• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
管理番号 1310825 
審判番号 取消2015-300286 
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-04-17 
確定日 2016-01-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5259019号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5259019号商標の指定商品中、第30類「アイスキャンデー,アイスクリーム,シャーベット」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5259019号商標(以下「本件商標」という。)は、「きんたろう」の平仮名を上段に、「金太郎」の漢字を下段に、それぞれ横書きしてなり、平成20年5月21日に登録出願、第30類「菓子及びパン,和菓子,甘栗,甘納豆,あめ,あられ,あんころ,いり栗,いり豆,おこし,かりんとう,ぎゅうひ,氷砂糖,砂糖漬け,汁粉,汁粉のもと,ぜんざい,ぜんざいのもと,せんべい,だんご,練り切り,水あめ,みつまめ,蒸し菓子,もち菓子,もなか,もなかの皮,ゆで小豆,ようかん,らくがん,洋菓子,アイスキャンデー,アイスクリーム,ウエハース,カステラ,乾パン,キャラメル,キャンデー,クッキー,クラッカー,コーンカップ,シャーベット,シュークリーム,スポンジケーキ,タフィー,チューインガム,チョコレート,ドーナツ,ドロップ,ヌガー,パイ,ビスケット,フルーツゼリー,フローズンヨーグルト,ボーロ,ホットケーキ,ポップコーン,マシュマロ,焼きりんご,ラスク,ワッフル,あんぱん,クリームパン,ジャムパン,食パン,バンズ」を指定商品として、同21年8月21日に設定登録されたものである。
そして、本件審判請求の登録日は、平成27年5月1日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第30類「アイスキャンデー,アイスクリーム,シャーベット」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しない。
したがって、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)商標法50条2項ただし書の「正当な理由」(以下単に「正当な理由」という。)の意味
商標法50条2項ただし書の「正当な理由」とは、取消請求にかかる指定商品についてその登録商標の使用を妨げる事情で、その不使用をもって当該商標権者の責めに帰することが社会通念上酷であるような場合をいう(東京高裁昭和60年7月30日判夕第615号121頁以下参照)(甲第3号証)。 例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が考えられると解説されている(甲第4号証及び甲第5号証)。
また、実務上は、「正当な理由」が認められ得る事例は、(ア)医薬品の製造承認申請等に関するものと、(イ)天災地変による不可抗力に関するものにほぼ限られており(甲第5号証)、単なる内部事情や個人的事情は「正当な理由」に該当しないものとされる。
以上のように、「正当な理由」の該当性は、極めて制限的に解釈・運用されている。
(2)本件における「正当な理由」の不存在
ア 被請求人は、本件審判の請求の登録前3年(以下「要証期間」という。)以内において、本件商標を取消対象商品について使用していない事実を認めつつ、使用していないことについて正当な理由がある旨を主張し、正当な理由を基礎づける具体的事実として、以下の点を挙げている。
(a)金太郎飴組合所属の店舗において、過去、アイスキャンデーやアイスクリーム等を販売していたこと(乙第2号証及び乙第4号証)
(b)アイスクリーム販売ボックスが老朽化したため製造・販売を中止したこと
(c)現在、再び氷菓に本件商標を付して販売する具体的な予定があること
しかしながら、(a)については、被請求人ではない店舗がアイスキャンデーやアイスクリーム等を販売していた事実から、金太郎飴組合に所属していたというだけでなぜ被請求人が本件商標を使用していたことになるのかそもそも不明である。しかも、要証期間前の過去の使用の事実の証拠である乙第2号証と乙第4号証に撮影されているアイスクリーム販売ボックスは、他のアイスクリーム等の製造販売会社の商標が付されている。かかる販売ボックスは、アイスクリーム等の製造販売業者から貸与あるいは譲渡されていたケースが一般的であり、その対価として、販売ボックス内では当該製造販売業者の製品しか販売してはならないという商慣習(乳業特約店制度)があった。そうすると、同ボックスで販売されていた商品は、本件商標が付された商品ではなく、むしろ他社のアイスクリーム等であった可能性が高い。
以上を踏まえると、(a)については、要証期間以前において、被請求人が請求に係る指定商品を使用していた事実さえ存在しない。
また、同事実が存在しない以上、(b)について、アイスクリーム販売ボックスが老朽化したため製造・販売を中止したという事実も虚偽である。仮に同ボックスが老朽化したのであれば、該製造販売業者等に販売ボックスの交換を求めれば足りるだけのことである。
さらに、(c)について、被請求人は、本件商標を付した氷菓の販売を再開する具体的な予定があると主張しておきながら、その計画内容を一切主張立証していない。被請求人は、平成27年7月17日時点においても、アイスクリーム等を販売しておらず(甲第6号証)、実際には販売を再開する具体的な予定など存在しない。
イ 加えて、被請求人の主張する事実関係が存在すると仮定した場合であっても、被請求人は、「アイスクリーム販売ボックスの老朽化」という理由で、少なくとも要証期間を超えて本件商標を付したアイスクリーム等を製造販売していないことになるが、アイスクリーム等の製造販売を継続したければ必要な設備を買い換えれば良いだけのことであり、上記理由は、被請求人の内部事情や個人的事情の典型である。
以上のとおり、被請求人の主張を踏まえても、「正当な理由」には該当しない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第30類「アイスキャンディー,アイスクリーム,シャーベット」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれもが使用した事実が存在しないとしている。
しかしながら、被請求人は、要証期間内において、本件商標を使用していないことについて、正当な理由がある。
2 被請求人は、100年以上もの歴史を有する、どこを切っても同じ図柄が現れるように工夫された切り飴、「組み飴」を主とする菓子の老舗であるが、飴・キャンディー以外にも煎餅、あられ、団子、饅頭といった菓子や、夏場にあってはアイスキャンデーを含む氷菓を古くより販売していた。
例えば、乙第2号証の1及び2は、昭和初期頃に結成された「金太郎飴組合」(乙第3号証)の組合員であった「金太郎飴:大熊商店」(埼玉県北足立郡にかつて所在)の写真である。飴、せんべいといった菓子に加え、アイスクリーム販売用ボックスが「金太郎飴」の看板の下、置かれている。さらに、現在も組合員である「菓子舗 金太郎」(東京都板橋区に所在:乙第4号証の1)においても、改装前の旧店舗の時代から「金太郎飴」の看板の下、団子、饅頭、ようかん、清涼飲料等とともに、アイスキャンデー、アイスクリームなどが販売されていた(乙第4号証の2及び3)。
そして、アイスクリーム販売ボックスの老朽化というやむを得ない事情により、被請求人及び商標使用権者において要証期間内にはアイスキャンデー等を製造・販売してはいなかったが、現在、再び氷菓に本件商標を付して販売する具体的な予定がある。
3 結語
以上のとおり、被請求人は、要証期間内において本件商標を請求に係る指定商品に使用していた事実はないものの、アイスボックスの老朽化という、使用していないことについて正当な理由がある(商標法第50条2項ただし書)。

第4 当審の判断
1 被請求人は、答弁書において「要証期間内において本件商標を請求に係る指定商品に使用していた事実はないものの、アイスボックスの老朽化という、やむを得ない事情により、本件商標を使用していないことについて正当な理由がある。」旨主張している。
そこで、以下、被請求人が、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定商品に本件商標を使用していないことについて正当な理由があるといえるか否かを検討する。
(1)商標法第50条第2項は、そのただし書において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が指定商品又は指定役務に登録商標を使用していないとしても、「登録商標の使用をしていないことについて正当な理由」があることを商標権者である被請求人が明らかにしたときは、その商標登録は取り消されない旨規定している。
そして、同項が規定する正当な理由とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破損等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解すべき(東京高等裁判所 平成7年(行ケ)第124号判決、知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10160号判決、知的財産高等裁判所 平成22年(行ケ)第10012号判決)とされるものである。
(2)これを本件についてみるに、被請求人は、本件商標を要証期間内において使用していないことについて、アイスボックスの老朽化をその正当な理由としている。
しかしながら、アイスボックスの老朽化という事象は、アイスボックスの耐用年数の経過等が主な原因として考えられるが、アイスボックスが老朽化したことにより本件商標が使用できなくなったのであれば、アイスボックスを更新すれば、本件商標を使用できない事由は解消するのであり、商標権者等の責めに帰すことができない理由によって、アイスボックスを更新できないといった事情が明らかにされているわけでもないから、この理由は、専ら、被請求人の事業上の事情に起因するものであって、被請求人の責めに帰すことができない事由ということはできず、第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由や、商標権者等の責めに帰することができない事由に該当することを明らかにしたということはできない。
(3)してみれば、被請求人の主張の理由及び提出した証拠をもって、本件商標の使用をしていないことについて、商標法第50条第2項に規定する正当な理由があるということはできない。
2 被請求人は、金太郎飴組合所属の店舗において、過去、アイスキャンデーやアイスクリーム等を販売していたと主張し、写真(乙第2号証及び乙第4号証)を提出しているが、これらは、要証期間内に本件商標を使用していたことを証明するものではなく、また、被請求人は、本件商標を付した氷菓の販売を再開する具体的な予定があると主張しているが、その詳細は明らかにされておらず、そもそも、それをもって、正当な理由があるといえるものでもない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したということはできず、また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があったことを明らかにしたということもできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-11-30 
結審通知日 2015-12-02 
審決日 2015-12-15 
出願番号 商願2008-38845(T2008-38845) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 守屋 友宏 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 原田 信彦
中束 としえ
登録日 2009-08-21 
登録番号 商標登録第5259019号(T5259019) 
商標の称呼 キンタロウ、キンタロー 
代理人 宮崎 章 
代理人 一色国際特許業務法人 
代理人 島垣 哲平 
代理人 宮崎 治子 
代理人 野付 さくら 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ