ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W12 |
---|---|
管理番号 | 1314557 |
異議申立番号 | 異議2014-900129 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2014-05-01 |
確定日 | 2016-04-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5646164号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5646164号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5646164号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成25年7月9日に登録出願され、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、平成25年12月27日登録査定、平成26年1月31日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立て理由として引用する国際登録第772567号商標(以下「引用商標」という。)は、「MASERATI」の欧文字を横書きしてなり、第12類「Automobiles and their parts and fittings; two-wheeled motor vehicles, bicycles and their parts and fittings, tricycles; baby carriages, rickshaws, sleighs and sleds, wheelbarrows, carts, horse drawn carriages, bicycle trailers; aircraft and their parts and fittings; rolling stock for railways and their parts and fittings; ships and their parts and fittings.」を指定商品として、2003年(平成15年)6月4日に国際商標登録出願(事後指定)され、我が国において平成16年9月24日に設定登録されたものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、引用商標を引用し、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第16号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第134号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、その構成中「O.S.C.A」部分が特殊な書体及び他の文字より大きく表されていることから、この部分から「オオエスシイエイ」又は「オスカ」の称呼を生ずる。また、3語からなる「FRATELLI MASERATI BOLOGNA」の文字からも称呼を生じるものであるが、これより生ずる称呼は全体として冗長であるため、横位置に配されて、最も読みやすい「MASERATI」の語から生じる「マセラティ」と略される可能性が高い。他方、引用商標は、その構成文字から「マセラティ」のみを生じる。 したがって、本件商標と引用商標とは、「マセラティ」の称呼が同一であり、本願商標の指定商品は引用商標の指定商品の一部と同一であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 申立人は、その社名の略称である「MASERATI」を商標として、特に自動車について永年に亘り使用した結果、この商標は日本のみならず、世界中で広く知られるに至っている(甲3?134)。 そして、本件商標は、その構成中に「MASERATI」の語が横書きして配置され、ほかの語よりも格別に目立つ配置がなされている。 そうすると、本願商標に接する需要者、取引者は自然に「MASERATI」の文字部分にも注目することとなり、周知商標の「MASERATI」を想起するものであり、その結果、本件商標を付した自動車等がマセラティ社と何らかの関係があるものと誤認することになる。 したがって、本件商標は、申立人の製造販売に係る自動車等と誤認混同を生ずるおそれがあるため、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、円図形内にイタリアの都市「ボローニャ」の意味を有する「BOLOGNA」の語を有するから、本件商標が、その指定商品に使用された場合、需要者は、その商品がイタリアのボローニャにおいて製造されたものと理解するのが相当であり、ボローニャ以外で製造された自動車自動車等について本件商標が使用された場合、商品の品質について誤認を生じるといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 4 取消理由通知 当審において、平成27年11月30日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。 (1)引用商標の周知性について 申立人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 ア マセラティ社は、1914年創業、1926年にイタリアのボローニャにおいて自動車メーカーとして、マセラティ(MASERATI)兄弟により創設されたものであり(甲54、60)、その後、社名「Officine Alfieri Maserati」をオルシ家に譲らなければならなくなり、1947年に、マセラティ(MASERATI)兄弟は、「OSCA」社をボローニャに設立し、その間、イタリア、フランス、アメリカで活躍したレーシングカーを手がけたものの、1963年には、モーターサイクルやヘリコプター製造で知られていた「MVアグスタ」に買収され、1966年に、「OSCA」社の自動車の生産は中止された(甲8)。 一方、マセラティ社は、1968年にシトロエンに委譲され、プジョーに吸収された後、デ・トマゾを経て、1993年に、事実上、フィアットの傘下となった。そして、1997年には、フェラーリの傘下に、2005年には、再び、フィアットの傘下となったものであり、1960年代には、「Quattroporte 1」「Ghibli」、1970年代には「Indy」「Khamsin」、1980年代には「Biturbo」「Shamal」、1990年代には「Quattroporte 4」等を生産し、2014年には、創業100年を迎える(甲54、20、23)。 そして、申立人の業務に係る自動車は、現在、米国、欧州、アジアを中心に世界各国に輸出されているものであり、2014年の世界新車販売台数は、過去最高の3万6500台であり、前年比、136%と大きな伸びを示している(甲56、57)。 我が国において、申立人の自動車は、1965年頃から輸入車を取り扱う販売店を通じて取り扱われていたが、2010年には「マセラティジャパン株式会社」が設立されて、日本市場における体制を確立し(甲33)、2010年の販売は約300台、2011年は約250台、2012年は約300台、2013年は約500台、2014年は約1000台に上るところ(甲12の12?16)、我が国における申立人自動車の販売価格帯が1000万?2000万円以上であること及び同時期の我が国における「Ferrari」の販売台数が約400台から500台であること(甲12の12?16)を踏まえると、上記販売台数は決して少なくはないものと評価し得る。さらに、申立人は、1990年から2013年の「CAR GRAPHIC」「car magazine」「ENGINE」「GRNROQ」「LE VOLANT」「ROSSO」等の自動車雑誌において、「MASERATI」及び「マセラティ」の文字を表示して、申立人自動車の広告を継続的に行ってきたこと及びムック「ワールド・カー・ガイド20 MASERATI」(平成7年5月25日発行)、「MASERATI」(2005年6月24日発行)が発行されている(甲11、15?54)。 イ 以上によれば、「MASERATI」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国の取引者、需要者の間において、申立人の業務に係る自動車の出所を示すものとして、広く認識されていたものであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標は、別掲のとおり、中央の図形並びにその外輪の二重円内に表示された「O.S.C.A」及び「FRATELLI MASERATI BOLOGNA」の文字からなるものと看取されるところ、その構成全体として、常に一体のものとして認識されているというべき取引の実情も見当たらないことから、外輪内の文字部分は、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものとみるのが相当である。そして、構成中の「O.S.C.A」及び「FRATELLI MASERATI BOLOGNA」の文字部分は、構成文字の書体が明らかに相違することにより、別異のものとして認識されるものであるから、それぞれから生じる称呼、観念により取引される場合も決して少なくないというべきである。 そこで、本件商標の構成中、「FRATELLI MASERATI BOLOGNA」の文字部分についてみると、「FRATELLI」「MASERATI」及び「BOLOGNA」の各文字部分の間にスペースがあることにより、各文字が、視覚上、分離して看取されるものであり、その構成全体から生じる「フラテリマセラティボロニア」の称呼は12音と冗長であること及び上述のとおりの「マセラティ社」の創業の背景を踏まえると「兄弟」の意味を有するイタリア語「FRATELLI」と、「イタリアの都市ボローニャ」を表す「BOLOGNA」の文字は出所識別標識としての機能が弱いものというべきであるから、簡易迅速を重んずる取引の実際においては、その一部分だけによって簡略に表記ないし称呼され得るものであるということができる。 そして、本件商標の指定商品には、申立人が引用商標を使用する「自動車」が含まれるから、両商品は、その取引者、需要者を共通にするものであるところ、本件商標の構成中、「MASERATI」の文字は、外輪の円弧に沿った読み取りやすい正面(下方)に表示されているものであり、該文字は引用商標と同一の綴りである。 そうすると、上記(1)のとおり、引用商標が申立人の業務に係る自動車を表示するものとして周知著名であることから、本件商標の構成中、「MASERATI」の文字部分は、その指定商品の取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く注意をひき、印象に残るものである。 してみると、そのような本願商標に接する取引者、需要者は、該「MASERATI」部分から、周知著名な引用商標を連想、想起する場合も少なくないものというのが相当である。 (3)まとめ 以上を総合すると、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者が引用商標と同一の文字「MASERATI」に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 5 商標権者の意見 商標権者は、上記4の取消理由に対し、何ら意見を述べるところがない。 6 当審の判断 本件商標についてした先の取消理由は、妥当なものと認められる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その余の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (本件商標) |
異議決定日 | 2016-03-07 |
出願番号 | 商願2013-53242(T2013-53242) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(W12)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 小出 浩子 |
特許庁審判長 |
今田 三男 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 堀内 仁子 |
登録日 | 2014-01-31 |
登録番号 | 商標登録第5646164号(T5646164) |
権利者 | ディブラスコ株式会社 |
商標の称呼 | オスカフラッテリマセラティボローニャ、オスカ、オオエスシイエイ、フラッテリマセラティボローニャ、マセラティ |
代理人 | 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 |