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審決分類 |
審判 全部無効 観念類似 無効としない W3643 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W3643 審判 全部無効 外観類似 無効としない W3643 |
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管理番号 | 1307499 |
審判番号 | 無効2015-890030 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-04-14 |
確定日 | 2015-11-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5636661号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5636661号商標(以下「本件商標」という。)は、「シニアハウスマインド」の片仮名を横書きしてなり、平成25年9月13日に登録出願、同年11月21日に登録査定、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」及び第43類「宿泊施設の提供,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)」を指定役務として、同年12月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する登録商標は、以下の2件(以下、これら商標をまとめて、「引用商標」という。)であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第3276009号商標(以下「引用商標1」という。)は、「シニアハウス」の片仮名を横書きしてなり、平成4年9月30日に特例商標登録出願、第36類「建物の管理,建物の貸与」を指定役務として、同9年4月11に特例商標として設定登録されたものである。 (2)登録第3154385号商標(以下「引用商標2」という。)は、「シニアハウス」の片仮名を横書きしてなり、平成4年9月30日に特例商標登録出願、第42類「宿泊施設の提供,うどん又はそばの提供,うなぎ料理の提供,すしの提供,てんぷら料理の提供,とんかつ料理の提供,茶・コ?ヒ?・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,入浴施設の提供,老人の養護」を指定役務として、同8年5月31日に特例商標として設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 1 本件商標と引用商標との類否 (1)本件商標と引用商標の類否について 本件商標は、「シニアハウスマインド」の片仮名を横書きしてなるが、その称呼は一連で称呼するには長すぎる9音で構成されており、分割して称呼されてしかるべきであるから、「シニアハウス」の称呼が生じる。 また、「シニアハウス」の文字を英語に置き換えた場合、これを日本語に直訳すると、「年長者の家」の観念を生じ、「マインド」の文字は、「心」あるいは「精神」といった意味を持ち、日本人には慣れ親しんだ語である。 このように本件商標は、一連で称呼するには長すぎる9音で構成されているので、「シニアハウス」と「マインド」が分離して称呼されるというのが、無理がない解釈である。しかも、「年長者の家」を意味する「シニアハウス」と、「心」あるいは「精神」を意味する「マインド」とは、観念的にも連続性が全くないことから、分離して称呼されると解釈すべきであり、また、本件商標を「シニア」と「ハウスマインド」に分離して称呼するよりも、「シニアハウス」と「マインド」に分離して称呼する方がごく自然である。 そうとすれば、本件商標は、それを構成する称呼の音数及び観念から考えても、「シニアハウス」と「マインド」とを分離して称呼されると考えるべきである。 一方、引用商標は、共に「シニアハウス」の片仮名を横書きしたものであるから、引用商標からは「シニアハウス」の称呼が生じる。 したがって、本件商標と引用商標とは、「シニアハウス」の称呼及び「年長者の家」の観念を共通にする類似の商標である。 (2)指定役務について 本件商標の指定役務中、第36類の指定役務と引用商標1の指定役務とは、同一又は類似する役務である。 また、本件商標の指定役務中、第43類「宿泊施設の提供」及び「高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)」と引用商標2の指定役務中「宿泊施設の提供」及び「老人の養護」とは、同一又は類似の役務である。 (3)なお、「シニアハウス」という商標は、「年長者の家」の観念を生じるが、「提供」、「養護」及び「介護」という観念は生じないから、引用商標2は、その指定役務「老人の養護」に対して有効に存続している。 (4)したがって、本件商標と引用商標とは、「シニアハウス」の称呼及び「年長者の家」の観念を共通にする類似の商標であり、その指定役務も同一又は類似する役務である。 2 むすび 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。 1 外観について 本件商標は、「シニアハウスマインド」の片仮名を同じ書体、同じ大きさで一連に横書きしてなり、「シニアハウス」と「マインド」の文字の間にスペースが存在せず、また、二段書きのように分離して書き表されておらず、外観上まとまりよく一体的に構成されている。 したがって、「シニアハウス」と「マインド」とに分離して解さなければならない格別の理由は存在しない。 2 観念について (1)「シニアハウス」の文字に自他役務識別力がないこと ア 「年長者」を意味する「シニア」という語、「家」を意味する「ハウス」という語は、いずれも既に日本語化しているといっても過言ではないほどに親しまれた外来語であり(乙1)、「シニアハウス」は、「シニア」と「ハウス」の各片仮名語から構成された結合商標であると容易に認識できる。 イ 有料老人ホームの施設数が、平成元年には全国で約150程度であったものが、平成25年には全国で約8500程度まで増加し(乙2)、「シニアハウス」という名称の高齢者向け住宅が全国各地に存在している現実を踏まえれば、本件商標の構成中の「シニアハウス」の文字部分は、いわば「老人ホーム」の代替語として認識されるにすぎないとみるのが自然である。 ウ 我が国の急速な高齢化を踏まえれば、老人ホームがより身近なものとなり、「シニアハウス」という語も、老人ホームを総称する語として一般に定着していることは明らかであり、普通名称化している。 エ したがって、「シニアハウス」という文字には、すでに自他役務識別力がなくなっており、もはや商標権の効力が及ばない。 (2)本件商標が一体不可分であること ア 本件商標は、老人ホームを総称した語として普通名称化した「シニアハウス」の文字に、被請求人の社名である「マインド」の文字を付け加えたものであり、全体を1つとする造語であるから、このような構成において、本件商標は特定の観念を生じない。 イ また、「マインド」の文字は、単に被請求人の社名であるにとどまらず、被請求人の企業理念及び社是(乙3)を体現した言葉であるから、本件商標を殊更に分離すべきではなく、本件商標は、「シニアハウスマインド」の片仮名をまとまりよく一体に表してなるものというべきである。 (3)「シニアハウス」の語が特定人に独占させるに不適当なこと 仮に「シニアハウス」の文字に自他役務識別力があったとしても、商標法第3条第1項各号は、一般人が自由に使用できるようにしておくことが要請されるという公益上の見地から、特定人に独占させることが不適当な商標を定めている規定であるところ、高齢化社会が進展する我が国において、「シニアハウス」という文字が「老人ホーム」を総称する語として定着している以上、独占適応性を欠いている。 3 称呼について 本件商標から生じる「シニアハウスマインド」の称呼は冗長でもなく、淀みなく一連に称呼し得るものであり、接尾語として付加されている「マインド」が社名として重要である。 また、上記2で述べたように、「シニアハウス」の語は、既に普通名称化しており、該文字に自他役務識別力は備わっていないから、簡易迅速を貴ぶ取引の実際においても、自ずと本件商標からは、「シニアハウスマインド」の一連の呼称が生じるものである。 4 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は同一又は類似のものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有することについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について ア 本件商標は、前記第1のとおり「シニアハウスマインド」の文字からなるところ、構成各文字は同書、同大、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表わされているものであり、構成全体から生じる称呼「シニアハウスマインド」も、それを構成する各語が親しまれた語であることをも踏まえれば、よどみなく一連に称呼し得るものである。 また、本件商標の構成中の「シニア」の文字は「年長者」を、「ハウス」の文字は「家」を、「マインド」の文字は「心」(広辞苑第六版)を意味する語であり、いずれもよく親しまれたものといえるものの、これらを組み合わせてなる本件商標は、直ちに特定の観念を生じない一種の造語として看取されるものであって、いずれかの文字部分のみが着目され記憶されることはなく、全体が不可分一体のものとして、取引者、需要者に認識されるというのが自然である。 してみれば、本件商標は、「シニアハウスマインド」の文字全体で取引に資されるとみるべきであって、「シニアハウス」の文字部分のみをもって取引に資されるというべき特段の事情は見いだせないから、該文字部分のみを捉えた称呼及び観念は生じないというのが相当である。 イ この点に関し、請求人は、本件商標から「シニアハウス」の称呼が生じる旨主張している。 しかしながら、本件商標の構成中の前半の「シニアハウス」の文字部分は、「年長者の家」の意味合いを理解させるものであるところ、高齢化が進む現在の我が国においては、高齢者用の(賃貸)住宅や入所施設が多数存在し、これらを、「シニア住宅、シニアホーム」等と称する場合も少なくないことから、「シニアハウス」の文字は、高齢者用の(賃貸)住宅や入所施設を暗示し得るものであって、自他役務の識別標識としての機能は弱いといわざるを得ないものであるから、本件商標に接する取引者、需要者は、ことさら「シニアハウス」の文字部分のみに着目して役務の出所を識別するというよりは、その全体をもって一体不可分のものとして認識し把握するとみるのが自然である。 そうすると、本件商標は、その構成中の「シニアハウス」の文字部分のみが分離、抽出されるとはいうことができないものであり、他に構成中の「シニアハウス」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情を見いだすこともできない。 したがって、請求人の主張は採用することができない。 (2)引用商標について 引用商標は、いずれも「シニアハウス」の文字からなるところ、それぞれの構成文字に相応して、「シニアハウス」の称呼を生じ、「年長者の家」の意味合いを想起させるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とは、それぞれ、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、一見して判然と区別し得る差異を有するものである。また、本件商標から生じる「シニアハウスマインド」の称呼と、引用商標から生じる「シニアハウス」の称呼とは、構成音数及び末尾における「マインド」の音の有無という顕著な差異を有するから、両称呼は明確に聴別し得るものである。さらに、特定の観念が生じることがない本件商標と、「年長者の家」の観念を生じる引用商標とは、観念においても、相紛れるおそれはない。 そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 (4)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。 2 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-04 |
結審通知日 | 2015-09-08 |
審決日 | 2015-09-24 |
出願番号 | 商願2013-71936(T2013-71936) |
審決分類 |
T
1
11・
263-
Y
(W3643)
T 1 11・ 261- Y (W3643) T 1 11・ 262- Y (W3643) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨澤 美加 |
特許庁審判長 |
林 栄二 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 梶原 良子 |
登録日 | 2013-12-13 |
登録番号 | 商標登録第5636661号(T5636661) |
商標の称呼 | シニアハウスマインド |
代理人 | 齊藤 好明 |
代理人 | 小室 未来 |
代理人 | 大内 一宏 |
代理人 | 嶋 宣之 |
代理人 | 滝田 三良 |