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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1825
管理番号 1315763 
審判番号 取消2013-300808 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-09-20 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5353674号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5353674号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5353674号商標(以下「本件商標」という。)は、「DANNY CHOO」の欧文字を横書きしてなり、平成22年3月3日に登録出願、第18類「かばん類,袋物」及び第25類「洋服,コート,セーター,履物,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),婦人靴,サンダル靴,紳士靴,ブーツ」を指定商品として、同年9月17日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成25年10月11日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、本件審判請求日前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に日本国内において、その指定商品のいずれについても使用されていないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 審判事件弁駁書における主張
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人が所有しているとされるウェブサイト「dannychoo.com」のドメイン名・作成日・登録者・登録企業に関する情報を掲載したウェブサイトのスクリーンショットである。乙第1号証は、単に「dannychoo」の文字がウェブサイトのアドレス(URL)の一部として使用されていることを示しているにすぎない。また、被請求人は、同サイトにてDanny Chooブランドの試作品を複数回発表してきた旨主張しているが、かかる主張を裏付ける資料は一切提出されておらず、また、「試作品」は市場取引の対象とされるものではなく商標法上の「商品」にはそもそも該当しないものであるから、仮に試作品に本件商標を付していたという事実が存在したとしても、本件商標の指定商品についての使用と認められるものではないことは明白である。
すなわち、乙第1号証は、本件商標がその指定商品について要証期間内に使用されたことを立証する証拠たりえないことが明らかである。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、被請求人が所有しているサイト「カルチャージャパン」に掲載されたDanny Chooブランドのものとされる靴の紹介記事、同記事に寄せられたコメントのスクリーンショット、Danny Chooブランドのものとされる靴の写真、靴のデザイン案や製作用の工具類の写真、及び被請求人の代表者とされる人物が靴を製作している様子の写真である。
これらのスクリーンショットや写真中には、本件商標「DANNY CHOO」は一切表示されておらず、わずかにスクリーンショット中のウェブサイトのアドレス(URL)の一部に「dannychoo」の文字が含まれているにすぎない。すなわち、乙第2号証は、本件商標がその指定商品について使用されたことを立証する証拠としては全く無意味であるといえる。
加えて、そもそも乙第2号証において紹介されている靴は、商標法上の「商品」といい得るものではない。商標法上の「商品」たりうるには、同質のものを多数供給することが可能であり、代替性が存在することを要すると解釈されているところ、乙第2号証において紹介されている靴は被請求人も認めるとおり試作品にすぎず、一般に市場取引の対象とすることが全く予定されていない一点もの、すなわち商標法上の「商品」に該当しないものであることは明らかである。このように、ただ一つしか存在しない品物に商標をわずか一度付したとしても商標法の保護対象である業務上の信用が化体することはなく、商標権をもって保護するに値しないことは明らかである。
以上のとおり、乙第2号証のいずれのスクリーンショット・写真も、本件商標がその指定商品について要証期間内に使用されたことを立証する証拠たりえないことは明らかである。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、被請求人が所有しているサイト「カルチャージャパン」に掲載されたDanny Chooブランドのものとされるドール(人形)用の靴の写真及び当該ドール用の靴を履いたドールの写真であるが、人形用の靴は第28類「おもちや 人形」(24A01)に分類されるべきものであり、そもそも本件商標の指定商品とは全く無関係である。
すなわち、乙第3号証も本件商標がその指定商品について要証期間内に使用されたことを立証する証拠たりえないことは明らかである。
(4)まとめ
以上に述べたことから、乙第1号証ないし乙第3号証とともに提出された被請求人の答弁書における主張は、到底認められないものである。
3 口頭審理陳述要領書による陳述
(1)被請求人は、口頭審理陳述要領書において、新たに乙第4号証ないし乙第18号証を提出し、被請求人自ら及びその通常使用権者により、本件商標を要証期間内に日本国内において、「指定商品である被服に使用していることは明らかである。」と主張する。
しかしながら、本件商標の登録原簿の写し(甲1)からも明らかであるとおり、本件商標の指定商品は、「被服」を含むものではない。
なお、乙第4号証ないし乙第18号証によって、被請求人が本件商標の使用を主張することを意図している実際の商品は「ティーシャツ」であると考えられる。しかし、商品「ティーシャツ」は、本件商標の第25類の指定商品の範ちゅうに属さない。このことは、「類似商品・役務審査基準【国際分類第10-2014版対応】の第25類の部分抜粋」(甲2)から明白である。
したがって、乙第4号証ないし乙第18号証及び被請求人の口頭審理陳述要領書における被請求人の主張は失当である。
なお、上記の点以外でも、被請求人の口頭審理陳述要領書における被請求人の主張は誤りであるため、以下に念のためその理由を述べる。
ア 乙第10号証ないし乙第12号証について
被請求人は、乙第10号証ないし乙第12号証により、本件商標を表記した「被服」が要証期間内に販売されたと主張する。
しかし、乙第10号証ないし乙第12号証から見いだせるのは「マルC(「C」の丸囲み文字。以下同じ。):dannychoo」及び「マルC dannychoo」の表示のみである。ここで「マルC」とは、一般に著作権を表示することは明らかであり、乙第10号証ないし乙第12号証における「マルC:dannychoo」及び「マルC dannychoo」の表示は、これらの号証に掲載のティーシャツに表示された図柄(キャラクター)の著作権をDANNY CHOO氏が保有することを意味すると考えるのが自然である。
したがって、乙第10号証ないし乙第12号証によっては、本件商標の使用は立証されない。
イ 乙第13号証ないし乙第18号証について
被請求人は、本件商標を使用した「被服」をマレーシアの委託業者に製造させ、当該被服を日本国内に輸入し、日本国内において譲渡及び日本から第三国へ輸出しているとして、乙第13号証ないし乙第18号証を提出した。
しかし、乙第13号証のティーシャツが日本国内に輸入され、日本国内において譲渡及び日本から第三国へ輸出されたことの具体的な証拠は一切提出されていない。なお、乙第14号証の請求書の写しには「SOLD to:MIRAI INC」との記載があるが、この会社が日本に所在することは立証されていないため、乙第14号証をもって当該ティーシャツが日本に輸入されたことは立証されない。
(2)結語
以上述べたことから、被請求人の口頭審理陳述要領書における主張及び被請求人から新たに提出された証拠を考慮しても、商標権者である被請求人又は通常使用権者が本件商標をその指定商品について要証期間内に使用していたとは到底認められない。
4 上申書における主張
(1)被請求人による主張の一部撤回について
被請求人は、審判事件答弁書により主張した「靴」についての本件商標の使用主張について撤回するとのことである。この点については、請求人は争うものではない。
(2)使用商品「ティーシャツ」が指定商品「洋服」の下位概念であるとの被請求人の主張について
被請求人は、本件商標を使用している商品である「ティーシャツ」が、本件登録の指定商品中の「洋服」の下位概念に属する旨を主張している。
そして、被請求人は、商品「ティーシャツ」が商品「洋服」とは異なる類似群に属することが示されている「類似商品・役務審査基準」に関し、同審査基準の冒頭に掲載の「本審査基準の運用について」の記述を引用し、商品・役務の類否判断においても、取引の実情に応じて判断する旨が記されているとする。この点については、請求人もあえて争うものではない。確かに、審査基準は生きた経済に即応すべきものであり、概念的に割り切って類否範囲を固定すべきではない。
しかしながら、「類似商品・役務審査基準」は全審査官の統一的基準の確立を目的とする点、及び「商品又は役務の類否を検討審査する場合はすべてこの基準による」(甲3)とする点を考慮すると、同審査基準に反する例外的な類否判断を行うのは、対象商品・役務の具体的・個別的な事情から、又は商取引・経済界等の実情の推移から、同基準に反する判断が必要な場合に限定されるべきである。
ここで、被請求人は、被請求人又はその使用権者の取扱いに係る具体的な商品「ティーシャツ」が一般的な「ティーシャツ」とは異なる性質・特徴を有するとは主張していない。したがって、被請求人が主張しているのは被請求人又はその使用権者の取扱いに係る具体的な商品「ティーシャツ」のみが例外的に指定商品「洋服」の範ちゅうに属するとの主張ではなく、「ティーシャツ」一般が「洋服」の下位概念に属すると主張していることは明らかである。
したがって、本件商標の使用商品「ティーシャツ」のみを商品の類否判断において審査基準の例外として扱う具体的・個別的な理由が存在しないことは明白である。
さらに、「類似商品・役務審査基準」の改訂状況についてみてみると、平成24年1月1日施行の国際分類第10版対応の「類似商品・役務審査基準」改訂以降、平成25年1月1日施行の国際分類第10-2013版対応の改訂、平成26年1月1日施行の国際分類第10-2014版対応の改訂と、審査基準の内容が3年連続改訂されている(甲4?甲6)。そして、各年の改訂前には専門の委員会にて商取引の実情・経済界の現状を詳細かつ十分に検討した上でその改訂内容を決定している。このことから、商品「ティーシャツ」が商品「洋服」とは異なる類似群に属するとされている甲第2号証の「類似商品・役務審査基準【国際分類第10-2014版対応】」も、取引社会における現在の実情と合致していると考えるのが妥当である。
次に、被請求人の上申書において、被請求人は乙第19号証及び乙第20号証を提出して、「ティーシャツ」が「洋服」の下位概念に属する旨を主張するが、この点について請求人は以下のとおり反論する。
被請求人は、国語辞書(乙19)及び「シャツ」に関するインターネット百科事典「ウィキペディア」の資料(乙20)を提出し、語義の観点から「ティーシャツ」が「洋服」の下位概念であると主張する。
しかし、そもそも商標法の商品・役務分類は、商品・役務の出所の混同を防止して商標使用者の業務上の信用と需要者の利益を保護するという商標法の目的に即して取引市場を考慮して決定されている。
したがって、商標法における商品分類が国語辞書における言語学・国語学上の言葉の概念と一致していなくても、何ら問題はない。商標法における商品・役務分類が、目的を異にする他分野の商品概念と異なる場合があることを想定していることは、甲第7号証として提出する平成12年(行ケ)第447号判決からも明らかである。
ちなみに、百歩譲って語義の観点も考慮に加えるべきであるとした場合であっても、乙第20号証のウィキペディア資料中の1頁目冒頭にはシャツの説明として「肌着として着用するもの(例:Tシャツ)と、肌着の上に着用する中衣又は上着として使用するものがある。」とあり、甲第8号証のウィキペディア資料には「Tシャツ」の説明概要において「肌の上に直接着用する肌着であり、下着の一種である。」と記述されている。これらの記述から、商品「ティーシャツ」には「下着」としての側面も存在することは疑いがなく、それ故に「類似商品・役務審査基準」の下では「洋服」が属する「17A01」及び「下着」が属する「17A02」の二個の類似群が「ティーシャツ」に付与されているのである。そして、「ティーシャツ」が「下着」の側面も有する以上、それが本件登録の指定商品「洋服」の下位概念内に属する(包含される)と考えることは不可能である。
一方、特許庁における商標出願の審査では、原則として「類似商品・役務審査基準」に従った判断がされるため、商品「ティーシャツ」についての商標登録は、現状では商品「下着」(17A02)についての第三者の同一・類似商標の出願を排除する効力が認められている。仮に被請求人の主張のとおり「ティーシャツ」が「洋服」の下位概念に属するということになれば、商品「ティーシャツ」と商品「下着」についての同一又は類似の商標が異なる複数の者によって登録され得ることになる。このような判断は、商標登録出願の手続において大きな混乱を生じることになり、法的安定性の観点及び出願人の予見可能性の観点からも大きな障害となるだけでなく、実際の取引市場における出所の混同も不可避と考えられる。
したがって、被請求人の主張は到底首肯できない。
(3)被請求人自らの使用立証について
被請求人は、審決例(取消2004-31400号、甲9)を引用し、本件審判において乙第14号証のインボイス及び乙第15号証ないし乙第18号証の「商品代金の支払を証明する書面」により、本件商標が使用された「ティーシャツ」が我が国へ輸入された事実は裏付けられると主張する。
しかし、不使用取消審判における登録商標の使用の認定は、提出された証拠全般を検討して個別具体的になされるべきであり、上記審判における認定が本件審判にそのまま適用されるものではない。
本件においては、被請求人の提出した証拠からは、商品代金が支払われた事実が認められるのみであり、商品が実際に日本国に輸入された事実を認めることはできない。特に、乙第5号証上部にも記載されているとおり、被請求人の代表取締役は、「海外オタクから絶大なる支持を仰いでいる」ことから対象商品が海外で人気の商品であると推測できること、被請求人から日本国内での取引書類等の証拠が提出されていないことを考慮すると、提出された証拠に係る商品は日本国外のみで流通していたものと考えるのが自然である。
したがって、被請求人の上申書における「被請求人自らによる使用立証の補足について」における主張は失当である。
また、被請求人自ら使用したと主張する商品も「ティーシャツ」である。これが本件登録の指定商品「洋服」の下位概念に属さないことは上述のとおりである。
なお、被請求人は、日本国内における2件のイベントにおいて本件商標が付された「ティーシャツ」を一般公衆に向けて販売した実績があると主張するが、この主張に関する証拠が一切提出されていないため、この主張は本件において考慮の対象とすべきではない。
(4)まとめ
以上のことから、要証期間内に日本国内において、被請求人自身又は使用権者によって、本件登録の指定商品について本件商標が使用されたとする被請求人の主張は到底認められない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第20号証(枝番を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)請求人は、審判請求書において、本件登録商標は、要証期間内に日本国内において、その指定商品のいずれについても使用されていない、と主張している。しかしながら、被請求人は、以下に述べる理由により請求人の主張を認めることができない。
(2)乙第1号証に明記されているとおり、被請求人は、平成12年8月19日にサイト「dannychoo.com」を開設しており、以来、同サイトにてDanny Chooブランドの試作品を複数回発表してきた。
(3)乙第2号証はDanny Chooブランドとして被請求人が開発/製作した靴の試作品をdannychoo.comで紹介した記事である。本記事の投稿日は、平成23年1月15日となっており、要証期間内のものとなる(1葉目)。また、本記事に寄せられたユーザーのコメントも同じく平成23年1月中に投稿されたものである(2葉目)。乙第2号証の3葉目から8葉目は、同記事に掲載された靴の試作品の現物、デザイン案、被請求人が靴を実際に製作している様子及び使用された工具類の写真である。
(4)乙第3号証は、被請求人がDanny Chooブランドとして開発/製作したドール(球体関節人形)向けの靴をdannychoo.comで紹介した記事である。この掲載日は、平成25年8月13日であり、要証期間内のものである。
(5)以上、述べた事から明らかなように、本件商標は、要証期間内に被請求人により、使用された商標であるというべきものである。
2 口頭審理陳述要領書による陳述
(1)通常使用権者による使用について
被請求人は、株式会社コスパ(以下「コスパ社」という)に、本件商標の通常使用権を許諾している(乙4)。
コスパ社は、本件商標を使用した被服について、平成22年1月中旬に発売を開始している(乙5)。なお、これに伴い、被請求人はコスパ社より使用料を受領している(乙6?乙9)。
当該被服は、本件商標を表記したタグを有し、かつ本件商標を表記した価格表示用の商品タグを付した状態で公衆に譲渡されている。このことは、商標法第2条第3項第1号及び同項第2号における使用にあたる(乙10)。
この被服については、好調な売れ行きを継続し、少なくとも平成23年3月2日の時点においては、コスパ社のインターネット通信販売サイト(http://www.cospa.com/)において在庫を有し、本件商標を使用して販売されていたことがインターネットサイト「インターネットアーカイブ」(https://archive.org/)によって確認できる(乙11)。これは、商標法第2条第3項第8号における使用にあたる。
また、本件審判請求日及び本陳述要領書作成日現在においても、コスパ社のインターネット通信販売サイトにおいて、再販売希望についての要望、すなわち、バックオーダーを公衆より受け付けている(乙12)。これは、商標法第2条第3項第8号における使用にあたる。
以上の事実より、被請求人は通常使用権者をして、本件商標を本件審判請求日前3年以内に日本国内において、指定商品である被服に使用していることは明らかである。
(2)被請求人自らによる使用について
被請求人は、自ら、本件商標を使用した別の被服について、平成24年5月頃よりマレーシアにおいて委託業者UltimateExpressionSdnBhd(以下「Ultimate社」という。)をして製造をさせ、当該被服を日本国内に輸入し、日本国内において譲渡及び日本から第三国への輸出を行っている。
当該被服は、本件商標を表記したタグを有した状態で輸入され、公衆に譲渡され、及び輸出されている。このことは、商標法第2条第3項第2号における使用にあたる(乙13)。
この被服は、平成24年5月頃より継続的に製造を委託し、国内に輸入しているものであるが、少なくとも平成24年10月2日(審決注:10月5日の誤記と思われる。)において継続的に製造し、輸入していることは、書証及び準書証より確認できる(乙14?乙18)。
以上の事実より、被請求人は自らをして、本件商標を本件審判請求日前3年以内に日本国内において、指定商品である被服に使用していることは明らかである。
(3)結論
以上述べたとおり、本件商標は、要証期間内に日本国内において使用されていることは明らかであるので、本件審判の請求の理由がない。
3 上申書における主張
(1)被請求人による主張の一部撤回について
上記1の審判事件答弁書により主張した、「靴」についての本件商標の使用主張については、本上申書により撤回する。被請求人は、本審判事件において、本件商標の使用主張については、「ティーシャツ」についての使用のみをもって行うものとする。
(2)第1回口頭審理調書に記載の被請求人の陳述の要領3の補足について
被請求人は、本件商標を使用している商品である「被服」すなわち「ティーシャツ」が、本件商標権の指定商品である「洋服」の下位概念に属する商品であることを上記陳述の要領3で主張している。
これに対し、請求人は「類似商品・役務審査基準」の第25類において、「洋服」と「ティーシャツ」は別の記載になっていることから「ティーシャツ」は「洋服」の下位概念にあたらない旨を主張しているが、これは誤りである。
同審査基準は、審査において商標法第4条第1項第11号に該当するか否かを判断するためのみに用いられるものであり、添付される「本審査基準の運用について」において、「本審査基準は全審査官の統一的基準ですが、具体的、個別的に商品又は役務を審査する際において、あるいは商取引、経済界等の実情の推移から、この基準で類似と推定したものでも非類似と認められる場合又はこの基準では類似としていないものでも類似と認められる場合もあり得ます。」と記載されているとおり、この類否判断においても、取引の実情に応じて判断する旨が記されている。
しかるに、「洋服」は、国語辞典によると「西洋風の衣服」とされており、対義語は「和服」となっている。一方で「ティーシャツ」は、国語辞典によると「丸首で、メリヤスのシャツ」のことをいうとされているところ、「シャツ」は英語の「Shirt」のカタカナ語読みであり、その発祥は古代ローマで着用されていた「チュニック」によるものとされている(乙19、乙20)。上記より、「ティーシャツ」が「西洋風の衣服」の一つであり、「洋服」の下位概念であることは自明であるといえる。
(3)被請求人自らによる使用立証の補足について
被請求人は、第1回口頭審理において、口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述しているが、そのうち被請求人自らによる使用について若干の補足を行う。
被請求人は、マレーシアにおける製造委託業者の発行したインボイス(乙14)と、その支払の事実の立証書面(乙15?乙18)をもって、本件商標が付された「ティーシャツ」の輸入の事実を立証している。
先審決例(取消2004-31400)によると、インボイスのみをもって、輸入の立証とするには足りないと審決の理由に記されているところ、我が国に輸入された事実を裏付ける証拠として、「例えば、商品代金の支払いを証明する書面、通関料、配達料、関税、輸入消費税又は航空運賃等の支払いを証明する書面等の証拠」があるとも記している。けだし、乙第15号証ないし乙第18号証は、まさしく「商品代金の支払を証明する書面」に他ならず、被請求人の提出した証拠であるインボイスと支払を証明する書面によって、被請求人が本件商標を付した「ティーシャツ」が我が国へ輸入された事実は裏付けられたものであると思慮する。
また、平成25年2月10日に千葉県千葉市の幕張メッセ国際展示場にて行われた「ワンダーフェスティバル2013冬」及び平成25年4月10日に東京都目黒区のIMONレストランにて行われた「CultureJapanDindins」の少なくとも2件のイベントに被請求人自らが出展した際において、被請求人は、本件商標が付された「ティーシャツ」を一般公衆に向けて販売した実績があることを付言する。
(4)結語
以上の内容に基づき、本件商標は、要証期間内に日本国内において使用されていることは明らかであるので、本件審判の請求の理由がない。

第4 当審の判断
被請求人は、上記第3、1のとおり、審判事件答弁書においては、本件商標を「靴」に使用していたと主張していたが、上記第3、3(1)のとおり、該主張を撤回し、「本件商標の使用主張については、『洋服』の下位概念である『ティーシャツ』についてのみをもって行う」旨述べているところ、請求人は、上記第2、4(1)のとおり、「被請求人の『靴』についての本件商標の使用主張を撤回することについて争わない」旨述べているので、被請求人が本件商標の使用を主張する商品は、「ティーシャツ」として、以下、検討する。
なお、被請求人は、上記第3、2において、使用商品を「被服」としているが、これも以下、「ティーシャツ」と読み替えて取り扱うこととする。
1 「ティーシャツ」による本件商標の使用について
(1)商品「ティーシャツ」が本件商標の指定商品中の「洋服」の下位概念に属する商品であるか否かについて、請求人と被請求人との間で争いがあるため、まず、それについて、検討する。
なお、以下に記す商標法等の条文は、いずれも平成27年4月1日改正前のものである。
ア 商標法第6条第1項で「商標登録出願は、商標の使用をする1又は2以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。」と規定され、同項第2項で「前項の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければならない。」と規定されており、商標法施行令第1条で「商標法第6条第2項の政令で定める商品及び役務の区分は、別表のとおりとし、各区分に属する商品又は役務は、(略)ニース協定第1条に規定する国際分類に即して、経済産業省令で定める。」と規定されている。
さらに、商標法施行規則第6条で「商標法施行令(略)第1条の規定による商品及び役務の区分(略)に属する商品又は役務は、別表のとおりとする。」と規定されている。
そうすると、商品「ティーシャツ」が「洋服」の下位概念に属する商品であるか否かについては、商標法施行規則、別表(以下「省令別表」という。)に基づき検討するのが合理的である。
そして、本件商標の指定商品は、おおむね省令別表に例示された商品名及び順序で指定されているものである。
イ 本件商標の登録出願時(平成22年3月3日)に適用された省令別表の第25類の掲載表示は、次のとおりである(下線は、合議体が付した。)。

一 被服
(一) 洋服
イブニングドレス 学生服 子供服 作業服 ジャケット ジョギングパンツ スウェットパンツ スーツ スカート スキージャケット スキーズボン ズボン スモック 礼服
(二) コート
オーバーコート トッパーコート マント レインコート
(三) セーター類
カーディガン セーター チョッキ
(四) ワイシャツ類
開きんシャツ カフス カラー スポーツシャツ ブラウス ポロシャツ ワイシャツ
(五) 寝巻き類
ナイトガウン ネグリジェ 寝巻き パジャマ バスローブ
(六) 和服
帯 帯揚げ 帯揚げしん 腰ひも 腰巻 じゅばん だて締め だて巻き 長着 羽織 羽織ひも はかま 半えり
(七) 下着
キャミソール コルセット コンビネーション シャツ シュミーズ ズボン下 スリップ パンツ ブラジャー ペチコート
(八) 水泳着 水泳帽
(九) エプロン えり巻き 靴下 ゲートル 毛皮製ストール ショール スカーフ 足袋 足袋カバー 手袋 布製幼児用おしめ ネクタイ ネッカチーフ バンダナ 保温用サポーター マフラー 耳覆い
(十) ずきん すげがさ ナイトキャップ ヘルメット 帽子

二 ガーター 靴下止め ズボンつり バンド ベルト
(以下、略)

ウ 商品「ティーシャツ」についてみると、外着として使用される場合と下着として使用される場合があることは一般的であるところ、上記イの本件商標の出願当時の省令別表には、「ティーシャツ」の例示はないが、「(七)下着」の下位に「シャツ」の例示があり、また、ティーシャツを外着としてみた場合の商品に形態が近い商品として、「(四)ワイシャツ類」の下位に「ポロシャツ」の例示がある。しかし、「(一)洋服」の下位には、ティーシャツと用途や形態が近い商品は例示されていない。
そうすると、「ティーシャツ」は、「下着」又は「ワイシャツ類」の下位概念に属する商品とみるのが相当であって、「洋服」の下位概念に属する商品であるとはいえない。
エ 国内の商品・役務の取引事情の変化等を理由として、平成24年1月1日に改正され適用された改正後の省令別表には、次に掲げるとおり、「(一)洋服」とは別のものとして、「(九)」に「ティーシャツ」が例示された。
他方、本件商標の出願当時の省令別表と改正後の省令別表における「(一)洋服」の下位の例示商品は、同一である。
このことからしても、「ティーシャツ」が洋服の下位概念に属する商品ではないということができる。

<平成24年1月1日に改正され適用された省令別表の第25類の掲載表示(下線は、合議体が付した。)>

一 被服
(一) 洋服
イブニングドレス 学生服 子供服 作業服 ジャケット ジョギングパンツ スウェットパンツ スーツ スカート スキージャケット スキーズボン ズボン スモック 礼服
(二) コート
オーバーコート トッパーコート マント レインコート
(三) セーター類
カーディガン セーター チョッキ
(四) ワイシャツ類
開きんシャツ カフス カラー スポーツシャツ ブラウス ポロシャツ ワイシャツ
(五) 寝巻き類
ナイトガウン ネグリジェ 寝巻き パジャマ バスローブ
(六) 和服
帯 帯揚げ 帯揚げしん 腰ひも 腰巻 じゅばん だて締め だて巻き 長着 羽織 羽織ひも はかま 半えり
(七) 下着
アンダーシャツ コルセット コンビネーション シュミーズ ズボン下 スリップ パンツ ブラジャー ペチコート
(八) 水泳着 水泳帽
(九) キャミソール ティーシャツ
(十) アイマスク エプロン えり巻き 靴下 ゲートル 毛皮製ストール ショール スカーフ 足袋 足袋カバー 手袋 ネクタイ ネッカチーフ バンダナ 保温用サポーター マフラー 耳覆い
(十一) ナイトキャップ 帽子

二 ガーター 靴下止め ズボンつり バンド ベルト
(以下、略)

(2)「ティーシャツ」は、上記(1)のとおり、「洋服」の下位概念に属する商品ではないから、「ティーシャツ」の使用をもって、被請求人が本件商標をその指定商品中の「洋服」に使用したことを証明したということはできない。
2 上記1のとおり、商品「ティーシャツ」は、本件商標の指定商品中の「洋服」の下位概念に属さない商品であるが、念のため、被請求人が要証期間内における商品「ティーシャツ」についての本件商標の使用を証明し得たか否かを、以下検討する。
(1)乙第4号証は、被請求人によれば、被請求人代表者からコスパ社の担当者宛の2009年(平成21年)9月9日付け電子メールの写しであり、被請求人は、「コスパ社に本件商標の通常使用権を許諾している」と主張し、本号証を提出している。
しかしながら、乙第4号証には、具体的な許諾の内容に関する記述は一切認められない。
(2)乙第5号証は、被請求人によれば、コスパ社が本件商標を使用したティーシャツの発売に際して小売店に発した注文書の写しであり、被請求人は、「コスパ社は本件商標を使用したティーシャツについて平成22年1月中旬に発売を開始した」と主張し、本号証を提出している。
しかしながら、乙第5号証がティーシャツに関する注文書であることは認められるものの、ティーシャツの販売者又は注文先に関する記載はなく、また、「1月中旬発売予定」、「ご注文締切:11月27日」の記載はあるものの、発売年を示す記載はない。そして、注文書の頒布時期、配布先、頒布部数、頒布方法に関する証拠は提出されていない。
(3)乙第6号証ないし乙第8号証は、被請求人によれば、被請求人からコスパ社に発した商標使用料についての請求書の控えであるが、その日付はいずれも要証期間外であり、それらの入金を証するという乙第9号証の銀行口座通帳における日付も要証期間外である。
(4)乙第10号証は、被請求人によれば、コスパ社が本件商標を使用するティーシャツのタグを撮影した写真であり、被請求人は、「本件商標を表記したタグと価格表示用の商品タグを付した状態で公衆に譲渡されている(商標法第2条第3項第1号及び同項第2号の使用)」と主張し、本号証を提出している。
しかしながら、乙第10号証には、著作権表示と認められる「マルC dannychoo」及び「マルC:dannychoo」の表示が認められるのみであり、本件商標は見当たらず、また、「商品名:メイドみらいちゃんTシャツ」との表示から、乙第10号証の商品は「ティーシャツ」と認められるが、該ティーシャツが実際に譲渡されたことを示す証拠は提出されていない。
(5)乙第11号証は、被請求人によれば、インターネットWEBサイト「インターネットアーカイブ2011年3月2日の記録」であり、被請求人は、「乙第10号証のティーシャツは、少なくとも平成23年3月2日の時点においては、コスパ社のインターネット通信販売サイト(http://www.cospa.com/)において在庫を有し、本件商標を使用して販売されていることが確認でき、商標法第2条第3項第8号の使用があった」と主張し、本号証を提出している。
しかしながら、乙第11号証の1頁目左上に、著作権表示と認められる「マルC dannychoo」の表示があるのみであり、本件商標は見当たらない。
(6)乙第12号証は、被請求人によれば、コスパ社のインターネット通信販売サイトであり、被請求人は、「本件審判請求日及び本陳述要領書作成日現在においても、再販売希望についての要望、則ち、バックオーダーを公衆より受け付けており、これは商標法第2条第3項第8号における使用にあたる」と主張し、本号証を提出している。
しかしながら、乙第12号証には、著作権表示と認められる「マルC dannychoo」の表示があるのみであり、本件商標は見当たらない。
(7)乙第13号証は、被請求人によれば、被請求人が本件商標を使用するティーシャツのタグを撮影した写真であり、被請求人は、「該ティーシャツは、本件商標を表記したタグを有した状態で輸入され、公衆に譲渡され、及び輸出されており、このことは商標法第2条第3項第2号における使用にあたる」と主張し、本号証を提出している。
しかしながら、乙第13号証に示されたタグには、「DANNY CHOO」の表示が認められ、これは本件商標と社会通念上同一のものと認められるものの、該ティーシャツが実際に我が国に輸入され、譲渡され、又は我が国から輸出されたことを証明する証拠は提出されていない。
(8)被請求人は、「乙第13号証のティーシャツは、少なくとも平成24年10月2日(審決注:10月5日の誤記と思われる。)において継続的に製造し、輸入していることは、(a)被請求人がティーシャツの製造を委託したUltimate社から、被請求人に宛てられた請求書(乙14)、(b)Ultimate社に対して送金した際に、三菱東京UFJ銀行小山支店が発行した外国向送金計算書及び外国送金依頼書兼告知書のお客様控え(乙15)、(c)Ultimate社に対して半額を送金した記録である被請求人の三菱東京UFJ銀行小山支店の銀行口座通帳(乙16)、(d)Ultimate社に対して半額を、2012年11月20日に被請求人の在シンガポール子会社・MIRAI(CULTURE JAPAN)PTE.LTD.(以下「在シンガポール子会社・MIRAI社」という。)を通じて送金した記録であるOCBCBank銀行の口座取引明細書(乙17)及び(e)被請求人の在シンガポール子会社・MIRAI社が2012年11月20日に支払った2950シンガポールドルが、2012年10月2日(審決注:10月5日の誤記と思われる。)にUltimate社によって発行された請求書のうちの半額であることを相手先に伝達する電子メール(乙18)より確認できる」と主張している。
しかしながら、ティーシャツの代金がUltimate社宛てに、被請求人及び被請求人の在シンガポール子会社・MIRAI社から支払われたことは確認できるものの、ティーシャツが我が国に輸入されたことを示す証拠は提出されていない。
(9)上記(1)ないし(6)によれば、被請求人がコスパ社に対して本件商標の通常使用権を許諾していたとはいえず、また、コスパ社によって要証期間内に本件商標が「ティーシャツ」に使用されたともいえない。そして上記(7)及び(8)によれば、乙第13号証のティーシャツのタグには、本件商標と社会通念上同一のものと認められる「DANNY CHOO」の表示が認められるものの、該ティーシャツが要証期間内に、被請求人によって実際に我が国に輸入され、譲渡され、又は我が国から輸出されたと認めることはできない。
したがって、要証期間内における商品「ティーシャツ」についての本件商標の使用を被請求人が証明したとはいえない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を使用していたことを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2015-12-25 
結審通知日 2016-01-06 
審決日 2016-03-29 
出願番号 商願2010-19818(T2010-19818) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X1825)
最終処分 成立  
前審関与審査官 手塚 義明 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 大森 健司
原田 信彦
登録日 2010-09-17 
登録番号 商標登録第5353674号(T5353674) 
商標の称呼 ダニーチュー、ダニーチョー、ダニー、チュー、チョー 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 高田 泰彦 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 柏 延之 
代理人 宮嶋 学 
代理人 塩谷 信 
代理人 重成 幸生 

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