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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1314564 |
異議申立番号 | 異議2015-900310 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-10-02 |
確定日 | 2016-05-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5776408号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5776408号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5776408号商標(以下「本件商標」という。)は、「Savans」の文字を標準文字で表してなり、平成27年2月18日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、同年6月11日に登録査定され、同年7月3日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第217号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)申立人が引用する商標 申立人が引用する登録第2724086号商標(以下「引用商標」という。)は、「VANS」の文字を書してなり、平成2年4月3日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同10年5月22日に設定登録され、その後、同20年12月24日に指定商品を第25類「短靴,長靴,編上靴,雨靴,防寒靴,運動靴,作業靴,木綿製靴,メリヤス製靴,サンダル靴,幼児靴,婦人靴,オーバーシューズ,地下足袋,釣り用靴,乗用車靴,極地用防寒靴,地下足袋底,靴中敷き,かかと,半張り底,内底,靴の引き手,靴保護金具,靴びょう,靴くぎ,靴合わせくぎ」とする指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 称呼における類似性 本件商標は、「SAVANS」(合議体注:「Savans」の誤記と認められる。以下同じ。)の文字からなるところ、英語等において特段の意味を有しないものであり、これに接する看者は、「サヴァンズ」と発音し、かかる称呼をもって取引に資されるとみるのが自然である。 他方、引用商標は、「VANS」の文字からなるところ、申立人のハウスマークとして長年にわたり我が国を含む世界中で一貫して使用されてきた結果、申立人の提供する商品の出所表示標識として取引者・需要者に記憶され、「ヴァンズ」の称呼をもって広く知られるに至っている商標であることを考慮すれば、引用商標からは、「ヴァンズ」の称呼が生じる。 そこで、本件商標から生じる称呼「サヴァンズ」と引用商標から生じる称呼「ヴァンズ」とを比較するに、前者は語頭に「サ」の音を有するものの、それ以外の3音はいずれも同じである。そして、「サ」の音は無声歯摩擦音であって語感は強くなく、これに比較して、そのあとに続く「ヴァンズ」の音は、まず「ヴァ」という濁音を伴って特に強調されて発音される上、最後が「ズ」という有声破裂音で終わるものであって、需要者に強い印象を残すから、両称呼を称呼するときは、全体の語調語感が近似し、彼此聞き誤るおそれがある。 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 イ 外観における類似性 本件商標は、「SAVANS」の英文字からなり、引用商標「VANS」と比較すると、3分の2をしめる文字を共通としており、外観上極めて相紛らわしく、取引者・需要者をして近似した印象を与えるものである。 ウ 取引の実情に照らした類否判断 (ア)申立人及び申立人の商標「VANS」について 申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に拠点をもつ、カジュアルシューズその他のアパレル製品を製造販売する企業である。 そして、「VANS」は、英語等の辞書に記載のない造語であり、申立人の業務に係る商品・役務を示すブランドとして、申立人により独自に創造された標章である。これは、申立人の名称の略称を表示するものであって、いわゆるハウスマークを表すものである。 「VANS」は、1966年3月16日にアメリカ合衆国カリフォルニア州でスニーカーを中心に販売するショップとして誕生した(甲3の1)。設立当初、「VANS」ブランドのシューズは、主にスケートボードや自転車モトクロス(BMX)の愛好家の間で大人気となった。今日では、被服・帽子等のアパレル製品も展開し、バッグ・サングラス・携帯電話機用ケースやテント、キーホルダー等に至るまで、幅広い商品が加わっている。日本において現在販売されているシューズ製品の例をウェブサイトのプリントアウトに示す(甲3の2)。 また、1995年以降は、申立人が積極的に次々と各種スポーツ・音楽イベントのスポンサーとなった(甲3の1)ことによって、「VANS」のブランド名と商品は瞬く間に世界中に知られ、著名性を確立した。具体的には、全米40以上の都市で開催される米国最大級の音楽・スポーツフェスト「VANS WARPED TOUR(ヴァンズ・ワープド・ツアー)」や世界のトップサーファーが競い合う大会「Vans Triple Crown of Surfing(ヴァンズ・トリプル・クラウン・オブ・サーフィン)」等、いずれも「VANS」を冠したイベントが催され、「VANS」の人気はアメリカに留まらず、世界中で知られるブランドとなった。 申立人は、本国であるアメリカ合衆国を含む北米のみならず、中南米、ヨーロッパ、ロシア、中東、オセアニア、アジア各国でショップ展開し、「VANS」を付した商品は、世界中で販売されている。 日本においては、株式会社エービーシー・マートが、「VANS」の日本国内での独占販売権を取得して「VANS」ブランドの商品を開発し、全国各地の店舗を通じて販売している(甲3の3)。 2011年から2015年の日本における「VANS」ブランド商品の売上高及び宣伝広告費の年間合計は、売上高、宣伝広告費の順に、2011年が153億2000万円、4億0800万円、2012年が173億2300万円、6億5800万円、2013年が188億0600万円、5億5800万円、2014年が245億2700万円、5億円、2015年(11月まで)が201億9500万円、3億2000万円である。 (イ)申立人の商標「VANS」の周知・著名性について 上記のとおり、「VANS」の商品は、履物、特にスニーカーを中心としている(甲3の2)。その商品の特徴上、申立人の商標「VANS」は、男女を問わず、これらの多種多様な商品の取引者・需要者に幅広く知られている。また「VANS」は、ブランド誕生当初こそスケートボードや自転車モトクロス(BMX)の愛好家の間で人気を得たが、その後の幅広い商品展開や各種イベントにおけるスポンサー活動を通じて、申立人の商標は、これらの愛好家のみならず、広く一般の消費者にも知られるに至っている。 日本においては、前記した株式会社エービーシー・マートが、同社の公表によれば、北は北海道から南は沖縄まで日本全国に815店舗(2015年8月末時点)を展開する靴・衣料・雑貨等小売チェーンであるところ、申立人の商標「VANS」を付した商品は、これらの店舗を通じて全国各地の一般消費者に販売され、「VANS」ブランドは広く知られているということができる。 申立人の商標「VANS」とその商標を付した商品は、現在に至るまで多くの雑誌において繰り返し紹介されてきているところ、これらは広く10代から40代までの男性又は女性をターゲットにした記事である(甲4?甲184。2012年3月?2016年1月に発行されたものの抜粋。)。 いずれの記事をみても明らかなように、申立人の商品は、一貫して「VANS」の文字をもって紹介されている。 このことから、本件商標の出願日において既に、申立人の商標「VANS」が、日本において履物を中心とするファッション関連の商品に実際に使用されていたこと、及びファッションに関心を寄せる幅広い年齢層の男性・女性の間に広く認識されていたことは、客観的に明白である。 以上の事実から、申立人の商標「VANS」が、本件商標の出願日より以前から、履物を中心とするファッション関連の商品分野において周知・著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。 (ウ)本件商標が実際に使用されている商品の性質について 本件商標が実際に使用されている商品は、デッキシューズ、スリッポンなどがあり、これらの商品は、細部にわたって申立人が販売する商品を模倣していることは明らかである(甲185?甲190)。 (エ)このように、引用商標の周知・著名性、及び、本件商標が実際に使用されている商品が申立人の商品に酷似しているという性質に鑑みれば、本件商標の上記称呼及び綴りに接する取引者・需要者が、引用商標を容易に連想・想起することが明らかである。 エ 商品の類似性 本件商標に係る指定商品「履物」と、引用商標に係る指定商品とが類似するものであることは、類似商品・役務審査基準に照らして明らかである。 オ 小括 以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、称呼及び外観において相紛らわしい類似する商標であり、また、その指定商品も同一又は類似するものである。 したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するものであることは明らかである。 (3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について ア 申立人の商標「VANS」の周知・著名性について 上記のとおり、申立人の商標「VANS」が日本を含めた世界中において周知・著名であることは明らかである。 イ 本件商標と申立人の商標「VANS」の類似性について 両商標は、上記のように、称呼及び外観において相紛らわしい類似する商標である。 ウ 混同を生じるおそれについて (ア)申立人の商標「VANS」は、英語等の辞書に記載のない造語であり、申立人による独自の創造標章であるから、既成語からなる商標と比較して、自他商品識別力が強いものといえる。とりわけ、「VANS」は、申立人の名称の略称を表示するハウスマークであって、履物を中心とするファッション関連商品の業界で、現に申立人の業務に係る多種多様な商品について長年にわたり一貫して使用されてきたものであるから、これらの商品との関係で、「VANS」は、申立人を指標するものとして、強い出所表示力を発揮するものである。 (イ)商品の共通性 申立人の商標「VANS」を付して販売される商品は、履物を中心としたファッション用商品である(甲3の2)。 他方、本件商標に係る指定商品は、「履物」である。これらの商品と、申立人の商品が同一又は類似であることは明らかである。 (ウ)出所混同のおそれ 申立人の商標「VANS」の著名性は上記したとおりであるところ、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品が同一又は類似していることから、本件商標の指定商品の取引者・需要者が、申立人の商標及び申立人がその商標を付して提供している商品を知っている可能性は極めて高い。 しかして、本件商標は、上述のとおり、取引者・需要者が、世界的に著名な申立人の商標を容易に想起・連想し得る類似の商標である。 そうすると、本件商標がその指定商品に使用された場合、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標から、これと類似する著名な商標である「VANS」を容易に想起・認識し、当該商品が、あたかも申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同して認識するおそれは高い。 (エ)申立人の商標に化体した信用を害されるおそれ 申立人は自己のブランドイメージを維持し、より一層の発展をさせるため、世界中で展開するあらゆる事業において、その商品の品質、役務の質、店舗の営業等について厳重な管理を行っている。現に申立人は、日本でも「VANS」からなる商標について、引用商標の他にも多数の商標登録を保有し管理している(甲191?甲217)。すなわち、商標「VANS」は、申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、日本はもとより世界中で一般の取引者・需要者の間に広く認識されている著名商標であり、申立人の提供する商品・役務に係る絶大な信用が化体した重要な財産である。 したがって、本件商標の登録が維持されると、申立人と何ら関係のない者により、申立人の意図とは無関係に、申立人の商品と同一又は類似の商品について、申立人の使用商標と類似する商標、すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として、申立人による品質のコントロールの及ばない商品が申立人の使用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できない。 このような事態が生じた場合、申立人が長年にわたり多大な努力を費やして培ってきた「VANS」のブランドイメージは著しく毀損され、申立人が多大な損害を被ることは明白である。 したがって、かかる見地からも本件商標の登録は維持されるべきではない。 エ 小括 上記のとおり、本件商標の登録査定時はもとより出願時において、本件商標がその指定商品について使用された場合には、当該商品は、取引者・需要者において、申立人の業務に係る商品であるかのごとく認識され、あるいは申立人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤認され、その出所について混同を生じるおそれがあったことは明らかである。 したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第10号及び同第15号にも該当するものであることは明白である。 (4)結 語 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に違反してなされたものである。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標は、前記1のとおり、「Savans」の文字からなり、その構成文字は標準文字で同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体に表されていることから、外観上、文字や図形等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標というべきものでなく、加えて、その構成中、語頭の「S」が大文字、続く文字が全て小文字で表されていることから、全体として一つの語を表したものと認識されるものといえ、構成文字の一部を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとみるのが自然である。 また、「Savans」の文字から生じる「サヴァンズ」又は「サヴァンス」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「サヴァンズ」又は「サヴァンス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものといわなければならない。 イ 他方、引用商標は、前記2(1)のとおり、「VANS」の文字からなるものであるから、該文字に相応し、「ヴァンズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ そこで、本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者は、外観において、大文字と小文字の差異を有するほか、語頭における「Sa」の2文字の有無という差異を有し、この語頭の2文字の差異が6文字と4文字という比較的短い文字構成からなる両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。 次に、本件商標から生じる「サヴァンズ」と引用商標から生じる「ヴァンズ」の称呼を比較すると、両者は、称呼の識別上重要な要素である語頭において「サ」の音の有無という差異を有し、該差異が4音と3音という短い音構成である称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものというのが相当である。 また、「サヴァンス」と「ヴァンズ」の称呼の比較においては、上記の差異に加え、語尾における「ス」と「ズ」の差異を有するから、より相紛れるおそれがないものといえる。 さらに、観念においては、両商標は、共に特定の観念を生じないものであるから、相紛れるおそれのないものである。 そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 (2)商標法第4条第1項第10号該当性について 申立人は、本件商標が申立人の商標「VANS」と類似する商標であると主張するが、該申立人の商標が引用商標と同一の構成であることからすれば、上記(1)において本件商標と引用商標とが非類似の商標であると認定したと同様に、本件商標と申立人の商標とは非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号所定の他の要件について検討するまでもなく、同号に該当するものではない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 申立人は、甲第3号証ないし甲第217号証(枝番号を含む。)を提出して、本件商標が、周知著名である申立人の商標「VANS」と類似の商標であることを前提に、商標法第4条第1項第15号に該当すると主張するが、本件商標と申立人の商標「VANS」とが類似しないこと、上記(2)のとおりである。 そうすると、たとえ、申立人の商標が商品「履物」に使用する商標として周知著名になっているとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者・需要者が引用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれはないものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-04-21 |
出願番号 | 商願2015-14568(T2015-14568) |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W25)
T 1 651・ 263- Y (W25) T 1 651・ 261- Y (W25) T 1 651・ 271- Y (W25) T 1 651・ 262- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小松 里美 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 中束 としえ |
登録日 | 2015-07-03 |
登録番号 | 商標登録第5776408号(T5776408) |
権利者 | 株式会社おく田 |
商標の称呼 | サバン、サバンス、サバンズ |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 達野 大輔 |