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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W05
管理番号 1314559 
異議申立番号 異議2015-900198 
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-06-19 
確定日 2016-04-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5750355号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5750355号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5750355号商標(以下「本件商標」という。)は、「Injectable」の欧文字と「インジェクタブル」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成26年11月7日に登録出願、第5類「歯科用材料」を指定商品として、同27年2月16日登録査定、同年3月20日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出している。
本件商標は、「注入可能な」の意味を有する、「Injectable」の文字及び「インジェクタブル」の文字を上下二段に普通に用いられる方法で書してなるにすぎないから、これをその指定商品中「注入可能な歯科用材料」に使用したときは、単に商品の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としては機能し得ない。
また、上記商品以外の商品に使用したときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

第3 当審における取消理由
当審において、商標権者に対して、平成27年11月26日付け取消理由通知書で通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
1 「injectable」及び「インジェクタブル」の文字について
(1)申立人の提出に係る証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 「小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版」(2000年1月10日、株式会社小学館発行)の「injectable」の項目には、「〈医薬品が〉注入可能な、注入可能医薬品」の記載がある(甲3)。
イ 「ステッドマン医学大辞典 改訂第6版」(2008年2月20日、株式会社メジカルビュー社発行)の「injectable」の項目には、「注入できる、注入可能の、注入を受けられる」の記載がある(甲4)。
ウ 「ドーランド 図説医学大辞典 第28版」(平成10年1月10日、株式会社廣川書店発行)の「injectable」の項目には、「注射可能な、注射可能物質」の記載がある(甲5)。
エ 「バイオ&メディカル大辞典」(1990年4月15日、株式会社アイピーシー発行)の「injectable」の項目には、「注射可能の」の記載がある(甲6)。
オ 「医学英和大辞典」(1984年1月20日、株式会社南山堂発行)の「injectable」の項目には、「注射し得られる」の記載がある(甲7)。
カ 「歯界展望」(2013年12月15日、医歯薬出版株式会社発行)の表紙には、「もっと使いこなそう! フロアブルレジン/富士谷盛興・千田 彰・宮崎真至」との記載があり、「特集 もっと使いこなそう! フロアブルレジン」の記事において(1060頁)、「図4」の解説として、「フロアブルレジン(従来)、インジェクタブルレジン(高強度フロアブルレジン)、ペーストレジンの物性比較/各社フロアブルレジン、インジェクタブルレジン、およびペーストレジンの代表的な物性、すなわち曲げ強さ(ジーシー、クラレノリタケ)、摩耗量(松風、トクヤマデンタル)、および破壊靭性(3M ESPE)を示す。いずれのインジェクタブルレジンもペーストレジンと同等かそれ以上の物性を有する。」との記載があり、その下の本文には、「このような状況下で、従来のフロアブルレジンと区別する意味で、直接修復にも使用可能な高強度フロアブルレジンの命名が必要となり、筆者らは『インジェクタブルレジン(直接注入可能なレジン)』と名付け、その名称を世に問うこととした。」との記載がある。
また、「2.修復用レンジは2タイプの時代に」の項目(1060頁)には、「前述のように、インジェクタブルレジンとは、数あるフロアブルレジンのなかでペーストレジンとほぼ同等か優る機械的諸性質を有し、直接修復に使用可能なもののことであり、フローの程度とは全く関係がないことに注意していただきたい。したがって、今や修復用レジンは2タイプの時代に突入しており、その粘稠性により、充填器で窩洞に填塞するペーストタイプのレジンとシリンジから直接窩洞に注入、填塞するインジェクタブルタイプのレジンに分類される。」の記載がある。
さらに、「窩洞別インジェクタブルレジンの使い分け」の表題のもと(1061頁)、「インジェクタブルレジンは、シリンジから窩洞内に直接注入できること、また金属製ノズルが簡易な充填器の代わりになることが最大の特長であり、ペーストレジンと全く異なるところである。」との記載がある(甲8)。
キ 「QUINT DENTAL AD CHRONICLE 2012」(2012年3月10日、クインテッセンス出版株式会社発行)の「特集:株式会社松風創立90周年企画『機能性材料 GIOMERのすべて』」(93頁)には、「さらに最近、前述したように流れのないノンフロー、あるいはゼロフロータイプのフロアブルレジンも開発され、いよいよ本格的にフロアブルレジンをダイレクトボンディングに使用する頻度が増えてきた。そのため、この新しいカテゴリーに分類され、直接修復にも使用可能な高強度フロアブルレジンの命名が必要となり、筆者らは『インジェクタブルレジン(Injectable Hybrid Restorative)』と名付けた。参考までに、現在、インジェクタブルレジンとして市場に出回っている代表的なものをフロー別に列挙しておく。ハイフロータイプ:エステライトフロークイックハイフロー(トクヤマデンタル)、ハイ?ミディアムフロータイプ:MIフロー(ジーシー)、ローフロータイプ:シュープリームウルトラフロー(3M ESPE)、ビューティフィルフロープラスFO3(松風)、MIローブロー(ジーシー)、ノン(ゼロ)フロータイプ:エステライトフロークイック(トクヤマデンタル)、ビューティフィルフロープラスFOO(松風)、Mlフィル(ジーシー)。」との記載があり、同頁「2.今や修復用コンポジットレジンは2タイプの時代に!」の項目には、「【インジェクタブルレジンによるレジンコーンテクニツク修復の幕開け】インジェクタブルレジンは、ペーストレジンと異なり、シリンジから窩洞内に直接注入可能であることが最大の特徴である。」との記載がある(甲9)。
ク 「接着歯学 Vol.32 No.3/第33回 日本接着歯学会学術大会講演集」(2014年11月15日、日本接着歯学会発行)における「臼歯1級および2級直接修復におけるインジェクタブルレジンの3年予後評価」には、「【目的】・・・フロアブルレジンの操作性を有しつつ、ペーストタイプレジンと同等の機械的諸性能を有するインジェクタブルレジンが市販されている。しかしながら、その臨床予後は不明である。そこで、本研究では、臼歯1級および2級修復におけるインジェクタブルレジンの3年予後について評価した。・・・【結論】インジェクタブルレジンは、ペーストレジンと同等の耐久性を持ち、審美的修復材料として臼歯部1級および2級修復における臨床的有効性が高いことが示唆された。」との記載がある(甲10)。
ケ 「日本歯科保存学雑誌 Vol.57(2014)No.3」(特定非営利活動法人日本歯科保存学会発行)の「コンポジットレジンペーストの保管温度条件がその機械的性質に及ぼす影響」(公開日:2014年6月30日)には、「材料と方法:供試したレジンペーストは、ユニバーサルタイプの・・・4製品、インジェクタブルタイプの・・・合計5製品とした。」との記載がある(甲11)。
コ 兵庫県保険医協会のホームページの「歯科部会だより」(2011年12月2日)には、「自分にぴったりの修復材料選んで」の表題のもと、「・・・新しいジャンルの修復用コンポジット、インジェクタブルレジンを使いこなす・・・最新のインジェクタブルレジンは、ペーストタイプより物性の優れた物もありますので、どんどん使用してください。」などの記載がある(甲12)。
サ 「特定非営利活動法人 日本歯科保存学会/2014年度秋季学術大会(第141回)/第16回 日韓歯科保存学会学術大会/プログラムおよび抄録集」(2014年10月30日、同31日)における「フロアブルレジンの耐摩耗性に関する研究」には、「光重合型レジンの中でも、ペーストの流動性に特徴を持たせたフロアブルレジンは、フィラー含有量、形状、粒径あるいはその表面処理技術などの改良によって機械的強度が向上している。そのため、最近では直接臼歯部咬合面窩洞へも応用可能な製品が市販されている。これらの製品は、高強度フロアブルレジンあるいはインジェクタブルタイプに分類されている。」などの記載がある(甲13)。
(2)なお、職権による調査によれば、「レジン(resin)」が歯科用材料として普通に使用されていることは、例えば、「現代商品大辞典 新商品版」(昭和61年10月18日、東洋経済新報社発行)の「歯科材料(dental materials)」の項(181頁)に、「歯科材料はその使用部位に応じてさまざまな材料が用いられる。とくに新しい材料の開発は歯料治療の方法をも変えてしまうので多くの歯科関係者が注目している。・・・【コンポジットレジン(composite resin)】う蝕した歯はこれを切削削除し窩洞部には成形修復材と称する充填材を添入する。・・・従来アマルガム(amalgam)やシリケートセメント(silicate cement)と称するものがこのような成形修復材料として広く用いられていた。・・・しかし高分子科学の進歩により、シリケートセメント以後画期的なアクリルレジンを生み、その性能の向上を目指し最近ではコンポジットレジンの実用化となっている。」などの記載からも明らかである。
(3)上記(1)で認定した事実によれば、「injectable」の文字は、「〈医薬品が〉注入可能な、注入可能な医薬品」などを意味する英単語であり、「インジェクタブル」の文字は、その片仮名表記と認められる。そして、歯科用材料の業界においては、硬組織を侵された臼歯などの歯を修復するための材料であるレジンについて、その粘稠性により、充填器で窩洞に填塞するペーストタイプのレジンとシリンジから直接窩洞に注入、填塞するインジェクタブルタイプのレジンに分類されることが認められ、シリンジで修復すべき臼歯などの窩洞に直接注入することができるレジンを「インジェクタブルレジン」又は「インジェクタブルタイプ」と称し、本件商標の登録査定日(平成27年2月16日)の時点において既に、業界において普通に取引されていた事実を認めることができる。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第76号、平成12年9月4日判決言渡)。
(2)本件商標は、「Injectable」の欧文字と「インジェクタブル」の片仮名を二段に横書きしてなるものであり、これは、普通に用いられる方法で表示するものといえ、また、その指定商品を「歯科用材料」とするものである。
そして、上記1で認定した歯科用材料の業界における取引の実情によれば、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、その取引者や主たる需要者である歯科医は、虫歯等の疾患部の修復などの治療において、修復等をするための材料を当該疾患部に直接注入することができる商品であることを表示したものと理解し、認識するにすぎないといわなければならない。
したがって、本件商標は、その指定商品の品質、使用の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものといわなければならない。

第4 商標権者の意見
商標権者は、上記第3の取消理由の通知に対し、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
本件商標は、上記第1のとおりのものである。
そして、本件商標について通知した上記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2016-03-09 
出願番号 商願2014-93651(T2014-93651) 
審決分類 T 1 651・ 13- Z (W05)
最終処分 取消  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 原田 信彦
大森 健司
登録日 2015-03-20 
登録番号 商標登録第5750355号(T5750355) 
権利者 株式会社松風
商標の称呼 インジェクタブル 
代理人 安藤 順一 

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