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審決分類 審判 一部無効 観念類似 無効としない X2425
審判 一部無効 称呼類似 無効としない X2425
審判 一部無効 外観類似 無効としない X2425
管理番号 1307406 
審判番号 無効2012-890095 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-07 
確定日 2015-11-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5426917号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5426917号商標(以下「本件商標」という。)は、「RUNE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成20年1月30日に登録出願された商願2008-6272に係る商標法第10条第1項の規定(分割出願)による商標登録出願とし、同年9月1日に登録出願、第24類「タオル,ハンカチ,その他の布製身の回り品」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「おもちゃ,人形,スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具」を指定商品として、同23年7月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4443540号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成11年5月10日に登録出願、第24類「布製身の回り品」及び第25類「被服,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた(「げた金具」を除く。),草履類」を指定商品として、同13年1月5日に設定登録され、その後、同22年11月24日に商標権存続期間の更新登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第24類「タオル,ハンカチ,その他の布製身の回り品」及び第25類「被服,履物(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 利害関係
本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず、その登録が認められたものであるから、請求人が本件審判を請求するについて利害関係を有することは明らかである。
2 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、以下のとおり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。
(1)本件商標の登録の経緯(査定不服審判2010-21254)
本件請求の審理対象は、本件商標の登録審決(査定不服審判2010-21254)の称呼の発生に関する誤った判断を争うものである。本件商標の登録に際し、引用商標が「レネ」とのみ称呼されるとの登録審決がなされ非類似とされていたため、請求人は、引用商標から「ルネ」の称呼が生じ、本件商標と類似する旨主張する。
(2)アクサン記号について
アクサン記号は、フランス語で母音の長短・広狭を示すための記号であり、今日において、この記号が配されていたときには、それは英語でなくフランス語であるとの認識が生じるものである(甲4、5)。
(3)「被服」等を扱うファッション業界
前記(2)では商品の分野を問わず一般的な観点から述べたが、本件商標及び引用商標に係る指定商品「被服」等を扱うファッション業界においては、フランス語の商標が盛んに使用され、フランス語をもって称呼され得る状況にあるとともに(甲8の1ないし10)、アクサン記号はそれがフランス語であることを示唆する重要な記号である点に鑑みると、その構成中にアクサン記号が配されている態様の引用商標に接する需要者・取引者にあっては、フランス語の読みに倣って称呼するとの判断がなされて然るべきである。
加えて、末尾の「e」の文字の上にアクサン・テギュが配されている「Rene」は、「ルネ」という男子名を表すフランス語であり、また、歴史上の著名人や芸術家の名としてありふれたものである(甲9、10)という状況を総合すると、引用商標からはフランス語の読みに倣って「ルネ」なる称呼が生じ、当該「ルネ」の称呼をもって実際の取引に資されるとするのが極めて妥当な判断であり、このような判断こそが取引の実情に即した判断、すなわち「需要者の通常有する注意力を基準にした判断」といえる。
なお、被服の分野において、「RENE」の文字を含む登録第4886517号商標について、当該「RENE」から「ルネ」の称呼が生じることを前提にその判断がされており(甲11)、このことも、引用商標より「ルネ」の称呼が生じることを裏付けるにほかならない。
(4)本件商標と引用商標の類否判断について
「RUNE」の文字(標準文字)からなる本件商標は、その構成全体に相応して「ルネ」の称呼のみを生じ、他方、「Rene」の欧文字を表し、綴りの最後の「e」の文字にフランス語で用いられるアクサン記号が付されている引用商標は、「ルネ」の称呼のみ生じると判断されるべきものであり、ゆえに、「ルネ」の称呼を生じる本件商標は、引用商標と称呼を同じくするものである。
商標の類否判断におけるほかの要素についても触れると、本件商標と引用商標とは、2文字目から4文字目が大文字で構成されているか、それとも小文字かという点、2文字目が「U」か「e」という点、その構成中の最後の綴りの「e」の文字の上にアクサン・テギュが配されているか否かという点に差異があるものの、いずれも4文字で構成され、語頭の「R」を同じくすることからすると、外観において顕著に異なるとはいえないものであり、また、両者は観念を比較し得る状況にないものである。
この点を踏まえると、外観・観念の要素が本件商標と引用商標との類否判断に与える影響は少ないものであり、その一方で、称呼の要素を捉えた場合、両商標の称呼が同一であることから、本件商標は、引用商標に類似する商標に該当するものである。
なお、近時、2つの商標が称呼を同じくするも、外観・観念において顕著に異なることから、両商標は類似しないとの判断がなされているは事案も見受けられるが、本件に関しては、上述のように、外観・観念の要素が称呼の要素を凌駕する状況にはないことから、そのような判断をなし得るものではないということは明らかである。
(5)本件商標と引用商標の類否に対する当審の暫定的見解について
ア この見解の主旨は、引用商標にあっては、これをフランス語読みにした場合の「ルネ」の称呼をもって、商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当であり、引用商標からはその構成文字に相応して、「ルネ」の称呼を生ずる、としている点は当然であるが、被服や履物等のファッション関連の商品の取引の実情からして、それぞれの商標より生ずる称呼を重要視するというより、むしろ、その外観の果たす役割が大きいことから、外観、称呼、観念及び使用に係る商品の取引の実情など、需要者に与える印象等を総合して観察すると、外観上、明らかに区別し得る本件商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべき、と記載されている。この暫定的見解に対して、以下に請求人の意見を述べる。
イ 引用商標より生ずる称呼についてみると、その判断に当たって、フランス語読みにした場合の「ルネ」の称呼をもって、商品の取引に当たる場合が多いとし、引用商標より「ルネ」の称呼が生ずるとしている。
この称呼の特定に際し考慮されている点は、被服や履物等のファッション関連の商品分野においては、フランス語よりなる商標も多用されているという点であり、このことは、請求人も審判請求書において主張しているところであり、さらには、甲第8号証の1乃至10に示す各事案に照らしても、引用商標より「ルネ」の称呼が生ずるという判断に誤りはなく、極めて妥当な判断といえる。
ウ 次に、被服や履物等のファッション関連の商品分野では、称呼より外観を重要視するという点についてであるが、暫定的見解では、その理由として、これらの商品は、その需要者自らが、商品のサイズやデザイン、あるいは、原材料等を吟味し、選択するために、直接商品を手に取ったり、あるいは、インターネット上で商品を見て確認するなど、視覚を通して取引される場合が多いという「取引の実情」が存する点を挙げている。
エ ここで挙げている「取引の実情」は、商標の類否判断における「取引の実情」であり、この場合に、考慮することができる取引の実情は、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものである(最高裁昭和49年4月25日第一小法廷判決 昭和47年行(ツ)第33号)。これを本件商標と引用商標に係る指定商品たる「被服」の商品分野についてみると、その商品の範囲は「下着」等を含め多岐に亘っており、主たる需要者も老人から若者までを含む一般的な消費者であり、これらの商品分野においては、口頭による取引がされることも多く、また、一般的な消費者が自己の求める商品を識別して購入する際に、テレビ、ラジオ等のコマーシャルにおける称呼による商品の宣伝を記憶して、これを頼りに取引に当たる場合も多い。特に、引用商標及び本件商標より生ずる「ルネ」の称呼のように、その称呼が簡潔で、馴染みやすく、記憶にとどめやすい場合には、このような傾向が強いと考えられ、このような事情こそが、この商品分野における一般的、恒常的な「取引の実情」として挙げられるべきである。
そして、請求人の上記主張が妥当であることは、特許庁長官が被告になった審決取消訴訟の事案において、被告が同旨の主張をし、それを裁判所が容認している事実(甲14)からも裏付けられるところである。
オ 一方、今回の暫定的見解で示されているファッション関連商品の分野における「取引の実情」は、裁判所で御庁が被告として主張したそれとは異なるものである。請求人においては、常々、御庁が主張した実情がこれらの商品分野における一般的、恒常的な「取引の実情」であり、特に、ファッション関連の商品のように女性の会話で伝播される商品にあっては、会話で重要な「称呼」が軽視されることはないと認識していたが、今日、この分野における一般的、恒常的な「取引の実情」は暫定的見解に示したものであるというのであれば、それが職権主義の下での恣意的判断ではないことを明らかにすべきである。その意味では、これらの商品分野における一般的、恒常的な「取引の実情」の変遷について明確に述べるべきであり、審決でも明確に示されなければならないものである。逆に、それが示せないのならば、氷山事件(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決 昭和39年行(ツ)第110号)に端を発する「取引の実情」について、それが意図するところから離れ、商標の類否を決定付けるために、都合のいいように解釈する恣意的判断そのものであり、そのような判断は厳に戒められなければならない。
カ また、今回の暫定的見解で示されている「取引の実情」が、この分野における一般的、恒常的な「取引の実情」として成り立つとしたときには、両商標の称呼が類似する場合はもちろんのこと、同一であったとしても、外観が異なる限り、全て非類似の商標ということになる。これについて、引用商標を例にすると、当該商標より生ずる「ルネ」という称呼に照応する「ルネ」の片仮名の商標について第三者から出願がなされた場合、称呼が同一であるにも拘わらず、外観が異なることから、非類似ということになり、引用商標の存在など、全く意味をなさないことになる。
極論すれば、文字のみから構成されてなる引用商標にあっては類似範囲を有しない登録商標を御庁で作り出すということになるし、商標採択の際、称呼で検索して同一綴りの商標を発見し、綴りを変更したに過ぎない態様の同一・類似称呼の商標の登録が横行することにもなってしまう。
キ さらに、暫定的見解における「取引の実情」は、ファッション関連の商品の分野においてのみ当てはまる「取引の実情」であるかのように指摘しているが、このような状況は被服の分野に限られるものではない。即ち、商品のサイズやデザイン、あるいは、原材料等を吟味し、選択するために、直接商品を手に取ったり、あるいは、インターネット上で商品を見て確認するなどした上で商品を購入するという形態は、ファッション関連商品のみならず、一般需要者を対象とする商品にあっては、多かれ少なかれ採られている形態である。
この点からすると、一般需要者を対象とする商品の分野にあっては、たとえ称呼が同一であったとしても、外観が異なれば、非類似の商標ということなり、しかもそれは、図形商標の場合に限らず、文字商標にも当てはまるとしたときには、審査官が審査して先行商標と類似する商標の登録を事前に排除する(4条1項11号)という審査主義を基調とした商標登録制度は最早必要ないということを意味するに他ならない。
ク 上記に加え、4条1項11号の規定により、他人の登録商標に類似する商標の登録を認めないのは、出所の混同が生ずるおそれのある商標の登録を事前に排除し、商品流通秩序の維持を図る(1条)という点にあるが、その審査を司る行政官庁にあっては、その目的を達成するためには、類似する商標の範囲を願書に記載された事項から想定し、広く捉えて然るべきであり、しかも、行政処分としてのその判断は、恣意的判断が排除された形の画一的かつ予見可能な判断でなければならないものである。
ケ したがって、行政庁たる特許庁において、審査・審判の段階で恣意的判断の温床ともいえる「取引の実情」という要因を必要以上に取り込み、商品の類似範囲を示す基準を乱し予見可能性を損なってまで商標の類否を決定付けるという判断手法は採るべきではない。
コ これらの点より、御庁においても、現行の審査主義を堅持する必要があるとしたときには、4条1項11号における商標の類否を争点とする本件について、どのような判断が妥当であるかは自ずと分かるはずである。
サ なお、暫定的見解では、被請求人が答弁書において主張している点を取り入れていない。被請求人は、請求人のそれとは業務が異なる点、プランドイメージやコンセプトが異なる点を挙げ、商品の出所の混同が生じないことから、本件商標は引用商標との関係で、4条1項11号に該当しないかの如く主張している。この主張に基づいた指摘が暫定的見解で示されていないのは、登録商標の範囲は願書に記載した商標に基づいて定められ(27条1項)、また、願書に記載された商標登録を受けようとする商標が審査の対象となるのであるから(5条1項3号)、4条1項11号の審査においては、願書に記載された商標同士を対比すれば足りるという点に基づくものと思われるが、そのような認識であるとしたときには、それは正にそのとおりであり、この点は請求人においても主張するところである。
シ 以上を総合すると、本件については、個別具体的に各事案を判断する裁判所の判断とは異なり、行政処分としての適確性を求められる審判における判断であり、この点に照らし、請求人においては、先例との関係での「信頼の原則」の下、その判断がなされることを求めるものであり、そのような判断がなされたときには、請求の趣旨通りの帰結になると確信している。
(6)被請求人の答弁に対して
「商標法第4条第1項第11号は、出所混同防止の規定である」旨を主張する。
学説上「出所混同」の概念に「一般的(抽象的)出所の混同」と「具体的出所の混同」の対立する概念が存し、商標法4条1項11号の「類似」(一般的出所の混同)と4条1項15号の(具体的出所の混同)を分離して考察しなければならないところ、披請求人は4条1項11号の紛争に関し、「出所混同を生じさせている具体的な事実は存在しない」旨を述べており、この答弁は、「商標の類否」(一般的出所の混同)のみを検討すべき4条1項11号の「類似」に対し、全く異なる「具体的出所の混同」を主張しているため、概念を「混同」した的外れの答弁となっている。
更には、4条1項11号の商標の類否と関連ない「両者の業務の比較」まで述べている。
商標登録出願は、使用意思として将来の業務企画をも含み登録されており、不使用取消審判等で取り消されない限り、新たな使用開始も自由であり、「現在の両者の業務の比較」は、侵害訴訟の逸失利益等の問題以外、「商標の類否」には全く不要の論でしかない。
(7)審理事項通知書(甲15)における疑問点
両商標から「ルネ」の同一称呼が生ずることを認め、「ルネ」の称呼において共通する場合が存在するにすぎず、「i外観、称呼、観念およびそのii使用に係る商品の取引の実情など、iii需要者に与える印象等を総合して考察すると、iv互いに相紛れるおそれのない非類似の商標」と記載している。
i 「同一称呼が生ずることを認めている」ので少なくとも、4条1項11号の審査基準にいう「外観、観念及び称呼の判断要素」の一に該当していることは明確である。
ii 「ファッション商品は、視覚取引が多く、外観の役割が大きい」なる大小の推定は、そのような場面が「多いか、大きいか」を述べているが、称呼観察を全く無視してよいという根拠にはなっていない。
iii 「需要者に与える印象を総合的に考察」に至っては、全くその根拠は示されておらず、恣意そのものと指摘せざるを得ない。
iv 「相紛れるおそれのない非類似の商標」の結論は、商標自体の差異によるものではなく、関連ない商品における特殊性で判断されているため、この理論が正論であるならば、今後、指定商品「被服・履物」について提出される他の出願に関しても、特許庁では同一称呼を始め、称呼に関する判断を考慮しない旨をも表明したことになり、理論的に正当とは言えず、この判断が妥当性ある公正な判断とは考え難い。
(8)商標登録制度における4条1項11号規定の趣旨
取引社会で営業の目印を紛らわせ不正な利益を得ようとする不正競業行為を取り締まる法律として不正競争防止法(以下「不競法」)が存在し、「商品等表示」という商標をも含む広範囲な対象につき、まず「類似」であることの判断、次いで「他人の営業との混同」(具体的出所の混同)を判断することにより、対立する当事者の現実の紛争を解決するよう判断を司法に委ねている。
これに対し、商標法は当事者の紛争処理に関し、商標使用者の大部分を商標登録に導き、先願主義を明確にし、不競法と異なり、先後願商標を「類似」という概念のみで審査し、紛争を未然に防止する制度を採り、その出願審査及び登録処分を行うため専門行政官庁の特許庁を設立し、「現実の出所の混同(具体的出所の混同)」を超えた「想定による類似概念(一般的出所の混同)」で行われる審査で整理し、現実の紛争に至る前に、不正競業行為を未然に防止できる状況を制度的に担保することを目標として制定されている。
裁判所は、「対立当事者の現在の紛争解決のため」、当事者説得手段として不競法に倣い、単なる「類似」に「具体的混同」を加味し、拡大解釈した37条1号の「類似」を適用し、現実の紛争解決をしているのである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 引用商標から生ずる称呼及び本件商標と引用商標との類否について
請求人は、「本件商標及び引用商標に係る指定商品『被服』等を扱うファッション業界においては、フランス語の商標が盛んに使用され、フランス語をもって称呼され得る状況にある」、「アクサン記号はそれがフランス語であることを示唆する重要な記号である点に鑑みると、その構成中にアクサン記号が配されている態様の引用商標に接する需要者・取引者にあっては、フランス語の読みに倣って称呼するとの判断がなされて然るべきである」と主張する。
しかしながら、アクサン記号のような右肩上がりの符号で表される、いわゆる「アキュート・アクセント」は、強勢の位置や発音を表すのに使用されるアクセント符号で、スペイン語、ポルトガル語等のラテン文字を用いる言語の表記に用いられるものであり(乙1)、フランス語はそのごく一例である。
また、近年、世界各国のアパレル企業が我が国に進出して事業展開している状況において、ファッション業界においてフランス語以外の商標も盛んに使用されているので、引用商標に接する需要者等が必ずしもフランス語をもって称呼するとは限らない。例えば、スペインのファッションブランドである「ZARA(ザラ)」、スウェーデンのファッションブランドである「H&M(エイチアンドエム)」、イタリアのファッションブランドである「UNITEDCOLORS OF BENETTON (ユナイテッド・カラーズ・オブ・ベネトン)」等、フランス以外のヨーロッパ方面のファッションブランドも我が国において広く知られている。
そうすると、引用商標に接する需要者・取引者にあっては、ヨーロッパ方面の言語であろうという予想はし得るものの、外国語に関して通常の知識を有する程度の需要者等であれば、特にフランス語に断定する理由がないから、結局我が国で親しまれたローマ字読みで称呼されることが自然であるといえる。
したがって、査定不服審決で示したとおり、引用商標は、その構成全体に相応して「レネ」の称呼のみを生じるものであり、本件商標は、「ルネ」の称呼を生じるものである。本件商標と引用商標の称呼は、いずれも、二つの音からなる極めて短い音構成であるばかりでなく、称呼の識別上、重要な要素を占める語頭において「ル」と「レ」の音の差異を有するものであるから、当該差異が両称呼全体に及ぼす影響は大きく、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、語感が相違し、容易に聞き分けることができる。
また、本件商標と引用商標とは、その構成から、外観上、明らかに相違するものであり、観念上は、比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれよりみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
2 請求人及び被請求人に係る業務などについて
請求人は、引用商標の登録を取得し、その後においても、引用商標の下に業務を展開してきていることを述べている。
ここで、商標法第4条第1項第11号は、出所混同防止の規定であるところ、本件商標の下に行っている商標権者の業務が、需要者・取引者に対し、請求人が引用商標の下に展開してきている業務との出所混同を生じさせている具体的な事実は存在しないものである。
本件商標の審査段階で提出した平成22年2月19日付け上申書においても述べたとおり、本件商標を構成する「RUNE」の文字は、著名なイラストレーターである内藤ルネを表すものであり、また、商標権者は、内藤ルネの作品を基にした商品販売等を展開するものである。
そうすると、請求人の業務(甲13)と商標権者の業務とは、ブランドイメージやコンセプトが明らかに異なるから、需要者・取引者に出所混同を生じさせ得ないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1に示すとおり、「RUNE」の欧文字を標準文字で表してなるところ、「RUNE」の語は、英語の辞書の大修館ベーシックジーニアス英和辞典には載録されていない。他方、三省堂グランドセンチュリー英和辞典には「ルーン文字」を意味する成語として載録されているものの、該語は中高生学習語でないことが認められる。そうとすると、「RUNE」の語自体を成語と理解する者は多いということができず、我が国において馴染みの薄い語とみるのが相当である。してみれば、本件商標は、特定の観念を有さないといえるものである。
そして、我が国では英語の普及率が他の外国語に比べ極めて高く、商業広告などにおいても、英語の使用頻度が非常に高いことは、取引の実情に照らして明らかである。そうとすると、馴染みの薄い欧文字よりなる語であって、その発音方法や意味を知らない場合には、自己の有する英語の知識に従い、これを英語風の読み又はローマ字読みをするのに無理なく読める場合はローマ字読みにして、商品の取引に当たる場合も決して少なくない。
これを本件商標についてみるに、「RUNE」の欧文字をローマ字読みにした場合には「ルネ」の称呼が無理なく生ずることができ、他方、これを英語読みにした場合には、我が国で親しまれている英単語の「June」、「prune」、「Neptune」がそれぞれ「ジューン」、「プルーン」、「ネプチューン」と発音される例に倣い、「ルーン」の称呼をも生ずるといえるものである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「ルネ」又は「ルーン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、その構成末尾の「e」の文字にアクセント記号が付された「Rene」の欧文字を表してなるところ、該文字に接する取引者、需要者は、該アクセント記号を見て、「Rene」(末尾の「e」の文字には、アクサン記号が付されている。引用商標を文字で表記する場合は、以下同じ。)の欧文字からなる商標が該記号を使用するフランス語、スペイン語、ポルトガル語などのラテン文字を用いる言語よりなるものであろうことは容易に推測し得るものである。
加えて、該語は、フランスの歴史上の人物である、例えば、ルネ・ダンジュー(ルネ1世)のように、「ルネ」と発音し、男子の名前を意味する語(甲9、甲10)として、我が国においても相当程度知られているといえるものである。
さらに、引用商標の指定商品である被服や履物等のファッション関連の商品分野においては、その取引において、英語のみならずフランス語も多用されていることも周知の事実である。
してみると、引用商標に接する取引者及び需要者にして、「Rene」の欧文字から「ルネなる男子の名前」の意を有するフランス語と理解し、「ルネ」の称呼をもって、商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。
したがって、引用商標は、その構成文字に相応して、「ルネ」の称呼を生じ、「フランス語圏に係るルネなる男子の名前」の観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
請求人は、本件商標と引用商標は「ルネ」の称呼を共通にするものであるから、審査基準にいう「外観、観念及び称呼の判断要素」の一に該当し、両商標は類似する旨主張する。さらに、行政庁たる特許庁において、審査・審判の段階で恣意的判断の温床ともいえる「取引の実情」という要因を必要以上に取り込み、商品の類似範囲を示す基準を乱し予見可能性を損なってまで商標の類否を決定付けるという判断手法は採るべきではない、と主張する。
しかし、商標の類否の判断は、形式的、画一的、杓子定規的な判断ではなく、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素に加え、取引の実情等を含めて総合的判断すべきであり、その際の取引の実情とは、指定商品等の取引業界における需要者の通常有する注意力を基準にした一般的、恒常的な実情を斟酌すべきことはいうまでもない。その観点で、以下判断する。
ア 外観について
「RUNE」の欧文字からなる本件商標と「Rene」の欧文字からなる引用商標とは、ともに欧文字4文字の構成からなり、語頭の「R」の欧文字を共通にするものの、それぞれの第2文字目が「U」と「e」、第4文字目が「e」のアクセント記号の有無、さらに本件商標が全て大文字からなるのに対し、引用商標は語頭のみを大文字で、これに続く3文字を小文字で表記した構成である点に相違を有する。
してみると、本件商標と引用商標とは、外観上大きく異なり、相紛れるおそれはない。
この点について、請求人は、本件商標と引用商標とは、2文字目から4文字目が大文字で構成されているか、それとも小文字かという点、2文字目が「U」か「e」という点、その構成中の最後の綴りの「e」の文字の上にアクサン・テギュが配されているか否かという点に差異があるものの、いずれも4文字で構成され、語頭の「R」を同じくすることからすると、外観において顕著に異なるとはいえない旨主張する。
しかし、本件商標と引用商標がともに欧文字で表記された商標であったとても、両者は、上述したとおり、外観上明確な相違を有しているものであり、これを請求人が主張するように判断したときは、外観上の相違の多くが問題とならないことになり、したがって、請求人の上記主張は、採用できない。
イ 称呼について
本件商標は、前記(1)で認定したとおり、「ルネ」又は「ルーン」の称呼が生じ、他方、引用商標は、前記(2)で認定したとおり、「ルネ」の称呼が生ずるものである。
してみると、本件商標と引用商標は、「ルネ」の称呼を共通にする場合があるといえる。
他方、本件商標から「ルーン」と称呼される場合の比較において、引用商標から生ずる「ルネ」の称呼とは、称呼において相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標は特定の観念を有しないのに対し、引用商標は「ルネなる男の名前」の観念を生ずるものであるから、本件商標と引用商標は、観念上類似するとはいえない。
エ その他、取引の実情について
本件商標と引用商標が共通する被服や履物等の商品は、購入者自らが直接身に付けるものであるから、商品の選択にあたり、直接商品を手に取ってデザインやサイズ、さらには肌触り、軽量感など、原材料、製法を吟味し、同種商品と個々比較しながらちょっとした違いでも購入を躊躇したりして商品選択をすることは一般的に行われる注意力として顕著な事実である。さらに、家族や贈物として購入を目的とする際には、自身の趣向と異なることもあり、上記注意力が増してより慎重になることは言うまでもないことである。
また、近時、インターネットを利用した商品の広告が取引の実情として定常化していることも事実である。例えば、購入者は、インターネット上で商品を見て購入手続に入るか、あるいは、それを記憶し商品を直接確認した上で購入の決定をする手法が行われている。
これらの取引の実情を踏まえると、従来から継続して利用される称呼による取引の実情を否定するものではないが、この商品分野においては、視覚を通して取引される場合が多いとみるのが恣意的判断ではなく、一般的、恒常的な取引の実情といえるから、その外観の果たす役割が大きいというべきである。
この点について、請求人は、本件商標と引用商標に係る指定商品たる「被服」の商品分野における一般的、恒常的な「取引の実情」とは、主たる需要者も老人から若者までを含む一般的な消費者であり、口頭による取引がされることも多く、また、一般的な消費者が自己の求める商品を識別して購入する際に、テレビ、ラジオ等のコマーシャルにおける称呼による商品の宣伝を記憶して、これを頼りに取引に当たる場合も多い。特に、引用商標及び本件商標より生ずる「ルネ」の称呼のように、その称呼が簡潔で、馴染みやすく、記憶にとどめやすい場合には、このような傾向が強い旨、また、直接商品を手に取ったり、あるいは、インターネット上で商品を見て確認するなどした上で商品を購入するという形態は、ファッション関連商品のみならず、一般需要者を対象とする商品にあっては、多かれ少なかれ採られている形態である旨主張する。
しかし、被服の商品分野における一般的、恒常的な取引の実情とは、上述した判断のとおりであって、他の商品分野の商品とは、同じ手に取るといえどもその注意力において大きく異なるものといえる。
しかして、請求人は、外観より称呼が重視されると上記主張するのみで、審判体が示した暫定的見解を覆す具体的な立証をしていない。したがって、請求人の上記主張は、採用できない。
オ まとめ
したがって、本件商標と引用商標とは、両者の称呼において前記したとおり、直ちに特定しにくいものであり、4文字という少ない文字構成によって記憶されることも多いといえるから、例え「ルネ」の称呼を一部共通する場合があるとしても、その外観が明らかに相違し、観念上類似するとはいえないものであって、両商標の指定商品の取引の実情など、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すると、両者は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
2 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標


審理終結日 2014-08-11 
結審通知日 2014-08-13 
審決日 2014-10-21 
出願番号 商願2008-71804(T2008-71804) 
審決分類 T 1 12・ 261- Y (X2425)
T 1 12・ 262- Y (X2425)
T 1 12・ 263- Y (X2425)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大渕 敏雄山田 正樹 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
手塚 義明
登録日 2011-07-22 
登録番号 商標登録第5426917号(T5426917) 
商標の称呼 ルネ 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 
代理人 特許業務法人太田特許事務所 
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