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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16
管理番号 1310805 
審判番号 取消2015-300118 
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-02-20 
確定日 2016-01-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4906184号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4906184号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4906184号商標(以下「本件商標」という。)は,「LUXURY」の欧文字と「ラグジュアリー」の片仮名を上下二段に横書きしてなり,平成17年3月10日に登録出願,第16類「雑誌,新聞,ムック」を指定商品として同年11月4日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成27年3月9日にされたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書及び審判事件弁駁書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出するとともに,平成27年9月17日付け上申書にて,本件審判の審理を書面審理とするよう申し立てた。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれの者によっても使用した事実が存在しないから,その商標登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人によって提出された乙各号証によっては,本件商標の使用に関する被請求人の主張事実は証明されていないから,本件商標の商標登録は取り消されるべきである。
(1)乙各号証の検討
被請求人は,本件商標が,「雑誌」について使用されている根拠として,乙第1号証ないし乙第9号証を提出しているものの,雑誌そのものを本件商標の使用証拠として提出していない。
仮に,本件商標が商品「雑誌」の出所標識として使用されているのであれば,本件商標は,当然に,雑誌の表紙や背表紙等に付されているはずであり,かつ,バックナンバーの入手が容易である雑誌の特徴を考慮すると,被請求人にとって,本件審判請求の登録前3年以内に発行された雑誌を本件商標の使用証拠として提出することは容易であることはいうまでもない。
それにもかかわらず,被請求人が雑誌そのものを提出していないことは不自然極まりなく,被請求人が,本件審判請求の登録前3年以内に本件商標を商品「雑誌」の出所標識として使用していないことを推察させるものである。
また,このことを除いても,乙各号証において被請求人が本件商標を商品「雑誌」について使用しているとは認められる余地はない。
以下,各乙号証について検討する。
ア 乙第1号証
乙第1号証は,被請求人の「履歴事項全部証明書」であって,これは被請求人の法人としての商業登記の登記事項を示すものであり,その性質上,本件商標の使用とは直接的に関連しない。
イ 乙第2号証ないし乙第8号証
これらの証拠は,被請求人の社員4名の名刺(乙5ないし乙8。なお,乙5の名刺に記載された社員の氏名をA,同様に乙6はB,乙7はC,乙8はDと表記する。以下,これらをまとめて「被請求人名刺」という。)とそれに関する名刺作成者による被請求人宛の請求書の写しである(乙2ないし乙4)。
被請求人は,答弁書において「各名刺は商品『雑誌』を広告宣伝する媒体として機能」すると主張しているが,名刺とは,姓名・住所・職業・身分などを印刷したものであり,商取引においては,自己紹介や連絡先を取引相手に伝えるために用いられるものであるから,名刺は,商品の広告としての機能を有しないものである。
したがって,名刺に本件商標が付されているとしても,名刺は商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告」に該当しない。
仮に被請求人名刺が,「雑誌」という「商品に関する広告」であるとしても,当該商品の出所標識は,「LUXURY」ではなく,「Luxury Life-Conscious Magazine」と近接して表示されている「オーシャンズ」や「OCEANS」と,認識するのが自然である。
答弁書において,被請求人は,名刺に記載された「文字『LUXURY』は会社名称の単語の一部を構成する文字というだけでなく,他の機能,すなわち,雑誌(Luxury Life-Conscious magazine)の識別標識としての機能も有しているものと認められる」と主張しているが,名刺を見る限り,当該「LUXURY」の文字は,被請求人の名称として被請求人名刺に記載されている「株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の英語表記「INTERNATIONA LLUXURY MEDIA Co.,Ltd.」を構成する単語のひとつとして使用されているにすぎないことは,直ちに理解できる。
しかも,当該英文表記は,全体で被請求人の名称を意味するという性質上,一連一体のものとして認識されること,及び,名刺中の「LUXURY」の文字は,「OCEANS」,「オーシャンズ」,「Luxury Life-Conscious magazine」といった部分からは距離を置いて配されていることも相俟って,当該文字が,被請求人の英文名称を構成する一単語であるとの認識を超えて,商品「雑誌」の出所標識であると認識されることはあり得ない。
被請求人は,「LUXURY」の文字が太字で強調されていることを主張するが,これが太字で記されているとしても,上記のとおり「INTERNATIONAL」や「MEDIA」等の語と一体で被請求人の名称を表示するものであり,かつ,商品「雑誌」の出所標識は「OCEANS」と「オーシャンズ」であると認識される以上,需要者に当該文字と商品「雑誌」との間にその出所を表示していると認識させるような関連性を見出すことはできない。むしろ,需要者の目には,当該文字は,単に,被請求人の企業理念やコーポレートメッセージあるいは企業コンセプトを表現したものと認識されるに止まるというべきである。
そもそも,雑誌に本件商標が使用されていると認められない状況の中で,需要者が,どのようなプロセスによって,被請求人名刺中に記載された「LUXURY」を,商品の出所標識として認識できるのかについては,検討がつかない。
さらに,被請求人は答弁書において,「被請求人名刺の頒布行為は商標法第2条第3項第8号に該当する登録商標の使用と認められる」と主張し,被請求人名刺が頒布された旨を主張するが,乙各号証を見る限り,これらが,実際に頒布された事実を見出すことはできない。
以上のことからすれば,被請求人名刺は,商品「雑誌」に関する広告とはいえず,かつ,被請求人名刺が頒布された事実も不明であり,さらにいえば,当該名刺中の「LUXURY」の文字は商品「雑誌」の出所標識として使用されているものではないため,乙第2号証ないし乙第8号証は,本件商標が,商標法第2条第3項第8号に該当する行為で,本件審判の請求登録前3年の期間内に使用されていたことを何ら証明するものではない。
ウ 乙第9号証
乙第9号証は,被請求人のウェブサイトのプリントアウトと認められるものである。
当該ウェブサイトに記載の「LUXURY」の語は,被請求人名刺と同様に,同書同大で配されている「INTERNATIONAL」と「MEDIA」の各語と一体で被請求人の英語名称と認識されるにすぎないものである。
また,被請求人のウェブサイトに雑誌表紙や雑誌データが掲載されているとしても,雑誌「OCEANS」の公式ウェブサイトは乙第9号証として被請求人が提出したものではなく,他者の運営によるものであり(甲2),また,そもそも実際の雑誌に本件商標が使用されていない以上,ウェブサイト上の「LUXURY」の文字が商品「雑誌」の出所標識として認識できるような特段の事情はない。
むしろ,被請求人のウェブサイトにおいては,同人が,雑誌「OCEANS」に関連して何かしらの事業を行っている印象を需要者に与えるにすぎないものである。例えば,甲第3号証及び甲第4号証のように,被請求人のウェブサイトにおいては,上記雑誌への広告出稿の資料を入手できることから,被請求人は,当該雑誌への広告出稿の代理業務を行っていると認識され得るといえる。このような資料が被請求人ウェブサイトにおいて掲載されていることを踏まえると,同ウェブサイト上に記載されている雑誌「OCEANS」の発行部数などのデータは,これを広告・宣伝するために記載されたものではなく,同雑誌に広告掲載を希望する者向けに掲載されていると推察できるものである。
このことからすると,被請求人にウェブサイトは,そもそも商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告」としての性格を有しているとは認められない。
また,被請求人名刺同様に,「LUXURY」の語が太字で表示されているにしても,上記のとおり,これは「INTERNATIONAL」と「MEDIA」と同書同大で一連一体に表示されていることで,商品の出所標識としてではなく,被請求人の名称(略称)であると認識されるものであり,これ以外には,被請求人の企業理念やコーポレートメッセージ或いは企業コンセプトを表現したものと認識されるにとどまるというべきである。
これらのことからすれば,乙第9号証は,本件商標が,商標法第2条第3項第8号に該当する行為で,本件審判の請求登録前3年の期間内に使用されていたことを何ら証明するものではない。
(2)結語
以上述べてきたように,被請求人によって提出された乙各号証によっては,本件商標の使用事実は何ら証明されていないから,本件商標係る登録は,取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,審判事件答弁書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出するとともに,平成27年9月14日付け上申書にて,被請求人は主張立証を尽くしているので,本件審判の審理を書面審理とするよう申し立てた。
本件商標は,以下のとおり,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で商標権者が使用していたことは明らかである。
1 本件商標の使用者
本件商標の使用者は,商標権者(株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア)である。
2 本件商標の使用時期
(1)名刺による本件商標の使用
株式会社ケイワンプリント(東京都新宿区)は,平成26年7月31日付け,同年8月31日付け,同年9月30日付けで,商標権者に対して請求書(乙2ないし乙4)を発行している。
これらの請求書は,商標権者の会社に勤務する社員の名刺(被請求人名刺)の印刷費に対するもので,平成26年7月31日付けの請求書には社員Aの名刺(乙5)に対する請求があり,同年8月31日付けの請求書には社員Bの名刺(乙6)及び社員Cの名刺(乙7)に対する請求があり,同年9月30日付けの請求書には社員Dの名刺(乙8)に対する請求がある。
これらの請求書の発行日から明らかなように,本件商標は,少なくとも平成26年8月には使用されていたものである。
(2)ウェブサイトによる本件商標の使用
平成25年8月26日には,商標権者のウェブサイトがウェブサーバー上において閲覧可能となった(乙9)。
3 本件商標の使用場所
被請求人名刺による本件商標の使用場所は,商標権者の本店所在地(東京都港区南青山)及び取引先である。
また,ウェブサイトによる本件商標の使用場所は,以下のとおりである
http://www.ilm-tokyo.co.jp/ :フロントページ
http://www.ilm-tokyo.co.jp/mediadata/index.html :媒体資料ページ
4 本件商標の使用態様
(1)被請求人名刺による本件商標の使用
被請求人名刺の表面は,白地となっており,日本語で,氏名,所属,会社名称,会社住所,電話番号等が黒色で印刷されるとともに,左上側には英文字「OCEANS」が青色で極めて目立つよう印刷されている。
一方,被請求人名刺の裏面は青地となっており,英語で,氏名,所属,会社名称,会社住所,電話番号等が黒字で印刷されるとともに,英文字「OCEANS」が上部寄りに横幅全体にわたって,白色で極めて目立つよう印刷されている。
また,被請求人名刺の表面の文字「OCEANS」の上や被請求人名刺の裏面の文字「OCEANS」の「C」及び「E」の部分には,小さく「Luxury Life-Conscious Magazine」と印刷されている。
以上のように被請求人名刺において,氏名,所属,会社名称,会社住所,電話番号等の印刷を通じて自己紹介という名刺本来の機能を有することはもとより,「OCEANS」及び「Luxury Life-Conscious Magazine」の印刷により,商品の広告宣伝機能を発揮している。すなわち,「Luxury Life-Conscious Magazine」の意味が「高級な人生に敏感な雑誌」であることから,「OCEANS」がこの雑誌の題号であることが明白となっており,この名刺を用いて商標権者が発行する雑誌「OCEANS」の広告宣伝を行っている。
また,被請求人名刺の裏面には,「INTERNATIONAL LUXURY MEDIA Co.,Ltd」と会社名称が記載されているが,この会社名称のうち,「INTERNATIONAL」及び「MEDIA Co.,Ltd」の文字は細線で印刷され,他方,「LUXURY」の文字が太字で強調され,「OCEANS」と同様に極めて目立つ文字となっている。
そうすると,文字「LUXURY」は会社名称の単語の一部を構成する文字というだけでなく,他の機能,即ち,雑誌(Luxury Life-Conscious Magazine)の識別標識としての機能も有している。
よって,被請求人名刺は,商品「雑誌」を広告宣伝する媒体として機能し,また,被請求人名刺には商品「雑誌」を識別する標識として本件商標と社会通念上同一の商標である文字「LUXURY」が印刷されているため,各名刺の頒布行為は商標法第2条第3項第8号に規定する登録商標の使用に該当する。
(2)ウェブサイトによる本件商標の使用
ウェブサイトのフロントページ及び媒体資料ページの左側上部には,「INTERNATIONAL」と「LUXURY MEDIA」が上下2段に記載され,これらの文字のうち「LUXURY」が太文字で強調的に記載されている。
また,プロントページにおいては「LUXURY」の直ぐ下に雑誌の表紙が掲載され,媒体資料ページにおいては雑誌名,発行日,定価等のデータが記載されている。
このように,文字「LUXURY」が強調的に記載され,また,この標識の直下に雑誌表紙が掲載され,或いは,この標識の下方に雑誌データが記載されているため,文字「LUXURY」は会社名称の構成文字というだけでなく,雑誌とが関連性を生じ,雑誌の識別標識としての機能も発揮している。
よって,本件商標と社会通念上同一の商標である文字「LUXURY」がウェブサイトを通じて広告的に使用されているため,ウェブサイト上の文字「LUXURY」は,商標法第2条第3項第8号に規定する登録商標の使用に該当する。
5 むすび
以上の点から明らかなように,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が指定商品「雑誌」について本件商標を使用していること明らかであるから,本件審判の請求は成り立たないとの審決を求める次第である。

第4 当審の判断
1 被請求人は,本件商標は,本件審判の請求の登録前3年以内に,本件商標権者により,本件商標の指定商品中,その請求に係る第16類「雑誌」について使用している旨主張しているところ,証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,「履歴事項全部証明書」であり,「商号」の欄には被請求人の社名である「株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の記載,「会社成立の年月日」の欄には「平成6年8月17日」の記載及び「目的」の欄には「1 書籍,雑誌,新聞,パンフレット等の企画,編集及び出版業」の記載がある。
(2)乙第2号証ないし乙第4号証は,被請求人名刺の印刷費に関する「株式会社ケイワイプリント」から被請求人に対する「請求書」であり,左上には被請求人の社名である「株式会社インターナショナル・ラグジュアリーメディア」及び住所の記載,右上には「株式会社ケイワイプリント」の社名及び住所等とともに,各号証毎に以下の記載がある。
ア 乙第2号証には,「下記の通りご請求申し上げます。(26年7月31日締切分)」との記載があるほか,請求内容の内訳を記載した表中の1行目には,年月日の欄に「26 7 8」,商品名の欄に「名刺(オーシャンズ刷込)A様」,数量の欄に「2個」,単価の欄に「3,200」及び金額の欄に「6,400」の記載がある。
イ 乙第3号証には,「下記の通りご請求申し上げます。(26年8月31日締切分)」との記載があるほか,請求内容の内訳を記載した表中の1行目には,年月日の欄に「26 821」,商品名の欄に「名刺(オーシャンズ刷込)B様」,数量の欄に「2個」,単価の欄に「3,200」及び金額の欄に「6,400」の記載が,同4行目には,年月日の欄に「26 829」,商品名の欄に「名刺(オーシャンズ刷込)C様」,数量の欄に「2個」,単価の欄に「3,200」及び金額の欄に「6,400」の記載がある。
ウ 乙第4号証には,「下記の通りご請求申し上げます。(26年9月30日締切分)」との記載があるほか,請求内容の内訳を記載した表中の1行目には,年月日の欄に「26 9 5」,商品名の欄に「名刺(オーシャンズ刷込)D様」,数量の欄に「2個」,単価の欄に「3,200」及び金額の欄に「6,400」の記載がある。
(3)被請求人名刺(乙5ないし乙8)の表面には,いずれも,左上側には英文字「OCEANS」の文字が青色の太字でやや大きく記載され,その上段に小さく「Luxury Life-Conscious Magazine オーシャンズ」の文字の記載,また,下方には被請求人の社名である「株式会社 インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の文字の記載がある。そして,同じく表面には,被請求人の各社員の氏名,被請求人の住所及び電話番号等の記載がある。
また,被請求人名刺の裏面には,いずれも,最上段には英文字「OCEANS」の文字が青地に白抜きの太字で大きく記載され,当該「OCEANS」の文字の「C」及び「E」部分の中央に小さく「Luxury Life-Conscious Magazine」の文字の記載,また,下方には被請求人の社名を欧文字で表した「INTERNATIONAL LUXURY MEDIA Co.,Ltd.」(「LUXURY」の文字部分が太字で書されている。)の文字の記載がある。そして,同じく裏面には,被請求人の各社員の氏名,被請求人の住所及び電話番号等の英文による記載がある。
(4)乙第9号証は,被請求人のウェブサイトをウェブサーバー上で閲覧可能にしたことを証する証明書と添付資料(ウェブサイトの写し)であり,以下の記載がある。
ア 「証明書」には,被請求人の住所,名称である「株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」及び代表取締役の氏名,そして,その下に,「私は,貴社の発注により,平成25年8月26日に添付のウェブデータをウェブサーバー上において閲覧可能にしたことに相違ありません。」の記載とともに,「[受注者]」の住所及び氏名の記載とともに押印がある。
イ 添付資料の第1葉は,黒地の背景に,左側上部には,「ILM」の文字(「L」と「M」の文字はつながっている)を極太字で表し,その下に,「INTERNATIONAL」と「LUXURY MEDIA」が上下二段に記載され,これらの文字のうち「LUXURY」が太文字で記載されている。そして,その下に雑誌の表紙のような写真とともに「OCEANS」の文字が記載されている。さらに,これらの右側には,「社名」の見出しとともに「株式会社 インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」及び「International Luxury Media Co.,Ltd.」の文字の記載が認められる(これらの記載文字はすべて白色で記載されている。)。
ウ 添付資料の第2葉は,上記第1葉の続きに相当する部分と解されるところ,当該葉の「事業内容」の項には,「『オーシャンズ』などの出版・広告事業,『MOOK』『CVS商品』の発売,イベントの企画・製作ほか」の記載がある。
エ 添付資料の第3葉には,黒地の背景に,「媒体資料について」の見出しの下,「雑誌名」,「発売日」,「定価」,「判型」及び「発行部数」の項目毎に,それぞれ,やや大きな太文字「OCHANS」及びその下に小さく「オーシャンズ」,「毎月24日発売」,「780円」,「A4変型」並びに「86,525部 2012年2月?5月号 平均発行部数」の記載,さらに,「お問い合わせ先 株式会社 インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の記載がある(これらの記載文字はすべて白色で記載されている。)。
2 上記1の事実によれば,以下を認めることができる。
(1)被請求人名刺について
被請求人名刺は,いずれも「OCEANS」(オーシャンズ)の文字が大きく印刷されている名刺であるから,これらの名刺は,それぞれ,株式会社ケイワイプリントが,平成26年7月から9月にかけて作成したAないしDに係る名刺(オーシャンズ刷込)代として,被請求人に対して料金請求している名刺であると推認できること,また,被請求人名刺に記載された「OCEANS(オーシャンズ)」及び「Luxury Life-Conscious Magazine」の各文字は,それぞれの表示態様も考慮すれば,前者が雑誌名を表し,後者が「高級な人生に敏感な雑誌」ないし「ぜいたくな生活を意識した雑誌」程の意味合いで,当該雑誌のコンセプトを表しているものと理解,認識できるから,被請求人名刺は,雑誌「OCEANS(オーシャンズ)」の広告機能も有する体裁からなるものと認められること,さらに,被請求人名刺に記載されている「Luxury Life-Conscious Magazine オーシャンズ」,「Luxury Life-Conscious Magazine」及び「INTERNATIONAL LUXURY MEDIA Co.,Ltd.」(「LUXURY」は太文字で記載されている。)の各文字中には,本件商標とつづりを共通にする「LUXURY」(頭文字以外を小文字で表したものを含む。)の文字が含まれていること,同じく「株式会社 インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の文字中には,本件商標と称呼を共通にする「ラグジュアリー」の文字が含まれていること,が認められる(乙2ないし乙8)。
しかしながら,被請求人の提出する乙各号証によっては,被請求人名刺が実際に頒布等によって一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていたものと認めるに足りる的確な証拠はない。
(2)被請求人のウェブサイトについて
被請求人のウェブサイト(乙9)は,その証明書によれば,平成25年8月26日に一般公衆において閲覧可能な状態に置かれたものと推認できること,また,同ウェブサイトは,被請求人の出版に係る雑誌「OCEANS(オーシャンズ)」の広告であると認められること,さらに,同ウェブサイトに記載されている「INTERNATIONAL」と「LUXURY MEDIA」(「LUXURY」は太文字で記載されている。)とからなる二段書き及び「International Luxury Media Co.,Ltd.」の文字中には,本件商標とつづりを共通にする「LUXURY」(頭文字以外を小文字で表したものを含む。)の文字が含まれていること,同じく「株式会社 インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の文字中には,本件商標と称呼を共通にする「ラグジュアリー」の文字が含まれていること,が認められる。
なお,請求人は,被請求人のウェブサイト(乙9)においては,雑誌「OCEANS(オーシャンズ)」への広告出稿の資料を入手できることから(甲3及び甲4),被請求人は,同雑誌への広告出稿の代理業務を行っていると認識され得るので,同ウェブサイトに記載されている同雑誌の発行部数などのデータは,同雑誌を広告・宣伝するために記載されたものではなく,同雑誌に広告掲載を希望する者向けに掲載されているものと推察でき,したがって,同ウェブサイトは,そもそも商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告」としての性格を有しているとは認められない旨主張する。
しかしながら,同ウェブサイトには,被請求人の事業内容として,「オーシャンズ」などの出版・広告営業を行っていることが明確に記載されているのであるから,被請求人の出版に係る雑誌「OCEANS(オーシャンズ)」の広告であると優に認めることができる。
したがって,請求人の上記主張は,採用できない。
3 上記2の行為が商標法第50条所定の「使用」の事実に該当するか否かについて
(1)被請求人名刺について
被請求人は,被請求人名刺が商品「雑誌」を広告宣伝する媒体として機能し,また,被請求人名刺には商品「雑誌」を識別する標識として本件商標と社会通念上同一の商標である文字「LUXURY」が印刷されているため,被請求人名刺の頒布行為は商標法第2条第3項第8号に規定する登録商標の使用に該当する旨主張する。
しかしながら,被請求人名刺は,上記2(1)のとおり,本件審判の請求の登録前3年以内である平成26年7月から9月にかけて作成されたものであって,雑誌「OCEANS(オーシャンズ)」の広告機能も有する体裁からなるものであるとは認められるものの,被請求人の提出する乙各号証によっては,被請求人名刺が実際に頒布等によって一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていたものと認めるに足りる的確な証拠はないものであるから,被請求人名刺をもって商標法第2条第3項第8号にいう広告ないし頒布行為があったということはできない。
さらに,以下のとおり,仮に被請求人名刺が本件審判の請求の登録前3年の期間内に頒布されたとしても,本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを立証し得ない。
ア 本件商標は,上記第1のとおり,「LUXURY」の欧文字と「ラグジュアリー」の片仮名を上下二段に横書きしてなるものである。
イ 被請求人名刺に記載された「Luxury Life-Conscious Magazine」の欧文字は,上記2(1)のとおり,その構成文字全体をもって「高級な人生に敏感な雑誌」ないし「ぜいたくな生活を意識した雑誌」程の意味合いで,雑誌「OCEANS(オーシャンズ)」のコンセプトを表示するものと理解,認識されるものと認められるから,その構成中の「Luxury」の文字部分だけが独立して商品の出所識別標識として看取されるものとはいえない。
ウ 被請求人名刺に記載された「INTERNATIONAL LUXURY MEDIA Co.,Ltd.」及び「株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の文字は,いずれも被請求人の会社名を表示した部分であるから,たとえ,前者の文字中の「LUXURY」の文字部分が太字で書されているとしても,全体として,被請求人の会社名を看取させるものであって,「LUXURY」の文字部分が独立して商品の出所識別標識として看取されるものとはいえない。ましてや,後者の「ラグジュアリー」の文字部分は,他の文字部分に比べて太字で書されているわけでもないのであるから,同様に,独立して商品の出所識別標識として看取されるものとはいえない。そうすると,被請求人名刺に記載された「INTERNATIONAL LUXURY MEDIA Co.,Ltd.」及び「株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」の文字は,本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。
エ したがって,被請求人名刺に記載された文字は,いずれも本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。
(2)被請求人のウェブサイトについて
被請求人は,被請求人のウェブサイト中には,本件商標と社会通念上同一の商標である文字「LUXURY」が広告的に使用されているため,当該ウェブサイトは,商標法第2条第3項第8号に規定する登録商標の使用に該当する旨主張する。
しかしながら,乙第9号証の添付資料の第1葉は,被請求人のウェブサイトの写しと認められるが,当該ウェブサイト左上に表示されている「INTERNATIONAL」及び「LUXURY MEDIA」の文字を二段に書してなる部分は,その右側にある「社名」欄に「株式会社インターナショナル・ラグジュアリー・メディア」及び「International Luxury Media Co.,Ltd.」の文字が記載されていることから,たとえ,「LUXURY」の文字が太字で書されているとしても,全体として,被請求人の会社名を省略表記したものと看取させるものであって,「LUXURY」の文字部分だけが独立して商品の識別標識として看取されるものとはいえない。
したがって,被請求人のウェブサイト中の「INTERNATIONAL」及び「LUXURY MEDIA」の文字を二段に書してなる標章は,本件商標と社会通念上同一の商標ということはできない。
(3)小括
以上のとおりであるから,被請求人の提出に係る証拠によっては,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定商品中「雑誌」について,本件商標(本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標を含む。)の使用をしていたものと認めることはできない。
その他,本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内にその指定商品のいずれかについて使用されているものと認めるに足る証拠はない。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む)の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の取消請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,商標法第50条の規定により,本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-11-16 
結審通知日 2015-11-19 
審決日 2015-12-11 
出願番号 商願2005-20650(T2005-20650) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y16)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 早川 文宏
田村 正明
登録日 2005-11-04 
登録番号 商標登録第4906184号(T4906184) 
商標の称呼 ラグジュアリー、ラクシャリー、ラグジャリー 
代理人 辻居 幸一 
代理人 藤倉 大作 
代理人 特許業務法人アテンダ国際特許事務所 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 松尾 和子 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 

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