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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1306579 
審判番号 無効2014-890092 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-11-28 
確定日 2015-09-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4097277号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4097277号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4097277号商標(以下「本件商標」という。)は、「ADAMS」の欧文字と「アダムス」の片仮名を二段に書してなり、平成8年3月12日に登録出願、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同9年10月24日に登録査定され、同年12月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第79号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録は無効とされるべきである。
2 利害関係
(1)請求人について
米国法人アダムス ゴルフ エルエルシー(Adams Golf,LLC)(旧名称:アダムス ゴルフ インク(Adams Golf,Inc.))(以下「アダムス・ゴルフ」という。)は、1987年に米国テキサス州に設立されたゴルフ製品メーカーであり、会社設立から現在まで継続して商標「ADAMS」をハウスマークとしてゴルフ製品に使用している。
アダムス・ゴルフは、2012年に請求人によって買収され、それ以降、請求人100%出資の子会社として「ADAMS」ブランドのゴルフ製品の製造販売を継続している(甲76、甲77)。
これに伴い、アダムス・ゴルフの所有又は使用に係るすべての商標権は請求人に名義移転され、請求人による一括管理の下でアダムス・ゴルフが使用を継続している。また、アダムス・ゴルフ等が使用するための新規商標は請求人によって登録出願されている。
(2)利害関係について
請求人は、第28類「ゴルフクラブ」などを指定商品として、ロゴマークである「Adams」を商標登録出願(商願2013-94345)したところ、本件商標及び登録第4083882号商標(以下「関連商標」という。)を引用する商標法第4条第1項第11号の拒絶理由が特許庁より通知された。
したがって、請求人は本件審判の請求について利害関係を有する。
なお、請求人は、本件請求と同日付けで関連商標に対しても登録無効審判請求を提出した。
(3)関連訴訟事件
本件に関連する訴訟事件として、東京地裁平成11年(ワ)第11675号商標権侵害差止等請求事件(甲事件)及び平成12年(ワ)第1229号商標使用妨害禁止請求事件(乙事件)(いずれも、甲40)、並びにその控訴審、東京高裁平成14年(ネ)第1555号商標権侵害差止等、商標使用妨害禁止請求控訴事件(甲41)があり、その概要は次のとおりである。
平成11年5月26日に、当時、本件商標の商標権者であり、かつ、本件商標と同一の構成からなり「第28類 運動用具」を指定商品とする商標登録第4083882号(関連商標。甲78の1、2)の商標権者であった株式会社コトブキゴルフ(以下「コトブキゴルフ」という。)及びその代表取締役のA氏(甲55)が、アダムス・ゴルフの製造販売に係るゴルフクラブを輸入・販売するワールドブランズ株式会社に対して関連商標の商標権に基づき「ADAMS」の使用及びアダムス・ゴルフ製品の輸入・販売の差止及び損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴した事件(甲事件)、並びにこれを受けたアダムス・ゴルフが平成12年1月25日に本件商標権承継人のA氏を被告として差止請求等の不存在の確認を求めた事件(乙事件)である。
甲乙両事件の地裁判決(原審)は、コトブキゴルフらによる差止等の請求を権利濫用に当たるとして棄却し(甲40)、さらにコトブキゴルフらの控訴も棄却され(甲41)、当該判決が確定した。当該控訴審の高裁判決において、関連商標の登録は公正な商取引の秩序を乱し、国際信義に反するものであり、商標法第4条第1項第7号公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると認定され、コトブキゴルフらによる差止等請求が商標法第4条第1項第7号に該当する無効理由が存在することが明らかな商標権によるものであって権利濫用に当たると判断された(甲41)。
3 具体的な理由
(1)アダムス・ゴルフによる「ADAMS」の使用及び著名性の獲得
ア 会社沿革
(ア)アダムス・ゴルフは、同社代表者のバイロン・アダムス(Byron Adams)が注文によるゴルフクラブの設計、製造業者として1986年に創業し、1987年に米国テキサス州に設立されたゴルフ製品メーカーである(甲6の1、甲57)。
アダムス・ゴルフは、会社を設立した1987年頃より現在まで継続して、その製造販売に係るゴルフクラブ等に商標「ADAMS」(以下、「引用商標」という。)をハウスマークとして使用している(甲2?甲9、甲42、甲44、甲51、甲57)。米国では遅くとも1988年の使用開始事実に基づいて、「第28類 ゴルフクラブ、ゴルフバッグ、ゴルフヘッドカバー」について商標登録を受けている(甲7)。
(イ)アダムス・ゴルフは、1986年より、少なくとも本件商標の登録異議申立てを行った1998年まで継続して、PGA(The Professional Golfers’ Association of America、全米プロゴルフ協会)が毎年米国で開催する世界最大のゴルフ製品展示会(以下「PGA展示会」という。)に出品するなどして営業活動を行っていた。すなわち、PGA展示会のひとつである「PGA Merchandise Show」へは1986年以降毎年連続して出品、「PGA International Golf Show」にも1992年以降、1993年及び1994年を除き毎年連続して出品している。また、1991年には南カリフォルニアPGA協会開催の「West Cost Golf Show」にも出品した。(甲46?甲51)。
なお、1992年当時のゴルフクラブ製品価格表及びプレスリリースを提出する(甲74、甲75)。
(ウ)アダムス・ゴルフは、1987年の会社設立以来、上記PGA展示会への毎年の出品を除けば殆ど広告宣伝を行わず、高性能、高品質の製品の設計、開発に注力していたが、それでも1992年ないし1993年頃にはゴルフ業界誌の専門家の目に留まり、アダムス・ゴルフ製品の優れた品質が紹介されている(甲58?甲60、甲72、甲73)。
また、プロゴルファー等からアダムス・ゴルフ創業者宛て書信などから、1992年ないし1994年頃、ゴルフ専門家の間ではアダムス・ゴルフの製品が高い評価を得ていたことが認められる(甲64、甲67?甲69)。
イ 新製品フェアウェイウッド「TIGHT LIES」の爆発的ヒット
(ア)1995年4月にアダムス・ゴルフが発売したフェアウェイウッド「TIGHT LIES」(甲3、甲4、甲6の1、2。以下、該製品を単に「TIGHT LIES」という。)は、それまでは有名ゴルフメーカーとまではいえなかったアダムス・ゴルフとそのブランド「ADAMS」を一躍、ゴルフ業界トップクラスの著名ブランドに変身させた。
「TIGHT LIES」は、従来のヘッドの形状を逆にして底辺の周囲を上辺の周囲よりも大きくすることによって、重心を低くしボールの打ち上げを容易にした点に大きな特徴を有する画期的な製品であった(甲14、甲39)。
なお、アダムス・ゴルフは、この製品名「TIGHT LIES」を1995年4月30日の使用開始事実に基づいて「第28類 ゴルフクラブ」に米国で商標登録を取得している(甲43、甲44)。また、「TIGHT LIES」に関連する特許及び意匠を取得(甲13の1?3)し、これら特許番号等が製品に刻印されている(甲6の2)。
(イ)アダムス・ゴルフが、発売後間もない「TIGHT LIES」を1995年7月にラスベガスで開催された「PGA International Golf Show」に出品(甲48)すると、たちまち、ゴルフ業界及びトム・ワトソン、アーノルド・パーマー、リー・トレビノらの著名プロゴルファーから注目されるようになった(甲32?甲34)。
これに続いて、1996年1月26日から同月29日までフロリダ州オーランドで開催された「PGA Merchandise Show」に「TIGHT LIES」が出品されると、アダムス・ゴルフの出展ブース(甲17、甲47)は大人気を博し、「TIGHT LIES」は業界で話題沸騰の爆発的ヒット商品となった(甲35、甲36)。
「ADAMS」ブランドの人気、知名度は、1997年4月17日から同月20日に開催のPGAシニアチャンピョンシップ出場プロによるメタルウッドのブランド別の使用回数の調査報告書において、数ある著名ゴルフ製品ブランドがひしめく中で第3位を占めるほどの大躍進を遂げている(甲19、甲39)。
1996年1月の「PGA Merchandise Show」で一躍業界の脚光を浴びた「TIGHT LIES」は、ゴルフ業界団体「International Network of Golf」によって、1996年のBreakthrough Golf Product of the Year(1996年度の革命的ゴルフ製品賞)を受賞し(甲15、甲16、甲39)、「The New York Times」紙がアダムス・ゴルフと「TIGHT LIES」を画期的構想による製品としてクローズアップする記事を掲載した(甲14、甲39)。
他にも1996年にアダムス・ゴルフ及び同社の製品について取材した記事の例を挙げることができる(甲62、甲63、甲65、甲66)。
また、2000年3月1日に日本国内で発行された「2000年版ゴルフ用品総合カタログ」の「ゴルフクラブ変遷史」(甲38)は、1995年から1997年の間において米国でアダムス・ゴルフの「TIGHT LIES」が非常な注目を受けたことを記載している。
(ウ)「TIGHT LIES」の大ヒットにより、アダムス・ゴルフの売り上げは、それまでは年間に30ないし40万ドル前後に止まっていたが、1995年には一気に100万ドルを突破し、1996年には350万ドル超を記録している。
1995年から1996年にかけての短期間に飛躍的な成長を遂げたアダムス・ゴルフは、年間で最も成長を遂げた非上場米国企業500社を掲載する雑誌「Inc 500」(1997年版)で、500社中211位にランクされ(甲70)、1998年には株式市場ナスダックへの上場を達成した(甲6の1)。
ウ 「ADAMS」の使用態様及び使用商品
アダムス・ゴルフは、1987年の会社設立の頃から現在まで継続して、「TIGHT LIES」をはじめとするゴルフクラブ、キャディーバッグ等自社ゴルフ製品に「ADAMS」をハウスマークとして使用している(甲2?甲9、甲42、甲44、甲51、甲57)。
また、「ADAMS」は、現在日本で販売中のゴルフクラブにも使用されている(甲5)。
エ 日本国内での「ADAMS」製品の販売実績及び知名度
(ア)アダムス・ゴルフの製品は、1991年から日本国内に輸入販売され、1991年12月には100本が販売されている(甲52?甲54)。「TIGHT LIES」が発売された1995年は、10月の300本をはじめ、10月ないし12月に1000本のクラブが販売されている(甲20の1、2、甲30、甲37)。
2000年3月21日発行「ゴルフダイジェスト」は、2000年PGA Show出品の新モデルゴルフ製品中、日本でよく知られているブランドとして、アダムス・ゴルフ及びその製品「アダムス」(ADAMS)を紹介している(甲31)。
また、日本外国特派員協会会員で米国記者協会会員の日本在住の記者は、米国開催の「PGA Merchandise Show」を通じて遅くとも1992年からアダムス・ゴルフの名とその製品(ゴルフクラブ)の存在を認識していた(甲45)。
(イ)これらの事実に加えて、PGA展示会が業界最大のゴルフ製品の見本市であって、日本のゴルフ製品メーカーも出展し、国内からも多数のゴルフ業界関係者が参集し、日本語版の展示会案内書が作成され配布されていること(甲17)、日本で1995年及び1996年に発行された雑誌の紹介記事や広告(甲21?甲23)、1996年に発行された米国の雑誌の記載内容(甲66)などを斟酌すれば、本件商標の登録出願時には、アダムス・ゴルフの使用に係るハウスマーク「ADAMS」は、米国のみならず日本のゴルフ業界でも広く知られた存在であったということができる。
オ 本件商標の登録出願時における「ADAMS」の著名性
以上の事柄に照らせば、アダムス・ゴルフのハウスマーク「ADAMS」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、米国内はもとより日本国内のゴルフ製品の取引者、需要者の間でアダムス・ゴルフの製造販売にかかるゴルフクラブをはじめとするゴルフ製品の出所識別標識として広く認識されていたことが明らかである。
(2)不正目的による登録出願
ア 本件商標は、登録出願人のコトブキゴルフが、アダムス・ゴルフが開発した新製品「TIGHT LIES」が米国で話題を呼び業界の注目を集めていることを知った上で、「ADAMS」が日本国内でも注目されるゴルフブランドとなる可能性が高いとの判断のもとに、アダムス・ゴルフが我が国で「ADAMS」を商標登録していないことを奇貨として、その名声、信用に便乗して不正の利益を得ようとする目的(不正目的)をもって、アダムス・ゴルフの使用に係る商標「ADAMS」と実質的に同一の商標「ADAMS/アダムス」を、アダムス・ゴルフの取り扱い製品と類似する「第25類 運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定してアダムス・ゴルフの了承を得ず無断で登録出願したものである。
コトブキゴルフの代表取締役A氏(甲55)は、本件商標の登録出願日より先立つ1996年1月26日から同29日に米国フロリダ州オーランドで開催された「PGA Merchandise Show」を視察し、その際に、当該PGAショーの話題をさらっていたアダムス・ゴルフの新製品「TIGHT LIES」に注目し、将来、重要なクラブになるかもしれないとの認識を示したことが、当時、A氏と一緒にショーのブースを見てまわった米国ゴルフメーカーのコブラ・ゴルフ・インコーポレテッド(Cobra Golf Incorporated)の創業者による宣誓供述書など(甲27?甲29)から明らかである。
上記のPGA展示会の後、コトブキゴルフは、「ADAMS」及び「アダムス」の文字からなる商標について、ゴルフクラブ等のゴルフ製品と同一又は類似の商品を指定商品とする2件の登録出願を同日に行った。そのうちの1件が本件商標であり、もう1件が関連商標である。
イ アダムス・ゴルフはその子会社を通じて平成10年3月に関連商標及び本件商標に対する登録異議申立を行ったが(甲24、甲79)、遺憾にも登録維持決定がなされた(甲1の2、甲78の2)。この異議決定から間もない平成11年5月にコトブキゴルフ及びA氏が関連商標(訴訟提起当初は関連商標及び本件商標)の商標権に基づき、前掲の関連訴訟の甲事件を提起したのである(甲40、甲41)。
ウ コトブキゴルフ及びその代表者A氏らによる国内未登録の海外のゴルフブランド(以下「外国商標」という。)の無断登録出願は、本件商標及び関連商標に限られたものではなく、それまでも数多く繰り返されてきた(甲10?甲12)。
上記の関連商標の登録異議申立事件(甲24)で、取消理由通知書に対してコトブキゴルフは、登録出願の理由について、コトブキゴルフの仕入れ先の有限会社アダムス(甲56の1、2)のために同社に代わりその卜レードネームを登録出願したものであると主張した(甲26)。しかし、有限会社アダムスからの年間仕入高が少額に止まることからすれば、このような小規模な仕入れ先のためにコトブキゴルフ自らが登録出願したとの説明は不可解としかいえず、信憑性を欠くといわざるを得ないことは、関連訴訟判決が認定しているとおりである(甲40、甲41)。
さらに、上記登録異議事件でコトブキゴルフが有限会社アダムスの製品について実施したと主張した広告(甲26)のうち、「ADAMS」ないし「アダムス」が表示されているものは異議意見書の証拠方法に係る乙第2号証の10?12のみであり、これらはすべて、平成10年3月にアダムス・ゴルフによる上記登録異議申立がなされ、その代理人選任届が提出された日(甲25)よりも後に実施されたものである。それまで一度も実施されなかった広告が平成10年5月及び6月になって初めて、かつ、極めて短期間に3度も集中して行われている。しかも、これらの広告は、有名ゴルフブランド製品の中に混ざって唯一無名の有限会社アダムス製品が片隅に掲載されている奇妙な形式である。当該広告は、アダムス・ゴルフから登録異議申立を受けたコトブキゴルフが関連商標の登録取消を免れることのみを目的として、にわかに実施したものをいわざるを得ない。
コトブキゴルフが、不正目的で関連商標を登録出願した事実は、前掲の関連訴訟の判決(甲40、甲41)に記載されているとおりである。
上記事実に加えて、本件商標が、関連商標と同日に出願された同一の構成からなるものであって、ゴルフクラブ等と類似の商品に使用するものであること、アダムス・ゴルフがその取り扱いに係るゴルフクラブ等について「ADAMS」を登録する際に障害となることが明らかであること(実際に、前述のとおり拒絶理由が通知されている)を斟酌すれば、関連商標のみならず、本件商標の登録出願もまた、関連商標と同様の不正目的で無断登録出願されたものであることが明白である。
(3)本件商標の登録無効理由
ア 本件商標は「ADAMS」の欧文字、及び「アダムス」の片仮名から構成されるものであり、引用商標は「ADAMS」の欧文字から構成されるものである。
本件商標と引用商標は、「ADAMS」の文字部分を共通する外観上類似するものであることに加えて、「アダムス」の称呼及び「アダムス(Adams)」との姓又は社名等の略称の観念を生ずる点で一致する。
本件商標の構成中の「アダムス」の片仮名が「ADAMS」の欧文字の音訳として容易に認識理解できるものであることからすれば、本件商標は引用商標と実質的に同一というべきものであり、両者が類似することは明白である。
本件商標の指定商品は、引用商標が使用されているゴルフクラブ等のゴルフ製品と類似のものである。
さらに、上記の(1)及び(2)で述べた事柄を総合すれば、本件商標は、その登録出願時にはアダムス・ゴルフの製造販売に係るゴルフクラブ等を表示するものとして広く認識されていた引用商標「ADAMS」が日本国内で商標登録されていないことを奇貨として、その名声、信用を利用して不正な利益を得ようとする目的をもって、アダムス・ゴルフの取り扱いに係るゴルフ製品と類似の商品を指定して無断で登録出願されたものであることが明らかである。
したがって、本件商標が公平な取引秩序の維持を旨とする商標法の目的さらに国際信義に反するものであることは明白であるから、公の秩序を害するおそれがある商標に該当する。よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
なお、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当することが明白であるが、本件商標は同号が新設された改正商標法の施行日前に登録出願された商標であるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして無効とすべきである。
すでに述べたとおり、関連訴訟事件の控訴審判決は、関連商標について、商標法第4条第1項第7号に該当する無効理由が存在することが明らかであると認定した(甲41)。
イ さらに本件商標は、その登録出願時にアダムス・ゴルフの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた引用商標と類似し、かつ、引用商標が使用されるゴルフ製品と類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
本件商標は、アダムス・ゴルフの信用を利用して不正な利益を得ようとする目的、すなわち不正競争の目的をもって商標登録を受けたものであるから、除斥期間の適用はない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に違反して登録されたものであるから無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号に該当しないこと
(1)本件では商標法第4条第1項第10号のみを攻撃防御の対象とすべきこと
ア 商標法第4条第1項第7号に関する裁判例
知財高裁平成20年6月26日判決(平成19年(行ケ)第10391号)によれば、本号について次のように解釈基準を示している。
「・・・法4条1項7号の『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ』を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである。
そして,特段の事情があるか否かの判断に当たっても〈中略〉出願人と本来商標登録を受けるべきだと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで、『公の秩序や善良な風俗を害する』特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」
イ 背景と裁判例からの帰結
被請求人は「有限会社アダムス」という名称で1990年(平成2年)4月4日にゴルフ用品の製造販売等を目的として設立された会社である。本件商標は、以下に述べるとおり法人の名称である「アダムス」ないし、その英語表記である「ADAMS」であって、自社の名称を商品に付することを目的として出願・登録された経緯は明らかである。そのうえ、請求人は本件商標と競願関係にあることを認めている。したがって、本件商標が本号に該当する旨の請求人の主張は失当であるといわざるを得ない。
むしろ、請求人は2013年に「ADAMS」という商標を出願しているところ、2013年の時点に至っては、この「ADAMS」という商標は次に述べるように周知であり、もとより全く登録査定が得られる見込みのない出願をしたものである。
すなわち、本件商標の登録査定以降「アダムス」ないし「ADAMS」という商標に関し、「ゴルフ用品総合カタログ」誌に掲載され(乙1?乙12)、2013年当時には、この商標は需要者間に充分周知されたものとなっていた。この「ゴルフ用品総合カタログ」誌は、株式会社ユニバーサルゴルフ社が1974年から毎年1回春頃に発刊しているゴルフ業界では唯一の総合カタログ年鑑である。各年度の年鑑において、被請求人は各種のゴルフクラブの商品を、アダムスゴルフ工房は本件審判請求の当事者とは無関係の事業者で、ゴルフクラブに関するパーツ製作・彫刻等の下請けをしており、それに関する広告を掲載していた。
(2)本件商標は公序良俗に反するものではないこと
仮に、本号について判断するとしても、本件商標は公序良俗に反するものではない。
被請求人は、「Ti-320R」「Ma-3000」「TI-3000」「MAXAMパター」等の名称で商品を販売し、その際、これら商品又は商品の包装に「アダムス」ないし「ADAMS」という文字標章を付して商標として使用していた。これら商品が本件商標の指定商品に含まれることは明らかである。本件商標は、被請求人が自らの商品に社名を付して販売する際にその商標権を保護し、商標の使用者である被請求人の業務上の信用の維持を図るという正当な目的のもとで登録されたものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)平成15年7月16日東京高裁判決(甲41)を本件審判における判断の基礎としてはならないこと
当該東京高裁判決(以下「高裁判決」という。)の判示は、基礎となる事実を誤認したものであって、是認し得るものではない。加えて、そもそも、引用部分は棄却判決理由中の判断であって既判力を生じるものではない。仮にそれに準ずる事実上の影響力・拘束力を認める見解に立っても、判断は本件審判における審理判断を拘束するものではない。
すなわち、原審判決(甲40)は商標権の有効性について敢えて言及していない。この理由は、専門性の高い商標権の有効無効については当事者の手続的利益を確保するべく特許庁の判断を第1次的に仰ぐ必要があり、必要ならば無効審判請求によるべきであると判断したからである。この点で、本件審判請求において商標無効の抗弁を認めた高裁判決に盲従した判断を求めることは、商標権者の手続保障をないがしろにするうえ、商標権者である被請求人側のみが控訴したにもかかわらず、差止請求権等の行使が権利濫用だと言っているにすぎない原審判決に対して、事実上ではあるものの、より不利益な商標無効の抗弁を容れて判示をした高裁判決を前提とする審決を求めることは、控訴の利益を確保するという訴訟法上の不利益変更禁止の原則(民事訴訟法304条)の趣旨に明らかに反するのだから、高裁判決を前提に判断することは許されない。
したがって、請求人が引用する高裁判決の示した商標無効は本件審判における審理判断を拘束するものではない。
2 商標法第4条第1項第10号にも該当しないこと
(1)請求人の主張に対する認否
上記第2の請求人の主張中3(1)記載の事実については不知、及びその評価は争う。
請求人は「需要者の間に広く認識されている商標」であること(いわゆる周知性)を基礎づける事実として概ね次のとおりの事実を主張している。すなわち、第一には、本件商標の登録出願前に被請求人(審決注:請求人の誤記と思われる。)の商品であるゴルフクラブが我が国で販売されたという事実(事実1)である。第2には、本件商標の登録出願前の1996年に海外の展示会や雑誌の記事や広告掲載などを通じて請求人が使用する三角形の意匠に「ADAMS」のロゴを組み合わせた商標(ハウスマーク)が我が国に紹介されたとする事実(事実2)である。
この事実1及び事実2はいずれも不知である。なお、請求人の主張中、本件商標登録後の事情及び一個人の認識に関するものは、本件商標出の登録願時の周知性に影響を与えるものではないので、そもそも認否の限りでないが、不知である。
(2)事実1についての反論
1991年末に請求人の製品であるゴルフクラブ100本が新宿ゴルフに販売されたとの事実については、この事実が仮に認められたとしても数量があまりにも少ないうえ、またどのようなゴルフクラブであったか、それがどのように店頭で販売されたのか、とりわけハウスマークが付されていたのかどうかが立証されておらず、周知性の根拠にはなりえない。
他方、1995年10月から12月に請求人の製品である別のゴルフクラブ計640本が株式会社クリエイト・プロダクトに販売されたとの事実が主張されている。まず、そのゴルフクラブについて「TIGHT LIES」他のモデルであると主張されているものの、ホームページの沿革で紹介されている1995年米国で発売された「TIGHT LIES」(甲6の1、2)と少なくとも同一のモデルであるのは同年10月販売分の300本にすぎない。需要者の間に広く認識されるには、広く全国に流通して末端の消費者がハウスマークを認識している状態になる必要があるが、販売先はわずか1社であるうえ、クリエイト・プロダクトから国内でどのように流通したのかが全く明らかにされていない。例えば、我が国を中継して再輸出されている可能性も否定はできないし、限られた地域(例えば全国の米軍基地内)で販売されたにすぎない可能性も否定はできない。したがって国内でハウスマークの付されたゴルフクラブが広く流通したとの証左はない。
むしろ、1995年12月号の雑誌記事(甲21)の本文には「これから発売するアダムスというチタンウッド」という記述があり、当該雑誌が発行された当時、請求人の製品をまだ販売していなかったことが読み取れるばかりか、単にその程度の紹介では「アダムス」という呼称が出所識別性を獲得する程度には至っていない。また、1996年3月1日発行のゴルフ用品総合カタログ(甲22、甲23)において、請求人製品であるドライバーの広告や記事が掲載されていたが、ゴルフクラブだけで総計410ページにもおよぶ膨大な収録数の当該カタログのなかで、請求人の広告は第231ページ目の約3分の1の枠に、記事も第58ページ目の左下6分の1程度の枠にそれぞれごく小さな写真でゴルフクラブのヘッド部分が掲載されているにすぎない。いずれもハウスマークはゴルフクラブ写真のヘッド部分に辛うじて見える程度であって、広告宣伝の方法は非常に目立たないものだった。このように記事・広告等は非常に小さく情報量も少ないうえ、回数も2回と少ない。このような掲載方法等を勘案したうえで、更に当該カタログ発行から期間がほとんど経っていないことから合理的に考えても、同月12日の本件商標出願時においては、我が国では未だ需要者の間に請求人の商標が広く認識されるという状況は生じてはいなかったとみるべきである。
(3)事実2についての反論
請求人の立論は、概ね東京高裁平成4年2月26日判決(平成3年(行ケ)第29号、以下「平成4年判決」という。)に依っているが、次のとおり、同判決は本件審判に何ら影響を及ぼさず、また、請求人の主張、立証によっては、本件商標の登録出願時、ハウスマークは国内での周知性を獲得していない。
ア 平成4年判決の事案で問題になった製品・役務は、かなり専門性の高いものであった。具体的には、インターネットもパソコンも携帯電話もまだ普及していなかった昭和55年当時における米国を中心に頒布されていたコンピューター新聞雑誌の「COMPUTERWORLD」という名称の周知性が問題になった事案であった。この判決は「コンピューターが、そのハードウェア、ソフトウェア、関連機器を含め、アメリカで、開発、企業化され発展して来たものであり、従来、我が国のコンピューター、その関連機器、ソフトウェア等の製造、販売関係の企業、技術者、コンピューターを利用する企業、技術者は、アメリカにおけるコンピューターをめぐる情報に大きな関心を払って来たこと」を前提として、我が国では当該新聞雑誌がほとんど流通していなかったにもかかわらず、当該新聞雑誌が長年発行されている経緯や、本国での発行部数などを参照しながら、世界的に情報が偏在していることを前提に「当時『COMPUTERWORLD』紙が、アメリカのコンピューター関連の情報紙として、少なくとも最も権威があるものの一つであると認識されていた」として需要者と指定商品との関係で需要者の行動を予測した判断をしている。すなわち、この判決は具体的に需要者としてどのような人々が想定されているか、情報等にアクセスをしていく過程で海外の情報等に接する機会や必要性がどの程度あるのか、その情報等に関する権威付けはどの程度かという観点から、現実的に認定して、需要者が商標によって商品ないし役務を識別していたかという点から例外的に周知性を認めている。
なぜ例外的かと言えば、商標について外国の展示会や新聞・雑誌等での紹介だけで周知性を安易に認めるならば、現在のようにあらゆる世界中の情報にインターネットでアクセス可能な状態では、およそ世界のどこかのウェブサイトで紹介されてさえいれば、周知性を獲得してしまうこととなって、商標法が属地主義としていることと相容れないからである。
本件商標の指定商品「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」に関する商標について、平成4年判決が及ぶとすれば、例えば、想定される需要者は国内では競技人口の非常に少ない競技種目で、国内で当該競技に適した衣服や靴の流通がほとんどなく、特定の国や地域でしかその用品を入手できないような場合である。この場合、運動用具を求めようとする需要者は海外にアクセスするしか方法がないからである。
イ 他方、本件商標の指定商品の需要者は一般的なゴルフ愛好家である。本件商標が出願された当時はインターネットがまだほとんど一般家庭に入っていなかった時代であるが、日本国内ではいくつものゴルフ雑誌や用品カタログ雑誌が発刊されていた(甲26)。したがって、平成4年判決の前提とするような情報や物が米国に偏在しているという状況もそもそもなかったのである。請求人の製造する「TIGHT LIES」というドライバーが大々的に世に出され、請求人のハウスマークが米国外のゴルフファンに認知されるようになったのは1996年1月に開催された米国でのPGA展示会が契機であったことは、請求人自身が認めるところであるが、本件商標出願までの期間はわずか1ないし2か月であり、当該商品が日本国内で十分な権威付けがあったとする特段の事情については全く立証がない。したがって、平成4年判決が基礎とするような例外的な事情はないので、たとえ海外のPGA展示会で注目を集めていて、たとえそれに出席した我が国の一部の業界関係者が請求人のハウスマークを認知したからといって、直ちに国内で周知性を獲得したと認めるには足らない。
雑誌の記事や広告掲載についても、どの程度の部数がどの地域に発行されたのか、それが末端のゴルフ愛好家である需要者にとってどの程度のインパクトがあったのか等についての立証はない。そのうえ、本件商標の登録出願後の刊行物(甲66)で請求人のハウスマーク等を含む記事は、周知性に影響をあたえるものではない。
例えば、出願前の雑誌記事(甲21)の本文には「これから発売するアダムスというチタンウッド」としか記載がなく、ゴルフクラブ(ウッドドライバー)の一種であることが分かるものの、愛好者にとってはその程度の認識しか出来ない。このような極めて簡潔で評価もないような一回限りの記載がされたからといって、国内紹介による周知性が認められるとするのはあまりにも無理がある。
以上より、本件商標の登録出願当時、請求人のハウスマークは未だに我が国で周知ではなかったことが明らかである。
(4)結論
よって、事実1・事実2に基づいて判断したとしても、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 本件商標の登録出願は不当な目的でされたものでないこと
(1)外国における類似商標を認知してから日本国内での当該商標が周知性を獲得するまでの間に商標登録をすることを商標法が認めていること
平成4年判決によれば、我が国でオリジナルの商標を使用する者が、外国で類似商標を認知した場合、その類似商標が国内で周知性を獲得するまでの間に、自らの商標を守るべく商標登録をすることが適法であることを当然の前提としている。なぜならば、我が国では先願主義を採用し、商標の使用開始後いつまでに出願すべきであるか条文上は何ら期間制限が規定されていないからである。したがって、商標の使用者は、需要者において商品の出所の混同が生じていない段階では、自己の営業上の利益も保全するために、使用にかかる商標を適法に登録する権利があることは、商標法が保障しているところである。
妨害目的の商標を取得するためだけに名目上の会社を設立して商標を取得するなど一見して不当な目的がある場合は格別として、自己の商標と外国の類似商標がたまたま競願関係になることが予想される場合に、先手を打って自己の商標を取得して防護する利益は、まさに商標法が保護する利益であって、何ら責められるべき筋合いではない。
(2)適法に本件商標が出願されていること
関連訴訟事件の原審判決(甲40)によれば、被請求人代表者であり、本件商標の出願人であるコトブキゴルフの代表を当時務めていたA氏が、1996年1月の米国PGA展示会で「タイトライズ製品は、将来重要なゴルフクラブになるかもしれない」と述べていたことが認定されている。被請求人はこの発言の存否について再度否認するが、仮に判決の認定どおりであったとしても、被請求人の設立時期、活動状況、事業分野を斟酌すれば、社名と競合する海外製品を知った際に競争関係に発展することに対する危機感を抱くのが当然であって、なんら不当目的を基礎づけるような発言とは評価できない。
そうとすれば、請求人の引用商標が我が国で周知性を獲得する前に、本件商標を出願したことは極めて適法であって、不当な目的でされたものでない。
(3)結論
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 結語
以上のとおり、本件商標には請求人が主張するような無効事由は存在しない。

第4 当審の判断
1 利害関係
請求人が本件審判を請求することの利害関係については当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有するものと認める。
2 請求人及び被請求人提出の証拠、両人の主張及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。
(1)アダムス・ゴルフは、同社の代表者B氏が1987年に米国テキサス州に設立したゴルフクラブをはじめとするゴルフ用品メーカーである(甲6の1)。
(2)アダムス・ゴルフは、1988年から2000年まで継続して、ゴルフクラブについて、商標「ADAMS」(引用商標)を使用していた(甲6の1、2、甲7、甲8、甲21?甲23、甲31、甲38)。また、アダムス・ゴルフは、1996年(平成8年)1月から、衣類についても引用商標を使用していた(甲9)。
そして、アダムス・ゴルフは、2013年頃から「ADAMS」を筆記体で表した商標「Adams」をゴルフクラブに使用している(甲5、甲6の1)ことから、引用商標を1988年から現在まで継続して使用していると推認して差し支えない。
(3)アダムス・ゴルフは、1995年4月に生産を開始した「TIGHT LIES」(甲6の1、2)を、1996年(平成8年)1月26日ないし29日にフロリダ州オーランドで開催された「PGAマーチャンダイズショー(PGA Merchandise Show)」(以下「オーランド展示会」という。)にブースを設けて出品した(甲33、甲35、甲36、甲47)。
オーランド展示会は、毎年4万人を超えるプロゴルファー、バイヤー、及び業界関係者が参加しており、会場では日本語版の案内書も配布される展示会である(甲16、甲17)。
(4)「TIGHT LIES」は、1995年にトム・ワトソン、アーノルド・パーマー、リー・トレビノに使用されていた(甲32?甲34)
(5)そして、1995年4月に生産を開始した「TIGHT LIES」のクラブヘッドには引用商標が付されている(甲6の1、2)ことから、上述の「TIGHT LIES」には引用商標が付されていたと推認できる。
(6)なお、「TIGHT LIES」は、米国の「International Network of Golf」という団体から、1996年度の革命的ゴルフ製品賞(Breakthrough Golf Product of the Year)を受賞した(甲15、甲16)。
(7)本件商標の商標権者(出願人)であったコトブキゴルフは、ゴルフ用品をはじめとするスポーツ用品の輸入、卸、小売販売等を行う法人であり、本件商標の登録出願当時の代表取締役A氏は、オーランド展示会を視察した(甲1の2、職権調査、甲40、甲27)。
(8)コトブキゴルフは、平成8年3月12日に本件商標及び本件商標と同一の構成態様からなる関連商標の登録出願をした(甲1の2、職権調査)。
(9)コトブキゴルフは、外国のゴルフクラブメーカーの商標の登録出願を当該メーカーに無断で商標登録出願している(甲10の項番5、甲12)。
(10)被請求人(商標権者)は、2000年ないし2002年及び2004年の各年3月1日発行と主張する、カタログに、「ADAMS」の商標を付してゴルフクラブの広告を掲載した(乙2?乙4、乙6)。
(11)コトブキゴルフ及びA氏は、遅くとも平成11年12月13日前に我が国でアダムス・ゴルフの(引用商標が付されている、)ゴルフクラブを輸入・販売するワールドブランズ株式会社に対し、関連商標に基づき商標権侵害差止等を提訴した(甲40)。
3 商標法第4条第1項第7号について
(1)本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。(知財高裁 平成17(行ケ)第10349号)
(2)本件商標と引用商標について
ア 本件商標は上記第1のとおり「ADAMS」の欧文字と「アダムス」の片仮名からなり、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品とするものであり、引用商標は上記第2の3(1)ア(ア)のとおり「ADAMS」の欧文字からなり、上記2(2)のとおり、ゴルフクラブ、衣類等(以下「使用商品」という。)に使用されているものである。
イ 本件商標と引用商標を比較すると、本件商標の構成中、「ADAMS」の文字部分と引用商標は同一の文字構成であり、また、片仮名「アダムス」は欧文字「ADAMS」の読みを特定したものといえ、引用商標はその構成文字から「アダムス」の称呼を生じるものであるから、両商標は片仮名の有無の差異はあるものの、実質的に同一のものと認識されるものとみるのが相当である。
そして、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品とは、いずれもスポーツに関連する商品である点、及び衣類である点で一致する極めて関連性の高い商品である。
(3)本件商標の登録出願の目的について
上記2の事実によれば、アダムス・ゴルフは平成8年1月にはゴルフクラブや衣類等に引用商標を使用していたこと、アダムス・ゴルフは平成8年1月に開催されたオーランド展示会にブースを設け引用商標が付されたゴルフクラブ「TIGHT LIES」を出品したこと、コトブキゴルフの代表者であったA氏は同展示会を視察したこと、コトブキゴルフは同展示会直後の平成8年3月に本件商標及び本件商標と同一の文字構成からなる関連商標を登録出願したこと、コトブキゴルフは外国のゴルフクラブメーカーの商標の登録出願を当該メーカーに無断で商標登録出願していることが認められる。
そして、上記(2)のとおり本件商標と引用商標が実質的に同一のものと認識されるものであって、両商標の指定商品と使用商品が極めて関連性の高い商品であること、及びコトブキゴルフが本件商標と同一の構成態様からなる関連商標に基づきアダムス・ゴルフのゴルフクラブを輸入・販売する者に対して商標権侵害差止等を提訴したことをあわせみれば、本件商標の商標権者(出願人)であったコトブキゴルフは、アダムス・ゴルフがゴルフクラブや衣類に引用商標「ADAMS」を使用していることを知ったうえで、引用商標が我が国で商標登録されていないことを奇貨として、取得した商標権を高額で買い取らせたり、アダムス・ゴルフの国内参入を阻止したり、輸入総代理店等の有利な立場を得たりする目的で本件商標を登録出願したものであって、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、上記(1)の「e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当するものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標といわざるをえない。
(4)被請求人の主張について
被請求人は、本件商標は自社の名称「アダムス」ないしその英語表記「ADAMS」を商品に使用する正当な目的で出願・登録されたものである旨主張し、その証拠として乙第1号証ないし乙第12号証を提出しているが、それら乙号証のうち被請求人の広告と認められるのは、乙第2号証ないし乙第4号証及び乙第6号証のみであって、いずれもゴルフクラブ、シャフトの広告であり、本件商標の指定商品「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」の広告ではなく、本件商標をその指定商品に使用していることさえも立証されていないから、被請求人のかかる主張はにわかには信じ難く、上記判断を覆すことはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものであって、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-08-04 
結審通知日 2015-08-06 
審決日 2015-08-20 
出願番号 商願平8-25236 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立 
前審関与審査官 小出 浩子 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 1997-12-26 
登録番号 商標登録第4097277号(T4097277) 
商標の称呼 アダムス 
代理人 甲本 晃啓 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 
代理人 金 帝憲 
代理人 佐久間 剛 
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