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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1305204 
異議申立番号 異議2014-900359 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-12-24 
確定日 2015-09-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5707413号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5707413号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5707413号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成26年5月29日に登録出願され、第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,ダウンロード可能なコンピュータ用又は携帯電話機用のゲームプログラム,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品として、同年9月12日に登録査定、同年10月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、別掲(B)のとおりの構成からなり、2010年6月28日に国際商標登録出願され、第9類「Sports helmets.」、第16類「Stickers; decals.」、第18類「All purpose sports bags; all-purpose carrying bags; backpacks; duffle bags.」及び第25類「Clothing, namely, t-shirts, hooded shirts and hooded sweatshirts, sweat shirts, jackets, pants, bandanas, sweat bands and gloves; headgear, namely, hats and beanies.」を指定商品として、平成23年7月29日に設定登録された国際登録第1048069号商標を始め、以下のとおりの構成からなる37件の登録商標又は登録出願中の商標を引用している。
(1)商願2014-109443号:別掲(C)のとおり
(2)商願2014-109444号:「MONSTER ENERGY」
(3)登録第5689430号:別掲(B)のとおり
(4)登録第5730813号:別掲(D)のとおり
(5)登録第5393681号:「MONSTER ENERGY」
(6)登録第5057229号:別掲(B)のとおり
(7)登録第5010968号:「M MONSTER ENERGY」
(8)登録第5394526号:別掲(E)のとおり
(9)登録第5442171号:「MONSTER ENERGY PINK」
(10)登録第5417815号:「MONSTER ENERGY AGENT ORANGE」
(11)登録第5379390号:「MONSTER」
(12)登録第5527566号:「MONSTER DETOX」
(13)登録第5476620号:「MONSTER REHAB」
(14)登録第5490798号:「MONSTER RECOVERY」
(15)登録第5497766号:「MONSTER UNLEADED」
(16)登録第5451361号:「MONSTER PUMPED」
(17)登録第5480373号:「MONSTER BIOACTIVATED」
(18)登録第5527567号:「MONSTER REHABITUATE」
(19)登録第5495941号:「MONSTER KHAOS ENERGY + JUICE」
(20)登録第5417769号:「MONSTER REDUCED CARB」
(21)登録第5417770号:「MONSTER LO-CARB」
(22)登録第5375090号:「PROTEIN MONSTER」
(23)登録第5327467号:「MUSCLE MONSTER」
(24)登録第5409580号:「MONSTER RIPPER」
(25)登録第5409582号:「MONSTER BLACK」
(26)登録第5419507号:「MONSTER DOUBLE BLACK」
(27)登録第5409583号:「MONSTER GIRL」
(28)登録第5542584号:「MONSTER CUBA-LIMA」
(29)登録第5043703号:「JAVA MONSTER」
(30)登録第5431412号:「JAVA MONSTER」
(31)登録第5562023号:「JAVA MONSTER GREEN BEANS」
(32)登録第5423080号:「LOCA MOCA JAVA MONSTER」
(33)登録第5630446号:「KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER」
(34)登録第5389881号:「X-PRESSO MONSTER」
(35)登録第5590215号:「JUICE MONSTER」
(36)登録第5613400号:「MONSTER THRILLER」
(37)登録第5644852号:「KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER」
上記(2)、(5)、(7)及び(9)ないし(37)の商標は、いずれも標準文字によるものである。

第3 登録異議申立ての理由の要点
申立人は、前記第2の商標を引用した上で、要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第194号証(枝番を含む。)を提出している。
1 「MONSTER ENERGYブランド」及び「MONSTERファミリー商標」について
(1)申立人の業務に係るエネルギー補給用飲料(エナジードリンク)製品、アパレル製品、アクセサリー類・その他の関連商品には、上記引用に係る商標に含まれる、モンスターの爪痕を象徴する「M」のロゴ(別掲(B)のとおりの構成からなる。以下「M図形」という。)、「MONSTER ENERGY」の文字、特徴的なレタリング文字で表された「MONSTER」の文字、上記M図形と「MONSTER ENERGY」の文字とを一体に表した「M MONSTER ENERGY」のブランドロゴ(以下、これらをまとめて「MONSTER ENERGYブランド」という。)が使用されているほか、「MONSTER」の文字と他の文字とを結合した構成からなる商標(以下「MONSTERファミリー商標」という。)が使用されている。
(2)申立人は、2002年から現在に至るまで、全世界においてMONSTER ENERGYブランドのエナジードリンクに関する広告、マーケティング及び販売促進活動費用として総額21億ドル以上を支出している。かかる販売促進活動の主な内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、販売店用什器及び備品の供給であり、申立人が支援するアスリートやチームが着用・使用するスポーツウェア、レーシングスーツ、レーシングヘルメット、レーシングカー、オートバイ、サーフボード等にはMONSTER ENERGYブランドが付されており、これら選手、チーム、競技会場の写真やビデオ画像は、ウェブサイト、ニューズリリース、ソーシャルメディア等を通じて世界中のスポーツファンに配信され、全世界のエナジードリンクの需要者のみならず、スポーツファンを中心とする一般消費者の間にMONSTER ENERGYブランド及びMONSTERファミリー商標を広く一般に浸透させることに大きな効果を発揮している。
(3)日本においては、MONSTER ENERGYブランドのエナジードリンクは2012年5月8日からアサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料」という。)を通じて販売され、たちまち人気商品となり、その販売数量は販売開始から2013年3月までの約2年間で約5,500万缶に達し、総販売額は4,900万ドル(40億円)以上になっている。MONSTER ENERGYブランドのエナジードリンクについては、販売開始直後から継続的にテレビコマーシャル放映、多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布等の大々的な宣伝広告活動が実施されている。
(4)MONSTER ENERGYブランドのエナジードリンクは、2002年に米国で販売開始して以来世界中で90億缶以上販売し、毎年15億缶以上を売上げ、合計170億ドルを超える収益を上げている。現在、MONSTERファミリー商標を付したエナジードリンクの1種類以上が世界100以上の国及び地域で販売されている。
申立人会社の業績については、経済界でも高く評価され、数々の表彰を受けたほか、著名な経済ビジネス誌において申立人の宣伝広告や有名アスリート、レーシングチーム等に対するスポンサー活動によるマーケティング戦略等に関する記事が多数掲載されている。
(5)申立人は、MONSTER ENERGYブランド及びMONSTERファミリー商標について、前記第2のとおり、我が国において登録又は登録出願しているほか、世界100以上の国及び地域において登録又は登録出願している。
(6)MONSTER ENERGYブランドの人気、周知性の高まりに便乗して、申立人の商標権を侵害するアパレル製品、ステッカー等の模倣品が海外で製造され、申立人の商標権侵害物品として日本の税関で輸入が差し止められる等の案件が増加している。
(7)以上の事実に照らせば、MONSTER ENERGYブランド及びMONSTERファミリー商標は、本件商標の登録出願前から申立人の業務に係る商品を表示する商標として、本国米国を始めとする外国で広く認識されていただけでなく、日本国内の需要者の間でも広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標の指定商品は、コンピュータ・携帯電話・家庭用テレビゲーム機等で用いるゲームプログラム、録音又は録画済み記録媒体など、一般消費者を対象とする趣味・娯楽・レジャー用品として把握されるものを多く含み、申立人がライセンシーを通じてMONSTER ENERGYブランドを付して実際に販売しているアパレル製品、運動用ヘルメット、かばん類、ステッカーなどのMONSTER ENERGYブランドライセンス商品と、用途及び需要者層が一致ないし重複する。また、本件商標の指定商品中の業務用又は家庭用のテレビゲーム機用プログラム、ダウンロード可能なコンピュータ用又は携帯電話機用のゲームプログラム、携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM等は申立人のMONSTER ENERGYブランドを使用したビデオゲーム製品と同一又は類似のものである。
(2)本件商標は、「ルービックモンスター」及び「Rubik Monster」の構成文字全体が既成語ではなく、特定の意味、観念を有しない造語として把握されるところ、後半の「モンスター」及び「MONSTER」の文字部分が「怪獣、怪物、モンスター」を意味する英語「monster」に由来する外来語「モンスター(monster)」としていずれも国民一般に親しまれていること、また、構成文字全体から生ずる「ルービックモンスター」の称呼は、冗長であって、たやすく一息で発音できる程度に短いものとはいえないことからすれば、本件商標は、構成文字全体が常に不可分一体の出所識別標識として認識理解されるとはいえず、広く親しまれている「モンスター」及び「Monster」の文字部分に需要者の注意、関心が強く惹きつけられ、商品の出所を認識することが容易に推認される。また、本件商標は、構成中に「モンスター」及び「Monster」の文字を包含し「モンスター」の観念を直感させる点において、構成中に「MONSTER」の文字を有する申立人のMONSTERファミリー商標の構成と一致する。
(3)したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する需要者は、「モンスター」及び「Monster」の文字部分に注目して、MONSTER ENERGYブランドを始めとするMONSTERファミリー商標を想起、連想し、本件商標を申立人のMONSTERファミリー商標の一つであると誤信し、又は申立人と経済的・組織的関係を有する者の取扱いに係る商品であると誤信することにより、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標がその指定商品に使用された場合、MONSTERファミリー商標の強力な出所表示力を希釈するおそれが極めて高く、また、MONSTERファミリー商標が獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与えるものである。
よって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反するものであり、公序良俗を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

第4 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)MONSTER ENERGYブランド、使用商標及びMONSTERファミリー商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は2002年に米国においてエナジードリンク(エネルギー補給用飲料)の販売を開始した。該エナジードリンクは、従来の清涼飲料容器とは異なる黒色ベースのボトル缶が用いられ、該ボトル缶には、別掲(B)のとおり、M図形を大きく表示し、その下部に、図案化した「MONSTER」の文字と小さな「ENERGY」の文字を併記した構成からなる標章(申立人の引用に係る国際登録第1048069号、登録第5689430号及び登録第5057229号の商標と同一の構成からなる。以下「使用商標」という。)が付されている(甲4?8,10?15,58のRCS-2及び3)。
また、上記ボトル缶には、使用商標に加えて、又は使用商標の構成中の「ENERGY」の文字部分に代えて、「KHAOS」、「ABSOLUTELY ZERO」、「JAVA」、「SUPER DRY」、「EXTRA STRENGTH」、「ANTI GRAVITY」、「BLACK ICE」、「Rehab」、「Baller’s Blend」、「Mad Dog」、「MUSCLE」、「M-8O」等の文字を表示したものもある(甲4?11,13?17,19?33,58のRCS-3)。もっとも、これらは、「KHAOS」及び「ABSOLUTELY ZERO」の文字を表示したものを除き、本件商標の登録出願後に日本国内で発売されたもの又は日本国内で発売されていないものである。
(イ)申立人は、2002年から現在に至るまで、MONSTER ENERGYブランドを使用したエナジードリンク製品に関し、全世界での広告、マーケティング、販売促進活動費として総額21億ドル以上を支出している。販売促進活動の主な内容は、様々なスポーツ分野で活動する有名アスリートやレーシングチーム、競技会、アマチュア選手、音楽祭、ミュージシャン、ラスベガスの公共機関モノレール等の支援活動(スポンサー提供)、販売店用什器・備品の提供等であり、スポーツ分野では、モトクロスライダー、スケートボーダー、オートバイライダー、カーレーサー、カワサキオートバイのレーシングチーム等がある(甲34?44(枝番を含む。),58)。
上記支援活動は、スポンサー提供を受けるアスリートのウェブサイト、ビジネス誌、報道ニュース、スポーツファンのウェブサイト等を通じて発信され紹介されているが、多くは「Monster Energy」又は「モンスターエナジー」として表示・紹介され、「Monster」又は「モンスター」のみで表示・紹介されているものはほとんど見当たらない(甲34?45(枝番を含む。),49?57)。
そして、上記スポンサー提供を受けるアスリートやチームが着用又は使用するウェア、レーシングスーツ、帽子、レーシングヘルメット、レーシングカー、オートバイ、サーフボード等には、使用商標又はMONSTER ENERGYブランドのうちの一つ(特にM図形)若しくは複数が付されているが、「MONSTER」の文字のみからなる標章やMONSTERファミリー商標と思しき標章が付されたものはほとんど見当たらない(甲34?44(枝番を含む。),58のRCS-9?11・13?15・17?33・35・36)。
また、ラスベガスの公共機関モノレール支援活動では、車両にMONSTER ENERGYブランドを付したモンスター列車が走行し、多くの人が乗車したことがマスメディア等で報道されたほか、エナジードリンクの販売用什器等にもMONSTER ENERGYブランドが付されているが、「MONSTER」の文字のみからなる標章やMONSTERファミリー商標と思しき標章が付されたものは見当たらない(甲49,50,58のRCS-37?40)。
もっとも、甲第34号証の1及び2、第35ないし第41号証、第42号証の2及び3並びに第43号証の2については、英文のみで訳文がなく、掲げられた写真も不鮮明なものが多く、その内容の詳細は必ずしも明らかでない。
(ウ)申立人は、MONSTER ENERGYブランドについて商品化権を第三者に許諾し、MONSTER ENERGYブランドを付した、Tシャツ、ジャージパンツ、レーシングジャケット、フーディ、帽子、バッグ、ステッカー等の各種商品(以下、まとめて「申立人アパレル製品」という。)がライセンシーによって製造販売されており、これら申立人アパレル製品はインターネット通信販売業者を通じて日本でも購入できる(甲46?48,58のRCS-36)。
甲第47及び第48号証並びに第58号証のRCS-36に示された申立人アパレル製品の写真によれば、申立人アパレル製品のそれぞれには、MONSTER ENERGYブランドのいずれか、特にM図形が付されていることが判るものの、「MONSTER」の文字のみからなる標章やMONSTERファミリー商標と思しき標章が付されたものは見当たらない。
(エ)MONSTER ENERGYブランドのエナジードリンクの開発・導入により急成長した申立人会社の業績は、経済界でも注目され、本件商標の登録出願前には既に、「Forbs」、「Fortune」、「Business Week」、「Newsweek」、「TIME」、「Beverage World」等の経済ビジネス誌において紹介されている(甲49?56)。しかしながら、これらの雑誌は全て英文によるものであり、かつ、米国において発行されたものであって、これら雑誌に掲載された記事内容が我が国においても紹介されているか否かは明らかでない。しかも、掲載記事においては、そのほとんどが「Monster Energy」と一連で表記されている。
(オ)申立人は、MONSTER ENERGYブランド又はMONSTERファミリー商標について、我が国において登録又は登録出願しているほか、世界100以上の国及び地域において商標登録又は登録出願している(甲58のRCS-1,甲157?194,別紙1及び2)。しかしながら、商標が多くの国において登録されたことをもって直ちに当該商標が取引者・需要者間に周知著名なものとなるものでないことはいうまでもない。
(カ)日本国内では、アサヒ飲料がMONSTER ENERGYブランドのエナジードリンクの国内独占販売権を取得し、2012年5月8日から2種類のエナジードリンク(「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」)を発売して以来、販売は好調に推移し同年の9月には年間目標100万箱を突破し、販売目標を120万箱に上方修正したことが発表された(甲7,8)。また、2013年5月7日には、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」が新発売され、現在では、上記3種類のエナジードリンクはアサヒ飲料の通販サイト、ネットショッピングのアマゾンでも購入することができる(甲10?17,33,58)。
申立人は、上記エナジードリンクの国内販売開始直後から本件商標の登録出願前までに、発売を記念するイベントを行ったほか、各種イベントのスポンサー提供を介して広告宣伝を行った。例えば、2012年5月17日から2ヶ月間にわたり50万缶のサンプルを路上配布したほか、同年6月2日及び3日に渋谷における路上発表会で4万缶のサンプル配布、同年7月に晴海フェリーターミナルにおけるパンクロックフェスティバルで5,500缶のエナジードリンクのサンプル配布、同月に愛知県田原海岸におけるサーフィン大会で4,500缶のサンプル配布、同年10月18日から28日まで各地で行われたスケートボード競技会のスポンサー提供などを行った(甲58,58のRCS-4ないし8)。しかしながら、上記イベントの参加者やサンプル配布の対象者は、一部の若者が中心であるばかりでなく、RCS-4ないし8に示す写真によれば、使用商標又はMONSTER ENERGYブランドのいくつか、特にM図形が使用されていることが判るものの、「MONSTER」の文字のみからなる標章やMONSTERファミリー商標と思しき標章は一切見当たらない。しかも、上記RCS-4ないし8に示す写真には、2013年5月に発売された「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」に係るもの(RCS-6)も含まれているなど、上記写真の撮影時期は必ずしも明らかでない。
他に、本件商標の登録出願前に、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドを始めMONSTERファミリー商標を使用したエナジードリンクについて新聞、雑誌、テレビ等のマスメディアにおいて宣伝広告された事実を示す証拠はない。
なお、申立人の提出に係る証拠のうち、甲第115ないし第127、第129、第130及び第133ないし第137号証は、本件商標の登録出願後に発行又は公表されたものである。また、申立人は、申立人のアパレル製品等の模倣品が海外で製造され、申立人の商標権侵害物品として日本の税関で輸入が差し止められる案件が増加しているとして、甲第59ないし第74、第108ないし第123及び第143ないし第156号証を提出しているが、これらには具体的な商標の使用状況等についての記載はなく、詳細が必ずしも明らかでないばかりでなく、上記差止めの事実のみをもって直ちに使用商標、MONSTER ENERGYブランド又はMONSTERファミリー商標が取引者・需要者間に広く認識されていることになるものではないことはいうまでもない。
イ 上記アの事実を総合勘案すると、本件商標の登録出願時には、MONSTER ENERGYブランドが申立人の業務に係る商品「エナジードリンク」を表示する商標として米国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものといえるとしても、MONSTER ENERGYブランドは、使用商標と同様の構成全体をもって一体のものとして若しくは一連の「MONSTER ENERGY」として、又はM図形が独立して知られていたものというべきであり、「MONSTER」の文字のみをもって広く知られていたものとはいい難い。
他方、我が国おいては、米国におけるMONSTER ENERGYブランドの周知性について紹介するものは少なく、また宣伝広告も限られていることから、本件商標の登録出願時に、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドが申立人の業務に係る商品「エナジードリンク」を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものとまでは認められないものであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。まして、「MONSTER」の文字のみからなる標章及びMONSTERファミリー商標が広く認識されていたものとは認められない。
また、MONSTER ENERGYブランドを付した申立人アパレル製品がインターネットを通じた通信販売により取引されている事実があるとしても、その販売の開始時期・期間・数量・地域・規模等や宣伝広告の事実が一切不明であり、MONSTER ENERGYブランドが申立人アパレル製品について使用する商標として広く認識されているものとは認められないことはもとより、上記事実によって結果的にMONSTER ENERGYブランドが申立人の業務に係る商品「エナジードリンク」を表示する商標として広く認識されているものともいえない。
仮に、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドが、申立人の業務に係る「エナジードリンク」を表示する商標として、我が国の若者の一部においてある程度知られているとしても、あくまでもその構成全体をもって一体のものとして、又は特徴的なM図形が独立して認識されているというべきであり、「MONSTER」の文字のみをもって知られているものとはいえない。
(2)本件商標と使用商標及びMONSTER ENERGYブランドとの対比
ア 本件商標は、前記第1のとおり、片仮名と欧文字とを上下二段にまとまりよく表してなるものであり、片仮名部分は欧文字部分の読みを特定すべき役割を果たすものとして無理なく認識できるものである。そして、全体の構成が格別冗長というほどのものではなく、これより生ずると認められる「ルービックモンスター」の称呼もよどみなく一連に称呼することができるものである。
加えて、本件商標の構成中の「ルービック」及び「Rubik」の文字部分又は「モンスター」及び「Monster」の文字部分のみを分離抽出して観察すべき格別の理由は見いだし難く、また、両者に外観上又は観念上の軽重の差はみられない。
そうすると、本件商標は、全体をもって、親しまれた既成の観念を有しない一種の造語として看取され、「ルービックモンスター」の一連の称呼のみを生ずるものというべきである。
イ 他方、使用商標は、別掲(B)のとおりの構成からなるところ、中央上方に大きく顕著に描かれたM図形部分と、その下部に表された「MONSTER」(やや図案化されているものの、「MONSTER」の文字を表したものと容易に認識できるものである。)及び「ENERGY」の文字部分とは、常に不可分一体にのみ認識されるべき格別の理由は見いだし難く、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえる。そして、使用商標は、読み易い上記文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合が少なくないというべきであり、「モンスターエナジー」又は「モンスター」の称呼を生ずるというのが相当である。
同様に、MONSTER ENERGYブランドも、「モンスターエナジー」又は「モンスター」の称呼を生ずるものといえる。
ウ そこで、本件商標から生ずる「ルービックモンスター」の称呼と、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドから生ずる「モンスターエナジー」又は「モンスター」の称呼とを対比すると、両者は構成音数が異なるばかりでなく、「ルービック」と「エナジー」の音の差異又は「ルービック」の音の有無という顕著な差異により、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感・音調が著しく相違し、容易に区別することができるものである。
そして、本件商標と使用商標及びMONSTER ENERGYブランドとは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものである。
また、本件商標は、親しまれた既成の観念を有しないものである以上、観念上、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドと比較することはできない。
してみれば、本件商標と使用商標及びMONSTER ENERGYブランドとは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものとして認識し把握されるものといわなければならない。
エ なお、念のため付言するに、MONSTERファミリー商標は、「MONSTER」の文字と「KHAOS」、「ABSOLUTELY ZERO」、「JAVA」、「Rehab」等の文字とを結合してなるものであって、それぞれ「モンスター」の称呼のほか、結合する各文字に相応した「モンスターカオス」、「モンスターアブソリュートリーゼロ」、「モンスタージャバ」、「モンスターリハブ」等の称呼を生ずるものであり、いずれも本件商標とは称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。
(3)商品の出所の混同のおそれについて
前示のとおり、MONSTER ENERGYブランド、使用商標及びMONSTERファミリー商標は、本件商標の登録出願時において、いずれも申立人の業務に係る商品「エナジードリンク」を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められないし、これらの商標と本件商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものである。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が使用商標及びMONSTER ENERGYブランドはもとより、MONSTERファミリー商標や申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、全体をもって一体のものとして看取され、「モンスター」及び「MONSTER」の文字部分のみを分離抽出して観察すべき格別の理由はなく、「ルービックモンスター」の一連の称呼のみを生ずるものであり、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドとは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものであること、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドはもとよりMONSTERファミリー商標が申立人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものとはいえないこと、使用商標及びMONSTER ENERGYブランドが米国において又は我が国の一部若者の間にある程度知られているとしても、単に「MONSTER」として知られているものとはいえないこと、本件商標をその指定商品に使用しても使用商標及びMONSTER ENERGYブランドを連想、想起するようなことはないことは前示のとおりである。
そうすると、たとえ本件商標が「ルービック」及び「Rubik」の文字と「モンスター」及び「Monster」の文字とを結合したものであって、ファミリー商標のうちの一部商標の構成の特徴と一致するものであるとしても、それは偶然の一致というべきものであり、MONSTERファミリー商標の信用力又は顧客吸引力にフリーライドするものとはいえないばかりでなく、本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳観念に反し、公正な取引秩序を乱すものとはいえないし、国際信義に反するものともいえない。
もとより、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形ではないし、他の法律によってその使用等が禁止されているものでもない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(A)本件商標


(B)国際登録第1048069号、登録第5689430号及び登録第5057229号


(C)商願2014-109443号


(D)登録第5730813号


(E)登録第5394526号


異議決定日 2015-08-31 
出願番号 商願2014-43201(T2014-43201) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青野 紀子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 手塚 義明
酒井 福造
登録日 2014-10-03 
登録番号 商標登録第5707413号(T5707413) 
権利者 株式会社デジタ
商標の称呼 ルービックモンスター 
代理人 柳田 征史 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 佐久間 剛 

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