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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3641
管理番号 1317208 
審判番号 取消2015-300175 
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-03-09 
確定日 2016-07-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5467908号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5467908号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5467908号商標(以下「本件商標」という。)は,「新築大家さん」の文字を標準文字で表してなり,平成23年7月14日に登録出願,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定役務として,同24年2月3日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成27年3月23日にされたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書及び審判事件上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれの者によっても使用した事実が存在しないから,その商標登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人(本件商標権者)の従業員の名刺について
被請求人(本件商標権者)の従業員の名刺(以下「被請求人名刺」という。)には,本件審判請求の登録前3年以内に作成・配布された事実を示す記載は一切無い。
また,被請求人名刺を発注した時期を証する書類(乙3?乙6)は,注文の具体的内容がわからず,被請求人名刺の作成を裏付ける資料にはならない。
被請求人提出の各証拠からは,被請求人名刺の作成時期,配布時期及び配布の事実はわからない。
(2)商標の広告的使用について
被請求人は広告(商標法2条3項8号)のために本件名刺を配布している旨主張する(広告的使用)。しかしながら,仮に被請求人が被請求人名刺を配布していたとしても,以下の理由から商標法上の広告的使用には該当しない。
ア 商標の広告的使用といえるためには,広告によって,指定役務との関係で商標に信用が蓄積することが必要である。
しかし,被請求人名刺の表面の「SINCHIKU OOYASAN」のロゴは,指定役務の記載が無く,ロゴ単体で用いられているから,指定役務との関係で信用が蓄積しない。
したがって,当該ロゴの使用は,広告的使用に該当しない(商標法第2条第3項第8号)。
イ 被請求人名刺の裏面上部の「新築大家さん」についても,「賃貸マンション建築」「中古収益物件再生」「リノベーション」「資産カウンセリング」といった,指定役務と無関係な役務とともに用いられており,指定役務との関係で商標に信用が蓄積しない。単に,被請求人の営業内容全般を宣伝することを主眼とする,被請求人会社自体の広告にすぎない。
ウ 結局,被請求人名刺の表面は,相手に対し,氏名,役職,所属会社,保有資格を伝達することを目的としており,裏面においては被請求人会社自体の広告を目的とするものである。
したがって,被請求人名刺は全体として,指定役務について登録商標の広告を目的とするものではないため,信用の蓄積作用がなく,広告的使用に該当しない。
(3)社会通念上同一商標の使用について
被請求人名刺の表面の「SINCHIKU OOYASAN」は,「新築大家さん」という漢字を含む文字列をローマ字に変更したものであり,「同一」商標の使用とはいえないし,外観についても,上下2段に分割され,上下で文字数が異なるにもかかわらず全体の幅は揃えられ,文字の上部にはイラストが付されて全体として一体のロゴとなっていることに鑑みると,標準文字で登録された「新築大家さん」とは明らかに外観が異なる標章であり,同一商標の使用とはいえない。
(4)被請求人ホームページについて
被請求人名刺表面には被請求人のホームページのURLが記載されており,当該ホームページにおいて,「しあわせ大家さん」という標章が多用されている。
しかし,本件商標は,類似のものを含めても一か所も用いられていない(平成27年3月5日時点)。
かかる事実からすると,「新築大家さん」は名刺の上で局限的かつ形式的に用いられただけで,実際には用いられていなかったといえる。
3 平成27年10月26日付け口頭審理陳述要領書
(1)被請求人が提出した領収書(乙8)及び納品書(乙9)に係る名刺と,被請求人名刺とが,同一のものであるか確認できない。
(2)名刺配布先リスト(乙7)について
乙7号証は「名刺配布先リスト」(以下「被請求人名刺配布先リスト」という。)とのことであるが,作成者や作成時期をはじめ,どの名刺を配布したのかもわからず,企業名と個人名を羅列しているだけのリストにすぎない。
したがって,乙7号証と,被請求人名刺との間の関連性が不明であり,被請求人名刺を配布したという証拠にはならない。
仮に被請求人名刺配布先リストが被請求人名刺の配布先リストだとしても,会社代表者も含め,2人で1年間に31枚しか名刺を配布していないのは不自然であり,証拠としての信用性を欠き,配布相手との関係,配布日時,配布状況,配布目的が判明せず,一般公衆に閲覧可能な状態におかれたことまでは確認できない。したがって,商標法第2条第3項第8号の「頒布」された事実は確認できない。
(3)本件商標の使用の不合理性について
被請求人は,平成27年10月8日付け提出の口頭陳述要領書にて,本件商標及び別異の登録商標「幸せ大家さん」の登録後は,後者をメインに使用することとし,本件商標は,目立たない使用をし,名刺には本件商標を付して使用し営業トークの切りロにも使用した旨主張する。
しかし,わざわざ商標登録をしながら「目立たない使用をする」というのは不合理である。また,「営業トークの切りロ」の意味内容があいまいである。一般的に,「営業トークの切りロにする」ということは,「目立たない使用」の真逆の行為である。そもそも,単に営業トークをするためだけに商標登録をする必要性も乏しい。さらに,ホームページのどこにも使われていない「新築大家さん」が「営業トークの切りロ」になるというのも極めて不自然である。
(4)被請求人のホームページについて
被請求人は,自社ホームページ(以下「被請求人ホームページ」という。)を開設しており,その情報量はA4に印刷した場合50ページを超える(2015年3月5日時点)。
また,被請求人ホームページはイラストを多用し,視覚的にわかりやすく設計され,需要者を惹きつける工夫がされている。これらのことからも,被請求人は被請求人ホームページを広告・宣伝・集客のために積極的に活用し,重視していることは明らかである。
しかしながら,被請求人は登録商標である「新築大家さん」について類似の称呼も含め,被請求人ホームページにおいて全く使用していない(甲2,2015年3月6日時点)。
一方で,「しあわせ大家さん」の標章については多用している。また,被請求人が「新築大家さん」をインターネット上で使用した痕跡はない。
(5)総括
インターネットが一般的に普及している現代において,名刺に記載された名称を検索したり,名刺に記載されたURLから被請求人ホームページにアクセスする機会は多い。そうした中,被請求人名刺には「新築大家さん」が使用されているのにかかわらず,被請求人ホームページ上で全く使用されていないのは,見る者の混乱を招く。
ここで,広告・宣伝・集客の手段としてホームページを重視していることが明らかな被請求人が,見る者の混乱を招く状態を放置しておくことは,取引の実情からすると不自然である。
結局,上述の事実を総合すると,被請求人が「幸せ大家さん」と本件商標「新築大家さん」の両方を商標登録していながら,「しあわせ大家さん」しか被請求人ホームページに使用していないのは,被請求人が本件商標を実際には使用していないこと,及び使用する意思がないことの裏付けにほかならない。
したがって,被請求人は商標登録から3年間,名刺も頒布していなかったといわざるを得ない。
4 平成27年12月3日付け審判事件上申書
(1)被請求人が平成27年11月20日付け提出した証拠について
被請求人が平成27年11月20日付け提出した「土地売買契約書」等(乙10?乙12(枝番号を含む。)は,被請求人と顧客との間で作成された不動産管理及び不動産売買に関する契約書類であるが,いずれにも「新築大家さん」の記載は存在しない。
したがって,これらの書証は,本件商標に係る役務が存在していたことの証拠にはなり得ない。
被請求人ホームページ(乙13)の「事業内容」の欄には,不動産の売買や管理に関する記載が見受けられるが,その「サービス名称」の欄には,「しあわせ大家さん」と記載されているのみで,「新築大家さん」の記載は存在しない。同じく,被請求人ホームページ(乙14)においても,自社のサービス名称として専ら「しあわせ大家さん」の名称が用いられており,「新築大家さん」の記載は存在しない。
したがって,これらの書証は,本件商標に係る役務が存在していたことの証拠にはなり得ない。
被請求人の履歴事項全部証明書(乙15)にも,「新築大家さん」に関する記載は一切見受けられない。
よって,乙第15号証は,本件商標に係る役務が存在していたことの証拠にはなり得ない。
(2)当事者岡本淳(以下「岡本氏」という。)の供述について
岡本氏は,株式会社管理バンク(被請求人)において提供していたとされる「新築大家さん」という名称のサービスについて,「『しあわせ大家さん』よりも後の平成26年2月頃に開始された」ものであるが,「サービスの内容は『しあわせ大家さん』と同一である」旨述べた。
かかる供述によれば,被請求人において提供していた賃貸不動産管理及び不動産売買のサービスの名称は「しあわせ大家さん」のみであり,本件商標「新築大家さん」に係る独立したサービスは存在しなかったものと考えられる。
なお,証人川崎淳(以下「川崎証人」という。)は,「『新築大家さん』と『しあわせ大家さん』は別個のサービスである旨述べたが,川崎証人は被請求人の従業員にすぎず,代表者である岡本氏の証言と矛盾する証言は信用できない。
以上を総合すると,本件商標「新築大家さん」に係る役務「賃貸不動産管理」及び「不動産売買」は実在していなかったと考えざるを得ない。
(3)被請求人名刺配布先リスト(乙7)について
被請求人は,本件審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に,日本国内において,被請求人名刺を顧客に配布していない。
岡本氏の供述及び川崎証人の証言によれば,「平成24年2月13日以降,株式会社管理バンク(被請求人)に来訪した顧客に対して,対面接客で『不動産売買の仲介』や『建築』の商談を行い,実際に本件名刺を配布し」ており,また,乙第7号証は「岡本が作成した本件名刺の配布先リストである」という。
しかし,被請求人名刺配布先リストは企業名と個人名を羅列しているだけのリストにすぎず,被請求人名刺との関連性が全く見いだせない。
仮に,被請求人名刺配布先リストが被請求人名刺の配布先リストであったとしても,岡本氏によれば,「リストに記載されているのは全て取引先の業者であり,顧客は含まれていない」というのであるから,被請求人名刺配布先リストは,被請求人名刺が一般公衆による閲覧が可能な状態に置かれたことの証拠にはならない。
したがって,被請求人名刺配布先リストは,被請求人名刺を顧客に配布したことの証拠にはなり得ない。
(4)その他の証拠が提出されていないことについて
被請求人は,合議体からの審尋に対し,被請求人名刺を顧客に配布したことの証拠(顧客による陳述書等)を何ら提出していない。
したがって,被請求人名刺を顧客に配布したという事実は認められない。
(5)さらに,被請求人名刺以外の方法で本件商標を使用した事実も認められない。
ア 川崎証人の供述及び岡本氏の証言について
川崎証人,岡本氏の両名は,被請求人名刺配布以外の方法で本件商標を使用したことはないと明言している。また,実際に,本件商標が被請求人名刺以外の態様で使用されたことを示す証拠は全く存在しない。
イ 本件商標がホームページ上で使用されていないこと
被請求人ホームページ上ではもっぱら「しあわせ大家さん」という商標が用いられており,「新築大家さん」は全く使用されていない。
結局,被請求人が「しあわせ大家さん」しか被請求人ホームページに使用していないのは,被請求人が「新築大家さん」を使用していなかったことの明らかな証拠であるといえる。
(6)結び
以上のとおり,要証期間において,本件商標に係る役務「賃貸不動産管理」及び「不動産売買」は存在していない。
また,仮に存在していたとしても,被請求人は,要証期間に,日本国内において,被請求人名刺を顧客に配布する等して使用しておらず,名刺以外の方法で本件商標を使用した事実もない。
したがって,本件商標は,その指定役務について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書及び審判事件上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
被請求人は,本件商標を要証期間に,指定役務「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」に本件商標を使用している。
(1)本件商標の具体的使用事実
ア 商標の使用者
本件商標は,当該商標の商標権者である「株式会社管理バンク」が,被請求人名刺として使用している。
被請求人名刺の表面には,本件商標権者「株式会社管理バンク」の名称と住所を明記している(乙1,乙2)。
イ 使用に係る役務及び使用している商標
本件商標権者は,指定役務「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」について,顧客に対しサービスを提供しており,当該サービスの広告のために,本件商標が表示された被請求人名刺を作成し,顧客に対し配布している。
被請求人名刺の裏面には,本件商標「新築大家さん」の文字を付すとともに,下表の欄に提供サービスとして「賃貸不動産管理」,「不動産売買」と記載されているところ,同「賃貸不動産管理」,「不動産売買」の内容については,本商標権の指定役務「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」と同義であるので,本件商標権者は,使用に係る役務「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」,に本件商標を使用している。
被請求人名刺の表面に,本件商標の称呼を欧文字で表した「SINCHIKU OOYASAN」の欧文字入りロゴを付して使用している。なお,当該商標ロゴは,2014年1月10日に発注した(乙6)。
ウ 使用時期
被請求人名刺は,2014年(平成26年)2月10日に発注したものであるから(乙3?5),その使用時期は前記発注日以後であり,本件審判請求の登録前3年以内の時期に使用されていたことが明らかである。
(2)結論
以上のとおり,本件商標は,要証期間に日本国内において商標権者により,本件審判請求にかかる指定役務である第36類「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」について使用されていることが明らかである。
2 平成27年10月8日付け口頭審理陳述要領書
(1)被請求人は,川崎証人が2014年(平成26年)2月10日に,被請求人名刺を作成したこと及び被請求人名刺を受け取った後(乙8,乙9),2015年(平成27年)3月19日前までに名刺を配布したことについて,被請求人名刺配布先リスト(乙7)を提出するとともに,川崎証人と岡本氏を証人として上記事項を立証する。
(2)被請求人は,本件商標のほか,同日に出願し,同日に商標登録された「幸せ大家さん」(登録第5467909号)の商標権を取得した。
被請求人は,上記商標の登録後に登録商標「幸せ大家さん」をメインに使用することとし,本件商標は,目立たない使用をすることとし,名刺に本件商標を付して商標を使用することとした。本件商標「新築大家さん」は,営業トークの切りロにも使用でき有効であり,広告として被請求人名刺に使用された商標と,被請求人ホームページにおいて広告的内容の情報に付された商標とが異なったとしても,取引の実情として不自然ではない。
3 平成27年11月20日付け審判事件上申書
(1)被請求人名刺の裏面に記載された使用商標「新築大家さん」に係る役務「賃貸不動産管理,不動産売買」について,被請求人が当該役務を実施していたことを示す証拠として,「不動産売買契約書」,「建築工事基本契約書」,「建築工事本契約書」,「建物管理委託契約書」及び「収支計算報告書」(乙10?乙12(枝番号を含む。))を提出する。これらよりすれば,被請求人は,「委託による建物管理」の役務を提供しており,当該使用商標に係る役務「不動産売買,賃貸不動産管理」を提供していたことは確かである。
(2)履歴事項全部証明書,会社概要のHPについて
履歴事項全部証明書には,「3.不動産の売買,賃貸,管理及びその仲介」と記載されており,会社設立当時(平成23年6月8日)から現時点まで,当該使用商標に係る役務「不動産売買,賃貸不動産管理」を提供していたことは確かである。
会社概要の被請求人ホームページの会社概要には,事業内容として,少なくとも「不動産の売買」,「管理」の記載が有り,平成26年4月26日当時,「不動産売買」,「委託による建物管理」の役務を提供しており(乙13),当該使用商標に係る役務「不動産売買,賃貸不動産管理」を提供していたことは確かである。
(3)本件商標「新築大家さん」は,目立たない使用としたことについて
登録商標「しあわせ大家さん」は,被請求人ホームページにアップして,少なくとも「不動産の売買」,「不動産管理」について宣伝広告をしているのに対して,本件商標「新築大家さん」は,被請求人ホームページにアップすることはせず,名刺に登録商標を付して使用していることから,外から見て目立たない商標使用をしているが,被請求人の顧客は,紹介による方が,被請求人ホームページからの方より多いことから,契約成立顧客の吸引力という観点での宣伝広告の効果は,本件商標「新築大家さん」被請求人名刺の方が,登録商標「しあわせ大家さん」を使用した被請求人ホームページよりも,上回っている。
(4)結論
以上のとおり,本件商標は,要証期間に日本国内において商標権者により,本件審判請求にかかる指定役務である第36類「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」について使用されていることが明らかであり,本件審判請求は成り立たない。

第4 岡本氏及び川崎証人の証言
岡本氏)及び川崎証人は,平成27年11月9日,特許庁審判廷において,宣誓の上,別掲のとおり,証言した。

第5 当審の判断
1 認定事実
証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)被請求人に関して
被請求人のウェブサイトには,「会社概要」の見出しの下,「会社名」の欄に「株式会社管理バンク」,「設立」の欄に「2011年7月」及び「事業内容」の欄に「・不動産の売買,賃貸,管理,仲介業」の記載がある(甲3,乙13)。そして,これらの事業(役務)は,被請求人ホームページ上では,専ら「しあわせ大家さん」とのサービス名称で行われていることが認められる(甲2,甲3)。
(2)被請求人名刺
ア 被請求人名刺(乙1,乙2)は,その表面に「S」「C」「U」「O」の文字の丸みを有する部分を縦横の直線を組み合わせて表現した特徴のある書体で「SINCHIKU」と「OOYASAN」の文字が上下二段に記載されている(以下「使用商標1」という。)。そして,その下には,従業員の氏名,「株式会社 管理バンク」(「バ」の濁点部分が植物の双葉のように表されている。)の記載,被請求人の住所,電話番号,メールアドレス及びホームページのアドレスの記載がある。
さらに,被請求人名刺の裏面には,「『新築大家さん』は不動産投資を通じて,オーナー様の経済的な安定を創造します。」の記載,その下に,灰色の枠を持った角丸の横長の長方形中に1つずつ「賃貸マンション建築」,「賃貸不動産管理」,「中古収益物件再生」,「不動産売買」,「リノベーション」及び「資産カウンセリング」の文字を記載し,その下に,「お気軽に御相談ください」の記載がある(以下,被請求人名刺の裏面の「新築大家さん」の文字部分を「使用商標2」という)。
イ 乙第3号証は,「激安名刺ドットコム」が被請求人の従業員に宛てた電子メールの写しであるところ,当該メールの写しには,「【激安名刺ドットコム】にご注文ありがとうございました。」,「株式会社管理バンク 川崎淳様」,「激安ドットコムでのお買い上げ誠にありがとうございます。続きまして,データの入稿をお願い致します。」の記載がある。そして,その下に,「■ご注文内容確認」の項に「注文番号:083649」及び「注文日:2014年2月10日 0:02:55」の記載,さらに「お届け先」の項に被請求人の住所,会社名及び従業員である川崎証人の氏名の記載,「[商品情報]」の項に「01 品名 名刺 表面カラー 裏面モノクロ/用紙:OKマットポスト220kg 56 890円×4=3,560円」,「小計 3,560円」,「送料 350円」,「手数料 315円」,「使用ポイント 34ポイント」及び「お支払金額 4,191円」の記載がある。
ウ 乙第4号証も,「激安名刺ドットコム」が被請求人の従業員に宛てた電子メールの写しであるところ,当該メールの写しには,「【激安名刺ドットコム】受付完了のお知らせ」,「株式会社管理バンク 川崎淳様」,「下記の注文のデータのチェックが完了いたしました。」,「ご注文番号:083649」,「発送日:2014年2月10日」,「ただ今より,印刷工程に入らせて頂きます。」の記載がある。
エ 乙第5号証も,「激安名刺ドットコム」が被請求人の従業員に宛てた電子メールの写しであるところ,当該メールの写しには,「【激安名刺ドットコム】商品の発送完了のお知らせ」,「ご注文いただいた商品を本日発送させていただきましたのでご連絡を差し上げます。」,「注文番号:083649」及び「注文日:2014年2月10日 0:02:55」の記載,さらに「お届け先」の項に被請求人の住所,会社名及び従業員である川崎証人の氏名,「[商品情報]」の項に「01 品名 名刺 表面カラー裏面モノクロ/用紙:OKマットポスト220kg 56 890円×4=3,560円」,「小計 3,560円」,「送料 350円」,「手数料 315円」,「使用ポイント 34ポイント」及び「お支払金額 4,191円」の記載がある。
オ 乙第6号証は,被請求人がS氏に宛てた発注書であるところ,「発注年月日」の項に「2014年1月10日」の記載,被請求人名「株式会社管理バンク」の記載とともに押印,「下記の通りご発注いたしますので,よろしくお願い申し上げます。」の記載,「合計金額(税込)」の項に「32,400円」の記載及び納品場所として被請求人の住所の記載がある。そして,下段の表中には「名称」の欄に「■デザイン・データ作成」,「・『新築大家さん』ロゴ作成」及び「・名刺デザイン作成」の記載,「数量」の欄に「1.00」,単位の欄に「式」,単価の欄に「¥30,000」,「金額」の欄に「¥30,000」,並びに,「消費税」欄に「8%課税 ¥2,400」の記載がある。さらに,その下に,「※上記でよろしければ,以下の注文請書にご記名・押印いただき,FAXにてご返信ください。」の記載,その下に,「注文請書」の記載とともに「上記の注文につきまして,記載の内容で確かに承りました。」の記載,「担当者様」の項にS氏の氏名とその横にS氏の押印,加えて,メール返信先及びFAX返信先の記載がある。
カ 乙第8号証は,宅配便の「領収書」であるところ,「お届け先」の項に被請求人の住所,名称とともに川崎証人の氏名の記載,「発送先」の項に「激安名刺ドットコム様」の記載,「品名」の項に「名刺」,「代金引換額(税込み)」の項に「4,191円」の記載及び最下部に「H26年2月13日」の記載がある。
キ 乙第9号証は,「納品書」であるところ,右上に「発行日:平成26年2月10日」及び「注文番号」の項に「083649」の記載,左上には被請求人の氏名,その右側には「激安名刺ドットコム」の記載,並びに,「決済方法:代引引換」の記載がある。そして,下段の表中には「商品名」の欄に「名刺100枚」,「■用紙:OKマットポスト220kg」,「■色数:表面カラー裏面モノクロ」の記載があり,「名刺100枚」の行の「数量」の欄には「4」,単価の欄には「890」,「金額」の欄には「¥3,560」の記載がある。また,「商品名」の欄に「代金引換手数料」の記載,同じ行の「数量」の欄には「1」,「金額」の欄には「¥315」の記載,その下には「商品名」の欄に「送料」の記載,同じ行の「数量」の欄には「1」,「金額」の欄には「¥350」の記載及びその下には「商品名」の欄に「使用ポイント」の記載,「金額」の欄には「(¥34)」の記載がある。さらに,合計の項に「4,191」,「消費税」の項に「内税」及び「総額」の項に「¥4,191」の記載がある。
ク 岡本氏及び川崎証人は,別掲2のとおり,被請求人名刺以外には,本件商標を使用していないと証言した。
(3)被請求人の名刺の配布先
ア 被請求人名刺配布リスト(乙7)は,岡本氏が作成した2014年に被請求人名刺を配布したとする配布先リストであり,これには,配布先情報として企業名とともに受取人の名前(名字)が31名分記載されている。
イ 被請求人名刺配布リストについて,川崎証人は,別掲1のとおり,被請求人名刺配布リスト中,30番目のI氏及び31番目のK氏は,施主であると証言した。
ウ 乙第10号証(枝番を含む)は,平成24年5月12日に作成された「不動産売買契約書」(乙10-1),同月8日に作成された「建築工事基本契約書」(乙10-2),同日に作成された「建築工事本契約書」(乙10-3)及び同25年3月に作成された「建物管理委託契約書」(乙10-4)であり,それぞれの契約書には,「買主」,「発注者」,建物管理委託契約に基づく契約者としてI氏と同じ名字の記載があり,並びに,「宅地建物取引業者」,「施工者」,建物管理委託契約に基づく契約者として,被請求人名の記載がある。
2 本件商標の使用の有無
上記1認定の事実及び被請求人の主張によれば,被請求人は,2011年(平成23年)11月に設立された法人であって,本件審判の取消請求に係る指定役務中の「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」の役務を含む,不動産の売買,賃貸,管理,仲介業に携わっていることが認められるが(甲3,乙13),これらの役務は,被請求人ホームページ上では,専ら「しあわせ大家さん」とのサービス名称(商標)で行われているものであって,被請求人名刺(乙1,2)以外には,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。以下同じ。)を使用していないものと認められる。
そして,被請求人名刺の裏面には,「『新築大家さん』は不動産投資を通じて,オーナー様の経済的な安定を創造します。」と記載され,その下に「賃貸マンション建築」,「賃貸不動産管理」,「中古収益物件再生」,「不動産売買」,「リノベーション」及び「資産カウンセリング」との記載があり,更にその下に「お気軽に御相談ください」との記載があることからすると,外見上,被請求人名刺は,「賃貸不動産管理」及び「不動産売買」,すなわち,本件審判の取消請求に係る指定役務中の「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」についての広告的機能を兼ね備えた名刺であると認めることができる。
そうすると,被請求人名刺をもって本件商標の使用をしたものと認めるには,単に要証期間に被請求人名刺を作成したというだけでは足りず,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって,被請求人名刺もって商標法第2条第3項第8号所定の使用行為があったと認められることが必要である。
よって,以下検討する。
(1)本件商標
本件商標は,「新築大家さん」の文字を標準文字で表してなるものである。
(2)本件商標と使用商標1及び2との同一性について
ア 使用商標1は,上記1(2)のとおり,特徴のある書体で「SINCHIKU」と「OOYASAN」の文字を上下二段に書してなるところ,使用商標1の構成中「SINCHIKU」の文字は,本件審判の取消請求に係る指定役務中「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」との関係では,「新築」の語をローマ字表記したものと認識されるものであって,同じく「OOYASAN」の文字も当該役務との関係では,「大家さん」の語をローマ字表記したものと認識されるといい得るものである。
そうすると,本件商標及び使用商標1は,「シンチクオオヤサン」の称呼を共通にするものであって,使用商標1は「新築大家さん」をローマ字表記したものと認識されるものであるから,観念も共通するものといえる。
したがって,使用商標1は,本件商標と社会通念上同一の商標といえるものである。
次に,使用商標2は,上記1(2)のとおり,「『新築大家さん』は不動産投資を通じて,オーナー様の経済的な安定を創造します。」の文章中に記載されているものであるところ,「新築大家さん」の文字は,カギ括弧で囲まれ,他の文字とは区別できるように記載されていることから,被請求人名刺に接する取引者,需要者は,当該文字部分により強く印象付けられるものである。そして,使用商標2は,本件商標と同様の態様の商標であるから,本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(3)被請求人名刺の作成について
「『新築大家さん』ロゴ作成」及び「名刺デザイン作成」についてのデザイン・データ作成に関して,2014年(平成26年)1月10日に被請求人がS氏に宛てた発注書(乙6)なるものが存在していること(乙6),そして,名刺の発注及び納品に係る電子メール(乙3?乙5),領収書(乙8)及び納品書(乙9)によれば,品名及び商品名の項に「名刺」との記載があり,発注日,注文番号及び支払金額等が一致していることから,被請求人(手続きは被請求人社員の川崎証人)が名刺作成会社「激安名刺ドットコム」に対して,2014年(平成26年)2月10日に名刺の作成を発注し,そして,同月13日に当該名刺が納品されたことが認められる。
しかしながら,〈1〉これらの証拠からは,S氏がどのような内容のデザイン・データを作成し,被請求人にいつ納品したのかが不明であり,また,実際に発注された名刺が被請求人名刺(乙1,乙2)であったかどうかも不明であること,〈2〉被請求人は,本件審判の取消請求に係る指定役務中の「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」の役務を含む,不動産の売買,賃貸,管理,仲介業に関して,被請求人ホームページ上では「しあわせ大家さん」の商標を使用しており,本件商標は一切使用していないこと,からすると,これらの証拠のみでは,被請求人名刺が2014年(平成26年)2月に作成されたとまでは必ずしも断定することはできない。
(4)被請求人名刺の配布について
ア 前記(3)のとおり,被請求人名刺は,2014年(平成26年)2月に作成されたかどうかは定かではないものの,前述のとおり,被請求人名刺をもって本件商標の使用をしたものと認めるには,単に要証期間に被請求人名刺を作成したというだけでは足りず,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって,被請求人名刺もって商標法第2条第3項第8号所定の使用行為があったと認められることが必要であるから,この点につき,更に進んで検討する。
イ 被請求人は,被請求人名刺の配布先として,被請求人名刺配布リストを提出する。
しかしながら,被請求人名刺配布リストは,被請求人自身により作成されたリストであって,単に,配布先の企業名とその担当者の名字が31名分記載されているにすぎないものであるから,客観的裏付けを欠くものといわざるを得ず,これだけでは,直ちに2014年(平成26年)中に実際に被請求人名刺を配布したと認めることはできないところ,上記31名との関係で,名刺を配布する機会があったことをうかがわせる証拠は,上記1(3)のとおり,川崎証人が,被請求人名刺配布リスト中の30番目に記載があるI氏は施主であると証言した者と同じ名字の者が契約を行った乙第10号証(枝番を含む)の契約書のみである。しかしながら,仮に,当該契約者がI氏と同一人であったとしても,当該契約書の作成時期は,平成24年5月ないし同25年3月であるから,その時期に同26年2月13日に納品されたと主張する被請求人名刺をI氏に配布し得たものとは認めることができないし,他に,2014年(平成26年)中にI氏に対し被請求人名刺を配布したと認めるに足りる証拠はない。
その他,被請求人の提出する全証拠によっても,被請求人が,実際に被請求人名刺を配布したことを推認させる事実を認めることができない。
したがって,被請求人は,被請求人名刺を配布したことを立証したということはできない。
(3)小括
以上によれば,被請求人は,被請求人名刺を配布したことを立証したとはいえないことからすると,被請求人名刺をもって商標法第2条第3項第8号所定の使用行為があったと認めることはできない。
したがって,被請求人の提出に係る証拠によっては,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定役務に含まれる役務「建物の管理,建物の売買,土地の管理,土地の売買」について,本件商標の使用をしていたものと認めることはできない。
その他,本件商標が要証期間にその指定役務のいずれかについて使用されているものと認めるに足る証拠はない。
3 むすび
以上のとおり,被請求人は,要証期間に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについて,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の取消請求に係る指定役務について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 岡本氏及び川崎証人の証言の抜粋
1 被請求人名刺配布リストに関する川崎氏の証言(合議体による尋問)
093 じゃあ最後に,乙7号証は,この名刺を配布した先ということで,これはどなたがおつくりになったのですか。
岡本のほうでつくっていますね。
094 そうですか。
はい。
095 先ほど,これは一般のお客さんも入っているということなのですが,具体的にどの人だかわかりますか,見れば。
見ればわかります。
096 そうですか,じゃあ,これ,よろしいですか,見てもらって。
この中で一般のお客さんの名前を言えばいいですね。
097 番号で結構です。
番号でいいですか。
098 はい。
<中略>
105 この中で被請求人がお金を払ってもらえる人はどれですかということですね,別の言い方をすると。
番号で行くと30番,31番。
106 これはどういう方になるのですか,30番は。
まあ,お客さんですよね。
107 お客さんというのは。
だから,オーナーさんです。
108 これはオーナー。
はい。
109 共同住宅を建てる人ですか。
建てる人というか,建ててくれている人です。
110 だから,建てれば建つということで。
建てる人というのは,工務店というか……。
111 ごめんなさい,施主ということですね。
そうですね。
112 オーナーというのは……。
施主ということですね。

2 被請求人ホームページについて
(1)岡本氏の証言(被請求人による尋問)
082 この「新築大家さん」という標章ですよね,これは1号証,2号証のこの名刺以外には使ったことはないということでよろしいですか。
はい。
083 ほかにはないわけですね。
はい。
084 甲第2号証の被請求人のホームページなのですけれども,この中にも「しあわせ大家さん」という標章はありますが,「新築大家さん」という標章は全くないということでよろしいですね。
はい。
085 現在もないのですか,これは。
はい。
086 ない。
はい。
(2)川崎氏の証言(合議体による尋問)
143 ええとですね,「新築大家さん」の商標というのは今,まあ先ほども,ホームページにないのですけれども,一度も入れたことがないと。
一度も入れたことはないです。
144 ホームページ上に「新築大家さん」の商標は入れていない。
はい。
145 名刺にだけ入っている。
はい。
146 この「新築大家さん」のサービスについて,名刺以外,まあカタログとかチラシとかというのは一度もつくったことがないのでしょうか。
そうですね。
147 それとも……,つくったことがない。
つくったことはない。

審理終結日 2016-04-27 
結審通知日 2016-05-06 
審決日 2016-05-30 
出願番号 商願2011-49827(T2011-49827) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X3641)
最終処分 成立 
前審関与審査官 平澤 芳行 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 田村 正明
早川 文宏
登録日 2012-02-03 
登録番号 商標登録第5467908号(T5467908) 
商標の称呼 シンチクオーヤサン、シンチクオーヤ 
代理人 沢藤 達夫 
代理人 佐藤 富徳 
代理人 引地 麻由子 
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