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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W43
審判 全部無効 観念類似 無効としない W43
審判 全部無効 外観類似 無効としない W43
管理番号 1314425 
審判番号 無効2015-890007 
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-01-15 
確定日 2016-04-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5692791号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5692791号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成26年4月1日に登録出願され,第43類「飲食物の提供」及び第44類「温泉施設の提供」を指定役務として,同年6月30日に登録査定され,同年8月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,引用する登録第3112304号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成4年9月30日に登録出願,第42類「入浴施設の提供」を指定役務として,同8年1月31日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,その登録は,同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)本件商標について
ア 本件商標の全体的な評価について
本件商標は,全体として,「ユートピアカンナミ」という称呼を生じる。そして,その外観は,「湯?トピア」及び「かんなみ」の文字を前部後部として一段に配してなり,前部に配された「湯?トピア」は,黒色のポップ体の文字で構成され,後部の「かんなみ」は,緑色のポップ体の文字で構成されている。そして,「かんなみ」は,「函南町」を意味する一般的・普遍的な文字である。他方,「湯?トピア」は,「ユートピア」(utopia)の「ユ」を「湯」にした造語であって,需要者に出所識別標識として支配的印象を与える部分であり,「理想的に快適な浴場」をイメージさせるような語である。
以上により,本件商標は,全体として,「函南町に所在する湯?トピア」という入浴施設との観念を生じることになる。
イ 本件商標の要部
前記のとおり,本件商標の外観については,「湯?トピア」は,黒色の文字で構成され,「かんなみ」は,緑色の文字で構成されるため,「湯?トピア」と「かんなみ」は,一体性は低く,分離して看取されるべきものである。
また,「湯?トピア」は,造語であって,独立して識別力を有する部分である一方,「かんなみ」は,提供する入浴施設(温泉施設)の所在を意味する一般的・普遍的な文字であり,付加的な部分である。したがって,本件商標のうち,「湯?トピア」の部分は,その要部ということができる。
そして,当該要部からは,次のような,外観,称呼,観念が生じる。外観において,前部に配された「湯?トピア」が,黒色のポップ体の文字で構成されているものである。称呼においては,「ユートピア」との称呼を生じる。観念においては,「理想的に快適な浴場」である「湯?トピア」という入浴施設との観念を生じる。また,指定役務は,第42類の「入浴施設の提供」(審決注:「第44類の『温泉施設の提供』」の誤記と考えられる。以下同じ。)である。
(2)引用商標について
ア 引用商標の全体的な評価について
引用商標は,全体として,「ラドンケンコウパレス,ユートピア」との称呼を生じ,外観は「ラドン健康パレス」及び「湯?とぴあ」の文字をそれぞれ上下二段に配してなる商標である。そして,「ラドン健康パレス」は,提供する入浴施設(温泉施設)の種類を意味する一般的・普遍的な文字である一方,「湯?とぴあ」は,「ユートピア」(utopia)の「ユ」を「湯」にした造語であって,需要者に出所識別標識として支配的印象を与える部分である。
以上により,引用商標は,全体として,「ラドン温泉を利用した湯?とぴあ」という入浴施設との観念を生じることになる。
イ 引用商標の要部
前記のとおり,引用商標は,一体性は低く,分離して看取されるべきものである。また,「湯?とぴあ」は,造語であって,独立して識別力を有する部分である一方,「ラドン健康パレス」は,提供する入浴施設(温泉施設)の種類を意味する一般的・普遍的な文字であり,付加的な部分である。したがって,引用商標のうち,「湯?とぴあ」の部分は,その要部ということができる。
そして,当該要部からは,次のような,外観,称呼,観念が生じる。外観において,「湯?とぴあ」部分は,「?」が「湯」の一部と一体となり,丸味を帯びたポップ体の文字で構成される。称呼においては,「ユートピア」との称呼を生じる。観念においては,「理想的に快適な浴場」である「湯?とぴあ」という入浴施設との観念を生じる。また,指定役務は,第42類の「入浴施設の提供」である。
(3)本件商標と引用商標との類否
以上のことから,引用商標の要部と,本件商標の要部からは,「ユートピア」という同一の称呼が生じる。観念についても,「理想的に快適な浴場」である「湯?とぴあ(湯?トピア)」という入浴施設という共通の観念を生じる。
なお,外観については,平仮名・片仮名という相違点はあるものの,「湯?とぴあ」という基本的な語は同一であること,書体は異なるが,標準文字ではなく装飾された書体である点で共通することから,類似しているということができる。
そして,本件商標と引用商標とは,第42類の「入浴施設の提供」を指定役務としており,同一である。
(4)答弁に対する弁駁
ア 商標の構成態様について
被請求人は,本件商標,引用商標ともに,デザインコンセプトは異なるが,単なる文字の装飾という域を超え,非常に特徴的でインパクトのある図案化が施されていると主張する。
しかし,被請求人の引用商標に対する評価は,「ポップ書体は,スーパーマーケット,書店,ドラックストア等において設置されるPOP広告において一般的に使用されているものであり」というものであって,非常に特徴的にインパクトのある図案化が施されているとする根拠に欠く。
イ 取引事情及び語の意義
被請求人は,乙第1号証を根拠に,「湯?とぴあ」,「ユートピア」,「ゆーとぴあ」,その他これと同様の称呼を生じる語を商標の一部分として使用した多数の商標が,互いに関連を有しない複数の事業者によって現実に使用されていることが認められるとする。
しかし,被請求人の掲げる事例は全国で20件程度しかないものであり,「湯」の文字を使用した施設はその中でも4件である。また,被請求人が主張するように,「ユートピア」の「ユ」の表記について適宜選択的に使用されてきたとするには事例数が少なく,「入浴施設の提供」の事業分野において,「湯?とぴあ」等の語自体に識別力が実質的に存在しないとするには根拠がない。むしろ,全国で4件程度しかないというべきであり,極めて強い識別力があるといえる。
したがって,本件商標,引用商標ともに「湯?とぴあ」または「湯?トピア」部分が要部を構成していることは明らかである。また,被請求人は,乙第2号証を根拠に,類似群コードを「42D01」とする登録商標として,「ユートピア」の文字と他の文字を結合させた標準文字からなる商標が複数併存していることから,「湯?とぴあ」や「湯?トピア」の語に独立した識別力は無いとする。
しかし,乙第2号証に記載されている登録商標で「湯」の語を使用しているのは,「湯とぴあ宝」,「HAKONE KOWAKI-EN Sunshine 湯?とぴあ」,「YOU,ゆ? SAUNA and BATH UTOPIA」,「湯とぴあ雁の里温泉」の4件であり,上記と同様,「湯?とぴあ」等の語自体に識別力が実質的に存在しないとするには根拠がない。
(5)むすび
以上により,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,無効とすべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 本件商標について
本件商標には,最も目立つ「湯?トピアかんなみ」部分と,その下側に位置して中央付近に配置された桜を表した図形部分,及び当該図形の左右に跨って配置された英文字部分とが存在する。「湯?トピアかんなみ」部分は,淡い色使いで滲みや擦れが表現された毛筆様の書体を用い,各文字はその一部が隣接する文字の領域にはみ出しつつ,「湯」から「み」まで,躍動感をもって横方向に流れるデザインとなっている。これによって,特定の位置で分断されることなく,「湯?トピアかんなみ」を構成するすべての文字が一体に連なっているように看取される。なお,赤色,緑色,黒色が使用されているが,いずれも淡い色合いで統一感が表現され,全体として一体感のある図案であるとの印象を看者に与えている。また,「湯?トピアかんなみ」部分,図形部分,及び英文字部分は,全体として淡い色調で統一され,且つ横長矩形の領域内にバランスよく配置されており,本件商標の構成全体をもって一体不可分の商標を表していると看取される。称呼については,本件商標のうち,「湯?トピアかんなみ」部分は,語長を踏まえると,さほど無理なく「ユートピアカンナミ」と一連に称呼される。英文字部分からは,「イズ」,「カンナミ」,および「スパ」の称呼が生じる。観念については,英文字部分から,伊豆の函南町にある温泉施設という観念が生じる。また,図案化された「湯?トピアかんなみ」の書体,色合い,花の絵柄の存在に起因して,本件商標から,自然派,柔らかな印象,和風,地域密着型,という印象が生じ得る。
2 引用商標について
引用商標は,ありふれた書体で小さい文字で表わされた「ラドン健康パレス」部分と,大きいサイズのポップ書体の文字をベースに図案化された「湯?とぴあ」部分とを二段に配した構成である。具体的には,「湯?とぴあ」部分は,彩度の高い青の背景に黄色の丸みを帯びたポップ体の文字が浮かぶような表現が採用されている。称呼については,引用商標からは,「ラドンケンコウパレスユートピア」の称呼が生じる。観念については,引用商標のうち,「ラドン健康パレス」部分からは,温泉の種類がラドン温泉であり,効能として「健康によい影響を与える施設」程度の観念が生じる。「湯?とぴあ」部分からは,「理想的に快適な」程度の観念が生じ得る。よって,引用商標全体として,「理想的に快適な健康によいラドン温泉の入浴施設」程度の観念が生じる。また,ポップ書体は,スーパーマーケット,書店,ドラックストア等において設置されるPOP広告において一般的に使用されているものであり,その色使いと相俟って,引用商標からは,大衆的,ややくだけた,親しみ易い,といった印象が生じ得る。
3 両商標の対比について
(1)商標の構成態様
本件商標,引用商標ともに,デザインコンセプトは全く異なるが,単なる文字の装飾という域を超え,非常に特徴的でインパクトのある図案化が施されている。この結果,外観,称呼,観念のうちで外観が需要者に与える印象が最も強くなっている。
(2)取引事情及び語の意義
請求人は,「湯?とぴあ」や「湯?トピア」の語は造語であるから,独立して識別力を有し,支配的印象が生じる旨主張するが,妥当でない。例えば,インターネットの「iタウンページ」で検索すると,「湯?とぴあ」,「ユートピア」,「ゆーとぴあ」,その他これと同様の称呼を生じる語を商標の一部分として使用した多数の商標が,互いに関連を有しない複数の事業者によって現実に使用されていることが認められる(乙1)。「理想的に快適な」や「理想郷」という観念を生じさせる外来語の「ユートピア」は,その先頭文字が「ユ」であるため,お湯の「ゆ」にかけて理想的な入浴施設をイメージさせる言葉として広く用いられてきた。ここで,先頭語をひらがなの「ゆ」にするか,カタカナの「ユ」にするか,あるいは漢字の「湯」にするかは適宜選択的に用いられてきたに過ぎない。すなわち,「入浴施設の提供」の事業分野において,「湯?とぴあ」等の語自体には識別力が実質的に存在しないか,存在したとしても極めて弱い識別力しかないといえる。したがって,引用商標を構成する「湯?とぴあ」の語自体は,要部とはなりえないし,同様に,本件商標を構成する「湯?トピア」の語自体も要部とはなりえない。
これは,類似群コードを「42D01」とする登録商標として,「ユートピア」の文字と他の文字を結合させた標準文字からなる商標が複数併存していることからも裏付けられる(乙2)。
また,当然に「湯?とぴあ」等の文字のみからなる標準文字の商標は登録されていない。そして,同類似群コードにおいて「湯?とぴあ」の文字を様々な方法で図案化した上でさらに他の図案と結合させてなる複数の商標(登録第3095368号,登録第310577号,登録第322289号)が登録されている(乙2)。係る事実に鑑みれば,少なくとも平成4年末の時点において,既に「湯?とぴあ」の語は入浴施設を意味するものとして使用されており,その語単独では識別力を有しないと一般に認識されていたと推認するのが相当である。
すなわち,「湯?とぴあ」等の語は,かつては造語であったかもしれないが,上述のとおり,少なくとも20年以上の使用を経て,現在では入浴施設を直接的または間接的に示す語として広く需要者に認知されるほどありふれており,需要者はこの語単独で各事業者を彼此識別しているわけでない。「湯?とぴあ」等の語と他の語とを結合させ,または「湯?とぴあ」等の語に対して図案化することによって,初めて実質的な出所識別機能を備えるに至っている。
したがって,引用商標は,図案化された全体として一体に需要者に看取されて識別標識として機能するものである。仮に引用商標から要部を抽出するとすれば,それは識別力の実質的にない語に特徴的な図案化することで識別力を獲得した「湯?とぴあ」の図案部分または「ラドン健康パレス」の部分であって,少なくとも「湯?とぴあ」の語自体ではない。
(3)外観,称呼及び観念について
上述のとおり,外観においては,本件商標と引用商標とでは図案構成や色合いが全く異なり,相紛らわしい要素は全くない。
称呼においては,「ユートピアカンナミ」と「ラドンケンコウパレスユートピア」とを対比すると,「ユートピア」の部分が共通するものの,その位置が語頭と語末とで全く異なる。また,少なくとも「湯?とぴあ」や「湯?トピア」の語には識別力が実質的にないから,需要者が「ユートピア」の称呼のみから出所を識別することはない。需要者は,称呼においては,「ラドンケンコウパレスユートピア」または「ラドンケンコウパレス」と,「ユートピアカンナミ」または「カンナミ」を対比するのであって,いずれの場合であっても「カンナミ」と「ラドンケンコウパレス」とでは明らかに称呼が異なり,本件商標は引用商標と明瞭に聴別される。
観念においては,本件商標と引用商標の語自体から生じる観念について,「理想的に快適な健康によいラドン温泉の入浴施設」と「伊豆の函南町にある温泉施設」とで,相紛れるおそれはない。
さらに,図案から生じる観念について,書体,色合い,花の絵柄の存在に起因して,本件商標は自然派,柔らかな印象,地域密着型,和風というような印象を与える。一方,引用商標は,書体や色使いから,大衆的,ややくだけた親しみ易いというような印象を与える。
このように,本件商標と引用商標とでは需要者に与える観念が全く異なり,相紛れるおそれはない。
(4)小括
本件商標と引用商標とでは,外観,称呼,観念のいずれにおいても相違し,とりわけ,その構成態様に起因して最も影響力がある外観の違いが著しい。よって,本件商標及び引用商標に接した需要者が出所を混同するおそれはない。
4 まとめ
上記のとおり,本件商標は,外観,称呼および観念のいずれにおいても引用商標と類似しない。
したがって,本件商標は,引用商標と類似しておらず,商標法第4条第1項第11号に違反しないことは明らかである。

第5 当審の判断
1 本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,上段に黒色の「湯?トピア(なお,『湯』の字の中の『日』の部分は,その中央の『?』が赤い丸い点に置き換えられている。)」の文字と,緑色の「かんなみ」の文字を一連に毛筆風に横書きし,下段に3枚の葉を伴う1輪の白い花の図形と,その図形の左右にそれぞれ黒色で「IZU KANNAMI」及び「SPA」の文字を極めて小さい欧文字で横書きした構成からなるところ,上段文字部分と下段文字部分及び図形で構成されている部分とは,外観上,分離して看取される場合もあり,また,これらを常に一体不可分のものとしてのみ看取されなければならない特段の事情は認められない。
そして,上段「湯?トピア」の文字部分は,辞書等に掲載されていないものであるから,特定の意味合いを有しない一種の造語とみるのが相当である。
ところで,「湯?トピア」の文字については,被請求人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第1号証は,「湯?とぴあ」「ユートピア」「ゆーとぴあ」,その他これと同様の称呼が生じる語と「入浴施設」の文字とをインターネット上で検索したものである。
これによれば,1)湯ートピア小中野(青森県八戸市),2)ゆーとぴあ(広島県呉市),3)ゆートピア(東京都北区),4)なにわ健康ランド湯ートピア(大阪府東大阪市),5)スーパー銭湯ユートピア芥見店(岐阜県岐阜市),6)ゆーとぴあみろく温泉(香川県さぬき市),7)遊の里温泉ユートピア宇和(愛媛県西予市),8)敷島温泉ユートピア赤城(群馬県渋川市),9)ゆートピア21(東京都葛飾区),10)ゆーとぴあ琴浦(兵庫県尼崎市),11)ユートピア浜坂(兵庫県美方郡),12)湯ーとぴあダイゴ(京都府京都市)の記載がある。
(2)乙第2号証は,独立行政法人 工業所有権情報・研修館の「J?platpat」特許情報プラットフォームにおいて,商標の称呼検索を用いて,「ユートピア」の称呼と「入浴施設の提供」の役務が含まれる商標を検索したものである。
これによれば,1)登録第3095368号:図形と「湯とぴあ宝」の結合商標,2)登録第3101577号:図形と「HAKONE KOWAKI?EN\Sunshine\湯?とぴあ」の結合商標,3)登録第322289号:図形と「YOU,ゆ?\SAUNA and BATH UTOPIA」の結合商標,4)登録第4387677号:図形と「ユートピア赤城」の結合商標,5)登録第4436206号:「ユートピア赤城」の文字商標,6)登録第4506388号:「湯とぴあ雁の里温泉」の文字商標の記載がある。
上記(1)及び(2)によれば,「ユートピア」の称呼を生じる文字を含む入浴施設が,全国に多数あることがわかる。
したがって,本件商標の構成中の「湯?トピア」の文字部分は,「入浴施設の提供」との関係においては,自他役務の識別力がないか極めて弱い文字というべきであるから,取引者,需要者をして役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできない。
また,「かんなみ」の文字部分は,被請求人である函南町の読みを表したものとみるのが相当であるから,該文字部分は地名を表していることから,自他役務の識別力はないか極めて弱いものである。
そうすると,「湯?トピア」又は「かんなみ」の文字のみでは,自他役務の識別力がないか極めて弱いものであるが,本件商標の構成中,一連に看取される「湯?トピアかんなみ」の文字においては,その大きさ及び特徴的に統一された書体とも相まって,強く支配的な印象を与えるものであるから,自他役務の識別力があるものとみるのが相当であり,該文字部分をもって取引に資する場合も決して少なくないものというべきである。
してみれば,本件商標は,全体の文字及び該「湯?トピアかんなみ」の文字に相応して,「ユートピアカンナミイズコウゲンスパ」及び「ユートピアカンナミ」の称呼を生じ,かつ,直ちに特定の観念を生じないものであるとしても,「湯?トピアかんなみ」の文字からは,「函南にあるユートピア」ほどの意味合いを想起させる場合があるというのが相当である。
2 引用商標
引用商標は,別掲2のとおり,上段に青色で「ラドン健康パレス」の文字と下段に文字が黄色でその文字の周辺と文字の輪郭を青色でややレタリングされた「湯?とぴあ(『?』が『湯』の一部と一体となって表示されている。)」の文字を上下二段に表してなるものであるところ,上段の文字部分は,「希ガス元素の一種,元素記号Rn,原子番号86,ラジウムの壊変に際して生じる気体」等の意味を有する「ラドン」の文字と「身体に悪いところがなく心身がすこやかなこと,達者,丈夫」等の意味を有する「健康」の文字と「宮殿,御殿,娯楽などのための大きな建築物」等の意味を有する「パレス」の文字(いずれも,株式会社岩波書店 「広辞苑」第六版)を一連にして,「ラドン健康パレス」と表してなるところ,その構成文字の全体からは,「ラドンケンコウパレス」の称呼を生じるものである。
そして,「ラドン健康パレス」の文字部分からは,直ちに特定の観念は生じないものであるが,これらの語の持つ個々の意味を併せれば,「ラドンによる健康によい施設」ほどの意味合いを想起させる場合があるから,これを入浴施設に使用した場合は,自他役務の識別力がないか極めて弱いものであるとみるのが相当である。
また,下段部分は,「湯?とぴあ」の文字からなり,その構成文字より「ユートピア」の称呼が生じ,「湯?とぴあ」の文字部分は,辞書等に掲載されていないものであるから,特定の意味合いを有しない一種の造語とみるのが相当であるが,前記1のとおり,「湯?とぴあ」の文字部分は,「入浴施設の提供」との関係においては,自他役務の識別力がないか極めて弱い文字というべきであるから,取引者,需要者をして役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできない。
そうすると,「ラドン健康パレス」又は「湯?とぴあ」の文字のみでは,自他役務の識別力がないか極めて弱いものであるから,「ラドン健康パレス」と「湯?とぴあ」の文字を結合した「ラドン健康パレス湯?とぴあ」の文字に自他役務の識別力があるとみるのが相当であり,該文字からは,「ラドンケンコウパレスユートピア」の称呼が生じ,直ちに特定の観念を生じないものであるが,「ラドンによる健康によい施設ユートピア」ほどの意味合いを想起させる場合があるというのが相当である。
3 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標を比較すると,外観においては,本件商標は,前記第1のとおり,花の図形と「湯?トピアかんなみ」,「IZU KANNAMI」及び「SPA」の文字からなるものであり,引用商標は,前記第2のとおり,「ラドン健康パレス」の文字と「湯?とぴあ」の文字からなるものであるから,外観上,図形の有無,字形の違い及び,構成態様において顕著に異なり,両者は,明確に区別できるものである。
また,称呼においては,本件商標は,「ユートピアカンナミイズコウゲンスパ」又は「ユートピアカンナミ」の称呼を生じ,引用商標からは,「ラドンケンコウパレスユートピア」の称呼を生じるものであって,両商標の称呼は,共に「ユートピア」の5音を含む点において共通するものであるが,該5音は語頭又は語尾に位置するものであって,その構成音及び構成音数が相違するから,称呼上,明瞭に聴別できるものである。
さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないから比較することができないが,それぞれの意味合いにおいては,本件商標からは,「函南にあるユートピア」程の意味合いを想起させる場合があり,また,引用商標からは,「ラドンによる健康によい施設ユートピア」程の意味合いを想起させる場合があるから,両者は,区別できるものである。
そうすれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,外観及び称呼において類似するところがないものであるから,本件商標をその指定役務に使用したとしても,出所の混同を生じるおそれはないといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標

(色彩については,原本参照。)

別掲2 引用商標

(色彩については,原本参照。)

審理終結日 2016-02-19 
結審通知日 2016-02-24 
審決日 2016-03-11 
出願番号 商願2014-25235(T2014-25235) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W43)
T 1 11・ 263- Y (W43)
T 1 11・ 262- Y (W43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 清棲 保美
榎本 政実
登録日 2014-08-08 
登録番号 商標登録第5692791号(T5692791) 
商標の称呼 ユートピアカンナミイズカンナミスパ、ユートピアカンナミ、ユートピア、イズカンナミスパ、イズカンナミ、スパ、エスピイエイ 
代理人 土橋 博司 
代理人 特許業務法人朝日特許事務所 
代理人 土橋 順 

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