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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W10
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W10
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W10
審判 全部無効 商品(役務)の類否 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W10
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W10
管理番号 1313162 
審判番号 無効2014-890090 
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-11-27 
確定日 2016-03-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第5699663号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5699663号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5699663号商標(以下「本件商標」という。)は、「DNA ATHLETE」及び「ディーエヌエーアスリート」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成25年12月6日に登録出願された商願2013-096228号に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、平成26年5月31日に登録出願され、平成26年7月17日に登録査定、第10類「スポーツ選手向けの診断用遺伝子サンプル採取キット,スポーツ選手の遺伝子分析のために使用する医療診断用機械器具」を指定商品として同年9月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が請求の理由において引用する商標は、以下の4件であり(以下、これら商標を総称して「引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4422102号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成10年3月12日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同12年10月6日に設定登録されたものである。
2 登録第4441402号商標(以下「引用商標2」という。)は、「アスリート」の片仮名を横書きしてなり、平成10年3月12日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同12年12月22日に設定登録されたものである。
3 登録第5134553号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ATHLETE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年9月7日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同20年5月16日に設定登録されたものである。
4 登録第5134554号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成からなるものであり、平成19年9月7日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同20年5月16日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第64号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性
(1)請求人の商標の周知性について
請求人が使用をする商標のうち、「ATHLETE」、「アスリート」及びこれらを冠する商標は、請求人が製造販売する「ガイドワイヤー」の商標として、周知性を有しているとの判断が、すでに以下の裁判及び審判において示されている。
・平成21年(行ケ)第10411号審決取消請求事件(甲2の1)
・平成22年(行ケ)第10005号審決取消請求事件(甲2の2)
・無効2009-890051号商標登録無効審判事件(甲3の1)
・無効2009-890052号商標登録無効審判事件(甲3の2)
・無効2013-890072号商標登録無効審判事件(甲4の1)
・無効2013-890073号商標登録無効審判事件(甲4の2)
そして、以上の裁判及び審判においては、主として、下記アないし力の事実を認定することによって、請求人の商標が周知性を有しているとの判断を下している。
ア 請求人は、昭和56年に医療用機器の輸入、製造並びに国内販売を主な事業内容として設立された会社であり、循環器系分野の医療用機器を提供しており、心臓ペースメーカやEPカテーテル等のほか、ガイドワイヤーを取り扱っている(甲5)。
イ ガイドワイヤーとは、PCI(経皮的冠動脈形成術)と呼ばれる心臓カテーテル治療に用いられる医療機器である。ガイドワイヤーは、製造販売について薬事法上所定の申請及び承認が必要な医療機器であり、PCIを行う病院に直接販売する方法と、販売代理店経由で販売する方法がある。
請求人は、全国に26か所の営業拠点を有し、販売代理店経由を含め、PCIを行う病院に対し、製品の紹介・販売・サポートを行っている。そして、全国に亘る大学の付属病院等を主要な納入先としている(甲2、甲3、甲5及び甲6)。
ウ 請求人は、「ATHLETE」又は「アスリート」の文字からなる商標のほか、「ATHLETEPLUS」、「アスリートマジック/ATHLETEMAGIC」、「アスリートジーティ/ATHLETEGT」、「ATHLETEEEL/アスリートイール」等の文字からなる商標(計21件)について、指定商品を第10類「医療用機械器具」として登録を受けている(甲34の1ないし21)。
エ 請求人は、平成7年頃から、ガイドワイヤーに「ATHLETE」、「ATHLETEPLUS」、「ATHLETE eel」、「ATHLETE GT」、「ATHLETE Wizard」、「アスリートプラス」、「アスリート スレンダー」、「アスリート GT」、「アスリート WIZARD」など、「ATHLETE」又は「アスリート」の文字を冠した商標(以下、これらを一括して単に「請求人商標」ということがある。)を付し、これを「ATHLETE」、「アスリート」シリーズとして製造販売しており、平成7年以降継続して、これら商品についてのカタログ等を発行している(甲7の1ないし11、甲11及び甲35ないし甲54)。
オ 株式会社矢野経済研究所の調査資料や、株式会社アールアンドディ作成の「医療機器・用品年鑑」の年度毎の市場分析によれば、請求人は、ガイドワイヤーの販売本数で、平成8年から平成12年まで約15%ないし25%のシェアを占めていたこと、独占販売契約の打ち切りによる自社製品への切り替えのため、平成13年には販売が減少したが、平成14年以降平成19年まで約5%ないし8%のシェアを占め、その後平成24年に至る間も約5%ないし7%のシェアを占めてきたこと、請求人は、平成8年以降、平成13年を除き、ガイドワイヤーの販売本数で、毎年上位5位以内にランキングされていること、が認められる(甲12ないし甲24及び甲55ないし甲61)。
カ 請求人商標を付した請求人のガイドワイヤーは、平成13年日本心血管カテーテル治療学会等の学会誌に掲載されたのをはじめ、学会予稿集や医学雑誌に多数回掲載されている(甲25ないし甲32及び甲62ないし甲64)。
そして、以上の裁判及び審判においては、主として、上記アないし力の事実を認定することによって、遅くとも平成19年2月には、請求人の商標が周知性を獲得し、その後も、周知性が維持されているとの判断が下されている。
なお、以上の裁判及び審判の審理終結日のうち、直近のものは、平成26年2月20日であり、未だ1年も経過していない。また、請求人は、今も、「ATHLETE」、「アスリート」シリーズの製造販売を継続している。
したがって、以上の裁判及び審判によって裏付けられた「ガイドワイヤー」の商標としての周知性は、今も継続しているとすることが極めて妥当な判断であると認められる。
さらに、商標法第4条第1項第10号にいう「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」については、我が国において、全国民的に認識されていることを必要とするものではなく、その商品の性質上、需要者が一定分野の関係者に限定されている場合には、その需要者の間に広く認識されていれば足りるものである。
そして、ガイドワイヤーは、前述の裁判や審判でも認定されているとおり、一般に市販されている商品ではなく、特定の医療関係者に販売元から直接又は問屋を通して売買されるものであって、その需要者は、医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者に限定されると認められる。
以上に述べた事実から、請求人商標は、請求人がガイドワイヤーについて使用する商標として、本件商標の出願前から、すでに日本国内の取引者・需要者において広く認識されるに至っており、また、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(2)本件商標と請求人商標との類否
ア 商標の類否判断
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
しかるところ、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されない。他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
イ 本件商標を構成する「ATHLETE」及び「アスリート」の文字は「運動選手、競技者」等、「DNA」及び「ディーエヌエー」の文字は遺伝子の本体となる「デオキシリボ核酸」を意味する普通名詞である。
そして、「DNA」及び「ディーエヌエー」の部分は、本件商標の指定商品が「スポーツ選手向けの診断用遺伝子サンプル採取キット」及び「スポーツ選手の遺伝子分析のために使用する医療診断用機械器具」であって遺伝子に関連した商品であることから、その指定商品との関係において、識別力を有しない文字と認められる。
さらに、前記(1)のとおり、本件商標の一部を構成する「ATHLETE」及び「アスリート」の部分が、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者に対し、請求人の商品を示すものとして周知性を獲得し、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
ウ そうすると、本件商標からは、「DNA ATHLETE/ディーエヌエーアスリート」全体としてのみならず、「ATHLETE/アスリート」の部分からも称呼及び観念が生じるということができる。そして、後者の「ATHLETE/アスリート」は、請求人の使用商標のうち「ATHLETE」及び「アスリート」と同一の文字からなるものであり、両者とも「アスリート」という同一の称呼が生じ、「運動選手、競技者」という同一の観念が生じるから、その外観を考慮しても、両者は類似する。
したがって、本件商標がその指定商品「スポーツ選手向けの診断用遺伝子サンプル採取キット、スポーツ選手の遺伝子分析のために使用する医療診断用機械器具」に使用されるときは、本件商標中の「ATHLETE/アスリート」の文字部分は、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者において、周知の請求人の使用商標との出所を誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。
エ しかるところ、1個の商標から2個以上の呼称、観念を生じる場合には、その1つの称呼、観念が登録商標と類似するときは、それぞれの商標は類似すると解すべきである(前掲最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決参照)。
オ よって、本件商標から生じる称呼及び観念の1つである「アスリート」と請求人商標とが類似する以上、本件商標は、請求人の使用商標と類似するものである。
(3)商品の類否
本件商標の指定商品は、第10類「スポーツ選手向けの診断用遺伝子サンプル採取キット、スポーツ選手の遺伝子分析のために使用する医療診断用機械器具」であるところ、請求人が請求人商標を付して周知性を獲得したのは、ガイドワイヤーである。両者は、医療という用途に使用され、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者が共通することから、類似の関係にある。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、請求人がガイドワイヤーに使用して周知性を獲得した請求人商標と類似し、商品においても類似するから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標と引用商標との類否
前記1(2)イで述べたのと同様に、本件商標のうち「ATHLETE/アスリート」の部分だけを、引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものというべきであるから、本件商標からは、「DNA ATHLETE/ディーエヌエーアスリート」全体としてのみならず、「ATHLETE/アスリート」の文字部分からも称呼及び観念が生じるということができる。
他方、引用商標からは「アスリート」の称呼が生じ、「運動選手、競技者」等の観念が生じる。
そうすると、本件商標のうち「ATHLETE/アスリート」の文字部分は、引用商標と同一の「アスリート」という称呼が生じ、「運動選手、競技者」という同一の観念が生じるから、両者は類似する。
そして、本件商標が医療用機械器具に使用されるときは、本件商標中の「ATHLETE/アスリート」は、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者において、引用商標との出所を誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。
よって、本件商標から生じる称呼及び観念の1つである「アスリート」と引用商標とが類似する以上、本件商標は、引用商標と類似するものである。
(2)商品の類否
本件商標の指定商品は第10類「スポーツ選手向けの診断用遺伝子サンプル採取キット、スポーツ選手の遺伝子分析のために使用する医療診断用機械器具」であるところ、引用商標の指定商品は第10類「医療用機械器具」である。「スポーツ選手向けの診断用遺伝子サンプル採取キット、スポーツ選手の遺伝子分析のために使用する医療診断用機械器具」も「医療用機械器具」も、いずれも医療という用途に使用され、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者が共通することから、類似の関係にある。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似し、その指定商品においても類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
3 まとめ
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するため、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)請求人商標の周知性
ア 請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、医療用機器の輸入、製造並びに国内販売を主な事業内容として1981年2月6日に設立された会社であり、循環器系分野の医療用機器を提供しており、心臓ペースメーカやEPカテーテル等のほか、ガイドワイヤーを取り扱っている(甲5及び甲6)。
(イ)ガイドワイヤーとは、PCI(経皮的冠動脈形成術)と呼ばれる心臓カテーテル治療に用いられる医療機器である。PCIとは、腕や脚の血管からガイドワイヤーを心臓まで引き通して、そのガイドワイヤーをガイドとしてバルーンカテーテルを心臓の冠動脈まで押し込み、バルーンを膨らますことで冠動脈の塞栓等を解消する手術方法である。ガイドワイヤーは、薬事法上、製造販売には独立行政法人医薬品医療機器総合機構への申請及び厚生労働大臣の承認が必要な医療機器であり、PCIを行う病院に直接販売する方法と、販売代理店経由で販売する方法とがある。請求人は、全国に26か所の営業拠点を有し、販売代理店経由を含め、PCIを行う病院に対し、製品の紹介・販売・サポートを行っており、全国に亘る大学の付属病院等を主要な納入先としている(甲2の1及び2、甲3の1及び2並びに甲5及び甲6)。
(ウ)請求人は、引用商標のほか、「ATHLETEPLUS」、「アスリートマジック/ATHLETEMAGIC」、「アスリートジーティ/ATHLETEGT」、「ATHLETEEEL/アスリートイール」等の「ATHLETE」又は「アスリート」の文字を冠した構成からなる商標(計21件)について、指定商品を第10類「医療用機械器具」として登録を受けている(甲34の1ないし21)。
(エ)請求人は、平成7年頃から、ガイドワイヤーに引用商標を始め、「ATHLETEPLUS」、「ATHLETE eel」、「ATHLETE GT」、「ATHLETE Wizard」、「アスリートプラス」、「アスリート スレンダー」、「アスリート GT」、「アスリート WIZARD」等、「ATHLETE」又は「アスリート」を冠した商標を付し、これを「ATHLETE」、「アスリート」シリーズとして製造販売しており、平成7年以降継続して、これら商品についてのカタログ、保険償還価格表等を発行している(甲2の1及び2、甲3の1及び2並びに甲7の1ないし11、甲11の1ないし10及び甲35ないし甲54)。
(オ)株式会社矢野経済研究所の調査資料や、株式会社アールアンドディ作成の「医療機器・用品年鑑」の年度毎の市場分析によれば、請求人は、ガイドワイヤーの販売本数で、平成8年から平成12年まで約15%ないし25%のシェアを占めていた。その後、独占販売契約の打ち切りによる自社製品への切り替えのため、平成13年は販売本数が減少したが、平成14年以降平成19年まで約5%ないし8%のシェアを占め、その後も平成24年に至るまで約5%ないし7%のシェアを占めてきた。請求人は、平成8年以降、平成13年を除き、ガイドワイヤーの販売本数で、毎年上位5位以内にランキングされている。上記調査資料においても、請求人が「ATHLETE」、「アスリート」シリーズのガイドワイヤーを展開していることが記載されている(甲12ないし甲24及び甲55ないし甲61)。
(カ)「ATHLETE」又は「アスリート」が冠された商標を付した請求人のガイドワイヤーは、平成13年日本心血管カテーテル治療学会等の学会誌に掲載されたのをはじめ、学会予稿集や医学雑誌に多数回掲載されている(甲25ないし甲32及び甲62ないし甲64)。
イ ところで、商標法第4条第1項第10号にいう「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」については、我が国において、全国民的に認識されていることを必要とするものではなく、その商品の性質上、需要者が一定分野の関係者に限定されている場合には、その需要者の間に広く認識されていれば足りるものである(甲2の1及び2)。
そして、ガイドワイヤーは、上記ア(イ)のとおり、一般に市販されている商品ではなく、特定の医療関係者に販売元から直接又は問屋を通して売買されるものであって、その需要者は、医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者に限定されると認められる。
ウ 以上を総合すると、「ATHLETE」及びこれを冠する商標(以下、これを「請求人の使用商標」という。)は、本件商標の登録出願時には既に、請求人の業務に係る商品「ガイドワイヤー」について使用する商標として、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(2)本件商標と請求人商標との類否
ア 本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、その構成中の「DNA」及び「ディーエヌエー」の文字は「デオキシリボ核酸。遺伝子の本体。」を意味し、同じく「ATHLETE」及び「アスリート」の文字は「運動選手。特に、陸上競技の選手。」を意味する語として一般によく知られている語である(例えば、株式会社岩波書店「広辞苑第六版」参照)ばかりでなく、「DNA」と「ATHLETE」との間に半文字分程のスペースがあることから、本件商標は上記2語からなるものとして容易に認識し把握されるものといえる。
そして、「DNA」及び「ディーエヌエー」の文字部分は、本件商標の指定商品が遺伝子に関連した商品であることとの関係において、自他商品の識別力がないか極めて弱いものというべきである。
加えて、本件商標の構成中の「ATHLETE」及び「アスリート」の文字は、前示のとおり、請求人の業務に係る商品「ガイドワイヤー」について使用する商標として、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者の間に広く認識されていることから、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「ATHLETE」及び「アスリート」の文字部分を自他識別標識たる要部として分離抽出して他人の商標との類否を判断することも許されるものというべきであり、これより単に「アスリート」の称呼及び「運動選手、競技者」の観念をも生じるものといわなければならない。
イ 他方、請求人の使用商標のうちの「ATHLETE」又は「アスリート」の文字からなる商標は、その構成文字に相応して「アスリート」の称呼及び「運動選手、競技者」の観念を生じること明らかである。
ウ してみれば、本件商標と請求人の使用商標「ATHLETE」又は「アスリート」とは、外観において異なるものの、称呼及び観念を共通にするものであるから、商品の出所について誤認、混同を生じさせるおそれがある類似の商標といわなければならない。
(3)本件商標の指定商品と請求人の使用商標における使用商品の類否
本件商標の指定商品と請求人の使用商標が使用された商品である「ガイドワイヤー」とは、いずれも医療に用いられるものであり、需要者である医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者が共通することから、同一又は類似の商標が使用された場合には、商品の出所について誤認し混同を生じるおそれがあり、互いに類似するものといえる。
(4)小括
以上、本件商標は、請求人がガイドワイヤーに使用して周知性を獲得した請求人の使用商標と類似し、その指定商品も請求人の使用商標における使用商品と類似するから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標について
ア 上記1(2)アで述べたのと同様に、本件商標は、その構成中の「ATHLETE」及び「アスリート」の文字部分から「アスリート」の称呼及び「運動選手、競技者」の観念を生じるものである。
イ 他方、引用商標1は、別掲1のとおり、その冒頭の文字「Λ」が「A」の文字から横棒を除外した形状となっているところ、英語の成語中の「A」の文字を「Λ」とロゴ化することが一般に広く行われていることからすれば、引用商標1も該「Λ」が「A」を表し、全体として「ATHLETE」の文字を表したものと容易に看取されることから、その構成文字に相応して「アスリート」の称呼を生じ、「運動選手、競技者」の観念を生じるものといえる。
引用商標2及び3は、それぞれの構成文字に相応して「アスリート」の称呼及び「運動選手、競技者」等の観念を生ずること明らかである。
引用商標4は、別掲2のとおり、その冒頭部分がかなり図案化されているものの、「A」を装飾したものとして認識し把握されることも少なくなく、全体をもって「ATHLETE」の文字を表したものとして看取されることから、「アスリート」の称呼及び「運動選手、競技者」の観念を生じるものというのが相当である。
(2)本件商標及び引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、外観における構成文字及び構成態様において差異を有するとしても、「ATHLETE」及び「アスリート」の文字部分より生じる「アスリート」の称呼を同じくし、いずれも「運動選手、競技者」の観念を生じるものであるから、両者は、称呼及び観念を共通にする類似の商標といわなければならない。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否
本件商標の指定商品は、医療用機械器具の範疇に属する商品と認められるから、引用商標の指定商品「医療用機械器具」とは、同一又は類似の商品といえる。
(4)小括
以上、本件商標は、引用商標と類似し、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標1)



別掲2(引用商標4)



審理終結日 2015-12-03 
結審通知日 2015-12-08 
審決日 2016-02-04 
出願番号 商願2014-44264(T2014-44264) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (W10)
T 1 11・ 25- Z (W10)
T 1 11・ 261- Z (W10)
T 1 11・ 264- Z (W10)
T 1 11・ 262- Z (W10)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日向野 浩志太野垣 卓大橋 良成 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 小松 里美
堀内 仁子
登録日 2014-09-05 
登録番号 商標登録第5699663号(T5699663) 
商標の称呼 ディーエヌエーアスリート、デイエヌエイアスリート、ディーエヌエー、デイエヌエイ、アスリート 
代理人 廣瀬 隆行 
代理人 猪狩 充 
代理人 関 大祐 

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