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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W091618
管理番号 1306609 
審判番号 無効2015-890022 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-17 
確定日 2015-10-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5573996号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5573996号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5573996号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成24年11月16日に登録出願、第9類、第16類及び第18類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同25年3月21日に登録査定され、同年4月12日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第44号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、商標法第46条第1項第1号に基づき、その登録は無効にすべきである。
2 具体的な理由
(1)「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」の周知・著名性
ア 「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」は、世界中で、最も象徴的で、そして最も愛されているくまのぬいぐるみ(甲6)である。
1926年、イギリスの劇作家アレン・アレクサンダー・ミルンは息子のために作った物語「くまのプーさん」を発表した。ウォルト・ディズニー・カンパニーの設立者であるウォルト・ディズニーは、1961年に「くまのプーさん」に関する映画化権を獲得した。そして、その後の5年の歳月にわたる懸命な努力が、最初の中編アニメーション映画「WINNIE THE POOH AND HONEY TREE(プーさんとはちみつ)」(1966年)に結実した(甲2)。
その後も請求人は、「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」を主人公とする「WINNIE THE POOH AND THE BLUSTERY DAY(プーさんと大あらし)」(1968年)、「WINNIE THE POOH AND TIGGER TOO(プーさんとティガー)」(1974年)、「WINNIE THE POOH AND DAY FOR EEYORE(プーさんとイーヨーのいち日)」(1983年)、「THE TIGGER MOVIE(ティガー・ムービー プーさんの贈りもの)」(2000年)等の映画を製作してきた(甲3)。
また、請求人は映画の他、テレビアニメ「新くまのプーさん」も製作した。当該テレビアニメは1988年から1991年にかけて放映された。日本では、1995年4月7日から1996年3月29日までの金曜7時35分にテレビ東京のミッキー・キッズ枠において放映された。さらに、2004年11月15日から2007年9月30日までディズニー・チャンネルにおいて放映された(甲4)。現在は、全国無料BSテレビ局であるディーライフにおいて放映されている(甲5)。
イ 東京ディズニーランド内には、映画「くまのプーさん」をテーマにしたライド型アトラクションである「プーさんのハニーハント(POOH’S Hunny Hunt)」が設けられている(甲7、甲8)。
当該アトラクションは、2000年9月1日にオープンした。オープン当時、キャラクターとしての「くまのプーさん」は大変人気があり、当該アトラクションは長蛇の列を作る人気アトラクションになり、480分待ちを記録することもあった。ファストパスが導入された現在においてもファストパスを取得するのに数十分単位の待ち時間が発生しており、未だ人気は衰えない(甲9)。
当該アトラクションは、2013年における人気アトラクションランキング及びこの夏(2013年)もっとも混雑しているアトラクションランキングでいずれも第4位であった(甲10、甲11)。
2013年上期の東京ディズニーランドの入園者数は15.9%増の1535万9000人と過去最高を記録した(甲10)。
当該アトラクション内において、プーさんに関する各種キャラクター商品が販売されている(甲12)。
ウ 「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」は以下に示すとおり、各種キャラクターランキングにおいて上位にランクされている(甲13?甲16)。
(ア)子供の好きなキャラクター:第6位(2011年)
(イ)ディズニーの好きなキャラクター:第3位(2013年5月)
(ウ)子供が選ぶ人気キャラクター:第8位(2013年6月)
(エ)母親が選ぶ人気キャラクター:第4位(2013年6月)
(オ)女性によるディズニーキャラクター好感度ランキング:第1位
(カ)大人の男女が好きなくまのキャラクターランキング:第1位
(キ)女性からの商品欲求度ランキング:第1位
エ さらに、請求人は、いわゆるディズニーキャラクターを使用した商品化事業を行っている者として極めて著名であることは特許庁においても顕著な事実であると思料する。
キャラクター「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」についてもこれまでに、印鑑ケース、買い物バッグ、ケーキ、クッキー、玄関マット、エプロン、マグカップ、ハンドルカバー、カーシートカバー、ミニタオル、おむつ、スマートフォン用ケース等の様々な商品が販売されてきた(甲17?甲21)。
当該キャラクター商品には、「WINNIE THE POOH」の文字が表されているもの、くまのプーさんのキャラクターが描かれているもの、「POOH」や「ラブ&Pooh」の文字が表されているもの、くまのプーさんのキャラクターとともにハートの図形が描かれているもの及び赤いハートの図形中に「pooh」の文字が表されているもの等が存在する(甲22?甲31)。
2002年に「キャラクター・データバンク」が実施した、赤ちゃんから30代までを対象として購入キャラクター商品の調査では、「くまのプーさん」が第1位となっている。全国のディズニーストアによる売上げでも、「くまのプーさん」が首位であり、ライセンス別のキャラクター商品のシェア率でも、ミッキーマウスの45パーセントに対し、プーさんは48パーセントと上回った(甲32)。このプーさん人気は日本だけに留まらず、本場アメリカでも同じ現象がみられ、1998年にプーさんのグッズの売上額がはじめてミッキーマウスを抜いたのである(甲32)。
オ 2014年11月13日から12月25日までの間、丸の内及び横浜みなとみらいにおいて、日本初のクリスマス・プロモーションイベントである「DISNEY TIMELESS STORY」が開催された(甲33)。
当該イベントにおいて、「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」のブースは新東京ビル内に設けられ、「LOVE」の文字が表されたハート型のクッションを抱いたくまのプーさんのぬいぐるみが展示された(甲34)。
カ このように、「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」のキャラクターは日本において、本件商標の出願日のはるか前から現在に至るまで長年にわたって親しまれてきた。
また、「WINNIE THE POOH」「POOH」「ラブ&Pooh」及び赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表したキャラクター商品並びにくまのプーさんのキャラクターやくまのプーさんのキャラクターとともにハートの図形が描かれたキャラクター商品が、長年にわたり販売されてきた。
キ このような状況下、本件商標の出願日のはるか前から現在に至るまで、「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」のキャラクターが多くの人々に広く知られた存在となっていること、及び「WINNIE THE POOH」、くまのプーさんのキャラクター、「POOH」、「ラブ&Pooh」、赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表したもの並びにくまのプーさんのキャラクター及びハートの図形が各種キャラクター商品について周知・著名商標となっていることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第10号に関する主張
ア 上記したとおり、「WINNIE THE POOH」、くまのプーさんのキャラクター、「POOH」、「ラブ&Pooh」、赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表したもの並びにくまのプーさんのキャラクター及びハートの図形が各種キャラクター商品について周知・著名商標となっている。
イ 本件商標と請求人の商標との類否
(ア)請求人が販売してきたキャラクター商品中「ペンケース」には、赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表した商標が表示されている(甲28)。
しかして、「ペンケース」に表示された商標からは、「pooh」の文字部分より「プー」の称呼が生ずる。
一方、本件商標は、外観上「i」と「pooh」に分離して認識され得る。また、「商標審査基準」(商標法第3条第1項第5号)によればローマ字の1字は識別力なしとされることから、本件商標中の「i」部分の識別力はないか極めて弱いといえる。
しかして、本件商標は、その要部である「pooh」部分から「プー」の称呼が生ずる。
よって、本件商標は、「ペンケース」に表示された商標と「プー」の称呼を共通にする類似の商標である。
(イ)また、赤いハートの図形は愛情の象徴として用いられることが多いことから、「ペンケース」に表示された商標からは、赤いハートの図形及び「pooh」の文字より「プーさんを愛する」という観念が生じ得る。
一方、本件商標は、全体として一つの商標であると認識される場合には、「私はプーさんを愛する」という観念が生じ得る。
これらの商標から生ずる観念を比較すると、「私は」という主語を明示しているか否かの差異があるのみである。日本語ではしばしば主語が省略されることに鑑みれば、これらの商標から生ずる観念は共通するといえる。
よって、本件商標は、「ペンケース」に表示された商標と観念を共通にする類似の商標である。
(ウ)「商標審査基準」(商標法第4条第1項第10号)によれば、「需要者の間に広く認識された他人の未登録商標と他の文字又は図形等とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その未登録商標と類似するもの」とされる。
本件商標は、請求人の著名商標「pooh」と他の文字「i」及び「LOVE」並びにハートの図形を結合した商標である。
特に、本件商標中の「pooh」の語は、「ふん、ばかな」という意味を有する英単語であるが、日本人に広く知られた英単語ではなく(甲43、甲44)、しかも、プーさんのキャラクター商品が長年にわたり我が国で販売されてきたことから、請求人の出所を表示する標識として極めて強い出所表示力を有するものである。よって、「pooh」の語に接する者は常にこれを請求人との関係で認識すると言っても過言ではない。
しかして、本件商標は請求人の著名商標と類似するといえる。
ウ 「ペンケース」と本件商標の指定商品中第16類「文房具類」は類似する商品である。
エ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第11号に関する主張
ア 請求人は、その所有に係る次の登録商標(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)を引用する(甲35?甲42)。
(ア)登録第4556757号商標
商標の態様 POOH(標準文字)
出願日 平成13年6月7日
設定登録日 平成14年4月5日
指定商品 第16類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
(イ)登録第4788006号商標
商標の態様 POOH(標準文字)
出願日 平成15年8月26日
設定登録日 平成16年7月16日
指定商品及び指定役務 第9類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
(ウ)登録第5129323号商標
商標の態様 POOH(標準文字)
出願日 平成18年9月6日
設定登録日 平成20年4月18日
指定商品及び指定役務 第9類、第16類、第28類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
(エ)登録第5233049号商標
商標の態様 POOH(標準文字)
出願日 平成18年8月1日
設定登録日 平成21年5月22日
指定商品 第3類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
イ 以上のとおり、引用商標は本件商標よりも先願に係る登録商標であり、また、両者の指定商品は抵触する。
ウ 本件商標と引用商標との類似性について
上記(2)で述べたとおり、本件商標は、その要部である「pooh」部分から「プー」の称呼が生ずる。
一方、引用商標は、ローマ字「POOH」からなるから「プー」の称呼が生ずる。
したがって、本件商標は、引用商標と「プー」の称呼を共通にする類似の商標である。
エ 「商標審査基準」(商標法第4条第1項第11号)によれば、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するもの」とされる。
本件商標は、請求人の著名商標「pooh」と他の文字「i」及び「LOVE」並びにハートの図形を結合した商標である。
しかして、本件商標は引用商標と類似するといえる。
オ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号に関する主張
ア 本号の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁 平成10年(行ヒ)第85号)。
イ 本件商標と請求人の周知・著名表示との対比
(ア)上記(3)と同様の理由により、本件商標は請求人の周知・著名表示である「POOH」と類似する。
また、上記(1)のとおり、本件商標中の「pooh」の語は請求人の出所を表示する標識として極めて強い出所表示力を有するものであり、「pooh」の語に接する者は常にこれを請求人との関係で認識する、と言っても過言ではない。
さらに、上記(1)エ及びオのとおり、請求人がくまのプーさんに係る多種のキャラクター商品を多数販売等してきた(甲22?甲26、甲28?甲31、甲34)状況下においては、需要者・取引者が、ハートの図形、「LOVE」及び「pooh」の文字をその構成中に含んだ本件商標に接した場合には、本件商標から請求人の周知・著名表示である「Pooh」、「ラブ&Pooh」並びにくまのプーさんのキャラクター及びハートの図形を連想、想起する可能性は極めて高いというべきである。
(イ)「商標審査基準」(商標法第4条第1項第15号)によれば、他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱われる。
本件商標は、請求人の著名商標「pooh」と他の文字「i」及び「LOVE」並びにハートの図形を結合した商標であるから、本件商標は請求人の業務と出所の混同を生じさせるおそれがあると推認されるものである。
なお、本号は、他人の周知・著名商標のみならず、他人の周知・著名な表示と出所の混同を生ずるおそれのある商標の登録を排除する規定であるから、「商標審査基準」の当該規定は「他人の著名な商標」のみならず、「他人の著名な表示」にも適用されるべきである。
ウ 本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との関連性
請求人は、いわゆるディズニーキャラクターを使用した商品化事業を行っている者としても極めて著名であり、くまのプーさん(WINNIE THE POOH)はそのようなキャラクターの代表的なものである(甲32)。
我が国における、くまのプーさんのキャラクター商品は、被服、靴類、玩具、日用雑貨、食品、家具、電化製品、かばん類、文具等、一般人の日常生活に深い関係を有する幅広い分野の商品に使用されている(甲21)。
本件商標の指定商品中、特に、第9類「電気通信機械器具の部品及び附属品」、第16類「衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,紙類,文房具類,印刷物,写真,写真立て」及び第18類「愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」は、一般人の日常生活に深い関係を有する商品である。したがって、これらは、くまのプーさんのキャラクター商品にとって極めて密接な関係を有する商品である。
エ 以上のような状況下において、請求人の周知・著名表示である「pooh」をそのまま含む本件商標がその指定商品に使用されれば、当該商品はあたかも請求人又はその関連会社の関与する商品であるかのようにその出所につき誤認・混同を生じさせることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号に関する主張
ア 「POOH」及び赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表したものが各種キャラクター商品について請求人の周知・著名商標となっていること及び本件商標が請求人の周知・著名商標と類似することは、上記したとおりである。
イ 「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」のキャラクターが多くの人々に広く知られた存在となっていること、「WINNIE THE POOH」、くまのプーさんのキャラクター、「POOH」、「ラブ&Pooh」、赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表したもの並びにくまのプーさんのキャラクター及びハートの図形が各種キャラクター商品について請求人の周知・著名商標となっていること、並びに本件商標中の「pooh」の語が請求人の出所を表示する標識として極めて強い出所表示力を有することに鑑みれば、赤色のハートの図形及び「pooh」の文字を含む本件商標が「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」と無関係に採択されたとは到底考えられず、請求人の「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」及び「pooh」が有する顧客吸引力を利用しようとするものであることは容易に看取される。
本件商標が請求人の商品と無関係の商品に使用されれば、「WINNIE THE POOH(くまのプーさん)」のキャラクターに愛情をもって接してきた需要者はこれによって欺かれる結果となり、長年にわたり注意深くそのキャラクター商品の品質維持に努めてきた請求人の信用・イメージが大きく損なわれることは見易い道理である。したがって、本件商標の使用は、「不正の目的」を有するというべきである。
ウ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)請求人が使用しているとする商標
請求人は、本件商標が本号に該当するとして次の商標を挙げている(以下、それらをまとめて「請求人商標」という。
ア 「WINNIE THE POOH」(以下「請求人商標1」という。)
イ 「くまのプーさんのキャラクター」(以下「請求人商標2」という。)
ウ 「POOH」(以下「請求人商標3」という。)
エ 「ラブ&Pooh」(以下「請求人商標4」という。)
オ 「赤いハートの図形中に「pooh」の文字を表したもの」(以下「請求人商標5」という。)
カ 「くまのプーさんのキャラクター及びハートの図形」(以下「請求人商標6」という。)
(2)請求人商標の周知・著名性
請求人商標1及び2が、キャラクターとすれば、著作物であると考えられるが、商標であるとするならば、どの商品にどのような態様で使用しているのか説明しなければ、引用商標とは認め難いところである。
請求人商標3ないし6は、請求人商標1及び2に比較して、証拠資料の数が少ないと考えられ、とても、周知・著名商標であるとは考えられない(証拠物件には日付が明確でないもの、本件商標の出願後のものもある。)。
(3)本件商標と請求人商標との類否について
請求人が具体的に引用している請求人商標6「くまのプーさんのキャラクター及びハートの図形」についてのみ、類否について次のとおり反論する。
ア 本件商標は、「i LOVE pooh」の文字よりなり、「LOVE」の文字の背景に赤色のハートマークを配してなり、外観上まとまりよく一体的に表してなるものであり、これより生ずる「アイラブプー」の称呼は、全体として、よどみなく一気一連に称呼し得るものであるから、本件商標からは「アイラブプー」の称呼のみが生じ、「プー」の称呼は生じないと考えられる。
イ そして、そもそも「商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されない」(最高裁 昭和37年(オ)第953号)と判示されており、分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標に限って、分離観察すべき対象とすべきである。
これを本件商標についてみれば、本件商標の文字部分は、「I LOVE pooh」の文字であり、英語の文章であり、「私はうんちが好きです。」の意味合いを生じる。「pooh」は不加算名詞であり、幼児語であり擬音語である。「I LOVE pooh」の語は、まさに幼児にも分る語であり、一度聴いたら忘れない言葉である(研究社 新英和中辞典)。「うんち」は毛嫌いされるが、快便は健康に繋がり、それ程イメージの悪い言葉ではないと考えられる。さらに、「LOVE」の部分に絵文字としての赤いハートマークを配して、「私はうんちが好きです。」ということを強調している。
してみれば、本件商標からは、「私はうんちが好きです。」という特定の意味合いを生じることに間違いはないものと思料する。
以上の実情を勘案すると、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「pooh」の文字部分を分離抽出し、これより生ずる称呼のみをもって取引に当たることはないというのが相当であって、本件商標の場合には、上述のとおり「アイラブプー」の称呼のみが生じるというべきである。
ウ そうすると、本件商標より「プー」の称呼をも生ずるとし、その上で、本件商標と請求人商標6とが称呼上類似するものとした請求人の主張は、妥当なものとはいえない。
また、観念については、本件商標が特定の意味合い「私はうんちが好きです。」を生じる語であるのに対し、請求人商標が「くまのプーサン」程の観念を暗示するものであるとしても、観念上、全く相違し相紛れることはない。
さらに、本件商標と請求人商標6の構成は相違するものであるから、外観上、十分に区別し得るものである。
エ したがって、本件商標と請求人商標6とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても、非類似の商標といわざるを得ない。
オ 前述したとおり、本件商標は、請求人商標が周知・著名商標に該当せず、あるいは、請求人商標とは非類似であり、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標
引用商標は、全て「POOH」の文字からなり、本件の指定商品と同一又は類似の商品を指定して、本件商標より先に登録出願され商標登録されたものである。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記1(3)ア及びイのとおり、「アイラブプー」の称呼のみが生じるというべきである。
そうすると、本件商標より「プー」の称呼をも生ずるとし、その上で、本件商標と引用商標とが称呼上類似するものとした請求人の主張は、妥当なものとはいえない。
また、観念については、本件商標が特定の意味合い「私はうんちが好きです。」を生じる語であるのに対し、引用商標は「くまのプーサン」程の観念を暗示するものであるとしても、観念上、全く相違し相紛れることはない。
さらに、本件商標と引用商標の構成は、相違するものであるから、外観上、十分に区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても、非類似の商標といわざるを得ない。
(3)そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても、類似しない商標といわざるを得ない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした審判請求人の主張は、失当であり認められるべきではない。
3 商標法第4条第1項第15号について
本号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号)。
(1)本件商標と請求人商標との出所混同について
請求人は、最高裁判決例を掲示したのであるから、最高裁判決例にしたがって、理由を述べなければならないところ、何ら、具体的に陳述されていないと考えられる。
例えば、請求人商標(表示)が、商標なのか(商標とすれば、商標が付されている商品は何なのか?)、あるいは著作物であるのか、周知であるのか?著名なのか?明確でないので、答弁のしようがないと考えられる。周知・著名を裏付ける証拠資料も不明確である。
なお、前述したとおり、本件商標は「アイラブプー」のみの称呼が生じ、「私はうんちが好きです。」の観念を生じ、外観もデザイン的にも商標構成としての特徴を有するので、例え、「POOH」が請求人商標(引用商標)であったとしても、本件商標はこれとは非類似であり、出所混同は生じないと考えられる。
上記1及び2のとおり、本件商標と引用商標及び請求人商標とは、称呼非類似であり、外観において相違するものであり、また、観念においても相違するものであるから、これらを総合すれば、両者は非類似と把握されるべきである。
(2)「POOH」の語の独創性の程度について
「POOH」の語は、「うんち」の意味合いを有する語であり、幼児でもわかる擬音語であるので、一度聴いたら忘れられない意味合いを有する語であり、かかる語は、独創性の程度は極めて低いと考えられる。「POOH」の語とクマのぬいぐるみと組み合わさって識別力を獲得したものと解することができる。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品・役務及び請求人商標の使用に係る商品・役務との間の用途等における関連性の程度、取引者・需要者の共通性等について
請求人と被請求人とは、販売地が地理的にも離れており、競合関係にないとするのが相当と考えられる。
(4)まとめ
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者が、引用商標及び請求人商標を直ちに連想・想起するようなことはなく、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用商標及び請求人商標とが非類似の商標であることは、上記で述べたとおりである。
そして、出願人は、「私はうんちが好きです。」の意味合いを有する本件商標を創出し、出願したものであり、例え、請求人といえども、万人が自由に使える「私はうんちが好きです。」の語を英語風にデザインした本件商標の使用・出願をすることを止めさせることはできないものと思料するので、不正の目的をもって使用するものではない。
また、本件商標の出願の際、商標権者は、デザイン的にも全体として一体に把握されており、「アイラブプー」のみの滑らかな称呼を生じるので、本件商標は独自性の優れた商標であり他人の商標と抵触することはないと考え、さらに、代理人(被請求人の代理人)に出願依頼をし、本件商標を出願すれば商標登録される可能性が高いという報告書に基づいて出願したものであることからすれば、不正の目的をもって使用するものであるとするのは言語道断であり、到底認め難いものである。
商標権者は上記肯定的な先行商標調査報告書に基づいて商標登録出願し、特許庁審査段階では拒絶理由通知は発せられず、本件商標は、先行商標調査報告書の結論に沿ってすんなりと商標登録されたものであるので、不正の目的をもって使用するものではない。
また、「不正の目的をもって使用するものであること」を裏付ける具体的証拠も明示されず、憶測だけによる主張は失当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
5 まとめ
以上により、本件商標は請求人が主張する無効理由のいずれにも該当しない。

第4 当審の判断
1 「POOH」の文字(語)について
(1)請求人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、次の事実が認められる。
ア 請求人は、1966年に、くまのぬいぐるみを主人公とするアニメーション映画「WINNIE THE POOH」を制作した(甲2、甲3)。
イ 当該映画は、我が国において、「くまのプーさん」のサブタイトルの下、1977年にビデオ制作された(甲3)。
ウ 2000年9月に、請求人の関連会社(株式会社オリエンタルランド)が運営する東京ディズニーランドに、上記映画の主人公をテーマとするアトラクション「POOH’S Hunny Hunt」がオープンし、同アトラクションは「プーさんのハニーハント」と称されている(甲7?甲11)。
同アトラクションの「POOH’S Hunny Hunt」の表示は、「POOH’S」の文字が他の文字の2倍以上の大きさで表わされている(甲7、甲8)。
エ 同アトラクションは、本件商標の登録出願の日後であるが、2013年の東京ディズニーランドの人気アトランクションランキング、及び2013年夏に混雑しているアトラクションランキングで、いずれも第4位であった(甲10、甲11)。
また、東京ディズニーランド内には、設置時期は確認できないが、上記主人公に関する商品が販売される店舗「POOH CORNER」が設置されている(甲12)。
オ 東京ディズニーランドの入場者数は、「POOH’S Hunny Hunt(プーさんのハニーハント)」がオープンした2000年度は1,730万人であり、翌2001年度からは併設された東京ディズニーシーの入場者と合わせた人数であるが、2001年度が2,205万人、本件商標が登録出願された平成24年(2012年)度は2,750万人、平成26年(2014年)度は3,138万人であった(職権調査:株式会社オリエンタルランドのホームページ)。
カ 「くまのプーさん」は、2002年の購入キャラクター商品調査で第1位であり、2011年の好きなキャラクターについての調査では、子供で第6位、大人で第1位であった(甲32、甲13)。
また、本件商標の登録出願の日後であるが、2013年6月には、「ディズニーキャラクターで好きなもの」で「プー(くまのプーさん)」が第3位に、「キャラクターと子供マーケット調査」で「くまのプーさん」が、子供で第8位、大人で第4位であった(甲14、甲15)。
キ 「くまのプーさん」に係る商品は、2012年の初め頃に、ぬいぐるみ、バッグ、カップ、カーペット、クッションなどが紹介され(甲16)、本件商標の登録出願の日後においても、化粧品、紙おむつ、時計、カステラ、カーテン、タオル、アルバム、はさみなど多種にわたる商品が販売されている(甲18?甲27、ほか)。
そして、「くまのプーさん」に係る商品は、2002年の購入したキャラクター商品で第1位であった(甲32)ことから、同年以前から多種の商品が販売されていたことが推認できる。
(2)上記(1)の事実からすれば、アニメーション映画の主人公であるくまのぬいぐるみの「WINNIE THE POOH」は、我が国では「くまのプーさん」と呼ばれ、本件商標の登録出願の日前から、請求人のキャラクターとして、我が国の需要者の間に極めて広く認識され、その認識は本件商標の登録査定日はもとより、現在も継続しているものと認められる。
そして、該キャラクター「くまのプーさん」は、2000年に1,700万人が入場した東京ディズニーランドにおいて、人気のアトラクションである「POOH’S Hunny Hunt(プーさんのハニーハント)」などで「POOH」と表記されていること(上記(1)ウ?オ)、ウェブページで「プー(くまのプーさん)」と表されていること(上記(1)カ)をあわせ考慮すれば、「POOH」の文字(語)は、本件商標の登録出願の日前から登録査定日はもとより、現在も継続して請求人の業務に係る商品又は役務を表示するもの(キャラクター)として、我が国の需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本号の判断基準について
最高裁判決は、本号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度、イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきであるとしている(前出(上記第2 2(4)、第3 3)最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。
以下、これに沿って判断する。
(2)本件商標
ア 本件商標は、上記第1のとおり、「i」と「pooh」の文字と、その間に「LOVE」の文字を中央に表したハートの図形からなるものであり、その構成文字に相応し「アイラブプー」の称呼を生じ、「私はプー(pooh)が好きです」の意味合いを認識させるものである。
そして、本件商標は、上記1(2)のとおり、「POOH」の文字(語)が本件商標の登録出願の日前から現在も継続して請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものであること、本件商標の構成中「pooh」の文字が「POOH」の文字を小文字で表したものであること、及び「pooh」の文字が他の意味を認識させるものでないことをあわせみれば、「私は(請求人のキャラクターとしての)プー(pooh)が好きです」の観念を生じるものというのが相当である。
イ なお、被請求人は、本件商標は「私はうんちが好きです」の意味合いを生じる旨主張しているが、「pooh」の文字は、確かに「うんち」の意味を有する英語であるものの我が国においてその意味で親しまれた語ではなく、このような意味を認識する者は多くはないものと判断するのが相当であるから、被請求人のかかる主張は採用できない。
(3)当該商標と他人の表示との類似性の程度
本件商標は、上記(2)アのとおり、「私は(請求人のキャラクターとしての)プー(pooh)が好きです」の観念を生じるものであるから、他人の表示である請求人の表示(POOH)との類似の程度は高いものというべきである。
(4)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度
上記1(2)のとおり、「POOH」の文字は、本件商標の登録出願の日前から現在も継続して、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するもの(キャラクター)として、我が国の需要者の間に広く認識されているものである。
また、該文字は、英語の既成語であるが我が国において親しまれた語ではなく、請求人のキャラクターを認識させるものであるから、独創性が低いものとはいえない。
(5)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第9類、第16類及び第18類に属する商標登録原簿に記載のとおり幅広い商品を指定商品とするものであり、他方、請求人の業務に係る商品は、請求人のキャラクター「プー(pooh)」に係る商品だけでも上記1(1)キのとおり、本件商標の登録出願の日前から多種にわたるものと推認でき、また両者に共通する商品も少なくないから、両者の商品の関連性の程度は強く、また取引者及び需要者を共通にする場合が少なくないものといえる。
(6)上記の事情を考慮し、本件商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用した場合、これに接する需要者をして、請求人のキャラクター「プー(pooh)」を、すなわち、いわゆる「くまのプーさん」を連想・想起させ、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
そして、他にこれを覆し得る取引の実情等は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の請求の理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標(色彩は原本参照)



審理終結日 2015-08-10 
結審通知日 2015-08-13 
審決日 2015-08-26 
出願番号 商願2012-93325(T2012-93325) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W091618)
最終処分 成立 
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 今田 三男
手塚 義明
登録日 2013-04-12 
登録番号 商標登録第5573996号(T5573996) 
商標の称呼 アイラブプー、ラブプー、ラブ、プー 
代理人 藤倉 大作 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 中村 稔 
代理人 辻居 幸一 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 松尾 和子 
代理人 佐藤 富徳 
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