• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1315908 
異議申立番号 異議2015-900377 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-14 
確定日 2016-06-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第5800283号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5800283号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5800283号商標(以下「本件商標」という。)は、「こめいっこく」の文字を標準文字で表してなり、平成27年3月16日に登録出願、第33類「米を原材料とする焼酎,その他の米を原材料とする日本酒」を指定商品として、同年9月1日に登録査定され、同年10月16日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第1992184号商標(以下「引用商標」という。)は、「いっこく」の文字を書してなり、昭和60年5月25日に登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、同62年10月27日に設定登録され、その後、平成19年12月5日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標と引用商標の比較
ア 本件商標は、「こめ」と「いっこく」の二語からなる結合商標と解され、既成語ではなく必ず一体に見なければならない格別の事情も存しないところ、「こめ」の文字は、「米」の文字を平仮名で表記したものであって、米が商品「焼酎」、「清酒」を始めとする酒類の原材料として用いられることは周知の事実である。
そして、現に、取引の実情をみても、酒類の取引業界、特に種々の原材料による商品が販売されている焼酎の業界においては、一見して原材料が判別できるように、原材料を強調して、「こめ(米)○○」、「むぎ(麦)○○」等の商標が採択され使用されている例は枚挙にいとまがない。
こういった「こめ(米)○○」、「むぎ(麦)○○」等、使用した原材料の名称を含む商標は、当該業界においては「強調表示」として、「米焼酎」、「麦焼酎」等の「冠表示」と同等の扱いを受けることとして、不当景品類及び不当表示防止法に基づき策定された「単式蒸留しょうちゅうの表示に関する公正競争規約」第4条第1項第1号(甲3)や、酒類業組合法に基づく組合である日本酒造組合中央会及び日本蒸留酒酒造組合による「単式蒸留しょうちゅうと連続式蒸留しょうちゅうを混和した酒類の表示に関する自主基準」第4条第5項(1)(甲4)、日本蒸留酒酒造組合による「連続式蒸留しょうちゅうの表示に関する自主基準」第4条第1号及び同運用細則第3条第2項第1号(甲5)に定められ、運用されているとおりである。
このことからも、「こめ○○」なる商標中の「こめ」の文字が、原材料の表示に当たることは明らかである。
そして、本件指定商品との関係においてみても、審査において「米」を原材料とする商品以外については品質誤認を生じさせるおそれがあると認定されて補正されたものであるとおり、本件商標中の「こめ」の文字部分は、商品の原材料・品質を表したにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有しないことは明らかであり、本件商標において自他商品識別標識としての機能を果たす部分は、「いっこく」の部分であるといえる。
したがって、本件商標は、その要部である「いっこく」の部分より、「イッコク」の称呼と、「いっこく(一国)、一つの国」等の観念を生じる。
イ これに対し、引用商標は、「いっこく」の文字よりなるから、「イッコク」の称呼と「いっこく(一国)、一つの国」等の観念を生じる。
ウ してみれば、本件商標は、引用商標に、原材料の「強調表示」である「こめ」の文字を付加してなるにすぎず、両者は、「イッコク」の称呼、「一国、一つの国」等の観念を共通にし、「いっこく」の構成文字も共通にする、互いに類似の商標であって、その指定商品も抵触する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)取引業界の実情
ア 本件指定商品の酒類の取引業界、特に種々の原材料による商品が販売されている焼酎の業界において、原材料を強調した「こめ(米)○○」、「むぎ(麦)○○」等の商標が採択され使用されていることは前記したとおりであるが、焼酎業界においては、一社が複数の原材料によるシリーズ商品展開を行うことも多く、その際に、例えば「米美人」と「麦美人」と「芋美人」、「さつま隼人」と「さつま隼人麦」のように、ブランド名「○○」の前または後ろに、原材料名を表記し「米(こめ)○○」、「麦(むぎ)○○」、「芋(いも)○○」や「○○米(こめ)」、「○○麦(むぎ)」、「○○芋(いも)」等のシリーズとして商品展開することが、商慣習上よく行われている(甲6?甲26。これらは一例である。)。
イ こういったシリーズ展開の事例は、殊に近年増えてきており、その背景には、2000年代前半の本格焼酎ブームにより麦焼酎や芋焼酎が一般化したこと、2000年前後からの大手蒸留酒メーカーの再編等により複数原料の製品を一社で供給できる事業者が増加したこと、2000年代半ばからの混和焼酎市場の拡大、大手流通業のプライベートブランド市場が活性化し単一原料メーカーの複数社の製品を同一プライベートブランドの下にシリーズ化したこと、等の事情が挙げられる。
そして、この状況は今後もますます進むと思料され、商標の類否判断の際には、かかる取引の実情も考慮されるべきと考える。
ウ 上記した実情にあっては、本件商標が商品について使用された場合、引用商標の使用商品と、あたかも原材料違いのシリーズ商品であるかの如く、取引者・需要者に誤認・混同を生じせしめるおそれがあるといわざるを得ない。
(3)商標審査基準
結合商標の類否に関しては、商標法第4条第1項第11号についての商標審査基準において、「形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」と明示されているところである。
特に上記の取引事情のある酒類等については、この原則どおりに、原材料を表示する文字が付加された商標と付加されていない商標を類似とすることによって、事業者のブランド保護と、消費者の混同回避を図ることが、商標法の立法趣旨に適い、妥当なものと思料する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものである。

4 当審の判断
(1)本件商標について
ア 本件商標は、上記1のとおり、「こめいっこく」の文字からなり、その構成文字は、同書、同大、同間隔でまとまりよく一体に表され、これからは、「コメイッコク」の称呼を生じるものである。
また、本件商標は、既成語の「こめ」と「いっこく」の語を結合したものと理解し得るものであり、前者の「こめ」の文字が「米」を想起させることから、後者の「いっこく」は「一石」(穀物の量:10斗、180.39リットル)を連想・想起させ、全体として「米一石」(米が一石、一石の米)の意味合いを認識させるものといえるから、「米が一石、一石の米」程の観念を生じるものである。
そうすると、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、構成全体をもって、一つの商標を表したと理解されるとみるのが相当である。
イ なお、申立人は、本件商標の構成中「こめ」の文字が「米」の文字を平仮名で表記したものであり、米が商品「焼酎」、「清酒」を始めとする酒類の原材料として用いられることは周知であること、焼酎においては原材料を強調して「こめ(米)○○」、「むぎ(麦)○○」等の商標が採択され使用されていること、及び一社が「米(こめ)○○」、「麦(むぎ)○○」のように原材料名を含む商品名を用いて原材料によるシリーズ商品展開を行うことが多いことなどから、本件商標は、その構成中「こめ」の文字が原材料の表示に当たり、「いっこく」の文字部分が自他商品識別標識としての機能を果たす旨主張している。
確かに、焼酎については「米(こめ)○○」、「麦(むぎ)○○」のような商品名でシリーズ展開を行っている業者が少なからずあることは認められるとしても、本件商標の構成にあっては、「いっこく」の文字部分のみが独立して看者の注意をひくとはいい難く、本件商標は、上記アのとおり「こめいっこく」の構成文字が一体に表され、「コメイッコク」の一連の称呼のみを生じ、さらに「米が一石、一石の米」の意味合いを認識させる、全体が一体不可分のものというべきである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)引用商標について
引用商標は、上記2のとおり「いっこく」の文字からなり、「イッコク」の称呼を生じるものである。そして、引用商標は、その読みから「一国」、「一刻」、「一石」の文字を連想させ、それぞれの意味合いを想起させるものの、特定の観念を生じるとまではいえないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者は、外観において、語頭における「こめ」の文字の有無という差異を有するから、この差異が6文字又は4文字という比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、称呼においては、両者は語頭における「コメ」の音の有無という差異を有するから、この差異が共に促音を含む6音又は4音という比較的短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は大きく、聞き誤るおそれのないものである。
さらに、観念においては、引用商標が特定の観念を生じるとはいえないものであるから、本件商標と相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-05-25 
出願番号 商願2015-23401(T2015-23401) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W33)
T 1 651・ 263- Y (W33)
T 1 651・ 261- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大森 友子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 亨子
板谷 玲子
登録日 2015-10-16 
登録番号 商標登録第5800283号(T5800283) 
権利者 株式会社恒松酒造本店
商標の称呼 コメイッコク、イッコク 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ