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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
審判 全部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1305205 
異議申立番号 異議2015-900010 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-01-16 
確定日 2015-09-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5710748号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5710748号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5710748号商標(以下「本件商標」という。)は、「Merci Buffet」の欧文字及び「メルシービュッフェ」の片仮名を2段に書してなり、平成26年5月28日に登録出願、第30類「茶,コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆」を指定商品として、同年9月9日に登録査定、同年10月17日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下の3件(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第586886号商標(以下「引用商標1」という。)は、「メルシー」の片仮名を書してなり、昭和35年6月20日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同37年5月17日に設定登録され、その後、平成14年5月1日に指定商品を、第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第2705767号商標(以下「引用商標2」という。)は、「MERCI」の欧文字を書してなり、平成2年12月25日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同7年3月31日に設定登録され、その後、同17年3月23日に指定商品を、第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)国際登録第320574号商標(以下「引用商標3」という。)は、「Merci」の欧文字を書してなり、2013年7月11日に国際商標登録出願(事後指定)、第30類「Chocolate, sugar confectionery」を指定商品として、平成27年(2015年)2月6日に設定登録されたものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商品の抵触について
本件商標の指定商品は、上記1のとおりであり、引用商標の指定商品は、上記2のとおりである。
したがって、本件商標の指定商品中、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」は、引用商標の指定商品とそれぞれ抵触する。
イ 商標の抵触について
(ア)本件商標の称呼及び観念について
本件商標は、欧文字で「Merci」及び「Buffet」の各語を一文字分の空白を介して左横書きし、その下に片仮名で「メルシービュッフェ」と併記してなるものである。
ここで「Buffet」、「ビュッフェ」の語は、語源がフランス語であるが、英語でも多用されている語であって、我が国においては「立食形式の食事。簡易食堂。」の意味で一般的であり、現に国語辞典にもそのように掲載されている。一方、「メルシー」の語はフランス語で「ありがとう」の意味である。
したがって、本件商標中の「Buffet」、「ビュッフェ」の語は「立食形式の食事。簡易食堂。」を意味しており、指定商品との関係においては販売・提供の形態であって、識別力が無いか、あっても極めて弱いものといえる。
一方、「メルシー」の語はフランス語の成語として一般的とはいえ、「ありがとう」の意は食品には全く無関係な言葉である以上、その識別力を否定する理由は存在しない。
その上、本件商標は、その外観的構成上、「Merci」と「Buffet」の文字は明瞭に分離している。
そうとすれば、そもそも本件商標は「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している」ものには該当しないし、「Buffet」、「ビュッフェ」の文字部分の識別力が極めて脆弱である以上、該部分から「出所識別標識としての称呼、観念が生じない」から、指定商品との関係においては「商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許される」とするのが相当である。
よって、本件商標からは「メルシー」単独の称呼及び「ありがとう」の観念が生じる。
(イ)対比
本件商標の外観、称呼、観念の各要素を引用商標と対比すると、本件商標は欧文字で「Merci」と「Buffet」の各語を一文字分の空白を介して左横書きし、その下に片仮名で「メルシービュッフェ」と併記してなるところ、その構成中「Merci」及び「メルシー」の文字部分は引用商標と同一である。
なお、引用商標1は手書風の外観を呈しているが、引用商標1の出願が標準文字制度の存在しなかった1960年であることを考慮すれば、かかる差異は構成文字が完全に一致することに比べればその類似性を否定するほどの差異ではない。
また、引用商標2及び同3は何れも欧文字で「MERCI」、「Merci」と書してなるものであるから、本件商標の構成中「Merci」の文字部分とは同一である。
称呼については、前記(ア)のとおり、本件商標よりは「メルシー」単独の称呼を生じ得るものであり、この称呼と引用商標から生じる「メルシー」の称呼は完全に一致する。
観念についても、本件商標よりは「メルシー」の文字部分に応じて「ありがとう」単独の観念を生じるものであり、この観念と引用商標から生じる「ありがとう」の観念は完全に一致する。
したがって、本件商標と引用商標は外観において類似し、称呼及び観念は完全に一致する。
(ウ)小括
このように、本件商標と引用商標は、その外観が類似し、称呼及び観念については同一であるから、両商標は彼此相紛らわしい類似の商標とするのが相当であり、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 引用商標の周知・著名性
引用商標2及び同3は、ドイツにおいて1965年に使用が開始されて以降、1966年にオーストリア、1979年にオランダ、ベルギーなど欧州各国でも順次使用され、以来、永年に渡る使用を継続した結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、既に申立人の製造販売する「チョコレート菓子,チョコレートキャンディ,プラリーヌ」に係る商標として外国の一般消費者の間で周知・著名となっていることは、申立人の請求に係る欧州共同体商標の異議申立事件において提出された各種証拠(甲7ないし甲10)により、OHIMの裁定委員会も認めていることであるから、引用商標2及び同3は、申立人の業務にかかる商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、外国における需要者の間で広く認識されていた。
イ 本件商標と引用商標との類否
本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、その構成中「Buffet」、「ビュッフェ」の語は「立食形式の食事。簡易食堂。」の意味合いで我が国に浸透しているものである。
そうとすれば、本件商標は、申立人の外国周知・著名商標に、販売・提供の形態を付加したにすぎないものであって、引用商標に類似することは明白である。
不正の目的について
引用商標2及び同3が、本件商標の登録出願時において、既に少なくともドイツ・オランダで周知・著名であったことは前記のとおりである。そして、その周知・著名性の程度はOHIMにおいても認定されているように極めて高いものであるから、我が国で菓子の製造・販売に従事する当業者であれば引用商標2及び同3が申立人の業務にかかる商品を表示する商標であることを認識していたと考えるのが自然である。
そうとすれば、商標権者において、引用商標2及び同3と極めて類似する本件商標をあえて採用し、登録出願したのは、ドイツやオランダで広く認識されている引用商標2及び同3の名声に便乗する不正の目的をもってしたものと考えるのが自然である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品として少なくともドイツ、オランダにおいて広く認識された引用商標2及び同3と類似の商標であって、不正の目的をもって出願・登録されたものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)むすび
以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、「Merci Buffet」の欧文字及び「メルシービュッフェ」の片仮名を2段に書してなるところ、該欧文字部分は「Merci」の文字と「Buffet」の文字との間が一文字程度の間隔があるとしても、構成各文字は同じ書体、同じ大きさで表されており、下段の片仮名はその表音を表したものとして、外観上まとまり良く一体的に看取し得るものである。
そして、本件商標のかかる構成から生じる「メルシービュッフェ」の称呼も格別冗長とはいえず、一気一連に称呼し得るものである。
ところで、「Merci(メルシー)」の語は「ありがとう」の意味を有するフランス語として、また、「Buffet(ビュッフェ)」の語は「立食形式の食事。簡易食堂。」の意味を有するフランス語として、我が国において、いずれも親しまれた外来語ではあるが、上記構成態様の本件商標にあっては、「Merci(メルシー)」の文字部分と「Buffet(ビュッフェ)」の文字部分を分離した上で、「Merci(メルシー)」の文字部分が自他商品の識別機能を果たすものとして支配的な印象を与えるとして、当該部分に相応した称呼や観念をもって取引に資されることがあるとすべき理由はみいだせない。さらに、「Buffet(ビュッフェ)」の文字部分が出所識別標識としての称呼・観念を生じないと認め得る事情を見出すことはできないものである。
そうすると、本件商標は、一連に書された構成全体をもって一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが自然であって、その構成文字全体に相応して、「メルシービュッフェ」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない造語よりなるものというのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、「メルシー」、「MERCI」及び「Merci」の文字からなるところ、いずれも「ありがとう」の意味を表す成語として、我が国において広く親しまれた語であることから、その構成文字に相応し「メルシー」の称呼を生じるものであり、「ありがとう」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標から生じる「メルシービュッフェ」の称呼と引用商標から生じる「メルシー」の称呼とを比較すると、両者はその構成音数及び「ビュッフェ」の称呼の有無において明らかな差異を有するものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼しても相紛れるおそれのないものである。
また、本件商標と引用商標とは、外観においては、それぞれの構成文字に明らかな差異を有するから相紛れるおそれのないものであり、観念においては、本件商標から特定の観念は生じないものであるから、「ありがとう」の観念を生じる引用商標とは明らかに区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、かつ、他に出所の混同を生じさせるおそれがあるなど、両者が類似するというべき特段の理由は見いだせないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標の周知性について
申立人は、引用商標2及び同3が、申立人の業務に係る商品として少なくともドイツ、オランダにおいて広く認識された商標であると主張し、欧州共同体における別件異議申立の異議認容決定(写し)、申立人の法律顧問・役員の別件異議申立で提出された宣誓供述書(同宣誓供述書の添付物を含む)(写し)及び申立人の商標「Merci」が欧州地域において占める2013年の市場占有率の順位を示す図(写し)を提出している(甲7ないし甲11)。なお、提出された上記証拠は、いずれも外国語によるものであって日本語の訳文等がないものであり、その詳細な内容について把握することはできない。
そして、申立人は、引用商標2及び同3を使用した「チョコレート菓子」の販売実績や広告宣伝について、上記異議認容決定及び宣誓供述書等において認められていると主張している。
しかしながら、提出された甲各号証(添付物を含む。)によれば、申立人は、ドイツ、オランダを含むEU各国において申立人の商標「Merci」の表示されたチョコレート菓子のテレビコマーシャルを放映していたこと、同国におけるブランド認知度世論調査結果によれば、ドイツ、オーストリアにおいて、引用商標2及び同3の認知度は90%を超えていることは認められるものであるが、これらをもってしては、引用商標2及び同3が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「チョコレート菓子」の出所を表示するものとして、ドイツ、オランダにおける需要者の間では一定程度知られていたものと推認できるとしても、広く認識されていたものとまでは認めることができない。
また、職権をもって調査するも、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において著名性を獲得したことをうかがわせる事情も見いだすことができない。
そうとすれば、提出された上記甲各号証をもってしては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国又は外国(ドイツ、オランダ)において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
不正目的について
上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が我が国又は外国において周知性を獲得していたとは認められないものであり、また、上記(1)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、引用商標を直ちに理解し得ないものである。
そうすると、申立人提出の証拠によっては、引用商標を剽窃したものであること、申立人の商標の出所表示機能を希釈化させ、その名声等を毀損させる目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすことはできないから、本件商標は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものということができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものではなく、取り消すべき理由がないものと認められるから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2015-08-28 
出願番号 商願2014-42919(T2014-42919) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W30)
T 1 651・ 222- Y (W30)
T 1 651・ 262- Y (W30)
T 1 651・ 263- Y (W30)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清川 恵子大澤 恒介 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2014-10-17 
登録番号 商標登録第5710748号(T5710748) 
権利者 有限会社オリジナルあい
商標の称呼 メルシービュッフェ、メルシー、ビュッフェ 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 名古屋国際特許業務法人 
代理人 山崎 和香子 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 

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