ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W44 |
---|---|
管理番号 | 1305203 |
異議申立番号 | 異議2015-900144 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-05-07 |
確定日 | 2015-08-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5737335号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5737335号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5737335号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成26年10月1日に登録出願,第44類「介護」を指定役務として,平成27年1月30日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。 (1)本件は,福岡県福岡市という非常に限定した地域における,商標「よかよか」に関するものである。 (2)申立人は,福岡県福岡市を中心に,平成18年3月頃から,その業務に係る役務「介護」について,商標「よかよか」を使用し始め(甲1),西日本新聞や博多どんたくのチラシ,福岡市営地下鉄「六本松駅」の掲示板,六本松商店連合会のホームページ等に広告をした(甲3ないし甲8)。 (3)申立人が事業を開始した約6年後の平成24年4月1日に,本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が,同一地域の福岡市で,本件商標を役務「介護」について使用し始めた(甲9)ため,需要者や関係者の間に,出所の混同が生じた。 申立人は,この件に関して,たびたび本件商標権者に強く抗議をしてきたが,全く是正されていない。 そこで,申立人は,平成26年9月26日に内容証明により抗議すると共に,同年10月2日に商標登録出願をした(甲11及び甲12)。 しかし,本件商標権者は,平成26年10月1日に本件商標を出願しており,申立人は後願者となった。 この一連のやりとりから,本件商標の出願は,申立人の介護事業の遂行を阻止し,出所の混同を生じるような公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら,本件商標の登録による利益の独占を図る意図でしたものであって,剽窃的なものといわざるを得ない。 また,本件商標の登録が維持されれば,申立人が永年蓄積してきた信用は,本件商標権者に剽窃されることとなり,信用の蓄積を保護する商標法の趣旨と正反対の結果となる。 (4)したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号の意義 商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高等裁判所平成15年5月8日判決:平成14年(行ケ)第616号)。 これを本件についてみると,本件商標は,別掲のとおり,「よかよか」の文字を,薄い水色を用いて毛筆様の書体により表してなるものであるから,商標自体には公序良俗違反のないものと認められる。 そこで,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものであるかどうかについて判断する。 (2)申立人について 申立人は,同人の介護保険事業者の登録情報詳細によれば,「福岡県福岡市中央区六本松1-6-7」を所在地とする「ミニデイサービスよかよか!」との名称の事業所について,2006年(平成18年)3月1日に「介護サービス」の指定を受けた者であり(甲1),同所及び「福岡県福岡市東区社領1丁目12番1号 有限会社さいさい本社内」において,「ミニデイサービスよかよか!」との名称を使用して,平成18年3月頃から「介護(デイサービス)」の事業を行っているものである(甲2)。 そして,2007年(平成19年)10月7日付けの西日本新聞の広告欄(甲3),「福岡市民の祭り/博多どんたく」(第50周年)のパンフレット(甲4,なお,作成年月日の記載がないが,「第50周年」の記載より2011年(平成23年)のものと認められる。),六本松商店連合会(福岡市中央区)のホームページ(甲6,Updated:2014年7月15日),及び,中央区老ク連(老人クラブ連合会)だより」(平成26年7月,福岡市中央区大名所在の中央区老人クラブ連合会発行)の広告欄に,「ミニデイサービスよかよか!」の広告が掲載されたものである。 なお,福岡市営地下鉄「六本松駅」の掲示板(甲5)及び書籍への広告(甲8)は,掲示板を掲示した期間及び書籍の発行日を裏付ける証拠の提出がないから,これらの証拠は,本件商標の登録査定日(平成27年1月9日)前に掲示又は発行されたものと認めることができない。 また,申立人が本件商標権者に送付した平成26年9月26日付けの「警告書」には,本件商標権者が2009年12月に開始したデイサービスに「よかよか」の名称を付したことにより出所の混同が生じていること,本件商標権者の施設名の変更を要求すること,回答がない場合は,法的措置を講ずること等が記載されている(甲11)。 その後,申立人は,平成26年10月2日に,「よかよか」の文字を標準文字で表してなり,第44類「介護」を指定役務とする商標登録出願をした(甲12)。 (3)申立人の使用に係る商標の周知性について ア 申立人は,「介護(デイサービス)」の事業を,福岡市中央区六本松の事業所(2箇所)においてのみ行っており,少なくとも福岡市内,あるいは,福岡県内の他の地域等の広範囲に該事業を展開しているものではない。 イ 申立人は,その業務に係る「介護(デイサービス)」について,「ミニデイサービスよかよか!」(以下「引用商標」という。)を表示し,本件商標の登録出願日までに,地方紙に1回,それとても香椎高等女学校・旧制香椎中学校・香椎高等学校合同同窓会の通知とともに,多数掲載された企業等の一つとして広告をしたにすぎず,その他,福岡市を中心に配布されるパンフレット等に数回の広告をしたにすぎない。 したがって,これらの広告をもって,引用商標が申立人の業務に係る「介護(デイサービス)」を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より,申立人が主張する福岡市という限定された地域においてすら,その取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (4)本件商標と引用商標との類否について 本件商標は,別掲のとおり,「よかよか」の文字を,薄青色を用いて毛筆様の書体により表してなるものである。 他方,引用商標は,「ミニデイサービスよかよか」の文字及び末尾に感嘆符「!」を付加した構成よりなるものであるところ,その構成中の「ミニデイサービス」の文字部分は,「小規模なデイサービス(通所サービス)」の意味合いをもって,役務の質(内容)を表示するものであり,また,感嘆符「!」も特別な意味を有するものとはいえないから,これらは,いずれも自他役務の識別機能を有しない部分である。 したがって,引用商標の要部は,「よかよか」の文字部分にあるということができる。 してみると,本件商標と引用商標とは,「よかよか」の文字を共通にするものであるから,外観において類似し,「ヨカヨカ」の称呼を同じくするものであり,さらに,「よか」の語は,形容詞「よい」の九州方言であり,「よかよか」は,「よい」を強調したものと理解されるから,両商標は,観念上も類似するものである。 (5)商標法第4条第1項第7号該当性について ア 本件商標権者は,同人の介護保険事業者の登録情報詳細によれば,「福岡市西区泉1-31-11」を所在地とする「デイサービスセンター よかよか」との名称の事業所について,2009年(平成21年)12月1日に「介護サービス」の指定を受けた者であり(甲10),同所の「株式会社まちのえき本社内」において,平成24年4月1日から「介護(デイサービス)」の事業を行っているものである(甲9)。 イ 前記(2)及び上記アによれば,申立人は,平成18年3月頃に福岡市中央区六本松において,「ミニデイサービスよかよか!」の名称をもって,介護を目的として事業を開始したものであり,他方,本件商標権者は,平成24年4月1日に福岡市西区泉において,「デイサービスセンター よかよか」の名称をもって,介護を目的として事業を開始したのであるから,申立人と本件商標権者は,同一地域である「福岡市」において,同一の事業「介護(デイサービス)」を行っている同業者であるということができる。 そして,本件商標権者は,申立人から送付された平成26年9月26日付けの「警告書」を受け取ったものであり,その後の平成26年10月1日に本件商標の登録出願をしたのであるから,本件商標の登録出願時には,申立人が引用商標をその業務に係る介護(デイサービス)について使用していることを知っていたと認めることができる。 しかしながら,引用商標は,申立人の業務に係る「介護(デイサービス)」を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より,その取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができず,「よかよか」の文字は,福岡県を含む九州地方では,日常的に使用されるありふれた語であること,及び,本件商標権者が,「デイサービスセンター よかよか」の名称をもって,介護を目的として事業を開始したのは,申立人からの「警告書」を受け取る半年以上前の平成24年4月1日であることからすれば,本件商標権者が,その事業を表すものとして「デイサービスセンター よかよか」の名称を採択したのは,申立人の引用商標の使用の事実とは無関係である可能性が高いということができる。 そして,本件商標権者は,「デイサービスセンター よかよか」を使用して既に「介護(デイサービス)」の事業を開始していたものであるから,その要部である「よかよか」の文字からなる本件商標を,「介護」を指定役務として登録出願したものであって,かかる行為に,申立人の引用商標を剽窃したなどの不正の目的があったものということができない。 以上を総合し,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されている我が国の商標法制度を併せ考慮すると,たとえ,前記(4)に記載のとおり,本件商標が引用商標と類似の商標と認められるとしても,本件商標権者が,本件商標の登録出願をし登録を受けた行為が,本件商標の登録による利益の独占を図る意図で引用商標を剽窃したものということはできないし,また,直ちに商標法制定の趣旨に反するとまでいうことはできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (6)むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (本件商標,色彩については原本を参照されたい。) |
異議決定日 | 2015-08-14 |
出願番号 | 商願2014-82843(T2014-82843) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W44)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 榎本 政実 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 田中 亨子 |
登録日 | 2015-01-30 |
登録番号 | 商標登録第5737335号(T5737335) |
権利者 | 株式会社まちのえき |
商標の称呼 | ヨカヨカ |
代理人 | 宮崎 伊章 |
代理人 | 遠坂 啓太 |
代理人 | 宮崎 超史 |
代理人 | 加藤 久 |