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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W03
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W03
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W03
管理番号 1306640 
異議申立番号 異議2014-900126 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-04-21 
確定日 2015-01-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5648238号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5648238号商標の指定商品及び指定役務中,第3類「化粧品」についての商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5648238号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりからなり,平成25年9月4日に登録出願,同26年1月27日に登録査定,第3類「化粧品」及び第44類「美容,医業」を指定商品及び指定役務として,平成26年2月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第2220083号商標(以下「引用商標1」という。)は,「ビューティラボ」の片仮名と「BEAUTYLABO」の欧文字とを二段に書してなり,昭和62年5月29日に登録出願,第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成2年3月27日に設定登録され,その後2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,指定商品については,同22年6月16日に,第3類「せっけん類(薬剤に属するものを除く),歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く),香料類」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第5121780号商標(以下「引用商標2」という。)は,「ビューティラボ」の片仮名と「BEAUTYLABO」の欧文字とを二段に書してなり,平成19年5月9日に登録出願,第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,平成20年3月21日に設定登録されたものである。
3 登録第5371047号商標(以下「引用商標3」という。)は,「BEAUTY」及び「LABO」の欧文字と,「ビューティラボ」の片仮名とを三段に書してなり,平成21年3月16日に登録出願,第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として,平成22年11月26日に設定登録されたものである。
4 登録第5587435号商標(以下「引用商標4」という。)は,「ビューティラボ」の片仮名と「Beautylabo」の欧文字とを二段に書してなり,平成25年1月17日に登録出願,第3類「せっけん類,香料,薫料,化粧品,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として,平成25年5月31日に設定登録されたものである。
以下,これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから,第3類「全指定商品」について,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,「MedicalBeautyLabo」の欧文字からなるところ,「Medical」の文字部分は,「医学」の意味を有するものであるが,これよりは,需要者が「医学的な化粧品」の意味合いを容易に理解するものと考えられ,「化粧品」に使用しても,単に商品の品質を表示するにすぎないものである(甲6ないし甲11)。
したがって,本件商標の構成中「Medical」の文字部分は,現在においては「化粧品」についても,自他商品の識別標識としての機能を失っているか,あるいは著しく弱いものであり,本件商標は,「BeautyLabo」の文字部分で,引用商標と「ビューティラボ」の称呼を共通にする,称呼上類似の商標である。
また,両商標は,その指定商品も同一又は類似のものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
引用商標である「ビューティラボ」,「BEAUTYLABO」及び「Beautylabo」は,「頭髪用化粧品」である「ヘアカラー」について使用されている申立人の周知・著名な商標である(甲12ないし甲22)。
申立人は,「医薬品」(「メディカル化粧品)の一部と外観がよく似たクリーム状の商品)の製造,販売もおこなっていることから,申立人又は申立人と何らかの経済的・組織的な関係を有する者が「メディカル化粧品」も取り扱っていると需要者が認識する可能性が大きいという事情がある。
よって,本件商標が引用商標と仮に類似しないとしても,本件商標は,申立人の著名商標を一部に有する商標であり,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

第4 当審における取消理由
当審において,平成26年8月20日付けで,本件商標権者に対し,通知した取消理由は,要旨以下のとおりである。
1 引用商標の周知性について
申立人提出の証拠によれば次のとおりである。
(1)甲第19号証は,フリー百科事典「ウィキペディア」の「ホーユー株式会社」に関するページをプリントアウトしたものであり,そこには「ホーユー株式会社は,主に白髪染め,ブリーチなどヘアカラー製品および大衆薬を製造,販売するトイレタリー及び医薬品メーカーである。本社は愛知県名古屋市。」の記載があり,「概説」の欄には「国内ではヘアカラー業界最大手であり,主なブランドとして・・・『Beautylabo(ビューティラボ)』,・・・などのブランドがある。」の記載,「沿革」の欄には「1995年(平成7年):『ビューティラボ』シリーズ発売。」の記載がある。
(2)甲第20号証は,フリー百科事典「ウィキペディア」の「ビューティラボ」に関するページをプリントアウトしたものであり,そこには「ビューティラボ(Beautylabo)は,ヘアカラーリング剤メーカーのホーユーが製造・販売する,20代の女性層をターゲットにしたヘアカラーのブランド名である。」の記載,「名前の由来」の欄には「女性の美しさを意味する『beauty』と,研究所を意味する『Laboratory』の短縮形である「Labo」を併せた造語である。」の記載,また,「概要」の欄には「ビューティラボは1995年に発売。ヘアカラーとアウトバス(洗い流さない)タイプのヘアトリートメントの2つのシリーズを展開している。・・・2009年9月に全面リニューアルされて,商品ロゴが変更になった。」の記載,「歴史」の欄には「1995年-『ヘアマニキュア』(生産終了)を発売。」,「1997年-混ぜる手間のいらない・・・ヘアカラー『カラーリングフォーム』を発売(生産終了)。」の記載のほか,2013年9月までに「カラーケア美容液」,「カラーケア化粧水」など各種商品を発売した旨の記載があり,さらに,「現在発売中の商品」の項には「ヘアカラーリング剤」,「ヘアケア製品」として各種商品の説明が記載されている。
(3)甲第21号証は,その2枚目に「証明願」と題された書面があり,文末に「上記の通り相違ないことを証明します。」,「平成22年5月13日」の記載,及び「名古屋市中区栄二町目10の19」,「名古屋商工会議所」,「会頭 岡田邦彦」の記載及び押印があり,「記」として,「『ビューティラボ』『BEAUTYLABO』及び『ビューティラボ/BEAUTYLABO』商標の染毛剤及びヘアケア剤『ビューティラボ』なる製品は,少なくとも平成8年頃?平成22年において広く宣伝,販売され,『ビューティラボ』といえばホーユー株式会社の染毛剤及びヘアカラー剤『ビューティラボ』を意味するものとして,その取引業界ばかりでなく,一般の需要者にも広く知られた著名な商標である。」旨の記載がある。
(4)甲第22号証の2枚目は,株式会社日本マーケティングシステムが,ホーユー株式会社へ報告した同社の「ビューティラボ」のブランドの認知度について調査した内容を証明事項とする,平成22年4月16日付けの「証明願」と題された書面であり,その調査結果には「ビューティラボの認知率」が,全体で「2005年 46.1」,「2007年 51.6」,「2008年 53.9」,「2009年 50.5」である旨,及び20代及び30代では上記各年で70.4ないし79.5と,いずれも「70」を超える数字であることが記載されている。
(5)甲第18号証は,申立人のホームページ(写し)であるところ,プリントアウトの日付は不明であるが,「最新情報」には「2014年3月14日」の表示及び「ホーユー商品の紹介」に「Beautylabo」の表示があり,8葉目以降において,「Beautylabo」の商品である「ホイップヘアカラー」,「ヘアカラー」,「美容液シリーズ」等が紹介されている。
上記からすれば,ホーユー株式会社(申立人)は,主に白髪染め,ブリーチなどヘアカラー製品を製造,販売するメーカーであって,1995年(平成7年)にヘアカラー製品「ビューティラボ」を発売し,その後現在に至るまで,「ビューティラボ」,「BEAUTYLABO」ブランドとして,ヘアカラーリング剤,ヘアケア製品を継続して販売しているものである。
そして,12歳から69歳の一般女性における「ビューティラボ」のブランドの認知率は,全体で2005年(平成17年)の調査では46.1%,2007年(平成19年)では51.6%,2008年(平成20年)では53.9%,2009年(平成21年)では50.5%で,20代及び30代ではいずれの年も70%以上であったことが認められる。
また,かかる事実に加え,公的機関ともいえる名古屋商工会議所の証明内容をあわせ考慮すれば,「ビューティラボ」,「BEAUTYLABO」の文字(語)は,申立人の業務に係る商品(ヘアカラー製品,ヘアケア製品)を表示するものとして,本件商標の出願の日(平成25年9月4日)前から,登録査定日ないし現在において,需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)「メディカル」及び「Medical」について
本件商標は,上記1のとおり,「MedicalBeautyLabo」の文字からなるところ,その構成中の「Medical」の文字(語)及びその片仮名表記である「メディカル」については,申立人提出の証拠によれば,次のとおりである。
ア 甲第8号証は,週刊粧業のウェブページ(写し)であり,「韓国ビューティーマーケット最前線」と題する2012年(平成24年)1月11日付けの記事には,「メディカル化粧品はその定義がまだ確立されておらず,一般的には機能的な成分が入っている化粧品,病院や薬局で流通している化粧品を通称でメディカル化粧品とみなしている。」の記載がある。
イ 甲第10号証は,「seesaa BLOG」と題するウェブページ(写し)であり,2012年(平成24年)12月30日付けの記事に,「メディカル化粧品で,気になる部分を解消!」,「メディカル商品は,・・・肌年齢をあげてしまう原因を解消する事が出来るスキンケアです。」の記載がある。
ウ 甲第7号証は「株式会社アドバンスト・メディカル・ケア」のウェブページ,甲第9号証は「ウェルタス銀座クリニック」のウェブページ,及び甲第11号証は「@cosme」と題するウェブページであり,甲第7号証には「メディカル化粧品事業」,「・・・肌の弱い方でも使えるエイジング化粧品を作りたい,という想いから開発したメディカル化粧品。」の記載,甲第9号証には「治療効果のあるコスメ“メディカル化粧品”」,「メディカル化粧品とは,医療機関専売コスメともいい,病院や美容外科などの医療機関限定で取り扱うことができる化粧品です。」,「メディカル化粧品は,・・・シミやしわ,美白,ニキビ,老化などの改善に高い効果を発揮しますが,・・・」の記載,及び甲第11号証には「メディカルコスメ」の欄に,関連商品としてフェイスクリーム及び化粧水が掲載されている。
エ 以上によれば,「メディカル化粧品」の文字は,本件商標の登録査定日(平成26年1月27日)以前から,「病院や美容外科などの医療機関限定で取り扱うことができる化粧品」を表すものとして使用されている事実があり,また,「メディカルコスメ」と記載し,その関連商品としてフェイスクリーム及び化粧水が紹介されているものである。
そうとすれば,「メディカル」の文字(語),及びその英語表記であり我が国において親しまれた語といえる「Medical」の文字(語)は,「化粧品」との関係においては「医療機関限定で取り扱う商品」という程の意味合いを表すものと理解,認識させるものであって,その商品の品質を表す文字であることから,自他商品の識別標識としての機能を有しないか,又は,極めて弱いものと判断するのが相当である。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標は,「MedicalBeautyLabo」の文字からなり,その構成から,「Medical」,「Beauty」及び「Labo」の各語からなるものといえること,その構成中「Medical」の文字は上記(1)エのとおり,自他商品の識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いものであること,「ビューティラボ」及び「BEAUTYLABO」の文字(語)は上記のとおり,申立人の業務に係る商品(ヘアカラー製品,ヘアケア製品)を表示するものとして,本件商標の出願の日前から登録査定日ないし現在に至るまで,需要者の間に広く認識されているものであること,及びヘアカラー製品,ヘアケア製品は,本件商標の異議申立てに係る指定商品「化粧品」に含まれていることからすれば,本件商標は,その構成中,前述の広く知られた申立人の商標と綴り字を同じくする「BeautyLabo」の文字部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというのが相当である。
そうとすると,本件商標は,その構成中の「BeautyLabo」の文字部分が独立して自他商品及び役務の識別標識としての機能を果たすものと認められ,該文字に相応して「ビューティラボ」の称呼を生じ,申立人のブランドとしての「ビューティラボ(BEAUTYLABO)」の観念を生ずるものと認められる。
イ 他方,引用商標は,前記第2のとおり,引用商標1及び2は「ビューティラボ」,「BEAUTYLABO」の各文字から,引用商標3は「BEAUTY」,「LABO」,「ビューティラボ」の各文字から,引用商標4は「ビューティラボ」,「Beautylabo」の各文字からそれぞれなるものであるから,いずれもそれらの構成文字に相応して「ビューティラボ」の称呼を生じ,申立人のブランドとしての「ビューティラボ(BEAUTYLABO)」の観念を生ずるものである。
ウ してみれば,本件商標と引用商標とは,外観において大文字と小文字などの差異はあるものの,欧文字(BEAUTYLABO)の綴り字を共通にし,「ビューティラボ」の称呼及び申立人のブランドとしての「ビューティラボ(BEAUTYLABO)」の観念を共通にするものであるから,これらを総合してみれば,両者は,互いに相紛らわしい類似の商標と認められる。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務との類否について
本件商標の指定商品である第3類「化粧品」は,引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似するものである。
(4)したがって,本件商標は,第3類「化粧品」について,商標法第4条第1項第11号に該当する。

第5 本件商標権者の意見
上記第4の取消理由に対し,本件商標権者は,要旨以下のように意見を述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出している。
1 外観について
(1)本件商標は,「Medical」,「Beauty」及び「Labo」の3つの英単語をバランスよく配置したものと認識でき,また,3つの文字は共通のデザインが施されているところから,視覚上,一体的なものと看取,把握できるものである。
これに対し,引用商標は,「Beauty」の文字と「Labo」の文字を完全に一語のように結合させ,かつ,「ビューティラボ」も一語で表現された読み仮名を振っており,これは,あえて一語(ワンワード)の商標として構成されているところにその特徴がある。
かかる構成態様,構成文字の相違から,本件商標と引用商標とでは,明らかに外観上,誤認混同を生じさせるおそれはない。
本件商標は,その一体的外観構成態様から,「Beauty Labo」の後半部分のみ分離して認識されるおそれは全くない(乙3)。
2 称呼及び観念について
(1)本件商標は,構成文字に対応して,「メディカルビューティーラボ」の称呼が生じ,他方,引用商標は,「ビューティラボ」の称呼が生じるものである。
本件商標の称呼「メディカルビューティーラボ」は,淀みなく一気に称呼できるものであり,引用商標の称呼「ビューティラボ」とは,構成音数の相違から,容易に聴別できるものであり,両称呼は,非類似のものである。
(2)本件商標の「Medical」は,「メディカル」として,我が国において,カタカナ語(外来語)としても定着している周知の言葉であり,「医療の」,「医学的」といった意味を有する形容詞である(乙4及び乙5)。
形容詞として,「メディカル エクイップメント」(医療機器),「メディカル エレクトロニクス」(医用電子工学),「メディカル エンジニアリング」(医用工学),「メディカル ソーシャルワーカー」(医療社会福祉司),メディカルチェック」(健康診断)といった多数の言葉(用語)を作る。
これらは,すべて一つのまとまった言葉であり,これらから,「メディカル」を略称してしまい,「エクイップメント」,「エレクトロニクス」,「エンジニアリング」,「ソーシャルワーカー」,「チェック」などと略称するようなことは,意味が異なり,ありえない。
次に,「Beauty」は,「ビューティー」として,我が国において,カタカナ語(外来語)としても定着している周知の言葉であり,「美」,「美しさ」,「美人」といった意味を有する言葉である(乙4及び乙5)。
この言葉もまた,「ビューティーアート」(美容),「ビューティーアドバイザー」(美容指導員),「ビューティーコーナー」(化粧品売り場),「ビューティーサロン」(美容院),「ビューティースポット」(つけぼくろ)等々,多数の美容や化粧品に関する言葉を作る。
さらに,「Labo」は,「Laboratory」の略であって,「ラボ」として,カタカナ語(外来語)としても定着している周知の言葉であり,「実験室」,「研究室」,「制作室」といった意味を有する(乙4及び乙5)。
「Medical」,「Beauty」及び「Labo」の3つの言葉が,まとまりよく配置された本件商標からは,「メディカルビューティーラボ」の一連の称呼を生じさせるとともに,「医学的な美(人)の研究室」といったひとつのまとまった観念を容易に想起させる。
これに対して,引用商標は,「Beauty Labo」の部分からは,「美(人)の研究室」,「美の実験室」の観念を想起させるが,本件商標の「医学的な美(人)の研究室」の観念とは明らかに相違するものである。
3 本件商標権者の商号は,「株式会社美人製造研究所」であり,本件商標権者は,この英文商号として,本件商標を使用しているものである。
4 「化粧品」を指定商品とする商標において,「Medical」の有無によって,併存して商標登録されている(乙7)。
これらの先例は,本件商標及び引用商標と同様に,すべて,「化粧品」や「化粧品」の小売を指定商品及び指定役務とするものである。
これらの多数の例に照らしても,商品が「化粧品」であるからといって,本件商標の語頭の「Medical」が論理必然的に略されてしまう,と判断する本件取消理由通知書の判断が不当であることは明らかである。
また,申立人は,登録商標「BEAUTY LABORATORY」についても異議申立を行っているが,当該異議2010-900380号事件において,その取消理由通知の中で,『引用商標1及び2は,「ビューティラボ」の片仮名と「BEAUTYLABO」又は「Beautylabo」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるところ,その構成中の「ラボ」の片仮名は,株式会社岩波書店「広辞苑第六版」の「ラボ」の項において,「ラボラトリーの略。」の記載があり,また,「LABO又はlabo」の文字についても,「研究所。実験室。」の意である「laboratory(研究所)」の略語として一般に使用されていることからすれば,その構成全体として「美の研究所」程の意味合いを想起・連想させるものであるから,引用商標からは,「ビューティラボ」の称呼を生じ,「美の研究所」の観念を生ずるものである。』として,引用商標からは,「美の研究所」の観念が生じると認定されている(乙8等)。
かかる認定に照らせば,引用商標の「BeautyLabo」(ビューティラボ)すなわち,「美の研究所」という観念は,その指定商品「化粧品」,特に,「実験室,研究室で開発された化粧品」についてみれば,商品の性質を具体的に記述する用語とまではいえないとしても,商品の性質と密接な関係をもつ言葉であって,これらの言葉自体は,本体的に,識別力が極めて弱い言葉であると,評価するのが合理的である。
とするならば,引用商標が,この「Beauty Labo」の言葉を含むあらゆる商標に強い排他力を有すると判断するのは妥当ではないことも明らかというべきである。
引用商標は,「Beauty」の文字と,「Labo」の文字を完全に一語のように結合させ,かつ,「ビューティラボ」のこれも一語で表現された読み仮名を振って,あえて,一語(ワンワード)の商標として構成したところにこそ,商標としての識別力があると判断するのが妥当である。
なお,上述のような,引用商標のように,本来的に識別力の弱い言葉については,その言葉を含むあらゆる商標に強い排他性を認めるべきでないとの判断・考え方は,裁判例においても認められている(乙10)。
このような判決の考え方に照らしても,指定商品「化粧品」との関連において,「美の研究室」,「美の実験室」程度の観念を生じさせるにすぎない「BeautyLabo」の言葉からなる引用商標が,すべての「BeautyLabo」の言葉を含む商標に対して排他力を有すると判断することが妥当ではないことは明らかである。
5 取引の実情
(1)引用商標の周知性
申立人提出の引用商標の使用例をみても,引用商標は,「Beauty」の文字と「Labo」の文字を完全に一語のように結合させ,かつ,「ビューティラボ」のこれも一語で表現された読み仮名を振って,あえて,一語(ワンワード)の商標として,一貫して使用されている(甲17及び甲18)。
よって,たとえ,引用商標が周知性を認められるとしても,当該限定された構成の商標として周知性が認められるものにすぎない。
さらに,「化粧品」,特に,「実験室,研究室で開発された化粧品」が存在することも知られている事実を考慮すれば,「美の研究室」,「美の実験室」程度の観念を生じさせるにすぎない引用商標の「BeautyLabo」の言葉のみでは,本来,識別力は極めて弱いものというべきであって,すべての「BeautyLabo」の言葉を含む商標に対して排他力を有すると判断することはそもそも妥当ではない。
対象となる商品について鑑みれば,甲第21号証が示すように,広い範疇の「化粧品」中,周知性が認められている可能性が認められるものは,「染毛剤」及び「ヘアケア剤」にのみ限定されている。また,甲第22号証をみても「ヘアカラーリング商品」としてある程度の認知度があることが示されているにすぎない。
実際に,申立人のホームページをみても,引用商標は,申立人の販売する商品中,「ヘアカラー」の商標としてのみ使用されている(乙17の1)。また,ウィキペディアではあるが,申立人の「ビューティラボ」について,「ビューティラボ(Beautylabo)は,ヘアカラーリング剤メーカーのホーユーが製造・販売する,20代の女性層をターゲットにしたヘアカラーのブランド名である。」と説明する(乙17の2)。
上記の主張は,以下の事実からも明らかというべきである。
すなわち,本件商標権者が簡易調査をおこなっただけでも,28の者が,その会社名,商標に「beauty labo」及び「ビューティーラボ」の言葉それ自体,又は,この言葉を含む言葉を使用している。これらの者は,すべて,「化粧品」の販売や,「美容院」,「エステサロン」などの美容関連サービスに使用しているものである(乙11)。
かかる事実に照らしても,「beautylabo」や「ビューティーラボ」の言葉自体が,商品「化粧品」一般について,申立人を指称する商標と,日本全国の取引者・需要者に認知され,周知のものになっているとは認定できないものである。
(2)本件商標の使用実績
本件商標の使用された化粧品は,本件商標権者のホームページからも認識できるとおり,「肌用の化粧品」であり,申立人の「染毛剤」及び「ヘアケア剤」は取り扱っていない(乙12)。
さらに,本件商標権者の「肌用の化粧品」は,2009年4月より販売が開始されており,東京,大阪,京都,神戸,千葉,名古屋,福岡,横浜,松山,茨木,埼玉,和歌山,藤沢,仙台,浜松,新潟,茅ケ崎,町田,徳島,丸亀,鳥取,岡山,青森等々の日本全国において,著名な百貨店等々において販売されてきている(乙13)。
なお,乙第13号証の2及び乙第18号証に示されるように,本件商標権者の商品は,美容皮膚科・内科医である片桐衣理医師によって監修されているところからも,「Medical」の文字をその商標に含めているものである。
上記のとおり,本件商標権者は,本件商標をその商品「肌用の化粧品」に2009年から現時点に至るまで,約6年にわたって継続して使用してきており,上記商品と申立人の商品の明らかな性質,用途の相違もあって,両商品について誤認・混同が生じたという事実を全く知らない。
また,申立人から,本件商標の使用について,その使用の中止を要求されたという事実もない。
これは,申立人自身,申立人の商標と本件商標権者の本件商標とにおいて,誤認混同の事実が生じているとは認識していないことを端的に示す証左である。
なお,上記誤認混同の事実がないことを示す証拠として,さらに,美容ジャーナリストの加藤智一氏及び化粧品等のPR(広告)スペシャリストの野島裕子氏の陳述書を提出する(乙14及び乙15)。
さらに,本件商標が使用された本件商標権者の肌用化粧品は,2009年の販売開始より,多数の雑誌やテレビ等のメディアでも,継続的に取り上げられてきている(乙16)。
以上のとおり,本件商標と引用商標とにおいて,誤認混同が生じているという事実もない。
6 結語
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観・称呼及び観念のいずれよりみても類似するものではなく,また,市場において,実際に両商標が誤認・混同しているという事実もない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標についてした取消理由は,妥当なものであって,本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第3類「化粧品」については,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
2 本件商標権者の意見について
前記第4の取消理由に対して,本件商標権者は,上記第5のとおり,意見を種々述べているが,以下の理由により採用することができない。
(1)本件商標権者は,本件商標は「Medical」,「Beauty」及び「Labo」の3つの英単語をバランスよく配置したものと認識でき,また,3つの文字は共通のデザインが施されているところから,視覚上,一体的なものと看取,把握できるものである旨主張する。
しかしながら,本件商標は,その構成中,「M」,「B」及び「L」のアルファベットが大文字で表されていることからすれば,これに接する者に「Medical」,「Beauty」及び「Labo」の各語からなるものと,容易に理解,認識させるものである。
そして,本件商標の構成中,「Medical」の欧文字は,「医学の,医療の」等の意味を有する英語であって,「化粧品」との関係においては「医療機関限定で取り扱う商品」という程の意味合いを表すものとして,使用されていることは,前記第4,2(1)に記載のとおりである。
そうとすれば,「Medical」の欧文字は,本件商標の指定商品中「化粧品」について,その商品の品質を表す文字であることから,自他商品の識別標識としての機能を有しないか,又は,極めて弱いものと認められる。
してみれば,本件商標は,その構成中,識別力のない「Medical」の欧文字に比べ,これに接する者に強い印象を与える,「BeautyLabo」の欧文字が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであるから,常に,一体不可分のものとしてのみ,把握,認識されるということができないものである。
(2)本件商標権者は,「引用商標は,申立人の販売する商品中,『ヘアカラー』の商標としてのみ使用されている」,そして「『beautylabo』や「ビューティーラボ」の言葉自体が,商品『化粧品』一般について,申立人を指称する商標として,日本全国の取引者・需要者に認知され,周知のものになっているとは認定できない」旨主張する。
しかしながら,「ビューティラボ」及び「BEAUTYLABO」は,申立人の業務に係る商品(ヘアカラー製品,ヘアケア製品)を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていると認められるものであって,かかる事実は,12歳から69歳の一般女性における「ビューティラボ」のブランドの認知率について,2009年(平成21年)の調査においても,全体で50.5%,20代及び30代ではいずれの年も70%以上であったこと,及び平成22年4月現在の名古屋商工会議所の証明内容からしても,十分裏付けられるものといえる。
そして,「ヘアカラー」は,本件商標の指定商品である「化粧品」に含まれる商品であって,その取引者,需要者を共通にするものである。
(3)本件商標権者は,登録例を挙げ,商品が「化粧品」であるからといって,本件商標の語頭の「Medical」が論理必然的に略されてしまう,と判断する本件取消理由が不当である旨主張する。
しかしながら,「メディカル」又は「medical」を含む商標の登録の事実があるとしても,挙げられた登録例と,本件商標とは,その構成文字等が相違するものであって,事案を異にするというべきである。
よって,商標権者の主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,第3類「化粧品」について,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,商標法第43条の3第2項により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (本件商標)





異議決定日 2014-12-08 
出願番号 商願2013-69109(T2013-69109) 
審決分類 T 1 652・ 261- Z (W03)
T 1 652・ 253- Z (W03)
T 1 652・ 262- Z (W03)
最終処分 取消  
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2014-02-07 
登録番号 商標登録第5648238号(T5648238) 
権利者 株式会社美人製造研究所
商標の称呼 メディカルビューティーラボ、メディカルビューティー、メディカル、ビューティーラボ、ラボ 
代理人 東谷 幸浩 
代理人 芝 哲央 
代理人 林 一好 
代理人 小菅 一弘 
代理人 名古屋国際特許業務法人 
代理人 正林 真之 
代理人 鶴本 祥文 

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