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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効としない W25
管理番号 1307454 
審判番号 取消2013-300848 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-10-07 
確定日 2015-11-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5517417号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5517417号商標(以下「本件商標」という。)は,「SENTCOMEX」の文字を標準文字で表してなり,平成24年3月12日登録出願,第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年8月24日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は,「商標法第53条第1項の規定により本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由(要旨)を,審判請求書,弁駁書及び上申書,口頭審理における陳述において,次のように述べ,証拠方法として,甲1ないし甲21(枝番を含む。)を提出した。
1 当事者
(1)請求人及びその関連会社
請求人は,「COMEX」の文字からなる登録第1548890号商標(別掲1)の商標権者であり,別紙使用目録記載の商標(いずれも「COMEX」の文字からなる商標;以下,これらを,前記の登録商標と併せて「引用商標」という。)を使用した婦人靴,婦人服類の販売を業とする株式会社である。
また,株式会社コメックス(以下「コメックス」という。)は,請求人と代表取締役を同じくする請求人の関連会社である。
(2)被請求人,株式会社ステートサイト,株式会社スタークィーンについて
被請求人は,株式会社ステートサイト(以下「ステートサイト」という。)の代表取締役及び株式会社スタークィーン(以下「スタークィーン」という。)の取締役を務めるものである(甲11,12)。
以下,ステートサイトとスタークィーンを併せて「ステートサイトら」ということがある。
ステートサイトは,履物の加工,販売を業とする株式会社であり,現在,大阪市内において,小売店2店舗を運営するほか,インターネットを通じての通信販売も行っている。ステートサイトは,平成21年12月7日,「株式会社とみや(以下「とみや」という。)」から現在の商号に変更したが,とみや時代の平成20年9月から平成21年12月まで,コメックスより靴類(サンダル,ミュール,パンプス等)を購入していた。
スタークィーンは,衣料品,服飾雑貨等の小売及びインターネットによる通信販売等を業とする株式会社であって,ステートサイトの関連会社であり,代表取締役は,ステートサイトの代表取締役の妻である。
2 被請求人らの行為
(1)ステートサイトの行為
ステートサイトは,少なくとも,平成25年3月ころから同年8月5日まで使用商標1及び2(別掲2及び3)が印字されたシールを付したミュール及びサンダルを販売していた(甲3の1ないし8)。また,ステートサイトが販売するサンダル及びミュールの包装には,使用商標3(別掲4)が付されていた(甲3の1,2,5,6)。
ステートサイトが管理するWEBサイトにおいては,少なくとも平成25年8月5日時点において,使用商標4(別掲5)を付して,サンダル,ミュール及びパンプスの広告が行われていた(甲4)。
(2)スタークィーンの行為
スタークィーンは,少なくとも平成25年8月5日時点で,自らが管理するWEBサイトにおいて,使用商標4ないし7(別掲5ないし8)を付して,サンダル,ミュール及びパンプスの広告を行っていた(甲5)。
以下,使用商標1ないし7を併せて「使用商標」という。
(3)被請求人による使用許諾
上記のとおり,被請求人は,ステートサイト及びスタークィーンの役員であり,ステートサイト及びスタークィーンによる上記行為は,被請求人から使用許諾を得た上での行為とみるほかない。
3 本件商標,使用商標,引用商標の構成等
本件商標は,「SENTCOMEX」の文字からなる商標であり,使用商標は,「SENT(Sent)」と「COMEX(Comex)」の文字又は,これらと「セント」と「コメックス」の文字からなる結合商標である(そのうち,使用商標1ないし5には○内に「R」(登録商標マーク)が付されている。)(甲3ないし5の1ないし4)。
また,引用商標は,「COMEX」ないし「コメックス」の文字からなる商標である(甲2,7等)。
4 不正使用の存在
(1)引用商標の周知・著名性
ア 引用商標が昭和57年に商標登録されて以降,引用商標は,ハイヒール,パンプス,サンダル等の女性用履物で使用されてきたものである(以下,引用商標を付した商品を「COMEX商品」ということがある。)。女性用履物はローヒール商品が主流であったところ,COMEX商品は,数少ない国産ハイヒールブランドとして,女性用履物業界を牽引してきたもので,30年以上の歴史を誇る。
COMEX商品は,全国63の店舗及びインターネット(37店舗)を通じて販売されており,直近4年でみると,年間の売上げは,約1万2000足,1億5000万円以上となっている(甲6)。さらに,コメックスの平成24年7月期の決算報告書の損益計算書によれば(甲17),その総売上高は,約1億8000万円を計上しており,約1億5000万円(乙6)を上回っている(差額はCOMEX商品以外の売上げである)。
また,そのデザインが評価され,安室奈美恵,KARA等の多くの著名人が履いていることでも有名で,多くのメディア等が取り上げるなど,パブリシティもなされている(甲6ないし甲8)。
イ ヒールの高い女性用履物の市場規模は,現時点では必ずしも明らかでないが,当該分野において,COMEX商品が上位に位置していることを示す資料として,甲18ないし甲21を提出する。
甲18及び甲19は,検索サイト「YAHOO! JAPAN」及び「Google」において,「ブランド ハイヒール」というキーワードで検索した結果であるが,いずれにおいても,COMEX商品を取り扱う請求人のWEBサイトが上位2番目に表示されている(甲18)。
甲20及び甲21は,ヒールの高い女性用履物以外も含むブランド品の通販サイトである。これらは,あくまで通販サイトの一例であるが,COMEX商品は,他分野も含む有名ブランド品と同列にて,販売されている。
以上の事情からも,COMEX商品は,ヒールの高い女性用履物業界において,上位のシェアを誇ることを合理的に認定できる。
ウ 被請求人は,レディースブランドランキング(乙12)を引用し,引用商標がランキングされていない旨主張するが,乙12はいかなる者がいかなる方法で集計したアンケートか不明であり,また,わずか94票のアンケート結果をランキング形式にしたものにすぎず,引用商標の周知性を否定する資料にはなり得ない。
また,被請求人は,大阪・東京の一部のデパートにおいてCOMEX商品を取り扱っていないという事情をあげるが,請求人は,オンラインショップも含め全国に多くの店舗でCOMEX商品を販売しており,十分な店舗展開を行っている(甲13)。
以上のとおり,引用商標は,ステートサイトらの不正使用が開始されるまでには,ヒールの高い女性用履物の分野において,周知・著名となっており,引用商標の商標権者を示すものとして特別顕著性を獲得していた。
(2)使用商標と引用商標の類似性
使用商標のうち「COMEX」及び「Comex」の部分は,いずれも他の部分と離れ,独立しており,また,請求人の周知・著名商標として特別顕著性を獲得している。
さらに,「COMEX(Comex)」以外の部分は,出所識別標識としての称呼,観念が生じない。特に「SENT」,「Sent」は,「COMEX」,「Comex」と結合させた場合,全体が冗長となってしまうし,需要者が比較的年齢の若い一般消費者であり,「COMEX」の特別顕著性にも鑑みれば,単に「コメックス」との称呼が生じるものである。また,「SENT」,「Sent」は,「送った」というその語彙からすれば,「COMEX」に注意を惹かせる類の文言といえる。
したがって,「COMEX」,「Comex」部分は,取引者・需要者に対し,請求人を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,使用商標と引用商標との対比にあたっては,同部分を抽出して類否判断を行うべきである。
そして,これらを対比すると,引用商標は,使用商標1ないし5のうち「COMEX」部分と僅かな字体の差異があるだけで,外観はほぼ同一であり,また,使用商標6及び7のうちの「COMEX」と「Comex」とも大文字か小文字かの差異しかなく,外観はほぼ同一である。
そして,両商標は,いずれも「コメックス」の称呼及び「商品取引所」の観念が生じるから,使用商標は,いずれも引用商標と類似する。
(3)請求人の業務に係る商品と混同を生ずること
ア 上記のとおり,引用商標は周知・著名であって,使用商標との類似性が極めて高いものである。
そして,使用商標を使用する商品は,サンダル,ミュール及びパンプスであり,被請求人の業務に係る商品と同一である。また,その商品の需要者は,いずれも比較的年齢の若い女性であり,販売方法も,店頭販売・インターネットによる通信販売であり,両者の取引実態は,完全に一致している。
上記需要者層や取引方法からして,請求人及びステートサイトらが提供する商品取引は,そもそも混同が生じやすいという特質を備えるものである。
現実問題として,楽天市場等のインターネットショッピングサイトにおいて,検索ワード「COMEX」にて商品検索を行うと,COMEX商品のほかステートサイトらの販売する商品まで表示されてしまい,一般消費者からは,両者が同一ブランドである又は関連会社による姉妹ブランドであるとの誤認混同を生むようになっていた(甲9)。
イ 商標法第53条第1項の「混同を生ずるものをした」とは,混同の事実までは不要で混同のおそれで足りる。また,「混同」とは,「狭義の混同」ではなく,人的又は資本的に何らかの関係があるかのように需用者,取引者を誤信させる,いわゆる「広義の混同」で足りる。
ウ したがって,ステートサイトらの行為は,請求人の業務に係る商品と混合を生じさせるものである。
(4)典型的な不正使用事案であること
ステートサイトらは,わざわざ登録商標から使用商標に改変することで,COMEX商品に歩み寄ってきたのであり,これは,典型的な不正使用である。ここで重要な事実は,ステートサイトは,とみや時代から長年に亘りCOMEX商品が主力商品であったところ,コメックスとステートサイトとの商品売買基本契約(甲10)が終了した後,突如として,COMEX商品との誤認を生じさせる商標の使用を開始した点にある。
本件基本契約が終了となった背景には,ステートサイトにおいて,平成21年9月ころより,本件基本契約に違反し(10条3項),COMEX商品の形態をコピーした模倣品を自社ブランド名で販売するようになり(甲16),コメックスが何度も中止を申し入れたがステートサイトは模倣品の販売を継続したことにある。
ステートサイトの模倣品販売の事実はないとする主張の根拠は,COMEX商品の製造委託先であるアトリエACBから直接COMEX商品を購入していたというものであるが,ステートサイトがアトリエACBと取引をしていたのは,COMEX商品とは別の商品「Sweet Sent」であり,COMEX商品の形態を模倣して,Sweet Sentブランドで販売していたのである。
5 商標法第53条第1項但書の適用がないこと(故意・過失の存在)
被請求人は,引用商標の存在,その著名性,請求人の取引実情を知悉していたのであるから,被請求人らにおいて,引用商標のブランド力にフリーライドする意図で使用商標の使用を開始したのは明白であり,不正使用行為に故意があったといわざるを得ず,以上の事実関係のもとで商標法第53条第1項但書の適用が認められるはずはない。
6 結語
よって,本件商標は,商標法第53条第1項所定の要件をすべて充足し,取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由(要旨)を,答弁書,口頭審理陳述要領書,口頭審理における陳述及び上申書において,次のように述べ,証拠方法として,乙1ないし29を提出した。
1 被請求人とステートサイトらの関係及びその行為について
被請求人がステートサイト,スタークィーンの役員であること,両社が本件商標を使用商標1ないし7の態様にてサンダルやミュール,パンプスに使用していたことは認める。
2 使用商標と引用商標の類似性について
(1)使用商標の一体性
使用商標1ないし5の欧文字は,「Pottery Barn」なる書体(乙1)を元にした特徴的なデザインにて一連に纏まりよく書されており,また,使用商標6及び7の欧文字は,「biko」なる書体(乙2)を元にした特徴的なデザインにて一連に纏まりよく書されたものであるから,外観上,無理なく一体の商標と認識し得るものである。
加えて,かかる構成文字に相応して生ずる称呼も,格別冗長なものではなく一気かせいに発音し得るものであって,「セントコメックス」なる一連の称呼をもって取引に資されるとみるのが自然である。
また,「SENT COMEX」及び「Sent Comex」の語は,外観上や称呼上の一体性とも相侯って,全体をもって特定観念の生じない造語と認識されるのが自然である。
(2)使用商標と引用商標との対比
使用商標は,「セントコメックス」の称呼のみが生じるものであるから,「コメックス」の称呼が生ずる引用商標と称呼上,十分に聴別し得るものである。
また,使用商標と引用商標とは,「SENT/Sent」の文字の有無という顕著な差異を有し,外観上相紛れるおそれはない。
加えて,使用商標は特定の観念の生じない造語と認識されるものであるから,仮に「COMEX」の文字から「商品取引所」(Commodity Exchange)の略称を想起する需要者等がいたとしても,両商標は観念上十分に区別し得るものである。
(3)小括
以上より,使用商標と引用商標は,称呼,外観,観念のいずれにおいても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
3 引用商標の周知・著名性
(1)請求人は,「COMEXは引用商標の商標権者を示すものとして周知・著名となっていた」旨を主張するが,請求人は最近になって経営が破綻した先行商標権者から商標権を買い取った者であるにすぎず,また,そもそも引用商標は周知・著名性も有していないものであるから,請求人の主張は失当である。
請求人が引用商標を共有の形で譲り受けたのは,平成19年2月13日であり,更に,有限会社美光シューズからの持分移転を受けて単独の商標権者となったのは,平成21年7月30日からである(甲2の2)。
仮に,被請求人が主張するとおり,COMEX商品の一ヶ月あたりの販売数が1,000足程度であって(甲6),2011年8月から2012年7月までの一ヶ月あたりの平均売上額が1,250万円程度であるとしても(甲17),2011年度から2012年度にかけての婦人靴の市場規模は一ヶ月あたり平均308億円であり(乙29),婦人靴全体にはヒールの低い靴が含まれているとはいえ,ハイヒールの市場規模も,少なくとも数十億?百数十億円/月は下らないと考えられることからすれば,1,250万円/月という売上高や1,000足/月という販売数量はあまりに少ない。
また,検索エンジンの検索結果が上位にあるからといって,引用商標が周知・著名であるとは到底認められない。
さらに,引用商標が特別顕著性を獲得していた事実の立証書証として提出された甲7の大半が平成21年7月以前のものであり,それも,商標権者による宣伝広告というよりは,単に,数多くの掲載モデルのうちの一人が身につけているアイテムのうちの一ブランドとして紹介されたり,多数の衣装協力店のうちの一つとして極々小さく記載されたりしているものがほとんどである。著名人へ衣装協力を行ったり,著名人が数多く保有する服飾品のうちの一つに含まれたりしているからといって直ちに周知・著名性が認められる訳ではなく,かかる証左をもって,引用商標が請求人の商品を示すものとして周知・著名となっているとは認められない。
(2)請求人は,COMEX商品は上位のシェアを誇る商品であると主張するが,そのような事実はない。例えば,「ヒール靴(ハイヒール)」のブランドランキングをみても,「ジミーチュウ」「クリスチャンルブタン」「ダイアナ」といった商標が上位を占めている一方,引用商標は一覧にも記載されていない(乙12)。
また,「阪急 梅田本店」等の大阪の代表的な商業施設や「伊勢丹 新宿店」等の首都圏の主要な商業施設における婦人靴売場において,COMEX商品が販売されている事実は見あたらず,各店舗のフロアガイドにも記載されていない(乙13ないし乙21)。
4 混同性
引用商標は,請求人の商標として周知・著名性を獲得しているとは言い難く,また,使用商標と引用商標は類似しないものであるから,ステートサイトらが本件商標を使用商標の態様をもって使用した行為は,請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるものではなかった。
5 不正使用行為と故意
(1)請求人は,請求人とステートサイトとの間に商品売買基本契約書が締結されていることをもって,引用商標の著名性まで知悉していたとし,引用商標のブランド力にフリーライドする意図をもって使用商標の使用を開始したのは明白であると主張するが,ステートサイトは,平成7年ごろより,引用商標権者であった株式会社マブ(以下「マブ」という。)から「COMEX」を含む複数の商標が付された商品を購入していたところ,最近になってマブの経営が破綻し,引用商標権者がマブから請求人へと代わったことに伴い,新たに商標権者となった請求人からの求めに応じ,商品売買基本契約書(甲10)を締結したものである。
その後,被請求人は,引用商標とは非類似の商標として本件商標を採択・登録し,一時的ではあるものの,本件商標を使用商標の態様にて使用していたものである。
被請求人は,マブの商標としてはもちろん,最近になって商標権を譲受した請求人の商標として引用商標が周知・著名であるとの認識は全く有しておらず,かつ,本件商標や使用商標は,引用商標とは非類似であると確信しており,当然ながらフリーライドの意図も持ち合わせていない。
(2)請求人は,上申書において,「被請求人がSweet Sent商品においてCOMEX商品の形態を模倣していた」と述べているが,当該指摘は事実無根である。請求人からの度重なる類似商品販売の主張に対し,被請求人は辛抱強く事実無根である旨を返答し続けているにもかかわらず,今日に至るまで,請求人からは具体的な事実が一切摘示されていない。
6 商標法第53条に規定する取消審判について
商標法第51条や同53条に規定する取消審判は,商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し,そのような場合に商標権者に対して制裁を課す趣旨であって,私益の保護を第一としておらず,特に,商標法第53条については,使用許諾制度の濫用による一般需要者への弊害防止の手段として規定されたものである(「工業所有権法逐条解説第19版」)。つまり,商標法第53条第1項における取消審判事件においては,一般公衆や一般需要者の観点から,客観的に使用商標と引用商標が類似するか否か,また,引用商標が周知・著名であるが故に他人の業務に係る商品と混同を生ずるものか否かが判断されるべきであるところ,歩み寄りという曖昧な主観に基づいて本件を典型的な不正使用事案であると断じる請求人の主張自体,失当であるといわざるを得ない。
7 まとめ
叙上に徴し,本件商標は,商標法第53条第1項の要件を充足するものではないから,取り消されるべきものではない。

第5 当審の判断
本件審判は,商標法第53条第1項の規定に基づく商標登録の取消しを求める審判であるところ,同規定によれば,「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって,・・・他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」を要件とするものである。
そして,請求人が特定した登録商標と類似する商標の使用行為は,平成25年3月頃から同年8月5日までの間にステートサイトらが,別掲2ないし8に示す態様からなる使用商標(「SENT COMEX」又は「Sent Comex」の綴り文字,あるいは,「SENT COMEX」の下段に「セントコメックス」の小文字を付したもの)をサンダル,ミュール及びパンプスに使用していたとするものであるところ,その使用行為があったことについて両当事者において争いはない。
そこで,上記の使用行為が本条項の規定に該当するものであるか否かについて,以下検討する。
1 使用権者について
ステートサイトとスタークイーンは,被請求人(商標権者)が代表取締役又は取締役を努めることから(甲11及び12),本件商標に係る商標権の通常使用権者であると判断することができる。
2 使用商標と本件商標の類否について
使用商標は,甲2ないし8に示すとおり,使用商標1ないし3が「SENT COMEX」の文字からなるもの,使用商標4及び5が使用商標1ないし3と同様の構成態様の「SENT COMEX」の文字の下に「セント コメックス」の小文字が付されたもの,使用商標6及び7が「Sent Comex」の文字からなるものである。そして,使用商標4及び5における「セント コメックス」は,上段の「SENT COMEX」の欧文字の自然な読みを表したものであって,本件商標から生じる称呼を表したものといえる。
したがって,使用商標は,いずれも「セントコメックス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
これに対し,本件商標は,「SENTCOMEX」の文字を標準文字により表してなるものであるから,その構成文字に相応し「セントコメックス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そこで,使用商標と本件商標を対比すると,使用商標と本件商標とは,その構成中の「SENTCOMEX(SentComex)」の綴り文字を同じくし,異なるところは,「SENT(Sent)」と「COMEX(Comex)」の間における隙間の有無と「セントコメックス」の片仮名表記の有無のみであるから,使用商標と本件商標とは,「セントコメックス」の称呼を共通にする類似の商標ということができる。
3 商品について
使用商標を使用する商品は,サンダル,ミュール及びパンプスであるのに対し,本件商標は,第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とするものであるから,使用商標を使用する商品は,本件商標の指定商品中の「履物」に含まれるものである。
したがって,使用商標は,本件商標と商標において類似し,その指定商品に類似する商品について使用するものである。
4 使用商標の使用は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたといえるか
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 請求人の提出した証拠及び主張によれば,引用商標について以下の事実が認められる。
(ア)「COMEX」の文字からなる引用商標(登録商標)は,昭和57年11月26日に高橋を権利者として設定登録されたものであり,その後,平成9年4月28日にマブへの移転登録,平成19年2月26日に請求人と有限会社美光シューズに特定承継による移転登録がされ,平成21年7月30日に特定承継による持分移転により,請求人が権利者となっているものである(甲2の2)。
なお,訴外コメックスと請求人の代表者は,同一人である。
(イ)請求人は,引用商標は昭和57年から,ハイヒール,パンプス,サンダル等の女性用履物に使用されていた旨主張するが,平成13年2月以前の引用商標の使用事実を示す証拠はない。
(ウ)平成13年2月から平成25年8月頃にかけて,引用商標が付されたハイヒール,パンプス,サンダル等(COMEX商品)が,以下に示すファッション雑誌等において紹介されている(甲7の1ないし51)。
「ヴィヴィ(2001年2月号?2010年1月号;講談社)」
「レイ(2002年5月号?2003年10月号;主婦の友社発行)
「ジェイ・ジェイ ビス(2004年6月号?2005年10月号:光文社 発行)
「ノンノ(2007年7月号から2012年6月号;集英社発行)
「グラマラス」(2011年8月号「講談社」発行)
「アンディマガジン」(Vol.07?09「株式会社アンディ」発行)等
そして,これらの雑誌における引用商標又はコメックスの文字の掲載のされ方をみると,例えば,「デヴ婦人も購入!/トミヤの別注COMEX(乙7の3)」,「美脚靴の老舗!ブームはここから始まった!COMEX(乙7の4)」などのように,「COMEX」の文字が目立つ態様で記載されているものはごく一部であり,その他は,ハイヒールやハイヒールを履いたモデルの写真の横や下部に,小さな文字で,例えば,「靴¥21000/シューズショップとみや(COMEX)」「サンダル¥19800/マブ(COMEX)」「サンダルは明治屋で買ったCOMEX」などのように,モデルが身につけているブランドの一つや衣装協力店の一つして紹介されているものがほとんどである。
(エ)請求人の主張によれば,コメックス商品(靴類に限る)の平成21年度から24年度までの売上は,平成21年度が11,488足,152,960,887円,平成22年度が12,544足,167,609,514円,平成23年度が11,715足,156,518,654円,平成24年度が11,485足,153,454,641円とある(甲6,17)。
これに対し,「国内靴・履物小売市場に関する調査結果2013(株式会社矢野経済研究所)によれば(乙29),我が国における婦人靴の市場規模は,2011年度,3650億円,2012年度,3730億円,2013年度見込み,3790億円である。
(オ)COMEX商品は,楽天市場等のインターネットにおける販売サイトにおいて販売されている(甲9及び甲18?21)。
また,COMEX商品は,請求人直営店であるBE MILANO本店ほか,全国に点在する靴店で取り扱われていることが推認し得る(甲13)。
しかし,これら各店舗における販売数や展示の状況などの具体的な商品の販売の状況は確認できない。
(カ)2007年から2013年にかけて投稿されたブログ記事に,顧客が購入したコメックス商品の写真やコメントが掲載されている。
イ 判断
以上のことから,COMEX商品は,平成13年2月頃から平成25年までの間に「ヴィヴィ」や「レイ」などの複数のファッション雑誌において紹介されていたことが認められる。
しかしながら,これらの雑誌におけるCOMEX商品の紹介は,複数のブランドの婦人服,靴などの紹介の中で,掲載モデルのうちの一人が身につけているアイテムのうちの一ブランドとして,多数の衣装協力店のうちの一つとしての紹介がほとんどであり,また,そこに表示されたCOMEXの文字も,目立つ態様ではなく極めて小さいものである。
したがって,これらの雑誌記事をもって,引用商標及びCOMEX商品が,婦人靴の分野の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
そして,これらの雑誌記事のほかに,請求人が自らが,引用商標及びCOMEX商品の広告宣伝を行った事実を示す証拠はない。
また,請求人の主張に係る平成21年度から平成24年度のCOMEX商品の売上にしても,我が国における婦人靴の市場規模との対比において,決して高いものとはいえない。
その他,ブログ記事において,COMEX商品を顧客が購入したことは確認できるものの,その事実をもって,引用商標が婦人靴の分野の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
したがって,請求人の主張及び提出に係る証拠を総合しても,引用商標が請求人の業務に係る商品(COMEX商品)を表示するものとして,需要者の間に広く認識され,かつ,著名となっていたと認めることはできない。
ウ 使用商標と引用商標の類否について
前記2のとおり,ステートサイトら通常使用権者が使用する商標(使用商標)は,「SENT COMEX」の文字,「SENT COMEX」の文字の下に「セント コメックス」の小文字が付されたもの,「Sent Comex」の文字からなるものである。
そして,それぞれの構成文字は,「SENT(Sent)」と「COMEX(Comex)」又は「セント」と「コメックス」の間に半角程度の隙間はあるものの,いずれも同じ書体でまとまり良く一体的に表されているものであって,それぞれの構成全体から生じる「セントコメックス」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして,前記のとおり,使用商標中の「COMEX」「コメックス」の文字が,請求人又はこれに関連する者の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識され,かつ,著名になっていたとはいえない。
そうすると,使用商標は,その構成中「COMEX」「コメックス」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず,構成文字全体をもって,特定の観念の生じない一体不可分のものとして認識,把握されるものとみるのが相当である。
したがって,使用商標は,それぞれの構成全体から「セントコメックス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
そこで,使用商標と引用商標を対比すると,両者は,「SENT」「Sent」の文字の有無という顕著な差異により,外観上明らかに区別し得るものであり,また,「セント」の音の有無により称呼上も明らかに聴別し得るものである。さらに,観念について比較することができないないものであるから,使用商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
エ 商品の出所について混同を生じさせるおそれ
前記のとおり,請求人の所有する登録商標を含む引用商標が,請求人の業務に係る商品(COMEX商品)を表示するものとして,需要者の間に広く認識され,かつ,著名となっていたと認めることはできず,かつ,引用商標と使用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そうすると,通常使用権者であるステートサイトらが,使用商標をCOMEX商品と同一の商品(サンダル,ミュール及びパンプス)に使用しても,これに接する取引者,需要者が,請求人の業務に係る商品(COMEX商品)又は引用商標を連想,想起するとはいえず,その商品が請求人の業務に係る商品であるかのごとく,その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとはいえない。
以上のとおり,通常使用権者による使用商標の使用行為は,商標法第53条第1項本文の要件を欠くものである。
そうである以上,その使用行為に商標法第53条第1項ただし書の適用の余地はない。
2 請求人の主張について
請求人は,「ステートサイトらは,わざわざ登録商標から使用商標に改変することでCOMEX商品に歩み寄ってきた。商品売買基本契約がありながら,ステートサイトにおいてその契約に違反しCOMEX商品の形態をコピーした模倣品を自社ブランド名で継続的に販売したなどとして,本件は典型的な不正使用事案である。」旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,使用商標は,その構成自体からして,その使用が請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるものとはいえず,また,請求人からステートサイトらがCOMEX商品の模倣品販売をしたとする具体的な事実を示す証拠もなく,不正な使用行為があったということもできない。
よって,請求人の主張は,前記の認定,判断を覆すにたるものではなく,採用することはできない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第53条第1項の規定により,その登録を取り消すべきものではない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 引用商標(登録第1548890号商標)




別掲2 使用商標1




別掲3 使用商標2




別掲4 使用商標3




別掲5 使用商標4



別掲6 使用商標5




別掲7 使用商標6




別掲8 使用商標7





審理終結日 2014-11-26 
結審通知日 2014-11-28 
審決日 2014-12-15 
出願番号 商願2012-18405(T2012-18405) 
審決分類 T 1 31・ 5- Y (W25)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 渡邉 健司
前山 るり子
登録日 2012-08-24 
登録番号 商標登録第5517417号(T5517417) 
商標の称呼 セントコメックス 
代理人 藤野 睦子 
代理人 小松 陽一郎 
代理人 山崎 道雄 
代理人 川本 篤 
代理人 下元 高文 
代理人 齊藤 整 
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