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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35374045
審判 全部申立て  登録を維持 W35374045
審判 全部申立て  登録を維持 W35374045
管理番号 1314572 
異議申立番号 異議2015-900186 
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-06-10 
確定日 2016-05-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5749215号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5749215号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5749215号商標(以下「本件商標」という。)は,「阪奈霊園」の漢字を標準文字で表してなり,平成26年10月14日に登録出願,第35類「墓石の販売に関する情報の提供,その他の商品の販売に関する情報の提供,墓石の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,その他の葬祭用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,墓地及び墓の販売に関する事務の代理又は代行」,第37類「霊園・墓地の造成工事,その他の建設工事,建築工事に関する助言,墓石の修理又は保守」,第40類「墓石の戒名の加工,墓石への彫刻,その他の石材の加工,墓石及び人工石材又は石材の防汚染被膜加工」及び第45類「墓地又は納骨堂の提供に関する情報の提供,墓地又は納骨堂に関する相談,墓地又は納骨堂の管理又はその契約の媒介,墓地の永代供養の媒介,墓地の永代使用の媒介」を指定役務として,同27年1月28日に登録査定され,同年3月13日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標はその指定役務について,商標法第4条第1項第7号,同第10号及び同第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。
1 申立人が引用する商標
申立人が引用する商標は,「阪奈霊園」(以下「引用商標」という場合がある。)の文字を書してなるものである。
2 具体的理由
(1)概要について
ア 申立人
申立人は,宗教法人隆昌寺(以下「隆昌寺」という。)であり,大阪府4条畷市上田原1137番地の2に所在する「隆昌寺阪奈霊園」を経営する経営主体であり(甲3),霊園の全ての土地建物を所有している(甲4)。
なお,後述する商標権者の住所である大阪府4条畷市上田原1009番地の1は,甲第5号証に示すとおり,大阪府4条畷市上田原1137番地の2に合筆されており,住居表示「大阪府4条畷市上田原1009番地の1」についても隆昌寺が所有している。
イ 商標権者
本件商標の商標権者は,大阪府4条畷市上田原1009番地の1に所在する阪奈霊園株式会社であり,その前身は有限会社阪奈霊園石材(以下「(有)阪奈霊園石材」という。)であり,平成19年10月31日に現在の商号に変更している(甲6,甲7)。
商標権者は,従来,申立人である隆昌寺から,霊園の墓石の販売等について業務を委託されていた(甲8,甲9)ところ,今般,霊園に関する業務の全てを宗教法人が執り行うこととなり,平成26年9月19日付けで全ての委託業務の更新を行わない旨の通知を行っている(甲10)。
ウ 阪奈霊園
「隆昌寺阪奈霊園」は,昭和63年末頃から,宗教法人地蔵寺(以下「地蔵寺」という。)が「地蔵寺阪奈霊園」として,許可申請をしており,平成元年には使用が許可され,墓地及びそれを経営する経営主体の名称として「阪奈霊園」の標章の使用が開始された(甲11)。
そして,前記地蔵寺阪奈霊園は,平成7年4月頃には,地蔵寺から宗教法人経王寺(以下「経王寺」という。)に移転され(甲12),さらに,経王寺は,平成22年7月7日には,その名称を「宗教法人隆昌寺」に変更して現在に至っており(甲3),それに伴い,経営する霊園の標章も「隆昌寺阪奈霊園」とされている。しかしながら,隆昌寺阪奈霊園は,一般的には宗教法人名を省略して「阪奈霊園」と使用され,または称呼される場合が多い。
(2)商標法第4条第1項第7号該当について
ア 他の法律によって使用を禁止される商標であること
霊園の経営については,特定の団体を除き,その経営は禁止されている。その根拠法としては,「墓地,埋葬等に関する法律」(甲13)および「4条畷市墓地等の経営の許可に関する条例」(甲14)が挙げられる。
前記法律及び条例において,霊園の経営主体については,先ず,「墓地,埋葬等に関する法律」(甲13)の第10条第1項において「墓地,納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならない。」と規定されており,さらに本霊園の所在地である大阪府四條畷市の「4条畷市墓地等の経営の許可に関する条例」(甲14)の第3条においては,「墓地等を経営しようとする者は,次の各号のいずれかに該当するものでなければならない。」と規定され,同条第1号ないし第3号において「地方公共団体」「宗教法人」「公益社団法人」「公益財団人」に,限定されて規定されており,その他の法人等については,その経営は行うことができない。
したがって,「地方公共団体」,「宗教法人」,「公益社団法人」又は「公益財団人」のいずれでもない商標権者が,墓地の経営や,墓地の経営と同視される役務及び墓地の経営と一体不可分的に密接に関係する役務,すなわち,「墓石の販売に関する情報の提供,その他の商品の販売に関する情報の提供,墓石の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,その他の葬祭用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,墓地及び墓の販売に関する事務の代理又は代行」,「霊園・墓地の造成工事,その他の建設工事,建築工事に関する助言,墓石の修理又は保守」,「墓石の戒名の加工,墓石への彫刻,その他の石材の加工,墓石及び人工石材又は石材の防汚染被膜加工」及び「墓地又は納骨堂の提供に関する情報の提供,墓地又は納骨堂に関する相談,墓地又は納骨堂の管理又はその契約の媒介,墓地の永代供養の媒介,墓地の永代使用の媒介」について,商標権者となりこれを使用することは前記法律に抵触するものである。
イ 公共的利益の私的独占に係る商標であること
墓地,霊園は,一般に公共的施設であると認識されている。これは,前記「墓地,埋葬等に関する法律」(甲13)や「4条畷市墓地等の経営の許可に関する条例」(甲14)において,その経営主体が「地方公共団体」,「宗教法人」,「公益社団法人」又は「公益財団人」に制限されていることからも明かである。
したがって,商標権者が,墓地の経営や,墓地の経営と同視される役務及び墓地の経営と一体不可分的に密接に関係する役務,すなわち,「墓石の販売に関する情報の提供,その他の商品の販売に関する情報の提供,墓石の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,その他の葬祭用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,墓地及び墓の販売に関する事務の代理又は代行」,「霊園・墓地の造成工事,その他の建設工事,建築工事に関する助言,墓石の修理又は保守」,「墓石の戒名の加工,墓石への彫刻,その他の石材の加工,墓石及び人工石材又は石材の防汚染被膜加工」及び「墓地又は納骨堂の提供に関する情報の提供,墓地又は納骨堂に関する相談,墓地又は納骨堂の管理又はその契約の媒介,墓地の永代供養の媒介,墓地の永代使用の媒介」について,商標権者となり,これを独占的に使用することは,「公共的利益の私的独占に係る商標」の使用に該当することは明白である。
ウ 他人の商標を冒用する商標であること
商標権者は,本霊園の経営主体である隆昌寺とは別の法人である。また,隆昌寺は商標権者に対して,平成26年9月19日付けで全ての委託業務の更新を行わない旨の通知を行っている。本件登録出願は,前記通知を行ってから,約1月後の平成26年10月14日に行われており,商標権者が契約解除を知って,これを妨害し,または,今後の隆昌寺の霊園の経営業務を妨害するために行われた登録出願であって,明らかに隆昌寺の使用している商標であることを知って,剽窃的に行われた登録出願であり,「他人の商標を冒用する商標」である。
エ 以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に規定される公序良俗を害するおそれがある商標に該当する。
(3)商標法第4条第1項10号及び同第15号該当について
ア 他人
商標権者は,本霊園の経営主体である隆昌寺とは別の法人である。
周知性について
標章「阪奈霊園」は,当初(昭和63年末頃)より使用され現在に至るまで継続的に使用されている標章であり,霊園の名称として,または霊園を経営するにあたって必要な業務において,宗教法人名と組み合わせて,また,宗教法人名を省略した単独の形で頻繁に使用されている。
前記標章は,例えば,「阪奈霊園」の名称として,霊園の正面入口近傍であって,車道に面する場所に,大きく石版の上段に「宗教法人隆昌寺」と表示され,その下段に大きく「阪奈霊園」と色彩を付して刻印され使用されている(甲15)。
また,隆昌寺が発行する「永代使用権利書」または「墓地使用許可書」に使用されている。(甲16?甲18),さらに,墓地使用者が隆昌寺に墓地使用を申し込む際に使用される「永代使用申込書」(甲19)に使用されている。加えて,隆昌寺が使用する封筒(甲20)や,霊園までのバスの運行表(甲21)にも,前記標章は使用されている。
一方,前記霊園は,現在10,000区画程度の所有区画を有しており(甲22),そのうち,約5,700区画の多数に亘って永年使用されており(甲23),その全てに標章「阪奈霊園」が使用されている。
また,その公共性からも,例えば,マピオン等の地図にも「阪奈霊園」と,霊園の標章が明確に示されている(甲24)。
さらに,「阪奈霊園」という標章は,日本全国で唯一,大阪府4条畷市上田原1137番地の2に所在するものが存在しているため,「阪奈霊園」といえば,直ちに大阪府4条畷市上田原1137番地の2に所在する霊園を示すものとなっている。
以上のように標章「阪奈霊園」は,霊園の経営や,霊園の経営と同視される業務について,需要者の間に広く認識されている商標となっている。また,これを経営主体である隆昌寺以外の者が使用すると,役務及び霊園の経営と一体不可分的に密接に関係する業務について,隆昌寺と役務の質の誤認を生じるおそれが生じるものとなる。
ウ 以上より,本件商標は,隆昌寺の使用する商標として需要者の間に広く認識される商標であると共に,これを隆昌寺でない者が使用すると,役務及び霊園の経営と一体不可分的に密接に関係する業務について,隆昌寺と役務の質の誤認を生じるおそれが生じるものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する。

第3 当審における取消理由通知(要点)
商標権者は,平成13年12月28日から本件商標の登録出願の直前まで,申立人の経営に係る墓地の業務の委託を受けていたものであって,申立人の存在及び申立人が「阪奈霊園」の標章を使用して墓地の経営等の業務を行っていることを知悉していたものといわなければならない。
そして,商標権者は,上記業務の委託の更新を行わない旨の通知を受けた直後に,墓地の経営等と密接に関連するものといえる本件指定役務について,「阪奈霊園」の標章が登録されていないことを奇貨として,これと同一の構成からなる本件商標を剽窃的に先取り出願し,登録を受けたものというべきである。
そうすると,本件商標は,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当するものというべきであり,商標法第4条第1項第7号にいう公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といわなければならない。

第4 商標権者の提出した意見書(平成27年12月17日付け)
1 本件商標出願登録の経緯
(1)申立人使用の標章が同人の使用によって周知性を獲得しているとはいえないこと
まず,本件では,申立人が墓地の経営に使用しているとする「阪奈霊園」の標章が,申立人の営業活動または事業活動によって取引者及び需要者間に広く認識されるに至ったという事実はない。
本件霊園正面入口近傍に「阪奈霊園」との刻印された石材を立てていること(但し,この石材は商標権者の費用で立てたものである),永代使用権を購入した需要者に個別に発行する「永代使用許可証(永代使用権利証または墓地使用許可書)」に使用していること,「永代使用申込書」に使用していること,封筒や,霊園までのバス運行表に使用しているという程度であり,これだけで周知性を取得したというには不十分である。
むしろ,商標権者が,永代使用権の販売(法的には仲介または販売代理にあたるが,以下,単に「販売」という。)の権利と墓石販売,建墓,墓地の管理の業務を「阪奈霊園」の標章を使用して行ってきたため,取引者または需要者には標章「阪奈霊園」は,むしろ商標権者の出所を示すものとして,相当程度周知されるに至っているというべきである。
(2)不正の目的がないこと
商標権者は,確かに申立人と平成13年12月28日から業務委託契約等を締結しており,申立人が墓地の経営を行い,その墓地の経営について「阪奈霊園」との標章を使用していたことを知っていたことは事実であるが,商標権者が商標登録を受けた第35類,第37類,第40類及び第45類に「墓地の経営」は含まれておらず,商標権者が墓地の経営について,「阪奈霊園」の標章を使用することを阻害,阻止しようといった不正な意図を有していたものではない。
(3)本件霊園における商標権者の地位及び「阪奈霊園」の標章使用に至る経緯
ア 大阪府四條畷市上田原1137番地2,同1008番3,等(土地合筆後の地番,合筆前には1009番1も敷地であった)に所在の霊園墓地(以下「本件霊園」という場合がある。)について
(ア)昭和62年2月ころ,才田友弘(後に才田教導と名前変更。以下「S氏」という。)は,地蔵寺との間で,S氏が地蔵寺の名義を借りて,本件霊園の経営及び墓地の管理販売を行うかたちの共同事業を行うこととした。
平成63年12月に,S氏が主体となり,「地蔵寺 阪奈霊園」の名称で(地蔵寺の名義を借り),大阪府知事から墓地等の経営許可を受け,平成元年ころから,墓地・霊園の造成・開発を開始した(乙33)。
(イ)S氏は,平成元年ころから,「地蔵寺 阪奈霊園」の名称で永代使用権の販売を開始していたが(甲11,甲16),平成4年2月5日に株式会社谷企画を設立し,自ら代表取締役として経営し,独占的に「地蔵寺 阪奈霊園」の名称で永代使用権(墓地の権利)の販売(法的には仲介または販売代理)を行うようになった。
株式会社谷企画は,平成4年10月27日に株式会社大阪ロックと商号を変更し,次で平成5年3月25日には,阪奈石材株式会社(以下「阪奈石材」という。)と商号を変更し,永代使用権の販売代理,墓石販売,建墓を行っていた。
(ウ)ところが,S氏は,地蔵寺に名義を借用する代金を平成6年ころから分割で支払うことになっていたところ,その分割金を地蔵寺に支払おうとしなかったことから,S氏と地蔵寺との間で平成6年ころから紛争になり,地蔵寺がS氏に対して墓地の販売差止めを求める保全処分事件となった(甲12)。
(エ)そこで,S氏は,地蔵寺と平成7年3月に和解し,地蔵寺に1億円を支払い,別の宗教法人である申立人(当時の代表役員:岩津龍戒(以下「I氏」という。),当時の名称は「経王寺」。現名称は「隆昌寺」)に,本件霊園の土地の名義を変えるとともに,墓地経営等の許可を承継させることとした(この頃から本件霊園の名称,及び永代使用権権利証の名称は,「経王寺 阪奈霊園」と変更。)。
申立人の宗教法人は,当時,S氏が,代表役員のI氏に対し約4500万円を支払う約束のもと,I氏から買い受けた宗教法人であり,本件霊園は,S氏が実質的に経営していた。
(オ)ところが,S氏は,地蔵寺に支払うべき和解金1億円の資金調達(甲12:頭金5000万円,その後平成7年4月から300万円ずつの分割)に困り,平成7年3月?4月ころ,故・岩本隆昌(以下「R氏」という。)が経営していたルートロック・レンタリース株式会社,及びルートロック・エンタープライズ株式会社(以下,両社を「ルートロック」という場合がある。)から数千万円の資金を借りた。
ルートロックは,申立人の名義となっていた本堂や墓地敷地に根抵当権設定仮登記等の担保権及び,本堂や敷地に同根抵当権仮登記を設定した(甲4,乙3,乙33)。
また,ルートロックは,阪奈石材の営業権・経営権を同時期に担保に取得し,平成7年10月,同社にルートロック関係者を取締役に送り込み,経営を担保権者として事実上支配するようなった(乙1の1)。
阪奈石材は,いったん兵庫県神戸市に本店を移転し(乙1の2),その後また本件霊園所在地の4条畷市上田原に本店を移転した(乙1の3)。
(カ)ルートロックは,平成10年6月に,同社が支配権を有するアスコット・イン・ジャパン株式会社の商号を阪奈霊園石材株式会社(以下「阪奈霊園石材(株)」という。)に変更し,S氏を代表取締役に就任させ(乙2の1),本店を本件霊園に移転し,阪奈石材の事業の全部を事実上承継した。阪奈石材は,平成11年4月に解散した(乙1の3)。
(キ)他方,I氏は,経王寺の代表役員をいずれS氏に変更すると約束していたが,その約束を反故にし(S氏が上記約束した代金を支払わなかったためと思われる。),平成11年ころ,「経王寺」をR氏に約4500万円で売却した(S氏への売買と,R氏への売買が二重譲渡のようなかたちとなった)。
平成11年3月,R氏は,申立人の代表役員に就任した(乙4の1)。
(ク)S氏が代表取締役の阪奈霊園石材(株)は,結局,借金が嵩んで経営が立ちゆかなくなったところ,当時,ルートロックを経営するR氏は,平成12年3月1日に,支配権を有する有限会社中井興産(前商号:ダイエー興産有限会社。)の商号を「有限会社阪奈霊園石材」(商標権者の元商号)と変更し,阪奈霊園石材(株)の業務,従業員らを包括的に承継し,事業を始めた(乙5の1)。
(ケ)(有)阪奈霊園石材は,平成12年3月5日に大阪府箕面市の本店を奈良県生駒市に移転し,平成13年5月にR氏の部下であった安永清が代表取締役に就任した(乙5の2)。
S氏の阪奈霊園石材(株)は,平成12年5月8日に解散決議し,清算をすることとなった(乙2の2)。
(コ)このような経緯で商標権者は,平成12年3月ころ,阪奈霊園石材(株)から事業を承継した(有)阪奈霊園石材によって,「経王寺 阪奈霊園」の標章を使用して,永代使用権の販売,墓石の販売等の事業を始めた。
なお,平成11年3月には,R氏は,(有)阪奈霊園石材についても経営権を握り,申立人と商標権者とを一体的に経営を行っていた。
(サ)大阪府知事から墓地経営等の許可を受けた申立人と,永代使用権(墓地)の販売と墓石販売,建墓の業務を行う(有)阪奈霊園石材とは,平成13年12月21日に契約書を締結し(乙34,以下「本件旧契約」という。),同時に業務委託契約書2通を締結した(甲8,甲9,以下「本件各旧業務委託契約」という。)。
本件旧契約の中で,申立人は,「甲及び乙は協力して本件墓地を管理し,これを経王寺阪奈霊園として販売,これを運営し,」と合意していることから明らかなように,墓地等の経営許可を有する申立人と,永代使用権(墓地)の販売と墓石販売,建墓の業務を行う商標権者とは,相互に協力し,ともに「経王寺阪奈霊園」の名称,すなわち「阪奈霊園」標章を使用して墓地の経営と,永代使用権(墓地)の販売と墓石販売,建墓の業務,墓地の管理業務を(いわば棲み分けて)行うことを合意し,「阪奈霊園」の標章を,商標権者自身が永代使用権(墓地)の販売と墓石販売・仲介業務,建墓の業務,墓地の管理業務等に使用してきたのである。
(シ)次いで,平成18年4月,土居ひとみ(以下「D氏」という。)がR氏に依頼されて(有)阪奈霊園石材の代表取締役に就任した(乙5の3)。
平成18年10月ころ,それまでは申立人と商標権者を一体的に経営してきたR氏は,D氏と従業員らと話合い,申立人と商標権者との経営主体を分離することとし,商標権者の出資持分を,D氏と従業員らに譲って経営を任せることとした。
R氏が商標権者の経営をD氏や従業員らに譲ることとしたのは,R氏の息子が,霊園経営には向かないと考えたこと,また,墓地の経営許可を受けている宗教法人である申立人と,商標権者とを一体的に経営していると,利益配分を恣意的に行えることから,税金逃れをしていると税務調査において問題視されることがあるためであった。
平成18年10月,D氏は,100万円を出資して300万円・出資口数60口のうち20口を有する筆頭出資者となり(乙6),その他,R氏が依頼した関係者や,商標権者の従業員らが出資者となった。
平成19年10月31日,商標権者は決議を行い,株式会社に移行し,現商号である「阪奈霊園株式会社」に商号変更した(乙5の4)。
(ス)この平成19年の商号変更により,商標権者は,商号に「阪奈霊園」の文字を含むことになり,この時点から会社の種類をあらわす一般名称である「株式会社」以外は,「阪奈霊園」という商号になったのであり,商標権者が,永代使用権(墓地)の販売と墓石販売,建墓の業務,墓地の管理業務に「阪奈霊園」という標章を使用していることが一層明確になった。
(セ)平成22年7月7日,R氏は,申立人の名称を「経王寺」から「隆昌寺」と変更した。
ここで,本件旧契約及び本件各旧業務委託契約を,商標権者との間で改めて締結しなおした(乙7?乙9,以下「本件契約」及び「本件各業務委託契約」という。)。
その時,R氏は,商標権者の代表者及び従業員に対して,今後,「阪奈霊園」の名称は,主に商標権者が使用することとし,申立人は「生駒山 隆昌寺」もしくは「隆昌寺」の名称を主に使用し,「隆昌寺」の名前を広めていきたいと宣言し,商標権者の代表者及び従業員もそれを承諾した。
(ソ)このため,R氏は,それまで本件霊園の墓地使用許可証に,「宗教法人 経王寺 阪奈霊園」と「阪奈霊園」の文字が大きく書かれた標章を使用していたことを改めて削除し,「宗教法人 隆昌寺」の文字が大きく書かれた標章となった許可証に変更した(甲17,甲18)。これは,申立人自身が,以後は,宗教法人隆昌寺の名称で墓地等の経営を行い,「阪奈霊園」の標章は,永代使用権の販売,墓石の販売,建墓,墓地の管理の業務を行っている商標権者に使用させるという強い決意を表している。
(タ)平成25年9月3日,申立人の前代表役員のR氏が急逝した。
申立人は,代表役員をR氏の子である岩本道行に交代したが,隆昌寺の運営の実権は,故R氏の妻の岩本昇宝(以下「H氏」という。)が握ることとなった。
(チ)平成25年9月?10月にかけて3回程,H氏は,人を介してD氏に代表取締役を辞任するように要求,それをD氏が断ったところ,平成26年7月6日付「略式通達」と題する通知書で,隆昌寺役員H氏として,D氏に対し,商標権者の代表取締役を隆昌寺の意向に沿って平成26年末までに交替するように要求した(乙10)。
(ツ)これに対して,D氏は,平成26年7月14日付通知書で,商標権者は,本件契約にしたがって債務を履行しており業務に問題は生じさせていないこと,D氏は,商標権者の株式のうち議決権の過半数の31株を所有しているため,代表取締役を辞める理由はないと回答した(乙11)。
(テ)次に,申立人は,平成26年9月19日付「更新拒絶通知書」において申立人と商標権者間の信頼関係が破壊されていることから,本件契約及び本件業務委託契約について,平成27年7月7日をもって更新を拒絶する旨を商標権者に通知してきた(甲10)。
(ト)本件契約は,被告における永代使用権の販売および墓石の販売,建墓を,商標権者に対して独占的に認めた契約である。
すなわち,本件契約は,申立人が商標権者に永代使用権の独占的な販売代理権を与え,永代使用権の販売に伴う指定石材業者を,独占的・専属的に原告に指定する契約である。
言い換えれば,商標権者がその事業として行っている永代使用権の販売及び墓石販売・建墓のために必要不可欠である本件霊園の永代使用権を,継続的に申立人が商標権者に供給する契約であり,特定商品(本件では「商品」というには相応しくないが)の一手(独占)販売供給契約の性質を有する継続的な契約である。
(ナ)本件業務委託契約は,本件契約に基づく永代使用権の販売,墓石の販売,建墓の独占的権利に伴い,参詣者に対する供花,線香,ろうそく等の販売業務を申立人から商標権者が一手に引き受ける(受託を受ける)契約である。
いわば特定商品の継続的な一手販売供給契約に伴う業務の委託であり,本件契約と関連性を有する契約である。
(ニ)このような特定商品の継続的な一手販売供給契約にして,供給を受ける者において相当の金銭的出捐等をしたときには,期間の定めのないものといえども,供給をなす者において相当の予告期間を設けるか,または相当の損失補償をしない限り,供給を受ける者に著しい不信行為,販売成績の不良等の取引関係の継続を期待しがたい重大な事由が存するのでなければ,供給をなす者は一方的に解約をすることができないと解されている(名古屋高等裁判所昭和46年3月29日判決)。
他に,「本件契約が専属的な販売会社に対する継続的商品供給契約に当たることは明らかであり,契約書上契約期間は1年との定めがあるが,申し出がない以上当然に更新するとされていて,事実上長期間続くことが予定されていたものと解され,現実に10年以上も継続されていたことが認められる。このような契約にあっては,契約書上解約権の留保がなされていたとしても,その契約を一方的に解除するには,信義則上,取引関係を継続し難いような不信行為等やむを得ない事由の存することが必要であると解するのが相当である。」とする判例等がある(平成9年3月28日大阪高裁判決。判例時報1612-62)。
このように,継続的契約の更新拒絶については,民法628条,同法663条2項,同法678条2項等の趣旨に照らして,信頼関係の破壊等のやむを得ない事由がない限り,解約したり更新拒絶したりすることはできないものである。
(ヌ)しかるところ,商標権者は,上記申立人の平成26年9月19日付更新拒絶通知書において申立人と商標権者間の信頼関係が破壊されていることから,本件契約及び本件各業務委託契約について平成27年7月7日をもって更新を拒絶する通知に対して,大阪地方裁判所民事保全部に平成26年12月16日に,更新を拒絶する正当な理由はないとして,地位保全の仮処分を申立て,平成27年3月4日に,大阪地方裁判所で本件契約及び本件各業務委託契約は,平成27年7月7日以降も,本訴(商標権者の地位確認の本案請求訴訟)が確定するまでの間は存続することを確認する内容の和解が成立し(すなわち商標権者の言い分をほぼ認めたかたちの和解である),商標権者は,暫定的ではあるが,なお独占的に本件契約及び本件各業務委託契約の契約上の地位を有することが確認されている(乙12,和解調書)。
(ネ)なお,本案訴訟は平成27年3月31日に大阪地方裁判所に提訴し,大阪地方裁判所平成27年(ワ)第3114号地位確認等請求事件として大阪地方裁判所第25民事部に係属中である。
(4)商標権者の「阪奈霊園」の標章使用の状況
ア 申立人は,永代使用権の販売業務で使用している取引関係書類の一つである「永代使用申込書」に「宗教法人 隆昌寺 阪奈霊園」と表示されていることをもって,あたかも申立人が「阪奈霊園」の標章を使用しているかのように証拠提出しているが,同永代使用申込書は,商標権者が作成し,商標権者が永代使用権の販売業務に使用している永代使用申込書であって,記載された住所,電話番号は全て商標権者の住所,電話番号であり(甲19),担当者名に記載さされている「D氏」の署名は(甲19中の1枚目,6枚目及び9枚目),商標権者の代表取締役のD氏の署名であり,同様に担当者欄の「田中」の署名は商標権者の従業員である営業担当者の署名である。
つまり,この「永代使用申込書」(甲19)は,商標権者自身が「阪奈霊園」の標章を,永代使用権の販売代理・仲介業務に長年使用してきていることの証拠である。その上段に「宗教法人 隆昌寺」の名称を記載しているのは,隆昌寺の名称もできるだけ広めたいという目的と,墓地の経営許可については,宗教法人隆昌寺が受けていることを示す目的で付しているものにすぎない。
イ 商標権者は申立人から本件業務委託契約に基づいてバスの運行業務の委託を受けているが,運行しているバスそのものは商標権者の所有している車両であり(乙14,固定資産台帳),商標権者は,所有している車両に「阪奈霊園」の標章を大きく表示し,その横に「墓地・墓石好評販売中」と大きく表示して墓地の永代使用権の販売代理,墓石の販売のための宣伝広告に使用している(乙13)。バスに表示されているフリーダイヤルは商標権者の電話である。
ウ 商標権者は,遅くとも平成19年10月の現商号に商号変更をしたころから引き続いて毎年,「阪奈霊園」の標章を大見出しで最も目立つ位置に表示して,「石の仕入から施工・建立・アフターフォロー迄全て自社で行っています」と本件霊園内での墓石・石碑の販売の宣伝広告を中心的目的とし,裏面に「永代使用権」の販売代理(仲介業務)についても宣伝した,新聞折込みチラシを発行し商標権者の費用で継続的に,墓石の販売業務及び永代使用権の仲介業務について「阪奈霊園」の標章を使用して宣伝広告を行ってきた(乙15)。その間,新聞折込チラシ広告のデザインは一貫して変更していない。宣伝広告費用の一覧は乙第16号証に示すとおりであり,ここ5年を例にとると,チラシ折込料が5年間で4168万7161円(乙17?乙21,年平均833万7432円),チラシ制作費が5年間で2073万1326円(乙22?乙26,年平均414万6265円)の宣伝広告費をかけている。
エ また,大阪府東大阪市布市町の外環状線(国道170号線),及び奈良県生駒市上町の市街地に看板を設置して「阪奈霊園」の標章を使用して墓石の販売業務及び永代使用権の仲介業務の宣伝を継続的に行ってきており,その費用は5年間で619万6023円(年平均123万9204円)をかけている(乙27?乙32)。
このように,商標権者は,長年,商標権者自身が使用し,多大な宣伝広告費をかけて大阪府,奈良県の地域で周知性を獲得してした「阪奈霊園」の標章を商標登録したものであり,極めて正当な権利行使を行ったにすぎず,取消される理由が全く存在しないことは明らかである。
(5)本件商標の指定役務
本件商標の指定役務は,指定内容を要約すると,第35類においては「墓石等の小売等役務」等,第37類において「霊園・墓地の造成工事」等,第40類において「墓石の加工」等,第45類において「墓地等に関する情報の提供,管理又はその契約の媒介」といった内容となる。
すなわち,本件商標の指定役務として,「墓地または納骨堂の提供」,「葬儀・法事のための施設の提供」,「葬儀の執行」や「永代供養の執行」といった役務は指定しておらず,「墓地の経営」と密接に関連する役務は一切指定していない。
「墓地の経営」とは,一般的に「寺院,社団墓地,納骨堂を設置し,管理し,運営すること。」等を意味するが,これは地方公共団体や宗教法人等極めて公共的な団体以外のものが行うことができないことは,そのとおりである。この趣旨を商標法上に規定された商品及び役務の分類上の表現に置き換えると,「墓地または納骨堂の提供」,「葬儀・法事のための施設の提供」,「葬儀の執行」や「永代供養の執行」等のみが,役務として適切に該当するものと思われる。
というのも,「墓地の経営」の主要主体である宗教法人は,宗教法人法第6条第1項「宗教法人は,公益事業を行うことができる。」及び同条第2項「宗教法人は,その目的に反しない限り,公益事業以外の事業を行うことができる。
この場合において,収益を生じたときは,これを当該宗教法人,当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。」の規定趣旨に従い,「宗教の教義をひろめ,儀式行事を行い,及び信者を教化育成すること」という主たる法目的の範囲内で,営利を目的としない非営利団体として事業を行う能力が制限されているため,これらの趣旨や目的に沿わない営利目的の事業即ち役務を業として行うことはできないからである。
よって,「墓地経営」の主体である宗教法人は,営利を目的とした「墓石等の小売等役務」,「霊園・墓地の造成工事」,「墓石の加工」,「墓地等に関する情報の提供,管理又はその契約の媒介」等の役務を他人のために業として行うことはそもそも許されておらず,そのような役務が「墓地経営」と密接不可分であるとは到底いい難く,したがって,「墓石等の小売等役務」,「霊園・墓地の造成工事」,「墓石の加工」,「墓地等に関する情報の提供,管理又はその契約の媒介」等は「墓地の経営」とは分離可能であることは明らかであると思われる。
このことは,石材店指定制度がある寺院や霊園が数多く存在し,寺院そのものが墓石を販売し,墓地造成等を行う事例は皆無に等しいことからも明らかである。
つまりは,営利目的で事業を行うことができない宗教法人は,営利事業を行う民間企業とは明白に分離されているからこそ,自ら行うことが出来ない「墓石等の小売等役務」,「霊園・墓地の造成工事」,「墓石の加工」や「墓地等に関する情報の提供,管理又はその契約の媒介」等の業務を別の法人である民間企業に委託し,自らは本業である「墓地または納骨堂の提供」,「葬儀・法事のための施設の提供」,「葬儀の執行」や「永代供養の執行」等を行うのであり,役務の提供を行う主体の性質がまったく異なるこれらの役務は分離可能であり,密接不可分ではないものと思われる。
このことは,経王寺の時代から,本件霊園に係る営利事業は,隆昌寺以外の民間企業が継続的に担ってきたこと,R氏が商標権者の代表者及び従業員に対して,今後,「阪奈霊園」の名称は,主に商標権者が使用することとし,申立人は「生駒山 隆昌寺」もしくは「隆昌寺」の名称を主に使用し,「隆昌寺」の名前を広めていきたいと宣言し,商標権者の代表者及び従業員もそれを承諾して,それ以降も業務に支障なく完全に棲み分けられていたという事実からも明白である。
以上より,商標権者は,自ら業として使用した結果,一定の周知性を獲得した商標について,自己の業務に係る役務について商標登録を行ったのであり,それらの役務は「墓地の経営」とは直接的に関連がないものであり,墓地の経営等と密接に関連するものといえる役務について,本件商標を剽窃的に先取り出願し,登録を受けたものではない。
(6)結論
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の意義,本件商標の使用の経緯,並びに商標登録の経緯及び指定役務の範囲,いずれの観点においても,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではないものである。

第5 当審の判断
1 申立人について
申立人は,大阪府4条畷市上田原1137番地の2に所在する「隆昌寺阪奈霊園」を所有する宗教法人の「隆昌寺」である(甲3,甲4)。
2 商標権者について
本件商標の商標権者は,平成4年5月に設立された大阪府4条畷市上田原1009番地の1に所在する(有)阪奈霊園石材が,平成19年10月に商号を変更し,「阪奈霊園株式会社」となったものである(甲6,甲7)。
3 「阪奈霊園」について
申立人及び商標権者の双方から提出された証拠及びその主張によれば,「阪奈霊園」は,当初,「地蔵寺」が大阪府の許可を得て,平成元年頃から「地蔵寺 阪奈霊園」の名称で永代使用権(墓地の権利)の販売が開始されたものであり,その後,同霊園は,平成7年4月に「経王寺」に所有権が移転され,「経王寺 阪奈霊園」の名称となった。そして,平成11年3月に「経王寺」の代表役員はR氏となり,同寺の名称は,平成22年6月に「隆昌寺」に名称変更がされて,同霊園は,「隆昌寺 阪奈霊園」の名称となったものである(乙3,乙4の3)。
「阪奈霊園」の永代使用権(墓地の権利)の販売等に関しては,平成4年2月に「株式会社谷企画」が設立され,平成4年10月に「株式会社大阪ロック」と商号を変更し,次で平成5年3月には,「阪奈石材株式会社」と商号を変更し,永代使用権の販売代理,墓石販売,建墓が行われてきたものである。
そして,平成10年6月に,アスコット・イン・ジャパン株式会社が「阪奈霊園石材株式会社」に商号を変更し(乙2の1),阪奈石材の事業の全部を事実上承継した。阪奈石材は,平成11年4月に解散した(乙1の3)。
その後,R氏の関係する(有)阪奈霊園石材が,阪奈霊園石材(株)の業務,従業員らを包括的に承継し,事業を始めたことから(乙5の1),阪奈霊園石材(株)は,平成12年5月に解散した(乙2の2)。
4 申立人と商標権者の関係について
平成12年3月ころから阪奈霊園石材(株)から事業を承継した(有)阪奈霊園石材は,「経王寺 阪奈霊園」の標章を使用して,永代使用権の販売,墓石の販売等の事業を始めた。
申立人と,永代使用権(墓地)の販売と墓石販売,建墓の業務を行う(有)阪奈霊園石材とは,平成13年12月21日に「本件旧契約」を締結し(乙34),同28日に「本件各旧業務委託契約」を締結した(甲8,甲9)。
平成22年7月7日,R氏は,申立人の名称を「経王寺」から「隆昌寺」と変更し,ここで,本件旧契約及び本件各旧業務委託契約を,商標権者との間で改めて締結しなおした(乙7?乙9)。
平成25年9月3日,申立人の前代表役員のR氏が急逝したため,申立人の代表役員は,岩本道行に交代した。
故R氏の妻のH氏は,平成25年9月?10月にかけて3回程,D氏に代表取締役を辞任するように要求,それをD氏が断ったところ,平成26年7月6日付「略式通達」と題する通知書で,隆昌寺役員H氏として,D氏に対し,商標権者の代表取締役を隆昌寺の意向に沿って平成26年末までに交替するように要求した(乙10)。
次に,申立人は,平成26年9月19日付「更新拒絶通知書」において,本件契約及び本件業務委託契約について,平成27年7月7日をもって更新を拒絶する旨を商標権者に通知した(甲10)。
しかるところ,商標権者は,大阪地方裁判所民事保全部に平成26年12月16日に,更新を拒絶する正当な理由はないとして,地位保全の仮処分を申立てた。
平成27年3月4日に,大阪地方裁判所において,本件契約及び本件各業務委託契約は,平成27年7月7日以降も,本案訴訟(商標権者の地位確認の本案請求訴訟)が確定するまでの間は存続することを確認する,との内容で,商標権者と申立人の和解が成立した。
商標権者は,暫定的ではあるが,本件契約及び本件各業務委託契約の契約上の地位を有することが確認された(乙12,和解調書)。
なお,本案訴訟は,平成27年3月31日に大阪地方裁判所に提訴し,大阪地方裁判所平成27年(ワ)第3114号地位確認等請求事件として大阪地方裁判所第25民事部に係属中である。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号の意義
商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高等裁判所平成15年5月8日判決:平成14年(行ケ)第616号)。
(2)本件商標の登録出願について
これを本件についてみると,本件商標は,「阪奈霊園」の文字よりなるものであるから,商標自体には公序良俗違反のないものと認められる。
そこで,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものであるかどうかについて判断する。
商標権者の前身である商号変更前の(有)阪奈霊園石材は,平成12年3月ころから阪奈霊園石材(株)から事業を承継し,「経王寺 阪奈霊園」の標章を使用して,永代使用権の販売,墓石の販売等の事業を始めた。
そして,申立人と(有)阪奈霊園石材とは,平成13年12月21日に「本件旧契約」(乙34)及び同28日に「本件各旧業務委託契約」(甲8,甲9)を締結し,永代使用権(墓地)の販売と墓石販売,建墓の業務等を一体となって行ってきたものである。
また,平成22年7月7日には,R氏は,申立人の名称を「経王寺」から「隆昌寺」と変更し,ここで,本件旧契約及び本件各旧業務委託契約を,商標権者との間で改めて締結しなおした(乙7?乙9)。
乙第7号証の「契約書」には,その第1条において,「甲及び乙は協力して本件墓地を管理し,これを隆昌寺阪奈霊園として販売,これを運営し,甲の教務活動の永続的発展と経済的基盤の確立を図ることを目的とする。」との記載があり,両者が一体となって,「隆昌寺阪奈霊園」の墓地の販売,管理,運営がなされてきたことが理解できる。
そして,確かに,商標権者は,申立人の存在及び申立人が「隆昌寺 阪奈霊園」の標章を使用して墓地の経営等の業務を行っていることを知悉していたものであり,また,上記4のとおり,当該霊園に係る業務の委託の更新を行わない旨の通知を受けた直後に,本件商標を登録出願し,その登録を受けたものである。
しかしながら,申立人と商標権者とは,少なくとも平成13年12月頃から現在までの長期にわたり,ともに一体となって当該阪奈霊園の墓地の販売,管理,運営がなされてきたものであって,また,本件商標の指定役務は,商標権者の業務に係る役務を指定内容とするものであって,宗教法人たる申立人の活動に係る,例えば,「墓地または納骨堂の提供」,「葬儀・法事のための施設の提供」,「葬儀の執行」や「永代供養の執行」といった役務を指定役務とするものではない。
また,申立人は,「本件登録出願は,上記通知を行ってから,約1月後に行われており,商標権者が契約解除を知って,これを妨害し,または,今後の隆昌寺の霊園の経営業務を妨害するために行われた登録出願であって,明らかに隆昌寺の使用している商標であることを知って,剽窃的に行われた登録出願であり,他人の商標を冒用する商標である」旨を主張しているところ,具体的に,商標権者が申立人の事業の遂行を妨害や阻止しようとしているとか,本件商標の登録出願が剽窃に当たることなどを裏付ける証拠をあげているとまではいうことができない。
しかも,申立人は,使用商標の使用開始にあたって,その商標を自ら登録出願する機会は十分にあったというべきであって,自ら登録出願しなかった責めを商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできない。
そうすると,本件商標について,商標法の先願登録主義を上回るような,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできないし,そのような場合には,あくまでも,当事者間の私的な問題として解決すべきであるから,公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
してみると,商標権者が,同人の商号に含まれ,また,申立人の標章「隆昌寺 阪奈霊園」と類似する本件商標の登録出願をし,登録を受ける行為が「公の秩序や善良な風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
また、申立人は、本件商標が他の法律によって使用を禁止される商標であるとして,「霊園の経営については,『墓地,埋葬等に関する法律』(甲13)及び『4条畷市墓地等の経営の許可に関する条例』(甲14)を挙げ,特定の団体を除き,霊園の経営は禁止されているものであって,『地方公共団体』,『宗教法人』,『公益社団法人』又は『公益財団人』のいずれでもない商標権者が,墓地の経営や,墓地の経営と同視される役務及び墓地の経営と一体不可分的に密接に関係する役務について,商標権者となりこれを使用することは前記法律に抵触するものである。」旨を主張している。
しかしながら,本件商標の指定役務は,例えば,「墓地又は納骨堂の提供に関する情報の提供,墓地又は納骨堂に関する相談,墓地又は納骨堂の管理又はその契約の媒介,墓地の永代供養の媒介,墓地の永代使用の媒介」等であって,本件商標を使用するのは,「霊園や墓地等の経営」自体ではなく,上記の情報提供や相談,管理,契約の媒介といった役務であるから,上記法律及び条例によって制限を受けるようなものではないというべきである。
よって、申立人の上記の主張は、妥当なものでなく採用することができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
(1)「阪奈霊園」の周知,著名性について
申立人提出の甲各号証によれば,「阪奈霊園」の文字に係る引用商標の使用において,隆昌寺による阪奈霊園に関する売上額や利用者数などの営業実績,及び広告宣伝の実績などを示す証左は無く,他に引用商標が,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,需要者の間に広く認識されていると認め得る証拠は見いだせない。
そうすると,引用商標は,申立人の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものということはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
本件商標は,「阪奈霊園」の文字を標準文字で表してなり,引用商標は,「阪奈霊園」の文字からなるものであるから,両者は,同一又は類似の商標といい得るものであるが,上記(1)のとおり,引用商標は,申立人の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想し,又は想起させることはなく,その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
なお,申立人の提出した証拠によっては,本件商標と引用商標とが取引者,需要者において現実に出所の混同を生じている事実を認め得る具体的,客観的証左は見いだせないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第10号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-04-21 
出願番号 商願2014-86378(T2014-86378) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W35374045)
T 1 651・ 271- Y (W35374045)
T 1 651・ 25- Y (W35374045)
最終処分 維持 
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 井出 英一郎
榎本 政実
登録日 2015-03-13 
登録番号 商標登録第5749215号(T5749215) 
権利者 阪奈霊園株式会社
商標の称呼 ハンナレーエン、ハンナ 
代理人 高尾 俊雄 
代理人 北村 光司 
代理人 中尾 真一 
代理人 島田 尚子 
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