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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X07
管理番号 1313135 
審判番号 取消2015-300380 
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-05-28 
確定日 2016-03-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第5260051号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5260051号商標の指定商品及び指定役務中、第7類「金属加工機械器具」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5260051号商標(以下「本件商標」という。)は,「PRS」の欧文字を標準文字で表してなり,平成21年3月27日に登録出願,第7類「金属加工機械器具」及び第40類「金属の加工,金属加工機械器具の貸与」を指定商品及び指定役務として,平成21年8月28日に設定登録されたものである。
なお,本件の審判請求の登録日は,平成27年6月10日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第7類「金属加工機械器具」(以下「取消請求商品」という場合がある。)について,この審判の請求の登録前3年(以下「要証期間」という。)以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の主張等
被請求人は,答弁書において,本件商標について使用事実があること,及び請求人は,本件審判において商標登録の取消を求める法律上の利益を享受し得る請求主体としての適格を欠くものであるとの主張をしている。
しかしながら,請求人が提出している証拠を検討しても,使用商標を取消請求商品に使用している事実を見出す事はできないし,また請求人は,審判請求適格を具備している。
(2)本件商標の使用について
ア サイジング加工について
被請求人は,乙第1号証を示した上で,商標「P.R.S.」(以下「使用商標」とする)を金属加工に用いられるサイジング工法の名称で使用している旨を主張し,また乙第2号証を示した上で,当該工法及び当該工法に用いられる金属加工機械器具,並びに当該工法を用いて製造した製品を展示会に出展した事を主張している。
この主張において,被請求人が使用商標をサイジング工法の名称として使用している事は認められる。しかしながら,金属の加工技術についての使用なのか否かは疑問が残る。このサイジング工法は,金属加工においても実施される技術ではあるが,金属以外,例えば木材やプラスチック等の加工においても実施されている技術であるから,これを金属加工とまで特定する事はできない。
イ 金属加工機械器具の商品について
乙第1号証及び乙第2号証において,使用商標を,本件審判の対象である「金属加工機械器具」について使用している点については,一切の使用事実が示されていない。
この点について,被請求人は,「被請求人が使用商標「P.R.S.」は,金属加工の工法名のみならず,同工法を実施するための「金属加工機械器具」の名称としても理解されるに至っている」と主張し,その根拠として,乙第1号証中の図には,金属を加工するために用いられる器具が示されている事,及び被請求人は特許第4316248号において,柱体保持装置の製造装置について特許を取得している事を述べている。
しかしながら,金属の加工(成形,切削,接合,メッキ等)に際しては,各用途に応じた汎用的な金属加工機械器具が使用されるものであり,金属加工の名称が,その金属加工を行うための装置の名称として理解されることはない。
すなわち,乙第1号証に記載されている加工技術が仮に金属加工技術であるとしても,当該サイジング加工に際しては,何らかの機械器具(通常は「金属プレス装置」)を使用するであろうことまでは理解できるかもしれないが,その使用する機械器具が「P.R.S.」という名称の器具であるという事までは,理解されるものではない。
さらに,被請求人は,特許に基づいて金属加工の工法と金属加工機械器具とが表裏一体の関係にある事を主張しているが,これは技術的特徴の関連性が認められているだけであって,商取引における商品と役務の関連性を示すものではない。そもそも本件審判では,被請求人が,実際に金属加工機械器具について,使用商標を使用しているか否かの事実が判断されるべきであって,役務と商品との関連性を参酌する必要性すら存在しない。被請求人が主張する商品と役務との関連性は,商品と役務との類似関係において判断されるべき要素であって,本件審判で判断されるべき要素ではない。
思うに,被請求人が,商品と役務との関連性を主張しているのは,乙第1号証中の図に基づく「金属製のパイプ以外の部材は,一見して明らかなとおり金属を加工するために用いられる器具である」との主張を基礎とするものと思慮する。
しかしながら,そもそも,この図1は,金属を加工しているのか,プラスチックを加工しているのか,あるいは紙を加工しているのかも分からず,さらに当該器具がどのような器具かも分からない状態であるから,これを以って,工法の名称が加工器具の商標であるとの主張は,あまりにも根拠に乏しく失当である。
よって,今般の乙第1及び2号証を検討しても,被請求人が金属加工機機械器具に,本件使用商標を使用していると認める事はできない。
なお,被請求人は,ドコモやAUの例を出して役務と商品の関係を主張しているが,そもそもこれらの通信事業者は,携帯電話の通信役務のみならず,商品としての携帯電話機も販売(商標の使用)している。このことは,携帯電話機の購入に際して,商品の包装に商標が表示されている事からも明らかである。
ウ 金属加工の役務について
被請求人は,乙第1号証に基づいて,工法の名称として使用している「P.R.S.」が,役務「金属の加工」についての商標の使用であると主張している。
しかしながら,役務とは「他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」であることからすれば,工法の名称としての使用が,直ちに役務についての使用になるものではない。役務についての使用であるためには,実際に金属の加工役務について,使用商標を使用している事実が必要であるところ,この事実を推認できる証拠(加工役務についてのパンフレットなど)は存在しない。すなわち,この乙第1号証は,自社製品の加工に際しての技術を説明しているにすぎず,金属加工を業として行っていることを示すものではない。
したがって,被請求人は,金属加工の役務についてさえ,使用商標を使用していると認める事ができない。
(3)使用商標について
本件商標は,「PRS」であるところ,被請求人がサイジング工法について使用しているのは「P.R.S.」であり,両者を同一の商標という事ができない。
この点について,被請求人は,両者において相違するピリオド「.」は,文章の終わりを示す記号であり,それ自体言語上の意味合いは有しないとして,登録商標と使用商標とは社会通念上同一であると主張している。
しかしながら,社会通念上同一の商標と認められるのは,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」,「外観において同視される図形からなる商標」,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標」などであり,本件のように登録商標に新たな構成記号を付加した商標は,もはや同一の商標という事ができない。
一般に,各文字の後に付加しているピリオドは,ローマ字において頭文字を使った略語,又は単語を短くした場合に使用される記号として理解されているので,使用商標「P.R.S.」からは,単語の頭文字をとって組み合わせた,何らかの特定の意味を有する語句として理解される。本件においては,「Pressure Reproduction Sizing」(面圧再現型サイジング)の略字として理解されるので,使用商標に接した需要者・取引者等は,本来の語句である面圧再現型サイジングの如き意味合いを連想することができる。
一方で,ピリオド「.」が存在しない単なるローマ字3文字からなる本件商標「PRS」は,特定の意味を有しない造語,ないしは単なる記号として理解されるものであり,直接的にも間接的にも面圧再現型サイジングの意味合いが理解されることはない。かかる本件商標に接した需要者,取引者等は,何らかの品番として理解するにすぎない。
このことは,例えば電機メーカーとして周知の商標「SONY」と,各文字にピリオドを付加した「S.O.N.Y」とでみれば,両者は類似の範疇かも知れないが,略字の意味合いの有無において,社会通念上同一商標とみることができない。同じように商標「AU」と「A.U.」,商標「MAC」と「M.A.C」等は,何れも同一商標と判断するには無理がある。
よって,被請求人が使用している「P.R.S.」は,使用商標「PRS」とは社会通念上同一ではないので,被請求人における「金属加工機械器具」についての登録商標の使用を認める事ができない。
(4)請求人適格について
被請求人は,法人登記簿を添付の上,請求人が実在しない旨を主張し,本件審判請求人適格を有しない旨を主張している。
しかしながら,請求人における「東京都台東区上野3-18-1」は,本件審判請求人の居所であって,営業所としての登記は行っていないものの,法人自体が実在する事は,被請求人が提出した法人登記簿のとおりである。
そして,そもそも本件審判は,「何人」にも認められるものであるから,本件審判において,請求人について利害関係が要求されるべきものではない。すなわち,本件不使用取消審判制度は,不使用の登録商標の累積により,他人の商標選択の幅の狭小化,特許庁における審査負担増・審査遅延等の事態を抑制する手段としての公益的重要性が高い上,さらに平成八年の一部改正で更新時の使用状況の審査を廃止したことにより,直接的に不使用商標の取消に関与することができなくなった等の観点から,利害関係を要求すること無く,何人にも認められた筈であり,何人も請求人適格を有している。
確かに,請求人が,被請求人を害することだけを目的とする様な場合であれば,権利濫用として取消が認められない可能性はあるかもしれないが,請求人は,本件商標の使用を希望しており,その上で,被請求人が使用していない商標の取消を請求したものであるから,権利乱用に当たるものではない。よって,請求人は,請求適格を備えている。
(5)最後に
上記のとおり,被請求人が使用している商標は「P.R.S.」であって,これは本件商標「PRS」とは異なる。さらに,この「P.R.S.」を使用しているのは,サイジング加工の技術の名称であって,金属加工機械器具でもなければ,金属加工の役務でもない。
被請求人は,要証期間内に日本国内において,取消請求商品「金属加工機械器具」について,実際に本件商標を使用していることを証明していないから,その商標登録の取消しを免れない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,答弁の理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
答弁の理由
(1)請求人の主張等
本件商標については,以下に述べるとおりの使用の事実がある。また,本件審判の請求にあっては,請求人は,本件審判において商標登録の取消しを求める法律上の利益を享受し得る請求主体としての適格を欠くものである。
(2)本件商標の使用事実
ア 本件商標が使用される商品及び役務
被請求人は,商標「P.R.S.」を金属加工に用いられるサイジング工法の名称として使用している(乙1)。また,被請求人は,当該工法及び当該工法に用いられる金属加工機械器具,並びに,当該工法を用いて製造した製品を,2011年及び2012年の展示会へ出展している(乙2)。乙第2号証の5にて示す「出展ブース(当該工法の実施品)写真」左上方にあるパネル記載の説明文が,乙第2号証の6にて示す「ブースにて使用されたパネル原稿」における「キャニング技術」の説明に対応する。
したがって,これらの証拠が示すとおり,本件審判の請求の登録前より,商標「P.R.S.」が,「金属の加工」役務について使用されていることは明白であり,これについては請求人も審判請求書において認めるところである。なお,乙第1号証が公衆に利用可能となった日付については,請求人が同証拠の内容を指摘し,被請求人による商標「P.R.S.」の使用を認めていることからすれば,これが要証期間内に公開されたことは明らかである。
また,被請求人の使用商標「P.R.S.」は,金属加工の工法名のみならず,同工法を実施するための「金属加工機械器具」の名称としても理解されるにいたっている。すなわち,請求人が指摘する被請求人のウェブサイト(乙1)においては,一見したところでは,工法の名称として商標「P.R.S.」が使用されており,当該使用は,役務「金属の加工」についての商標の使用であることに疑いの余地はない。これに加え,同ウェブサイトにおいては,商標「P.R.S.」の表示とともに,図を用いて当該金属加工の工程を説明している。そして,同説明に用いられる図の内,金属性のパイプ以外の部材は,一見して明らかなとおり,金属を加工するために用いられる器具である。
したがって,被請求人のウェブサイトの内容からして,使用商標「P.R.S.」は,「金属の加工」の役務のみならず,「金属加工機械器具」についても使用されている。よって,商標「P.R.S.」は,当該役務にて用いられる「金属加工機械器具」の商標としても理解されるものである。
また,被請求人が提供する「P.R.S.」なる金属加工の工法及び同工法の提供に伴い使用される金属加工機械器具に関しては,被請求人がその製造方法及び製造装置について特許を得ている(特許第4316248号)。同特許は,被請求人が提供する「P.R.S.」なる金属加工の工法について,「物の発明」及び「物を生産する方法の発明」の双方について特許権を得たものである。当該特許の内容からしても,被請求人の提供に係る「P.R.S.」なる金属加工の工法(製造方法)と金属加工機械器具(製造装置)は表裏一体の関係にあり,物を生産する方法の発明の実施は,当該物の発明,即ち,「金属加工機械器具」の実施と同視でき,その逆もまた同じである。この点からしても,「P.R.S.」なる金属加工の工法と,その実施に際して専用的に用いられる「金属加工機械器具」とは密接不可分の関係にある。
したがって,被請求人が提供する所定の金属加工機械器具を用いた金属加工役務について使用される商標「P.R.S.」は,同役務並びに同役務の提供に伴い使用される「金属加工機械器具」の総称として理解される標識であって,同金属加工の役務のみならず,同役務の提供に際して必須で用いられる金属加工機械器具の商標とも理解されるものである。
この点,例えば,「ドコモ」や「AU」,あるいは,「ソフトバンク」なる商標が,携帯電話の通信役務について使用される商標である場合であっても,需要者・取引者は,「ドコモの携帯電話」や「AUのスマートフォン」などと呼称し,これらの商標を,携帯電話機やスマートフォンなどの通信役務の提供に際して必須で用いられる商品の商標としても認識する。
すなわち,役務の提供において密接不可分に用いられる商品と当該役務との関係においては,外形的には当該役務についての商標の使用と理解される場合であっても,需要者,取引者においては,役務について使用される商標としての認識が,当該役務に必須で用いられる商品へ波及し,同商品の商標としても理解するにいたる。この場合,需要者,取引者においては,役務についての商標の使用であるか,あるいは,(同役務の提供に際して用いられる)商品についての商標の使用であるかを明確に区別する意識は後退し,外形的には役務について使用される商標と認識されるような場合であっても,本質的には,当該役務及び同役務の提供に用いられる商品の双方の商標として認識していると考えることが自然である。
また,ある役務と,これに密接不可分に用いられる商品の関係があり,役務についての商標の使用が,当該役務に用いられる商品についての使用とも認識される場合に,そのような場面で使用される商標には,商品についての商標としても保護すべき信用が化体しているというべきである。
したがって,上記の関係にある商品と役務について使用される商標には,商品及び役務の双方の商標として保護すべき信用が存在するため,不使用による取消審判請求制度の制定趣旨に鑑みれば,そのような商品についての商標登録の取り消しは認められるべきではない。
よって,上記考察を本件に敷衍すれば,被請求人による「金属の加工」役務の提供に伴っては,必須で用いられる「金属加工機械器具」が存在し,本質的には,使用商標「P.R.S.」は,当該役務及び商品に用いられる総称として理解される標識である。そして,請求人も自認するとおり,被請求人は,使用商標を金属の加工役務について使用していることは明らかであるから,使用商標は,当該役務の提供に伴い一体不可分に用いられる「金属加工機械器具」についての商標としても,保護すべき信用が化体している。
よって,「金属加工機械器具」について使用される本件商標にも信用が化体している事実は,本質的には,本件商標が「金属加工機械器具」についても使用されていることの証左である。
イ 商標の社会通念上の同一性
本件商標は,標準文字をもって「PRS」の構成からなる。そして,被請求人が使用する商標は「P.R.S.」である。これらの商標は,各文字間と語尾における3つのピリオド(.)の有無において相違するが,社会通念上同一の商標と考えることが妥当である。すなわち,被請求人の使用商標に含まれるピリオド(.)は,文章の終わりを示す記号ではあるが,それ自体原語上の意味合いは有しない。また,本件商標及び被請求人の使用商標のいずれもが,「ピーアールエス」と呼称されることは明白である。
よって,対比するこれらの商標は,標章から生じる称呼及び観念において同一である。したがって,本件商標「PRS」と使用商標「P.R.S.」とは,社会通念上同一の商標である。
ウ 小括
以上より,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,本件商標の指定商品中「金属加工機械器具」について本件商標を使用している。
(3)本件審判の請求人の請求人適格
商標法第50条第1項の規定に従えば,同規定に基づく審判の請求は「何人も」行うことができる。一方,審判便覧においては,「請求人適格を「何人」にすることとしても,当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には,その請求は,権利濫用として認められない。」とされ,また,裁判例においては,「商標法第50条(中略)よる商標登録の取消審判は,不使用商標登録の取消しを求める法律上の利益を有する場合にのみ請求することができると解される」(最高裁平成4年11月20日 平成4年(行ツ)125号審決取消請求事件)として,同利益を認めるべき具体的基準を示したものがある。
上記取扱い及び裁判所での判断は,商標権者を害することのみを目的とした,嫌がらせ的な不使用取消審判については,権利の濫用として認められないとの趣旨から規定又は判断されたものと考える。そして,審判請求人自体が存在しない,すなわち,請求人が法人である場合に,同法人が現実に存在しない(法人登記がなされていない,又は,請求人と現実の法人の名称及び住所が著しく相違する)場合には当然に,不使用商標登録の取消しを求める法律上の利益を享受し得る主体が存在しないのであるから,そのような審判請求は認められるべきではない。
当該点に関し,被請求人にて,請求人の法人登記に関する情報を調査するため,現在事項全部証明書の請求を行ったところ,法務局において,請求人の住所上に有限会社フロンティアなる法人が登記されている事実は確認できない。
一方,被請求人は,上記法人登記の調査を行った法務局にて,有限会社フロンティアなる法人が,「東京都台東区東上野二丁目18番7号」に存在すること(乙第3号証),並びに,発見した当該法人の住所と請求人の住所を調べる限りは,これらの実際の所在地は,単なる誤記とは考えられない程大きく異なることを地図上において確認した。
そして,審判便覧に従えば,「審判請求書の補正は,要旨を変更するものであってはならず,当事者についての記載であっても請求書の要旨を変更する補正は認められない。また,請求人の補正は,例えば誤記の訂正のような,「請求人の同一性」が失われないような場合を除いて要旨変更となる」とされている。
してみれば,請求人の住所と乙第3号証記載の住所とは所在が著しく異なり,それぞれの「有限会社フロンティア」に同一性は認められない。また,明らかに異なるこれらの住所の差異を更生する補正は要旨変更であり認められない。
したがって,審判請求書記載の住所所在の有限会社フロンティアは存在しないのであるから,請求人は,本件審判の請求主体としての地位を有しない。よって,本件審判は成立せず,却下されるべきものである。

第4 当審の判断
1 不使用取消審判について
商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判にあっては,その第1項において,「継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標・・・の使用をしていないときは,何人も,その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」旨規定されている。
また,その第2項において,「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」旨規定されている。
2 被請求人の請求人適格の主張について
被請求人は,請求人の「現在事項全部証明書」を提出し,「請求人の住所上に有限会社フロンティアが実在しないから,請求人は,本件審判において商標登録の取消を求める法律上の利益を享受し得る請求主体としての適格を欠くものである。」旨の主張をしている。
しかしながら,請求人の法人が実在する事は,当該「現在事項全部証明書」によって認められるものであって,また,営業所などの登記はされていないものの,請求人のいう「東京都台東区上野3-18-1」が請求人の居所であるとの同人の主張も特に疑うべきところがないものであるから,請求人は,請求人適格を具備していると認めて差し支えないものである。
よって,被請求人の主張は,採用することができない。
3 被請求人の提出した証拠について
(1)乙第1号証は,被請求人のウェブサイトであるところ,これには,「製品・技術情報」の見出しの下,「計測・組立」の項目に,「三五では触媒をパイプに詰めていくサイジング工法に高い技術を保有しています。」,及び「サイジング/P.R.S.(Pressure Reproduction Sizing:面圧再現型サイジング)/適正な保持面圧を毎回精密に測定し,測定データをもとにパイプを正確に縮管して,高く,安定した触媒保持力のあるコンバータを生産しています。このP.R.S工法は三五オリジナル工法です。」の記載がある。
また,その記載にそった触媒をパイプに詰めていくサイジング工法の図が表示されている。
(2)乙第2号証の2は,「メッセナゴヤ2012」に関する「開催結果報告書」であるところ,1枚目の表紙には,「日本最大級 異業種交流展示会」,「開催期間:2012年11/7[水]▲?▼10[土]」,「会場:ポートメッセなごや」,「テーマ:環境・安全・モノづくり」及び「主催:メッセナゴヤ実行委員会」の記載がある。また,3枚目は,「展示館のご案内」の文字,及び展示ブースの見取り図が表示されている。4枚目の「出展者一覧」には,その中に,「(株)三五」の記載がある。
(3)乙第2号証の3?5は,メッセナゴヤへの出店ブースの写真とされるものである。
そして,乙第2号証の3の写真には,自動車の写真と共に,タイヤや駆動装置及びエンジンからその排気装置に至る自動車の駆体が展示され,さらに,その下に金属製の商品が展示されている様子が写っている。
乙第2号証の4の写真は,上記した写真の一部を拡大した写真と認められるところ,これには,「Catalytic Converter/触媒コンバータ」として,当該金属製の商品が紹介されている様子が写っている。
乙第2号証の5の写真は,当該金属製の商品が大きく写っているところ,この商品には,やや不鮮明ながら,「PRS」,「サイジング部」等の文字を見て取ることができる。
4 本件商標の使用について,上記3によれば,以下のとおりである。
(1)被請求人による取消請求商品への本件商標の使用について
ア 乙第1号証の被請求人のウェブページには,「P.R.S.」の文字の記載があるものの,「金属加工機械器具」と認められる商品は,確認できない。
イ 乙第2号証の2は,2012年11月7日から10日まで開催された「日本最大級 異業種交流展示会/メッセナゴヤ/2012」に関する「開催結果報告書」であるが,取消請求に係る商品「金属加工機械器具」について,本件商標の使用の事実は,確認できない。
ウ 乙第2号証の3?5は,上記メッセナゴヤの展示会における写真とされるものであるところ,撮影日及び撮影者が不明である。
そして,これらの写真に撮された事物等からすれば,乙第2号証の5に撮された商品は,「自動車エンジン用触媒装置」といえるものであり,その製品の一つに,「PRS」と思われる表示が付されている。
(2)その他の乙号証について
上記2の乙号証以外の証拠については,被請求人が本件商標を使用したものと認められる証左はない。
(3)以上によれば,本件商標が「金属加工機械器具」について,本件審判の請求の登録日から3年以内(平成24年6月10日?平成27年6月9日まで)に使用された事実は,認められない。
5 被請求人の主張について
(1)本件商標を「金属加工機械器具」に使用しているとの主張
被請求人は,「使用商標『P.R.S.』は,金属加工の工法名のみならず,同工法を実施するための『金属加工機械器具』の名称としても理解されるにいたっている。すなわち,請求人が指摘する被請求人のウェブサイト(乙1)においては,一見したところでは,工法の名称として使用商標が使用されており,当該使用は,役務『金属の加工」についての使用商標の使用であることに疑いの余地はない。これに加え,同ウェブサイトにおいては,使用商標『P.R.S.』の表示とともに,図を用いて当該金属加工の工程を説明している。そして,同説明に用いられる図の内,金属性のパイプ以外の部材は,一見して明らかなとおり,金属を加工するために用いられる器具である。したがって,被請求人のウェブサイトの内容からして,使用商標は,『金属の加工』の役務のみならず,『金属加工機械器具』についても使用されている。・・・また,被請求人が提供する『P.R.S.』なる金属加工の工法及び同工法の提供に伴い使用される金属加工機械器具に関しては,被請求人がその製造方法及び製造装置について特許を得ている。同特許は,被請求人が提供する『P.R.S.』なる金属加工の工法について,「物の発明』及び「物を生産する方法の発明」の双方について特許権を得たものである。当該特許の内容からしても,被請求人の提供に係る『P.R.S.』なる金属加工の工法(製造方法)と金属加工機械器具(製造装置)は表裏一体の関係にあり,物を生産する方法の発明の実施は,当該物の発明,即ち,『金属加工機械器具』の実施と同視でき,その逆もまた同じである。この点からしても,『P.R.S.』なる金属加工の工法と,その実施に際して専用的に用いられる『金属加工機械器具』とは密接不可分の関係にある。したがって,被請求人が提供する所定の金属加工機械器具を用いた金属加工役務について使用される商標『P.R.S.』は,同役務並びに同役務の提供に伴い使用される『金属加工機械器具』の総称として理解される標識であって,同金属加工の役務のみならず,同役務の提供に際して必須で用いられる金属加工機械器具の商標とも理解されるものである。」旨を述べている。
しかしながら,乙第1号証のウェブサイトには,「製品・技術情報」の見出しの下,「計測・組立」の項目に,「三五では,触媒をパイプに詰めていくサイジング工法に高い技術を保有しています。」,及び「サイジング/P.R.S.(Pressure Reproduction Sizing:面圧再現型サイジング)/適正な保持面圧を毎回精密に測定し,測定データをもとにパイプを正確に縮管して,高く,安定した触媒保持力のあるコンバータを生産しています。このP.R.S工法は三五オリジナル工法です。」の記載と,その記載にそった触媒をパイプに詰めていくサイジング工法の図が表示されているだけであって,商品としての「金属加工機械器具」に本件商標が使用されている事実は見あたらない。
そして,同説明によれば,安定した触媒保持力のあるコンバータを生産しており,その生産において,触媒をパイプに詰めていくサイジング工法を,「P.R.S工法」と表示していることが理解されるとしても,被請求人のいう「そのウェブサイトの内容からして,商標『P.R.S.』は,『金属の加工』の役務のみならず,『金属加工機械器具』についても使用されている。」との主張は,あまりに無理があるというべきである。
さらに,被請求人は,特許に基づいて金属加工の工法と金属加工機械器具とが表裏一体の関係にある旨を主張しているが,金属加工の工法と,その実施に際して専用的に用いられる「金属加工機械器具」とが密接不可分の関係にあるとしても,本件商標の使用においては,「金属加工機械器具」の商品について使用がされなければならないのであるから,金属加工の役務について使用される商標は,当該商品についての使用ということにならない。
(2)使用商標が社会通念上同一の商標であるとの主張
被請求人は,「本件商標は,標準文字をもって『PRS』の構成からなる。そして,被請求人の使用商標は『P.R.S.』である。これらの商標は,各文字間と語尾における3つのピリオド(.)の有無において相違するが,社会通念上同一の商標と考えることが妥当である。・・・よって,対比するこれらの商標は,標章から生じる称呼及び観念において同一である。したがって,本件商標『PRS』と使用商標『P.R.S.』とは,社会通念上同一の商標である。」旨を述べている。
確かに,使用商標と本件商標とは,外観において「P」と「R」と「S」のそれぞれに「.」(ピリオド)の有無の差異を有するものの「P」「R」「S」の文字を共通にし,また,称呼においても「ピーアールエス」の称呼を共通にするものであって,観念において異なるものということもできない(「.」の有無により観念が異なるということもない。)から,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標というべきである。
なお,被請求人は,乙第2号証の5の写真に撮された商品(「自動車エンジン用触媒装置」といえるもの)の一つに,本件商標と同一の文字である「PRS」と思われる表示を使用している。
6 小括
以上のとおり,被請求人の提出に係る乙各号証によれば,被請求人が要証期間内に本件商標を取消請求商品に使用した事実を確認できないことから,これらの証拠によっては,商標法第2条第3項各号における本件商標の使用の行為を認めることができない。
7 むすび
してみれば,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件取消請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したものということができない。
また,被請求人は,取消請求商品について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2015-12-14 
結審通知日 2015-12-17 
審決日 2016-02-02 
出願番号 商願2009-26984(T2009-26984) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X07)
最終処分 成立 
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 井出 英一郎
中束 としえ
登録日 2009-08-28 
登録番号 商標登録第5260051号(T5260051) 
商標の称呼 ピイアアルエス 
復代理人 前田 大輔 
代理人 黒沼 吉行 
復代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 中村 知公 
復代理人 朝倉 美知 
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