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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W44
審判 全部申立て  登録を維持 W44
管理番号 1310902 
異議申立番号 異議2015-900256 
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-08-03 
確定日 2016-02-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第5761105号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5761105号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5761105号商標(以下「本件商標」という。)は,「3M-FUE」の文字を標準文字で表してなり,平成26年10月22日に登録出願,同27年2月4日に登録査定がされ,第44類「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,介護」を指定役務として,同年4月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標は,以下の2件である。
1 登録第608093号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1のとおり,「スリーエム」の片仮名と「3M」の文字を上下二段に書してなり,昭和36年5月26日に登録出願,第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同38年4月3日に設定登録され,その後,5回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,さらに,同16年8月25日に第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」,第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用海草のり,洗濯用コンニャクのり,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」及び第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」とする指定商品の書換登録がされたものであり,現に有効に存続しているものである。
2 申立人及びその関連会社の業務に係る商品(付箋,テープ,のり,修正用品等を中心とする文房具製品及びオフィス製品等)を表示する商標は,別掲2のとおり,「3M」の文字からなる標章(以下「引用商標2」という。)である。
以下,これらをまとめて「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第85号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下,「甲第○号証」の表示は,「甲○」と簡略する。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標は,欧文字「3M」及び「FUE」の文字を「-(ハイフン)」で繋いだ態様で,標準文字で表してなるものである。かかる構成からは,その全体から「スリーエムエフユーイー」という称呼が生ずるとも考えられる。
しかしながら,その構成要素中,「3M」は,後述するとおり,申立人の業務に係る商品等を表示する商標として著名な「3M」と同一である。もう一つの構成要素である「FUE」についてであるが,商標権者が運営すると思われる新宿ノアクリニックのウェブサイトによると,「FUE」は,「Follicular Unit Extraction」の頭文字から取った略語である(甲3)。「Follicular Unit Extraction」は,「自然の毛包単位ごとにドナー株を採取して移植する」植毛治療方法であり,同方法は「FUE」又は「FUE法」として数多くの薄毛治療クリニックによって紹介されている,代表的な植毛治療方法である(甲4?甲10)。
してみれば,植毛に係る治療・医療が行われる美容業界,医療業界等においては,「FUE」の語は,施術方法を特定するための,極めて記述的な用語として認識されているとするのが相当である。
そうすると,「FUE」の語は,単独では商標として機能しない場合も少なくないと考えられ,よって,本件商標からは,「スリーエムエフユーイー」との称呼の他に,「スリーエム」との称呼が生ずるといえる。
また,本件商標は造語であることから,本件商標からは特定の観念は生じないと考えることも可能であるが,後述のとおり,「3M」の語は,申立人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間で広く知られているので,「3M」の語を含む本件商標からは,申立人ないし申立人の商品等が想起される。
他方,引用商標1は,「3M」の文字の上部に片仮名「スリーエム」を,ルビを振るように併記してなるものであり,引用商標2は,「3M」の文字を太いゴシック体で横書きに表してなるものである。「スリーエム/3M」又は「3M」との構成からなる引用商標からは,「スリーエム」との称呼が生じ,また,「スリーエム」及び「3M」の各語は本来的には何ら観念を生じさせない語ではあるが,後述するように,申立人やその関連会社による継続的な使用の結果,引用商標からは,「申立人の著名なブランド『3M』」との観念が生ずる。
(2)本件商標に含まれる「3M」の語は,申立人の業務に係る商品等を表示するものとして,我が国のみならず,世界中で極めて広く知られている。申立人は,1902(明治35)年に設立されたアメリカ合衆国ミネソタ州の法人であり,その英語名は「3M Company」と表記される(甲11)。日本では,「3M(社)」と表記され,「スリーエム(シヤ)」と称呼されることが多い(甲12?甲31)。因みに,「3M」は,申立人の旧社名である「Minnesota Mining & Manufacturing Co.」の3つの頭文字「M」に由来する。
申立人は,世界有数のコングロマリットであり,その事業内容も多岐にわたり,各種接着剤,(接着用)テープ・(貼付)フイルム,その他の文房具,家庭用補修・掃除用具,電気・電子分野に係る製品(主に素材)等を取扱う他,本件指定役務の分野において使用される医療・保健・ヘルスケアに係る製品の製造・販売に従事している(甲11)。
申立人は,米フォーチュン誌が発表する「世界で最も尊敬される企業ベスト50」において,2010年第17位,2011年第15位,2012年第18位,2013年第21位と毎年選出されており,本件商標が出願された2014年(平成26年)度も第23位に選出されている(なお,2015年度は第21位)(甲32,甲33)。
我が国においても,申立人の子会社である住友スリーエム株式会社は,2014(平成26)年9月1日付で,住友電気工業所有の株式を自社買い取りし,現在は,申立人の100%子会社であるスリーエム・ジャパン株式会社(スリーエム・ジャパン社)となり,「企業ブランド知覚指数調査」において,2009年第52位,2010年第56位,2012年第179位,2013年第90位,2014年第73位と毎年選出されている(甲36?甲38)。
スリーエム・ジャパン社(旧住友スリーエム社)は,日本国内において,2007年11月16日以前から,「Post-it(ポスト・イット)」の名称を付した付箋や,「Scotch(スコッチ)」の名称を付したテープ,のり,修正用品等を中心とする文房具製品及びオフィス製品を数多く販売しており,これらのほとんどの製品には引用商標2が付され,これらの製品のカタログや販売促進用品にも引用商標2が付され,また,文具製品以外にも,スポンジたわし,窓用透明フィルム,スキマふさぎ防水テープ,マスキングテープ,補修テープ,すべり止めテープ,その他各種用途用テープや,はがせる両面粘着テープを使ったフック,クッションゴム,研磨材,空気清浄フィルター,フィルターマスク,プロジェクター及びその関連製品等,他分野にわたる多種類の製品を販売しており,ほとんどの製品に引用商標2が付されている。
遅くとも,1999(平成11年)年以降には,スリーエム・ジャパン社が,新聞(朝日新聞,読売新聞等),雑誌(東京ウォーカー,週刊アスキー,日経トレンディ一等)等に,引用商標2を使用して,文具製品・オフィス製品をはじめとする上記各製品に関する広告記事を掲載したり,テレビを媒体として宣伝や電車内での広告も行った。
申立人は,2012年5月15日以降現在に至るまでも,一切中断することなく,弛まぬ企業努力の下その事業を継続的に行っているから,本件商標が出願された2014(平成26)年10月22日及び登録査定がなされた2015(平成27)年4月24日の時点においても,「スリーエム」及び引用商標2は著名であったと考えるのが相当である。
上記商品に加え,申立人並びにスリーエム・ジャパン社及びスリーエムヘルスケア社(以下「申立人ら」という。)は,医療従事者・歯科医療従事者向けに,各種製品を取り扱っている(甲42?甲76)。
また,申立人らは,一般顧客向けの医療用製品も取り扱っている(甲77?甲82)。さらに,申立人らは,一般顧客向け及び,リハビリ治療等を使途として医療従事者向けに,サポーターやスポーツテーピング製品も取り扱っている(甲83,甲84)。
これらの製品は,本件商標に係る指定役務「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,介護」において使用されるものであり,当該役務と密接に関連しているということができる。
これらの製品(包装を含む。)には,「3M」の語が使用されており,これらの製品を紹介するウェブサイトやカタログにも「3M」の語が使用されている(甲42?甲84)。この使用されている「3M」には,引用商標2のみならず,一般的なフォントで表されて「3M」の語も含まれている。
してみれば,本件指定役務の取引者,需要者は,本件指定役務の提供の用に供される製品やその包装,カタログその他の宣伝広告書類等に使用される「3M」の語にかなりの頻度で接しているということができ,本件指定役務の分野においても,引用商標2を含む「3M」の語は著名であり,需要者等は「3M」の語から即座に申立人を想起するということができる。
上述のとおり,「スリーエム」の語は,世界的にも,日本国内においても著名なブランドとして認識されており(甲35),引用商標は,文具製品・オフィス製品をはじめとする多くの分野において,申立人又はその関連会社の業務に係る商品を表示する商標として著名なものと認められている。また,申立人及びその関連会社の製品には,引用商標2のみならず,一般的なフォントで表される「3M」の語も頻繁に使用されているから,「3M」の語自体が,申立人の業務に係る多種多様な商品を表す商標として,需要者の間で極めて広く知られているということができる。
本件商標は,その構成の一部に,著名な引用商標と同一の構成文字を含むため,外観が極めて近似し,また,称呼も同一である。しかも,本件商標において,「3M」の語は,取引に際して需要者等が最も注意を注ぐであろう,本件商標の語頭に配置されている。
また,本件商標を構成する他の構成要素である「FUE」が,「自然の毛包単位ごとにドナー株を採取して移植する」植毛治療方法を表す表示として一般的に使用されており,植毛の分野における治療・医療が行われる美容業界,医療業界等において,特定の施術方法を特定するための極めて記述的な用語として認識されていることは,上述のとおりである。
してみれば,本件商標中,「3M」の部分が構成要素の一部が強く支配的な印象を与えるものと認められ,他方で,「FUE」が極めて識別力の弱い記述的な用語と認められるから,「3M」が独立して出所識別標識として機能し,本件商標からは,「スリーエム」との称呼が生じ,「申立人の著名なブランド『3M』」との観念が生ずると考えるのが相当である。また,本件商標が,たとえ外観構成上纏まりよく一体的に表されていると認識される場合があるとしても,本件商標は,引用商標と同一の称呼・観念を生ずる「3M」と,自他役務識別機能が極めて弱い「FUE」とが結合した構成からなるから,引用商標と類似すると考えるのが相当である。
このように,引用商標が著名であることに加え,申立人及びその関連会社が取り扱う製品が多分野,多種類に及ぶことを考慮すると,引用商標に類似する本件商標を使用した場合,たとえ申立人が本件指定役務に係る業務を行っていないとしても,取引者,需要者は,申立人又は申立人と組織的・経済的に何等かの関係を有する者の業務に係る役務であると混同するおそれがあると考えるのが相当である。
したがって,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 商標法第4条第1項第8号について
申立人は,2002(平成14)年,正式にその名称を,現在の「スリーエム カンパニー(3M Company)」に変更し,現在に至る。
本件商標が出願された2014年10月22日以前から,申立人やスリーエム・ジャパン社に関する記事が新聞や雑誌(ウェブサイトの記事を含む。)に度々掲載され,その中で,申立人は「3M(社)」又は「米3M(社)」と表記されることが多く,また,スリーエム・ジャパン社(旧住友スリーエム社)も「住友3M(社)」と表記されることがある(甲12?甲31)。
申立人又はその商品に関する記事では,「あの3Mが電子書籍分野に参入」等(甲26?甲31)といった表現が度々見受けられ,これらの記事が向けた不特定多数の読者にとって,「3M」が,説明を不要とする程に広く知られた,馴染み深い語であることを示している。
「3M」の語は,「Minnesota Mining & Manufacturing Co.」の3つの頭文字「M」に因んで採用された申立人のブランドであり,以来,申立人等の弛まぬ営業努力により,日本はもとより世界各国において,広範な分野に亘る多種多様な商品を指し示す著名なブランドとして認識されている。
また,「3M」の語は,2002年に申立人の社名の一部(略称)としても採用され,以降,申立人の名称の著名な略称として認識されている。
本件商標が出願された2014(平成26)年10月22日より遥か以前から,申立人は,「3M」の愛称(略称)で親しまれ,その結果,遅くとも,平成11年審判第17295号に係る審決がなされた2001(平成13)年11月15日には,「取引者,需要者を含め社会一般において」申立人の「著名な略称として広く認識されていた(甲40)。
そして,それ以降も,事業を中止し又は名称を変更するといった別段の事情はなく,申立人は,「3M」に化体したブランド価値を更に高めるため弛まぬ努力を継続している。よって,その略称である「3M」の著名性が減殺されたと考えるべき事情は認められないから,本件商標の査定時においても,「3M」の語は,申立人の名称の著名な略称として理解,認識されていたと考えるのが相当である。
本件商標は,上述の通り,「3M-FUE」の文字を標準文宇で表してなり,申立人の名称の著名な略称である「3M」を含む商標である。そして,申立人が,商標権者に対して,同商標の使用ないし登録について承諾を与えた事実はない。以上より,本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当することは明らかである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性について
申立人の提出した証拠及びその主張によれば,申立人は,1902年(明治35年)に設立されたアメリカ合衆国の法人であり,現在の社名は英語で表記すると「3M Company」であり(甲11),日本では「3M(社)」と表記され「スリーエム(社)」と称されている(甲12?甲31)。
そして,申立人の事業内容も多岐にわたり,各種接着剤,(接着用)テープ・(貼付)フイルム,その他の文房具,家庭用補修・掃除用具,電気・電子分野に係る商品(主に素材)等を取扱うほか,本件指定役務の分野において使用される医療・保健・ヘルスケアに係る商品の製造・販売に従事している(甲11)。
また,申立人は,米フォーチュン誌が発表する「世界で最も尊敬される企業ベスト50」において,2010年第17位,2011年第15位,2012年第18位,2013年第21位と毎年選出されており,本件商標が出願された2014年(平成26年)度も第23位に選出されていること(なお,2015年度は第21位)(甲32,甲33),申立人の日本法人であった住友スリーエム株式会社は,2014年に,申立人の100%子会社であるスリーエム・ジャパン株式会社(以下「スリーエム・ジャパン社」という。)となっていること(甲16,甲17),スリーエム・ジャパン社は,「企業ブランド知覚指数調査」において,2009年第52位,2010年第56位,2012年第179位,2013年第90位,2014年第73位と毎年選出されていること(甲36?甲38),申立人は,昭和36年以降,日本国内において,引用商標を含む「3M」又は「スリーエム」の語からなる商標及びこれらの語の組合せからなる商標について,多数の商品区分において商標登録出願を行い,78件の商標登録を受けていること(甲39),特許庁及び裁判所の審決及び判決で引用商標の著名性が認められていること(甲35,甲40,甲41),などを認めることができる。
そうすれば,上記の事実を総合すると,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして本件商標の登録出願前より,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。そして,その著名性は,本件商標の登録査定日においても継続していたものと推認することができる。
なお,申立人らは,医療従事者・歯科医療従事者向けに,各種製品を取り扱っていること(甲42?甲76),申立人らは,一般顧客向けの医療用製品も取り扱っていること(甲77?甲82),申立人らは,一般顧客向け及び,リハビリ治療等を使途として医療従事者向けに,サポーターやスポーツテーピング製品も取り扱っていること(甲83,甲84)などが認められるが,該証拠は,そのほとんどが本件商標の登録査定後に印刷されたものであり,医療従事者向けの商品について,本件商標の登録出願前のものは、2013年6月現在の商品を掲載した「歯科用製品総合カタログ2013」写し(甲42),2014年3月現在の商品を掲載した「矯正歯科用製品総合カタログVol.4」写し(甲43),2009年3月発行,2009年12月発行及び2014年9月発行の「医療用マスク」に係るカタログ写し(甲68,甲69),2013年9月発行の「サージカルマスク」に係るカタログ写し(甲70)及び2014年1月発行の「皮膚貼付用テープ」に係るカタログ写し(甲71)のみである。
そうすると,申立人が世界的な企業であり,引用商標が医療関係の商品に使用されていることが窺えるとしても,本件商標の登録出願の時に,引用商標が,本件商標の指定役務の分野においても周知著名といえる程度にまで取引者,需要者間に広く認識されていたとはいえないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標
本件商標は,前記1のとおり,「3M-FUE」の文字及び符号を,同書,同大,等間隔でまとまりよく一体的に表してなるものである。
そして,その構成中の「-」(ハイフン)は,英文で合成度の浅い複合語を連結する際などに用いるものとして,広く知られているばかりでなく,前半の「3M」の文字部分は,商品や役務の形式,規格,品番,種類等を表示するための記号,符号として類型的に採択,使用される数字とローマ字1字の組み合わせの一つとして認識し,把握される場合が少なくないといえる。
また,後半の「FUE」の文字部分は,植毛治療方法の一施術の略称として認識し,把握される場合が少なくないといえるから,本件商標の上記文字部分は自他役務の識別力がないか極めて弱いものというべきである。
そうとすると,本件商標は,その構成中の「3M」及び「FUE」が、それぞれ単独では自他役務の識別力がないか極めて弱いものであり,両文字を比較しても,識別力について軽重の差は認められないから,その構成全体をもって一連一体の造語を表すものとして認識されるものであって,「3M」の文字に相応する「スリーエム」の読み及び「FUE」の文字に相応する「エフユーイー」の読みの組み合わせからなる「スリーエムエフユーイー」の称呼を生ずることはあっても,「3M」又は「FUE」の文字部分を捉え,「スリーエム」又は「エフユーイー」の称呼を生ずることはないというのが自然である。
また,「FUE」の文字が植毛治療方法の一施術の略称として認識し,把握される場合があるとしても,これと「3M」を「-」(ハイフン)を用いて組み合わせてなる本件商標の全体からは,特定の観念を生ずることはないというべきである。
イ 引用商標
引用商標1は,「3M」の文字を大きく表し,その上に「スリーエム」の片仮名を小さく表してなるところ,その構成中の「スリーエム」の片仮名が「3M」の文字部分の読みを特定したものと無理なく認識し得るから,片仮名部分より生ずる称呼がその商標の自然な称呼とみるのが相当であって,引用商標1は「スリーエム」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものというのが相当である。
また,引用商標2は,太字で表した「3」と「M」の文字をその一部が接するように近接させて横書きした「3M」の文字よりなるものであるから,その構成文字に相応して「スリーエム」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
なお,申立人は,「3M」の語は,申立人の業務に係る商品等を表示するものとして広く知られているから,「申立人の著名なブランド3M」の観念が生ずる旨主張しているが,数字やアルファベットは,情報等を伝えるための記号にすぎず,それだけでは特定の意味を有するものではないから,特定の数字,文字のみを指すことをもって,観念が生じると解することはできない。
ウ 本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標とを比較すると,外観においては,上記ア及びイのとおり,その構成文字において相違するものであるから,明確に区別することができるものである。
また、称呼においては,本件商標から生ずる「スリーエムエフユーイー」の称呼と,引用商標から生ずる「スリーエム」の称呼とは,「エフユーイー」の音の有無による構成音数の差により,それぞれを一連に称呼するときは全体の音感,音調が明らかに異なり,明瞭に聴別することができるものである。
さらに,観念については,両者とも特定の観念を生じないから,両者を比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,観念上比較することはできないとしても,称呼及び外観の点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(3)小括
そうすると,引用商標が,特定の分野である程度知られているとしても,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標とは,その外観及び称呼において紛らわしいところのない十分に区別し得る別異の商標というべきものであって,本件商標を指定役務に使用した場合において,これに接する取引者,需要者をして,引用商標を連想又は想起させるものとは認められず,その役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く,その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
してみれば,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第8号該当性について
引用商標が,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願前より,我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されていたことは,上記1(1)のとおりであり,また,引用商標の構成文字である「3M」の文字は,申立人の名称中に含まれるものであるから,引用商標は,申立人の著名な略称であるともいい得るものである。
しかしながら,本件商標は,その構成全体をもって一連一体の造語を形成するものとして認識されるものであり、構成中の「3M」の文字は,標準文字で表された態様からして,単に,商品や役務の形式,規格,品番,種類等を表示するための記号,符号として類型的に採択,使用される数字とローマ字1字の組み合わせの一つとして認識されるにとどまるものであるから,申立人の著名な略称を含む商標ということはできない。
してみれば,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標1)



別掲2(引用商標2)



異議決定日 2016-02-03 
出願番号 商願2014-88699(T2014-88699) 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W44)
T 1 651・ 271- Y (W44)
最終処分 維持  
前審関与審査官 綾 郁奈子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
榎本 政実
登録日 2015-04-24 
登録番号 商標登録第5761105号(T5761105) 
権利者 株式会社Medex
商標の称呼 サンエムフエ、スリーエムフエ、フエ、エフユウイイ 
代理人 永岡 愛 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 北口 貴大 
代理人 城山 康文 

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