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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1312077 
異議申立番号 異議2015-900163 
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-05-20 
確定日 2016-02-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5746986号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5746986号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5746986号商標(以下「本件商標」という。)は,「KRAKEN BEAST」の欧文字を標準文字で表してなり,平成26年10月16日に登録出願され,第33類「ラム,アルコール分を含むカクテル」を指定商品として,同27年1月23日に登録査定,同年3月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件異議の申立てにおいて引用する商標は,次のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第885429号商標(以下「引用商標1」という。)は,「UNLEASH THE BEAST!」の欧文字を横書きしてなり,2006年(平成18年)4月28日に国際商標登録出願,第32類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成19年6月29日に設定登録されたものである。
2 国際登録第1079467号商標(以下「引用商標2」という。)は,「REHAB THE BEAST!」の欧文字を横書きしてなり,2010年11月3日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2011年(平成23年)4月28日に国際商標登録出願,第5類,第30類及び第32類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成24年7月27日に設定登録されたものである。
3 登録第5634305号商標(以下「引用商標3」という。)は,「UNLEASH THE ULTRA BEAST!」の欧文字を標準文字で表してなり,2012年11月19日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成25年5月17日に登録出願,第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同年11月29日に設定登録されたものである。
4 登録第5656630号商標(以下「引用商標4」という。)は,「PUMP UP THE BEAST!」の欧文字を標準文字で表してなり,2013年5月15日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成25年11月11日に登録出願,第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同26年3月14日に設定登録されたものである。
5 登録第5722244号商標(以下「引用商標5」という。)は,「UNLEASH THE BEAST!」の欧文字を標準文字で表してなり,2014年3月7日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成26年9月8日に登録出願,第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同年11月28日に設定登録されたものである。
6 登録第5727128号商標(以下「引用商標6」という。)は,「UNLEASH THE CAFFEINE FREE BEAST!」の欧文字を横書きしてなり,2014年5月28日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成26年11月4日に登録出願,第5類,第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同年12月19日に設定登録されたものである。
7 登録第5759232号商標(以下「引用商標7」という。)は,「REHAB THE BEAST!」の欧文字を標準文字で表してなり,平成26年12月19日に登録出願,第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同27年4月17日に設定登録されたものである。
8 登録第5769622号商標(以下「引用商標8」という。)は,「UNLEASH THE NITRO BEAST!」の欧文字を標準文字で表してなり,平成27年1月20日に登録出願,第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同年6月5日に設定登録されたものである。
以下,引用商標1ないし引用商標8をまとめていうときは,「引用商標」という。

第3 登録異議申立ての理由の要旨
申立人は,本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると主張し,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第170号証(枝番号を含む。以下,甲各号証について枝番号のすべてを記載するときは,枝番号を省略する。)を提出した。
1 引用商標の周知性について
(1)申立人は,本件商標の登録出願前より,引用商標に示す「UNLEASH THE BEAST!」,「REHAB THE BEAST!」,「UNLEASH THE ULTRA BEAST!」,「PUMP UP THE BEAST!」等の「BEAST」の文字を構成中に含む商標を自己の製造販売に係る「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンク製品を表示するためのスローガン商標(以下「『BEAST』のスローガン商標」という。)として使用している(甲2,甲4?甲32)。
(2)申立人の上記エナジードリンク製品は,「MONSTER ENERGY」,「MONSTER KHAOS」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」といった「MONSTER」の文字を構成中に含む商標(以下「『MONSTER』ファミリー商標」という。)を個別製品名として使用し,2002年の米国発売後,今日まで継続されている商品シリーズである。現在,我が国を含む世界100以上の国及び地域で販売され,米国等の外国のみならず,我が国のエナジードリンク市場でも広く認識されている有名ブランドである。我が国における販売は,2012年からアサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料」という。)を通じて行われている。2012年3月15日に2種類のエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の発売が発表され,同年5月8日から実際の販売が開始された(甲7,甲12,甲14)。発売開始後からたちまち人気商品となり,2012年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8),その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9,甲72?甲74)。
翌年の2013年5月7日には「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」が発売(甲10,甲15?甲17),2014年8月9日には「MONSTER ENERGY M3」が発売(甲66,甲68),2014年10月7日には「MONSTER COFFEE」が発売(甲67,甲69),2015年7月21日には「MONSTER ENERGY ULTRA」が発売(甲80?甲82)され,現時点で6種類の「MONSTER」ファミリー商標を製品名に用いたエナジードリンク製品が販売されている。大手コンビニエンスストアのファミリーマートと提携した大規模な販売キャンペーンも継続的に実施されており(甲70,甲71,甲75?甲78),日本全国のコンビニエンスストア,自動販売機,キオスク,スーパーマーケット,列車売店,会員制のスーパー・店舗,ゲームセンター,ドラッグストア,ホームセンター等の小売店のほか,アサヒ飲料の通販サイトからも直接購入可能である(甲11?甲17,甲79)。また,大手ネットショッピングサイトのアマゾンジャパンなどでも販売が取り扱われている(甲33)。
(3)2002年の「MONSTER ENERGY」のブランド創設と共に「UNLEASH THE BEAST!」(引用商標1)のスローガン商標を導入して販売を開始した申立人のエナジードリンク製品は,本件商標の登録出願日のはるか前から「BusinessWeek」,「Fortune」,「Newsweek」など複数の有名ビジネス経済誌にそろって注目された。「野獣を解き放て!」との衝撃的意味を表す斬新なスローガン商標「UNLEASH THE BEAST!」を導入して展開される申立人のマーケティング戦略に焦点を当てた記事が幾つも掲載され,申立人は急成長した飲料メーカーとして業界の脚光を浴び,数々の表彰を受けた(甲51?甲57)。
「BEAST」のスローガン商標は,2002年から今日まで継続して,「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンク製品のボトル缶の裏面,ウェブサイトの各製品情報欄,ポスター,パネル,看板,モンスター列車(モノレール)の車体,販売促進用関連グッズ(Tシャツ),小売店用陳列棚(什器),陳列棚貼付用プレート等の広告及び販売促進用物品に表示して使用されている(甲19?甲32)。
申立人は,「UNLEASH THE BEAST!」(引用商標1及び5)を世界128以上の国及び地域で登録し,「REHAB THE BEAST!」(引用商標2及び7)を世界53以上の国及び地域で登録し,「UNLEASH THE ULTRA BEAST!」(引用商標3)を世界12以上の国及び地域で登録し,「PUMP UP THE BEAST!」(引用商標4)を世界8以上の国及び地域で登録し,「UNLEASH THE CAFFEINE FREE BEAST!」(引用商標6)を世界8以上の国及び地域で登録し,「UNLEASH THE NITRO BEAST!」(引用商標8)を世界3以上の国及び地域で登録しており,全世界で230を超える「BEAST」のスローガン商標の登録を所有している(甲83?甲168,別紙1,別紙2)。
(4)申立人は,2002年から現在まで継続して,「MONSTER ENERGY」のエナジードリンク製品の広告,マーケティング及び販売促進活動の一環として,「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER」の名称,モンスターの爪痕を象った「M」のロゴマーク,あるいは「MONSTER ENERGY」の文字と「M」のロゴマークを一体にした「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを用いて,国際的に活躍するモトクロス,スーパークロスなどのオートバイ競技,フォーミュラワン(F1)などの自動車レース,スノーボード,サーフィン,スケートボード,その他のアクションスポーツ(エクストリームスポーツ,Xスポーツ)などの様々な分野のスポーツで国際的に活躍する世界の一流アスリートやレーシングチームとスポンサー契約を結び,その競技活動及び国際的な競技会,世界選手権などのスポーツイベント等のスポンサー活動を行っている(甲34?甲45)。当該スポンサー契約を締結したアスリートやレーシングチームが着用・使用するレーシングスーツ,ジャケット,Tシャツ,ヘルメット,帽子,手袋,オートバイ及び自動車の車体,サーフボード,スケートボード,さらには,イベント会場の看板,旗,垂れ幕,機材,スタッフのユニフォーム等の様々な物品や備品には,「MONSTER ENERGY」の文字,「MONSTER」の文字,「M」のロゴマーク,「M MONSTER ENERGY」のロゴマークが付されており,当該アスリート,チーム,参加競技大会での成績,競技会場の模様などに関する情報及びビデオ画像は,申立人が運営するウェブサイト,メールマガジン,フェイスブック・ツイッター・YouTubeなどのソーシャルメディアサイトを用いて,日本を含む全世界のスポーツファンを含む一般消費者に発信されているほか,スポンサー提供を受ける個々のアスリートやレーシングチームが運営するホームページやブログ,一般の報道ニュース,一般スポーツファンのホームページ・ブログなどを通じて,広く一般消費者に紹介されている。
このようなインターネット等の記事や報道やソーシャルメディアを通じて,「MONSTER ENERGY」,「MONSTER」,「M」のロゴマーク,「M MONSTER ENERGY」のロゴマークに加えて,アスリート達が手にしている「MONSTER ENERGY」のエナジードリンクのボトル缶や広告宣伝物に表示されている「UNLEASH THE BEAST!」等の「BEAST」のスローガン商標が一般の需要者の眼に触れる機会は数知れない。
(5)申立人は,このようなアパレル製品,スポーツ用具,ステッカー,バッグ類等のアクセサリー類などの関連グッズの製造販売業者に対して「MONSTER ENERGY」,「M」のロゴマーク,「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを使用許諾しており,申立人の当該商標を付したこれらの直輸入品は人気商品として国内の大手ネットショッピングサイトやセレクトショップなどで販売されており(甲47,甲48,甲169),「MONSTER ENERGY」のブランドは,一般の消費者にもよく知られた人気のブランドとなっている(甲46)。
(6)したがって,本件商標の登録出願時には,申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンク製品に使用される「BEAST」のスローガン商標(引用商標)は,申立人の商品出所識別標識として取引者,需要者の間で広く認識されていた。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は,標準文字の英文字で「KRAKEN BEAST」と横書きしてなり,第33類「ラム,アルコール分を含むカクテル」を指定商品とするものである(甲1の1?2)。
当該指定商品と申立人の取り扱いに係るエナジードリンク製品は,アルコール分を含む飲料とアルコール分を含まない飲料という相違があるが,商品の内容,原材料,用途,販売店舗,販売方法,需要者層を共通にする類似の商品である。
本件商標の構成文字「KRAKEN BEAST」において,前半の「KRAKEN」は一般に馴染みに薄い語(甲170)であるのに対して,後半の「BEAST」は「獣,野獣」等を意味する英単語及び当該意味の外来語「ビースト」として一般に親しまれている。また,「KRAKEN BEAST」の構成文字は11文字で,これに照応する「クラーケンビースト」の称呼も9音と冗長であり,当該構成全体が既成の意味を表す熟語として認識されているわけでもない。このため,本件商標に接する取引者,需要者は,後半の「BEAST」の文字部分に注目して,本件商標を「BEAST」に他の文字を結合させてなる商品出所識別標識として認識,記憶する可能性が高い。
よって,本件商標は,申立人のエナジードリンク製品に使用されている「UNLEASH THE BEAST!」等の「BEAST」のスローガン商標(引用商標)と極めて似通った印象,記憶,連想を取引者,需要者に与えることが明らかである。
したがって,本件商標がその指定商品に使用された場合は,これに接した取引者,需要者は,「BEAST」のスローガン商標を用いて販売,広告宣伝されて広く認識されている申立人のエナジードリンク製品を直ちに想起連想し,当該製品のシリーズ商品,姉妹商品等であると誤信し,あるいは,申立人と組織的又は経済的な関連を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信し,その出所について混同を生ずるおそれがある。
また,本件商標がその指定商品に使用された場合は,申立人の商品出所識別標識として広く認識されるに至った「BEAST」のスローガン商標の出所表示力が希釈化するおそれが高く,本件商標の使用は,「MONSTER ENERGY」ブランドの信用力,顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠から,以下の事実が認められる。
(1)申立人の日本向けホームページには,「MONSTER\ENERGY」及び「Unleash\the Beast!」の文字の記載(甲2),申立人の英語サイトには,「MONSTER\ENERGY」及び「Unleash\the Beast!」の文字の記載(甲4),また,申立人の日本向けホームページの商品情報には,「Monster Energy」の見出しの下,「ひと口飲めば,世界中のアスリートやミュージシャン,そして世界中のMonsterファンが熱狂するワケを実感できるはず! Unleash the Beast!」の文字の記載がある(甲19)。
(2)「BeverageWorld」誌(2004年6月発行)の記事(甲51),「BusinessWeekonline」(2005年6月6日配信)の記事(甲52),「FORTUNE」誌(2005年9月5日発行)の記事(甲53)及び「Newsweek」誌(2006年3月20日発行)の記事(甲57)中に,清涼飲料の「MONSTER ENERGY」の(販売)スローガンとして,「UNLEASH THE BEAST!」の文字の記載がある。
(3)「UNLEASH THE BEAST!(Unleash the Beast!)」,「REHAB THE BEAST!」,「UNLEASH THE ULTRA BEAST!」,「PUMP UP THE BEAST!」,「UNLEASH THE CAFFEINE FREE BEAST!」及び「UNLEASH THE NITRO BEAST!」の欧文字からなる商標が,我が国を含む諸外国において,商標登録されている(甲58?甲65及び甲83?甲168)。
(4)以上のことから,引用商標1の「UNLEASH THE BEAST!」の文字が,清涼飲料の「MONSTER ENERGY」の(販売)スローガンとして使用されていること及び引用商標が我が国を含む諸外国において商標登録されていることが認められる。
しかし,引用商標1は,申立人の英語サイト(甲4)や申立人の日本向けホームページ(甲2,甲19)において掲載されているとしても,我が国において,引用商標1が使用されている例はほとんどなく,また,引用商標2ないし引用商標8の商標使用の事実も存しないから,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時おいて、我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているものとはいえない。

2 本件商標と引用商標との類似性について
(1)本件商標について
本件商標は,「KRAKEN BEAST」の欧文字を標準文字で表してなるところ,各語の間に半角程度の隙間を有するとしても,同じ書体,同じ大きさで表されているものであり,構成文字全体が一体のものとして把握されるものである。
そして,本件商標は,その構成中の「KRAKEN」の文字が小学館ランダムハウス英和大辞典の「Kra・Ken」の項に,「クラーケン:北欧の伝説上の海の怪物。[ノルウェー語より]」を意味する語として掲載されているものの,我が国において該意味を有する語として広く知られているというべき事情は認められないから,たとえ,「BEAST」の文字が「獣」の意味を有する語として我が国において広く知られているとしても,全体として特定の意味を認識させるとはいえない。
そうすると,本件商標は,全体として特定の意味を有しない造語と認識されると見るのが相当であるから,その構成文字に相応して「クラケンビースト」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものといえる。
(2)引用商標1及び引用商標5について
引用商標1及び引用商標5は,「UNLEASH THE BEAST!」の文字を表してなるところ,各語の間に半角程度の隙間を有するとしても,同じ書体,同じ大きさで表されているものであり,構成文字全体が一体のものとして把握されるものである。
そして,引用商標1及び引用商標5は,その構成中の「UNLEASH」の文字が「解放する」等の意味を有する英語であるものの,我が国において広く知られているものというべき事情は認められないから,たとえ,「BEAST」の文字が「獣」の意味を有する語として我が国において広く知られているとしても,全体として特定の意味を認識させるとはいえない。
そうすると,引用商標1及び引用商標5は,全体として特定の意味を有しない造語と認識されると見るのが相当であるから,その構成文字に相応して,「アンリーシュザビースト」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものといえる。
(3)引用商標2及び引用商標7について
引用商標2及び引用商標7は,「REHAB THE BEAST!」の文字を表してなるところ,引用商標1と同様に,構成文字全体が一体のものとして把握されるものであり,その構成中の「REHAB」の文字は,「再建する」の意味を有する英語であるものの,我が国において広く知られているものというべき事情は認めらないから,全体として特定の意味を有しない造語と認識されると見るのが相当である。
してみると,引用商標2及び引用商標7は,構成文字に相応して,「リハブザビースト」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものといえる。
(4)引用商標3,引用商標6及び引用商標8は,それぞれ,「UNLEASH THE ULTRA BEAST!」,「UNLEASH THE CAFFEINE FREE BEAST!」及び「UNLEASH THE NITRO BEAST!」の文字を標準文字で表してなるところ,引用商標1と同様に,構成文字全体が一体のものとして把握されるものであり,その構成中の「UNLEASH」の文字は,「解放する」の意味を有する英語であるものの,我が国において広く知られているものというべき事情は認めらないから,全体として特定の意味を有しない造語と認識されると見るのが相当である。
してみると,引用商標3,引用商標6及び引用商標8は,それぞれ,構成文字に相応して,「アンリーシュザウルトラビースト」,「アンリーシュザカフェインフリービースト」及び「アンリーシュザニトロビースト」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものといえる。
(5)引用商標4について
引用商標4は,「PUMP UP THE BEAST!」の文字を標準文字で表してなるところ,各語の間に半角程度の隙間を有するとしても,同じ書体,同じ大きさで表されているものであり,構成文字全体が一体のものとして把握されるものである。
そして,引用商標4は,その構成中の「PUMP UP」の語が「ポンプでくみあげる」の意味を有する語として,また,「BEAST」の文字が「獣」の意味を有する語として知られているものの,全体として特定の意味を認識させるとはいえない。
そうすると,引用商標4は,全体として特定の意味を有しない造語と認識されると見るのが相当であるから,その構成文字に相応して,「パンプアップザビースト」及び「ポンプアップザビースト」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものといえる。
(6)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標の類否について比較すると,本件商標と引用商標とは,上記した各構成に照らし,いずれも外観上判然と区別し得る差異を有するものであるから,相紛れるおそれはない。
また,本件商標から生じる「クラケンビースト」の称呼と引用商標から生じる「アンリーシュザビースト」,「リハブザビースト」,「アンリーシュザウルトラビースト」,「アンリーシュザカフェインフリービースト」,「アンリーシュザニトロビースト」,「パンプアップザビースト」及び「ポンプアップザビースト」の各称呼とは,その構成音に明らかな差異を有するものであるから,容易に聴別できるものであり,相紛れるおそれはない。
さらに,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念が生じないものであるから,両商標は,観念においても相紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標として認識されるものである。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているものとはいえないものであり,また,上記2のとおり,本件商標は,引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標として認識されるものである。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想又は想起するものとは認められず,その商品が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

4 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-02-10 
出願番号 商願2014-87087(T2014-87087) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2015-03-06 
登録番号 商標登録第5746986号(T5746986) 
権利者 プラクシモ スピリッツ インコーポレイテッド
商標の称呼 クラーケンビースト、クラーケン、ビースト 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 
代理人 村橋 史雄 
代理人 上原 空也 

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