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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X09
管理番号 1315748 
審判番号 取消2014-300826 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-10-10 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5301709号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5301709号商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5301709号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示したとおりの構成からなり、平成21年1月30日に登録出願、第9類「自動販売機,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」並びに第1類、第4類、第6類、第7類、第11類、第12類、第14類、第16類、第19類、第28類、第29類、第35類、第37類及び第39類ないし第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同22年2月12日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成26年10月29日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)契約書及び請求書について
乙第1号証の契約書(以下「乙1契約書」という。)及び乙第2号証の請求書(以下「乙2請求書」という。)は、被請求人が阪和スチールサービス株式会社(以下「阪和スチール」という。)との間で、平成26年4月1日締結した「情報システム資産利用およびサービス契約」に基づき、同年10月21日にサービス料の請求を行ったことが示されている。
上記「情報システム資産」中には、被請求人が扱っているコンピューター・システムを稼働させる電子計算機用プログラム(以下「本件プログラム」という。)が含まれている。
しかしながら、乙1契約書及び乙2請求書には、本件商標の使用の痕跡が全く見当たらないが、これは、阪和スチールが被請求人の100%出資(甲3)による典型的な系列企業であるために、本件商標による出所表示を必要としなかったからに他ならない。
そうとすれば、乙1契約書及び乙2請求書は、商標法第50条第2項の使用を裏付けていない。
(2)取扱説明書について
乙第3号証は、被請求人提供の本件プログラムに関する取扱説明書(以下「乙3取扱説明書」という。)である。
しかしながら、乙3取扱説明書は、「商品又は商品の包装」ではないから、その2頁の左上側に「Hanwa」の表示が存在しても、このような表示によっては、商標法第2条第3項第1号の使用が裏付けられたことにはならない。
また、2頁左上側には、「HBS」の表示の下方に、「Hanwa.HBS.e...へのショートカ...」という表示が存在するが、その表示中の「Hanwa」の表示は、商標の使用である識別機能を発揮していないことは、以下のとおりである。
上記表示のうちの「HBS.e...へのショートカ...」とは、「HANWA BUSINESS SYSTEM」による電子情報の扱いへの「ショートカット」であり、上記電子情報の扱いへの「近道」、すなわち、煩雑な手続を省略した手法が存在するという趣旨である。
したがって、上記表示部分は、「HANWA BUSINESS SYSTEM」を容易に取り扱うことができるという機能上の表示に他ならない。
また、「Hanwa」の表示は、「HBS.e...へのショートカ...」のうちの「H」の部分に関する説明表示であって、独立した態様の表示ではない。
したがって、「Hanwa」は、機能表示を伴う「HBS」、すなわち「HANWA BUSINESS SYSTEM」を意味している「H」を具体化した「HANWA」の趣旨であって、上記機能表示のための表示部分に他ならない。
すなわち、「Hanwa」の表示部分は、「HBS.e...へのショートカ...」という機能上の説明の一部であり、被請求人の出所表示を伴う識別機能発揮のために使用されているものではない。
よって、乙3取扱説明書は、本件商標の使用を裏付ける書証ではない。
(3)本件プログラム起動画面について
乙第4号証は、被請求人が提供している本件プログラムの起動画面(以下「起動画面」という。)を表示しているものであり、その画面中央には、「HANWA BUSINESS SYSTEM」の表示が存在し、起動画面中央やや下寄りの位置には、「HBS」及び「HSS本番環境」という表示が行われている。
被請求人は、これらの表示をもって、商品である本件プログラムにおける本件商標の使用が証明されていると主張している。
しかしながら、起動画面中央における「HANWA BUSINESS SYSTEM」の表示においては、「HANWA」の文字部分は、他の「BUSINESS SYSTEM」と一体をなして、被請求人が取り扱っている本件プログラムによるビジネスに関するシステムというタイトルを表示しているのであって、「HANWA」の文字は、「BUSINESS SYSTEM」との一体形成による本件プログラムの概要に関する説明部分であり、当該プログラムの自他識別機能自体を表示しているものではない。
本件プログラムが契約に伴って提供されたとしても、起動画面の表示は、本件商標が乙1契約書の契約に伴って使用されたこととの裏付けとはならない。
また、起動画面がパソコンによって出力された日付は、2014年(平成26年)12月5日であって、本件審判請求の登録後であるから、起動画面は、乙1契約書の契約に即して、本件審判の請求の登録前に使用されたことを裏付けていない。
起動画面の中央よりやや左下寄りの「HBS」は、本件商標の表示ではないから、その画面に表示された各「HBS」の表示が、乙3取扱説明書の2頁の「HBS」の表示と共通しているという被請求人の指摘は、失当である。
よって、起動画面も、本件商標が商標法第50条第2項に即して使用されたことの裏付けとなり得ていない。
(4)まとめ
以上のとおり、乙各号証によっては、本件商標の使用の立証はされていない。
3 口頭審理陳述要領書における陳述
(1)本件商標を付した使用態様について
被請求人は、本件プログラムが、本件商標を付した状態で阪和スチールに提供されたと主張する。
しかしながら、商標法第2条第3項第1号の使用が成立するためには、本件プログラムを内包したメモリに、本件商標に係る標章が付されていることを必要不可欠とする。何故ならば、「down・load」とは、「情報を大型の遠隔装置などから小型コンピューターなどの別の装置のメモリーに移すこと」(甲4)の趣旨であり、このような情報の移転は、当該情報を媒介物であるメモリに対応させたことによる商品の状態で実現することが可能となるからである。現に、上記情報の移転につき他の方法として、通信回線によって行う場合を想定したとしても、無体物であるプログラム情報及び当該通信回線施設は、何れも有体動産を前提とする商標法上の「商品」には該当しないからである。さらには、上記プログラム情報に所定の標章を表示したとしても、このような「電磁的方法」における標章の表示による商標の使用は、専ら役務の提供の場合に成立しても(商標法第2条第3項第7号)、商標法上の商品の場合には成立し得ないからである。
ところが、乙第1号証ないし乙第12号証を参照しても、上記メモリに本件商標を付した使用態様については、全く立証されていない。
(2)使用に係る商品について
ア 商標法における「商品」とは、流通状態にある商品を前提としており、かつ、この点は、商標法第2条第3項第1号の「商品」においても同様であるが、前記流通性が必要であることは、被請求人が阪和スチールに提供した本件プログラムの場合においても変わりはない。
イ 乙1契約書及び乙2請求書は、被請求人と阪和スチールとの個別契約及び個別の請求を表わしており、契約の対象である「情報システム資産利用およびサービス」は、決して流通状態を裏付けている訳ではない。
しかも、被請求人提供の本件プログラムの使用を説明している乙3取扱説明書における「コイルセンター業務システムメニュー」の記載からも明らかなように、本件プログラムは、あくまで阪和スチールの特定の業務に適合するように構成されており、業界一般に流通可能な汎用商品に該当しないことを裏付けている。
ウ 被請求人は、「不使用取消審判に係る登録商標の使用の事実を示すための証明書」(乙11、以下「証明書」という場合がある。)の(1)及び(2)が、乙1契約書及び乙2請求書の取引が阪和ステールにおける、コイルセンター業務処理のための本件プログラムについての利用許諾を含むものを示すと説明したうえで、乙3取扱説明書が乙1契約書及び乙2請求書と同一の取引に関する事実を補完的に示していると主張しており、この主張によって、被請求人は、阪和スチールに提供された本件プログラムが、専ら阪和スチールの業務に適合するような構成に終始しており、流通商品に該当しないことを認めているのである。
よって、本件プログラムは、商標法第2条第3項第1号の「商品」に該当しない。
(3)本件審判の請求の登録前3年以内における使用について
被請求人は、乙1契約書における平成26年4月1日、乙2請求書における平成26年(2014年)10月21日の記載、及び証明書の(3)における「コイルセンター業務処理のためのコンピュータシステムは、少なくとも数年前から現在に至るまで阪和スチール株式会社において継続して利用している。」という記載によれば、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に、乙1契約書及び乙2請求書の取引が行われたことが裏付けられていると主張している。
しかしながら、証明書の「数年前」の記載では、本件プログラムの使用開始時期が不特定であって、当該記載は、要証期間内の使用を何ら裏付け得ない。しかも、「数年前」とは、「1年前」よりも長い期間を指している以上、乙1契約書のサービス契約が成立した平成26年4月1日、及び乙2請求書が記載された平成26年10月21日よりも過去の時期とならざるを得ず、これらの期日との間に整合性が成立しない。
被請求人は、阪和スチールとの間では、契約の更新を採用せずに、新たな契約を逐次締結し直していると説明する一方、パソコンの画面遷移写真(乙9及び乙10)(以下、乙9を「画面遷移1」、乙10を「画面遷移2」といい、これらを一括して「画面遷移」という。)に示す本件プログラムのパソコンにおける作成日時は、平成25年10月20日であると主張しているが、たとえ本件プログラムが平成25年10月20日作成されたとしても、作成時期は、取引が行われた時期と同一ではなく、如何なる時期に本件プログラムに関する取引が行われたかについて全く不明である。また、乙1契約書の「情報システム資産利用」の対象として、本件プログラムが含まれているか否かは全く不明である。
証明書の(3)の「数年前」については、納品書等の物証による客観的な証明を伴っていない以上、本件プログラムが要証期間内に阪和スチールに提供されたことについては、成立する余地はない。
(4)新たに提出された書証について
乙第1号証ないし乙第4号証において、本件商標の使用を伴う取引が裏付けられていない以上、新たに提出された乙第9号証ないし乙第12号証によって、当該使用の裏付けを必要不可欠とするが、画面遷移において、本件商標の表示自体が存在しない以上、そのような裏付けは不可能である。
なぜならば、本件プログラムの取引は、当該プログラムを内包した媒体物、すなわちメモリを介して実現されており、その際の本件商標の使用とは、当該メモリに本件商標による標章が付されていなければならないが、起動画面及び画面遷移においては、「HANWA・・・」、「Hanwa・・・」によるコンピュータ表示が行われているにすぎず、このような表示は、無体物であるプログラムにおける表示であって、決して有体物である上記メモリに標章を付したことにはならない。
4 上申書における主張
(1)被請求人は、本件プログラムを貸与しており、当該貸与は第9類の「電子計算機用プログラム」を対象とする商標法第2条第3項第2号の「引き渡し」に該当すると主張する。
しかしながら、本件プログラムが貸与されていたことは、本件プログラムの取引の範囲が被請求人と阪和スチールに限定されており、第三者に流通していなかったことに他ならず、本件プログラムが商標法上の商品に該当しないことを自白するものに他ならない。
(2)被請求人は、乙1契約書の「情報通信サービスおよび情報処理サービス」とは、インストールディスクを利用してクライアント端末にインストールされた「コイルセンター業務システム」という本件プログラムによるコンピュー処理システムによって実現されるサービス、及び当該プログラムの機能に基づいてインストール後に通信回線によって被請求人におけるホストコンピュータからダウンロードされる追加のプログラムによって実現されるコンピュータ処理システムによるサービスを指すと説明している。
しかしながら、本件プログラムを記録しているインストールディスクについて、商標法上の使用が成立するためには、上記インストールディスク又はその包装に「HANWA」の標章が付した状態で被請求人から阪和スチールに対する引渡しが行われていなければならないが、各書面及び乙号各証を参照しても、上記の標章を付した状態については何ら主張及び立証が行われていない。
(3)被請求人は、乙第13号証の取扱説明書(以下「乙13取扱説明書」という。)及び取引書類(乙14)に基づき、乙3取扱説明書に記載の本プログラムは、被請求人以外の当事者を取引対象とすることが可能であり、実際の運用においても被請求人以外の契約上の処理について、起動画面及び画面遷移2に表示されている本件プログラムが使用されていたと説明している。
しかしながら、当該業務主体は、被請求人ではなく阪和スチールであるから、起動画面及び画面遷移2における「HANWA/BUSINESS/SYSTEM」の表示における「HANWA」の表示は、被請求人ではなく、阪和スチールの「BUSINESS/SYSTEM」を表示するものに他ならない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、被請求人は、乙第5号証ないし乙第7号証及びこれらに係る主張を撤回し、請求人は、口頭審理においてこれを同意した。
1 答弁の理由
被請求人は、要証期間内に我が国においてその請求に係る「電子応用機械器具及びその部品」について、本件商標を使用している。
(1)本件商標の使用の事実
ア 本件商標の使用者
乙1契約書の右下部分及び乙2請求書の右上部分には、本件商標の商標権者の名称である「阪和興業株式会社」及び「東京都中央区銀座6丁目18番2号」あるいは「大阪市中央区北久宝寺町3丁目6番1号」の住所が記載されている。本件商標の商標権者は、「履歴全部事項証明書」(乙8)に記載のとおり、支店2の所在地が上記「東京都中央区銀座6丁目18番2号」である。また、本件商標の商標権者は、「履歴全部事項証明書」に記載のとおり、本店所在地が「大阪府大阪市中央区伏見町4丁目3番9号」であるが、本店ビルの建て替え工事に伴って、平成24年7月以降一時的に本店機能を上記「大阪市中央区北久宝寺町3丁目6番1号」の住所に移転しているものである。
イ 使用に係る商品
乙1契約書の表題及び乙2請求書の請求明細の欄における第1行目には、「情報システム資産・・・」と記載されされている。また、乙1契約書の第1条には、上記「情報システム資産」が、具体的には「コンピューター・システム(ハードウェアおよびソフトウェアを含む)」であると記載されている。
そして、乙3取扱説明書には、請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に相当する、上述のハードウェアにインストールされたダウンロード可能な本件プログラムに関し、その起動時やデータ入出力時の操作方法、さらには、その情報通信や情報処理の内容が記載されている。
なお、乙1契約書の第1条には、「情報通信サービスおよび情報処理サービスを提供する」と記載され、また、同第3条の「1.利用料金」の(7)には「システム使用料」の項目が記載され、さらに、乙2請求書の請求明細の欄における第5行目には、乙1契約書と同様に「システム使用料」の項目が記載されているが、これらは本件プログラムに関し、この契約においては、譲渡により対価を得る代わりに、引き渡しにより対価を得ていたことを示すにすぎない。このような引き渡しの対象物が商品に該当するということは、商標法第2条第3項第2号において「商品・・・に標章を付したものを引き渡し・・・する行為」と規定されていることからも明らかである。
ウ 使用に係る商標
起動画面の画面中央には、矩形枠内の左寄りの位置に階段状の3段構成からなる文字が表示されており、その最上段に本件商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる社会通念上同一と認められる商標)が表示されている。また、起動画面の中央やや下寄りの位置には、乙3取扱説明書における「1、起動方法」の冒頭に表示されているものと非常に近似するアイコンが選択された状態で表示されている。
エ 使用時期
乙1契約書の右下部分には、「平成26年4月1日」と記載され、乙2請求書の右上部分には、「平成26年10月21日」である旨が記載されている(審決注:乙2請求書には「2014年10月21日」と記載されている。)
2 口頭審理陳述要領書における陳述
(1)新たな証拠について
ア 新たに追加した「証明書」の(1)及び(2)によれば、乙1契約書及び乙2請求書に係る取引は、コイルセンター業務処理のための電子計算機用プログラム(本件プログラム)についての利用許諾を含むものであることが裏付けられた。これにより、乙3取扱説明書に示されているログイン画面や、パスワード登録・変更画面、メニュー(切替)画面におけるそれぞれのタイトル名「コイルセンター業務シスデム」や、乙3取扱説明書に記載されているホストとHSS(阪和スチール)サーバとのやりとりを時系列的に表現したシーケンス図においてコイルの入荷、加工、売買契約、出荷、入金管理をするという説明の乙1契約書及び乙2請求書との内容面での共通性、一貫性が新たに生じ、乙3取扱説明書が乙1契約書及び乙2請求書と同一の取引に関する事実を補完的に示しているものと認め得るものになった。
また、乙1契約書における平成26年4月1日の記載、乙2請求書における2014年(平成26年)10月21日の記載、及び証明書の(3)における「数年前から現在に至るまで・・・継続して利用している」との記載によれば、本件審判の予告登録日である平成26年10月29日から3年以内という要証期間内に乙1契約書と乙2請求書に係る取引がされていたことが裏付けられている。
そして、乙3取扱説明書及び新たに追加した画面遷移2によれば、起動画面におけるアイコン、及び起動画面との内容面での共通性、一貫性を認めることができ、これにより、起動画面が乙1契約書、乙2請求書及び乙3取扱説明書と同一の取引に関する事実を補完的に示しているものと認め得るものになった。
なお、証明書の(4)及び(5)によれば、画面遷移2の信憑性が担保される。
したがって、新たに追加した証拠により、乙1契約書、乙2請求書、乙3取扱説明書及び起動画面は、同一の取引の事実を相互に補完的に示しているものと認め得るものとなった。
一方、新たに追加した画面遷移1及び証明書の(1)及び(2)によれば、本件プログラムは、阪和スチールのパソコンにアプリケーションソフトウェアとしてインストールされており、ダウンロード可能なものであることが裏付けられた。
また、証明書の(4)及び(5)によれば、画面遷移1の信憑性が担保される。
したがって、新たに追加した証拠によれば、取引商品である本件プログラムが、ダウンロード可能なものであると認め得るものとなった。
イ 新たに追加した画面遷移2によれば、起動画面が本件プログラムの起動時において表示されるものであることが裏付けられ、また、上述のように乙1契約書、乙2請求書、乙3取扱説明書及び起動画面が同一の取引の事実を相互に補完的に示しているものであると認め得ること、及び証明書の(1)からすれば、本件プログラムの提供元が商標権者であることも裏付けられた。
ウ アイコン名について
乙3取扱説明書に示されるアイコン名を示す文字は「HANWA.HBS.e...へのショートカ...」であり、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。また、このようなアイコンの文字は、その性質上、デスクトップにおいて当該プログラムを識別するための機能を発揮するものであることが明らかである。
したがって、起動画面のみならず乙3取扱説明書によっても、乙1契約書及び乙2請求書による取引対象に含まれる本件プログラムに関して、本件商標が使用されていることが裏付けられる。なお、画面遷移におけるアイコンの文字は、証明書の(6)に示すように、使用者によりその一部に変更を加えられたものであり、かかる事情により乙3取扱説明書におけるアイコンの文字とはやや異なるものになっているにすぎない。
エ その他
(ア)商標権者と阪和スチールとの本件プログラムの利用許諾を含む取引は、証明書の(1)及び(3)に示すように、数年前から現在に至るまで続くものであり、このような取引の過程において、パソコンが増台される等の諸事情により先の契約書の契約期間を延長することなく(乙1の第8条)、新たな契約を逐次締結し直している。かかる事情により、画面遷移1に示される本件プログラムのパソコンにおける作成日時が、乙1契約書の契約期日である平成26年4月1日よりも以前の2013年(平成25年)10月20日となっている。
(イ)取引対象の本件プログラムは、乙3取扱説明書に示すように、アプリケーションソフトウェアとしてパソコン(クライアント)において起動された後、その機能によりホストコンピュータとの電気通信回線を通じた通信によってデータやプログラムをホストコンピュータからダウンロードしたり、データをホストコンピュータにアップデートしたりすることにより、その機能を拡張等させてコイルセンター業務処理を実現するものである。
すなわち、本件プログラムは、当初にクライアントにインストールされる上述の電子計算機用プログラムにより発揮される機能の他、当該機能に基づいて電気通信回線を通じてホストコンピュータからダウンロードされる他の電子計算機用プログラムにより発揮される機能をも含めて構成されるものともいえる。
一方、このような本件プログラムの機能は、クライアントにおいては起動画面を契機にして発揮されるので、クライアントのオペレータは、起動画面に表示される本件商標をもって当該電子計算機用プログラムを認識、識別する。
(2)請求人の主張に対する反論
ア 請求人は、阪和スチールが商標権者の100%出資による典型的な系列企業であるが故に、本件商標による出所表示を必要としない旨主張するが、同社は、商標権者とは別法人であるため、出所表示を必要としないとの指摘には該当しない。
イ 請求人は、乙3取扱説明書が商品又は商品の包装ではないと主張するが、商品が電子計算機用プログラムという無体物であることによれば、乙3取扱説明書に示されるアイコンの文字表示は、実際には、商品自体にされているものと捉えられる。
したがって、このような表示によって商標法第2条第3項第1号あるいは同項第2号の使用が裏付けられる。
ウ 請求人は、アイコンの文字である「Hanwa.HBS.e...へのショートカ...」に関し、「ショートカット」部分は煩雑な手続を省略した手法が存在するという趣旨であると指摘し、「HANWA BUSINESS SYSTEM」を修飾することにより、「HANWA BUSINESS SYSTEM」を容易に取り扱うことができるという機能表示であると主張するが、アイコンの文字をその観念から捉えて「ショートカット」が修飾語であると評価するならば、これを含めた機能表示というよりも、本件商標と社会通念上同一である「Hanwa.HBS.e...」といった表示が要部であり、本件商標と社会通念上同一のものが使用されていることを裏付けるにすぎない。
また、仮に上記要部が請求人の主張するように「HANWA BUSINESS SYSTEM」の印象を与えるとしても、これ自体が本件商標と社会通念上同一のものであるから、本件商標が使用されていることを裏付けるにすぎない。
エ 請求人は、アイコンの文字である「Hanwa.HBS.e...へのショートカ」に含まれる「Hanwa」の文字は独立した態様の表示ではないと主張するが、独立した態様か否かに関わらず、アイコンの文字は全体として本件商標と社会通念上同一のものに該当する。
加えて、請求人は、アイコンの文字は識別機能を発揮しない旨を主張するが、画面遷移1等に示すように、デスクトップには多数のアイコンが表示されるのが一般的であり、これによれば、アイコンの文字が識別機能を発揮するものであることは明らかであり、この際には、「ショートカット」の表示を意識的に除外して識別に供することが一般的である。
オ 請求人は、起動画面において、「HANWA」の部分が、他の「BUSINESS SYSTEM」と一体をなし、また、プログラムのタイトル表示、概要に関する説明部分であると主張するが、「HANWA BUSINESS SYSTEM」自体が本件商標と社会通念上同一のものであり、タイトル表示等であってもプログラムの一般的な説明等に該当しなければ、自他商品識別機能等に寄与する商標であると認められる。
また、起動画面の表示が乙1契約書の契約に基づくものであることの裏付けがない旨主張するが、新たに追加した証拠により、乙1契約書と起動画面とは、同一の取引の事実を相互に補完的に示しているものと認め得るものになった。
さらに、起動画面の表示が乙1契約書の契約に即して本取消審判請求の登録前に使用されたことを裏付けていないと指摘するが、乙1契約書の契約日が本取消審判請求の登録前であり、また、新たに追加した証明書の(5)により、起動画面の表示が本取消審判請求の登録前であることが明らかな数年前からのものであることが裏付けられている。
3 上申書における主張
(1)被請求人は、阪和スチールに対して、本件プログラムを要証期間内に貸与したのか又は販売したのかについて
事実関係を確認したところ、被請求人は、阪和スチールに対して、本件プログラムを要証期間内において貸与していた。
そして、被請求人の上記貸与行為が商標法第50条第2項に規定する使用に該当するか否かは、商標法第2条第3項に規定する使用の定義に従って判断すべきであり、本件審判事件が「電子応用機械器具及びその部品」を対象にしてなされている、すなわち商品に関してなされていることからすれば、同項第1号又は第2号に規定する商品の使用の定義に該当するか否かに従って決するのが相当である。
商標法第2条第3項第2号は、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」と規定している。
一方、被請求人は、本件プログラムについて、インストールディスクを用いて阪和スチールのクライアント端末にインストールすることを通じて貸与している。
したがって、被請求人のこのような行為は、上記第2号に規定する商品を引き渡しする行為に該当する。また、追加のソフトウェアをホストコンピュータからダウンロードしてその機能を実現する点に着目すれば、商品を電気通信回線を通じて提供する行為にも該当する余地がある。
(2)乙1契約書の第1条の「情報通信サービスおよび情報処理サービス」が具体的に如何なる情報サービスであるのかについて
「情報通信サービスおよび情報処理サービス」とは、実質的には、主として乙3取扱説明書等に示す「コイルセンター業務システム」という本件プログラムにより実現されるコイルセンター業務処理サービスを指すもので、この業務処理サービスを実現するに際し、本件プログラム自体のほかに、これを稼働させるためのクライアント(コンピュータ)端末や、プリンタ、本件プログラムの機能に基づいてインストール後に事後的にクライアント端末に通信回線を通じてダウンロードされる追加のソフトウェアやマスクデータ(乙13の2)を格納するホストコンピュータ、及び通信回線等のハードウェア環境の提供をも含むものであった。
また、「コイルセンター業務システム」という本件プログラムは、被請求人のシステム担当者により上記クライアント端末に対して所定のインストールディスクを利用してインストールされ、その後のクライアント端末における起動時においてデータ処理命令を受け付けると、その初回起動時に限って、ホストコンピュータからデータ処理に必要な追加のソフトウェアをダウンロードしてその機能を拡張し、以後におけるデータ処理を可能にするものであり、さらに、その後においても、ホストコンピュータに登録されたマスタデータを利用してデータ処理を可能にするものであった。
なお、本件プログラム自体のみならず、クライアント端末をも含めて阪和スチールに提供されたり、クライアント端末への本件プログラムのインストールが阪和スチールのシステム担当者ではなく、被請求人のシステム担当者によりなされるのは、当該ソフトウェアがインストールされたパソコンの台数を把握する、言い換えればソフトウェア取引の多くがそのようであるように、当該ソフトウェアの利用をパソコン台数基準で管理し、無権限利用を防止するといった事情がある。
したがって、上記「情報通信サービスおよび情報処理サービス」とは、所定のインストールディスクを利用してクライアント端末にインストールされた「コイルセンター業務システム」という本件プログラムにより、さらにはこのプログラムを利用してホストコンピュータからダウンロードされる追加のプログラムをも含めて実現される、コンピュータ処理システムを指すものであり、実質的には、クライアント端末に保存される、ダウンロード可能な電子計算機用プログラムより実現されるサービスを指すものである。
(3)乙3取扱説明書の作成日、及びその8葉目にある「契約」、「受注」、「指示」及び「工程」等について、被請求人との間の業務を指すものなのか第三者との業務を指すものなのか等について
事実関係を確認したところ、乙3取扱説明書は、平成24年の暮れから平成25年の明け頃に作成されたものであると推定された。
次に、乙3取扱説明書により説明される本件プログラムは、その4葉目ないし7葉目、新たに追加した乙13取扱説明書、及び新たに追加したコイルセンター業務により作成された取引書類(乙14の1ないし8)に示すように、乙3取扱説明書の8葉目に示す「業務」タブにおいて「契約」ボタンをクリックすると、乙13取扱説明書に示すように、予め設定された所定のフォーマットに従って取引先との契約内容(取引基本事項)を登録することができる。
なお、本件プログラムを使用する阪和スチールは、コイル(鋼帯)の加工を請け負う、いわゆるコイルセンターを運営する事業者である。
また、「入荷予定」ボタンをクリックすると、加工するコイル(母材)の仕入先からの入荷予定を登録することができ、「受注」ボタンをクリックすると、取引先からメールやfaxにより受信した加工注文内容を登録することができ、「指示」ボタンをクリックすると加工指示入力を行うことができ、「工程」ボタンをクリックすると加工日、加工ラインの指定、加工順を登録することができ、この後、「オペガイ送信(加工予定)」ボタンをクリックすると、以上の加工に関する管理データをホストコンピュータに登録することができ、最後に、「看貫送信(加工製品)」ボタンをクリックすれば、検査入力等ができるようになる。また、本件プログラムに登録入力される契約先(取引先)は、上記の契約の登録内容に従って決定されるために、被請求人以外を取引対象にすることが可能である。このため、阪和スチールにおける実際の運用上においても、被請求人以外との間での契約の処理に関しても本件プログラムが使用されていた。
したがって、本件プログラムは、被請求人との間の加工取引に付帯して阪和スチールから提供されるようなものではなく、コイルセンター業務一般の取引において使用可能な、その単品自体が取引対象になり得るものであった。
(4)本件商標と起動画面に示す商標について
本件商標は、別掲のとおり緑色で「HANWA」の文字を横書きした構成であり、一方、起動画面に示す商標(以下「起動画面商標」という。)は、起動画面に示すように、緑色で「HANWA/BUSINESS/SYSTEM」の文字を3段に横書きした構成である。
したがって起動画面商標は、本件商標と同一の文字構成を、同一の色で、3段書きにおいて最も目に付きやすい最上段に含むものである。
また、起動画面商標が使用される商品において、3段書きの2、3段を占める「BUSINESS SYSTEM」の語は、多用されるものであることが一見して明らかであり、一方、本件商標でもある最上段の「HANWA」の語は造語である。
さらに、起動画面商標の構成は、段を違えていることにより一体性が希薄化され、また、各段の表記を一体不可分とすべき特段の事情も見付からない上に、全体として冗長でもある。
以上からすると、起動画面商標は、簡易迅速を尊ぶ取引の場において、取引者、需用者に対し、その構成中の「HANWA」の部分が顕著な印象を与えるものであり、この部分に自他商品の識別力があると認められ、起動画面商標は、「HANWA」の部分が自他商品の識別機能を有していると認められるから、本件商標と社会通念上同一と認められるべきものである。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、要証期間内に日本国内において商標権者によりダウンロード可能な電子計算機用プログラムに付されており、商標法第2条第3項第1号の規定に基づき、その請求に係る「電子応用機械器具及びその部品」について使用していることが明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、被請求人を甲とし、阪和スチールを乙とする平成26年4月1日付けの「情報システム資産利用およびサービス契約」であり、「乙が甲の所有するコンピューター・システムの利用を行うことおよび甲が乙に対して提供するサービスに関して、以下の通り契約を締結する。」と記載されており、その第1条(総則)には、「甲は、甲の所有するコンピューター・システム(ハードウェアおよびソフトウェアを含む)を使用してもしくは乙にこれらのシステムを貸与し、乙に情報通信サービスおよび情報処理サービスを提供するものとする。」と記載され、また、第2条(サービスの内容)には、「1.甲は乙に対して次に定めるサービスを提供する。」として、「(1)甲が提供する各システム(営業・物流・経理・資金)の利用」、「(2)Eメールもしくはインターネット通信環境の提供」、「(3)上記各サービスに必要な施設、機器およびネットワークの貸与」と記載され、さらに、第3条(利用料)には「1.利用料金」として「(1)回線使用料:月額...円、(2)パソコン使用料:月額一台当り...円(7)システム使用料(保守・運用サポートを含む):月額...円」などの記載がある。
そして、第8条(有効期限)には「本件の有効期限は、契約締結の日から1年間とする。ただし、期間満了の3ヶ月前までに甲乙いずれかにより文書による契約終了の意思表示がないときは更に1年間自動的に延長されるものとし、以後も同様とする。」と記載されているが、本件プログラムのみの販売単価の記載はない。
(2)乙第2号証は、被請求人が阪和スチール宛てに作成した、2014年(平成26年)10月21日の付けの請求書であり、「請求明細」として「情報システム資産利用料(10月分)」、「回線使用料、オペガイサーバー費用、システム使用料(保守、運用サポートを含む)、PC、プリンター・複合機、ハードウェアリース費用(ハンディ、ラベルプリンタ、現場用PC etc)」などの記載があるが、本件プログラムのみの販売単価の記載はない。
(3)乙第3号証は、乙第1号証及び乙第2号証のハードウェアにインストールされた本件プログラムの操作方法、さらにはその情報通信や情報処理を内容とする「システムの取扱説明書」とされるものであり、その1葉目には、目次として、「1、起動方法について」、「2、業務フロー」・・・「5、入力共通仕様について」及び「6、ホストとの連係データについて」などの記載がある。また、その2葉目には、「1、起動方法」に「デスクトップ上の下記アイコンをクリックするとログイン画面を表示します」の記載とともにオレンジ色の輪郭の中に緑色で「HBS」の文字を中央に大きく、その下部に「Hanwa.HBS.e...へのショートカ...」の文字が表示されたアイコンが表示され、「ログイン画面」には、上部に「コイルセンター業務システム」の表示がある。
(4)乙第4号証は、被請求人の主張によれば、本件プログラムの「起動画面」とされるものであり、その中央には「HANWA」、「BUSINESS」及び「SYSTEM」の文字が、語頭の文字を数文字分ずらし3段に表示されており、また、画面の右最下部には、該画面を表示した年月日と認められる「2014/12/05」の表示があるところ、当該日付は要証期間内ではない。
(5)乙第9号証及び乙第10号証は、被請求人の主張によれば、本件プログラムの画面遷移を撮影した写真とされるものであるところ、乙第9号証の1頁目の「デスクトップ初期画面」には、「Hanwa.HBS」の文字の上部にアイコンが表示されており、その2頁目「プロパティの全般タブ」には、作成日時として2013年10月20日の表示があり、また、乙第10号証の1頁目の「デスクトップ初期画面」及び「ソフトウェアの起動画面」には、乙第9号証と同一のアイコンが表示され、また、乙第4号証と同一の「HANWA」、「BUSINESS」及び「SYSTEM」の文字が表示されている。さらに、乙第第10号証の2頁目の「ログイン画面」及び「ログインのためのデータ入力」には、「コイルセンター業務システム」の文字が表示され、その3頁目の「メニュー画面」及び「メニューボタンの選択」には、「コイルセンター業務システムメニュー」として「契約」、「入荷予定」及び「受注」などの項目が表示されている。
(6)乙第11号証は、平成27年8月28日付けの、阪和スチールの生産管理課のY氏の証明書であるところ、「1.不使用取消審判に係る登録商標の使用の事実」として、「(1)阪和スチールサービス株式会社は、コイルセンター業務処理のためのコンピュータシステムについて阪和興業株式会社からの貸与を受けており、私の業務のためのパソコンについても、数年前に阪和興業株式会社により必要なプログラムがインストールされて与えられたものである。(2)乙第2号証の請求書は、コイルセンター業務処理のためのコンピュータプログラムを含むコンピュータシステムの利用に対するものである。(3)阪和興業株式会社のコイルセンター業務処理のためのコンピュータシステムは、少なくとも数年前から現在に至るまで阪和スチールサービス株式会社において継続して利用している。(4)乙第9号証および乙第10号証の画面遷移は、平成27年8月24日に阪和興業株式会社のK氏からの要請を受け、阪和スチールサービス株式会社のシステム担当者である私のパソコンが遠隔操作された際にK氏により撮影されたもので、その内容が私のパソコンにおけるものと同一であることを確認している。」などの記載がある。
2 上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)2013年(平成25年)10月20日に、コイルセンター業務用のプログラム(本件プログラム)が作成され、その起動画面には、「HANWA」、「BUSINESS」及び「SYSTEM」の文字が3段に表示されている(上記1(5))ところ、該表示の構成中「BUSINESS」及び「SYSTEM」の文字は、「業務」及び「システム」の意味を有し、コイルセンター業務用プログラム(本件プログラム)との関係においては、自他商品識別標識としての機能が強いとはいい難いものである。
そして、本件プログラムが作成された上記年月日は、要証期間内であり、また、該プログラムは、被請求人が阪和スチールの使用するパソコンにインストールしたものと推認できるものである(上記1(5)及び(6))。
(2)被請求人は、平成26年4月1日に、阪和スチールと、被請求人が所有するコンピューター・システムの利用に関して、本件プログラムの使用を含む「情報通信サービスおよび情報処理サービス」を提供する「情報システム資産利用およびサービス契約」の契約を結んでいる(上記1(1)及び(6))。
そして、その契約に基づき同年10月21日付けで、阪和スチール宛てに「情報システム資産利用料(10月分)」の請求書を作成しており(上記1(2))、被請求人が阪和スチールに、本件プログラムを使用させ、その利用料を得ていることが認められる。
しかしながら、被請求人が、本件プログラムを阪和スチールに販売し対価を得たこと、すなわち、商品として取引したとは認めることはできず、被請求人の提出したその他乙各号証によっても、被請求人が、阪和スチールに本件プログラムを要証期間内に商品として取引したことを認め得る証左は見い出せない。
加えて、口頭審理において、合議体から被請求人に対し、被請求人は、阪和スチールに対して、本件プログラムを貸与したのか販売したのかを説明するよう求めたところ、被請求人は、上申書において、阪和スチールに対して、本件プログラムを貸与したと述べている。
そして、商標法上、商品に係る商標というためには、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」(商標法第2条第1項第1号)でなければならないところ、被請求人は、本件プログラムの「引き渡し」又は「貸与」を主張するが、本件プログラムの「販売」すなわち「譲渡」を行っていることは自ら否定しており、他に同号に該当する者であることを具体的に証明するところもないから、被請求人が主張する使用に係る商標は、商品に係る商標とはいえない。
そうすると、被請求人の行為は、「本件プログラムの貸与」という役務の提供に関するものというのが相当である。
また、被請求人は、本件プログラムをインストールディスクを用いて阪和スチールにクライアント端末にインストールすることを通じて貸与しており、この行為は商標法第2条第3項第2号の商品を引き渡しする行為に該当する旨も主張している。
しかしながら、被請求人は、そもそも、上述のとおり、商標法第2条第1項第1号に該当する者であるということができないのであり、「本件プログラムの貸与」という役務の提供に際し貸与される貸与物それ自体を商品ということはできないから、商品に係る商標の使用をしたということはできず、被請求人の上記主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のことからすると、仮に、本件プログラムの「起動画面」に表示された「HANWA」の文字が、本件商標と社会通念上同一であったとしても、被請求人が、本件商標をその請求に係る指定商品について使用したと認めることはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、その指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)(色彩については原本参照)




審理終結日 2016-03-07 
結審通知日 2016-03-09 
審決日 2016-03-29 
出願番号 商願2009-6263(T2009-6263) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 大森 健司
中束 としえ
登録日 2010-02-12 
登録番号 商標登録第5301709号(T5301709) 
商標の称呼 ハンワ 
代理人 赤尾 直人 
代理人 川岡 秀男 
代理人 山川 雅男 

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