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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W39
管理番号 1309706 
審判番号 無効2013-890038 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-05-31 
確定日 2015-12-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5506879号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成26年12月19日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成27年(行ケ)第10025号平成27年9月15日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5506879号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5506879号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成24年2月6日に登録出願され、第39類「貨物自動車による輸送」を指定役務として、同年6月12日に登録査定、同年7月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、請求人が引用する登録商標は、以下の3件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。なお、これらをまとめて、以下「引用商標」という場合がある。
(1)登録第4154926号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(B)のとおりの構成からなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の「使用に基づく特例」の適用を主張して平成4年9月21日に登録出願、第39類「軽自動車による輸送」を指定役務として、同10年6月12日に設定登録されたものである。
(2)登録第4270230号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(C)のとおりの構成からなり、平成9年5月14日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させたフロッピーディスク」、第35類「フランチャイジーの経営の診断及び指導に関する情報の提供、フランチャイザーの組織・管理・運営に関する情報の提供」及び第39類「車両輸送のための道路地図情報の提供,車両による輸送に関する情報の提供,車両の運行管理に関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として、同11年5月7日に設定登録され、その後、同21年3月3日に第35類及び第39類に係る役務について商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(3)登録第5080364号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(D)のとおりの構成からなり、平成19年1月4日に登録出願、第39類「引越しの代行・請負又は取次ぎ及びこれらに関する情報の提供,鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越の代行,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり,ガスの供給,電気の供給,水の供給,熱の供給,倉庫の提供,駐車場の提供,有料道路の提供,係留施設の提供,飛行場の提供,駐車場の管理,荷役機械器具の貸与,自動車の貸与,船舶の貸与,車いすの貸与,自転車の貸与,航空機の貸与,機械式駐車装置の貸与,包装用機械器具の貸与,金庫の貸与,家庭用冷凍冷蔵庫の貸与,家庭用冷凍庫の貸与,冷凍機械器具の貸与,ガソリンステーション用装置(自動車の修理又は整備用のものを除く。)の貸与」を指定役務として、同年9月28日に設定登録されたものである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するとして、請求人が引用する商標は、同人が役務「軽貨物自動車による輸送」に使用している「赤帽」の文字からなる商標である(以下「『赤帽』商標」という場合がある。)。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
1 理由の要点
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)ア 特許庁商標課編「商標審査基準」[改訂第10版]第3九6(6)には、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」と明記されている。
また、引用商標の「赤帽」の文字が著名商標であることは、特許庁が特許庁電子図書館(以下「IPDL」という場合がある。)において明確に認めているものである(甲5)。
したがって、本件商標は、著名商標である引用商標と「舞妓マークの」の極めて小さな文字及び舞妓を図案化したと思しき図形とが結合されているとしても、上記審査基準により、互いに類似する商標であることは明白な事実である。
イ 本件商標の指定役務は、車両による輸送に関する役務に付された類似群コードである「39B01」のみを指定する点で、いずれの指定役務においても同一の「39B01」を含む引用商標と抵触することも明白な事実である。
ウ よって、本件商標は、引用商標1ないし3により、商標法第4条第1項第11号に基づいて、同法第46条第1項第1号が適用され、無効とされるべきものである。
なお、上記審査基準が適用された審判例・判決例は多数存在する(平成6年審判第11093号・東京高裁平成10年(行ケ)第106号、平成6年審判第17388号、審判2000-35424・東京高裁平成14年(行ケ)第152号、東京高裁平成14年(行ケ)第195号・同第265号・同第383号、神戸地裁平成10年(ワ)第375号・大阪高裁平成11年(ネ)第2815号、東京高裁平成12年(行ケ)第461号、東京高裁昭和55年(行ケ)第21号)。
エ 以上により、本件商標は無効とされるべきであるが、仮に、これらの主張が受け入れられないとしても、本件商標は、別掲(A)のとおりの構成からなるところ、その構成中の「京都」の文字は、当該役務の提供の場所を指称するいわゆる記述的商標であり、また、舞妓の図形や「舞妓マーク」の文字は、同じく京都を指称する少なくとも識別力の極めて弱い商標にすぎないものであるから、本件商標の要部は、「赤帽」の文字部分にあると解するのが相当である。
他方、引用商標は、「赤帽」の文字よりなるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観において若干の相違はあるとしても、「アカボウ」の称呼及び「赤帽グループ」等の観念を共通にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定役務である第39類「貨物自動車による輸送」は、引用商標の指定役務と抵触するものであるから、後述する引用商標の周知著名性と相まって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反しているものである。
(2)被請求人によるIPDLの読み方に関する明らかな誤解(答弁に対する弁駁)
被請求人は、答弁書において「何故なら、甲第5号証は引用商標が周知商標又は著名商標であることを示すものではないからです。すなわち、甲第5号証に掲載されている登録第1353994号商標は、特許庁IPDL・商標出願・登録情報検索(詳細画面)検索結果・写し(乙8)に掲載されているとおり、指定商品を『第9類 消防車、自動車用シガーライター、第12類 自動車並びにその部品及び附属品、第13類 戦車』とするものなので、登録第1353994号商標「赤帽」は当該各指定商品について需要者の間に広く認識された商標として認められ『日本国周知・著名商標』に掲載されているものと推定できますから、甲第5号証は引用商標が著名商標であることを裏付けるものではないのです。」とする。
しかしながら、特許庁IPDLに「第9類 消防車、自動車用シガーライター、第12類 自動車並びにその部品及び附属品、第13類 戦車」を指定商品とする「赤帽」商標が掲載されているということは、取りも直さず、請求人の業務である「軽自動車による輸送」があまりに著名となった結果、通常であればさして無関係とも思われる商品である消防車、自動車用シガーライター等について第三者が「赤帽」商標を使用した場合、狭義・広義の混同を生ずるおそれがある、ということを示しているものである。
したがって、「甲第5号証は引用商標が周知商標又は著名商標であることを示すものではないからです。」は、明らかに特許庁IPDLの読み方を間違えたものである。
なお、その結果として、答弁書の7.(3)(6頁?15頁)における被請求人の文書はすべて失当となる。特に、乙第7号証における平成9年審判第9103号は、別異の商標に関する別異の事情の下における審決であり、これを本件に引用すること自体が失当である。
(3)その他、答弁に対する弁駁
答弁書において、「乙第10号証?乙第16号証に掲載されているとおり、請求人が『・・・自己に有利な証拠として援用し、本件商標登録が無効とされるべき旨を主張・立証する・・・』とされている審決例3件及び判決例4件は全て文字商標間の類否判断に関するものであり、しかも、役務商標(サービスマーク)についての審決例は乙第12号証のみであってその他の審決例及び判決例は全て商品商標についての類否判断に関するものです」と主張する。
しかしながら、これらの審判例はすべて、その判旨が商標審査基準[改訂第10版]第3九5(6)と同一の基準を採用した先例であり、商標の構成要素や商品・役務といった表面的な点を主張したわけではない。より深くこれらの審判決例が採用した理論構成を主張・援用したものである。よって、被請求人の当該主張ははなはだ失当である。ちなみに、ここで適示した審判決例は、たまたま「実例で見る商標審査基準の解説(第六版)」(社団法人発明協会発行・工藤莞司著)において、商標審査基準[改訂第10版]第3九5(6)の具体例として掲載されているものばかりである(甲25)。
さらに、「需要者等はごく自然に『荷物を捧げ持っている舞妓の正面像』を描いた図形、『舞妓マークの』の文字及び『京都赤帽』の文字を一体として認識するものと推定できますから、当該商標に接する需要者等が赤帽の文字部分のみを抽出して認識するとは到底考えられません。」と主張する。
しかしながら、今まで述べてきた請求人の主張の根拠との重複を避けるため、以下、結合商標に関する最新の判決例「平成24年(行ケ)第10338号審決取消請求事件(平成25年3月25日判決言渡)」(甲26)を援用し反論するものである。
すなわち、その判旨として「商標法4条1項11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最三小判昭和43年2月27日・民集22巻2号399頁参照)、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最一小判昭和38年12月5日・民集17巻12号1621頁、最二小判平成5年9月10日・民集47巻7号5009頁参照)。」とある。
ここで、いうまでもなく、引用商標の「赤帽」の文字は著名であるため、上記判決例の「商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」に該当するものである。
よって、最新の裁判例に鑑みたとしても、本件商標から「赤帽」は抽出されるべきであり、被請求人の上記主張は失当である。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)特許電子図書館(IPDL)「日本国周知著名商標」における掲載(甲5)において、「赤帽」の文字からなる商標は、著名商標の一つとして掲載されているものである。
このことは、取りも直さず、「赤帽」商標が我が国において著名性を獲得している一見して明白な証左となるものである。
特許庁における過去の審決例(甲6)において、本件請求人である全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会所有に係る「赤帽」商標の著名性の認定がなされているものである。
以上により、商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、いわゆる狭義の混同のみならず、商品や営業の関連性を想起させる広義の混同が含まれる(「レールデュタン」事件判決・最高裁平成10年(行ヒ)第85号)という広義の混同論を持ち出すまでもなく、本件商標は、引用商標といわゆる狭義の混同をも生じさせることが明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものである。
(2)請求人自らによる「赤帽」商標の周知・著名性の立証
ア 「赤帽」商標が特許庁により上記著名性の認定を受けることができた背景には、請求人組合(全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会)のシンボルマークとして、営々たる企業努力の下、継続的・大々的に使用されている事実が当初から現在に至るまで存在するからである。
すなわち、赤帽は、昭和50年5月に我が国で初めて軽貨物自動車による軽運送業として誕生したものである(すなわち、事業の創始者が、昭和49年12月頃、貨物自動車運送事業の組織化を考え、同50年5月12日に「赤帽」の標章を貨物軽自動車に付し運送事業を開始した。)。同53年8月に全国組織の協同組合連合として運輸省から認可され、いまや全国51の協同組合(甲7)のもとで、15、000台の赤帽車(甲8)が都会の狭い路地裏から山間部の林道まで持ち前の機動力を発揮して活躍している。赤帽の主な業務は、緊急輸送、大きな荷物の運搬、ルート配送、定期便に代表される貸切便、通販カタログなど法人のお客様から承った宅配業務、単身者や学生などひとり暮らしの方の引越作業や、家族引越のような規模の大きな作業に係る輸送を行っているものである。
そして、「赤帽」商標は、引越や緊急搬送、定期配達、路線便で送れない大きな貨物の配達に使用する車両、制服、荷受け証、チラシ、入会案内などにおいて使用されている。
イ 広告宣伝の程度については、まず、前提として日々、全国津々浦々において「赤帽」商標を付した15、000台の車両が走り回ること自体、大きな宣伝広告効果をもたらしていることは明らかである。
また、2010年には計2、880、000枚の、2011年には計2、708、000枚のチラシを作成配布し(甲9)、自身のホームページを開設することにより盛大に宣伝広告を行っているものである。なお、請求人のホームページは、北海道ブロック:9ホームページ、東北ブロック:6ホームページ、北関東甲信越ブロック:6ホームページ、首都圏ブロック:1ホームページ、中部ブロック:7ホームページ、近畿ブロック:6ホームページ、中国ブロック:5ホームページ、四国ブロック:4ホームページ、九州ブロック:8ホームページのように、全国津々浦々の地域の状況に応じた宣伝活動が可能なように細分化されているものである(甲10)。
加えて、近年その宣伝広告効果が既存のメディアに代替するほどの力を持ち始めた、いわゆるSNSを有効に活用することなどにより、あらゆる層に対する積極的かつ大々的な宣伝広告を行っているものである(甲11?甲15)。
その結果、例えば、検索エンジン大手で、「赤帽」の語を検索するときは、約20万件のホームページがヒットするものであり(甲16)、「赤帽」商標の著名性は、認定されるべきものであると思料する。
ウ 「赤帽」商標がここまでに著名性を獲得した原因として、単に利潤の追求に走るのみではなく、確固たる理念の下、営々たる企業活動を行っていることがその大きな要因としてあげられる。かかる理念とは、小林則夫現会長の「会長挨拶:赤帽はお客様第一主義」にも現れている(甲17)。
以上のような確固とした企業理念の下、あらゆるメディアを駆使した宣伝広告活動を行い、約40年の間使用を継続されてきた「赤帽」商標は、その役務の提供の質の高さの面でも極めて高い評価を獲得し、例えば、2013年度顧客満足度の高い引っ越し会社ベスト13に選定され(甲18)、さらには、2013年度オリコン顧客満足度ランキング引っ越し会社コストパフォーマンス部門第1位を獲得するに至るのである(甲19)。
エ なお、請求人の企業情報などについては、小冊子「あかぼう営業のごあんない」(甲20)に記載されているとおりである。
(3)答弁に対する弁駁
被請求人は、答弁書において、「甲第6号証の審判1999-686号に係る審決において、・・・出願日から約10年以前になされている当該認定は、平成24年2月6日時点において請求人所有に係る『赤帽』商標が著名商標であった事実を裏付けるものではないと言えるからです。」と主張する。また、「甲第6号証の審判1999-686号に係る審決において認定されている『赤帽』商標の著名性は、審決日平成13年9月12日から10年余が経過している本件登録商標の出願日平成24年2月6日の時点においては相当希釈されているものと推認できます。」などと主張する。
しかしながら、審判請求書の「広告宣伝の程度」の項に記載のように、日々、全国津々浦々において15、000台の「赤帽」の文字を付した車両が走り回ること自体、事実上の大きな宣伝広告効果をもたらしている。そして、それ以外にも、各種メディアに露出等しその著名性を日々益々高めているものである。その著名性については審判請求書において十分述べたものであるが、これにさらなる証拠を追加する(甲27?甲29)。
また、請求人のビジネスモデルのユニークさや全国津々浦々でエネルギッシュに活躍する姿をより知りたいと、各種雑誌・新聞からの取材依頼もひっきりなしに来る(甲30?甲34)。
このように、各種雑誌に取材を受けることに加え、請求人が様々な活動を行うことによって新聞に取り上げられた(甲35?甲38)。
さらに、請求人は、以上のように受動的に取材等を受けるのみではなく、積極的に自らも広告を打ち、その著名性を高めている(甲39、甲40)。 以上のように、日々、全国津々浦々において15、000台の「赤帽」の文字を付した車両が走り回ること自体、事実上の大きな宣伝広告効果をもたらしており、この事実に加え、このようなテレビ、新聞、雑誌等のメディアへの露出の効果があいまって請求人の引用商標はますますその著名性を向上させている。その結果、例えば、「ミニカー・プラモデル業者からのライセンスの申し込みをあまた受けることになり、そのうち、例えば、がん具大手株式会社トミテックの『チョロQ』やミニカー業者大手のアガツマ社等から赤帽車のライセンスの申し込みを受け、実際に製品化がなされ(甲41、甲42)、そのいずれにも引用商標が貼付されている。」、また「特に児童用の『働く自動車』の分野の絵本において、ミキハウス社や金の星社(図書館用堅牢本)に赤帽車が掲載され(甲43)、そのいずれにも引用商標が描きこまれている。」というような著名商標ゆえの具体的事実が惹起される。
このような事実が積み重なって来ると、具体的数値に引用商標の著名性が現れてくる。すなわち、毎日新聞社発行「第49回 毎日企業認識度調査 会社は評価される 2009」において、「赤帽」は、80%台後半から90%台後半を記録している(甲44)。また、「赤帽車」の占有率に関する証明書によれば、我が国の事業用車のうち、8%台から10%台という高い占有率を示しており(甲45)、赤帽車には必ず引用商標が付されている。さらには、近年の売上高も140億円から100億円という高い水準で推移している(甲46)。
以上のとおり、この10年の歳月で引用商標はさらに著名性を増している。実際の事実を調査もせずに、単に時の経過のみで「著名性が希釈化」云々の専門性の微塵も感じられない主張をするのは、請求人に対しはなはだ礼を失するものである。この10年の歳月、請求人は、絶大なる企業努力を行い、引用商標の著名性を高めた。
4 商標法第4条第1項第7号について
(1)商標法の目的は、周知表示又は著名表示へのフリーライドを防止することにある(法第1条)ところ、上述のとおり、「赤帽」商標の著名性や役務の提供を受ける者を同一にする点等を総合的に考察すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも引用商標の商標権者に係る著名商標である「赤帽」に関連した商品であるかの如く認識されるおそれがあるものである(狭義の混同)。
また、仮にそうでなくとも、何らかの密接な営業上の関連性を想起させ、あたかも請求人の属するグループに関係のある会社か、あるいは、何らかのライセンスを受けた者に係る商品であるかの如く認識させるおそれがあるものである(広義の混同)。
商標法第4条第1項第7号は、公序良俗に反する商標の登録を排除するために規定されたものであるが、近年、その出願経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し難い商標については、本号に該当すると判断されている(例えば、「ドゥーセラム」事件判決・東京高裁平成11年12月22日)。最近では、特許庁における判断等においても、同旨の審査・審決例等が多く見みられるものである。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合には、引用商標の商標権者がその企業努力により営々と築き上げてきたグッドウィル(業務上の信用)にフリーライドすることは明らかであるため、その出願経緯は著しく社会的妥当性を欠くものであることが明らかであり、よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(2)フリーライドの確証(答弁に対する弁駁)
ア 請求人内部資料によれば、二人の「柏」姓を名乗る兄弟がそれぞれ、昭和56年1月18日、同月24日に請求人組合に加入しており、そして、あとに加入した(柏未都実)と先に加入した(柏東志政)は、共に同58年7月24日に請求人組合を除名されている(甲21)。
この除名に先立ち、被請求人・柏東志政、柏未都実は、昭和56年6月に株式会社京都赤帽(被請求人)を創立している旨を被請求人開設のホームページ上で自白している(甲22)。
そして、被請求人の履歴事項全部証明書によれば、被請求人・柏東志政は、平成25年9月30日に被請求人取締役を辞任するまで長きにわたり、被請求人会社を支配し続けたものである(甲23)。
イ 上記アについて、これを時系列的にみると、以下のとおりである。
昭和56年1月:被請求人、柏東志政・柏未都実が請求人組合に入会。
昭和56年6月:被請求人が株式会社京都赤帽を設立。
昭和58年7月:被請求人、柏東志政・柏未都実が請求人組合を除名される。
平成25年9月:その後も柏東志政は、長きにわたり平成25年10月16日に退任登記がなされるまで「京都赤帽」なる商標を用い、被請求人会社を実質的に支配。
ウ 以上の履歴を見れば明らかなように、まず、昭和56年当時既に飛ぶ鳥を落とす勢いであった請求人の事業に興味を持った被請求人、柏東志政・柏未都実ら兄弟は、その事業ノウハウを取得せんと被請求人組合に入会した。入会後、5か月後には請求人に秘匿して「京都赤帽」、つまり「京都にて営業を営む赤帽」なる、当時既に確立しつつあった「赤帽」の周知・著名性を無断で利用した会社を立ち上げたものである。そして昭和58年7月に両名が請求人組合を除名されるまで、請求人のノウハウを取得しつつ、自ら別途立ち上げた「京都赤帽」を拡大・充実させんと図り、除名後は「株式会社京都赤帽」なる商号商標を用いて、請求人のノウハウと請求人の「赤帽」商標に化体した業務上の信用にフリーライドしつつ現在にまで至るものである。
エ 自らが所属していた著名な団体から除名された後、「その著名な商号商標(赤帽)」に単に「営業場所(京都)」を結合させた商号商標を用いて同一の事業を行った、という本件のような事案の場合、当該行為は著名な団体(赤帽)の商号商標に化体した業務上の信用にフリーライドして不当な利益を得んとする被請求人の不正の意図は一見して明白に存在する。
ましてや、除名される前に請求人団体に秘匿して団体の内規違背である「京都赤帽」なる同一事業会社を立ち上げ、営業を開始していたという事実が存在する以上(甲22)、フリーライドの意思の存在は尚更確信を持って証明されるものである。
オ 本件は、請求人と無関係の者が偶然考えついた商標を選択したものではなく、明らかに「赤帽」商標に化体した、請求人が営々とした企業努力により築き上げたグッドウィルに只乗りせんとする商標取得行為に関する事件であり、その内容は極めて悪質である。商標法第4条第1項第7号に該当する典型的な例であると断言できるものである。
ちなみに、昨今、インターネット上で「赤帽」商標を使用する権利が無い複数の第三者が「赤帽」を名乗り、営業を行っている事例が増加しており(甲24)、現在、請求人は、それらの「赤帽」商標の削除を求めるための法的手続きの準備に着手している。
5 被請求人提出の証拠方法の証明力の欠如について
被請求人は、乙第17号証ないし乙第44号証を提出し、請求人と被請求人とを「混同された事例がないこと。」を証明せんと証明願を証拠方法として提出している。
しかしながら、「ある事実がないこと」は証明できない(いわゆる「悪魔の証明」と称される。)ことは証拠法の教科書の第1ページに掲載されている法常識であり、このような証拠方法を何通集め提出したところで証明力は皆無である。また、証明書への署名者も無名の有限会社、個人事業主などがその全部を占めており、業種事態も不明又はまちまちであるところ、経験則上、過去少しでも取引のあった事業者や個人に「迷惑はかけない」と頼み込み、その証明内容の理解もおぼつかないまま署名したという経緯が容易に看取し得る。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条1項第11号、同項第15号、同項第7号に違反して登録されたことは明らかである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第48号証を提出した。
1 登録第3266259号商標の使用状況について
被請求人は、被請求人の履歴事項全部証明書(乙1)記載のとおり、平成元年4月10日の会社設立時から現在に到るまで役務「貨物自動車による輸送」を営んでいる。
そして、被請求人は、登録第3266259号商標(以下「本件関連商標」という。)に係る商標公報(乙2)及び登録原簿謄本写し(乙3)に掲載されているとおり、当該商標を平成4年9月3日に特例出願し、平成8年4月15日に出願公告(商公平8-46709)され、同9年3月12日に登録を受けている。
本件関連商標は、乙第2号証に掲載されているとおり(別掲(E)のとおり)、「荷物を捧げ持っている舞妓の正面像」を描いた図形を中央部に大きく表すとともに、その右上方に「五重の塔」を描いた図形を小さく表し、「荷物を捧げ持っている舞妓の正面像」を描いた図形の下方に「京都赤帽」なる文字を角ゴチック体で同一大・同一間隔にて大きく横書きし、その左横に「株式会社」なる文字を角ゴチック体で小さく二列縦書きしてなる構成であり、指定役務を第39類「貨物自動車による輸送」とするものである。
被請求人は、会社設立時から現在にいたるまで、本件関連商標の構成と同一構成の商標(社会通念上同一のものと認識し得るものを含む。)を役務「貨物自動車による輸送」に使用しており、また、平成18年11月から現在にいたるまで、本件商標の構成と同一構成の商標も役務「貨物自動車による輸送」に使用しており、より具体的に述べると、現在、被請求人は、本件関連商標の構成と同一構成の商標(社会通念上同一のものと認識し得るものを含む。)を表示している貨物自動車と本件商標の構成と同一構成の商標を表示している貨物自動車の二種類の貨物自動車を合計10台所有し、いずれも役務「貨物自動車による輸送」に使用している。
被請求人は、本件関連商標及び本件商標を広告・宣伝にも使用しており、例えば、「NTT西日本タウンページ京都市南部版、表紙・第77頁及び裏表紙、西日本電信電話株式会社、2013年6月発行」写し(乙4)、被請求人が配布している「カタログ」写し(乙5)及び被請求人が配布している「チラシ」写し(乙6)を挙げることができる。
なお、被請求人が、平成18年11月から本件商標の構成と同一構成の商標を使用しているのは、当時、被請求人の顧客各位から被請求人の営んでいる役務「貨物自動車による輸送」を“舞妓マークの京都赤帽さん”と指称されることが多くなっていたので、被請求人は本件関連商標の構成のおける「荷物を捧げ持っている舞妓の正面像」を描いた図形部分と「株式会社京都赤帽」なる文字部分との結合力をより増強するため、構成中に「舞妓マークの」なる文字を含んでいる本件商標の構成と同一構成の商標を選定したからであり、選定に当っては、「舞妓さんの株式会社京都赤帽(マイコサンノカブシキカイシャアカボウ)」よりも語呂が良い「舞妓さんの京都赤帽(マイコサンノキョウトアカボウ)」を採択している。
2 商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、本件商標の指定役務と引用商標の各指定役務とが抵触していることを認めるが、本件商標と引用商標とが非類似のものであることは明白と思料する。
なぜなら、本件商標と「赤帽」なる文字を赤色ゴチック体で同一大にて横書きしてなる構成の引用商標とは、その外観、称呼、観念のいずれの観点からしても非類似であるからである。
すなわち、外観についてみると、本件商標の構成が「荷物を捧げ持っている舞妓の正面像」を描いた図形を大きく表すとともに、その右横に「舞妓マーク」なる文字を角ゴチック体で同一大・同一間隔にて横書きし、その下方に「京都赤帽」なる文字を角ゴチック体で同一大・同一間隔にて大きく横書きしてなる構成であるのに対し、引用商標はいずれも「赤帽」なる文字を赤色ゴチック体で同一大にて横書きしてなる構成であるので、本件商標と引用商標に接する我が国の需要者及び取引者(以下「需要者等」という。)により、前者と後者が視覚上彼此相紛れて認識されるおそれは皆無であるから、本件商標と引用商標とは外観上非類似のものである。
称呼についてみると、本件商標の構成から生ずる可能性がある称呼は、本件商標を構成する図形と文字に起因し、「マイコマークノキョウトアカボウ」、「マイコマーク」、「マイコ」及び「キョウトアカボウ」の四種といえるのに対し、引用商標から生ずる称呼はいずれも「アカボウ」のみと認められるので、本件商標と引用商標に接する需要者等により、前者と後者が聴覚上彼此相紛れて認識されるおそれは皆無であるから、本件商標と引用商標とは称呼上非類似のものである。
観念についてみると、本件商標の構成から生ずる可能性がある観念(意味合い)は、「舞妓マークの京都赤帽」、「舞妓マーク」、「舞妓」及び「京都赤帽」の四種といえるのに対し、引用商標から生ずる観念はいずれも「赤帽」のみと認められるので、本件商標と引用商標に接する需要者等により、前者と後者が観念上彼此相紛れて認識されるおそれは皆無であり、本件商標と引用商標とは観念上非類似のものである。
なお、平成9年審判第9103号に係る審決公報(乙7)に掲載されているとおり、本件関連商標の商標登録無効審判事件の審決において、本件関連商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても相紛れるおそれはないと認定されている。
本件関連商標の構成は、本件商標の構成と舞妓の図形及び京都赤帽の文字を含んでいる点で共通しているので、前掲認定をもって被請求人の本件商標と引用商標とが外観、称呼、観念のいずれの観点からしても非類似のものとする主張が、恣意的なものではなく妥当な主張であることを裏付けることができる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人の主張に対して
ア 請求人は、特許電子図書館(IPDL)「日本国周知・著名商標」の検索結果写し(甲5)を証拠とし、「・・・まず、特許庁が開設するIPDLにおける日本国周知著名商標において『赤帽』商標は、著名商標の一つとして掲載されているものである。このことは、取りも直さず、『赤帽』商標が我が国において著名性を獲得している一見して明白な証左となるものである。・・・」と主張している。
甲第5号証に掲載されている登録商標「赤帽」は、その指定商品である「消防車、自動車用シガーライター」(第9類)、「自動車並びにその部品及び附属品」(第12類)及び「戦車」(第13類)について需要者間に広く認識された商標と認められて「日本国周知・著名商標」に掲載されているのであって、「赤帽」商標が役務「貨物自動車による輸送」について需要者間に広く認識された商標と認められて掲載されているのではないと推定できるから、請求人の上掲主張は、失当といわざるを得ない。
イ 次に、請求人は、甲第6号証をもって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録を無効とされるべきものであると主張している。
被請求人は、かかる請求人の主張が妥当性に欠け成立し得ないことは明白と思料する。
なぜなら、甲第6号証の審判1999-686号に係る審決において、出願商標(漢字「赤帽」を書してなる商標)がその指定役務「貨物自動車による輸送」に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、周知・著名な請求人の商標「赤帽」を連想・想起し、該出願商標が請求人若しくは同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商標であるかのように、その役務の出所について誤認混同するおそれがあると認定されているが、該認定は、出願商標の出願日(平成4年9月29日)から審決日(平成13年9月12日)に至る間における貨物自動車による輸送業界の事情に基づくものである。
そして、本件商標の出願日は平成24年2月6日であるから、出願日から約10年以前になされている当該認定は、平成24年2月6日時点において請求人所有に係る「赤帽」商標が著名商標であった事実を裏付けるものではないといえるからである。
ウ また、請求人は、「・・・請求人自らによる『赤帽』商標の周知・著名性の立証・・・」とし、再度、甲第5号証及び甲第6号証を挙げ、「・・・明らかに『赤帽』商標の著名性をご認定されておられます。・・・」と主張している。
被請求人としては、前述した理由をもって甲第5号証及び甲第6号証による請求人の主張が妥当性に欠け成立し得ないことを十分明らかにできたものと確信している。
エ さらに、請求人は、甲第7号証ないし甲第20号証を提出している。 本件商標についての無効理由存否判断の基準時点はその出願時(平成24年2月6日)であるところ、甲第10号証ないし甲第19号証はそれ以後の日付のものであって、平成24年2月6日時点における「赤帽」商標の著名性を立証する証拠物になり得ない。
甲第20号証については、同号証には発行日付が表示されていないが、同号証の8枚目の最下行に「平成22年8月東京都台東区浅草橋へ移転」と記載されていることから、同号証は本件商標の出願日(平成24年2月6日)以前に請求人によって発行されていたものと認められる。そして、甲第20号証には、「・・・ロゴマークは、以前までの漢字表記を一新し、現在は、幅広い世代に親しみやすいひらがなとシャープな印象の英文字を組み合わせました。愛嬌のあるキャラクター、親しみやすいマーク、この二つが「赤帽」を身近に感じてもらうための大切な“目印”です。・・・」及び「・・・組合員数13、000名 車両台数15、000台・・・」(甲20:10枚目上段及び下段)と記載されているとともに、17枚目には「Akabou」のロゴを大きく表示した各種貨物自動車の写真が掲載されている。
前掲各記載及び写真と平成9年審判第9103号に係る審決公報(乙7)に掲載されている請求人の「・・・平成4年1月現在、全国8ブロックからなる全国組織を有しており、営業拠点は60ヵ所にのぼり、車両台数は25、000台余に及んでいる・・・平成7年には創立20周年を迎え、日本全国に200ヵ所の営業拠点をもち、組合員は18、000人、車両台数は23、000台を越えており・・・」なる主張を勘案すれば、審判1999-686号に係る審決(甲6)において認定されている「赤帽」商標の著名性は、審決日(平成13年9月12日)から10年余が経過している本件商標の出願日(平成24年2月6日)の時点においては相当希釈されているものと推認できる。
また、甲第9号証の請求人発行の「チラシ」には、「あかぼうのお引越」、「小さな赤帽車の大きな実力」、「あなたの街の赤帽へ」などの記載と「Akabou」のロゴを大きく表示した貨物自動車の写真が掲載されており、「赤帽」商標が積極的に使用されているとは認められない。
念の為、甲第10号証ないし甲第19号証についても精査したが、「赤帽」商標が積極的に使用されている記載は見いだせず、「…私ども赤帽は、…」や「…赤帽に加入し…」(甲10:2枚目下段)などの記載、「赤帽(全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会)」(甲11:1枚目?14枚目、甲12:1枚目?6枚目、甲14:1枚目?16枚目)、「赤帽事業のご案内」(甲15:1枚目・2枚目)などの各記述からすれば、請求人は「赤帽」なる文字を自己の名称の略称として使用しているものと認められる。
したがって、被請求人は、甲第7号証ないし甲第20号証による請求人の主張が妥当性に欠け成立し得ないことは明白と思料する。
(2)混同を生ずるおそれの有無
本件商標がその指定役務「貨物自動車による輸送」について被請求人によって使用されるときには、請求人の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」と混同を生ずるおそれは皆無である。
なぜなら、本件商標は、「赤帽」なる文字からなる構成の引用商標とはその外観、称呼、観念のいずれの観点からしても非類似のものである以上、本件商標が使用されている被請求人の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」と引用商標、「赤帽」商標、「あかぼう」商標及び「Akabou」商標の一又は二以上が使用されている請求人に属する組合員の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」とに接する需要者等により、被請求人の業務に係る当該役務を請求人に属する組合員の業務に係る当該役務と誤って把握・認識されたり、請求人に属する組合員の当該役務を被請求人の業務に係る当該役務と誤って把握・認識されたりするおそれはないからである。
事実、乙第17号証ないし乙第48号証の各証明書において、証明者各位は、被請求人がお願いした「貴社(又は貴殿)から、弊社に貨物自動車による輸送を賜って以来今日に到るまで、貴社(又は貴殿)において、弊社の業務に係る役務『貨物自動車による輸送』と全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会に属する組合員の業務に係る役務『軽貨物自動車による輸送』とを混同された事例がないこと」なる証明事項が、「事実に相違ないことを証明する。」と証明されている。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標が「赤帽」商標とはその外観、称呼、観念のいずれの観点からしても非類似のものであるため、本件商標が使用されている被請求人の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」と「赤帽」商標が使用されている請求人に属する組合員の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」とに接する需要者等によって当該各役務が混同して認識されるおそれはなく、しかも、平成24年2月6日の時点における「赤帽」商標の著名性は相当希釈されているものと推認できるとともに、請求人が「赤帽」商標を積極的に使用されているとは認められない実状からすれば、本件商標と「赤帽」商標との間に請求人が主張される狭義の混同はもちろん、広義の混同も生じないと断言できる。
また、被請求人は、会社設立時から現在に至るまで、本件関連商標と同一構成の商標(社会通念上同一のものと認識し得るものを含む)を、平成18年11月から本件商標と同一構成の商標を、それぞれ現在に至るまで被請求人の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」に使用しており、平成18年11月頃には、需要者等(被請求人の顧客各位)からは被請求人の業務に係る役務「貨物自動車による輸送」を「舞妓マークの京都赤帽さん」と指称され親しまれていたことに鑑み、本件商標を登録出願したのであり、乙第4号証ないし乙第6号証に見られるとおり登本件関連商標及び本件商標の宣伝広告にも努めている。
ところが、請求人が提出している甲各号証の各内容は、上記したとおり、本件商標と「赤帽」商標とが混同を生じるおそれがあることを立証するものではない。
したがって、請求人の主張は、請求人の独断によるものであって成立し得ないものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第7号に違反してされたものではない。

第5 当審の判断
1 認定事実
証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人の事業の創始者である松石俊男、堀篭孝志及び鈴木将幸之は、昭和49年12月ころ、貨物自動車運送事業の組織化を考え、昭和50年5月12日に「赤帽」の標章を貨物軽自動車に付し、運送事業を開始した。昭和51年4月には協同組合の創立総会を開催し、同年7月12日に東京陸運局長からの設立の認可を得て、赤帽軽自動車運送共同組合を設立した(甲6及び甲20)。
その後、上記組合は、全国各地において組合加入を熱心に勧誘し、全国の各都道府県ごとに、会員組合を設立した上で、昭和53年8月には、運輸省より「軽運送業の全国組織」として認可されて各会員組合を連合会組織にし(甲20)、請求人が法人として成立した。そして、請求人は、その組合員に運送業のノウハウを提供する一方、「赤帽」の文字よりなる商標を会員組合員の貨物自動車運送事業のサービスマークとして使用することを許諾する方式の営業を行い、平成19年12月には、請求人の組合員数は約1万5000名、車両台数は1万8000台となり(甲20の3枚目)、平成22年8月ころ以降、組合員数1万3000名程度、車両台数1万5000台程度となった(甲20)。
(2)柏東志政は、昭和56年1月18日、請求人に所属する赤帽京都府軽自動車運送共同組合に加入し(甲21)、同年6月に赤帽柏運送店を開業したが、昭和58年7月24日、赤帽京都府軽自動車運送共同組合から除名された(甲21)。柏東志政ないしその関係者は、平成1年4月10日、被請求人を設立し、貨物自動車運送事業を行い(甲23)、現在も継続している。
被請求人は、遅くとも平成25年春ころから、「舞妓マークの」「京都赤帽」及び「荷物を両手で捧げ持っている舞妓と思しき娘の正面像図形」を被請求人の役務である「貨物自動車による輸送」に使用している(乙5及び乙6。なお、乙17ないし乙48の証明内容は、署名者が、被請求人に輸送を依頼してから署名日に到るまで、請求人組合員の役務と被請求人の役務とを混同したことがないことであって、平成18年11月から被請求人が本件商標を使用していたことを証明するものではない。)。
(3)請求人は、平成22年12月に全国で288万枚、平成23年12月には全国で270万8000枚のチラシをその地方組織に配送した。そのチラシには、「お手軽に、らくらくにあかぼうのお引越」、「赤帽軽自動車運送協同組合連合会」、「http://www.akabou.jp/」、「赤帽」商標をドア部分に表示した軽貨物自動車の写真が表されており、該自動車の写真には「Akabou」と判読できるデザイン化された商標も表示されている(甲9)。
請求人は、そのホームページ並びにツイッター、Facebook及びmixiといったSNSのページを開設して、請求人役務に関する情報の発信等を行っているところ(甲11?甲15)、「赤帽」商標のほか、平仮名よりなる「あかぼう」の商標、「Akabou」と判読できるデザインされた商標及びキャラクターである「あかぼうくん」の商標が表示されている。
請求人の組合員は、「赤帽柏運送店」「赤帽青戸運送店」などと、「赤帽」を冠した屋号を使用して営業を行うことが通常である(甲20、主張の全趣旨)。
(4)平成20年9月28日発行の「サンデー毎日」に請求人の広告が掲載された(甲39)。
平成21年、幼児向け書籍である「のりもの」に、請求人専用車が「たくはいしゃ」として紹介された(甲43)。
平成22年11月号の「おおいた中央会だより」では、赤帽大分県軽自動車運送共同組合が紹介された(甲32)。
平成23年発行の「コマーシャルビークル」では、請求人の組合員が使用する赤帽専用サンバーが紹介された(甲34)。
平成23年11月号の「フランチャイズエイジ」の「この人」に、請求人代表者のインタビュー記事が掲載された(甲31)。その中では、請求人の事業は「『赤帽』というビジネス」と記述されるなど、請求人の事業の名称を「赤帽」と表現している。
平成24年2月10日発行の「中小企業かごしま」では、赤帽鹿児島県軽自動車運送協同組合の理事長が取り上げられた(甲33)。
平成24年8月10日発行の「JFA40th」記念誌に、請求人の広告が掲載された(甲40)。
平成24年9月号の月刊「ティグレ」に、「赤帽の強さの秘密」という請求人の特集記事が組まれた(甲30)。
遅くとも平成25年ころまでに、請求人は請求人の組合員が使用するスバルサンバー赤帽車につきライセンス許諾して、玩具として「チョロQ」やその他のミニカーが発売された(甲41及び甲42)。
遅くとも平成25年ころまでに、幼児向け書籍である「バス・トラック」において、請求人専用車が、引っ越しトラックのバンボディのものとして紹介された(甲43)。
(5)「赤帽」の漢字は、「1.赤い色の帽子。特に、運動会でかぶるもの。2.駅で乗降客の手荷物を運ぶ人。赤い帽子をかぶっているのでいう。ポーター。」を意味するものである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は役務に使用したときに、当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして、上記の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最(三)判平成12年7月11日、民集54巻6号1848頁)。
(2)これを本件について見ると、以下のとおりである。
ア 本件商標は、その外観上、「舞妓図形」、「舞妓マークの」の文字、「京都赤帽」の文字からなる結合商標であって、その構成中に「赤帽」商標と同一の「赤帽」の語を含むものである。また、本件商標は、全体として一個不可分の既成の概念を示すものとは認められないし、その称呼は「マイコマークノキョートアカボー」と14音からなる比較的長い商標であるから、簡易迅速性を重んずる取引の実際においては、その一部分だけによって簡略に表記ないし称呼され得るものであるということができる。
イ 他方、上記認定のとおり、請求人の前身団体が、昭和50年5月12日から、「赤帽」の標章を貨物軽自動車に付し、運送事業を開始し、昭和51年7月には、赤帽軽自動車運送共同組合を設立し、その後、全国の京都府を含む各都道府県ごとに、会員組合を設立した上で、昭和53年には各会員組合を連合会組織にして請求人が成立し、その組合員に運送業のノウハウを提供する一方、「赤帽」の文字よりなる商標を会員組合員の貨物自動車運送事業のサービスマークとして使用することを許諾する方式の営業を行ってきており、本件商標出願前である平成19年12月には、請求人の組合員数は約1万5000名、車両台数は1万8000台となり、平成22年8月ころ以降、組合員数1万3000名程度、車両台数1万5000台程度となった。また、近年においては、請求人は、「赤帽」商標の外に、平仮名の「あかぼう」、キャラクターの「あかぼうくん」及び欧文字の「Akabou」をデザイン化した商標も用いているが、請求人ないし請求人の営業を簡略に表示する場合には「赤帽」の語が用いられ(甲30?甲34)、請求人の組合員の屋号には「赤帽」の語が冠されるのが通常である。そうすると、「赤帽」商標は、請求人の営業を示すものとして、我が国の貨物自動車及び軽自動車等による輸送の役務において、その取引者及び需要者の間に広く認識されているものであって、周知著名性の程度が高い表示である。
もっとも、「赤帽」の語は、造語ではなく、赤い帽子又は駅において乗降客の荷物を運ぶ人の意味があり、駅において乗降客の荷物を運ぶ人の意味は、本件商標の指定役務である貨物運送業と関連するといえるから、「赤帽」商標の独創性の程度は、造語による商標に比して、低いとも考えられる。しかしながら、駅において乗降客の荷物を運ぶ人を「赤帽」と称することがほとんど見られなくなった現在では、前記認定の事実に照らせば、「赤帽」といえば駅において乗降客の荷物を運ぶ人より請求人を想起すると考えられるから、「赤帽」の語が、本件商標の指定役務との関係で識別力が低いとはいえない。そうすると、本件商標の本号該当性の判断をする上で、「赤帽」商標の独創性の程度が低いことを重視するのは相当でないというべきである。
ウ 本件商標を構成する「赤帽」の語以外の部分のうち、「京都」は、地名としての京都府や京都市との観念を生じ、「舞妓図形」及び「舞妓マークの」は、京都の「舞妓さん」を想起させるものである。そして、請求人を構成する組合は、京都府にも存在する。
さらに、「赤帽」商標の周知著名性の程度の高さや、本件商標と「赤帽」商標とにおける役務の同一性並びに取引者及び需要者の共通性に照らすと、本件商標が指定役務に使用されたときは、その構成中の「赤帽」部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に予想できるのであって、本件商標からは、請求人又は請求人と緊密な関係にある営業主の業務に係る役務であるとの観念も生ずるということができる。
この点につき、被請求人は、被請求人の顧客が、請求人の営業と被請求人の営業とを混同したことはない旨を証明した「証明願」と題する文書を複数提出する(乙17?乙48)。
しかしながら、これら文書は、被請求人と取引関係のある顧客のみが被請求人の依頼に基づいて提出したものであって、被請求人と特定の取引のない一般の顧客の認識を証明するものではないから、上記認定を左右するに足りない。
(3)以上のとおり、本件商標は、「赤帽」商標と同一の部分をその構成の一部に含む結合商標であって、その外観、称呼及び観念上、この同一の部分がその余の部分から分離して認識され得るものであることに加え、「赤帽」商標の周知著名性の程度が高く、しかも、本件商標の指定役務と「赤帽」商標の使用されている役務とが重複し、両者の取引者及び需要者も共通している。これらの事情を総合的に判断すれば、本件商標は、これに接した取引者及び需要者に対し「赤帽」商標を連想させて役務の出所につき誤認を生じさせるものであり、その商標登録を維持する場合には、「赤帽」商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くという結果を生じ兼ねないと考えられる。そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると判断するのが相当であって、「赤帽」商標の独創性の程度が造語による商標に比して低いことや、請求人が「赤帽」商標以外の標章も使用していることは、この判断を左右するものでないというべきである(最(二)判平成13年7月6日、裁判集民事202号599頁参照)。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであり、その余の請求人の主張について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(A)本件商標


(B)引用商標1(色彩については、原本を参照のこと。)


(C)引用商標2(色彩については、原本を参照のこと。)


(D)引用商標3(色彩については、原本を参照のこと。)


(E)本件関連商標(登録第3266259号商標)




審理終結日 2015-11-02 
結審通知日 2015-11-06 
審決日 2015-11-18 
出願番号 商願2012-7595(T2012-7595) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W39)
最終処分 成立 
前審関与審査官 平澤 芳行佐々木 悠源 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 今田 三男
小松 里美
登録日 2012-07-13 
登録番号 商標登録第5506879号(T5506879) 
商標の称呼 マイコマークノキョートアカボー、マイコマーク、キョートアカボー、アカボー、マイコ 
代理人 上村 喜永 
代理人 安藤 順一 
代理人 村橋 史雄 
代理人 前川 真貴子 
代理人 上原 空也 
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