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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y03
管理番号 1315718 
審判番号 取消2014-300237 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-03-28 
確定日 2016-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5037336号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成27年6月29日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成27年(行ケ)第10157号平成27年11月11日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5037336号商標(以下「本件商標」という。)は,「Mariquita」の欧文字と「マリキータ」の片仮名とを上下2段に横書きしてなり,平成18年10月11日に登録出願,第3類「化粧品,香料類,植物性天然香料,エッセンシャルオイル,精油,ジャスミン油,ちょうじ油,はっか油,バニラ,ばら油,ベルガモット油,ラベンダー油,吸香,薫香,線香,におい袋,せっけん類,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,自動車用洗剤,自動車用つや出し剤,つや出し布」を指定商品として,同19年3月30日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成26年4月17日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条の規定により,本件商標の指定商品中「化粧品,香料類,植物性天然香料,エッセンシャルオイル,精油,ジャスミン油,ちょうじ油,はっか油,バニラ,ばら油,ベルガモット油,ラベンダー油,吸香,薫香,線香,におい袋,せっけん類,自動車用洗剤」(以下「取消請求商品」という場合がある。)については,その登録を取り消す,審判費用は,被請求人の負担とすると申し立て,その理由を審判請求書,審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書において要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
1 請求の理由
被請求人は,本件商標を,その指定商品中,取消請求商品について,継続して3年以上,日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)乙第1号証ないし乙第3号証について
乙第1号証は,作成名義人不明の写真(被請求人が撮影したと思われる)であり,乙第2号証及び乙第3号証は,被請求人作成の書類であって,第三者が作成した客観的な証拠は全く提出されていない。乙第1号証ないし乙第3号証はいずれも,本件審判事件の請求の登録後,本件審判請求書の副本が被請求人に送達された後になって,被請求人がもっともらしく作成することが十分に可能なものであり,全く信憑性がない。
(2)消費税に関連する事項の推移について
乙第2号証及び乙第3号証が虚偽の証拠であることは,消費税関連事項の推移に照らせば明らかである。
消費税関連事項は,2004年4月に総額表示が義務づけられ,その税率は5%である。2013年10月には,2014年4月1日から税率を8%にする旨が決定されるとともに,2013年10月1日から2017年3月31日までの期間に限り「税抜表示」が可能となった。
(3)乙第1号証について
乙第1号証は,被請求人が,本件審判請求書の副本が被請求人に送達された後に,他社製の商品「エッセンシャルオイル」のもともとのラベルを剥がし,これに,パソコンを用いてもっともらしく作成した「『Mariquita』の文字を含むラベル」を貼付した上で,写真撮影したものと推定される。その理由は,製造元の記載がある筈のラベルの背面を撮影した写真が提出されていないからである。
小売店を市場調査したところ,商品「エッセンシャルオイル」については,その製造元・販売元の表示は,(a)瓶に貼付したラベルの背面に記載したもの,(b)瓶を入れる小箱〔パッケージ〕に記載したもの(小箱入りの状態で販売されている),(c)瓶を入れる小箱〔パッケージ〕に同封される「使用方法」や「効能」を記した紙に記載したもの等が存在するが,被請求人が商品「エッセンシャルオイル」を販売し,上記(b)又は(c)の方法で製造元・販売元を表示しているのであれば,当然,小箱や同封紙の実物が乙号証として提出されているはずである。
(4)乙第2号証について
被請求人は,エッセンシャルオイルを「龍IMPROVE」に販売し納品したと主張し,乙第2号証を提出しているところ,その納品日は「2014/2/22」と記載されており,納品書の日付は「2014年2月28日」(月末)となっている。
すなわち,被請求人が「龍IMPROVE」へエッセンシャルオイルを販売し納品したのは,2014年2月のこととなるが,その販売価格は「税抜額 4,000 消費税額 320 合計 4,320」と記載されており,当該記載に基づいて消費税の税率を計算してみると,8%となってしまう。実際に2014年2月に売買取引が行なわれたのであれば,消費税の税率は「5%」となるはずである。
また,「納品書」は,商品納品者(販売者)から受領した商品の内容・数量等に間違いがないかどうかを商品受領者(購入者)が「納品書」の記載と照合してチェックするために発行するものであって,納品のたびごとに発行され,(a)商品手渡しの場合は商品引渡と同時に商品受領者(購入者)に手渡され,(b)通信販売による商品発送の場合は宅配便などに託する商品を入れた箱に同封され送付されるものであり,月末締切で1ヶ月分の引渡済商品に関する「納品書」を発行することはありえない。
(5)乙第3号証について
被請求人は,エッセンシャルオイルの「価格表」を作成し,2013年から2014年にかけて頒布していると主張し,乙第3号証を提出しているところ,その1枚目には「Essential Oil Price List 2013-2014」の表記があり,その2枚目には「価格(税別)」との表記がある。仮に「価格表」(乙3)が真に作成されたと仮定するならば,いかに遅くとも,原稿を印刷所に渡したのは2012年の12月頃,印刷が完了して被請求人のもとに「価格表」が納品され頒布が開始されたのが2013年1月初めとなるが,2012年12月から2013年1月の時点では,「総額表示義務(消費税込みの価格を表示する義務)」が課されており,当時の税率は5%である。
しかしながら,乙第3号証の2枚目では「価格(税別)」との表記になっている。
3 口頭審理陳述要領書(平成27年2月27日付け)
(1)被請求人提出の乙号証について
被請求人は,乙第4号証ないし乙第15号証までを提出しているが,本件商標を本件審判の請求の予告登録前3年以内(以下「要証期間」という。)にエッセンシャルオイルに使用していた旨に触れているものは,「Aの陳述書」(乙10),「Bの陳述書」(乙12)及び「Cの陳述書」(乙15)の3点のみであり,そのいずれもが,被請求人代表者の「お友達」が作成したものであるから,たとえ,「価格表」や「写真」が添付されていても,これらが,陳述者の陳述が客観的な真実であることの裏付け証拠にはなり得ない。
(2)乙第1号証の「Mariquita」との文字が記載されたラベルが貼付された瓶入り商品(エッセンシャルオイル)の製造元について
請求人は,被請求人がエッセンシャルオイルの製造元かつ販売元ではないであろうと指摘したが,被請求人が製造元かつ販売元であるならば,被請求人は,口頭審理陳述要領書において「被請求人のエッセンシャルオイルの工場は○○県○○市○○町○丁目○番地○号に所在しており,被請求人が製造元かつ販売元である」との反論を述べるはずであるが,その反論はないから,被請求人が製造元かつ販売元ではないこととなる。
(3)乙第1号証の「エッセンシャルオイル」のラベルについて
乙第7号証によれば,ラベルデザインは平成18年8月にデーター化して被請求人(当時の名称は有限会社エン・セロクワトロ)に納品されているし,被請求人の口頭審理陳述要領書の5頁目において「・・・ラベルの記載事項のうち,内容物に応じて変更すべき匂いの種類等については,被請求人は自らデザインを修正して利用した・・・」と述べているから,パソコンに取り込んだデーター化したラベルを保存していたことが確認できた。
そうであるなら,要証期間に本件商標をエッセンシャルオイルに使用した事実がなくとも,本件審判請求書の副本が被請求人に送達された後になって,「データー化されたラベルを印刷して,これを他社の製品の瓶に貼付し,写真撮影して乙第1号証とする」ことは実に容易であることが確認された。 なお,請求人は,弁駁書において,ラベルの裏面が写っていないことを指摘したが,納品されたラベルでは販売者として有限会社エン・セロクワトロの住所・名称が記載されており(乙6),データー化されたラベルを印刷して他社製品の瓶に貼付しても,この箇所が写ってしまっては,現時点の商品であると主張できなくなるので,あえてラベル裏面が写らないように撮影したものである,と了解できた。
(4)乙第1号証の「エッセンシャルオイル」の瓶について
被請求人は,口頭審理陳述要領書において「・・・同一規格のものは国内でそれほど多くの種類が流通しているわけではなく,極めてありふれたものである・・・」と述べ,また,「・・・同一規格の遮光ボトルは国内でそれほど多くの種類が流通しているわけではないから,ジャスミン・アロマティーク・オーガニクス(以下「JAO社」という。)が被請求人と同一種類の遮光ボトルを仕入れている可能性も十分にある・・・」と述べるが,これは事実に反している。
乙第1号証のエッセンシャルオイルは,瓶のみならず蓋についても,JAO社の製品と一致している。
なお,被請求人は,口頭審理陳述要領書において,平成21年11月に竹本容器株式会社(以下「竹本容器」という。)から購入した瓶(乙8)は,本件商標を付した「エッセンシャルオイル」用である旨を述べているが,平成21年購入の瓶(乙8)は,「OEM事業」用であったものと判断される。
(5)兵庫県明石市のアロマサロンについて
被請求人が兵庫県明石市にてアロマサロン「マリキータ」を運営し,本件商標を付したエッセンシャルオイルを販売し,価格表を頒布していたとしても,該アロマサロンは平成20年2月に廃業しており,要証期間には該当しない。
(6)乙第3号証の使用について
被請求人は,答弁書において,乙第3号証を頒布したと述べ「広告」に該当すると主張したが,口頭審理陳述要領書において「パソコンに取り込んでいた古い価格表を,見せる必要性が生じた際に,修正を施しつつ相手方に見せていた」旨の主張に変更している。
「広告」という以上は,数百部ないし数千部が印刷されて,新聞折込みやポスティングのように不特定・多数に向けて頒布された状態を意味するのであって,「答弁書」における「広告」との主張は虚偽の主張であったことになる。
(7)「大和自動車交通セミナー」の件について
「大和自動車交通セミナー」の件に関して,乙第12号証ないし乙第14号証が提出されているところ,該号証によれば,「大和自動車交通株式会社(以下「大和自動車交通」という。)は『ニオイ』につき考慮していて,セミナーを開催したこと」,「該セミナーは,直接には,三高商事が大和自動車交通から受注したものであること」及び「該セミナーで『臭い』のことが話され,『アロマ』が使用されたらしいこと」は認めることができる。また,乙第12号証添付の「三高商事宛の『御請求書』」の書類からすれば,「該セミナーの実施に当たり,三高商事の下請として株式会社映像デザイン(以下「映像デザイン社」という。)が企画・進行等を運営したこと」も認められる。さらに,乙第14号証からすれば「該セミナーで使用されたであろう『アロマ』は,被請求人が手配したものであろう」となる。
しかしながら,「大和自動車交通セミナー」の件の取引の実態は,一回きりの大容量のエッセンシャルオイルの販売であり(次回・次々回の同様のセミナーが開催されるかどうか不明で,かつ,セミナー参加者の人数を考えれば,個人消費の目的の販売とは違って大容量である),被請求人は,「大和自動車交通セミナー」の件の取引を「小容量の瓶の小売取引」と把握するのではなく,「一回のみの『バルク取引』」と了解し,そのような取引として処理したはずである。
そして,Bの陳述書(乙12)には,乙第3号証と同じ価格表が添付されているものの,乙第3号証自体「本件審判請求書の副本が被請求人に送達された後に,日付を『2013-2014』と遡らせ,パソコンでもっともらしく作成したもの」であって,このように作成された乙第3号証を受領し,陳述者が『昔受け取ったものと同じもの』と称して陳述書に添付した」ものであり,Bの陳述が客観的な真実であるとの裏付け証拠にはなり得ない。
(8)「ネット販売の試み」の件について
「ネット販売の試み」の件に関しては,乙第10号証及び乙第11号証の2件の証拠が提出されているところ,株式会社ティー・ディー・エス(以下「TDS社」という。)は「印刷業者」であり,多角経営のために,全く異業種であるネットの通信販売による物販(商品小売)に進出しようとした,という話自体,にわかに信じられないし,さらに,進出しようとした物販(商品小売)業にて取り扱おうとした商品が,本業の「印刷業」とは全く関連性のない商品であることも,TDS社にこのような多角経営の企図があったのかどうか,との疑義を生じさせるものである。TDS社にネット販売を新規に開始する企図があったのかどうかは,ただ陳述者であるAのみが知るところである。
乙第11号証のプライスリストは,乙第3号証と全く同様に,「本件口頭審理の開催決定後に作成したもの」であり,平成18年の古い価格表を用いて,もっともらしく,乙第11号証(乙10に添付した価格表)を作成することは容易であろうし,22種類のエッセンシャルオイルの総てについて5年も前の価格と全く同一価格であったとは信じがたいものである。
4 結論
以上のとおり,提出された乙号証を検討しても,要証期間において請求に係る指定商品について本件商標を使用している裏付けとなるものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書及び平成27年3月13日付け上申書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 答弁の理由
被請求人は,要証期間にあたる平成26年(2014年)2月28日において,本件取消請求商品中「エッセンシャルオイル」について,商品の外面に貼付されたラベルに本件商標を表記し(乙1),また,このエッセンシャルオイルの納品書に本件商標を表記するとともに,本件商標の表記のある押印を行っている(乙2)。
この納品書の示すとおり,エッセンシャルオイルは,日本国内にある被請求人から,日本国内にある顧客(龍IMPROVE)に納品されたものである。
さらに,被請求人は,要証期間にあたる平成25年(2013年)に,「Essential Oil Price List 2013-2014(エッセンシャルオイルプライスリスト2013-2014)」なる広告及び価格表を発行,頒布し,この広告及び価格表において,エッセンシャルオイルについて本件商標を表記している(乙3)。
したがって,被請求人は,本件商標について,要証期間に日本国内において,「使用」(商標法第2条第3項)していたものである。
2 口頭審理陳述要領書における主張
(1)被請求人は,(エッセンシャルオイルを)個人に小売りするための小口の遮光ボトルを竹本容器から調達するとともに,これに貼り付けるラベルのデザインについては,Bに発注した。ラベルデザインデータは,平成18年8月に納品され,そこには,特徴的なロゴデザイン文字「Mariquita」が付されていた(乙6及び乙7)。
以後,被請求人は,デザイン文字「Mariquita」が付されたラベルを貼り付けた遮光ボトル(以下「Mariquitaボトル」という場合がある。)にエッセンシャルオイルを入れたものを販売することとした。
(2)要証期間の商標の使用について
ア ネット通信販売の試み(乙10)
被請求人は,アロマ用品関連商品の取り扱いやセールスプロモーション事業において,印刷業務を外注する機会がしばしばあり,TDS社と継続的に取引を行っていた。
被請求人の代表取締役であるDは,TDS社が事業を多角化するために,自らネット通信販売事業を試行的に行っていると聞いたことから,平成23年8月3日,東京都渋谷区所在の飲食店内において,TDS社の代表取締役であるAに対し,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを卸売してTDS社でネット通信販売してもらうことはできないかと提案するとともに,サンプルとしてMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを数種類及び価格表を交付した(以下「使用行為1」という。)。この時に交付した価格表は,アロマサロン「マリキータ」の店頭に備え置いていた価格表を流用し,会社名や住所等の情報のみを最新のものに修正してプリントアウトして作成した(乙11)。
この取引の提案に対しては,Aが価格の面で難色を示し条件が折り合わなかったために,取引は実現に至らなかった。
イ 大和自動車交通セミナー企画への協力(乙12)
被請求人は,平成25年10月,Bが設立し代表取締役を務めていた映像デザイン社から,タクシー会社である大和自動車交通が主催する社内向けセミナー「おもてなし Seminar」で,被請求人の取り扱っているエッセンシャルオイルを使用したいと相談を受けた。
被請求人は,エッセンシャルオイルを提供することになり,匂いの種類や量等の選定を行うために,同月19日,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを何種類か,価格表とともに映像デザイン社に提供した(乙1及び乙3)(以下「使用行為2」という。)。最終的に,セミナーではローズマリーとレモンを3:7の割合でブレンドしたものを使用することになり,被請求人は,同年11月5日,上記割合で予めブレンドしたエッセンシャルオイル,合計100ミリリットルを,ディフューザー及び試香紙とともに映像デザイン社に納品した(乙14)。映像デザイン社は,同月6日から8日にかけて,「おもてなし Seminar」の本番で,被請求人から納品されたエッセンシャルオイル等を使用した。
ウ 龍IMPROVEに対する試供品の提供(乙15)
被請求人は,平成18年頃から,セールスプロモーション事業の顧客であるC経営に係る龍IMPROVEに,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを試供品として,年に3回程度の頻度で継続的に提供していた。Cは,被請求人から提供を受けたエッセンシャルオイルを龍IMPROVEの店内で使用していた。
被請求人は,要証期間にも,同様に年に3回程度の頻度でMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルをCに提供しており,平成26年2月には,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを,シダーウッド1本,ベルガモット1本,ラベンダー1本の合計3本提供した(乙2)(以下「使用行為3」という。)。
エ 各使用行為が商標法第2条第3項の「使用」に該当すること
被請求人による使用行為1,使用行為2及び使用行為3は,いずれも指定商品「エッセンシャルオイル」の包装たる容器に登録商標「Mariquita/マリキータ」の標章を付したものを譲渡する行為として商標法第2条第3項第2号に該当し,使用行為1及び使用行為2(審決注:「使用行為3」と記載されていたが,「使用行為1」の誤記と認められる。)は,いずれも指定商品「エッセンシャルオイル」に関する価格表に本件商標を付して頒布する行為として商標法第2条第3項第8号に該当する。
(3)補足説明
ア 納品書(乙2)について
納品書(乙2)は,納品の事実を立証するために本審判において証拠として提出したものであるが,記載内容は取引実態と齟齬するものであり,被請求人が龍IMPROVEのCに納品書(乙2)を交付した事実はない。被請求人は,内部管理の目的で事後的に納品書(乙2)を作成しただけであり,実際には販売したのではなく試供品として提供したにもかかわらず,取引実態に反する金額を定価どおりに記載する等漫然と作成した。このように,納品書(乙2)の記載内容のうち信用性を有する部分は限定的ではあるが,被請求人のねつ造により作成されたものではない。
イ 価格表(乙3)について
価格表(乙3)は,作成数が極めて少ないものであり,被請求人は,必要となった都度プリンターで出力して作成していた。被請求人が最初に価格表を作成したのは,平成18年9月に明石市のアロマサロン「マリキータ」に備え置く時であり,この時の価格表は,乙第3号証のうち2頁目に相当する部分のみである。
被請求人は,平成23年8月にTDS社に取引を提案する際に上記価格表を再利用し,下部の商号や所在地等の記載のみをコンピュータ上で修正してプリントアウトしたものをTDS社のAに交付した(乙11)。
被請求人は,平成25年10月に映像デザイン社に価格表を提供する際には,上記の価格表における所在地等の記載をコンピュータ上で修正するとともに,新たに表紙を作成して付加した2枚綴りの価格表を映像デザイン社のBに交付した(乙3)。
被請求人がアロマサロン「マリキータ」に価格表を備え置いていた際には,被請求人は設立から2年を経過しておらず,消費税の納税義務が免除されていたことから,被請求人は,別途消費税を上乗せすることなく,価格表に記載されたとおりの価格でエッセンシャルオイルを販売していた。被請求人がTDS社及び映像デザイン社に交付した価格表には,消費税別の表示がなされていたが,これは事業者に対する価格の表示であったため,消費税法上の総額表示義務の対象外であった。
ウ 「ジャスミン・アロマティーク・オーガニクス(JAO社)」について
JAO社は,エッセンシャルオイル及びその関連商品を取り扱っていることから,Dが好んで訪れる店舗の一つである。しかし,Mariquitaボトル(乙1)は,被請求人が竹本容器から購入したボトルにラベルを貼り付けて作成したものであって,JAO社にOEM生産を委託して作成したものではない。
被請求人とJAO社が,仮に,同一種類の遮光ボトルを使用していたとしても,同一規格の遮光ボトルは国内でそれほど多くの種類が流通しているわけではないから,JAO社が被請求人と同一種類の遮光ボトルを仕入れている可能性も十分にある。
3 結論
以上のとおり,被請求人による本件商標の使用の事実の立証は十分であり,被請求人は,本件商標を,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において使用していたものである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用に関し,被請求人が主張する使用行為1ないし3のうち,使用行為2(前記第3,2(2)イ)について,同人の主張及び同人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第1号証は,3種類の容器の外観写真であり,これらの容器の側面には,「BERGAMOT/ベルガモット」,「LAVENDER/ラベンダー」及び「CEDARWOOD/シダーウッド」の表示があり,やや下部分には,デザイン化された「Mariquita」の欧文字が表示されている。
(2)乙第3号証は,2葉からなる書面であり,その1葉目には,「Oraganic & Wild」及び「Mariquita Essential Oil」の欧文字が2段に表示され,右上部分には,「Essential Oil Price List」及び「2013-2014」の文字が2段に表示されている。
そして,その2葉目の右上部分には,乙第1号証の容器の一つと思しき写真が掲載され,その下には,「精油」,「容量」,「価格(税別)」の一覧表が掲載されている。その「精油」の欄には,例えば「ラベンダー」,「シダーウッド」,「ベルガモット」,「レモン」,「ローズマリー」等,及び「遮光瓶」の記載がある。
また,右下部分には,ややデザイン化された「Mariquita」の欧文字と,その下には「株式会社マリキータ」及び「神奈川県川崎市高津区北見方2-27-28-203」の記載がある。
(3)乙第6号証は,ラベルデザインであり,これには,7色の「LAVENDER/ラベンダー」等の表示と,直線の下に,ややデザイン化された「Mariquita」の欧文字が表示されている。
このラベルデザインについて,被請求人は,口頭審理陳述要領書において,(エッセンシャルオイルを)個人に小売りするための小口の遮光ボトルに貼り付けるラベルのデザインであり,Bに発注し,ラベルデザインデータは,平成18年8月に納品され,そこには,特徴的なロゴデザイン文字「Mariquita」が付されていた旨を主張している。
(4)乙第12号証は,平成27年2月13日付けのBの「陳述書」であり,これによれば,Bは,映像関係の制作,イベントの企画,運営等を業務とする映像デザイン社の代表取締役であって,その3頁の「4 平成18年の『Mariquita』ラベルデザインの受注と納品」には,平成18年の夏頃,エンセロクワトロのDから,アロマオイルのボトルに貼るラベルのデザインを受注したこと,「Mariquita」の文字デザインに気を配りつつ作成して納品したこと等の記載がある。
そして,その4頁の「5 平成25年の『おもてなし Seminar』の企画運営とアロマオイル発注」には,平成25年に,大和自動車交通というタクシー会社の管理者を対象とした社内セミナー「おもてなし Seminar」に携わる機会を得て,映像デザイン社として引き受けることになったこと,大和自動車交通が社内の管理者及び運転手全員に配布する「おもてなし BOOK」に強調して記載されている「ニオイ」について,セミナーでは,実演と体験を交えたセミナーを行うことを思い立ったこと,被請求人の代表者であるDにセミナーの趣旨を説明し,アロマオイルの納品について相談したところ,平成25年10月に,どの種類のアロマオイルを使うか検討するために,Dから,6?7種類のアロマオイルのボトルをサンプルとして,プライスリストとともに提供されたこと,この時に提供を受けたアロマオイルのボトルには,いずれもBが納品したデザインのラベルが貼られていたこと,最終的に,ローズマリーとレモンを3:7の割合でブレンドすることに決定したこと等の記載がある。
この陳述書には,「御請求書」(アロマについて,乙14と同様の金額),「ラベルデザイン」(乙6と同様)及び商品「エッセンシャルオイル」の価格表(乙3と同様)が添付されている。
(5)被請求人は,口頭審理陳述要領書において,「被請求人は,平成25年10月,Bが設立し代表取締役を務めていた映像デザイン社から,大和自動車交通が主催する社内向けセミナー『おもてなしSeminar』で,被請求人の取り扱っているエッセンシャルオイルを使用したいと相談を受け,エッセンシャルオイルを提供するにあたり,匂いの種類や量等の選定を行うために,同月19日,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを何種類か,価格表とともに映像デザイン社に提供した。最終的に,セミナーではローズマリーとレモンを3:7の割合でブレンドしたものを使用することになり,被請求人は,同年11月5日,上記割合で予めブレンドしたエッセンシャルオイル,合計100ミリリットルを,ディフューザー及び試香紙とともに映像デザイン社に納品した。」旨を主張している。
(6)乙第14号証は,平成25年11月30日付けの株式会社マリキータから映像デザイン社に宛てた「御請求書」であり,「御請求品名」の欄には「大和自動車セミナー用精油」,「受渡期日」の欄には「2013年11月5日」の記載があり,品名「ディフュザー」について,数量「2台」,品名「レモン 10ml」について,数量「7本」,品名「ローズマリー 10ml」について,数量「3本」及び品名「試香紙」について,数量「300枚」の記載と総合計の金額が記載されている。
2 上記1によって,被請求人が主張する使用行為2について,以下のとおり認定,判断する。
(1)本件商標権者は,エッセンシャルオイルの販売事業を行っている者であり,その取扱い商品「エッセンシャルオイル」は,本件審判の取消請求に係る指定商品中の商品であるところ,本件商標権者は,自身が販売するMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイル及びその価格表に,ややデザイン化された「Mariquita」の文字からなる商標を表示したことが認められ(乙1,乙3及び乙6),該表示は,いずれも自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
被請求人の主張(上記1(5))によれば,本件商標権者は,Bとの間の,要証期間に含まれる平成25年10月に,Bが携わる大和自動車交通の平成25年の「おもてなし Seminar」において使用するエッセンシャルオイルの商談において,匂いの種類の選定や量等を検討するためのサンプルとして,販売品であるMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルを何種類か,価格表とともにBに引き渡し,セミナーではローズマリーとレモンを3:7の割合でブレンドしたものを使用することになり,同年11月5日,上記割合で予めブレンドしたエッセンシャルオイル,合計100ミリリットルを,ディフューザー及び試香紙とともに映像デザイン社に納品した旨を述べている。
そして,かかる主張は,Bの「陳述書」(乙12)に記載された内容と同様であって,また,Bは,該陳述書において,この時に提供されたエッセンシャルオイルのボトルには,いずれもBが以前本件商標権者に納品したデザインのラベルが貼られていた旨も陳述していることからも裏付けられる。
そうすると,本件商標権者は,平成25年10月に,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルをBに引き渡し,併せて,該エッセンシャルオイルの価格表を頒布した(使用行為2)ものと認められる。
なお,上記使用行為2の後,本件商標権者は,「レモン」を30mlと「ローズマリー」を70mlとを合わせて100ml分について,平成25年11月5日に,「大和自動車セミナー用精油」として映像デザイン社に販売したものであり,かかる取引の事実は,本件商標権者から映像デザイン社宛てに,同月30日に,「ディフューザー」を含めた「請求書」を発行していること(乙14),及び,Bの陳述から裏付けられる。
これら一連の取引の実情からすれば,本件商標権者が販売するMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルと同じ物を映像デザイン社の代表者であるBに引き渡した使用行為2は,取引の見込み客である「映像デザイン社」に対する営業活動の一環であり,引き渡されたMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルがサンプルとして無償で引き渡されたとしても,そのエッセンシャルオイルは,本件商標権者が販売する商品であることに変わりはない。
以上のとおり,本件商標権者が,平成25年10月に,Bに引き渡した販売品であるMariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルには,自他商品の識別標識として機能を果たし得る「Mariquita」の文字からなる商標が表示されていたものであるから,これは,商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを引き渡す行為」ということができる。
さらに,本件商標権者は,Mariquitaボトル入りのエッセンシャルオイルの価格表に,自他商品の識別標識として機能を果たし得る「Mariquita」の文字からなる商標を表示して,平成25年10月に,Bに頒布したのであるから,これは,商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する価格表に標章を付して頒布する行為」ということができる。
(2)本件商標は,前記第1のとおり,「Mariquita」と「マリキータ」の文字とを2段に書してなるところ,その構成中,「Mariquita」の欧文字は,辞書類に載録されている既成の語ではないことから,特定の意味合いを生ずることのない一種の造語として理解,認識されるものであり,その文字配列からすれば,英語風に「マリキータ」の称呼を生ずるものである。
そうとすれば,本件商標の下段に位置する「マリキータ」の片仮名は,その上段に位置する「Mariquita」の欧文字の読みを特定するものとして認識されるとみるのが相当である。
他方,使用に係る商標は,ややデザイン化された「Mariquita」の欧文字からなるところ,該文字は,本件商標の「Mariquita」の欧文字と綴りを同一にするものであって,本件商標と同様に,「マリキータ」の称呼を生ずるものである。
以上を総合勘案すれば,使用に係る商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)まとめ
上記のとおり,本件商標権者は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を,その取消請求に係る指定商品中の「エッセンシャルオイル」の容器に表示して引き渡したものであり,かかる行為は,商標法第2条第3項第2号に該当し,また,商品「エッセンシャルオイル」の価格表に表示して頒布したものであるから,かかる行為は,同項第8号に該当するものと認められる。
3 むすび
以上のとおり,被請求人が主張する使用行為1及び3について判断するまでもなく,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者が,その取消請求に係る指定商品中の「エッセンシャルオイル」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中,取消請求商品について,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-02-29 
結審通知日 2016-03-02 
審決日 2016-03-31 
出願番号 商願2006-94844(T2006-94844) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 田中 亨子
平澤 芳行
登録日 2007-03-30 
登録番号 商標登録第5037336号(T5037336) 
商標の称呼 マリキータ、マリクイタ 
代理人 中尾 俊介 

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