話機械器具・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機」を除く。)の修理又は保守,測定機械器具の修理又は保守」及び第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,ガスの供給,ガスの供給に関するコンサルティング,ガスの供給に関する情報の提供,電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング,電気の供給に関する情報の提供,水の供給,水の供給に関するコンサルティング,水の供給に関する情報の提供,熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング,熱の供給に関する情報の提供,移動式仮設ステージの付いた自動車の貸与,厨房車の貸与,その他の自動車の貸与」を指定役務として,現在,審査継続中のものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同法第8条第1項に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標1ないし4の商標の類否について
ア 商標と取引実情の検討
(ア)本件商標の外観,称呼及び観念の検討
本件商標は,左に各色5個の四角形を弧状にずらし重ねた図形を配し,右に「エナジア」の片仮名を配した構成からなるところ,左の図形と右の文字に,外形的にみて,全体が不可分一体となって1個の統一的な外観,称呼や観念を形成しているとは特に認められないことから,常に一体として観察されなければならないものではなく,図形と文字の構成部分を分離して観察することは何ら妨げられないところである(東京地方裁判所平成19年(ワ)第6214号同年12月21日民事第47部判決)。
そして,本件商標は,その要部の「エナジア」の片仮名に相応して「エナジア」の称呼を生じ,この片仮名は,一般的な辞書等に掲載されていない特定の意味合いを有しない造語よりなるものである。
(イ)本件商標の取引実情
本件商標の商標権者は,平成25年8月12日に商号を「株式会社グリーン・ストラテジー&アソシエイ」として設立された後,平成26年7月4日に商号を「株式会社エナジア」に変更したところである(甲14)。
そして,本件商標の商標権者は,平成27年1月13日出願の「エナジア」の片仮名を標準文字にて書してなる商標(以下「参考商標」という。商願2015-5589,登録第5790605号)の出願日と同日受領の「早期審査に関する事情説明書」において,「(3)商標の使用時期 平成26年11月から使用中」,「(5)商標の使用の事実を示す書類 株式会社エナジアの会社案内。」と述べ,添付の会社案内において,5個の四角形を弧状にずらし重ねた図形の右側に,上段に大きく「energia」の欧文字を配し,下段の右下に小さく「エナジア」の片仮名文字を配した商標をもって,参考商標の使用の事実を証したところである(甲15)。
もっとも,本件商標の商標権者は,平成27年4月15日提出の判定2015-600012号事件(以下「本件判定」という。)の判定請求書において主張したように,「欧文字『energia』に代え会社名の略称である片仮名『エナジア』をあてたイ号標章に変更し,平成27年1月26日から使用を開始し,現在に至っている。」と述べ(甲13),同判定請求書に甲第3号証「株式会社エナジアのホームページ写し」を添付したところである(甲16)。
ところが,この判定請求書添付甲第3号証では,イ号標章が表示されている他,左上のホームページアドレスとして「http://energia.xyz/」と表示され,住所及び連絡先のEメールアドレスとして「info@energia.xyz」と表示されているところである(甲16)。
また,申立人の調べによる平成27年12月21日時点の本件商標の商標権者のホームページ「http://energia-jp.com/」では,本件商標が表示されている他,住所及び連絡先のEメールアドレスとして「info@energia-jp.com」と表示され,また,著作権の表示として「2015 ENERGIA Inc. All Rights Reserved.」と表示されており(甲17),イ号標章に変更した後も,引き続き「energia」の欧文字を継続して使用しているところである。
(ウ)引用商標1及び2の外観の検討
引用商標1は,左に欧文字「E」を捻りながら延伸させ延伸の中間部に円弧状の輪を配した図形を配し,右に「EnerGia」の欧文字を配した構成からなり,また,引用商標2は,右上から左下に欧文字「E」を捻りながら延伸させ延伸の中間部に円弧状の輪を配した図形を配し,左上に「EnerGia」の欧文字を配した構成からなるところ,全体が不可分一体となって1個の統一的な外観,称呼や観念を形成しているとは特に認められないことから,常に一体として観察されなければならないものではなく,図形と文字の構成部分を分離して観察することは何ら妨げられないところである。
(エ)引用商標3及び4の外観の検討
引用商標3及び4は,上段に「エネルギア」の片仮名を配し,下段に「EnerGia」の欧文字を配した構成からなるところである。
そして,商標法第4条第1項第11号の審査基準によれば,引用商標3及び4の上段の片仮名につき振り仮名を付したものと解した場合であっても,下段の「EnerGia」の欧文字より生ずる他の自然的称呼を考慮して類否判断すべきことは明らかである。
(オ)引用商標1ないし4の称呼の検討
a 辞書等の記載
引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字は,一般的な辞書等に掲載されていない特定の意味合いを有しない造語と考えられることから,この欧文字よりいかなる自然的称呼を生じるかは明らかでないところである。
この点,「energia」の欧文字につき,スペイン語,ポルトガル語,イタリア語,ポーランド語において「エネルギー」の意味合いを有する語であるとしても(甲13),我が国の需要者,取引者が,これら馴染みのない言語を理解し,これら馴染みのない言語に応じた発音で称呼することは極めて稀なことである。
むしろ,引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字とつづりを異にするも,「エネルギー」の意味合いを有するものとして我が国における需要者,取引者に親しまれている外来語「energie」については,これを「エネルギー」と称呼しており(甲18),「エネルギー」の意味合いを有するものとして我が国における需要者,取引者に最も親しまれている英語においては「energy」となって,これを「エナジー」と称呼しているところである(甲19)。
したがって,引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字は「energia」のつづりであるが,この欧文字につき,我が国の需要者,取引者が,特定の意味合いを有しない造語と理解し,この欧文字の称呼に際しては,つづりが異なるも近似する外来語「energie」(エネルギー)になぞらえて,ドイツ語風に「エネルギア」と自然に称呼する他は,つづりが異なるも近似する英語「energy」(エナジー)になぞらえて,英語風に「エナジア」と自然に称呼する場合も決して少なくないところである。
むしろ,英語「energy」は,初等中等教育で習う平易な英語であって(甲19),我が国における英語の普及度を考慮すると,引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字を英語「energy」になぞらえて英語風に「エナジア」と自然に称呼する需要者,取引者は多いところである。
そして,引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字の如く,欧文字からなる商標であって,ドイツ語風や英語風など,複数の自然的称呼を生じる場合,各々の称呼が生ずる商標と類似すると解釈すべきことは,「TITAN」の欧文字から生ずる称呼につき,「わが国において『チタン』と発音されることもあるが『タイタン』と読まれることがないとは到底云えず,一般にしばしば『タイタン』と発音されていることが認められるので,本願商標は,『タイタン』の称呼をも生ずると認めるのが相当である。」と判じた東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)第17号 同年8月29日判決からも明らかである。
b 商標登録の例
欧文字「energia」のつづりに読み仮名として「エナジア」の片仮名を併記して商標出願し商標登録を受けている甲第20号証ないし甲第24号証の商標採択例もまた,「energia」の欧文字のつづりを「エナジア」の自然的称呼をもって使用されている例であって,引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字を「エナジア」と自然に称呼する取引実情を推認し得るものである。
c 商標使用の例
欧文字「energia」のつづりに読み仮名として「エナジア」の片仮名を併記して使用している甲第25号証及び甲第26号証の一般使用例もまた,「energia」の欧文字のつづりを「エナジア」の自然的称呼をもって使用されている例であって,引用商標1ないし4の「EnerGia」の欧文字を「エナジア」と自然に称呼する取引実情を推認し得るものである。
d 本件商標の商標権者の例
欧文字「energia」のつづりより,「エナジア」の自然的称呼も生じる証左は,前述の如く,まず本件商標の商標権者が,上段に「energia」の欧文字を配し,下段の右下に小さく読み仮名の「エナジア」の片仮名を配した商標をもって本件商標の使用の事実を証し,またホームページにおいてホームページアドレス等に「energia」の欧文字,英文商号に「ENERGIA」の欧文字を本件商標と一緒に使用している以上,本件商標の商標権者でさえこれを否定できないところである(甲16,甲17)。
イ 商標の類否の検討
(ア)本件商標
本件商標は,図形と文字を常に一体として観察されなければならないものではなく,図形と文字の構成部分を分離し,文字部分を要部として抽出して商標の類否判断ができることは明らかであって,その「エナジア」の片仮名に相応して「エナジア」の称呼を生じ,この片仮名は,一般的な辞書等に掲載されていない特定の意味合いを有しない造語よりなるものである。
そして,本件商標の商標権者が,ホームページにおいてホームページアドレス等に「energia」の欧文字,英文商号に「ENERGIA」の欧文字を本件商標と一緒に使用している取引の実情を考慮すると,需要者,取引者は,本件商標の他,これと一緒に表示されるホームページアドレス,Eメールアドレス,さらには英文商号等をも含めて事業主体を想起する以上,本件商標に接する需要者,取引者は「エナジア」の片仮名より「energia」の欧文字を推認し理解すると解するのが商取引の実情に照らして相当である。
(イ)引用商標1ないし4
引用商標1及び2は,図形と文字を常に一体として観察されなければならないものではなく,図形と文字の構成部分を分離し,文字部分を要部として抽出して商標の類否判断ができることは明らかである。
また,引用商標3及び4は,振り仮名を付した商標と解した場合であっても,下段の文字より生ずる他の自然的称呼を考慮して商標の類否判断ができることは明らかである。
そして,引用商標1ないし4は,その「EnerGia」の欧文字部分より,「エネルギア」の称呼の他に「エナジア」の自然的称呼を生じ,この文字は,一般的な辞書等に掲載されていない特定の意味合いを有しない造語よりなるものである。
(ウ)商標の類否
本件商標と引用商標1ないし4は,その要部の文字部分において,外観において差異を有し,観念において比較する術はないが,引用商標1ないし4より「エネルギア」の称呼の他に「エナジア」の自然的称呼を生じ,本件商標より生ずる「エナジア」の称呼を共通にする以上,商取引上最も重要な役割を果たす称呼が共通し,全体として類似する商標であることは明らかである。
そして,引用商標1ないし4の如く,「エネルギア」の称呼の他に「エナジア」の自然的称呼を生じる場合,他の称呼よりすれば他人の商標と類似する場合,その他人の商標と類似すると解釈すべきことは,「ある商標につき二様の称呼及び観念が生じ得るにおいては商標の一の称呼及び観念上よりすれば,他人の商標と同一又は類似であるといい得ない場合であっても,他の称呼及び観念上よりすれば他人の商標と類似するものであるときは,これを類似商標として扱わなければならないことは勿論である。」と判じた東京高等裁判所昭和27年(行ナ)第29号昭和28年3月24日判決からも是認され,また,「一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一または類似であるとはいえないとしても,他の称呼,観念が他人の商標のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解するのが相当である。」と判じた最高裁判所昭和37年(オ)第953号昭和38年12月5日第一小法廷判決からも明らかである。
さらに,本件判定で述べられた如く,「本件商標(引用商標1)からは,その指定役務『電力の供給』との関係において,『中国電力株式会社の提供する電力の供給』の観念を生じるのに対し,イ号標章からは,観念が生じないものであるから,観念上,比較することができず,類似するとはいえないものである。」(甲13)と根拠付けるが如きは,周知著名性を獲得した商標は,必ずその事業主体を想起する結果,他の商標との関係で必ず観念上非類似と扱われることとなり,このような解釈は,周知著名商標にあって,具体的取引事情を背景として考え,当然出所の混同を生じる範囲,類似範囲を広く解釈すべきとする最高裁判所昭和33年(オ)第766号昭和35年10月4日第三小法廷判決にも反するものである。
そして,本件商標と引用商標1ないし4の各文字は,特定の意味合いを有しない造語よりなるものであって観念において比較する術はないが,本件判定で述べられた如く,後述の2(1)「引用商標1ないし4の使用と取引実情について」で述べるが如き,具体的取引事情を背景として考え,「EnerGia」の欧文字より「中国電力株式会社の提供する電力の供給」との観念を生じるのであれば,前述したとおり,ホームページにおいてホームページアドレス等の「energia」の欧文字と一緒に本件商標を使用している本件商標の具体的取引事情も背景として併せて考え,本件商標を「中国電力株式会社の提供する電力の供給」と密接な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信する以上,本件商標と引用商標1ないし4が観念上相紛らわしい商標であることは明らかである。
(2)本件商標と引用商標1ないし4の役務の類否について
ア 指定役務の検討
本件商標の指定役務と類似する引用商標1ないし4の指定役務は,以下のとおりである(なお,引用商標5の指定役務については後述3(5)において述べる。)。
第39類「電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング」は,引用商標1,2及び5の指定役務と類似する。「熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング,」は,引用商標4及び5の指定役務と類似する。「再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」(補正書提出後)は,引用商標1,2,4及び5の指定役務と類似する。
第40類「再生可能エネルギーによる発電・発熱」(補正書提出後)は,引用商標1,2,4及び5の指定役務と類似する。
第42類「再生可能エネルギーによる発電・発熱・管理システムためのコンピュータプログラムの設計・作成又は保守,再生可能エネルギーを用いた発電・発熱装置を含む設備の設計(補正書提出後),機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,再生可能エネルギー政策・技術に関する調査及び研究,電気・熱に関する試験又は研究,小規模・分散型電力及び熱の売買用・監視用ウェブサイトの開発,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」は,引用商標3の指定役務と類似する。
イ 役務の類否の検討
本件商標と引用商標1ないし4の指定役務は,それぞれ需要者,取引者に同一の営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるばかりか,特に,平成27年6月22日提出の手続補正書により,変更された第39類「再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」及び第40類「再生可能エネルギーによる発電・発熱」の両指定役務は,本件判定の根拠付けにしたがっても,引用商標1及び2の第39類「電気の供給」の指定役務と,また,引用商標4の「熱の供給」の指定役務と類似する役務であることは明らかである。
(3)小括
以上のように,本件商標は,図形と文字で常に一体として観察されなければならない特段の理由はなく,要部の「エナジア」の片仮名に相応して「エナジア」の称呼を生じ,この片仮名は,特定の意味合いを有しない造語よりなるものである。
他方,引用商標1及び2は,図形と文字で常に一体として観察されなければならない特段の理由はなく,要部の「EnerGia」の欧文字に相応して「エネルギア」の他に「エナジア」の自然的称呼を生じ,また,引用商標3及び4は,上段に「エネルギア」の片仮名を配し,この片仮名につき,振り仮名を付したものと解した場合であっても,下段に配した「EnerGia」の欧文字より生ずる他の「エナジア」の自然的称呼を生じ,これら文字は,特定の意味合いを有しない造語よりなるものである。
したがって,本件商標と引用商標1ないし4は,その要部の文字部分において,外観において差異を有するものの観念において比較する術はなく,商取引上最も重要な役割を果たす称呼において,「エナジア」の称呼を共通する以上,全体として類似する商標であることは明らかである。
そして,本件商標の指定役務は,引用商標1ないし4の指定役務と同一又は類似する役務である。
してみれば,本件商標は,平成27年6月22日付け手続補正書提出後の全ての指定役務について,商標法第4条第1項第11号に違反して商標登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標1ないし4の使用と取引実情について
引用商標1ないし4は,申立人により,永年使用されてきた商標であり,引用商標1が平成23年2月25日に防護標章登録を受けていることからも明らかであるが(甲4,甲5),「電気の供給」の役務との関係において,電気の供給区域内のみならず,供給区域外の需要者,取引者一般にも広く知られている商標である。
そして,引用商標1ないし4は,今日に至るまで,申立人のハウスマークとして使用されており(甲28,甲29),しかも,申立人とそのグループ企業が密接な営業上の関係にあることを表示するグループブランドとしても使用され(甲30),さらに,申立人とそのグループ企業の営業は,業種別でも「医療・福祉施設,商業施設・テナントビル,工場,建設業,官公庁,教育施設,商店・自治体」まで及んでおり,目的別でも「環境,省エネ・節電,防災・防犯,建築・資材,電力設備,ビジネスサポート」にまで及んでいるところである(甲31)。
その上,今日では,平成28年の家庭向けの電力小売全面自由化に向け,申立人も西日本全域で「電気の供給」の役務を提供するのみならず(甲32),九州電力株式会社も首都圏で「電気の供給」の役務を提供するなど(甲33),従前の電気の供給区域にとらわれることなく,各電力会社が「電気の供給」の役務を提供するに至っているところである。
(2)グループ企業の一であるとの誤認の検討について
本件商標の商標権者「株式会社エナジア」をインターネット上の検索サイト「Google」にて検索すると(甲34),本件商標の商標権者が検出される他,先頭から5番目に「中国電力」として,a申立人のホームページが検出され,先頭から10番目には,b「株式会社エネルギア・ソリューション・アンド・サービス」のホームページが検出され,さらにその下位の検出では,「PETホームページ」として,c「株式会社パワー・エンジニアリング・アンド・トレーニングサービス」のホームページが検出され,「広島,岡山,山口,島根,鳥取の住宅中国電力グループの・・・」として,d「株式会社工ネルギア不動産」のホームページが検出され,「株式会社エネルギア介護サービス 広島の介護付有料老人・・・」として,e「株式会社エネルギア介護サービス」のホームページが検出され,「会社概要|エネルギアコミュニケーションズ」として,f「株式会社エネルギア・コミュニケーションズ」のホームページが検出されたところである。これらb?fの各社は,いずれも申立人のグループ企業の一である(甲28 第38頁,甲31)。
(3)具体的出所の混同の検討について
引用商標1ないし4が,申立人の役務を表示する商標として,電気の供給区域内のみならず,供給区域外の需要者,取引者一般にも広く知られ,申立人により永年にわたりハウスマークとしてまたグループブランドとして使用されていること,申立人の経営の規模,環境保護活動,社会貢献活動の実績,企業経営の多角化の傾向等をも併せて考慮すると,本件商標をその商標権者が使用した場合,これに接する需要者,取引者は,本件商標を使用した商標権者の提供する指定役務について,申立人又はそのグループ企業との間に,密接な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信し,役務の出所につき誤認を生じさせることは明らかである。
また,本件商標の商標権者がホームページにおいてホームページアドレス等の「energia」の欧文字と一緒に本件商標を使用している「本件商標の取引実情」を考慮すると,本件商標をその商標権者が使用した場合,引用商標1ないし4の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くことは明らかである。
特に,本件商標の商標権者が本件商標を指定役務中「電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング,再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング,再生可能エネルギーによる発電・発熱,再生可能エネルギーによる発電・発熱・管理システムのためのコンピュータプログラムの設計・作成又は保守,再生可能エネルギーを用いた発電・発熱装置を含む設備の設計,再生可能エネルギー政策・技術に関する調査及び研究,電気・熱に関する試験又は研究,小規模・分散型電力及び熱の売買用・監視用ウェブサイトの開発」等に使用する場合,本件商標の商標権者をあたかも申立人のグループ企業の一であるかの如く具体的に出所を混同する需要者,取引者も少なくなく,同様に,あたかも本件商標の商標権者の提供に係るこれら役務を申立人ないし申立人のグループ企業の提供に係る役務であるかの如く誤信する需要者,取引者も少なくなく,役務の出所につき誤認を生じさせることは明らかである。
(4)小括
以上のように,本件商標をその商標権者が使用した場合,これに接する需要者,取引者は,本件商標の商標権者の提供する指定役務を申立人又はそのグループ企業の提供する役務と誤認し,役務の出所の誤認を招くのみならず,引用商標1ないし4の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くことは明らかである。
してみれば,本件商標は,商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たり,同号に違反して商標登録されたものである。
3 商標法第8条第1項について
(1)本件商標について
本件商標は,前記第1のとおりの構成からなり,平成27年2月3日に商標出願(甲35)されたものであるが,その後,指定役務について,同年6月22日提出の手続補正書により,第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定役務に補正され(甲36),同年9月11日に設定登録,同年10月20日発行の商標公報に掲載されたものである。
(2)引用商標5について
引用商標5は,「エナジア」の片仮名からなり,平成27年2月17日に商標出願され,第35類,第37類,第39類「電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング,電気の供給に関する情報の提供,熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング,熱の供給に関する情報の提供」他を指定役務とし,現在,特許庁に係属しているものである。
(3)本件商標の指定役務の補正について
ア 指定役務の補正
本件商標の指定役務中,平成27年6月22日提出の手続補正書により補正された指定役務は,以下のとおりである(甲36)。
(ア)第42類「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」を,第39類「再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」に補正(以下「補正1」という。)。
(イ)第42類「再生可能エネルギーに関する発電」を,第40類「再生可能エネルギーによる発電・発熱」に補正(以下「補正2」という。)。
(ウ)第42類「再生可能エネルギーに関する発電・発熱・管理システムの設計及び開発」を,第42類「再生可能エネルギーによる発電・発熱・管理システムのためのコンピュータプログラムの設計・作成又は保守」に補正(以下「補正3」という。)。
(エ)第42類「再生可能エネルギー機器の設計」を,第42類「再生可能エネルギーを用いた発電・発熱装置を含む設備の設計」に補正(以下「補正4」という。)。
イ 指定役務の要旨変更の補正
(ア)商標法と審査基準の規定
商標法第16条の2第1項では「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは,審査官は,決定をもってその補正を却下しなければならない。」と規定されているものの,要旨変更の補正が看過され,商標権の設定登録後に認められたときについては,同法第9条の4において「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものと商標権の設定の登録があった後に認められたときは,その商標登録出願は,その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。」と規定されているところである。
これに関し同法第16条の2及び第17条の2の審査基準において,指定商品又は指定役務についての要旨変更であるかにつき,「(イ)指定商品又は指定役務の範囲の変更又は拡大は,非類似の商品若しくは役務に変更し,又は拡大する場合のみならず,他の類似の商品若しくは役務に変更し,又は拡大する場合も要旨の変更である。」と定めているように,指定商品又は指定役務の補正が要旨変更であるか否かは,当該補正が出願時の指定商品又は指定役務より指定商品又は指定役務の同一性を実質的に損ない,第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがあるものと認められるか否かにより判断されるべきものである(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10414号平成22年5月12日第4部判決)。
そして,指定商品又は指定役務の同一性を実質的に損ない,第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがあるものと認められるか否かは,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内で補正を認める特許法第17条の2第3項の如き規定のない商標法においては,商標出願時の願書に記載された全指定商品又は指定役務の類似範囲内(類似群コード内)で判断されるのではなく,補正前後の個々の指定商品又は指定役務毎に判断されることは,商標出願時の願書の指定商品「果実飲料その他本類に属する商品」をその後に「オレンジのさのう入りオレンジジュース」に補正し,さらにこれを「粒状の果肉入り果実飲料」に補正した事件につき,再度の補正を要旨変更と判断した昭和56年審判第15527号)昭和60年4月5日決定からも明らかである。
(イ)補正1の検討
本件商標の指定役務についてした上述の補正1では,補正前の指定役務が,一義的に「再生可能エネルギーによる電気の供給・発電に関するコンサルティング」を意図したものと仮定した場合に,この役務は「電気の供給,発電(39J02)」に関する役務であるから,「再生可能エネルギーによる熱の供給・発熱に関するコンサルティング」の役務を補正により拡大したものであり,この拡大された役務は「熱の供給(39J04)」に関する役務である以上,「誤記の訂正又は明瞭でない記載を明瞭なものに改めること」を超越し,審査基準で規定する「非類似の役務に変更し,又は拡大する場合」に該当し,指定役務の同一性を実質的に損ない第三者に不測の不利益を及ぼす要旨変更補正である。
なお,要旨変更補正は,補正前後の個々の指定商品又は指定役務毎に判断されなければならず,たとえ,商標出願時の願書に補正とは無関係に「熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング(39J04)」が記載されていたとしても,補正1が要旨変更補正であることに変わりはない。
(ウ)補正2の検討
本件商標の指定役務についてした上述の補正2では,補正前の指定役務は,一義的に「再生可能エネルギーによる発電」を意図していたものと無理なく理解できるところ,この役務は「電気の供給,発電(39J02)」に関する役務であるから,「再生可能エネルギーによる発熱」の役務を補正により拡大したものであり,この拡大された役務は「熱の供給(39J04)」に関する役務である以上,「誤記の訂正又は明瞭でない記載を明瞭なものに改めること」を超越し,審査基準で規定する「非類似の役務に変更し,又は拡大する場合」に該当し,指定役務の同一性を実質的に損ない第三者に不測の不利益を及ぼす要旨変更補正である。
なお,要旨変更補正は,補正前後の個々の指定商品又は指定役務毎に判断されなければならず,たとえ,商標出願時の願書に補正とは無関係に「熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング(39J04)」が記載されていたとしても,補正2が要旨変更補正であることに変わりはない。
(エ)補正4の検討
本件商標の指定役務についてした上述の補正4では,補正前の指定役務は,一義的に「再生可能エネルギーを用いた発電装置の設計」を意図したものと仮定されるところである。
しかし,補正後の指定役務は「発電装置」のみならずこれを含んだ「設備の設計」にまで拡大したものであるから,「誤記の訂正又は明瞭でない記載を明瞭なものに改めること」を超越し,審査基準で規定する「類似の役務に変更し,又は拡大する場合」に該当し,指定役務の同一性を実質的に損ない第三者に不測の不利益を及ぼす要旨変更補正である。
また,補正後の指定役務は「発電装置」のみならず「発熱装置」にまで拡大したものであるから,「誤記の訂正又は明瞭でない記載を明瞭なものに改めること」を超越し,審査基準で規定する「類似の役務に変更し,又は拡大する場合」に該当し,指定役務の同一性を実質的に損ない第三者に不測の不利益を及ぼす要旨変更補正である。
(オ)補正1及び補正2の審査経過
補正前の指定役務「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」及び「再生可能エネルギーに関する発電」の両指定役務は,平成27年4月28日起案の拒絶理由通知書において,理由3として商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しないと指摘され,その上で,原審審査官より,補正前の指定役務「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」については,これを第39類「再生可能エネルギーによる電気の供給に関するコンサルティング」に変更する補正案が示され,補正前の指定役務「再生可能エネルギーに関する発電」については,これを第40類「再生可能エネルギーによる発電」に変更する補正案が示されたところである(甲37)。
あわせて,同拒絶理由通知書では,「指定商品・指定役務を補正する場合には,指定商品・指定役務を十分整理(要旨変更・重複に注意)してから,手続をしてください。」と注意喚起をされていたところである(甲37)。
このように,十分な注意喚起をされていたにも拘らず,平成27年6月22日提出の手続補正書において,要旨変更と解される前述の補正1及び補正2がなされ,同日提出の意見書においても,補正内容やその適否を説明するものでもなく単に補正により拒絶理由が解消した旨が述べられているだけであって,(甲38),第三者が不測の不利益を甘受してまで,要旨変更の補正を是認しなければならない特段の理由は何ら見いだせないところである。
(カ)補正4の審査経過
補正前の指定役務「再生可能エネルギー機器の設計」は,平成27年4月28日起案の拒絶理由通知書において,理由2として商標法第6条第1項の要件を具備しないと指摘され,その上で,原審審査官より,この補正前の指定役務について,これを第42類「再生可能エネルギーを用いた発電装置を含む設備の設計」に変更する補正案が示されたところである(甲37)。
そもそも,原審審査官より要旨変更と解される不適切な補正案が示されていたこととなるが,たとえ補正4が原審審査官の補正案どおり「発熱装置」を含めずに補正されていたと仮定しても,審査官の補正案どおりに補正すれば要旨変更とならないが如き解釈は許されないことは,そのように解される審決を「措辞不適切である。」と指摘した知的財産高等裁判所平成21年(行ヶ)第10414号平成22年5月12日第4部判決からも明らかである。
ウ 指定役務の要旨変更の補正の効果
このように,本件商標の指定役務についてした上述の補正1ないし4中,少なくとも補正1,補正2及び補正4が要旨変更であると,商標権の設定登録後に認められるものであって,この要旨変更の補正を是認しなければならない特段の理由も見いだせない以上,商標法69条の規定の適用のない同法第9条の4の規定にもとづき,本件商標の商標登録出願は,全ての指定役務について平成27年6月22日の手続補正書提出時にしたものと擬制され,その結果,平成27年2月17日に商標出願された引用商標5の後願となり,本件商標の商標出願人は,同法第8条第1項でいう「最先の商標登録出願人」ではないところである。
(4)本件商標と引用商標5の商標の類否について
本件商標と引用商標5は,「エナジア」の欧文字部分において,観念において比較する術はないが,外観において一致し,「エナジア」の称呼を共通する以上,全体として類似する商標であることは明らかである。
(5)本件商標と引用商標5の指定役務の類否について
本件商標の指定役務「電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング」,「熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング,再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング,再生可能エネルギーによる発電・発熱」は,引用商標5の指定役務と類似する。
(6)小括
以上のように,本件商標の指定役務中,平成27年6月22日提出の手続補正書による「再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」への補正(補正1),「再生可能エネルギーによる発電・発熱」への補正(補正2)及び「再生可能エネルギーを用いた発電・発熱装置を含む設備の設計」への補正(補正4)につき,補正前と補正後の個々の指定役務毎に判断すると,指定役務の同一性を実質的に損ない第三者に不測の不利益を及ぼすおそれのある要旨変更の補正であって,これが商標権の設定登録後に認められるものであるから,本件商標の商標登録出願は,全ての指定役務について平成27年6月22日の手続補正書提出時にしたものと擬制され,その結果,平成27年2月17日に商標出願された引用商標5の後願となるところである。
そして,本件商標と引用商標5の類否は,上記(4)のとおり,類似する商標であり,本件商標と引用商標5の指定役務の類否は,上記(5)のとおり,同一又は類似する役務である。
してみれば,本件商標は,平成27年6月22日付け手続補正書提出後の第39類「電気の供給,電気の供給に関するコンサルティング,熱の供給,熱の供給に関するコンサルティング,再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」と第40類「再生可能エネルギーによる発電・発熱」は,商標法第8条第1項に違反して商標登録されたものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,左側には,5つの色違いで同形の四角形を各々隣接するもの同士が互いに一部重なり合うよう略「く」の字状に配し,かつ,これら四角形上に円弧状の図形を表してなる図形とその右側には,「エナジア」の片仮名を書してなるものである。
そして,本件商標は,該「エナジア」の片仮名は,一般的な辞書等に掲載されている語でないことから,特定の意味合いを有しない一種の造語というのが相当であり,また,該図形部分と文字部分とは,それぞれが自他役務の識別標識として看取されるものというべきである。
そうすると,該「エナジア」の文字部分を要部として,取引に資する場合も決して少なくないというのが相当である。
してみれば,本件商標は,該「エナジア」の文字に相応して,「エナジア」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は,別掲2のとおり,「EnerGia」の欧文字を横書きし,かつ,その「E」の文字は,図案化された態様で,その左側と下側から濃淡の相違する2本の帯状の線が捻られながら左下方に延びるように表され,その帯状の線の中間に円弧の図形を配した構成として看取されるものである。
そして,「EnerGia」の文字は,辞書にも掲載されていない一種の造語であるから,その構成文字に相応して,「エネルギア」及び「エナジア」の称呼を生じると認められるものであるが,甲第28号証の「会社案内」の3頁においては,「企業理念」の見出しのもと,「キーコンセプト」として,「ENERGIA」の欧文字の上部に「エネルギア」と片仮名で読みが付されており,申立人自身においても,該「ENERGIA」の文字の称呼を「エネルギア」と特定して使用しているものである事情,及び,引用商標1が需要者に広く知られている周知商標であることを参酌すれば,該「EnerGia」の文字は,取引者及び需要者においても「エネルギア」と称呼され,引用商標1の構成態様から「中国電力のブランド」として知られているものというのが相当である。
してみれば,引用商標1は,その構成文字に相応して「エネルギア」の称呼のみを生じ,その構成態様全体より「中国電力のブランド」の観念を生じるものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は,別掲3のとおり,「EnerGia」の欧文字を横書きし,かつ,その右斜め下に,大きく表された図形部分は,「E」の文字の左側と下側から濃淡の相違する2本の帯状の線が捻られながら左下方に延びるように表され,その帯状の線の中間に円弧の図形を配した構成として看取されるものである。
そして,上記と同様に,「EnerGia」の文字は,「エネルギア」と称呼され,周知商標である引用商標1を想起させる構成態様全体からは「中国電力のブランド」を想起させるものというのが自然である。
してみれば,引用商標2は,その構成文字に相応して「エネルギア」の称呼のみを生じ,その構成態様全体より「中国電力のブランド」の観念を生じるものである。
ウ 引用商標3及び引用商標4について
引用商標3及び引用商標4は,同じ構成態様であって,「エネルギア」の片仮名を上段に「EnerGia」の欧文字を下段に,それぞれ横書きしてなるものである。
そして,上段の片仮名は,下段の「EnerGia」の欧文字の読みを特定したものとして理解されるというのが自然である。
また,該「エネルギア」の片仮名は,一般的な辞書等に掲載されている語でないことから,特定の意味合いを有しない一種の造語というのが相当であり,該「Energia」の欧文字は,スペイン語,ポルトガル語,イタリア語,ポーランド語において,「エネルギー」の意味合いを有する語であるが,この語が我が国において一般的に親しまれ知られているとはいえないことから,該文字からは,特定の意味合いを看取することはないとみるのが相当である。
してみれば,引用商標3及び引用商標4は,その構成文字に相応して,「エネルギア」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標について
ア 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると,外観においては,本件商標は,図形と「エナジア」の片仮名から構成されるものであり,引用商標1及び引用商標2は,本件商標中の図形とは別異の図形と「EnerGia」の欧文字から構成されるものであり,引用商標3及び引用商標4は,片仮名と欧文字を二段書きした構成からなるものであるから,外観上,明確に区別できるものである。
また,称呼においては,本件商標から生じる「エナジア」の称呼と引用商標1ないし引用商標4から生じる「エネルギア」の称呼は,語頭の「エ」と語尾の「ア」が共通するものの,4音と5音と音数も異なることから,それぞれ一連に称呼した場合には,その語調,語感も異なり,称呼上,明瞭に聴別することができるものである。
さらに,観念においては,本件商標は,特定の観念を生じないものであり,引用商標1及び引用商標2は,「中国電力のブランド」の観念を生じるものであり,引用商標3及び引用商標4は,特定の観念を生じないものである。
そうすれば,本件商標と引用商標1及び引用商標2とは,外観,称呼及び観念において非類似の商標であって別異の商標というべきものであり,また,本件商標と引用商標3及び引用商標4とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において明確に区別できる非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
イ 申立人の主張について
申立人は,称呼について,最高裁判例及び商標審査基準をあげ,引用商標3及び引用商標4の「EnerGia」の欧文字は,英語「energy」(エナジー)になぞらえて,英語風に「エナジア」と自然に称呼する場合も決して少なくないと主張している。
しかしながら,引用商標3及び引用商標4を構成する「EnerGia」の欧文字は,前記したように,我が国で一般的に親しまれて知られている外国語とはいえず,本件商標においては,上段に表された片仮名が,その称呼を特定したものと認識されるというのが自然であり,これをあえて英語風に「エナジア」と称呼するとみるのは妥当ではなく,引用商標3及び引用商標4は「エネルギア」とのみ称呼されるというのが相当である。
また,申立人は,別件の判定の内容について種々述べているが,当該判定事件と本件登録異議申立事件とは事案を異にするものであり,その内容が直ちに,本件の判断に影響を与えるものではない。
なお,申立人は,引用商標1から生ずる称呼に関して,申立人が出願した同商標の防護標章登録出願(2007-118184)に係る審査中に提出した意見書において,「本標章を構成する『EnerGia(エネルギア)』については,本出願人および本出願人のグループ企業の『キーコンセプト』として,1991年1月に制定されたものであり,この『EnerGia(エネルギア)』については,本出願人の略称として使用されており,本出願人のHPのドメインの他,本出願人の社員が使用するメールアドレスに至るまで,『energia』の文字が採択されております。」と主張し,さらに,同出願の拒絶査定不服審判(不服2010-5575)において,「インターネット上の検索サイト『Google』や『Yahoo!JAPAN』にて,『EnerGia』の欧文字から生ずる称呼『エネルギア』の片仮名を検索ワードとして入力し,検索を試みたところ,その大半が審判請求人等のホームページや審判請求人等を指称した記事が検出され・・・・・このことは,多くの一般世人が,原登録商標やこれから生ずる『エネルギア』の称呼を審判請求人等の出所を表示する商標と正しく理解している証左に他ならないというべきである。」旨を主張している。
そうすれば,申立人が,本件において「EnerGia」から「エナジア」の称呼が生ずると主張することは,上記防護標章登録出願の審査及び審判における主張に相反するものであり,包袋禁反言の主張といえるものである。
よって,申立人の主張は,いずれも妥当ではなく採用することができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標1の周知性について
引用商標1が周知性を有する商標であるとして申立人が提出した甲第28号証ないし甲第31号証を総合すれば,引用商標1は,申立人の業務に係る役務「電気の供給」を表示するものとして電気の供給区域内の需要者,取引者をはじめ,供給区域外の需要者の間にも広く認識されていることが認められるものである。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると,上記1(3)のとおり,本件商標と引用商標1及び引用商標2とは,外観,称呼及び観念において非類似の商標であって別異の商標というべきものであり,また,本件商標と引用商標3及び引用商標4とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において明確に区別できる非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
(3)出所の混同について
たとえ,引用商標1が,申立人の役務「電気の供給」を表示するものとして著名となっているとしても,本件商標と引用商標1ないし引用商標4は,前記のとおり非類似の商標であって,別異の商標であるから,本件商標をその指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者をして引用商標1ないし4を連想し,又は想起させることはなく,その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第8条第1項について
(1)本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり,平成27年2月3日に登録出願され,第39類,第40類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,同年9月11日に設定登録されたものである。
(2)本件商標の指定役務の補正について
ア 本件商標権者が,平成27年6月22日付けで提出した手続補正書における補正について,申立人は,「前記第3 3(3)ア」のとおり,以下の指定役務の補正が要旨変更である旨を主張しているので,この点について検討する。
(補正1)
第42類「再生可能エネルギーに関するコンサルティング」を,第39類「再生可能エネルギーによる電気の供給・熱の供給・発電・発熱に関するコンサルティング」に補正。
(補正2)
第42類「再生可能エネルギーに関する発電」を,第40類「再生可能エネルギーによる発電・発熱」に補正。
(補正4)
第42類「再生可能エネルギー機器の設計」を,第42類「再生可能エネルギーを用いた発電・発熱装置を含む設備の設計」に補正。
上記の補正対象となった指定役務については,そもそもその内容及び範囲が不明確な表示であるとしてこれを明確にするように求めたものであり,また,審査官の指定役務の補正案は,あくまでも例示であり,そのとおりに補正しなければならない理由はないし,補正された指定役務が,全く異なるような内容及び範囲にまで広がらないのであれば,その補正は明確になったものとして許容されるものである。
そして,次に示すように,これらの補正は,要旨の変更には当たらないものである。
(ア)補正1について
補正1は,表示中の「再生可能エネルギーに関する」の部分が,その内容及び範囲が明確なものとなっていないため,上記表示のように補正することで,再生可能エネルギーから提供できる役務の内容を明確な表示にしたものといえる。
(イ)補正2について
補正2は,「再生可能エネルギーに関する発電」が,指定した役務の区分との関係でその内容及び範囲が明確なものとなっていないため,上記表示のように補正することで,再生可能エネルギーから提供できる役務の内容を明確な表示にしたものといえる。
(ウ)補正4について
補正4は,「再生可能エネルギー機器」が,その内容及び範囲が明確なものとなっていないため,上記表示のように補正することで,再生可能エネルギーに関連した機器の内容を明確な表示にしたものといえる。
イ 小活
以上によれば,本件商標の指定役務についての補正1,補正2及び補正4は,その要旨を変更するものではないから,商標法第9条の4の規定は適用されず,本件商標の出願日は,その補正について手続補正書を提出した日にしたものとみなすことができない。
したがって,本件商標の出願日である平成27年2月3日が,その補正について手続補正書を提出した日(平成27年6月22日)に繰り下がらないため,引用商標5の出願日(平成27年2月17日)が本件商標より前に出願されたものとみなされないから,本件商標は,引用商標5との関係において,同法第8条第1項に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同法第8条第1項に該当するものではないから,同法第43条の3第4項に基づき,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩については,原本参照。)


別掲2 引用商標1


別掲3 引用商標2



異議決定日 2016-06-16 
出願番号 商願2015-9570(T2015-9570) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W394042)
T 1 651・ 261- Y (W394042)
T 1 651・ 263- Y (W394042)
T 1 651・ 271- Y (W394042)
T 1 651・ 4- Y (W394042)
最終処分 維持 
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
榎本 政実
登録日 2015-09-11 
登録番号 商標登録第5791831号(T5791831) 
権利者 株式会社エナジア
商標の称呼 エナジア 
代理人 大竹 正悟 
代理人 小椋 崇吉 
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