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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09
管理番号 1309794 
審判番号 無効2014-680005 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-12-03 
確定日 2015-11-10 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第1143940号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 国際登録第1143940号の指定商品及び指定役務中,第9類「Hand held computers;computer keyboards;scanners (data processing equipment);electronic dictionaries;printers for use with computers;facsimile machines;walkie-talkies;television sets;video recorders;DVD players;integrated circuits;electronic chips;semiconductor device.」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1143940号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりからなり,2012年1月17日にPeople’s Republic of Chinaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2012年(平成24年)5月2日に国際商標登録出願,同26年2月10日に登録査定,第9類「Hand held computers;computer keyboards;scanners (data processing equipment);electronic dictionaries;printers for use with computers;facsimile machines;walkie-talkies;television sets;video recorders;DVD players;integrated circuits;electronic chips;semiconductor device;batteries;battery chargers.」,並びに,第1類,第11類,第21類,第37類,第39類ないし第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同26年4月18日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は,以下の3件である。
1 引用商標1は,請求人が主として「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供等」について使用をする別掲2のとおりからなる標章である。
2 登録第5052688号商標(以下「引用商標2」という。)は,「GREE」の欧文字を標準文字で表してなり,平成18年7月27日に登録出願,第9類「ダウンロード可能な動画」及び第41類「オンラインによる映像・音楽及び音声の提供,電子出版物の提供,セミナーの企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),当せん金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏に関する情報の提供,映画の上映・制作又は配給又は映画情報の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,オンラインゲーム大会の企画・運営,インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳・翻訳及びこれらに関する情報の提供,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,娯楽の提供及びこれらに関する情報の提供,教育情報の提供」,並びに,第35類,第36類,第38類,第39類,第42類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同19年6月8日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
3 登録第5284832号商標(以下「引用商標3」という。)は,「グリー」の片仮名を標準文字で表してなり,平成21年2月23日に登録出願,第9類「ダウンロード可能な動画」及び第41類「オンラインによる映像・音楽及び音声の提供,電子出版物の提供,セミナーの企画・運営又は開催,音楽の演奏に関する情報の提供,映画の上映・制作又は配給又はこれらに関する情報の提供,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),オンラインゲーム大会の企画・運営,インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供,娯楽の提供及びこれらに関する情報の提供,教育情報の提供」,並びに,第38類,第42類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同21年12月4日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
なお,引用商標1ないし引用商標3をまとめて,以下「引用商標」という場合がある。
第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第145号証(枝番号を含む。以下「甲○」と記載する場合がある。)を提出した。
1 無効の理由
請求人は,以下のとおり,本件審判の請求について利害関係を有する。
(1)本件商標は,請求人の社名の略称である「GREE」の語を要部としている。
(2)本件商標は,請求人の提供する役務と極めて近接する(関連する)商品を指定して登録されており,本件商標が使用されると,請求人の提供する役務と出所の混同を生じる。
(3)本件商標は,請求人の出願にかかる「GREE」の語又は「GREE」の語を要部とする商標の引例となることが多く,請求人が必要とする指定商品・役務の権利化の障害となる。
2 無効原因
(1)商標法第4条第1項第10号又は同項第15号について
本件商標は,切欠きの円図形の右に,欧文字で「GREE」と書してなり,2012(平成24)年1月17日に中華人民共和国になされた基礎出願に基づいて我が国に出願された。
引用商標からは,いずれもその文字列に即して「グリー」という同一の称呼が生じるから,本件商標は,引用商標と同一の称呼が生じる類似商標であることは明らかである。
引用商標は,本件商標の出願前から広範な商品・役務に永年使用されてきた結果,我が国において,周知・著名な商標となっている。
したがって,本件商標は,引用商標1との関係では商標法第4条第1項第10号に該当し,引用商標2及び3との関係では商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)請求人が実際に使用している商標並びに役務について
ア 引用商標は,いずれも造語商標であり識別力が高い
引用商標1は六角図形の横にGREEと横書きにしてなり,引用商標2は欧文字で「GREE」と横書きにしてなり,引用商標3は片仮名で「グリー」と横書きにしてなる。
引用商標は,いずれも「GREE」又は「グリー」の語の部分を要部とするが,これは,「6次の隔たりを意味する『Six De”gree“s of Separation』という統計学・社会学の仮説から名付けられた」(甲6ないし甲9)造語商標である。
イ 引用商標2は,防護標章としても登録されている
引用商標2は,「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供」等を表示するものとして周知・著名性が認められ,引用商標2と同一の標章が,第9類に属する商品等について防護標章として登録されている(甲11及び甲12)。
引用商標1は,引用商標2と同一文字列からなり,引用商標3は,引用商標2と全く同一の称呼が生じる商標であるから,本件商標を第9類の指定商品に使用すれば,引用商標との出所の混同が生じる。
ウ 引用商標は,多数の辞書等にも掲載されている
引用商標は,辞書にも,専ら請求人又は請求人の提供するソーシャルネットワークシステム(以下「SNS」という。)の名称,SNSを通じて提供されるゲーム(以下「ソーシャルゲーム」という。)に関連して掲載され,また,2010年ないし2012年の現代用語の基礎知識等の辞典,さらに,いわゆる電子辞典でも掲載され,他の用例をみない(甲13ないし甲23)。
そのため,Yahoo!等の一般検索エンジンを使用して「GREE」の語を検索すると,2012年7月25日時点では,7,250万件ものデータが抽出された(甲24)。それらの抽出データの上位100件中,請求人と関係のない情報は僅か2件のみであり,残余の98件は全て請求人に関する情報である。
エ 請求人の業務は多岐にわたる
(ア)SNS事業
請求人は,2004年に代表取締役が起業したいわゆるベンチャー企業に端を発し,それから10年足らずの間に,登録会員3000万人を擁するに至った,ソーシャルネットワークサービス(以下「SNSサービス」という。)の運営会社である。
請求人は,SNS分野においては日本を代表する企業であり,起業からわずか4年で東証マザーズに上場し,さらにその1年半後の2008年には,東証1部に指定替えとなった。東証マザーズ上場時には,終値時価総額で,同業のミクシィ社を抜いて1070億5000万円となり,東証マザーズ1位となった(甲25及び甲26)。
請求人は,パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)を利用した通信や,携帯電話・多機能電話機(以下「多機能電話等」という。)の急速な普及・機能の高度化を予測して,これに対応するサービスを次々と提供することで,SNS業界を牽引しながら成長してきた。
SNSサービスそのものが請求人を嚆矢として生まれ,その結果,「日本でも2004年頃からサービスが始まり,日本最初のSNSと言われる『GREE』や,会員数500万人を超え社会現象ともなった『mixi』が有名である。」等と評価されている。
請求人は,このSNSを基礎として,ソーシャルゲーム市場(SNSの加入者に向けて提供されるオンラインゲーム市場)を形成してビジネスを拡大し続け,遅くとも2008年の時点で,引用商標は周知となった(甲27及び甲28)。
(イ)ソーシャルゲーム事業
請求人は,本件商標の基礎出願の日である2012年時点での自社製作分だけでも,17タイトルのソーシャルゲームを提供している(甲29)。
請求人は,起業の翌年から他社に先駆けていち早く携帯電話向け情報提供サービスを開始したが,これらのゲームの中には,世界に先駆けて携帯電話用ソーシャルゲームとして公開された「釣り☆スタ」や「探検ドリランド」等が含まれる(甲30ないし甲33)。
なお,これらのゲームは,SNSを使用したゲームであることから(事前にゲーム器やゲームソフトを購入する必要がなく,携帯電話を使用して,少ない時間でもどこでもゲームが可能であって,擬似参加型である点で)広く市場に受け入れられることとなった(甲34及び甲35)。
(ウ)プラットフォーム事業
請求人は,請求人自身の情報発信とともに,各種エンターテインメント情報や生活情報を提供する事業を行っている。
この事業は,請求人のSNS「GREE」の独自プラットフォームの機能・仕様を広く公開し,GREE以外のWebサービスやアプリケーションを,SNS「GREE」をベースにして開発することを可能にした事業である。
かかる事業を展開することにより,請求人は,自社の提供するソーシャルゲーム等のみならず,カプコン,タイトー,インデックス,セガ,バンダイナムコ等といったゲームメーカーの提供するゲーム等を広く自社会員・ユーザーに提供することができ,また,ディズニー,角川グループ,楽天,エイベックス,KDDI,マイクロソフト,東映アニメーション,松竹,ファミリーマートといった極めて広い範囲の(多種企業との)業務提携も加速することとなった(甲36の1ないし5)。
(エ)広告事業
請求人は,その子会社を含めて広告事業を展開し,2010年の広告収入は概算70億円,2011年の広告収入は概算98億円,2012年度の広告収入は概算131億円となっている(甲38及び甲39)。
(3)引用商標の使用時期・期間,使用地域について
ア 使用期間等
引用商標は,それぞれ2004年の創業時より一貫して使用されている。
他方,本件商標は,2012年5月2日に国際登録され,優先日は2012年1月7日であるが,いずれも引用商標が周知・著名となった後である。
すなわち,甲第14号証ないし甲第16号証のとおり,「現代用語の基礎知識」に,引用商標についての記事が掲載されたのは,2010年1月ないし2012年1月であって,本件商標の優先日である2012年1月時点では,引用商標は,辞書に掲載されるほどの周知・著名性を獲得していた。
特に,引用商標の周知・著名性獲得については,近年のPCや携帯電話等の急速な普及,ネットワーク環境の整備といった背景を考慮する必要がある。
すなわち,かかる分野で使用される商標は,短期に周知・著名となるケースが多く,請求人の主業務が,PC,携帯電話等をツールとして成立していることや,ネットワーク環境そのものを使用してゲームを提供していることが,引用商標が極めて短期間に周知・著名性を獲得した理由である(甲40ないし甲61)。
イ 使用地域等
請求人の役務は,専らPCや携帯電話,多機能電話機を通じて提供されていることから,引用商標の使用については,日本はもとより世界で使用されている。
上述のとおり,請求人の会員は,2012年1月時点で2億3,481万人(国内約2,900万人)であり(甲42),閲覧数は2009年度でも月間100億回にも達している(甲41)。請求人の提供するSNSであるGREEの会員は,全国的に広く分布し,2012年5月時点では,東京首都圏が34%,大阪を含む近畿地域が16%と高いものの,他の地域についても,概ね5%ないし11%程度の会員がいる(甲62)。請求人のSNS「GREE」の会員は,未成年が18%,20歳代が34%,30歳代が27%,40歳代が21%であり,広い需要者層に認知されている。また,同会員の男女比はほぼ半々であり,請求人の提供する役務が年齢,男女の別なく広く利用されている。
(4)出願人の企業規模,営業状況
ア 企業規模
請求人は,我が国初のSNS運営会社として2004年に設立され,現在では業界最大手の企業になっている。現在の社員数は1,758人(連結),資本金は22億6200万円,過去の営業状況(売上高)は,2009年6月期は139億4500万円,2010年6月期は352億3100万円,2011年6月期は641億6900万円,2012年6月期は1,577億8400万円であり,4年間の業績は,前年比約200%以上と増加しており,2012年6月期では,1,500億円を超えるに至った(甲63の1ないし3)。
イ 国内4大ソーシャルアプリ・プラットフォーム企業との比較
甲第64号証は,「国内4大ソーシャルアプリ・プラットフォーム」企業の2012年1-3期決算を比較した記事である。同期の実績では,請求人は,売上高,粗利,営業利益のいずれについてもトップとなっている。
請求人の業績は,2008年第3四半期以降,前年実績を下回る期は皆無であり,特に,GREEのオープン化を図って以降業績は急激に伸びている。
以上のとおり,請求人は企業規模,業容のいずれの点からも,日本のTOP企業である。また,請求人は,社名とサイト名を同一にしていることから,引用商標の市場への浸透にも有利に働いている。
ウ 高い成長率と注目度
請求人は,2009年,2010年と連続してデロイト トウシュ トーマツ リミテッドの選出する,テクノロジー企業成長率ランキング「日本テクノロジー Fast50」において,連続トップとなり,極めて高い成長率が注目された(甲65及び甲66)。
(5)引用商標の宣伝・広告実績について
ア TVCM
請求人は,日本でも上位10社に入る広告実績を誇り,それらの広告によって,引用商標の周知化を図ってきた。その結果,引用商標は,SNS等の取引者・需要者のみならず,日常的にソーシャルゲームを行っていない層においても周知となった。
(ア)2010(平成22)年4月ないし2012(平成24)年1月の民放5社のTVCM実績データは,CM自動認識システムを使用した,民放テレビ局5社(いわゆるキー局)のCM放送回数の集計・発表を行っているゼータ・ブリッジ社の発表データである。
関東に限定したデータではあるが,その広告回数の順位のみ比較しても,請求人のTVCMは,我が国の著名企業の中でも突出ている(甲67ないし甲86)。
2010年4月ないし2012年1月の,TVCMの回数の総合順位では,殆どの月で,日本の全企業のTOP10に入っている。
また,商品別オンエアランキングとは,それぞれのCMの回数を商品別に集計したものであるが,請求人のCMは,対象20ヶ月中(東日本大震災でデータが公表されていない2011年2月及び3月を除く)15ヶ月で,我が国1位となっている。
(イ)過去5年間の推定視聴者数
請求人が,株式会社東京企画CM総合研究所(甲87)に依頼をして抽出した,請求人のTVCMの推定視聴者数であり,この調査は,民放テレビ局5社(いわゆるキー局)のCM放送回数を基準に(ただし,上記ゼータ・ブリッジ社の毎月の発表数とは,月の/日が異なっている。),これを視聴した人数を推計している点で,より正確な視聴者数の推計である。関東に限定したデータではないが,引用商標の視聴者数も,圧倒的多数である(甲88)。
請求人のTVCMは,2008年に放映を開始以来,2012年度までの統計では,年間16億人から200億人を超える視聴者に視聴されている。
特に,本件商標の優先日前後の3年間の実績では,関東圏の識字人口(6歳以上)4000万人を母数とすると,1人年間平均で500回以上請求人のTVCMに接していることになる。
(ウ)TVCMの全国実績
請求人は,2004年に創業したが,積極的にTVCMを放映し始めたのは2008年以降である(甲89;同年5月及び6月にテスト広告を開始。)。
この陳述書中の「3 TVCMの放映回数」は,2008年9月から,(正確なデータが確認できた)2011年12月の一部までのデータを,地域別に取りまとめたものであり,2008年9月ないし2011年12月の3年3ヶ月の放映総回数は,北海道は42,713回,東北は150,776回,関東は354,438回,中部は152,135回,中京は51,238回,関西は244,371回,中国及び四国は146,343回,九州及び沖縄は194,521回,総計1,336,535回であり,極めて多数である。
これを放映期間の3.25年で単純に算出すれば,年間41万回以上請求人のTVCMが全国で放映され,日割でも,1日あたり1100回以上となる。
(エ)TVCMの好感度
請求人のTVCMは,その内容及び出演者等の人気もあって,放送回数等のみならず,CM好感度調査においても上位の人気となっており,2010年上半期では全企業中14位,2011年(ただし年始CM実績)では第1位,2012年上半期では第6位となっている(甲90ないし甲92)。
イ 宣伝広告費用
広告宣伝費の面から見れば,その概算支出額は,2008年度は6億円,2009年度は20億円,2010年度は70億円,2011年度は135億円,2012年度は185億円である(甲93ないし甲97)。
ウ 広告宣伝費用に関する判断
一般的に特定の商標の周知・著名性判断においては,広告費用についてのみで判断されるわけではないが,宣伝広告実績が著名性判断の大きな判断要素とされている。請求人は,上記のとおり多額の宣伝広告費用を費やして,引用商標の著名性獲得に努力を重ねてきた。その金額は,過去の審決に引き比べても圧倒的に大きい(甲98ないし甲102)。
(6)引用商標に関するメディア掲載記事等について
ア メディアの掲載情報
請求人に関する記事は,朝日新聞社,産経新聞,日本経済新聞,毎日Jpといった従来型のメディアから,CNET Japan GAME Watchといった電子メディアにいたるまで,多数掲載されてきた(甲103ないし甲第111)。
イ その他のタイアップ企画
請求人は,上記のように,SNS「GREE」をオープン化してソーシャルゲームの新規投入を極限まで進め,他業種とも積極的にタイアップを図ることで引用商標の露出度はさらにあがり,その周知性は極めて高いものとなった。
なお,その他のタイアップ事例として,市場で大きく取り上げられた情報の一部である(甲112ないし甲120)。
(7)出所の誤認のおそれについて
ア 引用商標の著名性について
引用商標は,造語商標であり,広範な役務に使用され,請求人創業以来一貫して広域に使用されてきた。
また,引用商標の宣伝・広告については,多数のTVCMや宣伝広告費用に徴して際立っており,かかる点では,突出した実績といえる。
さらに,引用商標は,メディア露出度も高く,請求人の営業状況と相まって,特許庁での引用商標の認定のみならず,東京商工会議所,名古屋商工会議所,神戸商工会議所,大阪商工会議所,北九州商工会議所等においても,携帯電話を利用したソーシャルゲームの提供,広告業等に関するいわゆる周知証明書が発行されている(甲121ないし甲126)。
イ 出所の誤認のおそれ(商標の類似性)
本件商標と引用商標は,いずれの商標からも「グリー」という同一の称呼が生じる。特に,本件商標と引用商標2及び3は,欧文字の「GREE」の文字列までが同様であり,敢えて相違点をいえば,本件商標の切欠きのある円図形の有無のみ程度である。さらに,引用商標は,上記のとおり,周知・著名商標であるから,本件商標を,第9類に属する指定商品に使用すれば,需要者が,請求人あるいは請求人と経済的に関連を有する者に係る商品であるかのように,その出所の混同を生じるおそれがある(判決及び審決例,甲127ないし甲136)。
本件商標と引用商標とは,生じる称呼は完全に同一であって,他の称呼が生じる余地は皆無である。また,引用商標1及び2は,本件商標とは,称呼のみならず文字列も同一である。
したがって,商標の構成・態様に着目すれば,本件商標と引用商標とは,上記判決及び審決の事案以上に,相互に混同を生じるおそれは高いというべきである。
ウ 出所の誤認のおそれ(商品・役務の類似性)
商標法第2条第6項では,「この法律において,商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし,役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。」と規定されている。そして,その趣旨は,「商品と役務との間においても互いに類似することがある旨を入念的に表した解釈規定」であり,「役務に係る商標と商品に係る商標についても,著名等の特別の事情がない場合でも,一定の関係にある役務と商品について,同一又は類似の商標を使用した場合,同一の出所によるものと出所の混同が生ずるおそれのあることは否定できないものと考えられる。出所の混同を生じるおそれのある商標をともに商標登録することは,制度の目的にも反しかねない。」と解説されており,異論を見ない。(甲137ないし甲140)。
引用商標の「GREE(グリー)」も請求人の略称であって,上述のとおり請求人の業務を表示するものとして周知著名性の程度は極めて高い。
他方,本件商標は,請求人の著名な略称である「GREE」の語を要部とする引用商標と全く同一の称呼のみを生じる商標である。
本件商標の「GREE」の語の部分は,切欠きのある円図形とは分離して認識され得るから,請求人の略称である「GREE」と外観,称呼,観念上類似する。
加えて,引用商標は,SNS並びにソーシャルゲームの業界において周知・著名であるが,これらは,携帯電話・多機能電話及びPCと一体不可分的に配信される業種であって,本件商標の指定商品とは高い関連性を有する。
また,請求人の事業の規模が格段に大きく,かつ,日本有数の宣伝広告実績等に鑑みれば,請求人の略称と全く同一の文字列を含み(引用商標1及び2),或いは,全く同一の称呼を生じる(引用商標)本件商標を,第9類の指定商品に使用すれば,その出所につき誤認を生じさせるおそれは極めて高い(甲141ないし甲145,甲12)。
(8)結語
以上より,商標の同一性が高い(引用商標と類似する)本件商標を,その第9類の指定商品に使用すれば,出所の混同を生じるおそれは高い。
第4 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,と答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は,1991年に設立された中国法人であり,空調機械器具の製造販売業務やこれに付随するメンテナンスその他の業務に従事する世界的大企業である。
被請求人は,2012年には,総売上高16億USドルを超え,中国における最も上位にリストされる電気機器メーカーとなり,2013年には,総売上高が19億USドルを超えるに至った。
そして,米国タイム社が発行する世界的に権威のある経済誌「Fortune Magazine」にて,12年連続で,中国におけるトップ100企業の一つとしてランクされ,空調機器事業に関する中国で唯一の製造業として,その名は「世界的ブランド」の栄誉に浴している。
被請求人の製品は,200の国と地域において販売され,自社ブランドを付した製品は,100を超える国と地域において販売されている。
今日,被請求人の家庭用空調機器及び業務用空調機器の年間生産能力は,それぞれ,6千万台及び5百5十万台に及び,被請求人は,2005年以来,世界中に3億人のユーザーを有し,9年間連続で生産及び販売数量において世界一位を記録し続けている。
被請求人は,今日では世界中に7つの生産拠点(5つは中国,ブラジル,パキスタン)と7万人の従業員を有しており,この中には,5000人のエンジニア,530の研究所及び2つの研究開発センターが含まれる。
被請求人の家庭用空調機器及び業務用空調機器は,20種類のカテゴリーに分類され,この中には,400のシリーズ商品,7000を超える商品モデルがあり,市場における全ての需要に応ずることができる。
9000件を超える特許技術(2500件の特許発明を含む。)の下,被請求人は,例えば,1Hzインバーターエアコンディショナー,R290エコフレンドリーエアコンディショナー,自社開発のDCインバーターVRFユニット,永久磁石同軸型インバーターターボ冷凍機,2段インバーターコンプレッサー,太陽光直動式ターボ冷凍機等のような業界の発展を形作るような世界をリードする製品を次々と開発してきた。
被請求人は,2008年北京オリンピック大会,2010年南アフリカFIFAワールドカップ大会,2010年広州アジア大会,2014年ソチ冬季オリンピック大会等,数多くの国際的なイベントに協賛・参加したことにより,被請求人の「Gree(グリー)」ブランドの知名度が世界中において飛躍的に向上し,「メード・イン・チャイナ(中国産)」から「クリエーテッド・イン・チャイナ(中国にて創造された)」へと意識革命を促した(甲1)。
(2)被請求人の販売拠点は,中国の他,米国,香港,スペイン及びブラジルの4大販売拠点を基軸として世界各国に販売網を巡らしており,日本にも及んでいる(甲2)。
被請求人の主たる商品である家庭用空調機器,業務用空調機器,空気清涼機や空気清浄機等の家庭用機器は,被請求人のホームページに掲載され,その製品カタログがホームページからダウンロードでき,販売地域ごとに,欧州共同体版,(その他の)ヨーロッパ版,北米版,ラテンアメリカ版,中近東版,アジア版,オセアニア版のようにきめ細かく用意されている(甲3及び甲4)。
被請求人は,不断の技術開発努力により絶えず世界をリードする製品を世界市場に提供してきたが,2014年には優れた研究開発を対象に授与される中国科学技術賞第2等を受ける栄誉に浴した。また,2014年6月には,台湾のテレビ局が,わずか23年間の間に,年間2万台から6千万台へと販売数量を急進させた被請求人を取り上げたテレビ番組を放送し,最近では,サウジアラビアにおいて同社製品のトレーニングセンター開設式典及び同社新製品の発表会を催し,また,米国シカゴにおいて開催された国際空調・空熱・冷凍博覧会に出展した(甲5ないし甲8)。
(3)本件商標は,図形及び欧文字「GREE」から構成されるところ,この図形は被請求人の社章であり,また,欧文字「GREE」は被請求人の名称「GREE ELECTRIC APPLIANCES,INC. OF ZHUHAI」中最も識別力を発揮する部分であり,かつ,被請求人の略称として広く認識された「GREE」に相当する。
すなわち,本件商標は,被請求人のハウスマークとして必ず同社の商品,プロモーション活動,ホームページ,パンフレット(甲1ないし甲6)等に使用され,この結果,請求人が小規模なベンチャー企業として設立された2004年当時には,被請求人の名声は,既に世界的に確立されており,被請求人の各種活動と共に使用されていた本件商標は,世界的に周知著名なものになっていた。
(4)商標法第4条第1項第10号について
ア 請求人が引用する引用商標1は,同社の社章である「正六角形」図形及び角張って締まった感じのする活字体にて表示された欧文字「GREE」から構成され,該図形そのものも角張った印象を与えるものであり,また,該図形及びそのすぐ側に配置された欧文字「GREE」が青色にて統一した色彩で表示されていることから,引用商標1は,図形と文字を一瞥して瞬時に認識できるようにデザイン上まとまりよく表現されている。
他方,本件商標は,円形図形の中心から3時方向及び7時方向に切り書きを入れることにより,文字「G」をモチーフにデザイン化された図形及び欧文字「GREE」から構成され,同図形は,被請求人の社章に由来する。
また,「GREE」の文字は,被請求人の略称に相当するところ,各文字の角を丸く描くことにより,柔らかな感じのするレタリング文字との印象を抱かせ,被請求人の社章に由来する図形及びそのすぐ側に配置された略称「GREE」は,全体にまとまりよく表現されており,これを一瞥すると瞬時に認識することが可能である。
このため,両商標を対比するに,図形が全く異なること,文字のデザインが大きく異なること,色彩を異にすること等の理由により,両商標から受ける印象が大きく異なる。
かかる外観上の印象が看者に与える影響が大きく,また,本件商標が世界的に周知著名なものであることからして,両商標は,取引の現場において混同するおそれのない非類似の商標である。
イ 役務「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供」と,商品「Hand held computers;computer keyboards;scanners(data processing equipment);electronic dictionaries;printers for use with computers;facsimile machines;walkie-talkies;television sets;video recorders;DVD players;integrated circuits;electronic chips;semiconductor device」については,商品の製造販売業者と役務の提供者が異なるのが一般的であるばかりでなく,両者の用途は大いに異なり,商品の販売場所と役務の提供場所は全く異なり,かつ,需要者の範囲も必ずしも一致しないのであるから,両者は非類似の関係にあることが明白である。
ウ 上記のとおり,商標法第4条第1項第10号を根拠とする請求の理由は失当である。
(5)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人が引用する引用商標2及び3は,それぞれ,欧文字「GREE」又は片仮名「グリー」から構成され,これらの商標は,特に特徴のない活字体を用いてあり,看者にとって視覚上の印象に乏しいものである。
他方,本件商標は,「G」をモチーフにデザイン化された図形及び欧文字「GREE」から構成され,全体にまとまりよく表現されており,これを一瞥すると瞬時に認識することが可能である。
このため,両商標を対比するに,各商標から受ける印象が大きく異なる。本件商標では,図形が含まれており,文字のデザインも異なるため,引用商標2及び3と対比するに,全く異なる印象を与え,また,本件商標が世界的に周知著名なものであることからして,両商標が,取引の現場において混同するおそれは全くない。
イ 引用商標1の主たる使用役務は「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供」であり,引用商標2及び3の指定役務中,実際に使用されている役務も,主として第41類「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供」であると理解できる。
そして,請求人が陳述するように,請求人が提供する「ソーシャルゲーム」は,携帯電話向けSNSサイトにおいて提供されている。
そうとすると,引用商標2及び3の使用に係る役務(インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供)を提供される需要者が利用するのは,携帯電話機である。
携帯電話機は,今日極めて広く普及しており,国民一人一人が保有するといっても過言でないほどに多くの人がこれを利用している。
他方,携帯電話機による通信を用いて行うゲームが最近普及してきたといっても,これに興ずる人の数は,携帯電話機を利用する者の全体から見れば,ごく少数であり,携帯電話機による通信を用いて行うゲームの利用者と携帯電話機の利用者は,同一人ではない。
本件商標が世界的に周知著名商標であり,引用商標2及び3とは大いに印象の異なるものであることを併せて考慮するに,本件商標が携帯電話機について使用されたとしても,引用商標2及び3と出所混同を生ずるおそれはないというべきである。
ましてや,本件無効審判の請求における対象商品は,携帯電話機を含まない。
上述のように,請求人の役務「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供及びこれらに関する情報の提供」と本件商標の第9類の指定商品は,商品の製造販売業者と役務の提供者が異なるのが一般的であるばかりでなく,両者の用途は大いに異なり,商品の販売場所と役務の提供場所は全く異なり,かつ,需要者の範囲も必ずしも一致しないものである。
そして,携帯電話機は,携帯電話による通信に係る役務を提供する者との取次業務を行う店舗において販売され,また,大規模電気店においても,同様に,携帯電話による通信に係る役務を提供する者との取次業務を行いつつ,特定のコーナーにおいて陳列されるのが一般的であり,上記の指定商品とは異なる区画に陳列され,これらの大規模電気店において,携帯電話による通信サービス及び携帯電話機について説明できる店員は,他の商品を担当する店員とは異なるのが一般的である。
さらに,上述のように,引用商標2及び3と,本件商標は,一瞥して明らかに異なる商標であることが認識される。
また,本件商標は,世界的に周知著名であり,看者は,同商標の使用に係る商品が被請求人の取り扱いに係るものであると認識し,他の者であるかの如く誤認することはなく,実際の取引において,請求人の役務と被請求人の商品との間で混同が生じたこともない。
(6)まとめ
以上のように,本件商標は,引用商標1との関係において商標法第4条第1項第10号に該当しないし,また,引用商標2及び3との関係において商標法第4条第1項第15号に該当しない。
第5 当審の判断
1 請求の利益について
請求人は,本件審判を請求することの利害関係について述べているが,この点については,当事者間に争いはなく,かつ,請求人適格を有するものと認められるので,本案に入って審理する。
2 引用商標の周知著名性について
(1)請求人が提出した証拠及びその主張によれば,請求人は,2004年(平成16年)に設立したSNSサービスの運営会社であり,該サービスは,パーソナルコンピュータ,携帯電話及びスマートフォン等の多機能電話機等に対応して提供されているものである(甲27,甲29,甲96等)。
そして,請求人のウェブサイトには,引用商標1を表示してコミュニティサービス及び無料ゲームに関する情報が提供されていること(甲2),「グリー」及び「GREE」について,goo辞書,現代用語の基礎知識,FIDELI IT用語辞典等に掲載されていること(甲13ないし甲22),請求人は,2008年12月に東京証券取引所マザーズに上場し,2010年6月に東京証券取引所市場第一部に上場したこと(甲25),日本での登録ユーザー数が3,000万,及び,米国・欧州などを含めたユーザー数が約2.3億以上であること(2012年3月末時点,甲29),請求人は,引用商標1又は2を表示して,携帯電話向けソーシャルゲームである「釣り☆スタ」,「探検ドリランド」,「聖戦ケルベロス」等を提供していること(甲30ないし甲35),「GREE」に関しては,ニュースリリースを行い,リクナビNEXT(甲30)を始め,多数のメディアに掲載されたこと(甲36,甲103ないし甲120)等が認められる。
また,請求人の売上高は,2011年が約641億円,2010年が約352億円,2009年が約139億円である(甲63の2)。
請求人に係るテレビCMは,商品別オンエアランキングにおいて,2010年4月から12月には,その放送回数が常に1位であり,企業別オンエアランキングにおいても常に上位であることが認められ(甲67ないし甲88等),広告宣伝費は,平成23年7月ないし同24年6月までに約185億円,同24年7月ないし同年12月までに約102億円である(甲96及び甲97)。
さらに,「GREE」の商標の周知については,東京商工会議所会頭名,名古屋商工会議所会頭名,大阪商工会議所会頭名,神戸商工会議所及び北九州商工会議所会頭名により証明されている(甲121ないし甲126)。
(2)上記(1)の事実からすれば,引用商標1及び2は,本件商標の登録出願前に,請求人の業務に係る「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供」を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められる。
そして,上記役務は,携帯電話及びスマートフォン等の電気通信機械器具やパーソナルコンピュータ等の電子応用機械器具を用いて提供される役務であることから,これらの商品と需要者を共通にするものである。
3 本件商標と引用商標2との類似性について
本件商標は,別掲1のとおり,切り欠きを有する黒塗りの円形図形を表し,その右に,やや丸みを帯びた「GREE」の欧文字を表した構成からなるところ,かかる構成にあっては,該図形部分と「GREE」の欧文字部分とが視覚的に分離して看取されるといえるものである。
そして,本件商標は,「GREE」の欧文字部分から「グリー」の称呼を生じ,該文字は,特定の語義を有しない造語といえるものであるから,特定の観念を生じないものである。
他方,引用商標2は,「GREE」の欧文字を標準文字で表してなるところ,これからは,「グリー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
してみれば,本件商標の構成中の「GREE」の欧文字と,引用商標2とは,その構成文字を同じくするものであるから,外観において近似し,観念において相違するとはいえないものであり,「グリー」の同一の称呼を生じる類似の商標と認められる。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
「GREE」の欧文字は,上記1のとおり,本件商標の登録出願前に,請求人の業務に係る「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供」を表示するものとして,我が国の需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ,該役務は,携帯電話又はスマートフォン等の電気通信機械器具やパーソナルコンピュータの電子応用機械器具を用いて提供される役務であることから,これらの商品と需要者を共通にするものである。
そして,本件商標は,その構成中,「GREE」の欧文字部分が独立して着目されるものであって,本件商標の指定商品及び指定役務中,第9類「Hand held computers;computer keyboards;scanners (data processing equipment);electronic dictionaries;printers for use with computers;facsimile machines;walkie-talkies;television sets;video recorders;DVD players;integrated circuits;electronic chips;semiconductor device.」と,請求人の業務に係る役務との関連性及び需要者の共通性等を勘案すれば,「GREE」の欧文字を含む本件商標を,電気通信機械器具及び電子応用機械器具に含まれる第9類「Hand held computers;」等の上記指定商品について使用をした場合,これに接する者に,該欧文字部分から請求人の業務に係る役務を連想させ,当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標は,その指定商品及び指定役務中,結論掲記の指定商品について,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,他の無効理由について論及するまでもなく,同法第46条第1項第1号により,その登録を無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 【別記】


審理終結日 2015-06-18 
結審通知日 2015-06-23 
審決日 2015-07-08 
審決分類 T 1 12・ 271- Z (W09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 圭輔 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 田中 亨子
大井手 正雄
登録日 2012-05-02 
商標の称呼 グリー、ジイ 
代理人 高梨 範夫 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 安島 清 
代理人 小林 彰治 
代理人 田中 克郎 
代理人 廣中 健 

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