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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W29
審判 全部申立て  登録を維持 W29
審判 全部申立て  登録を維持 W29
審判 全部申立て  登録を維持 W29
管理番号 1304213 
異議申立番号 異議2014-900319 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-11-20 
確定日 2015-08-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5697597号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5697597号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5697597号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年4月9日に登録出願、第29類「秋田県産の大根の燻製の漬物」を指定商品として、同年8月13日登録査定、同月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
1 登録第1588021号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和53年9月1日に登録出願、第32類「食肉のつけ物、魚介類のつけ物、海そう類のつけ物、野菜、果実のつけ物」を指定商品として、同58年5月26日に設定登録され、その後、平成16年7月28日に第29類「食肉のつけ物,魚介類のつけ物,海そう類のつけ物,野菜・果物のつけ物」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第5203672号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成20年1月30日に登録出願、第29類「燻煙した沢庵漬」を指定商品として、同21年2月13日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第84号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当する理由
(1)本件商標と引用商標1との対比
本件商標は、その構成中の秋田県と本件商標権者の名称の一部と目される「秋田 奥州食品」の文字と、中央に書された「いぶりがっこ」の文字を一体的に認識しなければならない理由は全くなく、「いぶりがっこ」の文字は独立して「秋田県産の大根の燻製の漬物」の商標として自他商品の識別性を有しているから、「いぶりがっこ」のみの称呼も生じる。
他方、引用商標1は、「いぶりがっこ」の書体にやや特異性があるが、これより「いぶりがっこ」の称呼が生じる。
してみれば、本件商標と引用商標1は、共に「いぶりがっこ」の称呼が生じるから、称呼において共通する商標である。
また、観念の共通性についてみると、「いぶりがっこ」は、申立人が生産販売する「燻煙した沢庵漬」の商標として選択し、昭和42年11月から使用を開始し、その後、同58年5月26日に商標登録を得たうえで、申立人の登録商標である旨の表示をして、今日まで継続して使用している。
してみれば、本件商標の「いぶりがっこ」の文字部分からは、「燻煙した沢庵漬」あるいは「大根の燻製の漬物」の観念が生じることも明らかであるから、本件商標と引用商標1は、観念においても類似する商標である。
したがって、本件商標は、引用商標1と類似する商標である。
(2)本件商標と引用商標2との対比
引用商標2は、縦書きの平仮名で「いぶりがっこ」と書し、文字の横には、囲炉裏と自在鍵に吊るされた鉄瓶と囲炉裏端に座る人物及び屋内に大根を吊り下げている図形からなり、文字部分から「いぶりがっこ」の称呼が生じるものである。
してみれば、本件商標と引用商標2の文字部分は、共に「いぶりがっこ」の称呼が生じることは明らかであり、称呼において共通する商標である。
また、本件商標と引用商標2は、「いぶりがっこ」から「燻煙した沢庵漬」あるいは「大根の燻製の漬物」の観念が生じることも明らかであるから、観念において類似する商標である。
したがって、本件商標は、引用商標2と類似する商標である。
(3)小括
本件商標は、引用商標1及び同2と類似のものであり、また、その指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

2 商標法第4条第1項第10号に該当する理由
(1)申立人の商標「いぶりがっこ」の周知性について
ア 申立人の前身は、昭和38年4月に「雄勝特産加工所」として創業した個人商店であり、秋田県雄勝野地方の豊富な山菜の粕漬けなどの漬物類を製造販売していた。
雄勝野地方は、雪深く日照時間が少ないため、保存食として大根を囲炉裏の熱と煙を利用して干しあげて漬け込む「囲炉裏干しの大根漬」といわれる漬物が古くから伝わっており、ほぼ全戸で、家々の味をもつ漬物が作られていた。この頃は、この漬物に特段の名前はなく、土地の人々が「でごづけ(大根漬け)」といえばこの「囲炉裏干しの大根漬」のことであった。
昭和30年代、薪ストーブの普及により家々から囲炉裏が消えていき、「囲炉裏干しの大根漬」も作られなくなったが、昭和40年代に入ると「囲炉裏干しの大根漬」を懐かしむ声がでてきた。
漬物屋を営んでいた申立人の先代は、この大根漬けの商品化を試み、厳選した薪(ナラ、桜、ケヤキ等)を燃した焚き木による大根の燻煙乾燥のための燻製小屋を造り、古くから伝わる米ぬかと塩を主体とした漬け込みで囲炉裏干したくあん本来の素朴で味わい深い風味の商品を目指した。
試行錯誤の末、囲炉裏干しの沢庵漬と同様の風味をした「焚き木干したくあん」が出来上がったので、昭和42年11月から販売を開始することができた(甲4?甲7)。
申立人は、「焚き木干したくあん」の販売を開始するに際し、自己の商品を表わすための商標を付けることを考え、大根を燻煙して作ることから、「いぶりがっこ」の商標を使用することにした。しかしながら、昭和42年?43年当時は、「いぶりがっこ」といってもどのような商品か分かってもらえなかったので、一般に使用されていた「いぶり漬け」の商品名も使用し、「いぶりがっこ」の商標と併せて使用していた。
甲第7号証の包装材は、裏面の製造名者が創業時の商店名「雄勝特産」(雄勝特産加工所の略称)となっており、販売開始後、商標登録出願まで使用したものである。
イ 申立人は、昭和42年11月から販売開始した「焚き木干したくあん」に「いぶりがっこ」の商標を付して、継続して使用していたので、「いぶりがっこ」は取引者、需要者の間に浸透していった。
そこで、申立人は、「いぶりがっこ」を引続き商標として使用していくことにして、昭和53年9月1日に、社長個人の名義で「いぶりがっこ」の商標登録出願をしたところ、昭和58年5月26日に商標登録を受けることができた(甲2)。この商標登録を受けて、その後は「いぶり漬け」の表示の使用はやめて、全て「いぶりがっこ」に変更し、登録商標の表示をして今日まで継続して使用しており、包装材のデザインもほぼ変更することなく使用を継続している(甲8?甲10)。これらの包装材のいくつかは、黄色を基調として特殊な文字で横あるいは縦に「いぶりがっこ」の文字、あるいは「いぶり」と「がっこ」の縦2列の文字、そして同時に引用商標2とほぼ同じ「囲炉裏端」の様子を表わした図形からなる商標(以下、これらの包装材に使用されている商標をまとめて「申立人使用商標」という場合がある。)の使用は、その申立人の商品に接する需要者・取引者に申立人が使用する商標であることを直ちに認識せしめるようになった。
すなわち、申立人が、自己の商品である「焚き木干したくあん」に継続して使用している「いぶりがっこ」は、昭和42年11月から使用を開始してすでに半世紀、発売開始当時はほとんど知られていなかったが、申立人の継続的な使用と宣伝販売の努力により、平成元年頃には、「いぶりがっこ」は需要者・取引者の間に申立人の商標として広く認識されていた。
それに併せて、商号を「いぶりがっこ本舗 雄勝野きむらや」に変更した。
ウ 申立人の商品「焚き木干したくあん」について使用する「いぶりがっこ」の商標が広く知られるようになったきっかけは、昭和59年(1984年)から東京を始めとする関東から東北地方に、「秋田県物産展」、「秋田の観光と物産展」などの開催が始まり、申立人は、当初から家族・従業員総出で会場に商品を搬入し、宣伝販売に務めたことからである。
申立人は、昭和59年から平成15年まで、積極的に「秋田県物産展」及び他の催事に参加して「いぶりがっこ」の宣伝販売を継続した(甲12?甲23)。デパートでの物産展の宣伝販売は、延べ日数で597日にも及んだ(甲24)。
秋田県物産展には、同業他社も同様の商品を宣伝販売していたが、それらは、全て「いぶり漬け」、「いぶり大根」、「いぶりたくあん」などの商品名で販売されていたので、「いぶりがっこ」は申立人の商品のみに使用されており、他社商品に「いぶりがっこ」が使用されていた事実はなかった(甲25?甲36)。
物産展に関するデパートのチラシは、1回の催事で40万枚?60万枚程度頒布されるので、そのPR効果は絶大なものがあった。その結果、地方からの注文も多くなり、大手漬物問屋と取引ができるようになり、生協の共同購入にも採用になった。
エ 平成13年頃になると、全国からの注文と取引先の拡大によって生産が追いつかなくなり、地方デパート物産展での宣伝販売は回数を少なくして設備の充実を図ることにした。代わりに、取引先の業者に「いぶりがっこ」の販売を委託したこともある。
オ 申立人の「いぶりがっこ」は、「漬物」を特集した雑誌や新聞に、秋田県を代表する「漬物」の一つとして注目され、多くの記事が掲載されるようになった(甲37?甲62)。
TV、新聞、雑誌などのメディアからの取材も多く、申立人の商品ブランドとして「いぶりがっこ」の情報発信に努力してきた(甲63、甲64)。
販売開始から今日に至るまで、生産量、販売実績も順調に推移しており、平成25年度の実績で約98万袋を出荷し(甲65)、年間売上げも相当な金額になった。
2013年(平成25年)からは、秋田テレビによるコマーシャル「スポット放送」も行っているので、「いぶりがっこ」の周知性はより高まったものと確信している(甲66)。
カ 「いぶりがっこ」は、申立人が商標登録を有していること及び申立人の商品である「焚き木干したくあん」について使用する商標として、生産販売開始から22年を経過した平成元年頃には広く知られるものとなっていた。平成に入った後も、申立人は「いぶりがっこ」の宣伝販売に弛まぬ努力を継続してきた結果、今日ではやがて半世紀になろうとしており、「いぶりがっこ」の周知性は一層高まっていると確信している。
キ ところが、「いぶりがっこ」の知名度にただ乗りするかの如く、それまで、「いぶり漬」、「いぶり大根」、「いぶり沢庵」などと表示して販売していた同業他社が申立人に無断で「いぶりがっこ」を使用するようになった。
申立人は、そのような業者に電話あるいは書面で通知を行ってきたが、申立人の通知が無視され、無断使用が目に余るようになり、それにより、消費者が戸惑いを生じることが懸念された。
ク 申立人は、「いぶりがっこ」の使用許諾を申し入れている業者や企業とは、正式に使用許諾契約を行っている。
ケ 「いぶりがっこ」を無断使用している同業他社は、「大根の燻製の漬物」の普通名称であると主張し、自由に使用できることを既成事実化することを企んでいるのであり、申立人が昭和42年11月からという50年近くに亘って生産販売に努力し、自社の商品ブランドとして使用を継続している事実が無視され、かつ、申立人の商標権を尊重することのない行為は、到底看過することができない。
(2)小括
本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「いぶりがっこ」に類似する商標であって、申立人の商品である「焚き木干したくあん」に類似する商品に使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、3つに区切った縦長矩形の右側の枠内に「秋田 奥州食品」の文字を縦書きし、中央の枠内に「いぶりがっこ」の文字を縦書きしてなるものである。

2 引用商標
引用商標1は、別掲2のとおり、「いぶり」の平仮名を大書し、その下に「がっこ」の平仮名を小さく、特殊な態様で表してなるものであるが、全体として「いぶりがっこ」の文字からなるものと容易に認識されるものである。
また、引用商標2は、別掲3のとおり、囲炉裏と人物及び吊り下げられた大根などからなる図形部分とその右側に「いぶりがっこ」の平仮名を縦書きしてなるものである。

3 「いぶりがっこ」の文字について
申立人は、本件商標中の「いぶりがっこ」の文字部分は独立して「秋田県産の大根の燻製の漬物」の商標として自他商品の識別性を有している旨主張しているところ、「いぶりがっこ」の文字について以下の事実が認められる。
(1)「いぶりがっこ」の文字の意味合い
ア 「いぶりがっこ」の文字は、「デジタル大辞泉」(株式会社小学館発行)に、「いぶり‐がっこ【×燻りがっこ】《「がっこ」は秋田弁で漬け物のこと》木を燃やす煙でいぶして乾かした大根を使うたくあん漬け。秋田県の名産。昔は、いろりの上で、棚に並べたり、天井から吊るしたりして作った。」の記載がある(http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/14731/m0u/)。
イ 「日本の郷土料理図鑑」というウェブサイトにおいて、「秋田県の郷土料理」として、「いぶりがっこ」の見出しで「いぶりがっことは、囲炉裏の上で干した大根を、桜や楢などの焚き火で燻製にし米糠床や塩でじっくり漬けこむいぶり漬けで、秋田を代表する漬けもの。独特の香ばしい風味が特徴。秋から冬にかけて日照時間の少ない秋田で、地域の気象条件を利用し大根を早く乾燥させるために考え出された製法。囲炉裏で乾燥させることで風味がより高まり、さらに冬の時期の低温下で漬ける事で保存がきき、この地方の長い冬の間、保存食として食べる事ができる。その発祥は室町時代からと考えられている。」の記載がある(http://local-specialties.com/gourmet/000059.html)。
ウ 「農林水産省選定 郷土料理百選」というウェブサイトにおいて、「秋田県の候補料理一覧」に「いぶりがっこ」として、「いぶりがっこは秋田県に伝わるいぶり漬けのことで、秋田を代表する漬けものです。大根を囲炉裏の上につるし、ナラやサクラの焚き火で燻製にしてから、主に米糠と塩で漬けこんだものです。冬の訪れが早い秋田で、大根を早く乾燥させるための工夫と言われており、香ばしい風味が特徴です。」の記載がある(http://www.rdpc.or.jp/kyoudoryouri100/ryouri/05.html)。
エ 「Japan web magazine」というウェブサイトにおいて、「秋田の郷土料理」として、「いぶりがっこ」の見出しで「いぶりがっことは大根を囲炉裏のある場所に吊るしていぶって燻製にした後、糠漬けにしたもの。秋田の伝統的漬物だ。燻製にすることでつく香りがいぶりがっこを通常の糠漬けとは一線を画すものにする。」の記載がある(http://japan-web-magazine.com/japanese/akita/food.html)。

(2)新聞の記事情報
ア 「初冬の香り『いぶりがっこ作り始まる』/秋田県南地方」の見出しの下、「秋田県南地方で『いぶりがっこ(漬け)』作りが始まった。農家の敷地内にあるいぶり小屋で、ダイコンを天井からつるし、二?七日間かけて焦げ茶色になるまで生木でいぶす、いわばダイコンの薫製。昔から香りと歯ざわりの良さで、秋田の味として親しまれ、小屋から流れる煙とこうばしい香りが、初冬の訪れをつげる。」の記載がある(1990年11月1日付けの東京読売新聞)。
イ 「いぶしてうまみ 秋田特産『いぶりがっこ』づくりピーク」の見出しの下、「ダイコンを薫製にして漬ける秋田県特産の『いぶりがっこ』づくりがピークを迎えている。特産地の同県山内村では、ダイコンをいぶす専用の小屋から、香ばしいにおいが漂ってくる。いぶりがっこは、雪深くダイコンを外で干せないため、いろり端で干したのが始まりとされる。」の記載がある(2004年11月11日付けの東京読売新聞)。
ウ 「いぶりがっこ全国へ 横手・山内地区産、統一レシピ『金樽』で販売=秋田」の見出しの下、「地元直売所での販売がほとんどだった横手市山内地区特産の『いぶりがっこ』を全国に売り出す動きが加速している。・・・横手市マーケティング推進課は、各生産農家でバラバラだったいぶりがっこの統一レシピを作ろうと、2007年から味や香りを競う『いぶりんピック』を開催。08年には、優勝者のレシピを元に漬けたいぶりがっこを『金樽』のブランドで600本を県内に出荷し、完売。・・・今年の金樽作りには26人の農家が参加し、5000本を生産。このうち3000本は、首都圏を中心に展開している高級スーパー『成城石井』(本社・横浜市)から予約が入り、今月中旬から店頭に並んでいる。」の記載がある(2009年2月24日付けの東京読売新聞)。
エ 「秋田伝統の漬物 『いぶりがっこ』味競う/横手市でイベント 県外からも出品」の見出しの下、「【秋田】秋田を代表する漬物の一つ『いぶりがっこ』の技とおいしさを競うイベント『第4回山内いぶりんピック』が28日、秋田市横手市山内で開かれた。・・・主催は、横手市と山内いぶりがっこ生産者の会。」の記載がある(2010年1月29日付けの日本農業新聞)。
オ 「全国県人会まつり いぶりがっこ人気=秋田」の見出しの下、「全国各地の郷土の味や芸能などを披露する『ふるさと全国県人会まつり』(全国県人会東海地区連絡協議会、読売新聞社など主催)が6日、名古屋市中区の久屋広場で始まった。・・・『東海秋田県人会』のブースでは、米どころ秋田の米を使った日本酒がずらりと並んだほか、郷土の代表的な漬物『いぶりがっこ』や『稲庭うどん』などが人気を集めていた。」の記載がある(2014年9月7日付けの東京読売新聞)。
カ 「薫る味、競う味 横手、『いぶりがっこ』づくりが最盛期 /秋田県」の見出しの下、「横手市山内(さんない)地区で、特産の『いぶりがっこ』づくりが最盛期を迎えている。地区では約100軒の農家が作業に追われ、いぶし小屋からは白い煙が立ち上る。」の記載がある(2014年11月26日付けの朝日新聞)。

(3)申立人以外の者による「いぶりがっこ」の文字の使用状況
ア 「農事組合法人桜食品」のウェブサイトにおいて、「桜食品のいぶりがっこ」の見出しで、「いぶりがっことは 秋田を代表するお漬物『いぶりがっこ』。『いぶり』は『いぶし』、『がっこ』は秋田の方言で『お漬物』で、この燻されたお漬物を『いぶりがっこ』と呼びます。大根を専用の囲炉裏の天井につるし、桜や楢の木を燃やして燻製した後、塩を加えてにぬか漬けします。囲炉裏の煙でいぶすため大根の表面が茶色くなり、保存性も高まるため、雪国秋田の気象条件と風土がもたらした保存食としての役割があり、それがやがて農家から農家へと伝わり、農作業の休憩時のお茶うけとして古くから愛されてきました。」の記載があり、大根の燻製や漬け込みの写真、大根の漬物の写真などが掲載されている(http://sakuragakko.com/iburigakko.html)。
イ 「楽天」のウェブサイトにおいて、「秋田の味!! いぶりがっこ」の見出しで、「秋田の味!“いぶりがっこ”を存分にお楽しみください 【送料無料】いぶりがっこ1本×3セット」、商品説明として、「昔ながらの味を大切に漬け込みました 飽きの来ない素朴な味わいを守り素材の旨みを引き出しました。芳醇な香りを醸し出す楢や桜そして林檎の木で大根をいぶってから米ぬかに漬け込みました。噛めば噛むほど、味の深さが出てきます。自然な美味しさをご堪能いただけます。ご飯のおかずに、酒の肴にどうぞ。伊藤漬物本舗のいぶりがっこは、雄勝野きむらや様のいぶりがっこと並び、秋田の老舗です。」の記載があり、大根の漬物の写真が掲載されている(http://item.rakuten.co.jp/gourmet-club/10000128/)。
ウ 「株式会社清川屋」のウェブサイトにおいて、「初春の彩り漬物【いぶりがっこやうるいの浅漬けなど漬物詰め合わせこころづくし初春】」の見出しで、「伝統的の枝焚き木で干しあげる『いぶりがっこ』 山形の冬から春の食卓を彩るお漬物。『いぶりがっこ』は室町時代から出羽の国に受け継がれる大根漬で、薪を燃やした燻煙乾燥で干し上げた香ばしい風味とパリッとした食感が特徴です。」の記載があり、また、「商品の詳細について」として「名称・内容量 漬物詰め合わせ(うるい浅漬け100g、雪中軟白ねぎ150g、わらび醤油漬け130g、あつみ赤かぶ200g、いぶりがっこ130g)」の記載がある(http://www.kiyokawaya.com/product_info.php?products_id=1260)。
エ 「三又旬菜グループ」のウェブサイトにおいて、「三又旬菜グループ」の見出しで、「横手市の南東に位置する山内三又地域は、・・・また、昔から冬場の保存食として『いぶりがっこ』づくりが盛んで、大根のいぶし方から漬け方まで、各家々ごとに“秘伝の技”が受け継がれています。地域で大切に守り続けてきた山の恵み、天然素材で漬け込んだこだわりの漬物を、ふるさとの温もりと一緒にお届けします。」の記載があり、また、「三又旬菜グループのいぶりがっこ」の見出しで、「樽出し いぶりがっこ」と表示された大根の漬物の写真が掲載されている(http://www8.plala.or.jp/mitsumata/)。
オ 「こまち食品工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「秋田を代表する漬物【いぶりがっこ】 焚き木干しで燻煙乾燥した大根を、古来伝承の米ぬかと塩を漬けこみ、いぶり漬け本来の素朴で味わい深い風味に仕上げました。パリパリの食感・風味もそのままに、食べやすい薄切りタイプです。このいぶりがっこを長期保存可能(賞味期限=製造日から3年間)な缶詰にしました。」の記載があり、「いぶりがっこ 缶[g-01」の記載と共に「いぶりがっこ」と表示された缶詰の写真が掲載されている(http://komachi-foods.ocnk.net/product/94)。

(4)申立人提出の物産展のチラシや雑誌等における「いぶりがっこ」に関する記載
ア 「青森・秋田の物産と観光展」のチラシにおいて、「その他の出店業者名」の欄に「▲【青森/中清食品工業】しそ巻らっきょう」、「▲青森/カネショウ】リンゴ酢」などの記載と共に「▲【青森/雄勝野きむらや】いぶりがっこ」と記載されている(2月13日(木)?18日(火)伊勢丹新宿本店(なお、「1992年」という申立人の記載がある。)(甲13)。
イ 「第1回秋田物産展」のチラシにおいて、「秋田物産展お楽しみ袋 (きりたんぽ、比内地鶏スープ、稲庭うどん、いぶりがっこ、じゅんさい)・・・・・100点限り 1050円」と記載されている(9月17日(火)?22日(月)東松山店(なお、「1997年」という申立人の記載がある。)(甲20)。
ウ 「他に秋田の味と言えば、じゅんさいに、とんぶり。忘れられないのが、たくわんの燻製とも言えるいぶりがっこ、小茄子の一夜漬のなすがっこ、・・・」と記載されている(「クロワッサン」、甲40)。
エ 「いぶりがっこ 秋田 室町の昔からいろりの上で燻されて冬を越した大根の糠漬け 秋田にはスモークしたたくあんがある。というと何やら新種の漬物のようだが、その歴史は室町時代からともいわれるほど、たいへん古いものなのである。秋田といっても全県ではなく、大曲や横手、角館、雄勝など特別に雪の多い地方だけに作られる。・・・」と記載されている(「サライ」、甲42)。
オ 「全国の有名漬物大集合」の見出しで、「仙台長なす漬【宮城】」、「べっったら漬【東京】」、「たまり漬け【秋田】」などと共に「いぶりがっこ【秋田】」として「たくあんのくん製。昔は3か月近く、いろりの上でつるしていぶしてから、塩とぬかで漬けた。」と記載され、漬物の協力店として「雄勝野きむらや【いぶりがっこ】」、「近野商店【たまり漬】」、「岡田商店【仙台長なす漬」、川辺食品【副神漬】」などと記載されている(「きょうの料理」、甲43)。
カ 「うまいもの取り寄せカタログ」(1996年2月10日発行)において、「雄勝野きむらや」「いぶりがっこ」の見出しで、「雄勝、横手、大曲、角館といった秋田県南部の名物として知られる大根の燻し漬け〈いぶりがっこ〉。」と記載されている(甲45)。
キ 「サラダ感覚 おいしい漬物」(1999年5月20日発行)において 「日本の漬物」の見出しで、「〈岐阜県〉赤かぶ漬け」、「〈石川県〉かぶら寿し」などの記載と共に「〈秋田県〉いぶりがっこ」として「煙で三昼夜以上いぶしただいこんをぬかと塩に漬けたもの」と記載されている(甲48)。

(5)以上の事実を総合して判断すると、「いぶりがっこ」の文字は、上記(1)及び(2)の辞書や新聞記事情報の記載からすれば、秋田県の特産又は秋田の郷土料理としての「燻煙しただいこんの漬物」を意味するものといえ、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、上記(3)のように、申立人以外の者が「燻煙しただいこんの漬物」を「いぶりがっこ」と称している実情があり、また、上記(4)のように、物産展などのチラシ等においても、「いぶりがっこ」の文字が「しそ巻きらっきょう」や「リンゴ酢」などの商品名と同列に表示されていることや「たまり漬」、「仙台長なす漬」、「副神漬」などの漬物と同列に表示されていること、さらに、秋田の大曲や横手、角館、雄勝などの地域で作られる漬物であるなどと説明されていることからすれば、「いぶりがっこ」の文字は、漬物の一種である「燻煙しただいこんの漬物」を表すものとして、漬物の取引者、需要者に認識されているといえるものである。
したがって、「いぶりがっこ」の文字は、これを「漬物」に使用する場合、自他商品の識別力は無いか極めて弱いものといわざるを得ない。

4 申立人の商標の周知性について
(1)申立人は、申立人の商標「いぶりがっこ」は、申立人の商品「焚き木干したくあん」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であると主張しているところ、申立人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、昭和38年に漬物の製造販売会社を創業した。
イ 申立人は、囲炉裏干しの沢庵漬と同様の風味をした「焚き木干したくあん」を製造し、昭和42年11月から甲第7号証に示す包装材を使用した。当該包装材には、「囲炉裏と囲炉裏の上につるしただいこん」等の図形と引用商標1と同じ態様の「いぶりがっこ」の文字が表示され、「雪国秋田の生活の知恵が生んだ味の逸品 “いぶりがっこ”(雅香)は大根を細いヒモで編み、いろりの上につるし乾燥させますが・・・」などの記載がある。
ウ 申立人は、引用商標1を昭和53年に商標登録出願し同58年に商標登録を得た。
エ 申立人は、1984年から2003年にかけて、東京を始めとする関東から東北地方で開催された秋田県物産展において、申立人の製品の宣伝販売を行った。のべ日数は、597日である(甲24)。
オ 物産展のチラシ等において、「秋田/雄勝野きむらや」又は「きむらや」の文字及び「いぶりがっこ」の文字の記載と申立人使用商標が表示された包装容器に入った商品(甲8、甲9、甲10)が掲載されている(甲14、甲17?甲19、甲22)。
カ 秋田県物産展において、大根の漬け物について、「湯沢市 大七商店」は「いぶり漬」(甲25、甲31等)、「大館市ますやイホ子商店」は「いぶりたくあん」(甲26)及び「いぶり漬」(甲27、甲28等)、「いなにわ村」は「いぶり大根」(甲29、甲35)と表示している(甲25?甲36)。
キ 「美しい日本 東北」(昭和53年4月10日改訂)を始めとして、各雑誌等において、「いぶりがっこ」の文字と申立人使用商標が表示された包装容器に入った商品が掲載されている(甲41、甲45、甲47、甲49、甲51、甲56、甲60等))。
ク 新聞・雑誌において、申立人が「いぶりがっこ」の生産/販売者として紹介されている(甲61、甲62等)。
ケ 申立人が「いぶりがっこ」と表示している商品の販売個数は、1961年?2013年において、1961年が1000個であり、2013年は98万個であった。(甲65)。また、秋田テレビにおけるスポット放送を2013年及び2014年に行った(甲66?甲84)。

(2)以上によれば、申立人は、昭和42年11月頃から申立人の商品「焚き木干したくあん」に引用商標1と同じ態様の「いぶりがっこ」の文字を付していたこと、その後昭和58年に引用商標1の商標登録を得たこと、また、1984年から2003年にかけて秋田物産展等において、申立人使用商標が表示された包装容器に入った商品を宣伝し、販売したこと、その後、新聞・雑誌などにおいて、申立人が、いぶりがっこの製造・販売者として紹介されていること、秋田テレビでの宣伝を行っていることなどが認められ、これらからすれば、申立人が申立人の商品「焚き木干したくあん」の製造・販売者として相当程度知られており、その商品の包装に付された申立人使用商標も相当程度知られているということができる。
しかしながら、申立人が申立人の商品に使用している商標は、申立人使用商標、すなわち、黄色を基調として特殊な文字で横あるいは縦に「いぶりがっこ」の文字、あるいは「いぶり」と「がっこ」の縦2列の文字、そして同時に引用商標2とほぼ同じ「囲炉裏端」の様子を表わした図形からなる商標であって、「いぶりがっこ」の文字と図形を組み合わせたものがほとんどである。
また、申立人は、物産展や雑誌等において、例えば上記(1)オのように、申立人の商品が「いぶりがっこ」の文字と共に表示されていたり、上記(1)カのように、申立人以外の者が「燻煙しただいこんの漬物」について「いぶりがっこ」の文字を使用せずに「いぶり漬け」などの文字を使用していると主張しているが、そのような事実があるとしても、物産展などのチラシ等において、上記3(4)のように、「いぶりがっこ」の文字が「しそ巻きらっきょう」や「リンゴ酢」などの商品名と同列に表示されていることや「たまり漬」、「仙台長なす漬」、「副神漬」などの漬物と同列に表示されていること、さらに、秋田の大曲や横手、角館、雄勝などの地域で作られる漬物であるなどと説明されている実情があるし、「いぶりがっこ」の文字についてのその他の事実を総合して判断すると、「いぶりがっこ」の文字は、漬物の一種である「燻煙しただいこんの漬物」を表すものとして認識されていること、上記3(5)のとおりである。
そうすると、引用商標1及び2並びに申立人使用商標は、その構成全体またはデザイン化された構成態様の「いぶりがっこ」として申立人の商品を表すものとして認識されることがあるとしても、単に「いぶりがっこ」の文字が申立人の商品「焚き木干したくあん」を表す商標として、需要者の間に広く認識されているということはできない。

5 本件商標の商標法第4条第1項第11号及び同項第10号該当性について
(1)本件商標は、別掲1のとおり、「秋田 奥州食品」の文字と「いぶりがっこ」の文字を2列に縦書きしてなるところ、その構成中の「いぶりがっこ」の文字は、上記3(5)のとおり、「燻煙しただいこんの漬物」を表すものとして認識されるものであって、自他商品の識別標識としての機能は無いか極めて弱いものといえるから、「いぶりがっこ」の文字部分より自他商品識別標識としての称呼及び観念は生じないというべきである。
そうすると、本件商標中の「いぶりがっこ」の文字部分より、称呼及び観念が生じることを前提として、本件商標が引用商標と類似するとする申立人の主張は妥当とはいえない。
また、他に本件商標が引用商標と類似するとする理由は見いだすことができない。
したがって、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標ではないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)本件商標は、上記(1)のとおり、その構成中の「いぶりがっこ」の文字部分より自他商品識別標識としての称呼及び観念は生じない。
そうすると、本件商標中の「いぶりがっこ」の文字部分より、称呼及び観念が生じることを前提として、本件商標が引用商標及び申立人使用商標と類似するとする申立人の主張は妥当とはいえない。
また、他に本件商標が引用商標及び申立人使用商標と類似するとする理由は見いだすことができない。
したがって、本件商標は、引用商標及び申立人使用商標と同一又は類似する商標ではないから、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 (本件商標)



別掲2 (引用商標1)




別掲3 (引用商標2)




異議決定日 2015-07-30 
出願番号 商願2014-27489(T2014-27489) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W29)
T 1 651・ 261- Y (W29)
T 1 651・ 262- Y (W29)
T 1 651・ 263- Y (W29)
最終処分 維持 
前審関与審査官 内田 直樹 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 原田 信彦
土井 敬子
登録日 2014-08-29 
登録番号 商標登録第5697597号(T5697597) 
権利者 有限会社 奥州食品
商標の称呼 アキタオーシューショクヒンイブリガッコ、オーシューショクヒンイブリガッコ、アキタオーシューショクヒン、オーシューショクヒン、イブリガッコ 
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所 
代理人 熊谷 繁 
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