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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y45
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y45
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y45
管理番号 1307418 
審判番号 無効2015-890012 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-01-30 
確定日 2015-10-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5075449号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5075449号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成18年12月20日に登録出願され,第45類「葬儀・法要の相談又は企画,葬儀・法要の執行,葬儀又は法要のための施設の提供,墓地又は納骨堂の提供,喪服の貸与,祭壇・葬祭用具の貸与」を指定役務として同19年7月18日に登録査定,同年9月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書及び審判弁駁書等において,要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第35号証を提出している。
1 本件商標について
本件商標は,上段に図案化した「SSC」の文字,下段に「さいたま県民葬祭」の文字を配置して,上段と下段との文字を同一の大きさで表した構成からなり,第45類に属する役務を指定役務とし,平成18年12月20日出願,同19年9月7日に設定登録され(商標登録第5075449号),同年10月9日に商標公報が発行されたものである(甲1)。また,本件商標の商標権者は,葬儀の請負等を主業務とする有限会社さいかつ葬祭センターである(甲2)。
2 引用商標について
請求人は,冠婚葬祭の請負等を主業務とする株式会社埼玉県民葬祭であり,株式会社埼玉県民葬祭の略称は,平成17年3月3日以前は「さいたま県民葬祭」として,それ以降は「埼玉県民葬祭」(以下「引用商標」という。)として用いているものである(甲3)。
そして,引用商標は,請求人の商品・役務を示すものとして,本件商標登録出願時及び査定時に現存し,かつ,周知である。
3 請求の理由
(1)本件商標の使用経緯について
被請求人は,平成17年8月頃までは「さいかつ葬祭センター」として業務を行っており(甲4),平成20年8月頃までは「さいかつ葬祭センター」又は「SSCさいかつ葬祭センター」として業務を行っている(甲5?甲8)。いずれも「さいかつ葬祭センター」の商号を一貫して使用している。一方,平成21年8月頃以降(掲載基準は5月頃)は「さいかつ葬祭センター」,「さいたま県民葬祭 SSCさいかつ葬祭センター」,「さいたま県民葬祭」として業務を行っている(甲9?甲16)。すなわち,従前まで一貫した「さいかつ葬祭センター」の使用から「さいたま県民葬祭」も加わっている。
以下,甲第4号証ないし甲第16号証の各記載を記述する。
ア 2005年(平成17年)8月発行のデイリータウンページ越谷・草加・三郷市版435頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,436頁に「さいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている(甲4)。
イ 2007年(平成19年)8月発行のデイリータウンページ越谷・草加・三郷市版388頁に「SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載され,390頁及び396頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記がある(甲5)。
ウ 2007年(平成19年)8月発行のデイリータウンページさいたま市版589頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,595頁に「SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている(甲6)。
エ 2008年(平成20年)8月発行のデイリータウンページ越谷・草加・三郷市版376頁に「SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載され,379頁及び383頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記がある(甲7)。
オ 2008年(平成20年)8月発行のデイリータウンページさいたま市版560頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,564頁に「さいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている(甲8)。
カ 2009年(平成21年)8月発行のデイリータウンページ越谷・草加・三郷市版329頁,332頁及び338頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,331頁に「さいたま県民葬祭 SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「さいたま県民葬祭」を小さく上段に記載し,「SSCさいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである。一方で333頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記がある(甲9)。
キ 2009年(平成21年)8月発行のデイリータウンページさいたま市版507頁及び518頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,一方で520頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記があり,525頁に「SSCさいたま県民葬祭 さいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「SSCさいたま県民葬祭」を小さく上段に表記し,「さいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである(甲10)。
ク 2010年(平成22年)8月発行のデイリータウンページ越谷,草加・三郷市版315頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,317頁に「さいたま県民葬祭 SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「さいたま県民葬祭」を小さく上段に表記し,「SSCさいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである。また,319頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記がある(甲11)。
ケ 2010年(平成22年)8月発行のデイリータウンページさいたま市版493頁及び504頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,一方で506頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記があり,510頁に「SSCさいたま県民葬祭 さいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「SSCさいたま県民葬祭」を小さく上段に表記し,「さいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである(甲12)。
コ 2011年(平成23年)8月発行のデイリータウンページ越谷・草加・三郷市版294頁に「さいたま県民葬祭 SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「さいたま県民葬祭」を小さく上段に表記し,「SSCさいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである。また,295頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,296頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記がある(甲13)。
サ 2011年(平成23年)8月発行のデイリータウンページさいたま市版437頁及び448頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,一方で451頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記があり,453頁に「SSCさいたま県民葬祭 さいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「SSCさいたま県民葬祭」を小さく上段に表記し,「さいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである(甲14)。
シ 2012年(平成24年)8月発行のデイリータウンページ越谷・草加・三郷市版329頁及び332頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,331頁に「さいたま県民葬祭 SSCさいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「さいたま県民葬祭」を小さく上段に表記し,「SSCさいかつ葬祭センター」を大きく中央部に表記したものである。 また,333頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記がある(甲15)。
ス 2012年(平成24年)8月発行のデイリータウンページさいたま市版473頁に「さいかつ葬祭センター」として被請求人の表記があり,477頁に「SSCさいたま県民葬祭 さいかつ葬祭センター」の広告が掲載されている。この広告の掲載内容は,「SSCさいたま県民葬祭」を大きく上段に表記し,「さいかつ葬祭センター」を小さく中央部に表記したものである。また,474頁に「さいたま県民葬祭」として被請求人の表記がある(甲16)。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 商人が一個の営業を行うにすぎないときには,商号も一つでなければならず,複数の商号をもつことは禁止される(商号単一の原則)。被請求人は,「さいかつ葬祭センター」との商号登記を有する一方,商標登録を奇貨として「さいかつ葬祭センター」及び「さいたま県民葬祭」を混同して現実に使用していることから,「さいかつ葬祭センター」及び「さいたま県民葬祭」という複数商号を有することに関し,「さいたま県民葬祭」を含む本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
イ 他人の標章を冒用することは,公正な取引秩序を乱し,その独占使用を認めることは,取引秩序の維持という商標法の目的に反する。請求人は「さいたま県民葬祭」から「埼玉県民葬祭」に商号変更を行い,その後に被請求人は「さいたま県民葬祭」を含む商標登録を受けていることに鑑みると,被請求人の商標採択が偶然の一致とは考えられず,請求人の標章に依拠したことが十分に窺える。また,被請求人は,商標登録を奇貨として「さいかつ葬祭センター」及び「さいたま県民葬祭」という複数の商号による営業を行っているが,「さいたま県民葬祭」の商標の独占使用を許容し,これに類似する商標の排他使用を許容することによる社会的弊害は大きく,取引秩序を維持する上でも,「さいたま県民葬祭」を含む本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第19号について
引用商標が請求人の業務に係る役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されており,本件商標は,引用商標が周知となってから出願されていることを考え併せると,本件商標の出願には,不正競争の目的又は不正の目的が存在するものと推認せざるを得ない。したがって,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,それが同一の役務について使用されるものと認められることから,商標法第4条第1項第10号に該当し,また,不正の目的をもって使用するものと認められることから,同第19号に該当するものである。
(4)むすび
本件商標は,請求人の現商号「埼玉県民葬祭」と類似し,旧商号「さいたま県民葬祭」と同一の文字を有し,このようなものを第三者が採択・使用することは穏当でないと認められることから,商標法第4条第1項第7号に該当するものである。また,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一・類似の商標であって,それが同一の役務について使用されるものと認められることから,商標法第4条第1項第10号に該当し,また,不正の目的をもって使用するものと認められることから,商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
よって,本件商標は商標登録を受けることができないものであるから,商標法第46条第1項第1号の規定に基づき,その登録無効を免れないものである。
4 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第7号について
ア 商法第12条第1項及び会社法第8条第1項
商法第12条第1項は「何人も,不正の目的をもって,他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」,会社法第8条第1項は「何人も,不正の目的をもって,他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」と規定し,商号のみならず名称も含んでいる。被請求人の主張は,本件商標中「さいたま県民葬祭」は名称ではないとするが,引用商標と誤認されるおそれのある名称であることは明らかであるから,失当である。
イ 商号単一の原則
被請求人は,旧来及び現在に至るまで,被請求人会社の加盟葬儀社として「さいたま県民葬祭」を掲載する一方(甲29及び甲30),「さいたま県民葬祭」と「さいかつ葬祭センター」とを併記して,「さいたま県民葬祭」が主であるかのようなホームページを掲載したり(甲31及び甲32),「さいたま県民葬祭」のみを単独の営業主体としてホームページを掲載しており(甲33及び甲34),同一営業について同一営業所で複数の商号を使用している実態が伺える。
ことに,甲第33号証及び甲第34号証によれば,「さいたま県民葬祭」という営業主体は法人でも個人でもないが,電話やHPからたどり着く先は被請求人である。このような実態に鑑みれば,被請求人の「『商号単一の原則』に反するものでない」との主張は,失当である。
ウ デイリータウンページの掲載ルール
被請求人は,デイリータウンページの掲載ルールについて種々述べるが,「電話帳の利用目的に適したものの採用が認められている」だけであって,本件商標登録の正当性を肯定する根拠とはならない。
エ 引用商標の被請求人による認識性
請求人は,引用商標及び引用商標に類似する商標「さいたま県民葬祭」を昭和54年の創業以来使用しており,電話帳や広告媒体(甲17?甲28)などを活用した積極的な営業活動により,引用商標は請求人のことと認識されている。また,インターネットでは,引用商標でキーワード検索をすれば,被請求人の「さいたま県民葬祭」が上位にヒットすることから,出所の混同を生じるおそれは多分にあり,また現実に出所の混同が生じた可能性も否定し得ない(甲35)。
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,被請求人の主張は失当である。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第19号について
引用商標の周知性については,甲第17号証ないし甲第28号証により明らかである。
また,被請求人の使用状況から(甲29?甲34),「さいたま県民葬祭」の使用に悪意が伺えることから,不正競争の目的又は不正の目的が存在するものと推認できる。
以上より,本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当するものであるから,被請求人の主張は失当である。
5 審尋に対する請求人の回答
引用商標の周知性について,請求人は,本件登録商標の出願日及び登録日前より現在に至るまで「株式会社埼玉県民葬祭」・「埼玉県民葬祭」との名称・略称の下で葬祭業を営んでおり,引用商標を複数行にわたって掲載していることから,単なる番号掲載に留まらない広告効果を発揮している(甲17?甲26)。
デイリータウンページは上尾市・桶川市・北本市・鴻巣市・伊奈町の全戸に配布されることから,少なくともこれらの地域において引用商標は広く認識されている(甲17?甲26)。
また,請求人は,さいたま市(浦和斎場・思い出の里・ひかり会館),上尾市・伊奈町(上尾伊奈斎場つつじ苑),鴻巣市・桶川市・北本市・吹上町・川里町(県央みずほ斎場),蓮田市・春日部市・白岡市・杉戸町(埼葛斎場),加須市・久喜市・幸手市・駒西町・北川辺町・大利根町・宮代町等(メモリアルトネ),越谷市・吉川市・松伏市(越谷市斎場),富士見市・ふじみ野市・三芳町(しののめの里),所沢市(所沢市斎場)を営業エリアとして,ウェブサイトを通じて多数の需要者の目に触れられたものと推認されることから,埼玉県のほぼ全域にわたって引用商標は広く認識されている(甲27)。
さらに,請求人は,各自治会向けに広告を掲載するなど(甲28),各自治会においても引用商標は広く認識されている。なお,甲第28号証中,「埼玉県民葬斎」は「埼玉県民葬祭」の誤植(印刷業者による)であるが,掲載電話番号「0120-493-894」は,甲第17号証ないし甲第26号証に記載の電話番号と一致していることから,甲第28号証記載の引用商標の認定に影響を与えないものといえる。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求める,と答弁し,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人は,本件商標中「さいたま県民葬祭」が被請求人の商号であって,被請求人の商号(有限会社さいかつ葬祭センター)と重複して商号を使用しているとする。
しかしながら,商号は,会社法第6条第1項に「会社は,その名称を商号とする。」とし,同第2項において「会社は,株式会社,合名会社,合資会社又は合同会社の種類に従い,それぞれその商号中に株式会社,合名会社,合資会社又は合同会社という文字を用いなければならい。」と規定されている。
本件商標中「さいたま県民葬祭」は,被請求人会社の名称ではなく,また会社の種類を表す株式会社その他の表示はされていないから「商号」ではない。なお,「さいかつ葬祭センター」は請求人の商号ではなく,商号の略称というべきものである。
したがって,本件商標は,被請求人の商号以外の商号で構成されているものではないから,会社法に違反するものでもなく,また請求人が主張する「商号単一の原則」に反するものでないから,公序良俗に反するものではなく商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(2)請求人は,本件商標の構成自体についてではなく,被請求人の現在における「さいたま県民葬祭」の使用方法,表示方法,特にデイリータウンページの使用例,それも索引としての使用方法を問題として,これらデイリータウンページでは「さいたま県民葬祭」が商号として使用されているから,これが「商号」であり,したがって本件商標自体が公序良俗に反するという,理論的に整合し得ない主張を展開している。
しかしながら,「さいたま県民葬祭」が「商号」でないことは既述のとおりであり,以上の主張をもって,請求人の主張には十分に対応がされたものであるが,念のためデイリータウンページにおける「さいたま県民葬祭」の使用その他についての請求人の主張に反論をする。
すなわち,デイリータウンページでは,「掲載ルール」として「普通掲載」(1つの電話番号毎に1つの名称を掲載)のほかに「重複掲載」として電話契約者等の要望により「普通掲載以外の氏名,名称,もしくは称号または商品名」の掲載が認められている(乙1)。要するに電話帳検索上最も効果的な名称等であって,電話帳の利用目的に適したものの採用が認められているのである。
このルールにしたがって,被請求人の商号の略称である「さいかつ葬祭センター」と被請求人の役務商標(サービスマーク)として,越谷市・三郷市・八潮市・吉川市・松伏町・春日部市・蓮田市・白岡市・杉戸町などの埼玉県北西部の所謂さいかつ地域ですでに広く周知性を得ている「さいたま県民葬祭」を重複掲載をし,被請求人の電話番号をより検索し易くして需要者の便宜を計るものである。
なお,デイリータウンページでは,「さいかつ葬祭センター」と「さいたま県民葬祭」と重複掲載すると共に,「さいたま県民葬祭/SSCさいかつ葬祭センター」もしくは「SSCさいたま県民葬祭(本件商標)/さいかつ葬祭センター」として「さいかつ葬祭センター」と「さいたま県民葬祭」とを一体的に表した広告を掲載しており(甲9号証の331頁,甲10の525頁,甲11の317頁,甲12号証の510頁,甲13の294頁,甲14の453頁,甲15の331頁及び甲16の477頁),「さいたま県民葬祭」が「SSC」と共に被請求人のサービスマークとして被請求人と一体のものであることを示している。
また,これらの広告中,本件商標には「〇にR」を付して,これが登録商標であることも明示している(甲10,甲12,甲14及び甲16)。
したがって,以上の事実をもってしても,本件商標が商号として使用されていないことは明らかである。
(3)請求人は,請求人の「さいたま県民葬祭」から「埼玉県民葬祭」に商号変更後に,被請求人は「さいたま県民葬祭」を含む商標登録を受けていることから,この商標の採択が偶然の一致とは考えられず,請求人の標章に依拠したこととし,「さいたま県民葬祭」の商標の独占使用を許容し,これに類似する商標の排他使用を許容することによる社会的弊害は大きく,取引秩序を維持する上でも,「さいたま県民葬祭」を含む本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する,との趣旨の主張をする。
これは全くいわれのない根拠のない主張である。そもそも請求人の「株式会社埼玉県民葬祭」の商号が著名であった事実はなく,また「さいたま県民葬祭」「埼玉県民葬祭」の意味は,「埼玉県在住の方々向け(供される)の葬儀や祭事」といったほどの意味合いから,識別機能に劣るところ独占不適用な商標と解されるものであり,本件商標は特殊な書体の「SSC」と「さいたま県民葬祭」とが一体として全体として識別力が認められ登録されたものである。
また,被請求人は,登録後本件商標を被請求人の商号の略称である「さいかつ葬祭センター」と共に継続して使用をすること7年以上を経過し,既述のとおり,越谷市・三郷市・八潮市・吉川市・松伏町・春日部市・蓮田市・白岡市・杉戸町などの埼玉県北西部の所謂さいかつ地域を中心とした積極的な営業活動により(乙2及び乙3),この地域においては「さいたま県民葬祭」といえば被請求人のことと認識されているほどの使用実績があり,この間,請求人もしくは他の業者との間に出所の混同を生じるような事態は全く発生していない。
以上により,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することはない。
2 商標法第4条第1項第10号及び同第19号について
請求人は,請求人の商号である「株式会社埼玉県民葬祭」の略称であり,請求人の冠婚葬祭の請負等の役務に使用している「埼玉県民葬祭」を引用商標とし,引用商標が請求人の業務に係る役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていること,また,本件商標は,引用商標が周知となってから出願されているから本件商標には不正競争の目的又は不正の目的が存在するものと推認せざるを得ないので,商標法第4条第1項第10号に該当し,また,不正の目的をもって使用するものと認められることから,商標法第4条第1項第19号に該当するとしているが,これらの主張及び証拠方法については,何らなされていない。
これでは,請求人の引用商標が周知されている事実は認識ができず,また被請求人には不正競争の意思はあり得ないことであり,むしろ甲第4号証ないし甲第16号証,乙第2号証及び乙第3号証から本件商標の積極的な使用実績が認識できるのみといえる。本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当するおそれはない。
以上により,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同第10号及び同第19号に該当するおそれはなく,したがって,本審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号及び同第19号該当性について
(1)引用商標の周知性について
請求人の提出した証拠によれば,請求人は,冠婚葬祭の請負等を主たる業務とする企業であり,平成17年3月3日以前は「さいたま県民葬祭」として,それ以降は引用商標を略称として使用しているものである(甲3)。
引用商標は,上尾市・桶川市・北本市・鴻巣市・伊奈町の全戸に配布されるデイリータウンページにおいて,引用商標を複数行にわたって掲載していること(甲17?甲26),請求人は,さいたま市,上尾市,伊奈町,鴻巣市,桶川市,北本市,吹上町,川里町,蓮田市,春日部市,白岡市,杉戸町,加須市,久喜市,幸手市,駒西町,北川辺町,大利根町,宮代町,越谷市,吉川市,松伏市,富士見市,ふじみ野市,三芳町,所沢市を営業エリアとして,ウェブサイトを通じて営業を行っていること(甲27),請求人は,自治会に広告を掲載していること(甲28),などを認めることができる。
上記事実からすれば,請求人は引用商標を埼玉県の一部地域の電話帳に引用商標及び電話番号を掲載していること,自社のホームページで引用商標を掲載していること,自治体の会員名簿に広告を掲載していることは認められるものの,引用商標を使用した役務「冠婚葬祭の請負等を行う役務」等について,本件商標の登録出願日(平成18年12月20)までに,どの程度の売り上げがあり,どの程度の宣伝広告等を行ったのかなど,引用商標が需要者の間に広く認識されている商標であると認めるに足りる証拠の提出は一切ない。その他,引用商標が請求人の業務に係る役務等を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び登録査定日において,需要者の間に広く認識されているに至っていたと認めるに足りる証拠は見いだせない。
したがって,引用商標は,請求人の業務に係る役務「冠婚葬祭の請負等を行う役務」等を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,上段に図案化した「SSC」の欧文字と,下段に「さいたま県民葬祭」の文字を二段書きに書してなるところ,その構成中の「さいたま県民葬祭」の文字部分は,「さいたま」の文字が,「埼玉」の文字を平仮名で表したものであり,「県民」の文字が,「県内の住民」を意味するものであり,「葬祭」の文字が,「葬式と祭祀」を意味するものであるから(株式会社岩波書店[広辞苑第六版]),該文字全体からは「埼玉県内の住民の葬儀と祭祀」ほどの意味合いを有するものである。
そして,例えば,地名や県名などと「県民葬祭」の文字が結合した「○○県民葬祭」の使用例としては,「神奈川県民葬祭」,「くまもと県民葬祭」,「ふくおか県民葬祭」などがあり,また、地名や都市名などと「市民葬祭」の文字が結合した「○○市民葬祭」の使用例としては,「宇都宮市民葬祭」,「横浜市民葬祭」,「小田原市民葬祭」,「千葉市民葬祭」,「日光市民葬祭」などがあり、これらのような地名や県名などと「県民」,「市民」の文字が結合した「○○葬祭」の文字は,普通に使用されているところである。
そうすれば,「さいたま県民葬祭」の文字を本件商標の指定役務中「葬儀・法要の相談又は企画,葬儀・法要の執行,葬儀又は法要のための施設の提供」に使用するときは,「埼玉県内の住民の葬儀と祭祀を行う役務」であることを理解させるにとどまり,単に役務の質(内容)を表すものであるから,自他役務の識別標識としての機能を有していないか,又は極めて弱い部分であるといえるものであって,本件商標の自他役務の識別標識として機能する部分は上段の「SSC」の文字部分にあるとみるのが相当である。
また,「さいたま県民葬祭」の文字は,上記認定のとおり,葬祭業を取り扱う分野において,役務の質等を表示するものとして理解されるものであって,埼玉県内で葬祭業を行う者であれば,何人もその使用を欲するものというべきである。
したがって,本件商標は,その上段の文字部分より「エスエスシー」の称呼を生じ,該文字は,特定の意味合いを有しない造語とみるのが相当であるから,観念は生じないものである。
他方,引用商標は,「埼玉県民葬祭」の文字を書してなるところ,上記認定のとおり,該文字は「埼玉県内の住民の葬儀と祭祀」ほどの意味合いが生じ,請求人の主な業務である「冠婚葬祭の請負等の役務」との関係においては,自他役務の識別標識としての機能を有していないか,又は極めて弱いものであるといえるものであって,また,上記のとおり,何人もその使用を欲するものであるから,引用商標は,識別力を有する商標として機能しないものというのが相当である。
そこで,本件商標と引用商標との類否を判断すると,本件商標は上段に「SSC」の図案化された欧文字を有しており,この文字部分が自他役務の識別標識としての機能を有するものである。しかし,引用商標は,自他役務の識別標識としての機能を有していないか,又は極めて弱いものであるから,本件商標との類否において,引用商標は,比較することのできない商標であるとみるのが相当である。
(3)小活
上記(1)及び(2)によれば,請求人の引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で広く認識されているということはできないものである。また,引用商標は,識別力を有する商標として,本件商標とは比較できないものであるから,両商標は,類似しないものといえる。そして,本件商標は,他人の周知商標と同一又は類似する商標ではなく,提出された証拠からは,不正の目的をもって使用をするものであるといえないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は,商標登録を受けることができないと規定され,これに該当する商標には,「(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。
(2)本件商標は,前記第1の構成態様からなるものであり,かつ,上記1(2)で認定したとおり「埼玉県内の住民の葬儀と祭祀」ほどの意味合いを有するものであるから,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。
また,本件商標の指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するということもできない。
さらに,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。
(3)本件商標が,「他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合」に当たるか否かについて
請求人は,被請求人が「さいかつ葬祭センター」の文字と「さいたま県民葬祭」の文字を混同して現実に使用していることから,複数の商号を有することは,「商号単一の原則」に反するものである旨主張する(甲9?16,甲29?甲34)。
しかしながら,請求人の主張している「さいかつ葬祭センター」の文字は,被請求人の商号である「有限会社さいかつ葬祭センター」(甲2)の一部の文字であるから商号とはいえないものであり,また,「さいたま県民葬祭」の文字は,本件商標の一部であり,上記1(2)のとおり,該文字部分のみでは,商標としての自他役務の識別機能を果たし得ないものである。
してみれば,「さいかつ葬祭センター」の文字と「さいたま県民葬祭」の文字は,共に商号にはあたらないとみるのが相当であり,「他の法律によって,その使用等が禁止されている商標」には該当しないものというべきである。また,その他の法律によって使用等が禁止されている事実も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第10号及び同第19号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標


審理終結日 2015-08-11 
結審通知日 2015-08-14 
審決日 2015-09-01 
出願番号 商願2006-117608(T2006-117608) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (Y45)
T 1 11・ 25- Y (Y45)
T 1 11・ 22- Y (Y45)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 波方 美奈子酒井 福造 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
清棲 保美
登録日 2007-09-07 
登録番号 商標登録第5075449号(T5075449) 
商標の称呼 エスエスシイ、サイタマケンミンソーサイ、ケンミンソーサイ 
復代理人 岩永 和久 
代理人 特許業務法人 クラスター 
代理人 梅村 莞爾 
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