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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1306622 
審判番号 取消2013-670018 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-07-23 
確定日 2015-07-30 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第0989851号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件国際登録第989851号商標(以下「本件商標」という。)は、「CHROME」の欧文字を横書きしてなり、2008年(平成20年)9月8日に国際商標登録出願、第9類「Computers,namely,personal computers,portable computers,handheld computers,notebook computers,microcomputers,desktop computers;computer system components,parts and fittings,namely,motherboards,central processing units (CPUs),base PC modules,computer housing,computer casing,computer chassis,computer frames,computer hardware,namely,semiconductors,microprocessors,graphics processors,integrated circuits,computer chips,computer motherboards,computer graphics boards,computer interface boards,computer accelerator board,circuit boards,computer memory cards,memory chips,blank magnetic data carriers,hard drives,electronic computer locks,computer speakers,disc drives,computer peripherals,computer keyboards,computer printers,computer monitors,multimedia and digital displays,namely,CRT monitors,DVI displays,LCD panels,HDTV displays,GPS navigational displays and automotive visual displays,computer cables,disc and tape controller cards,input devices,namely,scanners,computer mice,joysticks,microphones;computer network adapters,networking switches,routers,modems,power adapters for computers;hand-held devices,namely,personal digital assistants (PDAs),electronic personal organizers,MP3 players;computer software and hardware for management,storage,communications and network management of digital media and enhancement of graphical and video display;pre-recorded computer discs featuring documentary programs,drama,musical entertainment;portable computer carry bags;cases to carry CDs and DVDs;computer firmware,namely,computer utility software and other computer software used to maintain and operate computer system all stored in a computer’s read only memory or elsewhere in the computer’s circuitry,operating system computer software;BIOS computer software.」を指定商品として、平成22年9月10日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成25年7月30日にされている。
2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 商標権者とS3社の関係(乙1)について
(ア)乙第1号証(以下、単に「乙第1号証」という場合は枝番を含む。)には、「Copyright 2013 Via Technologies,Inc」の記載があるが、この法人の住所に関する記載がないところから、当該Via Technologies,Incが商標権者と同一の主体であるかどうかは判然としない。
(イ)被請求人は、乙第1号証の2を根拠として、「2010年当時、本件商標権者(・・・)の子会社であるVIABASE CO.,LTDが持分法により評価している被投資会社がS3 Graphics.,Ltdである」などというが、そもそも乙第1号証の2に係る「年報」が商標権者のものであるという事実が理解できないものであるし、さらに、年報において「本会社の子会社」と説明されるVIABASE CO.,LTDとS3 Graphics.,Ltd(以下「S3社」という。)が何らかの関係を有する会社であることは推測されるとしても、これが直ちに、商標権者とS3社との間に資本関係、経済的関係があることを裏付けることにはならない。
イ ウェブサイトの掲載日(乙2)について
被請求人は、乙第2号証をもって、過去におけるウェブサイトの内容を確認する方法としてアーカイブ業者の存在を挙げるが、アーカイブ業者のウェブサイトにアップロードされたウェブサイトの日付は、アーカイブ業者の管理するアーカイブにアップロードされた日付を表すものであって、そのアップロードされたウェブサイトが実際にいつ掲載されていたのかを確認することはできない。
ウ 商標権者の譲渡行為(乙3及び乙4)について
(ア)乙第3号証においては、商品の単価、合計額のみならず、販売数量までもが抹消されており、販売数量までもが不明である状況においては、商品の販売の事実があったことを客観的に理解することは困難であるから、同号証には証拠価値がないか、あるとしても極めて乏しい。
(イ)被請求人は、「日本国内にある島根富士通株式会社を納品先として販売した」と述べるが、乙第3号証に係る各請求書の記載を見てみるに、請求先は、「島根富士通株式会社」ではなく、「Fujitsu Taiwan Ltd.」と記載されている。そして、「Fujitsu Taiwan Ltd.」の住所は、「19thFl.,No.39,Sec 1,Chung-HwaRd.,Taipei Taiwan」となっている。そうとすれば、これら請求書が示す商品の「譲渡」行為は、台湾の法人である「VIA TECHNOLOGIES,INC.」と「Fujitsu Taiwan Ltd.」の間で、台湾国内で行われたと理解するのが自然であり、「譲渡」行為が日本国内で行われたとみるべき合理的理由は見当たらない。
(ウ)乙第3号証及び乙第4号証(以下、単に「乙第4号証」という場合は枝番を含む。)で使用されているとされる商標は、製品(グラフィックプロセッサ)に刻印されているものも含め「Chrome 430 ULP」であり、該使用商標を構成する各文字は、同書体・同じ大きさでまとまりよく一体的に構成されてなるから、かかる構成においては、全体で一つの造語を表したとみられるものである。してみると、本件商標と使用商標とは、外観・観念・称呼において相違するものであり、社会通念上同一性を有する商標とはいい得ないものである。
(エ)被請求人は、乙第4号証をもって、乙第3号証に係る請求書に記載された「Chorome 430 ULP」の詳細を説明するが、乙第4号証のウェブサイトは、乙第3号証に係る請求書に記載された「VIA TECHNOLOGIES,INC.」のものではないから、乙第3号証に係る請求書において取り扱われた商品が、乙第4号証に掲載された商品と同一の商品であると認めることは困難である。
(オ)被請求人が「Chrome 430 ULP」なる標章を付したとする「グラフィックプロセッサ」なる商品は、最終製品であるコンピュータの製造・販売を行うコンピュータメーカーが、ある特定のグラフィックプロセッサを構成部品として使用するコンピュータのモデルの製造・販売計画に応じて、「グラフィックプロセッサ」の製造会社に、数万個、数十万個単位で大量に発注し、購入するのが一般的であるから、被請求人が主張するように「Chrome 430 UPL」なる商品が日本国内で実際に流通しているとするならば、日本国内における取引業者との商取引を示す資料が存在するはずである。
にもかかわらず、3年以上もの長い期間の間に、たった3度、しかも台湾国内で譲渡した事例しか存在しないという事実に鑑みれば、日本国内においては、当該商品は実質的に流通していなかったと考えるのが自然である。
エ 商標権者のウェブサイトにおける使用(乙5)について
(ア)乙第5号証においては、「VIA VX900」という商標が付されたチップセットなる商品に関する情報が紹介されているのであって、「グラフィックプロセッサ」は、被請求人も自ら認めるように、「完成品」であるとは認められないものである。仮に、これが認められたとしても、「VIA Chrome9 HCM」なるグラフィックプロセッサが、市場において独立して商取引の対象として流通に供されているという事実を、当該証拠から推定することは困難である。商標法第2条第3項第8号にいう「商品」とは、「独立して商取引の目的たりうべき」ものであって動産であるとされているから、これが同号の行為に該当するとはいえない。
(イ)乙第5号証で使用されているとされる商標は「VIA Chrome9 HCM」であり、該使用商標を構成する各文字は、同書体・同じ大きさでまとまりよく一体的に構成されてなるから、かかる構成においては、全体で一つの造語を表したとみられるものである。してみると、本件商標と使用商標とは、外観・観念・称呼において相違するものであり、社会通念上同一性を有する商標とはいい得ないものである。
(ウ)上記ウ(オ)のとおり、「グラフィックプロセッサ」なる商品は、その製造会社に、数万個、数十万個単位で大量に発注し、購入するのが一般的であるから、被請求人が主張するように「VIA Chrome9 HCM」なる商品が日本国内で実際に流通しているとするならば、日本国内における取引業者との商取引を示す資料が存在するはずである。
オ 本件商標の使用許諾(乙6)について
乙第6号証は、本件審判請求を受けて、被請求人の代理人が作成した形式的な文章に、被請求人の代表者が署名をして作成したものと推定され、被請求人とS3社なる会社の関係を何ら具体的・客観的に示すものではない。
しかも、その作成日付は、「2013/10/16」となっているが、かかる日付は本件審判請求の予告登録日である平成25年7月30日よりも後であることは明らかである。
してみれば、S3社なる会社が被請求人の黙示の通常使用権者であったという事実を推認することはできない。
カ S3社のウェブサイトにおける使用(乙7ないし乙9)について
(ア)乙第7号証は、「最新 Chrome 500 シリーズが登場」のように使用している事実が掲載されているのみであり、しかも、このような記述は、一種の宣伝文句あるいはキャッチフレーズとして捉えられるとみるのが自然なものであるから、本件商標の自他商品の識別標識を果たし得る態様の使用とは認められない。
(イ)被請求人は、乙第8号証及び乙第9号証における「グラフィックプロセッサ」について、「Chrome 440 ULP」及び「Chrome 530 GT」と掲載されている事実をもって、本件商標を使用していたと主張するが、該使用商標を構成する各文字は、同書体・同じ大きさでまとまりよく一体的に構成されてなるから、かかる構成においては、全体で一つの造語を表したとみられるものである。してみると、本件商標と使用商標とは、外観・観念・称呼において相違するものであり、社会通念上同一性を有する商標とはいい得ないものである。
(ウ)上記ウ(オ)のとおり、「グラフィックプロセッサ」なる商品は、その製造会社に、数万個、数十万個単位で大量に発注し、購入するのが一般的であるから、被請求人が主張するように「Chrome 440 ULP」及び「Chrome 530 GT」なる商品が日本国内で実際に流通しているとするならば、日本国内における取引業者との商取引を示す資料が存在するはずである。
(エ)乙第9号証には、「S3 Graphicsは、(・・・)Chrome530GT グラフィックスカードを発売している」旨が記載されているが、現実に商品が出荷されていたのか、いつ出荷されたのか、日本で発売されたのか等、具体的に商品が流通した事実を示す証拠の提出がなされていないから、「販売している」事実の真偽は不明である。したがって、当該記載をもって、現実に本件審判請求に係る商品に本件商標がふされて日本国内で販売等された事実を推認することはできない。
(オ)S3社の取り扱う商品のラインアップは、本件審判請求の予告登録日より3年以上前の2010年4月24日時点のものと、現在のものと比較しても、掲載されている内容が全く同じであり(甲3及び甲4)、3年以上にわたって情報が全く更新されていないことになる。
また、被請求人が乙第4号証及び乙第7号証ないし乙第9号証として提出したウェブサイトも、ウェブサイト上に掲載されたと被請求人が主張する各「グラフィックプロセッサ」の情報も、その掲載日から1年以上経過した現在において、全く同じ内容で掲載されており、情報が全く更新されていないと理解されるものである(甲5ないし甲8)。ウェブサイト中の「プレスリリース」に掲載された情報も、2009年5月5日に掲載された情報(しかも日本国内に関する情報ではない)を最後として、以降、現在に至るまで、情報が全く更新されていない(甲9ないし甲12)。
「グラフィックプロセッサ」のような技術集約型産業の業界において、3年以上の長きにわたって商品を紹介するウェブサイトの情報が更新されないのは不自然といわざるを得ず、単に不使用取消審判に対する脆弱性の克服のためにウェブサイトの掲載を単に継続してきたにすぎないものであり、このような使用は、単に取消を免れるための名目的な使用というべきものであって、このような不使用商標を維持すべき要請は存在しない。
キ 結語
以上のとおり、被請求人が提出した乙第1号証、乙第2号証及び乙第6号証は、それ自体、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標が日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって、その指定商品について使用された事実を立証するものではない。
また、乙第3号証ないし乙第5号証及び乙第7号証ないし乙第9号証を総合して勘案してみてもなお前記事実が立証されたと認めることはできない。
そして、被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを何ら主張立証していない。
よって、本件商標は商標法第50条第1項の規定によって、その登録を取り消すべきである。
3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
(1)商標権者による使用の事実
ア 請求書による販売の事実(商標法第2条第3項第2号)
商標権者は、本件商標を付した「グラフィックプロセッサ(graphics processors)型番:Chrome 430ULP 86C955」を日本国内にある島根富士通株式会社を納品(輸送)先として販売した。
乙第3号証は、2010年11月22日、2011年12月8日及び2012年9月13日を発行日とする商標権者からの請求書であり、各請求書には、取引された製品の製品名が「Chrome 430ULP」と記載され、また、商標権者の住所(本件商標の商標登録原簿上の住所と一部表記が異なるものの、行政区画の変更とローマ字での綴りの違いによるものであり、実質的に同一の住所である。)が記載されている。
商標権者の関連会社であるS3社が開設・運営する日本国内の需要者を対象としたウェブサイト中の製品紹介ページに係る2010年4月24日及び2012年9月27日付けのアーカイブ(乙4の1及び乙4の2)には、パソコン向けのグラフィックプロセッサのシリーズ名として、「Chrome 400 ULP シリーズ」の記載があり、同ウェブサイト中、同月28日付けの「Chrome 400 ULP」の紹介ページ(乙4の3)には、「Chrome 400 ULP」の記載とともに、製品の総覧や仕様が記載されており、また、製品であるグラフィックプロセッサそのものにも「Chrome」の文字が刻印されている。
これらの使用商標は、本件商標とは活字体による書体の相互間の使用及びローマ字の大文字と小文字の相互間の使用にとどまるものであり、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
したがって、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内の間に、日本国内において、本件商標を付した「グラフィックプロセッサ」を譲渡しており、少なくとも指定商品「computer hardware」及び「graphics processors」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることは明らかである。
イ 商標権者のウェブサイトによる宣伝広告(商標法第2条第3項第8号)
商標権者のウェブサイトは、日本語表示にも対応しており、日本国内の需要者を対象としたものであることは明らかであるところ、2012年9月28日時点の該ウェブサイトには、商標権者の製品情報のうち、「VIA VX900」なるチップセット(本件商標の指定商品「computer hardware」に含まれる)の構成部品として、「VIA Chrome9 HCM」なるグラフィックプロセッサーを採用している旨の記載がある(乙5)。
上記の使用商標「VIA Chrome9 HCM」は、本件商標とは活字体による書体の相互間の使用及びローマ字の大文字と小文字の相互間の使用に留まるものであり、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
したがって、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内の間に、日本国内において、指定商品「computer hardware」又は「graphics processors」について、商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供しており、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることは明らかである。
(2)通常使用権者による使用の事実
通常使用権者の適格性
S3社は、少なくとも2010年当時、商標権者の関連会社として存在している(乙1)。
乙第6号証によれば、商標権者はS3社に対し、遅くとも2008年頃から現在に至るまで、本件商標権に係る指定商品のうち少なくとも「グラフィックプロセッサ(graphics processors)」について、日本国内での本件商標の使用を許諾している事実が認められる。
これらの事項を総合的に勘案すれば、商標権者は、遅くとも2010年頃から自己の関連会社であるS3社による本件商標の使用行為を知り、かつ、許諾していたものといえるから、S3社は、商標権者から、本件商標の使用について、黙示の許諾を受けている通常使用権者に該当する。
通常使用権者のウェブサイトによる宣伝広告(商標法第2条第3項第8号)
前記アのとおり、通常使用権者であるS3社は、「S3 Graphics」をブランド名とする各種の製品を宣伝広告するウェブサイトを日本国内の需要者を対象として開設しており(乙7)、パソコン向けのグラフィックプロセッサのシリーズ名として、「Chrome *** シリーズ」の製品が多岐にわたって紹介されている記載がある(乙4の2)。
該ウェブサイトにおいて、2012年9月28日時点では、「Chrome 440 ULP」なるグラフィックプロセッサに係る紹介ページが存在し(乙8)、同月27日時点では、「Chrome 530 GT」なるグラフィックカードに係る紹介ページが存在する(乙9)。
上記の各使用商標は、本件商標とは活字体による書体の相互間の使用及びローマ字の大文字と小文字の相互間の使用に留まるものであり、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
したがって、本件商標権の通常使用権者にあたるS3社は、本件審判の請求の登録前3年以内の間に、日本国内において、指定商品「computer hardware」、「graphics processors」及び「graphics boards」について、商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供しており、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることは明らかである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者と通常使用権者により、指定商品「computer hardware」、「graphics processors」及び「graphics boards」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものではない。
4 当審の判断
(1)乙号証について
本件商標の使用について、被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 商標権者及び商標権者と「S3 Graphics.,Ltd」(S3社)との関係について
商標権者(被請求人)は、1987年に米国カリフォルニア州フレモントにて創設、1992年に台湾の台北市に移転した法人であり、2000年には、S3社の前身のグラフィックスチップセット部門を買収し、同S3社と商標権者とで持分を50%ずつ保有するS3社を共同で設立したことが認められる(乙1の1・2)。
また、2010年当時、商標権者の子会社である「VIABASE CO.,LTD」が存在し、該「VIABASE CO.,LTD」が持分法により評価している被投資会社として、S3社が存在していることが認められる(乙1の2)。
イ 使用商標及びその使用時期等について
(ア)乙第3号証は、台湾から日本への輸入に関する商標権者の「Nov 22,2010」、「Dec 08,2011」及び「Sep 13,2012」付けのインボイスであり、輸入(輸送)対象の商品として、「S3 Graphics IC」に係る「Chrome 430ULP ・・・」、輸送先として「Shimane Fujitsu Limited Production Department ・・・,Shimane・・・JAPAN」、請求書送付先として「Fujitsu Taiwan Ltd. ・・・.,Taipei,Taiwan」の記載がある。
(イ)乙第4号証の2は、ウェブサイトの過去の履歴を遡って閲覧するサービス(乙2)により表示された2012年9月27日付けS3社の日本語版のウェブサイトであり、「製品総覧」の見出しの下、「S3 Graphicsノートブック型コンピューター用グラフィックプロセッサ製品」の項に「Chrome 430 ULP」、画面最下段に「copyright 2012 S3 Graphics Co.,Ltd.」の記載がある。
乙第4号証の3は、上記と同じ方法で表示された2012年9月28日付けS3社の日本語版のウェブサイトであり、「Chrome 430 ULP」の表示とともに、該「コンピュータ用グラフィックプロセッサ製品」の写真が表示され、その下に「ウルトラポータブル、ミニノート、ノートPC向けに、・・・、高性能グラフィックス性能をご提供します。また、省電力設計をしている為、1ワット当たりのパフォーマンスは非常に高く、グラフィックス処理による電力消費を大幅に抑える事ができます。」の記載があり、また、製品特徴として、「独自の省電力技術により、電源の小さなモバイル向けソリューションにも、高いグラフィクス性能をご提供することができます」、「・・・前世代のULP GPU製品よりも50%性能向上しました」、「・・・、積極的に省エネ処理を実現」等が記載され、さらに、画面最下段に「copyright 2012 S3 Graphics Co.,Ltd.」の記載がある。
ウ 小活
上記ア及びイ(ア)によれば、商標権者は、2010年11月22日、2011年12月8日及び2012年9月13日付けで、S3社の商品「Chrome 430ULP」を「Shimane Fujitsu Limited Production Department」(日本国島根県在)に輸出し、その代金の請求を「Fujitsu Taiwan Ltd.」(台湾台北市在)に行ったことが認められる。
また、上記ア及びイ(イ)によれば、商標権者の関連会社であると認められるS3社は、日本国内の需要者を対象としたウェブサイトにおいて、「製品総覧」の項に、「S3 Graphicsノートブック型コンピュータ用グラフィックプロセッサ製品」として、「Chrome 430 ULP」を掲載し、その商品写真画像とともに紹介しており、少なくとも2012年9月28日にはその状態であったことが認められる。
(2)本件商標の使用に係る判断
ア 上記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり判断することができる。
(ア)商標権者の関連会社であるS3社は、同社のウェブサイトに、「Chrome 430 ULP」(以下「使用商標」という。)と表示された「コンピュータ用グラフィックプロセッサ製品」を本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という場合がある。)に日本国内において掲載した。そして、商標権者は、上記の同商品を要証期間に日本国内に輸入したと推認することができる。
(イ)上記使用商標は、「Chrome」の欧文字、「430」の数字、「ULP」の欧文字を1文字程度の間隔で「Chrome 430 ULP」と表してなるところ、3桁又は3文字程度の数字又は欧文字は、一般に自己の生産又は販売に係る商品の型式、規格、等級等を表示するための記号、符号として商取引上類型的に使用され得るものであって、グラフィックプロセッサを含む電子応用機械器具等を取扱う業界においても同様といえるものである。また、上記(1)イ(イ)のとおり、使用商標が使用されている商品は、ノートブック型コンピューター用グラフィックプロセッサのうち省電力を特徴(性能)とするものであるところ、「ULP」の欧文字が「超低消費電力」を意味する「ULTRA LOW POWER」の略称として使用されていることが認められる。
そして、取引の実際において使用される商標は、常に登録商標そのものが使用されるものとは限らず、当該登録商標に多少の変更を加えたり、当該登録商標に商品の記号、符号や商品の性能(品質)を表す文字等を付加して使用することなどは、普通に行われているところであり、これは、グラフィックプロセッサを含む電子応用機械器具等を取扱う業界においても同様といえる。
以上よりすれば、使用商標は、その構成中の後半部に位置する「430」と「ULP」の数字及び文字部分が商品の型式、規格、等級又は性能(品質)を表すものとして認識されるものであり、使用商標が該数字及び文字部分を有していることは、本件商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、その構成の変更は、本件商標の識別性に影響を与えない限度にとどまるものというべきである。
よって、本件商標と使用商標は社会通念上同一の商標である。
(ウ)上記のS3社は、商標権者の関連会社であって、かつ、使用商標を同社の「コンピュータ用グラフィックプロセッサ製品」に使用することについて、商標権者に黙示の許諾を与えられていたというべきであり、かつ、S3社が本件商標の通常使用権者であることを商標権者が証明していること(乙6)をも踏まえれば、本件商標に係る通常使用権者とみて差し支えない。
イ そして、上記「コンピュータ用グラフィックプロセッサ製品」は、本件審判の請求に係る指定商品中の「graphics processors」に包含される商品である。
ウ 以上によれば、商標権者による上記商品の日本国内への輸入行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に該当し、通常使用権者が同人のウェブサイトに上記商品を掲載する行為は、同項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、乙第3号証に係る請求書(インボイス)の請求先が台湾に所在する「Fujitsu Taiwan Ltd.」であるから、該請求書が示す商品の「譲渡」行為は日本国外で行われたと理解するのが自然であり、該行為が日本国内で行われたとみるべき合理的理由は見当たらない旨主張している。
しかしながら、商標法第2条第3項が同法上の標章の「使用」の定義を規定した趣旨は、商品に標章が表示される場合において、それが何人の使用と認められるものであるかについては社会通念にゆだねるとともに、同法の目的との関係を考慮し、特に商品の識別標識として機能すると認められる事実についてのみ、これを「使用」であると定義することにより、同法上の「使用」としての法的効果を認めるべき行為の範囲を限定したものであると解される。そして、商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解されるから、その商品が実際に何人によって所有、占有されているとを問わず、同法第2条第3項に該当する行為が行われる限り、その行為は、当初、商品に商標を付した者による商標の「使用」行為であるというべきである。これを本件のような我が国で商標登録を有する外国法人との関係についてみれば、商標権は、国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり、属地主義の原則に支配され、その効力は当該国の領域内においてのみ認められるところから、当該外国法人が商標を付した商品が我が国外において流通している限りは、我が国の商標法の効力は及ばない結果、我が国の商標法上の「使用」として認めることはできないものの、その商品がいったん日本に輸入された場合には、当該輸入行為をとらえ、当該外国法人による同法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として,同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である。(東京高裁平成14年(行ケ)第346号同15年7月14日判決参照)
そうとすれば、本件においては、上記のとおり、台湾の法人である本件商標の商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品について,本件審判請求の予告登録日前3年以内である2010年11月22日、2011年12月8日及び2012年9月13日に、取引先の島根富士通株式会社(Shimane Fujitsu Limited)がこれを輸入したとの事実を認定できるから、該輸入行為をもって,商標法第50条に規定する商標権者による本件商標の「使用」があったものと認めることができるというべきであり、請求人の上記主張は採用できない。
イ また、請求人は、被請求人が本件商標を付したとする商品「グラフィックプロセッサ(graphics processors)」は、数万個、数十万個単位で大量に発注し、購入するのが一般的な商品であるから、本件商標を付したグラフィックプロセッサが日本国内で実際に流通しているとするならば、日本国内における取引業者との商取引が存在するはずであるにもかかわらず、3年以上もの長い期間に、たった3度しかも日本国外で譲渡した事例しか存在しないという事実に鑑みれば、日本国内においては、実際に流通していなかったと考えるのが自然である。さらに、乙第4号証及び乙第7号証ないし乙第9号証のウェブサイトは、その掲載日から1年以上経過した現在において情報が全く更新されておらず、グラフィックプロセッサのような技術集約型産業の業界において、商品を紹介するウェブサイトの情報が長期間更新されないのは不自然であり、単に不使用取消審判に対する脆弱性の克服のためにウェブサイトの掲載を単に継続していたにすぎないものであるから、このような使用は、単に取消を免れるための名目的な使用というべきものであって、このような不使用商標を維持すべき要請は存在しない旨主張している。
しかしながら、島根富士通株式会社による輸入行為が推認できることは、上記アのとおりであるし、日本国内での流通の有無を問題とする点については、該輸入行為をもって商標権者の「使用」と解することができるというべきである。
そして、島根富士通株式会社がS3社の取扱いに係る本件商標を付したグラフィックプロセッサを輸入するにあたり、上記のS3社のウェブサイトを閲覧して商品情報を確認することが可能であったということができるから、S3社が宣伝広告のために自社のウェブサイトに本件商標に係る商品の情報を掲載していた行為は、通常使用権者の「使用」と解することができるというべきであって、ウェブサイトの更新が頻繁に行われていないことをもって、その掲載が不使用取消しを免れるための名目的な使用であるということはできず、その他に名目的な使用であることを推測させる事情は見受けられない。よって、請求人の上記主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者及び通常使用権者がその請求に係る指定商品中「graphics processors」について、本件商標と社会通念上同一といえる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-02-18 
結審通知日 2015-02-23 
審決日 2015-03-27 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 根岸 克弘
酒井 福造
登録日 2008-09-08 
商標の称呼 クロム 
復代理人 右馬埜 大地 
代理人 田中 克郎 
代理人 山口 朔生 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石田 昌彦 
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