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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201513171 審決 商標
不服2016260 審決 商標
不服201513765 審決 商標
不服20159313 審決 商標
不服201516550 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W30
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W30
管理番号 1314514 
審判番号 不服2014-24536 
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-02 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 商願2014-23313拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「焼生煎餅」の漢字と「やきなませんべい」の平仮名を、明朝体をもって2段に横書きしてなり、第30類「せんべい」を指定商品として平成26年3月27日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『焼生煎餅』と『やきなませんべい』の文字を2段に普通に用いられる方法で書してなるところ、その構成中『生煎餅』及び『なませんべい』の文字部分は、『水で練った米の粉を蒸し、砂糖などを加えて平らに延ばした菓子』等の意味合いを表すものである。そして、食品を取り扱う業界において、『焼○○(食品)』の文字が、『焼まんじゅう(焼いたまんじゅう)』、『焼ドーナツ(焼いたドーナツ)』のように『焼いた○○(食品)』程の意味合いを表すものとして使用されている実情がある。また、『生せんべい』は、そのまま食べることのできる菓子であるが、焼いたり、油で揚げても美味しく食べられるものがある。そうすると、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、該商品が『焼いた生せんべい』程の意味合いを認識するにとどまり、単に、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における手続の経緯
当審において、請求人に対し、平成27年9月18日付けで、別掲のとおりの証拠及び理由を示した上で、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとの見解を示し、回答を求める審尋をし、期間を指定して、これに対する意見を求めた。

4 審尋に対する請求人の回答の要点
請求人は,前記3の審尋に対して,要旨次のように意見を述べている。
(1)審尋における2.(3)及び(5)に記載の山田せんべいは、最近では「山田せんべい餅」、「山田せんべいソフトクリーム」、「山田せんべいロール」もある(甲第4号証)ということで、米以外の牛乳を原材料とする生菓子も「生せんべい」としている。
また、審尋における2.(4)及び(6)に記載の総本家田中屋の「生せんべい」は、生八ツ橋よりは硬く、ういろうよりは軟らかいだけの違いで、形も色も同じ半生菓子を「生せんべい」と称しているが、その程度の違いだけでは生八ツ橋、ういろうとの間で品質の誤認混同が生じる。
「生せんべい」は「生八ツ橋」、「ういろう」の食感に近いばかりでなく、「せんべいソフトクリーム」、「せんべいロール」もあるということで、「せんべい」から離れた甘味食品というべきものであって、せんべいの品種に含まれるものではない。
その証拠に、「煎餅」を掲載するすべての国語辞典は「煎餅布団」の記載はあるが「生せんべい」は取り上げていない。「煎」の文字は、いる、あぶり焼くという意味を持つから、「煎餅」はあぶり焼いた餅、いった餅ということで、「焼く」ということが不可欠の要件である。
「生せんべい」は焼いていないから「せんべい」ということは理論的にもできない。
(2)総本家田中屋は平成25年4月18日に「餅,和菓子,菓子」を指定商品として商標「生せんべい」を登録出願している。このことは「生せんべい」が商品でないということを本人が証明しているということにほかならない。
(3)生八ツ橋、ういろうを焼いたり油で揚げたりしたら、味、外見が変わり最早名品ではなくなり、食べられたものではない。「生せんべい」は焼いたり油で揚げたりして食べることもあるということですが、焼いたり油で揚げたりした「生せんべい」は生八ツ橋、ういろうと同様に色つやが失われ、肝腎の「生」の味もなくなる。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「焼生煎餅」の漢字と、その読み仮名である「やきなませんべい」の平仮名を、明朝体をもって2段に横書きしてなるところ、これをその指定商品に使用するときは、需要者に「焼いた生せんべい」程の意味合いを理解、認識されるといえるもの、すなわち、商品の品質を表示するにすぎないものであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとした前記3の審尋で示した見解は妥当なものといえる。
(2)請求人の主張
ア 請求人は、「生せんべい」は「生八ツ橋」、「ういろう」の食感に近いばかりでなく、「せんべいソフトクリーム」、「せんべいロール」もあるということで、「せんべい」から離れた甘味食品というべきものであって、せんべいの品種に含まれるものではない。その証拠に、「煎餅」を掲載するすべての国語辞典は「煎餅布団」の記載はあるが「生せんべい」は取り上げていない。「煎」の文字は、いる、あぶり焼くという意味を持つから、「煎餅」はあぶり焼いた餅、いった餅ということで、「焼く」ということが不可欠の要件である旨主張する。
しかしながら、本願商標は、全体として「焼いた生せんべい」の意味合いを容易に認識させることは、上記(1)のとおりである。そして、商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、品質表示として使用されていなくとも、需要者が品質表示と認識すれば足りると解されており、請求人が主張するような「生せんべい」が「せんべい」の品種に含まれないことをもって、需要者が該意味合いを認識しないということもできない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
イ 請求人は、総本家田中屋は平成25年4月18日に「餅,和菓子,菓子」を指定商品として商標「生せんべい」を登録出願している。このことは「生せんべい」が商品でないということを本人が証明しているということにほかならない旨主張する。
しかしながら、上記商標登録出願(商願2013-029029)は、平成25年11月22日に、単に商品の品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、本願商標は商標法第3条第1項第3号等に該当するとして、拒絶の査定が確定している。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
ウ 請求人は、生八ツ橋、ういろうを焼いたり油で揚げたりしたら、味、外見が変わり最早名品ではなくなり、食べられたものではない。「生せんべい」は焼いたり油で揚げたりして食べることもあるということですが、焼いたり油で揚げたりした「生せんべい」は生八ツ橋、ういろうと同様に色つやが失われ、肝腎の「生」の味もなくなる旨主張する。
しかしながら、別掲の3.(2)で挙げたとおり、「生せんべい」を焼いて食べる場合もあるとの新聞記事があることを踏まえれば、「生せんべい」を焼いたり揚げたりし得ることは否定できない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(当審においてした審尋)
1.本願商標について
本願商標は、「焼生煎餅」の漢字と「やきなませんべい」の平仮名を、明朝体をもって2段に横書きしてなり、第30類「せんべい」を指定商品とするものである。そして、本願商標は、その構成中の平仮名の文字部分は漢字部分の読みを表したものといえる。

2.「生煎餅」及び「なませんべい」の語の意味合いについて
本願商標は、その構成中に「生煎餅」及び「なませんべい」の文字を含んでなるところ、該文字に通じる「生せんべい」の文字について、以下のインターネット情報や新聞記事情報を踏まえるならば、該商品は、米を原材料とした半生菓子の一種を表すものであり、該商品を表すものとして普通に使用されていることが認められる。
(1)「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」のウェブサイトにおいて、「生せんべい」の見出しの下、「生せんべい(なま-)とは、名前にせんべいとあるものの、半生菓子に組する和菓子の一種である。もちっとした食感に、ほのかに甘味がある味。」、「名古屋の『ういろう』や京都の『八ツ橋』などの類似した餅菓子は、最も素朴な生せんべいをルーツとする和菓子と言われている。」、さらに「米粉を水で練り、蒸して団子状にしたものに、砂糖・蜂蜜を加えてさらに練る。これを薄く延ばし、切って乾燥させ、3枚1組にまとめたもの」との記載がある(https://ja.wikipedia.org/wiki/生せんべい)。
(2)2014年4月17日付け「東京新聞」(夕刊 3頁)「旅 北三陸 岩手県 船で巡る『海のアルプス』」の見出しの下、「南部煎餅茶屋 二戸市に本社がある巌手屋の直営店で市内石切所荒瀬にある。生せんべい『てんぽ』は、江戸時代の天保年間から食べられており、もちもちした食感。くるみみそなどが入っている。」との記載がある。
(3)2011年11月18日 東京読売新聞(朝刊 34頁)「東日本大震災 明日への掲示板=訂正あり」の見出しの下、「山田せんべいは、県産米粉や黒ごまなどが原料。焼いたせんべいのほか、原材料を乾燥させただけの生せんべいがあり、独特の食感で全国にファンがいる。」との記載がある。
(4)2010年1月30日 東京読売新聞(朝刊 32頁)「[ふるさとの逸品]生せんべい 餅の食感 ほのかな甘み=東京」の見出しの下、「一口かじると、黒糖や、蜂蜜のほのかな甘みが口いっぱいに広がる。もちもちとした食感はまるで餅のよう。名古屋のういろう、京都の生八つ橋のルーツとも伝えられる。1930年創業の『総本家田中屋』(半田市)は、すべて国内産の材料を使っている。黒糖は、輸入品に比べ値段は倍以上するが、甘さの中に苦みがある沖縄産にこだわる。米、黒糖の『黒』と、米、上白糖、蜂蜜で作る『白』の2種類が伝統的な生せんべい。生産量日本一の愛知・西尾産抹茶を加え、甘さを抑えた『抹茶』も3年前に登場した。3枚重ねで1枚になっている。重ねることで間に空気が入り、うま味が増すという。」との記載がある。
(5)2008年12月16日 朝日新聞(朝刊 34頁)「(東北を食べる)岩手・山田せんべい 同じ原料で3種類の味 /東北・共通」の見出しの下、「同じ原料で、三つの違った風味と味わいが楽しめるせんべいが、岩手県山田町で作られる『山田せんべい』だ。まず、餅をついてすりゴマをまぜる。餅の状態のまま大福大に丸め、きな粉をまぶしたのが『せんべい餅』。薄く伸ばし、ギョーザの皮のように円く広げたのが『生せんべい』。いずれも米とゴマが主原料で、至ってシンプル。米は県産100%。米の滋味あふれる素朴な味わいで、かむほどにほんのりとした甘みが口に広がる。ゴマの香ばしさも良いアクセントだ。」との記載がある。
(6)2008年11月4日 中日新聞(朝刊 地方版(知多版)14頁)「わがまち企業最前線 総本家田中屋(半田市) もちっと食感 生せんべい」の見出しの下、「生八ツ橋よりは硬く、ういろうよりは軟らかい。厚みのある三層の生地をはがして食べると独特の食感が広がる。根強い人気を誇り、今では知多半島で知らない人はいないほどの菓子に成長した田中屋の『生せんべい』。現在では熱田神宮や中日劇場などの土産物売り場から、有名百貨店やスーパーまで、東海地方を中心に、各所で販売されている。創業時から商品は生せんべいのみ。黒糖風味が高齢者に人気の『黒』と、くせのない『白』、土曜日のみ製造する『抹茶』が同社の全商品だ。知多半島の農民が、農業のかたわら作っていたせんべい。庭先に干したできあがり前の『生』のせんべいを食べたらおいしかった、というのが由来という。」との記載がある。
(7)2008年9月30日 北海道新聞(朝刊地方 27頁)「<青森プラザ>」の見出しの下、「試食会に並んだメニューは、前菜から主菜、デザートまで十数品。・・・参加した市民ら約三十人は「生せんべいのもちもち感がいい」「アイスとも意外に相性がいい」と舌鼓を打った。」との記載がある。
(8)2005年11月12日 中日新聞(朝刊 地方版(尾張版) 22頁)「尾張 なんやのコレ? 一宮の土産物 織物にちなむ銘菓 充実」の見出しの下、「一方、旧木曽川町では、ここで生まれたとされる戦国武将、山内一豊に関連した商品が多数つくられている。木曽川商工会では「出世太鼓』と名付けられたどら焼きや、生せんべいにあんをはさんだ菓子『一豊くん』など六種類の銘菓を取り上げ、商工会館内に展示している。」との記載がある。
(9)1999年4月2日 中日新聞(朝刊 地方版(知多総合版) 23頁) 「おいしさ“満載” 『はんだの土産品』 ガイドブック完成」の見出しの下、「半田市内の和菓子や醸造品などを紹介する、ガイドブック『はんだの土産品』が完成した。市と半田商工会議所の製作。一万部刷られ、市商工観光課などで配布される。ガイドブックには、全国菓子博覧会内閣総理大臣賞を受賞した『生せんべい』や、名古屋城築城の際、篠島から石を運んだ加藤清正にちなんで名付けられた清酒『清正』など二十二点が掲載されている。」との記載がある。

3.本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本願商標の指定商品を含む菓子の分野では、和菓子の分類上、上記2(1)のとおり、生せんべいが属する半生菓子や生菓子にあっても、その製法の区分によって「焼き菓子」と称されるものがある(別記)ほか、例えば、「まんじゅう」を焼いたものを「焼まんじゅう」(https://ja.wikipedia.org/wiki/焼きまんじゅう)、「だんご」を焼いたものを「焼だんご」(http://www.asahi-net.or.jp/~bd8m-msd/yakidango.html)、「八ツ橋」を焼いたものを「焼き八ツ橋」(http://store.shopping.yahoo.co.jp/goten8284/bec6a4adc8.html)と称するなど、「○○」という菓子を焼いたものを「焼(き)○○」と称する実情がある。
(2)上記2の「生せんべい」についても、焼いたりしないでそのまま食べるばかりでなく、以下のとおり、焼いて食べる場合があるものである。
ア 2013年2月5日 朝日新聞(朝刊 24頁)「(味自慢)山田生せんべい 岩手県山田町「愛されて」震災から復活 /東北・共通」の見出しの下、「『せんべい』だがモチッと柔らかい食感が特徴で、口に含むとゴマの素朴な風味が広がる。生で食べるほか、トースターでかりっと焼いても、油で揚げても良い。材料は米粉、ゴマ、砂糖、塩、じょうゆだけで、保存料は一切使用していない。」との記載がある。
イ 2009年12月20日 朝日新聞(朝刊 33頁)「『こたつ列車』出発 三陸鉄道 /岩手県」の見出しの下、「こたつ列車では、特製弁当の予約販売や、車内のストーブで『山田 生せんべい』を焼くサービスなどがある。」との記載がある。
ウ 1998年11月19日 東京新聞(朝刊 17頁)「ふるさとアラカルト」の見出しの下、「◆せんべい焼きで無病息災 敦賀市の天満神社で『せんべい焼き』神事が20日夕刻から行われる。周囲がすっかり暗くなると『かがり火』がたかれ、古い神符やお守り札などを燃やす。この火で生せんべいを青竹に挟んで焼き、その場で食べると、悪病を払い無病息災になると伝えられている。生せんべいと青竹は、境内で買い求める。」との記載がある。
(3)小活
そうすると、本願商標は、半生菓子の一種である「生せんべい」を表す「生煎餅」及び「なませんべい」の文字に「焼」及び「やき」の文字をそれぞれ冠したものと把握、理解されるものであり、これをその指定商品に使用するときは、その需要者によって、「焼いた生せんべい」程の意味合いが理解、認識されるものといえる。
してみれば、本願商標は、商品の品質を表示したものと認識させるにとどまるものであって、自他商品の識別標識としては機能し得ないものというべきである。

4.むすび
したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。

[別記]「お菓子何でも情報館」のウェブサイトは、「和菓子の分類」が表示されているところ、その分類表によれば、「生菓子」と分類されるものの中には、「もち菓子」、「蒸菓子」、「焼き菓子」等があり、また、「半生菓子」と分類されるものの中にも、「あん菓子」、「おか菓子」、「焼き菓子」等があると記載されている(http://www.zenkaren.net/_0300/_0301)。




審理終結日 2016-02-03 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-03-23 
出願番号 商願2014-23313(T2014-23313) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (W30)
T 1 8・ 13- Z (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 高橋 幸志
原田 信彦
商標の称呼 ヤキナマセンベイ、ヤキナマセンベー、ヤキナマ 
代理人 永島 郁二 

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