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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0321
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0321
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0321
管理番号 1313265 
異議申立番号 異議2015-900130 
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-04-24 
確定日 2016-03-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5744068号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5744068号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5744068号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年10月3日に登録出願、第3類「石けん類」及び第21類「デンタルフロス,なべ類,食器類,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶」を指定商品として、同27年1月16日に登録査定、同年2月27日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由において引用する商標は、申立人が外食産業に必要とされる食材、消耗品及び食器類の商品開発や販売事業において使用している「ベストシェフ」の片仮名からなる商標(以下「引用商標1」という。)、「BestChef」の欧文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標3」という。)である。
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由の要旨
申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。
1 商標登録異議申立書における主張
(1)引用商標の使用商品及び使用役務並びに引用商標の周知性について
申立人は、遅くとも2002年8月までには、自社のオリジナル商品である食材について引用商標の使用を開始し、2008年4月までには、商品「業務用洗剤」について引用商標2の使用を開始し、その後、引用商標を使用した商品の販売を拡大し、遅くとも2010年5月までには、商品「業務用洗剤」だけではなく、役務「業務用洗剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、「衛生マスクの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、引用商標の使用を開始し、これら商品及び役務について、本件商標の登録査定時(平成27年1月16日)において、需要者の間に広く認識されるに至っていた。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 商標の類似性
本件商標は、鍋とワイングラスを持ちコック帽を被った料理人と思しき図形を有し、その下部に「Best Chef」との文字を有してなるところ、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められず、本件商標の「Best Chef」との文字部分から生じる「ベストシェフ」の称呼及び「最高の料理人」の観念をもって取引に供されるものと認められる。
これに対して、引用商標1及び2は、いずれも「BestChef」又は「ベストシェフ」の文字を中心とする商標であって、「ベストシェフ」の称呼及び「最高の料理人」の観念を生じるものである。また、引用商標3については、楕円形の図形の内部に「BestChef」との文字を有してなるところ、「Best chef」の文字部分から「ベストシェフ」の称呼及び「最高の料理人」の観念を生じるものである。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも「ベストシェフ」の称呼を生じ、「最高の料理人」の観念において共通するから、離隔的に観察された際には、同一人又は何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であると誤認混同を生じさせるおそれがある類似の商標である。
イ 商品・役務の類似性
本件商標の指定商品のうち、第3類「石けん類」は申立人が引用商標を使用している第3類「業務用洗剤」及び第35類「業務用洗剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、第21類「デンタルフロス」は引用商標を使用している第35類「衛生マスクの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、第21類「なべ類,食器類,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶」は引用商標を使用している第35類「台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と同一又は類似するものである。
ウ まとめ
以上のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標の商標権者は、「TAKASE」、「タ力セ物産」、「高瀬物産」の文字よりなる商標について、第35類の小売等役務を指定役務として商標登録出願している事実がある。加えて、本件商標の商標権者は、申立人に対し本件商標の商標権を行使する旨の通知書を申立人に宛てて送付している。
これら事実を併せて考慮すれば、本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもって使用をするものであることは明らかである。
付言すれば、同人は、申立人に関係する商標についてだけではなく、他社の有名・著名商標についても商標登録されていない商品・役務について、先取り的な出願を行っているようであり、同人を出願人とする商標を検索してみると、「アップルウォッチ」や「I pad」等の商標を出願している事実があり(甲第28号証)、これらの事実も、同人による不正の目的を強く推認させる間接証拠である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
2 平成27年10月16日付け上申書における主張
本件商標の商標権者は、申立人と取引のある企業に対して平成27年9月17日付けの文書(甲第29号証)を送付していた。該文書によれば、申立人が標章「BEST CHEF/ベストシェフ」を使用する一部の商品を申立人の取引先が購入する行為が、本件商標の商標権を侵害する可能性があると警告し、既に民事訴訟を提起しているとのことであるが、このような行為は、以下のとおり、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当することを自白しているに等しいものである。
(1)商標権者が申立人に対して本件商標の商標権侵害を主張しているということは、本件商標と申立人の使用に係る標章「BEST CHEF/ベストシェフ」とが同一又は類似する商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同が生じるおそれがあるという主張をしているということであり、本件商標と申立人の使用に係る標章「BEST CHEF/ベストシェフ」とが類似する商標であることを自白しているということである。
(2)商標権者が該文書を申立人の取引先に送付した事実からは、申立人が商標登録していない商品や役務があることを奇貨として先取り的に商標登録した本件商標を振りかざし、申立人の取引先に対して恰も商標権侵害の共犯者といわんばかりの文言を用い、刑事罰が科される可能性にまで言及する行為は、申立人に対して損害を加えんとするものであることに疑いの余地はないものである。
なお、商標権者は、該文書(甲第29号証)のほかにも、同趣旨の文書を申立人の他の取引先に送付している(甲第30号証及び甲第31号証)。

第4 取消理由通知の要旨
当審においては、平成27年10月15日付けをもって、商標権者に対して、要旨以下のとおりの取消理由通知書を送付し、意見の提出を求めた。
1 引用商標の周知性
(1)申立人提出の甲各号証及びその主張の全趣旨並びに職権調査によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、1961年(昭和36年)に創業され、日本各地に62の事業所及び流通センターを有し、ホテル、レストラン、和食・洋食・中華料理などの55000店と取引を有する、外食産業を対象に事業を行っている企業であること(甲第3号証2枚目、甲第4号証2枚目及び甲第6号証2枚目)。
イ 申立人の事業の売上額について、平成5年度においては543億円であり(甲第2号証3枚目)、平成13年度においては867億円であり(甲第3号証6枚目)、2008年(平成20年)4月1日発行の商品カタログにおいては850億円との記載があること(甲第4号証4枚目)。
ウ 申立人のオリジナル商品には2つのラインがあって、その1つが「ベストシェフ」であり、内訳として、コストパフォーマンスの高い商品を中心に幅広いジャンルをカバーするフード系と、調理器具(鍋・フライパン等)をはじめ、食器類(高級ワイングラス含む)、洗剤やクッキングシートなどの備品など、飲食店で必要とされる調理資材をフルラインで揃えるノンフード系があること(別掲3の職権調査によるインターネット情報(1))。
エ 申立人が頒布した商品カタログには、各種食材や調理資材が掲載されており、引用商標1ないし引用商標3が使用されていること(甲第3号証ないし甲第6号証)。
オ 申立人は、商品「業務用洗剤」について引用商標1及び引用商標3を使用していること(甲第4号証335頁)。
カ 申立人は、商品「業務用洗剤」について引用商標2及び引用商標3を使用していること(甲第5号証378頁ないし383頁、甲第6号証342頁ないし347頁)。
キ 申立人は、商品「なべ類」について引用商標2及び引用商標3を使用していること(甲第5号証376頁及び377頁、甲第6号証366頁及び367頁)。
ク 申立人は、商品「衛生マスク」について引用商標2及び引用商標3を使用していること(甲第5号証388頁)。
ケ 申立人は、商品「卓上ポット」(当審の職権による調査によれば、この商品は「魔法瓶」として取引されている(参照:http://store.shopping.yahoo.co.jp/honest/thq-1501.html)。)について引用商標2を使用していること(甲第6号証365頁)。
コ 申立人は、商品「食器類」について引用商標2及び引用商標3を使用していること(甲第6号証367頁)。
サ 申立人は引用商標3を使用した広告チラシを作成していること(甲第8号証ないし甲第14号証)。
シ 申立人は、2006年4月17日から2014年10月22日の間に、東京、新潟、札幌、山形、会津、熊谷、神戸、群馬、松本、房総、長岡、北海道、いわき、弘前、両毛等において事業の提案会を行い、同提案会には述べ5万名を超える来場者があったこと(甲第15号証ないし甲第22号証)。同提案会の来場者へは申立人の商品カタログを引用商標3が側面に印刷された紙袋(甲第7号証)に入れて頒布している(甲第22号証の右上写真)こと。
そして、該提案会等の実施の事実は外食産業に関する新聞などにより紹介されていること(甲第23号証及び甲第24号証、別掲3の職権調査による新聞記事情報(2)ないし(4))。
(2)以上を総合して検討すれば、引用商標は、申立人によって、業務用洗剤、なべ類、衛生マスク、卓上ポット、食器類を含む各種食材や消耗品、調理資材等の商品又はそれら商品の卸売又は小売に係る役務について使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、外食産業に関わる取引者、需要者の間において広く認識されていたといえるものである。
2 本件商標と引用商標との類否
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、文字と図形という異なる種類の標章を組み合わせてなるものであり、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然といえるほど、両者が不可分的に結合しているものとは認められず、その構成中の文字部分が要部として独立して自他商品の識別標識として機能し得るとみるのが相当である。
そして、本件商標は、該文字部分である「Best Chef」の欧文字のうち、「Best」の欧文字が「ベスト」と読み、「最高の」の意味を有する英語として、また、「Chef」の欧文字が「シェフ」と読み、「コック長」の意味を有する英語としてそれぞれ親しまれた語であるから、その構成文字に相応して、「ベストシェフ」の称呼及び「最高のコック長」の観念が生じるものといえる。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり、そのうちの引用商標1が「ベストシェフ」の片仮名からなるものであり、引用商標2が「BestChef」の欧文字からなるものである。また、引用商標3は、別掲2のとおりの構成からなるところ、楕円形状の図形内に顕著に「BestChef」の欧文字が白抜きで表示されている構成及び態様を勘案するならば、該文字部分が要部として独立して自他商品の識別標識として機能し得るとみるのが相当である。
そして、引用商標は、「Best」の欧文字が「ベスト」と読み、「最高の」の意味を有する英語として、また、「Chef」の欧文字が「シェフ」と読み、「コック長」の意味を有する英語として、それぞれ親しまれた語であることを勘案するならば、「ベストシェフ」又は「BestChef」の文字に相応して、「ベストシェフ」の称呼及び「最高のコック長」の観念が生じるものといえる。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、本件商標の要部である「Best Chef」の欧文字部分と引用商標2及び引用商標3の要部である「BestChef」の欧文字部分とは、その綴りを共通にするものであるから、相紛れるおそれがあるものといえる。また、本件商標の要部である「Best Chef」の欧文字部分と引用商標1とは、欧文字と片仮名という差異があるものである。しかし、該外観上の差異は、本件商標の要部である「Best Chef」の欧文字を構成する「Best」及び「Chef」の各語が親しまれた英語であることから、その片仮名表記「ベストシェフ」が容易に想起され、該片仮名表記が引用商標1の構成文字である「ベストシェフ」の片仮名と同一になることを踏まえると、商標の類否全体に大きな影響を与えるとまではいえないものである。
次に、称呼及び観念においては、本件商標と引用商標とは、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも「ベストシェフ」の称呼及び「最高のコック長」の観念が生じるものであるから、相紛れるおそれがあるものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標とは、それぞれの外観、称呼及び観念を総合的に考察すると、相紛れるおそれのある類似の商標ということができる。
3 本件商標の登録出願の経緯について
申立人が本件商標について商標権者の不正の目的があり、商標法第4条第1項第19号に該当する旨主張するので、以下、不正の目的の有無についても検討する。
申立人提出の甲各号証によれば、申立人は、引用商標のほかに、「TAKASE」の欧文字からなる商標(その下に、小さな「BUSSAN CO.,LTD.」の欧文字を表しているものを含む。)(甲第2号証ないし甲第6号証の商品カタログ、甲第7号証の紙袋、甲第8号証ないし甲第13号証の商品チラシ)や、「高瀬物産」の漢字からなる商標(甲第5号証中のトラックの写真によれば、トラックの車体に「業務用食品酒類専門商社」の小さな文字の下に、「高瀬物産」の漢字が大きく表されているほか、甲第23号証及び甲第24号証の新聞記事によれば、申立人の略称として「高瀬物産」の文字が使用されている。)を使用していることが認められる。
他方、商標権者は、上記第1のとおり、本件商標を平成26年10月3日に登録出願したが、本件商標にとどまらず、上述のとおり、申立人が使用している「TAKASE」の欧文字に「タカセ物産」の文字を併記した商標を平成26年10月30日に登録出願(商願2014-95991)し、申立人が使用している「高瀬物産」の漢字からなる商標を平成26年11月11日に登録出願(商願2014-99296)していることが認められる(ただし、これら2件の登録出願は拒絶査定となっている。)。
しかも、甲第25号証によれば、商標権者は、本件商標が設定登録されてから1か月も経過していない平成27年3月16日には、申立人に対し「BEST CHEF」商標の使用の中止を要求する通知書を送付しており、加えて、本件商標について平成27年4月24日に本件登録異議の申立てがされ、また、商願2014-95991については平成27年4月28日付けをもって、商願2014-99296については平成27年5月20日付けをもって拒絶理由通知がされた後に、申立人が使用している「TAKASE」の欧文字に図形を組み合わせた商標を平成27年7月31日に登録出願(商願2015-78149)していることが認められる。
そうすると、申立人の引用商標と本件商標とが類似するのは、偶然の一致とは考え難く、引用商標が上記1のとおり周知、著名であることを勘案するならば、本件商標は、申立人が使用している引用商標を承知の上で、それと類似の本件商標を登録出願したものといわざるを得ないから、むしろ、商標権者は、引用商標の周知性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や希釈化(いわゆるダイリューション)を意図していたものとみるのが合理的といえる。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人によって、業務用洗剤、なべ類、衛生マスク、卓上ポット、食器類を含む各種食材や調理資材等の商品又はそれら商品の卸売又は小売に係る役務について使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、外食産業に関わる取引者、需要者の間において広く認識されていたといえるものである。
さらに、本件商標は、上記2のとおり、引用商標とは相紛れるおそれがある類似の商標である。しかも、引用商標は、上記1のとおり、「業務用洗剤」、「なべ類」、「衛生マスク」、「卓上ポット」、「食器類」等に使用されているところ、本件商標の指定商品のうち、第3類「石けん類」は引用商標が使用されている「業務用洗剤」と、第21類の「デンタルフロス」は引用商標が使用されている「衛生マスク」と、「なべ類」は引用商標が使用されている「なべ類」と、「食器類」は引用商標が使用されている「食器類」と、「携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶」は引用商標が使用されている「卓上ポット」と、それぞれ同一又は類似の商品である。
そうすると、本件商標は、申立人の業務に係る上述の商品又は役務、すなわち、業務用洗剤、なべ類、衛生マスク、卓上ポット、食器類を含む各種食材や調理資材等の商品又はそれら商品の卸売又は小売に係る役務を表示するものとして需要者に広く認識されている引用商標と類似するものであって、その指定商品も申立人が引用商標を使用している商品又は役務と類似するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえる。
なお、本件商標は、上記2及び3のとおり、引用商標と類似の商標であって、引用商標の周知性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や希釈化(いわゆるダイリューション)を意図して登録出願したといえるものでところ、本件商標は、上述のとおり、商標法第4条第1項第10号に該当するものであり、同項第19号には「前各号に掲げるものを除く」とあることから、同項第19号には該当しない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわなければならない。

第5 商標権者の意見の要旨
商標権者は、上記第4の取消理由通知に対し、平成27年11月28日付けをもって、要旨以下のとおりの意見書を提出した。
なお、当審においては、平成27年12月4日付けをもって、上記第3の2の申立人による上申書の副本を商標権者に送付し、上記意見書に追加すべき意見の提出を求めたが、指定した期間内に追加の意見の提出はなかった。
1 類似性
本件商標は、コックの格好をした人物が、ワイングラスとフライパンを持った姿をマンガ風に描き、その下部に「Best Chef」の文字をあしらって合わせて一つの商標となるものである。そして、本件商標の全体を見た場合、主となるのは人物の姿であり、「Best Chef」の文字は従である。
一方、引用商標1及び2は、いずれもゴシック体による文字のみで構成されており、商標の主は文字である。
「Best Chef」という言葉は、英語で、ベスト(最高の)シェフ(料理長)という意味であり、特別な造語でもなく、ごく一般的に使用される言葉といえる。調理に関する商品に付随するキャッチコピーとしては、「ベストテイスト(最高の味)」、「ベストマテリアル(最高の素材)」、「ベストクォリティ(最高の品質)」、「ベストクッキング(最高の料理)」、「ベストホスピタリティ(最高のおもてなし)」などと同列であり、各業者が自由に使用できる程度の、商標と呼ぶに至らない、せいぜいキャッチコピーとして自由に使えるレベルの言葉である。
よって、本件商標は、引用商標1及び2について、まったく侵害していない。
次に、引用商標3は、黒地の楕円形の中に「Best Chef High Quality Taste」の文字が白抜きで配列され、下部には楕円形に沿った曲線が白抜きで描かれている。全体として、楕円形と文字で構成されており、絵はない。
引用商標3と本件商標を離隔的に観察した場合、おそらくは9割以上の人が違う物とみなすと思われる。両者で類似しているのは文字の一部分だけであり、しかも、「Best Chef」は一般的に使用される言葉であり、商標の重要部分ではない。
両者の商標を商標たらしめているのは、引用商標3については楕円形を基調とした意匠であり、本件商標においてはコック姿の絵である。
申立人は、乙第1号証の回答書において、「まず、そもそも、被通知人が『BEST CHEF』ブランドで販売している商品のほとんどは、本商標権の指定商品に該当しておらず、他方、貴殿が指摘するなべや食器類は『BEST CHEF』ブランドで販売していません。したがって、これらについて、本件商標の侵害が成立する余地はありません。」、また、「さらに、本商標権の標章と被通知人の『BEST CHEF』ブランドの標章は外観が大きく異なっており、同一又は類似とは言えません」と明言している。
このように、商標権者、申立人の双方が同一ではないと主張している以上、本件商標と引用商標3は、同一ではないといえる。
2 フリーライド、ダイリューションの嫌疑についての反論
取消理由通知書の「引用商標の周知性へのただ乗り希釈化を意図していたものとみるのが合理的である」との認定は、仮説にしかすぎず、これをもって取消理由とするのは性急である。
商標権者は、現在「高瀬物産」という商号の、個人経営の日用品雑貨等の販売業の創業を計画しており、そのための準備として「高瀬物産」、「TAKASE」などの商標登録を行ったのである。それらの行為は、正当な法律行為であり、不法行為や悪意はまったくない。
また、申立人の正式名称の高瀬物産株式会社のうちの「高」の字はいわゆる「はしご高」と呼ばれる文字で、商標権者が計画している「高瀬物産」の「高」とは文字が相違する。
加えて、「高瀬」という文字は通常に姓などにみられる一般的な文字であり、特殊なものではない。特許庁の商標検索で調べると「タカセ」と呼称する登録出願は15件ある。
3 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」の立証は、申立人が実際の被害を被り、それについての損害賠償訴訟、あるいは刑事告訴によって、裁判所で立証されるべきものである。

第6 当審の判断
1 取消理由について
本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものとする上記第4の取消理由は、妥当なものといえる。
2 商標権者の意見について
(1)類似性に関する商標権者の意見について
ア 商標権者は、本件商標について、図形に「Best Chef」の文字をあしらって合わせて一つの商標となるものであると主張し、本件商標の登録が取り消される理由はないと主張している。
しかしながら、商標の類否の判断においては、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,その構成部分全体によって他人の商標と識別されるから,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないが,取引の実際においては,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,必ずしも常に構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念されることがあることに鑑みると,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部を要部として取り出し,これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許される」と解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決)。
そして、本件商標は、別掲1のとおり、外観上、図形と「Best Chef」の欧文字が重なることなく、分離した態様で表されているのであり、図形部分が特定の親しまれたものではなく、特定の呼び方があるものでもないことを勘案するならば、文字部分と図形部分とを分離して観察することが取引上不自然といえるほど、両者が不可分的に結合しているものとは認められないのであって、その構成中の文字部分と図形部分それぞれが独立して自他商品・役務の識別標識として機能し得るとみるのが相当であり、文字部分が独立して自他商品・役務の識別標識として機能する場合には、引用商標と類似するといわざるを得ないのである。
したがって、本件商標について、図形と「Best Chef」の文字が合わさって一つの商標となるものであるとの商標権者の意見は、採用することができない。
イ 商標権者は、「Best Chef」という言葉が英語で「ベストシェフ」(最高の料理長)という意味であり、特別な造語でなく、ごく一般に使用される言葉であって、商標の重要部分ではないと主張し、本件商標の登録が取り消される理由はないと主張している。
しかしながら、自他商品・役務の識別力がある商標は造語に限られるわけではなく、商標法第3条第1項各号に該当するものでなければ、既成の語であっても自他商品・役務の識別力があるものといえる。そして、「Best Chef」の文字が「ベストシェフ」(最高の料理長)を意味するとしても、商標権者は、該文字が自他商品・役務の識別力がないものであることを立証しているわけではなく、また、職権をもって調査するも、自他商品・役務の識別力がないとすべき事情を見いだすこともできなかった。
しかも、商標権者は、意見書において上述のとおり主張しているが、甲第25号証及び甲第29号証ないし甲第31号証によれば、本件商標の商標権を根拠に、申立人やその取引業者に対して「BEST CHEF」の商標の使用の中止を求める通知書を送付していることが認められる。
以上の状況を踏まえると、上記商標権者の主張は、採用することができない。
ウ 商標権者は、乙第1号証の回答書における申立人の回答をあげたうえで、「商標権者、申立人の双方が同一ではないと主張している以上、本件商標と引用商標3は同一ではない」旨主張し、本件商標の登録が取り消される理由はないと主張している。
しかしながら、申立人は、本件登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当すると主張しているのであるから、件外の乙第1号証の回答書の記載をもってしては、商標権者の意見を受け入れることはできない。そして、上記第4の1のとおり、申立人は、業務用洗剤、なべ類、衛生マスク、卓上ポット、食器類を含め、外食産業に必要とされる食材や調理資材等の販売事業において引用商標を使用し、その結果、引用商標は、周知、著名となっている。しかも、本件商標の指定商品は、上記第4の4のとおり、これら引用商標が使用されてきた商品と同一又は類似のものであり、本件商標と引用商標とは、上記第4の2のとおり、外観、称呼及び観念を総合的に考察すると相紛れるおそれのある類似の商標である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するというべきであって、上記商標権者の意見は、採用することができない。
(2)フリーライド、ダイリューション、不正の目的等の商標法第4条第1項第19号該当性に関する商標権者の意見について
商標権者は、商標法第4条第1項第19号の要件に関するフリーライド、ダイリューション、不正の目的等についても、意見を主張している。
しかしながら、上記第4の4の取消理由通知において、申立人が主張した登録異議の申立ての理由のうち、商標法第4条第1項第19号に関しては、本件商標について、「商標法第4条第1項第10号に該当するものであり、同項第19号には『前各号に掲げるものを除く』とあることから、同項第19号には該当しない。」としたとおりであり、フリーライド、ダイリューション、不正の目的の存否にかかわらず、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、同項第19号には該当しないものである。
したがって、上記商標権者の意見は、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとの判断を左右するものではない。
3 むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものであり、しかも、本件商標の商標権者の意見も、上記2のとおり、いずれも採用することができないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり、決定する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標3


別掲3 職権調査によるインターネット情報及び新聞記事情報
(1)「高瀬物産の基本情報|食品輸入・物産INFO」のウェブサイトに、「高瀬物産の基本情報」の見出しの下に「高瀬物産には、高瀬オリジナルのシリーズとして、2ラインの商品ラインがあります。一つ目は、ベストシェフ。高瀬物産のベストシェフには、フード系と、ノンフード系があり、もう一方のブランドよりは低価格帯の商品がラインアップされています。ベストシェフの内訳です。まず、フード系は、コストパフォーマンスの高い商品を中心に幅広いジャンルをカバーするオリジナルブランド。ノンフード系は、調理器具(鍋・フライパン等)をはじめ、食器類(高級ワイングラス含む)、洗剤やクッキングシートなどの備品など、飲食店で必要とされる調理資材をフルラインで提供。」の記載がある(http://falungongnews.com/10086.html)。
(2)2013年4月29日付けの日本食糧新聞に、「高瀬物産、中野のミニ展示会盛況 独自商材売り込み」の見出しの下に、「高瀬物産練馬支店は4月17日、東京都中野区の中野サンプラザでミニ展示会『ワンデープレゼンテーション』を開催した。『春・夏おすすめメニュー提案会』をテーマに、味の素、味の素冷凍食品、ニチレイフーズ、日本水産、ハウス食品、マルハニチロ食品、理研ビタミン、日欧商事、エバラ食品工業、エム・シーシー食品など有力メーカー38社(52小間)が協賛し、新商品や新メニューを提案した。同支店管轄の居酒屋やイタリアレストランを中心とした料飲食店筋約700人が来場した。高瀬物産のオリジナル商品コーナー(14小間)では、生鮮3品や同社直輸入によるイタリアン食材、コーヒー、ワインなどPB品を含めて約800アイテムの豊富な品揃えで、試食や試飲を通して案内した。注目商材も並んだ。イタリア食材では直輸入するイタリアフィルマ社のパスタやリゾット、同国産の冷凍モッツァレラチーズ。中華商材ではPB品(ベストシェフ)の横浜ポーク焼売、エビチリ春巻、小龍包。生鮮品では、畜肉はフランスのプリムスブランドの鴨肉(フィレ・ド・カナール、フィレ・ド・カネット)、水産品は加熱殺菌した国内産のシラス、チリ産の冷凍ウニパック、天然キハダマグロ、天然マグロスライス、農産品は人気を集める各種のカット野菜を中心に中国産のむき玉ネギ、むきニンニクなど、差別化された独自商材を訴求した。」と記載されている。
(3)2010年6月21日付けの日本食糧新聞に、「高瀬物産、『タカセフードサービスエキスポ2010』開催 50周年飾る新たな船出」の見出しの下に、「外食用食品・酒類総合商社の高瀬物産は15?16日、東京・有楽町の東京国際フォーラム展示ホールで食品・酒類総合展示会『タカセフードサービスエキスポ2010』(TAKASE FOODSERVICE EXPO2010)を開催した。同社の2年に1度の総合展示会であり、今年7月に創業50周年を迎えるとあって『ありがとう50年 外食応援企業の新たなスタート!!』をテーマに国内外のメーカー570社(400小間)が協賛し、約1万アイテムの商材とともに、幅広い業態に向けた各種の商品やメニューを紹介・提案した。期間中は首都圏エリアを中心に末端外食ユーザーなど延べ1万2000人が来場した。・・・高瀬物産は1961年の創業以来外食業界をリードし、多大な貢献をしてきた。・・・また、『シェフィール』ブランドや『ベストシェフ』ブランドなど高瀬オリジナル商品のほか、新事業の生鮮3品(農産・水産・畜肉品)の取組みでは『タカセフレッシュマーケット』コーナーを設け、全国各地で水揚げされた鮮魚類、沖縄和牛、国産豚・鶏肉類の試食やブランド・有機野菜を一堂に揃え、一般野菜との食べ比べなどを実施した。」と記載されている。
(4)2009年9月9日付けの日本食糧新聞に、「高瀬物産、群馬で初の『業務用食品・酒類総合展示会』開催 地域市場活性化狙う」の見出しの下に、「高瀬物産(東京)は2日、高崎市内のビエント高崎で群馬県内では初の『業務用食品・酒類総合展示会-群馬?掘り起こし・新発見』を開催した。同社は全国系業務用専門商社として隔年ごとに東京で総合展示会を開催する一方、各エリアでミニ展示会を開いているが、今回は業務用流通の再編や同業他社進出が続く群馬エリアでの新たな市場の掘り起こし、新規顧客の開拓などを目的に開催した。全体で約2000アイテム以上の豊富な品揃えで対応した総合展示会には、群馬県内の外食ユーザー700人が来場した。・・・高瀬物産は国内外から取り寄せたパスタ・チーズ・オリーブ油・トマト加工品などイタリア食材や、生ハム・トリュフ・キャビア・フォアグラ・ワイルドマッシュルーム・トロールスモークサーモンなどの高級洋食材料を出展した。高瀬ブランド(PB品『ベストシェフ』)は各種魚介類(骨なし魚・ボイル貝シリーズ品)、デザート類など。また、同社が直輸入するフランス・イタリアワインなど高瀬オリジナルワインや中華食材と資材・包材類など約500アイテムを品揃えし、試食と試飲を兼ねて紹介した。」と記載されている。




異議決定日 2016-02-09 
出願番号 商願2014-87766(T2014-87766) 
審決分類 T 1 651・ 253- Z (W0321)
T 1 651・ 252- Z (W0321)
T 1 651・ 251- Z (W0321)
最終処分 取消 
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 林 栄二
中束 としえ
登録日 2015-02-27 
登録番号 商標登録第5744068号(T5744068) 
権利者 沼倉 喜悦
商標の称呼 ベストシェフ 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 
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