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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W07
管理番号 1309728 
審判番号 無効2014-890045 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-06-02 
確定日 2016-01-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5663629号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5663629号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5663629号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成25年11月28日に登録出願され、第7類「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封器」を指定商品として、同26年3月28日に登録査定、同年4月11日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第39号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、以下に説明するように、商標法第3条第1項第1号、同項第2号、同項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、無効理由を有するものである。
1 請求人が提示する本件商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用されている標章及び用語について
(1)本件商標の指定商品と同一の商品に使用されている標章
ア 「HANDY SEALER」、「Handy Sealer」、「handy sealer」、「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」の文字からなる標章(甲5ないし甲13及び甲15ないし甲18)(以下、これらをまとめて「a標章」という場合がある。)
イ 「ハンディ・シーラー」の文字からなる標章(甲19)(以下「b標章」という場合がある。)
ウ 「ハンディシーラー」の文字の頭部に「カッター付」又は「スマート」という商品の修飾ないし説明に係る用語が付加された標章(甲20ないし甲25)(以下、これらをまとめて「c標章」という場合がある。)
(2)特許公開公報等において、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を表すものとして、使用されている用語(以下、これらをまとめて「d用語」という場合がある。)
「ハンディーなヒートシーラ」(甲27)
「ハンディ・ヒートシーラ」(甲28)
「ハンディ電熱シーラー」(甲29)
「ハンディヒートシーラ」(甲30)
「ハンディなヒートシーラ」(甲31)
「ハンディ型ヒートシーラー」(甲32)
(3)本件商標の指定商品と同一又は類似する商品について使用する「HAND SEALER」、「ハンドシーラー」又は「ハンドシーラ」という標章や用語(甲33ないし甲37)(以下、これらをまとめて「eの標章及び用語」という場合がある)
(4)本件商標の指定商品について使用する「Quick Handy Seal」又は「クイック ハンディ シール」の標章(甲38及び甲39)(以下、これらをまとめて「f標章」という場合がある)

2 商標法第3条第1項第1号について
(1)「その商品の普通名称」であること
ア 本件商標は、「Handy」と「Sealer」を結合したものであって、両者は一体のものとして把握され、「ハンディシーラー」ないし「ハンディシーラ」という称呼を生じるものである。
「広辞苑第六版」によれば、「Handy」(handy[ハンディ])は、「大きさが手ごろで取り扱いやすいさま。」を意味し、「Seal」(シール)は「封印」とを意味する(甲3の1及び2)。
そして、「-er」は、英語の動詞又は名詞から種々の動作主名詞を造る接尾語で、「?する物」あるいは「?する人(者)」を表すものであることは、日本においても広く理解されており、現にそのように一般的に使用されていることは周知の事実である。また、日本において普及している英和辞典において、「Sealer」(シーラー)は「封印機械」の意味であることが示されている(甲4の1)。
したがって、「ハンディシーラ(ー)」は「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」を意味する。
そして、本件商標の指定商品は「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封器」であるから、「Handy Sealer」(ハンディシーラー)、すなわち「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」そのものである。
そうすると、本件商標の称呼、観念は指定商品をそのまま表しているものであるから、字体の観察をしばらく考慮の外においても、いわゆる特別顕著性は全く認められない。
イ さらに、本件商標が取引界において、その商品又は役務の一般的な名称であると認識されるに至っているものであることは、「HANDY SEALER」、「Handy Sealer」、「handy sealer」、「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」の標章の使用の事実からも明らかである。
すなわち、甲第5号証ないし甲第25号証の各証拠から、本件商標の指定商品と同一の商品について、a標章ないしc標章が現在使用されていることが認められる(以下、a標章ないしc標章をまとめて「A標章」という場合がある。)。
そして、a標章の使用については、請求人が自ら製造及び販売する商品(甲5、甲7及び甲8)は、2012年8月ないし2013年10月からの使用であること(甲6及び甲9)が、その他の商品(甲10、甲12ないし甲17)は、2013年1月ないし2月から又は2006年2月3日及び2010年8月11日からの使用であること(甲11の1及び2)がそれぞれ認められ、いずれの標章についても既に相当な期間にわたって使用されている。
また、c標章については、甲第20号証の商品は、2013年10月29日からの使用であることが、甲第21号証及び甲第22号証並びに甲第23号証ないし甲第25号証の商品は、それぞれ遅くとも2009年4月3日と2013年6月12日からの使用であることが認められる。
以上のとおり、「ハンディ」と「シーラー」とが結合した標章は、既に相当な期間にわたって使用されていることが認められるから、「ハンディ」と「シーラー」は「ハンディシーラー」として一体に把握されるものである。
よって、A標章については、以下、要部を「ハンディシーラー」とする標章として説明する。
(2)「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる標章」であること
ア 本件商標は、「Handy Sealer」の欧文字を黄色のゴシック体で表し、当該ゴシック体の文字列をややカーブさせ、かつ周囲にそって黒い影を付けた標章からなり、欧文字を、やや図案化させてはいるものの、さほど特異ともいえないレタリング技法をもって表したものといえる。
イ 前掲東京高裁昭和29年(行ナ)第35号判決(甲2)においては、「字体そのものについてみても、やや図案化されているとはいえ・・・この程度の図案化された文字は、未だ必ずしも特異な字体とは認められない」とされた。
また、昭和43年審判第4256号審決(甲2)においては、「本願商標は、全体として多少図案化されてなるものであるけれど、明瞭に『almond』(アーモンド)の語が読みとれるものであり、本願商標の程度の色彩も特殊性があるというものではないし、また、一般にその商品名を表示する場合、需要者の美的感覚を刺激し、その注目を引き、購買意欲をそそるために、その商品名を表す文字を図案化し、美しい色彩を施したものを用いることは普通に行われるところであるから、本願商標はこの程度の図案化では、その構成自体特殊な態様で表示されているものとは認めることはできない。」とされた。
ウ 上記事実にかんがみれば、本件商標は、その書体や全体の構成等において特殊な態様のものとはいえず、「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」にあたるものと認めるのが相当である。
(3)したがって、本件商標は商標法第3条第1項第1号に該当する。

3 商標法第3条第1項第2号について
仮に本件商標が普通名称ではないとしても、上記2(1)イに示した、A標章についての取引界における使用の事実(甲5ないし甲25)からすれば、本件商標は同種類の商品に関して、同業者間に普通に使用されるに至った結果、自他商品の識別力を失ってしまったものといえる。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項第2号に該当する。

4 商標法第3条第1項第3号について
(1)上記2(1)アで説明したように「Handy Sealer」(ハンディシーラー)は「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」を観念するものであり、本件商標の指定商品「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封器」そのものである。
したがって、本件商標は、「その商品の品質、効能、用途、又は使用の方法を表示する標章からなる商標」にあたる。
(2)本件商標は、上記2(2)アで説明したとおり、欧文字を、やや図案化させてはいるものの、さほど特異ともいえないレタリング技法をもって表したものといえる。
そして、やや図案化された文字から構成された商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとされた事例(甲26)の事実ににかんがみれば、本件商標は、その書体や全体の構成等において特殊な態様のものとはいえず、「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」にあたるものと認めるのが相当である。
(4)以上のとおり、本件商標は商標法第3条第1項第3号に掲げる商標にあたる。

5 商標法第3条第1項第6号について
(1)仮に本件商標が商標法第3条第1項第1号ないし同項第3号に該当しなくても、本件商標は「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できない商標」にあたる。
本件商標は、「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」なる称呼を生じるものである。また、「Handy Sealer」は、「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」という観念を生じるものである(甲3及び甲4)。
(2)「HANDY SEALER」、「Handy Sealer」、「handy sealer」、「ハンディシーラー」及び「ハンディシーラ」の語について
ア 上記2(1)イで説明したように、甲第5号証ないし甲第25号証から、本件商標の指定商品と同一の商品について、A標章が現在使用されていることが認められる。
イ また、甲第27号証ないし甲第32号証の特許公開公報等には、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を表すものとして、d用語が長年にわたって一般的に使用されていることが示されている。長年にわたって使用されていることは、各証拠に係る出願が1987年12月から2008年9月にわたってなされていることから明らかである。
なお、(ハンディ)「な」や(ハンディ)「型」は、形容詞であることや小型であることを示すもので、「電熱」・「ヒート」は、「シーラー」、「シーラ」の機能を説明するにすぎないから、d用語の要部は「ハンディシーラー」ないし「ハンディシーラ」である。
ウ 本件商標との類似性について
(ア)本件商標は、「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」の称呼を生じるものである。
A標章の要部もd用語の要部も本件商標と同一の称呼を生じるものである。
(イ)本件商標とA標章の要部及びd用語の要部は、同一の観念を生じるものである。
(ウ)A標章のうち、甲第7号証及び甲第8号証に係る標章「Handy Sealer」は、本件商標と外観が全く同一であり、偶然の一致とは到底考えられない。なお、甲第7号証及び甲第8号証に係る標章は、標準的なゴシック体をややデザイン化したレタリング手法が用いられたもので、黄色と黒という色の組み合わせからなる。
また、後述するように甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に係る商品は、いずれも本件商標の指定商品と同一であって、甲第7号証及び甲第8号証に係る商品は、甲第5号証に係る商品の新型である。すなわち、旧型である甲第5号証に係る商品は、請求人であるレック株式会社が株式会社大創産業(以下「大創」という。)に対し、2012年8月から販売を開始し(甲6)、新型の甲第7号証及び甲第8号証に係る商品の販売を開始した2013年10月まで販売していた。本件商標の出願日は、甲第7号証及び甲第8号証に係る商品の販売の開始の約1ヶ月後の2013年11月28日である。
これらの事実にかんがみると、本件商標は、全国的に100円ショップを展開する大創が、2012年8月から本件商標の指定商品と同一の旧型と新型の商品に同一の称呼・観念を生じる標章を使用していること、及び当該旧型の信用を受け継ぐ新型に係る標章が未登録であることを奇貨として、不正の目的をもって、甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に係る商品と同一の指定商品について、甲第7号証及び甲第8号証に係る標章と全く同一の外観である標章(したがって、称呼及び観念も同一となる。)を敢えて選定して出願したものであることが強く推認されるものである。
A標章のうち、「HANDY SEALER」及び「handy sealer」は、本件商標と同じ綴りであり、かつ特異とはいえないレタリング手法が用いられているものである。他方、本件商標においても上述のように特異とはいえないレタリング手法が用いられていることにかんがみれば、当該標章は本件商標と外観が類似する。
以上のように、A標章及びd用語の全体又は要部は、本件商標と称呼及び観念が同一である。また、A標章のうち、甲第7号証及び甲第8号証に係る「Handy Sealer」は本件商標と外観が全く同一であり、「HANDY SEALER」及び「handy sealer」は、本件商標と外観が類似する。よって、甲第7号証及び甲第8号証に係る標章は本件商標と同一であり、他の標章ないし用語は、いずれも本件商標と類似するものである。
エ A標章及びd用語が使用されている商品が、本件商標に係る指定商品と同一又は類似する商品であることは上記のとおりである。
オ したがって、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品について、本件商標と称呼及び観念が同一であり、かつ外観が同一又は類似する標章や用語が、長年にわたって多用されているといえる。
(3)「HAND SEALER」、「ハンドシーラー」及び「ハンドシーラ」の語について
ア 甲第33号証ないし甲第37号証には、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品について、eの標章及び用語が、長年にわたって使用されていることが示されている。長年にわたって使用されていることは、甲第34号証ないし甲第37号証に係る複数の出願の出願日が1963年5月13日から1978年5月19日にわたっており、甲第33号証をプリントアウトした日付が2014年2月6日であることからわかる。
イ 本件商標との類似性について
(ア)本件商標は、「Handy」と「Sealer」を結合したものであって、両者は一体のものとして把握され、「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」の称呼を生じるものである。
他方、eの標章及び用語は、「HAND」と「SEALER」、又は「ハンド」と「シーラー」ないし「シーラ」を結合したものであって、「ハンドシーラー」ないし「ハンドシーラ」の称呼が生じるものである。
両者の称呼「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」と「ハンドシーラー」又は「ハンドシーラ」とを対比すると「ディ」と、「ド」が異なるだけで大部分が一致する。
したがって、eの標章及び用語は、本件商標と称呼が類似する。
(イ)本件商標は、「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」という観念を生じるものである(甲3及び甲4)。eの標章及び用語も、「HAND」ないし「ハンド」は「手」を意味するから(甲3の3)、手で持つことができる封印機械、すなわち「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」という、本件商標と同一の観念を生じるものである。
(ウ)eの標章及び用語のうち、「HAND SEALER」の標章は、前段の末尾の「y」がない以外は本件商標と同じ綴りであり、かつ特異なレタリング手法が用いられたものではない。本件商標も特異なレタリング手法が用いられたものではないことにかんがみれば、当該標章は本件商標と外観が類似する。
(エ)以上のように、eの標章及び用語は、いずれも本件商標と称呼が類似し、観念が同一である。また、eの標章及び用語のうち、「HAND SEALER」は、本件商標と外観も類似する。よって、eの標章及び用語は、いずれも本件商標と類似するものである。
ウ 商品の類似性について
eの標章及び用語は、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用されている。
エ したがって、甲第33号証ないし甲第37号証は、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品において、本件商標と類似する標章ないし用語が、長年にわたって多用されていることを裏付けるものといえる。
(4)「Quick Handy Seal」及び「クイック ハンディ シール」の語について
甲第38号証及び甲第39号証には、本件商標の指定商品について、f標章が、アマゾンにおける取り扱い開始日が2009年7月24日であることから(甲39)、相当な長期間にわたって使用されていることが示されているといえる。
ア 本件商標との類似性について
f標章は、「Quick」「Handy」「Seal」、又は「クイック」「ハンディ」「シール」を結合したものである。
上記(2)及び(3)において説明したように、この種の商品については、「ハンディ」と「シーラー」とが結合した標章ないし用語や「ハンド」と「シーラー」とが結合した標章ないし用語が、既に相当な期間にわたって使用されていることが認められ、取引者又は需要者において「ハンディ」と「シーラー」ないし「ハンド」と「シーラー」は、「ハンディシーラー」ないし「ハンドシーラー」として一体に把握されるものであること、「クイックハンディシール」は11音からなる冗長なもので取引に際して一連に称呼されることは通常ないと認められること、「Quick」及び「クイック」は、「急速な、すばやい、敏捷(びんしょう)な」(甲4の2)という付加的な意味を有するにすぎないことから、f標章の要部は「Handy Seal」又は「ハンディシール」にあり、係る部分が独立して呼称され、観念が生じるものと認められる。
そうすると、「Quick」「Handy」「Seal」又は「クイック」「ハンディ」「シール」においても、「Handy」及び「Seal」、「ハンディ」及び「シール」が、それぞれ一体に把握される。他方、「Quick」「クイック」は、「急速な、すばやい、敏捷(びんしょう)な」(甲4の2)という意味であり、封印機械の機能を説明する修飾語にすぎない。したがって、f標章においては、「Handy Seal」「ハンディシール」が要部にあたる。
(ア)本件商標は、「Handy」と「Sealer」を結合したものであって、両者は一体のものとして把握され、「ハンディシーラー」ないし「ハンディシーラ」の称呼を生じるものである。
他方、f標章の要部は、「Handy」と「Seal」、又は「ハンディ」と「シール」を結合したものであって、「ハンディシール」の称呼が生じるものである。
両者の称呼「ハンディシーラー」ないし「ハンディシーラ」と「ハンディシール」とを対比すると、末尾が「ラー」ないし「ラ」か「ル」であるかが異なるだけで、大部分が一致する。
したがって、f標章は本件商標と称呼が類似する。
(イ)本件商標は、「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印機械」という観念を生じるものである(甲3及び甲4)。
他方、f標章の要部「Handy Seal」又は「ハンディ シール」も、「Seal」及び「シール」は「封印」を意味するから(甲3の3)、「大きさが手ごろで取り扱いやすい封印」するもの(道具ないし機械)という、本件商標と同一の観念を生じるものである。
(ウ)以上のように、f標章は、本件商標と称呼が類似し、観念が同一である。また、f標章のうち、「Quick Handy Seal」は外観も類似する。したがって、f標章は、いずれも本件商標と類似するものである。
イ 商品の同一性について
f標章は、本件商標の指定商品と同一の商品に使用されている。
ウ したがって、甲第38号証及び甲第39号証も、本件商標の指定商品と同一の商品において、本件商標と類似する標章が長年にわたって用いられていることを裏付けるものである。
(5)このように、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品について、本件商標に同一又は類似する標章ないし用語が、長年にわたって多用されている状況下においては、本件商標を見た需要者は、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。したがって、本件商標は商標法第3条第1項第6号に掲げる商標にあたる。

6 商標法第4条第1項第7号について
上記5(2)ウ(ウ)で説明したように、本件商標は、全国的に100円ショップを展開する大創が、2012年8月から本件商標の指定商品と同一の旧型と新型の商品に、同一の称呼・観念を生じる標章を使用していること、及び当該旧型の信用を受け継ぐ新型に係る標章が未登録であることを奇貨として、不正の目的をもって、甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に係る商品と同一の指定商品について、甲第7号証及び甲第8号証に係る標章と全く同一の外観である標章(したがって、称呼及び観念も同一となる。)を敢えて選定して出願したものであることが強く推認されるものである。
したがって、本件商標の登録を容認することは、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」(商標法第1条)という商標法の予定する秩序に反し、社会の一般的道徳観念に反する。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

7 被請求人の答弁に対する主張
(1)商標法第3条第1項第1号について
ア 被請求人は、「Sealer(シーラー、密封機)」には、熱を利用して接着するものだけでなく、のり付け接着などを行う封印機械も含まれるから、「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」を表しているとはいえないと主張している。
しかしながら、「Sealer(シーラー、密封機)」にのり付け接着などを行う封印機械も含まれるとしても、Handy Sealerという用語がもっぱら「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」に使用されてきた結果、Handy Sealer全体としては、「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」を表す用語となっており、のり付け接着などを行うものは含まないものとなっていると認められるべきである。また、仮にHandy Sealerにのり付け接着などを行う封印機械と「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」とが含まれるとしても、Handy Sealerが「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」をも具体的に表していることにかわりはない。
そして、「Handy Sealer」、「handy Sealer」、「ハンディシーラー」、「ハンディシーラ」(以下「Handy Sealer等」という。)が多数使用されている現状においては(特に甲5ないし甲25)、仮に「Sealer(シーラー、密封機)」にのり付け接着などを行う封印機械が含まれるとしても、本件商標が電気的に発生した熱を利用した場合をも具体的に示していることにかわりはなく、多数の者に使用されているか使用されうるものであるために、特定人の商品、役務を示す商標として機能せず、一般にその使用を認めるべき言語であり、特定人に独占させるべきでないものといえる。
したがって、被請求人の主張は商標法第3条第1項各号の趣旨を無視したものであり、失当である。
イ また、被請求人は、特許公報等(甲27ないし甲32)において、ヒートシーラないし電熱シーラの語が使用されており、Handy Sealer等の標章を使用しているのは、被請求人以外では3?4社であるから、普通名称とはいえないと主張している。
しかしながら、甲第27号証ないし甲第37号証においては、全て「ハンディ」.「ハンディー」ないし「ハンド」という語と、「シーラ」ないし「シーラー」という語とが組み合わせて用いられていることからすれば、これらの組み合わせが長年使用されてきたといえる。
また、被請求人は、被請求人を除けばわずか3?4社がHandy Sealer等の標章を使用している状況であるから、普通名称とはいえないと主張している。
しかしながら、まず被請求人を除く理由が不明である。また本件商標の指定商品に係る商品の市場規模がさほど大きくないことを考慮すれば、仮に被請求人が主張するように被請求人以外の3?4社がHandy Sealer等の標章を使用している状況であったとしても、業界の殆どのメーカーがこれらの標章を使用していると推測できる。
したがって、被請求人の主張は失当である。
(2)商標法第3条第1項第2号について
被請求人が、上記商標法第3条第1項第1号と同様の理由により、本件商標は商標法第3条第1項第2号にあたらないと主張している点についても、上記(1)にて説明したのと同様の理由により、被請求人の主張は失当であるといえる。
(3)商標法第3条第1項第3号について
被請求人は、「Sealer(シーラー、密封機)」には、熱を利用して接着するものだけでなく、のり付け接着などを行う封印機械も含まれるから、本件商標は商品の特定の品質を直接かつ具体的に表示したものではなく、間接的に暗示させる程度のものであると主張している。
しかしながら、上記7(1)で述べたとおり、「Sealer(シーラー、密封機)」にのり付け接着などを行う封印機械も含まれるとしても、Handy Sealerという用語がもっぱら「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」に使用されてきた結果、Handy Sealer全体としては、「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」を表す用語となっている。また、2つの単語が連結されてなる商標であって、それぞれの単語の意味がよく知られているものである場合には、これらを連結して構成された商標は、全体としての意味合いが容易に認識、理解されるものであり、単に商品の品質・内容・効能を表示したものに過ぎないものである。
そして、HandyもSealerもそれぞれの単語の意味がよく知られているものであるといえるから、これらを連結して構成された本件商標は、全体としての意味合いが容易に認識、理解されるものであり、単に商品の品質・内容・効能を表示したものに過ぎないといえる。
(4)商標法第3条第1項第6号について
被請求人は、甲第27号証ないし甲第32号証には「ヒートシーラ」ないし「電熱シーラ」の語が使用されており、「ハンディシーラー」ないし「ハンディシーラ」が使用されているものではないから、長年使用されているのは「ヒートシーラ」又は「電熱シーラー」であると主張している。
しかしながら、甲第27号証ないし甲第37号証において、全て「ハンディ」「ハンディー」ないし「ハンド」という語と、「シーラ」ないし「シーラー」という語とが組み合わせて用いられていることからすれば、これらの組み合わせが長年使用されてきたといえる。
また、被請求人は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できないものは要部たり得ないから、甲第27号証等に記載の「ハンディーなヒートシーラ」等において、要部が「ハンディシーラー」等であるとの請求人の主張は矛盾すると主張している。
しかしながら、上記主張は、仮に要部を抽出するとすれば「ハンディシーラー」等が要部となるという趣旨であり、矛盾するものではない。
さらに、被請求人は、「Handy Sealer」(ハンディシーラー)を長年使用しているのは被請求人であると主張しているが、仮に被請求人が「Handy Sealer」(ハンディシーラー)を長年使用していようとも、当該事実と商標法第3条第1項第6号の該当性とは論理的に関連性がない。
(5)商標法第4条第1項第7号について
被請求人は、Handy Sealerは、被請求人が使用してきたものであり、本件商標は不正の目的をもって出願したものではないと主張している。
しかしながら、被請求人は、本件商標が、図案化したHandy Sealerの欧文字の内部を草色で表し、「H」の文字を他の文字より大きく書した上で全体の文字列を右斜め上方にカーブさせ、かつ全体を濃い草色で縁取りすることで文字を浮き上がらせた標章からなり、甲第7号証及び甲第8号証と全く同一の外観であり、これを偶然選定したということは通常考えられないところ、被請求人が甲第7号証及び甲第8号証と全く同一の外観の標章を敢えて選定して出願したと推認される点について、その外観を選定した理由を明らかにしていない。
そうすると、被請求人が、甲第7号証及び甲第8号証と全く同一の外観の標章をあえて選定して商標登録出願をした理由は、全国的に100円ショップを展開する株式会社大創産業が用いている標章が未登録であった状況に乗じて本件商標の登録出願をして登録を受けたものであり、不正の目的があったと考えざるを得ない。
また、本件商標登録に係る商標は、商標法第3条第1項第1号ないし第3号、同項第6号及び同条第4条第1項第7号に係る商標に該当するものであり、登録要件を欠くものであるから、適正な審査が行われれば本来登録されるはずのないものである。
したがって、請求人は本来商標登録を受けるべきと主張する者にあたらない。また、請求人が商標登録出願をしなかったことについては、本件商標が登録要件を欠くという理由があり、請求人が自ら出願することが可能であった場合にあたらない。
そして、本件においては、被請求人は、平成25年(2013年)7月22日付で、香港特許権及び中国商標権に基づき、株式会社大創産業に対して侵害警告書を送付し(乙12)、これに対して、製品の製造元であった請求人が、同年8月7日付けで「レック及び大創は、正当な抗弁があるものの、不用な争いを避けるべく、香港におけるHANDY SEALERの販売を中止致しました。しかしながら、貴社が本件に関し何らかの措置を講じた場合は、レックと大創が抗弁のためにいかなる権利も放棄するものではございません。」(乙14)と回答した。すなわち、請求人は香港商標権及び中国商標権について正当な抗弁があり、請求人の行為がこれらの権利の侵害にあたらないものの、不用な争いを避けるという目的から香港におけるHANDY SEALERの販売を中止したものである。
かかる経緯にかんがみれば、被請求人は、請求人が日本において欧文字をややデザイン化したHandy Sealerからなる標章を使用しており、商標登録出願をしていなかったことを覚知し、請求人等の市場における活動を阻害する目的をもって上記請求人からの回答の直後の平成25年11月28日に、請求人が使用していた標章と全く同じ外観を選定して商標登録出願をしたとしか考えられない。
したがって、請求人は、被請求人が当該商標登録出願をしたことを知ることはできなかったものであり、契約等によって他者(被請求人)からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていた場合にあたらない。
よって、本件は上記裁判例と事案が異なり、当事者同士の私的な問題として解決すべきである場合にあたらない。

8 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第2号、同項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に掲げる商標にあたり、同法第46条第1項第1号に該当し、無効理由を有するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出している。

1 商標法第3条第1項第1号について
(1)請求人は、本件商標を構成する「Handy Sealer」は、「大きさが手ごろで取扱いやすい封印機械」という観念を生じるから、指定商品「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」をそのまま表しているような商標であり、普通名称にあたると主張する。しかしながら、かかる主張は失当である。
まず、そもそも、本件商標を構成する「Handy Sealer」の語は、辞書等に記載された既存の普通名称ではなく、被請求人が1988年に世界で初めて発明した家庭用の簡易な「ヒートシーラ」の商標として被請求人が採択した造語商標である(乙1)。
「広辞苑第六版」(甲3)、「スペースアルク英辞郎」(乙2)及び「ウイキペディア」(乙3)においても、「Handy Sealer」又はそれに対応する片仮名の「ハンディーシーラー」ないし「ハンディシーラ」が、封印機械の一種類を表示する名称である旨の文言は、何処にも記載されていない。
また、「Sealer(シーラー、密封機)」には、熱を利用して接着するものだけでなく、のり付け接着などを行う封印機械も含まれる(乙4及び乙5)。
したがって、仮に「Handy Sealer」から請求人の主張する「大きさが手ごろで取扱いやすい封印機械」といった意味合いが理解されることがあるとしても、これがそのまま、「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」を表しているとの請求人の主張は全くもって不適当である。
さらに、「包装機械の実務知識」に掲載されているシール機(密封機)の種類(乙4)及び「ウィキペディア」の「シーラー」に関するページ(乙5)によれば、熱接着を行うシール機の普通名称である「ヒートシーラ」(乙6)の記載はあるものの、「ハンディシーラ」については、何処にも明示されていない。
よって、本件商標は、その商品の普通名称といえるものではなく、被請求人の案出した一種の造語商標として認識されるというべきである。
(2)本件商標は、取引上その商品の普通名称であると普通に認識されているものではない。
技術文献である特許公開公報等(甲27ないし甲32)においても、これらに記載の発明の名称には、「燃料熱源小型ヒートシーラ」、「ヒートシーラ」、「ハンディ電熱シーラー」、「ハンディヒートシーラ」、「ハンディなヒートシーラ」、「ハンディ型ヒートシーラー」のように、一環して商品の普通名称である「ヒートシーラ、電熱シーラー」の語が使用されている。
この点、請求人は、後述するように、(ハンディ)「な」や(ハンディ)「型」は、形容詞であることや小型であることを示すもので、「電熱」及び「ヒート」は、「シーラー」、「シーラ」の機能を説明するにすぎないから、当該用語の要部は「ハンディーシーラー」ないし「ハンディシーラ」であると主張する。
しかしながら、もし仮に「ハンディシーラ」が請求人の主張する普通名称であったならば、当該「ハンディーシーラー」ないし「ハンディシーラ」の文字部分も要部になり得ないため、請求人の主張は矛盾している。しかも、「ハンディシーラ」が普通名称であったならば、そこへ普通名称である「ヒートシーラ」を更に付加して表示することは考え難い。
したがって、「Handy Sealer」(ハンディーシーラー、ハンディシーラ)が、同業者・取引者の間で普通名称として使用されていないことは明らかである。
さらに、請求人は、甲第5号証ないし甲第25証を示して、A標章が現在使用されている旨主張するが、かかる主張も失当である。なぜなら、これらの中には被請求人自身の商品が多く紛れており、実際に被請求人以外の商品と認められるのは、請求人自身の商品(甲5ないし甲8)、株式会社IPシステムの商品(甲10)及び株式会社ドリテックの1商品(甲20)のみである。また、株式会社マクロス社の商品(甲15)についても、被請求人自身の商品である可能性が高い。すなわち、被請求人以外で当該標章を使用しているのはわずか3?4社である。
よって、「Handy Sealer」が本件商標の指定商品との関係において普通名称とまでいえるものではないことは明らかである。
加えて、甲第33号証及び甲第38号証によれば、本件商標の指定商品と同一の商品について、「ハンドシーラー(HAND SEALER)」や「クイックハンディシール(Quick Handy Seal)」といった使用例もあり、もし「HANDY SEALER」が普通名称であると認識されているのであれば、これとは異なる「ハンドシーラー(HAND SEALER)」や「ハンディシール(Handy Seal)」の語が使用されることは考え難い。
以上によれば、取引界において、本件商標を構成する「Handy Sealer」が、商品「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」の普通名称であると認識されるに至っているといえるものではないのは明らかである。
(3)本件商標は、図案化した「Handy Sealer」の欧文字の内部を草色で表し、「H」の文字を他の文字より大きく書した上で全体の文字列を右斜め上方にカーブさせ、かつ全体を濃い草色で縁取りすることで文字を浮き上がらせた標章からなるものである。そのため、本件商標は、普通に用いられる方法で表示した標章の範囲を脱し、全体として看者の注意を惹く特異な構成よりなるものである。
したがって、本件商標は、その商品の普通名称を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するとも到底いえない。
ちなみに、請求人は、甲第2号証及び甲第3号証で示された審決例のみを主張の根拠として、本件商標は「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」である旨主張するが、当該審決で問題とされた商標は、本件商標とはその構成態様において一切共通点がないだけでなく、その指定商品も本件商標とは異なり、さらに、当該商標を構成する語のいわゆる特別顕著性の程度も本件商標とは全く異なるものであるため、本件において参考となるものではない。
(4)以上より、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当しない。

2 商標法第3条第1項第2号について
上記1のとおり、「Handy Sealer」は、被請求人以外では、わずか3?4社しか使用しておらず、技術的な文献等にもその記載が一切見られないため、同業者間において普通に使用されているといえるものではない。
また、請求人は、商標法第3条第1項第1号に係る請求人主張に引き続き、同項第2号においても「要部を『ハンディシーラー』とする標章についての取引界における使用の事実からすれば(甲5ないし甲25)・・・」といった主張を繰り返して主張するが、もし仮に「Handy Sealer」(ハンディーシーラー、ハンディシーラ)が請求人の主張するように、自他商品の識別力を失ってしまったものであったならば、当該「ハンディシーラー」の文字部分は要部になり得ないため、請求人の主張は矛盾している。
したがって、本件商標が「同業者間に普通に使用されるに至った結果、自他商品の識別力を失ってしまったもの」に該当するとも到底いえない。
以上より、本件商標は、商標法第3条第1項第2号に該当しない。

3 商標法第3条第1項第3号について
(1)請求人は、本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について、商標法第3条第1項第1号に係る請求人主張と同旨の主張を繰り返すのみである。
しかしながら、仮に「Handy Sealer」が「大きさが手ごろで取扱いやすい封印機械」程の意味合いにて認識され得る語であるとしても、上記2のとおり、「Handy Sealer」のみでは、「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」なのか「のりを利用して接着するシール機」なのか、その他どんな方法で溶着するシール機なのか、理解することはできない。
したがって、本件商標は商品の特定の品質を直接的かつ具体的に表示するものではない。そして、このように、商品の特定の品質を直接的かつ具体的に表示するのではなく、間接的に暗示させる程度のものは、自他商品の識別標識としての機能を有することが認められるのであり、この点は、特許庁商標課編「商標審査基準」においても明示されている(乙7)。してみれば、本件商標は、やはり商品の品質表示語といえるものではない。
(2)本件商標は取引上普通に使用されているものでもないことは、上記1及び2で述べたとおりである。そうすると、本件商標は、その指定商品について使用しても、識別標識としての機能を十分に果たし得るというべきである。
(3)請求人は、甲第26号証の審決例を挙げて本件商標の書体や全体の構成等が特殊な態様とはいえない旨主張する。
しかしながら、請求人が挙げた審決例で問題とされた商標と本件商標とは、その構成態様が全く異なる。そして、上記2でも述べたように、本件商標は、全体として看者の注意を惹く特異な構成よりなることから、「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するものとも到底いえない。そうすると、本件商標をその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るというべきである。
(4)以上より、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

4 商標法第3条第1項第6号について
(1)請求人は、甲第27号証ないし甲第32号証の特許公開公報等における用語の使用例を示して、本件商標が「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できない商標」であると主張する。
しかしながら、上記1でも述べたように、当該特許公開公報等には、一環して商品の普通名称である「ヒートシーラ」ないし「電熱シーラ」の語が使用されており、「ハンディシーラー」ないし「ハンディシーラ」が使用されているものは一切ない。
また、請求人は、当該特許公開公報等で使用されている「ハンディーなヒートシーラ」、「ハンディ・ヒートシーラ」、「ハンディ電熱シーラー」等の要部は「ハンディーシーラー」ないし「ハンディシーラ」である旨を述べているが、仮に「ハンディシーラ」が請求人の主張するように、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できない商標」であったならば、当該「ハンディシーラ」の文字部分は要部になり得ないため、請求人の主張はここにおいても矛盾している。
そうすると、甲第27号証ないし甲第32号証の特許公開公報等から、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品として、長年にわたって普通名称として使用されていることが示されるのは、「ヒートシーラ」又は「電熱シーラー」であるというべきである(乙6)。
(2)請求人は、甲第5号証ないし甲第25証を示して、「HANDY SEALER」、「Handy Sealer」、「handy sealer」、「ハンディシーラー」又は「ハンディシーラ」の標章が現在使用されていると主張する。
しかしながら、上記1でも述べたように、そもそも、「Handy Sealer」は、被請求人が1988年に世界で初めて発明した商品について採択した造語商標であり、被請求人はこれを遅くとも2005年から日本で使用している(乙8)。
また、請求人は、甲第7号証ないし甲第9号証を示して、請求人が2013年10月から使用していると主張する標章「Handy Sealer」と本件商標「Handy Sealer」とは、外観が同一であることから、被請求人に不正の目的があると主張する。
しかしながら、上記のとおり、被請求人は、請求人よりも前から「Handy Sealer」を使用している(乙8)。
したがって、むしろ本件商標を模倣して使用しているのは請求人であって、「Handy Sealer」(ハンディシーラー)を長年使用しているのは被請求人である。
(3)本件商標を構成する「HANDY SEALER」の文字からなる商標は、被請求人によって、米国にて本件商標と同一又は類似の商品について商標出願されており、実体審査を経て識別力欠如と判断されることなく登録を認められている(乙9)。これは、正に「HANDY SEALER」が造語商標であることの証左である。まして、本件商標は、全体として看者の注意を惹く特異な構成よりなることからすると、本件商標は、十分に自他商品識別機能を有すると認められてしかるべきものである。
(4)以上より、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

5 商標法4条第1項第7号について
(1)請求人は、「被請求人は請求人の新型に係る標章が未登録であることを奇貨として、不正の目的をもって出願をしたものである」旨の誤った主張を行っているため、被請求人の本件商標を出願した経緯が不正目的ではないことを、以下に述べる。
ア 被請求人が世界で初めて発明した「Handy Sealer」商品は、開封した袋の端を挟んで滑らせるだけで、家庭でも簡単に店で売っていた時のようにきれいに密封できる、というユニークな人気アイデアグッズとして日本でも次第に普及し、多くのメーカーが類似品を開発するようになったものである。そのような状況の中、請求人のように、一部において、「Handy Sealer」が「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封機」の普通名称であると誤解され、使用されている事態を憂慮した被請求人は、本件商標を日本でも出願することとした。
イ 被請求人は、関連商品について、「Handy Sealer」を普通名称であるかのように使用する企業に対して注意喚起又は警告を行ってきた。現に、被請求人は、請求人に対して過去に「Handy Sealer」商品の差止を求めて警告を行い、使用を止めさせた経緯がある。
例えば、香港においては、請求人が旧型である甲第5号証に係る商品と主張する「HANDY SEALER」を付した商品(乙10)について、被請求人の関連商標に係る商標権侵害であるとして商品の撤去を求め、2013年5月にはイオン株式会社に対して、同年7月には大創に対して警告書を送付している(乙11及び乙12)。その結果、2013年5月には、イオン株式会社から、2013年8月には、請求人であるレック株式会社及びその取引先である大創から、代理人を通じて当該「HANDY SEALER」商品の使用を中止する旨の書簡を受け取っている(乙13及び乙14)。
このように、被請求人は、「HANDY SEALER」が被請求人の商標であることを確認すべく、多方面に働きかけて内外にアピールしているものである。
(2)商標法第4条第1項第7号の解釈・適用について知的財産高裁平成19年(行ケ)第10391号判決(乙15)では、次のように判示している。
「商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで『公の秩序や善良な風俗を害する』との特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当ではない」
これを本件についてみると、本件商標は、上記のとおり、被請求人が請求人よりも前から使用している「Handy Sealer」の語を看者の注意を惹く特異な構成特殊な態様で表したものであり、「Handy Sealer」を巡る請求人との関わりからしても、本件商標がそもそも請求人標章の盗用でないことが明らかである。また、本件商標は、その指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもなく、さらに、他の法律によって使用が禁止されているとも認められない。そうすると、本件商標が商標制度に関する公的な秩序の維持を図る商標法第4条第1項第7号に該当しないことは明らかである。
(3)以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

6 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第2号、同項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に該当しないことは明らかであるから、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本件商標は、別掲のとおり、黄緑色で着色した「HandySealer」の文字を左下から右上方に向かってやや湾曲させ、その文字列に沿うように黒色で縁取りした構成からなるものであって、やや図案化されているとしても、文字のレタリングが一般に行われる昨今にあっては、この程度の図案化では特異な態様という程のものではなく、「HandySealer」の文字を表したものと容易に認識し理解されるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章といえる。
そして、「Handy」の文字は、「手ごろな」の意味を有する英語であり、それに由来する「ハンディー」の語は「大きさが手ごろで取り扱いやすいさま」を意味する外来語として一般に知られているものである(甲3の1)。また、「Sealer」の文字は、「封印、封印する」の意味を有する英語「seal」に、動作主名詞を作る接尾語「-er」を付加したものであって、「封印するもの」ないし「封印機械」の意味を有する語として知られているものである(甲4の1)。なお、「シール」の語は、上記「seal」に由来し、同義の外来語として知られているものである(甲3の2)。
そうすると、本件商標は、上記意味合いの「Handy」及び「Sealer」の2語を結合したものとして容易に認識し把握され、全体として「大きさが手ごろで取り扱い易い封印機械」の意味合いを認識し理解するものというべきである。
(2)本件商標の指定商品「電気的に発生した熱を利用して袋を封する家庭用の密封器」は、封印機械器具の範ちゅうに属する商品といえるものであり、両当事者の提出に係る証拠によれば、該商品との関係において、以下の事実が認められる。
ア 株式会社日本包装リース発行「包装機械の実務知識」の「8シール機」の項には、「封かんを目的とする機械の総称がシール機である。封かん紙ばり、キャップシール、縫合わせ、のり付け接着、ヒートシール、結紮(さつ)などの機が含まれる。」と記述され、「シール機」の種類として「ヒートシーラ」、「熱板シーラ」、「バンドシーラ」、「インパルスシーラ」、「高周波シーラ」等が挙げられている(乙4)。
イ フリー百科事典「ウィキペディア」の「シーラー」の項には、「シーラーとは、ポリ袋などの袋や段ボール箱などの箱を密封するための機械。」と記述され、「ヒートシーラー」として「熱を利用してポリ袋などの閉じ口を密着させて封じるもの。」、「カートンシーラー」として「段ボール箱などの箱に封をするための機械。」との説明がされている(乙5)。
ウ 公開特許公報、公開実用新案公報又は意匠公報では、いわゆる封印機械器具について、発明の名称や明細書等において「燃料熱源小型ヒートシーラ」、「ハンディーなヒートシーラ」、「ヒートシーラ」、「ハンディ・ヒートシーラ」、「ハンディ電熱シーラー」、「ハンディヒートシーラ」、「ハンディ型ヒートシーラー」、「簡易包装用ハンドシーラー」、「ハンドシーラ」、「ハンドシーラー」等の用語が用いられている(甲27ないし甲32及び甲34ないし甲37)。
エ 本件商標の指定商品の範ちゅうに属する商品について、その包装容器や商品説明において商品の写真と共に次のような表示がされている。
(ア)「electric/kitchen tool」、「HANDY SEALER」、「ハンディシーラー」、「これっ便利」、「かんたん食品保存!」、「はさんでスライド/袋の口を熱で閉じます!」等(甲5の1及び2)。
(イ)「HandySealer」、「ハンディシーラー」、「これっ便利」、「熱でしっかり/密封!」、「はさんでスライド!」等(甲7の1及び2、甲8号証の1及び2)。
(ウ)「KITCHEN/TOOL」、「簡単密封シーラー」、「HANDY SEALER」、「お菓子の袋など/食品保存に便利!」、「はさんで/スライド!」、「袋を/ピタッと/閉じる」等(甲10の1及び2)。
(エ)「DRETEC/DREAM TECHNOLOGY」、「Handy Sealer」、「ポリ袋の口をピタッ!と閉じる」、「ハンディシーラー」、「食べかけのスナック菓子の保存、/野菜類の保存に大活躍!」等(甲12の1及び2、甲14)。
(オ)「SKstylish kitchen」、「handy/sealer/ハンディーシーラー」、「使い方簡単!!/挟んでスライドさせるだけで密封できる」、「お菓子や乾物・調味料など、/食品の保存に!!」等(甲15の1及び2、甲17)。
(カ)「DRETEC/暮らしをデザインする」、「ハンディシーラー」等(甲18)。
(キ)「ハンディ・シーラー」、「カンタン操作で/しっかり密封!!」、「開封後に袋を使って/練習できちゃう!」等(甲19)。
(ク)「DRETEC」、「Open&Close/Handy Sealer」、「カッター付/ハンディシーラー」、「食べかけのお菓子や野菜類の保存に大活躍!」、「袋の口を/ピタッと閉じる」等(甲21の1及び2)。
(ケ)「ピタッと簡単!」、「スマート」、「ハンディシーラー」、「開封カッター付」、「安全カバー付」等(甲23の1ないし3、甲25)。
(コ)上記(エ)、(オ)及び(ケ)の商品と同一の商品がインターネットの通販サイトに写真と共に掲載され、それぞれ「ハンディーシーラー」、「DRETECしっかり密封カッター付ハンディーシーラーホワイト」又は「ピタッと簡単スマートハンディーシーラー」の表示がされている(甲16、甲22及び甲24)。
オ 上記エの商品には、それぞれの取扱者の表示等に照らし、請求人と取引関係ある「大創」(甲6及び甲9)の業務に係る商品(甲5の3、甲7の3、甲8の3)と認められるものが含まれているが、被請求人の業務に係る商品と認められるものは見当たらず、多くは被請求人以外の第三者の業務に係る商品と推認される(甲10の3、甲12の3、甲15の3、甲16ないし甲20、甲21の3、甲22、甲23の3、甲24及び甲25)。
(3)以上を総合勘案すると、少なくとも本件商標の構成中の「Sealer」の文字は、「シーラー」又は「シーラ」に通じ、熱を利用すると否とに関わらず袋を封する密封器具を指称する語として認識し理解され、かつ、普通に使用されているものというべきである。同じく「Handy」の文字は、「ハンディ」に通じ、「手ごろな」又は「大きさが手ごろで取り扱いやすいさま」の意味を有する語として一般に知られており、商品の品質、形状等を表示するためにしばしば他の語に付加して用いられ、現に、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、上記「Handy」の文字と「Sealer」の文字とを結合し、商品の品質、形状等を表すために普通に使用されているものといえる。
そうすると、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる本件商標をその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、該商品が「大きさが手ごろで取り扱い易い密封器」であること、すなわち、商品の品質、形状等を表示したものとして認識し理解するに止まり、結局、本件商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(4)被請求人は、「Handy Sealer」の語は被請求人が1988年に世界で初めて発明した家庭用の簡易な「ヒートシーラ」の商標として採択した造語商標であり、自他商品識別機能を有するものであること、本件商標と同一の「HANDY SEALER」の文字からなる商標が米国において登録されていること、請求人及びその取引先の大創等に対し商標権侵害であるとして警告書を送付し、請求人等から「HANDY SEALER」商品の使用を中止する旨の書簡を受け取っていること、などを主張している。
しかしながら、本件商標の使用に係る商品が請求人の発明に係る商品と同様のものであるとしても、「HandySealer」の語が一連の造語商標として被請求人の業務に係る商品を表示するものとして一般に広く知られていることを示す証左はないこと、米国において商標登録されているとしても、我が国において直ちに商標登録されるものではないこと、乙第11号証ないし乙第14号証によれば、被請求人が商標権侵害として警告し請求人等が回答した事実が認められるとしても、それは我が国ではなく香港又は中国における事情であり、請求人等が被請求人に対する抗弁を放棄した訳ではないこと、などからすると、本件商標については前示のとおりに判断するのが相当であるから、被請求人の主張はいずれも採用することができない。

2 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張に係る他の無効事由について判断するまでもなく、同法第46条第1項に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本件商標)(色彩については原本参照)




審理終結日 2015-08-19 
結審通知日 2015-08-21 
審決日 2015-09-01 
出願番号 商願2013-93397(T2013-93397) 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (W07)
最終処分 成立 
前審関与審査官 平澤 芳行 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2014-04-11 
登録番号 商標登録第5663629号(T5663629) 
商標の称呼 ハンディーシーラー 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 川島 麻衣 
代理人 坂野 史子 
代理人 野末 寿一 
代理人 工藤 莞司 
代理人 小暮 君平 
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