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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X07
管理番号 1317073 
審判番号 取消2015-300446 
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-06-23 
確定日 2016-04-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第0279850号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第279850号商標(以下「本件商標」という。)は、「START」の欧文字を横書きしてなり、昭和11年2月3日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年7月15日に設定登録、平成20年4月2日に、指定商品を第7類「コンベヤー用ベルト,動力伝導用ベルト(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」、第12類「動力伝導用ベルト(陸上の乗物用の機械要素)」及び第17類「ホース,パッキング」とする指定商品の書換登録がされたものである。
そして、本件審判請求は、その予告登録が平成27年7月3日にされているものである。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第7類「コンベヤー用ベルト」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のとおり述べ、その証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 審判請求書の取消事由
本件商標は、その指定商品中、第7類「コンベヤー用ベルト」について、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証は、件外株式会社愛善商会(以下「愛善商会」という。)の代表者が作成した証明書と、その添付書類の送品明細書及び写真であるが、少なくとも送品明細書には本件商標は使用されていない。ここで使用されている品名には「スタート」が記載されているが、本件商標は「START」の欧文字5文字から構成されており、仮にこの欧文字が「スタート」と称呼することができるとしても、「スタート」と称呼することができる欧文字列は「SUTAATO」など複数あり、そうすると「スタート」と「START」が一義的な関係にあるということはできず、社会通念上同一の商標でないことは明らかである。
また、当該送品明細書には、形態として「製造指図」と記載されているが、これはいわゆる受注生産を意味するものと考えられる。受注生産とは、発注者が製造を指図し、これに基づいて受注者が製造した製品を発注者に直接納品する取引の一形態であり、そこで使用される識別標識は受注された製品(商品)の特定、確認のために用いられるものである。すなわち、本件でいえば商標「スタート」そのものでさえ自他商品を識別するために使用されているものではなく、商標の使用には該当しないことになる。
ところで、乙第1号証の添付写真には商品コンベヤー用ベルトの表面にエンボスが施されており、その一部に「START」と表示されていることを請求人は否定しない。しかしながら、その撮影日が平成27年8月6日であることについては客観的な判断をすることはできず、実質的な証拠力がない。また、同第1号証に添付の送品明細書に記載された商品と、添付写真に表示された商品とが一致するかどうかについても、確認することはできない。
次に、乙第2号証は、やはり「スタート」という商標が記載されているが、本件商標である「START」は使用されていないので、本件商標についての使用を証明することはできない。
乙第3号証は、乙第1号証に添付された写真と同一日に、同一人が撮影したものであると主張しているが、本件商標の使用の事実を示す直接証拠ではない。
被請求人は、乙第4号証が乙第1号証に添付された写真のエンボスに使用した型具であると主張している。この点については、件外有限会社片山工業所が製造し、被請求人に納品しているものと主張されているが、客観的にその事実を判断するための証拠は存在しない。
乙第5号証、乙第6号証については、本件商標の使用の事実を示すものとしてなんら関係がないものであるから、これらの証拠について請求人はなんら反論する必要はない。
(2)商標法第50条第2項では、被請求人が登録商標の使用の事実を立証することが求められている。そして、ここにいう「使用」とは、単なる形式的な使用ではなく、商標としての機能を発揮すること、すなわち「自他商品識別機能」を発揮するものでなければならない。自他商品の識別とは、自己の商品間の識別を意味するのではなく、自己の商品と第三者の商品を識別することができることを意味する。本件で被請求人が提出した証拠、特に乙第1号証では、仮に添付写真のように商標「START」が商品の表面にエンボスされていたとしても、発注者の「製造指図」に基づいて製造した商品に使用したものであって、自己の複数の商品間の識別標識として使用する可能性があったとしても、自他商品を識別することを目的として使用したものではないし、これ以上の事実を証明するものではない。
そうすると、被請求人は、本件商標を本件審判請求の趣旨に示した指定商品第7類「コンベヤー用ベルト」について、本件審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に商標権者又は使用権者が使用をした事実を証明していない。
3 口頭審理陳述要領書における主張
(1)被請求人の口頭審理陳述要領書における陳述要領について
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、新たに乙第7号証ないし乙第12号証を提出している。
しかしながら、乙第8号証及び乙第9号証は、乙第7号証において検証した被請求人の製品を特定するための「証明書」であり、これらの証拠そのものは要証期間内における本件商標の使用の事実を立証するものではない。
また、乙第10号証は被請求人の陳述であり、これのみでは使用の事実を証明したものということはできない。ただし、乙第10号証第2頁の「様式品-1」には名称として「オーダーコンベヤベルト受注入力」と記載されており、発注を受けてから製造することが明らかにされている。
乙第11号証は、件外株式会社ケイハン(以下「ケイハン」という。)福山工場の工場長が発行した証明書であるが、その内容を見ると、添付された写真に掲載された製品はケイハンの発注に基づいて製造したものであることを推認することができる。
乙第12号証には、「START」の文字が記載されているが、これらの証拠がいつ作成されたのか、作成名義が誰であるかは不明であり、使用の事実を立証するための証拠足り得ない。
次に、乙第7号証は、名古屋法務局所属の公証人の作成名義に係る公正証書であるが、公証内容は、本件商標が要証期間内に本件指定商品である「コンベヤー用ベルト」に使用された事実を証明したものではないことはいうまでもない。そして、乙第7号証の公正調書中の「3 説明内容」の項の記述によると、被請求人が製造するコンベヤー用ベルトは、受注を受けて製造を完成すると、発注者に直送される性質のものである。
(2)本件商標について
請求人は、コンベヤー用ベルトの表面に標章「START」が用いられていることについては認める。乙第7号証の公正証書においても、標章「START」がコンベヤー用ベルトに刻印されていることは事実として認める。
(3)本件商標の使用について
本件で議論すべき事項は、商標法第2条第3項に規定する標章についての「使用」ではなく、要証期間内に実質的な商標の使用の事実が存在したかどうかということである。そして、「商標の使用」とは、単に第2条第3項の形式的な使用ではなく、「自他商品識別」を発揮させる態様、言い換えると、商標の使用が自他商品の識別という目的をもって使用されたかどうかということである。これは、商標が自己の商品と他人の商品を混同することなく識別することを意味しており、自己の複数の商品間の識別を意味するものではない。
「商標の使用」の概念に則って被請求人が提出した証拠を見ると、各写真に掲載された製品の表面には確かに標章「START」の文字を確認することができるが、これらの製品は、全て市場に提供されて自己の商品と他人の商品を識別するための識別標識として使用されているものではない。発注者である、例えば、件外ストロングラバー工業株式会社(以下「ストロング社」という。)や、ケイハンが仕様を特定して発注し、この発注に基づいて被請求人が製造し、完成品を発注者に直送するというものであり、市場において他人の商品と混同を避けるなどの目的で標章を使用している事実がないことは明らかである。
しかも、発注者は納品された製品を用いる場合には、引っ張り強度などが弱い部分である標章「START」が刻印された箇所を切り取って廃棄するのが通常であると推測するが、そうであれば、例え納品された製品を適宜カットしてさらなる第三者に販売したとしても、既に商標は使用されていないということができる。また、そのような態様において本件商標が使用されたことについても立証されていない。
この意味において、被請求人は標章「START」を請求に係る指定商品である「コンベヤー用ベルト」に使用している事実は認められるが、その使用は商標の重要な機能である「自他商品識別機能」を発揮することを目的としたものではないというべきである。
(4)商標「スタート」の使用
被請求人は、商標「スタート」と商標「START」は社会通念上同一の商標であると主張する。例えば、商標の構成が二段書き「START/スタート」などの場合には、「START」の部分のみを使用していた場合であっても商標の使用であると判断されている事例がある。しかしながら、本件商標は英文字の「START」であるから、上記事例をそのまま適用することはできない。また、現実に被請求人が使用している「スタート」を欧文字に置き換える場合には弁駁書でも主張したように一義的に「START」のみ特定されるものではなく、複数の欧文字列が考えられる。なお、被請求人が引用する広辞苑の記載が決定的な根拠とならないことはいうまでもない。
そうすると、被請求人が仮に「スタート」を使用していたとしても、商標「START」の使用と同一視することができるという主張は失当であるというべきである。
4 上申書における主張
(1)被請求人が提出した乙第13号証は、ストロング社のパンフレットということであるが、当該証拠は本件商標を本件指定商品に使用していることを立証するものではない。また、被請求人が主張している事実は、なんら証拠をもって裏づけられていないので、使用の事実を証明するものではない。被請求人は、この点について主張をしているだけであり、立証していない。
(2)被請求人は、「『コンベヤー用ベルト』の損傷、最終顧客からの新たなベルトへの交換等に応えるため、『START』が刻印された箇所を切り取ることなく加工し、その商品の出所を表示するだけでなく、商品の品質を保証する必要がある。そのため、本件商標に係る指定商品『コンベヤー用ベルト』は、標章『START』を付した状態で顧客へ譲渡されている。」と主張している。しかしながら、この事実を立証するための証拠はなんら示されていない。
また、同様に、被請求人は、「ストロング社は、複数メーカーのコンベヤー用ベルトの中から、コンベヤー用ベルトに付された標章『START』を指標として、加工・販売している。このような点からも、コンベヤー用ベルトに刻印された標章『START』が、自他商品を識別する機能及びその商品の出所表示機能並びに品質保証機能を発揮しているといえる。」と主張している。しかしながら、自他商品識別力は市場において自己の商品と他人の商品を識別する機能であり、ストロング社の倉庫内において商品を特定することまで含むものではない。被請求人が主張する事実は、例えば、商標として機能しない品番などによって特定することでも足りるものであり、自他商品の識別に関するものではない。この意味において、被請求人の主張は失当であるばかりか、登録商標の商標的使用について事実の証明は未だにされていないというべきである。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 答弁の理由
商標権者は、以下のとおり、標章「START」が製品面に刻印された商品「コンベヤー用ベルト」を、本件商標の商標権設定登録後から現在に至るまで、長期にわたり継続して販売している。
(1)登録商標の使用について
ア 乙第1号証は、要証期間内である、2014年(平成26年)10月17日に、日本国内において、商標権者である三ツ星ベルト株式会社(以下「三ツ星ベルト社」という。)が愛善商会に、標章「START」が製品面に刻印された商品「コンベヤー用ベルト」を譲渡したことを証明するものである。
イ 乙第1号証に添付の2014年(平成26年)10月17日付送品明細書の写しは、三ツ星ベルト社から愛善商会菱江加工センターへ、2014年(平成26年)10月17日に、商品「スタート NN 315/ 4P 600× 50× 15 254.000」及び「スタート NN 400/ 4P 600× 50× 15 254.000」がそれぞれ送品されたことを示している。赤字手書きの「D-10-16」及び「D-10-17」は、愛善商会在庫の管理番号であり、愛善商会の担当者が納品時に記入したものである。
ウ 納品についても補足すると、乙第2号証は、2014年(平成26年)10月17日付納品御案内書の写しである。三ツ星ベルト社から愛善商会へ、2014年(平成26年)10月17日に、上記商品「スタート NN 315/ 4P 600× 50× 15 254.000」及び「スタート NN 400/ 4P 600× 50× 15 254.000」がそれぞれ納品されたことを示している。
なお、乙第2号証中、伝票No.6316(納品御案内書の表第3行目及び第4行目に記載)の商品が、乙第1号証に記載の商品に対応し、乙第2号証には別送の商品も併記されている。
エ 乙第3号証は、愛善商会菱江加エセンター内でのコンベヤー用ベルトの在庫状況を示す写真であり、愛善商会菱江加工センターに在庫分の、標章「START」が刻印されたコンベヤー用ベルトを撮影したものが、乙第1号証に添付のコンベヤー用ベルトの写真である。この写真から明らかなように、標章「START」が刻印されている。
(2)標章を刻印するための型具について
乙第1号証に添付のコンベヤー用ベルトの写真に記載の「START」は、型具を用いて刻印されたものである。乙第4号証は、商品「コンベヤー用ベルト」に標章「START」を刻印するための型具である。乙第4号証には、商品種別を表す「CONVEYOR BELT」、標章「START」及び出所を表示する「MITSUBOSHI BELTING LTD.」が表示されている。
乙第4号証は、本件審判が請求される前から、継続的に有限会社片山工業所(住所:堺市堺区並松町38番地)が製造し、三ツ星ベルト社が100%出資する子会社である三ツ星ベルトコンベヤ株式会社(以下「三ツ星ベルトコンベヤ社」という。)(住所:愛知県小牧市大字西之島1818番地 三ツ星ベルト社名古屋工場内)に納品されている。そして、同社内のコンベヤー用ベルトの製造(加硫)工程で、乙第4号証の型具を用いて製品に標章「START」が刻印され、商品として販売されている。
(3)商品の表示について
ア 乙第1号証に記載の商品は、コンベヤー用ベルトである。乙第5号証は、三ツ星ベルト社産業資材事業本部発行2012年1月改定版商品カタログの該当頁の写しである。乙第5号証第9頁第1行目の「表示方法(例)」から、乙第1号証に添付の2014年(平成26年)10月17日付送品明細書の写しの品名欄第1行目に記載の「スタート NN 315/ 4P 600× 50× 15 254.000」のうち「NN 315/ 4P 600× 50× 15 254.000」が、コンベヤー用ベルトの仕様表示であることがわかる。
すなわち、「NN」は心体種類、「315」はベルト強力(N/mm)、「4P」は心体プライ数、「600」はベルト幅(mm)、「50」は上カバー厚(mm)、「15」は下カバー厚(mm)、「254.000」はベルトの長さ(m)を表示しており、2014年(平成26年)10月17日に、三ツ星ベルト社から愛善商会に譲渡され、かつ、標章「START」が刻印された商品は、心体がナイロン帆布からなる、幅600mm、上カバー厚5.0mm、下カバー厚1.5mm及び長さ254.000mの汎用多層式コンベヤー用ベルトである(乙第5号証第2頁参照)。
なお、「50」(上カバー厚)及び「15」(下カバー厚)の表示は、小数点が省略された表示である。
また、乙第5号証第9頁第1行目の表示方法(例)に記載の、「250/3」の「3」(ベルト強力(N/mm)/プライ数のうちの「プライ数」)と、「3P」(心体プライ数)とは同義であるため「3」部分に当たる表示は省略されている。
イ 乙第6号証は、吉野ゴムエ業株式会社ホームページの「搬送ベルト知っとく情報」2008年1月発行No.48の写しである。乙第6号証中、本文第4行目「【コンベヤベルトの呼び方】」の中で、「コンベヤベルトには幅、性能、構造、材質など多種多様に存在します。これらは、JIS K 6322『布層コンベヤゴムベルト』にて規定されています」、「今回は、布層コンベヤゴムベルトの呼び方の一例を紹介します。」と記載されているように、業界内では一般的に、コンベヤー用ベルトを「NN 315/ 4P 600× 50× 15 254.000」のように表示している。
(4)登録商標と社会通念上同一の商標の使用について
要証期間内である、2014年(平成26年)10月17日に、日本国内において、三ツ星ベルト社が愛善商会に、標章「START」が製品面に刻印された商品「コンベヤー用ベルト」を譲渡している。しかも、商標権者は、本件商標と社会通念上同一の商標「スタート」についても使用をしている。
乙第1号証に添付の2014年(平成26年)10月17日付送品明細書の写しの品名欄第1行目に記載の「スタート」は、本件商標「START」の文字から自然に生ずる「スタート」の称呼及び「動き出すこと」、「出発」及び「始まり」との観念を同一にするものである。
すなわち、商標権者は、要証期間内に、日本国内において、指定商品「コンベヤー用ベルト」に関する取引書類に、本件商標と社会通念上同一の標章「スタート」を付しており、実質的に本件商標を使用しているといえる。
2 口頭審理陳述要領書における主張
(1)答弁の理由の補足
乙第1号証に添付の写真及び乙第4号証によれば、商品コンベヤー用ベルトの刻印は、「CONVEYOR BELT」の文字と標章「START」が併記されている。乙第1号証に添付の写真に示す商品は、ベルトとして使用可能なゴム製品であり、コンベヤー用ベルト以外の商品に「CONVEYOR BELT」と付すことは商品の品質誤認を生じさせる行為であるから、「CONVEYOR BELT」の文字と標章「START」が刻印された商品は、コンベヤー用ベルト以外に考えられない。
また、乙第1号証に添付の送品明細書の目付と写真の撮影日が異なる点については、撮影したコンベヤー用ベルトには、その製造年月マークが刻印されていたにも関わらず、その部分の写真が欠落していた。そこで、被請求人は、本件商標の使用をした事実を示す新たな証拠を提出する。
乙第7号証は、要証期間内に、被請求人が本件商品「コンベヤー用ベルト」について本件商標を使用していた事実を証明するものである。乙第8号証は、乙第7号証を補足するものであり、被請求人が譲渡した商品が「コンベヤー用ベルト」であることを証明するものである。乙第9号証は、乙第7号証を補足するものであり、要証期間内に被請求人が本件商品「コンベヤー用ベルト」について本件商標を使用していた事実を証明するものである。乙第10号証は、乙第7号証及び乙第11号証を補足するものであり、被請求人が「コンベヤー用ベルト」を製造する際に用いる「作業標準」及び「製品規格」が、現在も継続して履行されていることを証明するものである。乙第11号証は、被請求人が譲渡した商品は標章「START」が製品面に刻印された「コンベヤー用ベルト」であることを証明するものである。
ところで、被請求人は、標章「START」が製品面に刻印された商品「コンベヤー用ベルト」を本件商標の商標権設定登録後から現在に至るまで、長年にわたり継続して販売している。乙第12号証は、被請求人が長年にわたり継続して販売した商品「コンベヤー用ベルト」の販売実績を証明するものである。
以下、乙各号証について説明する。
ア 乙第7号証は、要証期間内に、三ツ星ベルト社が三ツ星ベルト販売株式会社(以下「三ツ星ベルト販売社」という。)を通じてストロング社に販売し、同会社において現在も在庫として保管しているコンベヤー用ベルトのうち、最も古く販売したもの(以下「最古のコンベヤー用ベルト」という。)及び最近販売したもの(以下「最新のコンベヤー用ベルト」という。)について、本件商標の使用の事実を証明する事実実験公正証書の謄本である。
(ア)乙第7号証の第3では、平成27年11月9日に、公証人が名古屋駅前公証役場において、「最古のコンベヤー用ベルト」及び「最新のコンベヤー用ベルト」の帳票等を見分した上で、その製造と販売等を確認したことが記載されている。
(イ)「最古のコンベヤー用ベルト」について
乙第7号証の第3の3(4)ウ(1)(乙第7号証の文書の項番を表すために片仮名の後に括弧の数字が表示されている場合、実際の乙第7号証の文書においては、該括弧の数字が丸数字で表されている。以下、この(イ)及び(ウ)において同じ。)では、乙第7号証に添付の資料(以下「資料」という。)5から、2013年4月23日に、三ツ星ベルト社がストロング社から最古のコンベヤー用ベルトを受注したこと、及びストロング社に納品された最古のコンベヤー用ベルトには、ベルト強力を示す「250/3」、標章「START」及び製造年月マーク「3M」と表示されることが確認される。
同ウ(2)では、資料6及び7から、三ツ星ベルトコンベヤ社におけるコンベヤー用ベルトの製造段階で、品質及び形状をチェックする担当者が、最古のコンベヤー用ベルトに「250/3 START 3M」の表示が付されているのを確認したとある。
同ウ(3)では、資料8から、2013年11月29日に、三ツ星ベルト社が三ツ星ベルト販売社に出庫し、ストロング社に発送されたコンベヤー用ベルトは標章「START」を付したものであり、そのコンベヤー用ベルトは最古のコンベヤー用ベルトであることが確認されている。
同ウ(4)では、資料9から、2013年11月29日に、三ツ星ベルト社が三ツ星ベルト販売社に対して、最古のコンベヤー用ベルトを販売し売掛金を計上したことが確認されている。
同ウ(5)では、ストロング社が三ツ星ベルト社のコンベヤー用ベルトの加工に着手する時点(同コンベヤー用ベルトがストロング社の倉庫から出庫される時点)で仕入れが計上され、三ツ星ベルト販売社がストロング社から上記出庫した旨の通知を受けて、ストロング社に対する売上/売掛を計上することが確認されている。
同ウ(6)では、資料10から、2014年8月27日に、ストロング社が最古のコンベヤー用ベルトの加工に着手した旨、すなわち、最古のコンベヤー用ベルトが出庫した旨を三ツ星ベルト販売社に通知したことが確認されている。
同ウ(7)では、資料11から、2014年9月12日付で、三ツ星ベルト販売社がストロング社に対して、最古のコンベヤー用ベルトを販売し売掛金を計上したことが確認されている。
同ウ(8)では、資料12から、ストロング社にある「普通コン250K」と記載された帳簿に、最古のコンベヤー用ベルトの取引に関する情報が記載されていることが確認されている。
(ウ)「最新のコンベヤー用ベルト」について
乙第7号証の第3の3(4)エ(1)では、資料13から、2014年6月26日に、三ツ星ベルト社がストロング社から最新のコンベヤー用ベルトを受注したこと、及びストロング社に納品する最新のコンベヤー用ベルトには、ベルト強力を示す「160/3」、標章「START」及び製造年月マーク「5U」と表示されることが確認されている。
同エ(2)では、資料14から、三ツ星ベルトコンベヤ社におけるコンベヤー用ベルトの製造段階で、製造完了確認者が、最新のコンベヤー用ベルトに「160/3 START 5U」の表示が付されているのを確認したとされている。
同エ(3)では、資料15から、2015年3月3日に、三ツ星ベルト社が三ツ星ベルト販売社に出庫し、ストロング社に発送されたコンベヤー用ベルトは標章「START」を付したものであり、そのコンベヤー用ベルトは最新のコンベヤー用ベルトであることが確認されている。
同エ(4)では、資料16から、2015年3月3日に、三ツ星ベルト社が三ツ星ベルト販売社に対して、最新のコンベヤー用ベルトを販売し売掛金を計上したことが確認されている。
同エ(5)では、資料17から、2015年4月20日に、ストロング社が、最新のコンベヤー用ベルトの加工に着手した旨、すなわち、最新のコンベヤー用ベルトが出庫した旨を三ツ星ベルト販売社に通知したことが確認されている。
同エ(6)では、資料18から、2015年5月18日付で、三ツ星ベルト販売社がストロング社に対して、最新のコンベヤー用ベルトを販売し売掛金を計上したことが確認されている。
同エ(7)では、資料19から、ストロング社にある「普通コン160K」と記載された帳簿に、最新のコンベヤー用ベルトの取引に関する情報が記載されていることが確認されている。
(エ)乙第7号証の第4では、平成27年11月10日に、ストロング社一番倉庫において、公証人が最古のコンベヤー用ベルト及び最新のコンベヤー用ベルトの現物を見分した結果が記載されている。
乙第7号証の第4の4(1)及び(2)では、公証人が実際にコンベヤー用ベルトの現物の幅を計測し、刻印されている標章「START」及び製造年マーク等を目視した結果、見分したコンベヤー用ベルトが、最古のコンベヤー用ベルト及び最新のコンベヤー用ベルトであることが確認されている。
(オ)乙第7号証の第5では、資料12及び資料19に記載されている、三ツ星ベルト販売社からストロング社に販売された商品の納品日、サイズ、ストロング社における加工開始日及び仕入計上日が確認されている。そして、最古のコンベヤー用ベルト及び最新のコンベヤー用ベルトに相当する部分が確認されている。
(カ)乙第7証の第7では、平成27年11月10日に、三ツ星ベルトコンベヤ社工場内において、コンベヤー用ベルトに標章「START」等を刻印する作業が確認されている。
(キ)ところで、乙第7号証に添付の写真3、8及び9から明らかなように、ストロング社に納品されたコンベヤー用ベルトは、巻かれて保管されているため、ストロング社等の取引者が、在庫されているコンベヤー用ベルトに刻印された標章「START」等の表示を外部から目視することを可能とするため、標章「START」等の刻印がベルトの外側に現れるように巻回している。
また、ストロング社に納品されたコンベヤー用ベルトは、切り売りしてエンドユーザーに販売されることもあるため、その販売時にはコンベヤー用ベルトに刻印された標章「START」等の表示を目視することが可能である。
すなわち、取引者からすれば、コンベヤー用ベルトに刻印された「START」の標章を指標として、その商品の出所を認識できる。このことは、コンベヤー用ベルトに付された標章「START」の刻印が、流通過程の中で他の商品と区別するための目印として自他商品を識別する機能及びその商品の出所表示機能並びに品質保証機能を発揮していることに他ならない。そして、後述の乙第11号証からも明らかなように、需要者間では、標章「START」が付された商品がコンベヤー用の「ベルト」であると認識され、商取引されているのである。
(ク)なお、資料2ないし資料10、資料12ないし資料17及び資料19の各資料は、それぞれの原本を正しく縮小コピーしたものであることが確認されている。
(ケ)このように、受注、製造、出庫及び納品に至る間、最古のコンベヤー用ベルトには一貫して「250/3 START 3M」が付され、最新のコンベヤー用ベルトには一貫して「160/3 START 5U」が付されており、標章「START」を刻印した商品が「コンベヤー用ベルト」として商取引されていたことは明らかである。
イ 乙第8号証は、平成27年11月10日に実施された事実実験の中で、ストロング社一番倉庫において公証人が見分した商品が、標章「START」と製造年月マークが刻印された「コンベヤー用ベルト」であることを証明するものである
ウ 乙第9号証は、要証期間内に、三ツ星ベルト社から三ツ星ベルト販売社を通してストロング社に譲渡された商品が、標章「START」が製品面に刻印された商品「コンベヤー用ベルト」であることを証明するものである。
エ 乙第10号証は、三ツ星ベルト社が「コンベヤー用ベルト」を受注した時の入力に関する規定の「作業標準(分類No.:OP-G-023)」及び「作業標準(分類No.:OP-G-024)」並びにベルトマークの刻印方法に関する規定「製品規格(分類No.:PX-105)」が、現在も継続して履行されていることを証明するものである。
なお、乙第10号証に添付の「作業標準(分類No.:OP-G-024)」第3頁の写し及び「製品規格(分類No.:PX-105)」第1頁並びに第3頁の写しは、平成27年11月9日に実施された事実実験の中で、公証人が確認した「作業標準(分類No.:OP-G-024)」第3頁及び「製品規格(分類No.:PX-105)」第1頁並びに第3頁の写しに相当する。
オ 以上のように、公正証書において、コンベヤー用ベルトに標章「START」が使用されていることが確認されている。したがって、被請求人は、要証期間内に本件商標を使用していたことに疑いはない。
なお、標章「START」が使用されている商品がコンベヤー用ベルトであることを補強するため、乙第11号証を提出する。
カ 乙第11号証は、要証期間内に、三ツ星ベルト社から三ツ星ベルト販売社を通じてケイハンに譲渡され、かつ標章「START」が製品面に刻印された商品が、「コンベヤー用ベルト」であることを証明するものである。
(ア)乙第11号証には、要証期間内に、三ツ星ベルト社から三ツ星ベルト販売社を通じてケイハンに譲渡された、標章「START」が製品面に刻印された商品「コンベヤー用ベルト」を示す表1.コンベヤー用ベルト一覧表が記載され、この一覧表には、ケイハン福山工場内において、これらの商品が設置されたコンベヤー装置の機体番号が示されている。
(イ)乙第11号証に添付の写真は、前記コンベヤー用ベルト一覧表のNo.4に記載のコンベヤー用ベルト(以下「No.4のコンベヤー用ベルト」という。)が、ケイハン福山工場内のコンベヤー装置(機体番号「2-1D-2」と称されている。)に装着されたベルト、すなわちコンベヤー用ベルトを撮影したものである。そして、当該コンベヤー用ベルトには、標章「START」、カバーゴム種表示「SHGA」(三ツ星ベルト社のベルト品種である「スーパーヒートGA」の略表示である。)及び製造年月「3I」が刻印されていることがわかる。
なお、ケイハン福山工場においても、標章「START」が視認可能な状態でコンベヤー装置に装着されており、商標として使用されている。
(ウ)乙第11号証に添付のコンベヤーベルト製造伝票は、三ツ星ベルト社がケイハンからコンベヤー用ベルトを受注したことによって起票されたものである。当該製造伝票の「入庫伝票」の「期」欄の「9」及び「No.」欄の「4012-0」は、乙第10号証に添付の「作業標準(分類No.:OP-G-023)」の、3.製造指図書記入及びM-88人力手順の規定に基づき入力される。また、「マーク」欄の「315/4 START SHGA ネンゲツ」は、製造するコンベヤー用ベルトに、「315/4」、標章「START」、「SHGA」及び製造年月を付す指示を記載したものである。そして、平成25年(2013年)7月30日に加硫が完了した旨のサインが記載されているので、「ネンゲツ」は、乙第10号証に添付の製品規格(分類No.PX-105)「2-1製造年月マーク」に従って「3I」と表示することになる。
なお、「製造年月マーク(「3I」)」及び当該製造伝票に記載されている「ベルトサイズ(1200×4×5.0×1.5×70.000)」、「仕様(スーパーヒートGA)」、「ベルト強力(315/4)」から、当該製造伝票がNo.4のコンベヤー用ベルトの製造伝票であることがわかる。
(エ)乙第11号証に添付の「ロートキュア工程 コンベヤーベルト品質チェックシート(B)」は、「納期」欄に「9」、「伝票No.」欄に「4012」と記入されているので、No.4のコンベヤー用ベルトの品質や形状をチェックした結果を記入したものであることがわかる。
(オ)乙第11号証に添付の2013年8月末締め売掛票は、三ツ星ベルト社のものであり、2/4頁の「ご請求内容及び発送先」欄の下から2行目に「スーパーヒートGA」、及び前記製造伝票の「期」欄に記載の「9」並びに「No.」欄に記載の「4012-0」を示す「N0.940120」が記載されているので、2013年8月28日に、三ツ星ベルト社が三ツ星ベルト販売社に対して、No.4のコンベヤー用ベルトを販売し売掛金を計上したことがわかる。
(カ)乙第11号証に添付の2013年8月29日付売掛票は、三ツ星ベルト販売社のものであり、「ご請求内容及発送先」欄の上から8行目に「スーパーヒートGA」、及び前記製造伝票の「期」欄に記載の「9」並びに「No.」欄に記載の「4012-0」を示す「NO.940120」が記載されているので、2013年8月29日に、三ツ星ベルト販売社がケイハンに対して、No.4のコンベヤー用ベルトを販売し売掛金を計上したことがわかる。
(キ)以上のことから、乙第11号証の証明書に添付の写真に示すコンベヤー用ベルトは、要証期間内に、三ツ星ベルト社から三ツ星ベルト販売社を通じてケイハンに譲渡された「コンベヤー」用の「ベルト」であり、この商品の製品面に標章「START」が刻印された「コンベヤー用ベルト」であることがわかる。
なお、上記証拠により十分立証されているとの理由並びに地理的及び時間的事由により、被請求人は、製造販売する商品がコンベヤー用ベルトであることを立証する証拠として公正証書を提出していないが、必要であれば提出する用意がある。
キ 被請求人は、長年にわたり本件商標を使用している。このことを立証するため、乙12号証を提出する。乙第12号証は、三ツ星ベルト社の「START」ブランドコンベヤー用ベルトの販売実績を示す「販売実績推移」及び「販売実績リスト」である。「販売実績リスト」の通し番号「1?2610」から明らかなように、三ツ星ベルト社は、日本国内において、少なくとも要証期間内に、継続して標章「START」を製品面に刻印した商品「コンベヤー用ベルト」を販売している。
なお、乙第7号証に記載の「最古のコンベヤー用ベルト」、「最新のコンベヤー用ベルト」及び乙第11号証で述べた「No.4のコンベヤー用ベルト」の販売実績は、当該「販売実績リスト」の通し番号「1193」、「2318」及び「964」の欄の販売実績に相当する。
(2)審理事項通知書の暫定的な見解に対する意見
上記(1)で述べたとおり、乙第1号証に添付の送品明細書の日付と写真の撮影日が異なる点については、撮影したコンベヤー用ベルトにはその製造年月マークが刻印されているにも関わらず、その部分の写真が欠落しているため、当該送品明細書の商品コンベヤー用ベルトと写真に示すコンベヤー用ベルトとが同一であることが不明確となっていた。この点を明らかにするために、被請求人は、新たな証拠を提出した。
(3)請求人の主張に対する意見
ア 乙第1号証ついて
請求人は、乙第1号証に添付の送品明細書品名欄に記載されている片仮名「スタート」は、本件商標とは社会通念上同一の商標ではないと主張している。しかし、欧文字「START」は、広辞苑にも「スタート」と共にその綴りとして掲載されるほど、我が国においては馴染みのある外来語である。また、片仮名「スタート」からは、「動き出すこと。出発。始まり。」などの観念が生じることが自然である。そうすると、片仮名「スタート」を欧文字で表す場合、「START」の欧文字5文字が当然のように想起される。すなわち、片仮名「スタート」と欧文字「START」とが社会通念上同一の商標であることは明らかである。
また、請求人は、当該送品明細書には、形態として「製造指図」と記載されているから、これはいわゆる受注生産を意味するものと考えられると主張している。しかし、請求人は、何ら根拠を示すことなく、「製造指図」をもって受注生産と述べているにすぎない。また、仮に受注生産であっても、当該送品証明書に記載の「スタート」に基づいて商取引がなされており、自他商品を識別するための表示として機能している。
なお、請求人は乙第1号証に添付の写真の日付の客観的根拠及び送品明細書に記載された商品と添付写真に表示された商品が一致するものであるか確認することができないと主張するが、この点については、上記(1)で詳細に説明した。
イ 乙第2号証について
上記アで説明したように、片仮名「スタート」と欧文字「START」とは、社会通念上同一の商標であるため、被請求人は本件商標を使用しているといえる。
ウ 乙第4号証について
請求人は、乙第4号証がコンベヤー用ベルトのエンボスに使用される型具であるとしても、その使用は自他商品識別力を発揮することを目的としたものではないと主張している。しかし、コンベヤー用ベルトは、土砂、砂利などを搬送する商品であり、印刷等により標章を施しても、使用に伴って削られてしまい、出所表示のみならず品質保証機能を担保できない。そのため、被請求人を含む同業者はコンベヤー用ベルトに標章(本件では「START」)を刻印し、実際にコンベヤー用ベルトを扱う需要者及び取引者は、コンベヤー用ベルトに刻印された標章からその商品の出所を把握する。すなわち、本件商品「コンベヤー用ベルト」についての本件商標の使用は、自他商品識別機能を発揮させるためである。
3 上申書における主張
本件商標は、以下のとおり、自他商品識別機能を有している。
乙第13号証は、2007年より現在に至るまで使用されているストロング社のパンフレットの写しである。
(1)本件指定商品の特殊性と取引の実情
本号証第3頁及び第4頁の「施工事例」に記載されているとおり、被請求人の取引先であるストロング社は、被請求人から購入した本件商標に係る指定商品「コンベヤー用ベルト」を、最終的にコンベヤーベルトを使用する顧客の要望に応えて、エンドレスに接続するエンドレス加工などの加工を施して、顧客に販売する代理店である。
一方、被請求人による本件商標に係る指定商品「コンベヤー用ベルト」の製造には、受注から納品までに3カ月以上を必要とする。そのため、ストロング社は、顧客の緊急時などの要望に応えるため、常に被請求人の製造する「コンベヤー用ベルト」を在庫する必要がある。すなわち、被請求人がコンベヤー用ベルトの一次加工業者であるとすれば、ストロング社は、コンベヤー用ベルトに加工を施し、顧客に販売する二次加工業者という関係にある。このように、本件商標に係る指定商品「コンベヤー用ベルト」は、一般の消費者の目には触れず、需要者間で取引されるという事情がある。しかも、「コンベヤー用ベルト」の損傷、最終顧客からの新たなベルトへの交換等に応えるため、「START」が刻印された箇所を切り取ることなく加工し、その商品の出所を表示するだけでなく、商品の品質を保証する必要がある。そのため、本件商標に係る指定商品「コンベヤー用ベルト」は、標章「START」を付した状態で顧客へ譲渡されている。
(2)競業メーカーの「コンベヤー用ベルト」の加工・販売
乙第13号証第5頁「■主要取引先」欄に記載のとおり、ストロング社は、被請求人の製造するコンベヤー用ベルトだけでなく、他の競業メーカーのコンベヤー用ベルトについても、購入し、前記と同様に加工・販売している。すなわち、ストロング社は、複数メーカーのコンベヤー用ベルトの中から、コンベヤー用ベルトに付された標章「START」を指標として、加工・販売している。このような点からも、コンベヤー用ベルトに刻印された標章「START」が、自他商品を識別する機能及びその商品の出所表示機能並びに品質保証機能を発揮しているといえる。
第4 当審の判断
1 被請求人が提出した乙各号証及びその主張によれば、以下のとおり認めることができる。
(1)最古のコンベヤー用ベルトについて
ア 乙第7号証は、名古屋法務局所属の公証人による平成27年第399号の事実実験公正証書の謄本(以下「公正証書」という。)であるところ、公正証書に添付の写真3ないし6には最古のコンベヤー用ベルトが写されており、その表面には、「CONVEYOR BELT」及び「MITSUBOSHI BELTING LTD.」の欧文字とともに、「START」の欧文字を横書きしたもの(以下「本件使用商標」という。)が表示され、さらに、その右側には「3M」及び「78」の文字、その左側には「250/3」の文字が表示されている。
そして、公正証書に添付の資料2及び3をも勘案すれば、上記「CONVEYOR BELT」の欧文字は商品の普通名称を、「MITSUBOSHI BELTING LTD.」の欧文字は商標権者の英文社名を、「3M」の文字は2013年11月の製造に係るものであることを表しているものといえる。
イ 公正証書に添付の資料5は、販売先を「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」、発送先をストロング社とする、2013年7月9日付けの商標権者の「コンベヤベルト 製造伝票」であるところ、受注日として「13/04/23」の日付が記載されているとともに、「入庫伝票」の欄には「C」の記号と「0078」の数字、「マーク」の欄には「250/3 START」の文字が記載されており、「13.11.27」の日付の製造完了の押印がされている。
そして、入庫伝票欄の「0078」の数字及びマークの欄の「250/3 START」の文字は、上記アのとおり、公正証書に添付の写真3ないし6に係るコンベヤー用ベルトの表面の表示と合致するものである。
ウ 公正証書に添付の資料8は、販売先を「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」、発送先をストロング社とする商標権者の「出庫票」であるところ、「伝票No.」の欄には「5259」の数字、「年月日」の欄には「131129」の日付、「品名」の欄には「スタート」の片仮名及び「NN 250/ 3P 800X 50X 15 252.000」の文字、「備考」の欄には「NE-130412-1」及び「NN250/3P C-0078」の文字、「ロケーション」の欄には「04330」の数字が記載されている。
そして、「品名」欄の「スタート」の片仮名は、上記アの本件使用商標の表音と合致するものであり、同じく「250/ 3」の数字及び「備考」欄の「C-0078」の文字は、上記イの「製造伝票」における入庫伝票欄の記載と合致するものである。
エ 公正証書に添付の資料9は、商標権者から「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」に宛てた2013年11月29日付けの「売掛票」であるところ、「伝票No.」の欄には「5259」の数字、「ご請求内容及発送先」の欄には「ストロングラバー工業株式会社」、「スタート」、「04330」、「NN 250/ 3P 800X 50X 15 252.000」、「NN250/3P C-0078」及び「NE-130412-1」の文字が記載されている。
そして、これら「伝票No.」欄及び「ご請求内容及発送先」欄の記載事項は、資料8の「出庫票」の「伝票No.」欄、「品名」欄及び「備考」欄における記載事項と合致するものである。
オ 乙第12号証の2葉目以降は、商標権者の「『START』ブランド コンベヤー用ベルト販売実績リスト」であるところ、14葉目には、「通し番号」を「1193」とする欄に、「実績計上年月日」を「131129」、「製品コード」を「01T NN 250/ 3P 800X 50X 15252000 04330」及び「販売先」を「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」との文字が記載されている。
そして、これらの記載事項は、上記エの公正証書に添付の資料9の「売掛票」の記載事項に合致するものである。
(2)最新のコンベヤー用ベルトについて
ア 公正証書に添付の写真8ないし12には最新のコンベヤー用ベルトが写されており、その表面には、「CONVEYOR BELT」及び「MITSUBOSHI BELTING LTD.」の欧文字とともに、本件使用商標が表示され、さらに、その右側には「5U」及び「254」の文字、その左側には「160/3」の文字が表示されている。
そして、公正証書に添付の資料2及び3をも勘案すれば、上記「CONVEYOR BELT」の欧文字は商品の普通名称を、「MITSUBOSHI BELTING LTD.」の欧文字は商標権者の英文社名を、「5U」の文字は2015年2月の製造に係るものであることを表しているものといえる。
イ 公正証書に添付の資料13は、販売先を「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」、発送先をストロング社とする、2015年2月3日付けの商標権者の「コンベヤベルト 製造伝票」であるところ、受注日として「14/06/26」の日付が記載されているとともに、「入庫伝票」の欄には「D」の記号と「0254」の数字、「マーク」の欄には「160/3 START」の文字が記載されており、「15.2.13」の日付の製造完了の押印がされている。
そして、入庫伝票欄の「0254」の数字及びマークの欄の「160/3 START」の文字は、上記アのとおり、公正証書に添付の写真8ないし12に係るコンベヤー用ベルトの表面の表示と合致するものである。
ウ 公正証書に添付の資料15は、販売先を「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」、発送先をストロング社とする商標権者の「出荷指図書」であるところ、「伝票No.」の欄には「6772」の数字、「年月日」の欄には「150303」との日付、「品名」の欄には「スタート」の片仮名及び「NN 160/ 3P 500X 30X 15 251.000」の文字、「備考」の欄には「ムラマツサマ」及び「NN160/3P D-0254」の文字が記載されている。
そして、「品名」欄の「スタート」の片仮名は、上記アの本件使用商標の表音と合致するものであり、同じく「160/3」の数字及び「備考」欄の「D-0254」の文字は、上記イの「製造伝票」における入庫伝票欄の記載と合致するものである。
エ 公正証書に添付の資料16は、商標権者から「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」に宛てた2015年3月3日付けの「売掛票」であるところ、「伝票No.」の欄には「6772」の数字、「ご請求内容及発送先」の欄には「ストロングラバー工業株式会社」、「スタート」、「10698」、「NN 160/ 3P 500X 30X 15 251.000」、「NN160/3P D-0254」及び「ムラマツサマ」の文字が記載されている。
そして、これら「伝票No.」欄及び「ご請求内容及発送先」欄の記載事項は、資料15の「出庫票」の「伝票No.」欄、「品名」欄及び「備考」欄における記載事項と合致するものである。
オ 乙第12号証の2葉目以降は、商標権者の「『START』ブランド コンベヤー用ベルト販売実績リスト」であるところ、25葉目には、「通し番号」を「2318」とする欄に、「実績計上年月日」を「150303」、「製品コード」を「01T NN 160/ 3P 500X 30X 15251000 10698」及び「販売先」を「三ツ星ベルト販売株式会社 名古屋店」との文字が記載されている。
そして、これらの記載事項は、上記エの公正証書に添付の資料16の「売掛票」の記載事項に合致するものである。
2 事実認定と判断
(1)上記1によれば、商標権者は、本件使用商標を表示したコンベヤー用ベルトを、2013年(平成25年)11月27日に製造し、同年11月29日にストロング社に販売したほか、2015年(平成27年)2月13日に製造し、同年3月3日にストロング社に販売したことが認められる。
(2)本件商標は、上記第1のとおり、「START」の欧文字を横書きしてなるものであり、他方、本件使用商標も、上記1(1)アのとおり、「START」の欧文字を横書きしたものであるから、本件商標と本件使用商標とは、その構成文字を同じくし、書体を異にするにすぎないものであるから、社会通念上同一の商標と認められる。
(3)本件審判請求に係る指定商品は、上記第2のとおり、第7類「コンベヤー用ベルト」であるところ、本件使用商標が使用されている商品は、上記1のとおり、「コンベヤー用ベルト」であるから、請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれるものと認められる。
(4)商標権者が本件使用商標を表示したコンベヤー用ベルトを製造又は販売した2013年(平成25年)11月27日、同年11月29日、2015年(平成27年)2月13日及び同年3月3日は、いずれも要証期間内に該当するものと認められる。
(5)小括
以上のとおり、本件商標の商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品「コンベヤー用ベルト」について、その商品に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、さらに、同商標を付したものを譲渡又は引渡しをしたものであるから、その行為は、商標法第2条第3項第1号にいう「商品に標章を付する行為」及び同項第2号にいう「商品に標章を付したものを譲渡又は引き渡しをする行為」に該当するものと認められる。
3 請求人の主張について
請求人は、「『商標の使用』とは、単に第2条第3項の形式的な使用ではなく、『自他商品識別』を発揮させる態様で、言い換えると、自他商品の識別という目的をもって使用されたかどうかということである。」とした上で、被請求人が提出した乙各号証について、「ストロング社等の顧客の発注に基づいて製品を製造し、その完成品を発注者に直送するものであるから、市場において他人の商品と混同を避けるなどの目的で標章を使用していない」、さらに、「発注者は納品された製品を用いる場合には、引っ張り強度などが弱い部分である本件使用商標が刻印された箇所を切り取って廃棄するのが通常であり、納品された製品を適宜カットして第三者に販売したとしても、商標は使用されていない」と指摘して、「被請求人の製品は全て市場に提供されておらず、その製品に付された標章は、自己の商品と他人の商品を識別するための識別標識として使用されているものではない」旨主張している。
しかしながら、商標法第2条第3項第1号は、少なくとも、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」を、また、同項第2号は「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」と規定しているのみで、注文を受けた商品に標章を付する行為や、注文を受けた商品に標章を付したものを譲渡、引き渡し等をする行為を除外するとの規定があるわけではない。
しかも、被請求人が製造した「コンベヤー用ベルト」は、例えば、ストロング社に販売した後も、同社によって第三者に転売されているのであって、市場において転々流通しているものといえる。
請求人は、第三者に転売する際には、引っ張り強度が弱い部分であるから、本件使用商標が刻印された箇所は切り取って廃棄されるのが通常であると主張しているが、乙第11号証に添付の写真によれば、同写真はコンベヤー用ベルトがコンベヤー装置に装着した状態の写真であって、最終消費者が該コンベヤー用ベルトを利用している状態を表しているといえるところ、その状態でも、該コンベヤー用ベルトには本件使用商標が表示されていることが確認できる。
そうすると、被請求人が製造した「コンベヤー用ベルト」に表示された本件使用商標も、市場を転々流通する過程において、その商品の出所を表示するものとして需要者に認識されるものといえるから、請求人の上記主張を採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-03-15 
結審通知日 2016-03-25 
審決日 2016-03-15 
出願番号 商願昭11-2145 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X07)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 林 栄二
平澤 芳行
登録日 1936-07-15 
登録番号 商標登録第279850号(T279850) 
商標の称呼 スタート 
代理人 阪中 浩 
代理人 鍬田 充生 
代理人 濱田 俊明 
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