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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X41
管理番号 1304160 
審判番号 取消2014-300394 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-05-27 
確定日 2015-08-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5287159号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5287159号商標の指定役務中,第41類「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5287159号商標(以下「本件商標」という。)は,「加護亜依」の文字を標準文字で表してなり,平成21年2月17日に登録出願,第41類「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学に関する情報の提供,インターナショナルスクール及びインターナショナルプリスクールにおける教育に関する情報の提供,英語教育に関する情報の提供,海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学に関する企画及び運営,英会話の教授,インターナショナルスクール及びインターナショナルプリスクールにおける教育,高校卒業資格取得講座における知識の教授,通信教育による知識の教授」を指定役務として,同年12月11日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成26年6月16日である。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由,答弁に対する弁駁及び口頭審理陳述要領書による陳述において,要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出している。
2 請求の理由
本件商標は,その指定役務中「第41類 演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
3 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
ア 乙第1号証は,留学支援事業に関するウェブサイトにすぎない。
したがって,本件商標の指定役務中「海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学に関する情報の提供」などの使用の証拠にしかなり得ず,取消請求役務とは全く異なるものである。
よって,乙第1号証は,取消請求役務についての使用の証拠とは全く評価できない。
イ 乙第1号証には「加護」の表記のみしか無く,本件商標「加護亜依」の表記は存在しないから,本件商標を使用しているとは評価できない。
(2)乙第2号証について
本件との関連性が全く理解できない。
4 口頭審理陳述要領書における主張
(1)本件商標を使用しているとの主張について
ア 乙第1号証について
(ア)被請求人は,乙第1号証が取消請求役務に合致するものではないことを自ら認めた。
その後で「加護亜衣が留学支援事業に協力するということは,通常人の協力ではなく,海外における音楽・演芸につながっていることを示唆しているとも見れる」との主張があるが,百歩譲ってそのような示唆が見れたとしても商標の使用の判断に当たっては全く無意味な事情である。
(イ)また,乙第1号証には「加護」という表記のみであり「亜衣」の表記は存在しないのであるから加護亜衣の写真が掲載されていようが同人が芸能人だろうが「加護亜衣」の商標は使用されていないという判断以外あり得ない。
イ 乙第2号証について
依然,本件との関連性は理解できない。
(2)不使用について正当理由があるとの主張について
ア 商標法は本来,登録商標の使用を保護の前提としていること,及び不使用取消審判制度が設けられている趣旨からすると,登録商標の不使用につき商標法第50条第2項但書にいう「正当な理由」があるといえるためには,登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰することのできないやむを得ない事情があり,不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが,社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である(東高判平成9年10月16日)。
イ 具体的には,地震,水害等の不可抗力,放火,破壊等の第三者の故意又は過失による事由,法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者の責めに帰することができない事由が発生したために使用することができなかったような場合をいうものと解される(東高判平成8年11月26日,知財高判平成19年11月29日)。
単なる商品の市場性の欠如による不使用は,これには該当しない(甲1)。
ウ 被請求人が述べる事情は結局のところ,加護亜衣が芸能人として活動できる状況では無かったこと,即ち市場性の欠如をいうにすぎないから「正当な理由」には該当しない。
エ なお,被請求人は加護亜衣が商標使用に非協力的であったことも「正当な理由」として挙げているが,そもそも商標使用に当たって加護亜衣の協力など必要ないからこれも「正当な理由」足り得ないことは明白である。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると答弁し,その理由及び口頭審理陳述要領書による陳述において,要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。
2 答弁の理由
(1)被請求人は,インターネット上にナビロードとの名称で「加護亜依」の商標を作り留学支援のPR広告(乙1)を出しており,これは現在も続いている。
(2)なお,加護亜依は,以前に被請求人の承諾なく他社によりテレビ出演したこともあり,これについては,被請求人と同社との間に和解が成立しているので,参考までにその合意書(乙2)を添付する。
3 口頭審理陳述要領書における主張
(1)被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に本件商標を使用している。
ア 乙第1号証について
乙第1号証は,直接的には,留学支援事業に対するウェブサイ卜である。その結果,取消請求役務に合致するものではない。
しかし,本件商標は,通例の商標と異なり,「加護亜依」の人物そのものを現している一面を持っている。加護亜依が留学支援事業に協力するということは,通常人の協力ではなく,海外における音楽・演芸につながっていることを示唆しているとも見れるので,本ウェブサイトによって,請求人が取消請求役務と無関係だと解するには幾分の疑問がある。
なお,乙第1号証に,「加護」という表記のみで,「加護亜依」という表記のないことを指摘しているが,同証に「加護亜依」の写真が掲載されていること及び一般人の加護ではなく,芸能人の加護亜依が協力すると把握される内容であるから,「加護亜依」の商標を使用していると判断できる。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は,加護亜依が,平成24年4月8日に放映されたテレビ番組に,タレント契約締結中の被請求人の了承を得ずに出演したことで,出演させたプロダクションが,損害賠償金を支払ったものである。ただ,通例,他社と契約中のタレントを出演させたとしても,簡単に損害賠償金が支払われることはないのが芸能界の商慣習であり,本件でも「加護亜依」が商標として登録され,商標違反であることが明確であったため,早期に損害賠償金が支払われたものである。
(2)仮に,被請求人が,要証期間に,本件商標を使用していないとしても,使用しないことについては正当な理由がある。
すなわち,被請求人が加護亜依に対して,テレビ等やイベントへの出演を依頼しても,加護亜依は,その要求を拒絶したため,被請求人が本件商標の使用が不可能であった。この休業の理由について,加護亜依自身が,事務所移籍を予定していたからと言明している。被請求人が使用しようとしても,その商標登録に許諾した本人が使用につき,全面的に反対するため,被請求人は商標を使用できないのである。
また,商標権の使用につき,本件商標権では,芸能界での商標としての使用であり,商標権を使用するに際し,商標権自体となっている加護亜依自身がその使用を不可能になる原因を作出している。被請求人は,使用しないのではなく,使用できない状態にあり,その原因は,商標権自体となっている加護亜依自身が招いた原因であるから,その不使用の理由を被請求人のせいにするのは,不当である。
結局,被請求人が加護亜依との専属契約中の平成20年4月1日から平成25年3月31日までに,本件商標権を使用しなかったのは,加護亜依自身が商標権使用に非協力であるか,加護亜依自身がスキャンダルで商標権の使用を不可能にさせたものであるから,被請求人の商標権不使用には,正当な理由が存在する。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば,次のとおりである。
(1)乙第1号証は,2014年(平成26年)6月18日にプリントアウトされた「navi☆Road USA」と題するウェブページであり,そこには,上段に,「アメリカ留学 ナビロード:naviRoadは加護ちゃん的留学お助け情報サイト」,「アメリカ留学 ナビロード:naviRoadは加護ちゃん的留学&アメリカ生活お助け情報サイト」,「加護ちゃん的留学&アメリカ生活お助け情報サイト」,「アメリカ有給・無給インターンシップ求人情報」の記載,左部の「naviRoadコンテンツ」の項に「加護ちゃん留学への想いを語る」,「加護ちゃんのギリギリ!?英会話」などの記載があり,中央上部には「加護ちゃん的\留学&アメリカ生活\応援サイト」の記載と共に,タレントの加護亜依の写真が掲載され,その下に「アメリカタウンガイド」の項の下,「レストラン・グルメ」,「ギフト・ショッピング」などの記載,「『アメリカ 生活便利帳』」の項の下,「食生活編」,「鑑賞編」などの記載がある。
(2)乙第2号証は,「合意書」と題する書面であり,そこには,タレント加護亜依の平成24年4月8日放映のテレビ番組出演についての解決金の支払いなど合意内容の記載,作成日と認められる「平成24年6月22日」の記載,被請求人と件外法人両社の住所,名称等の記載及び代理人の記名・押印がある。
2 上記1により認められる事実及び判断
(1)本件商標の使用について
ア 役務について
(ア)乙第1号証は,被請求人も自認するように留学支援事業に関するウェブページであり,その記載内容から,「海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学に関する情報の提供」の役務であることが想定し得るが,取消請求役務に含まれるものとは認めることはできない。
なお,被請求人は,本件商標は「加護亜衣」の人物そのものを現している一面があり,加護亜依という人物が留学支援事業に協力するということは,通常人の協力ではなく,海外における音楽・演芸につながっていることを示唆しているとも見られるので,取消請求役務と無関係と解するには疑問がある旨主張しているが,「アメリカタウンガイド」の項において「エンターテイメント」の記載があるとしても,該記載が「音楽」又は「演芸」に関するものであるかは明確ではなく,仮に,海外における音楽・演芸につながっていることの示唆と見れる場合があるとしても,商標法第50条第1項には「・・・日本国内において・・・登録商標の使用をしていないとき・・・」とあることから,海外における音楽等へのつながりは,本件商標の使用の判断に影響しないから,かかる主張は採用できない。
(イ)乙第2号証により,被請求人と件外法人との間で,タレント「加護亜依」のテレビ出演について解決金の支払いなどの合意がなされたとしても,本件商標の使用に係る要証事項の証明がなされているものとは認められない。
(ウ)上記のとおり,被請求人提出の乙各号証によっては,取消請求役務について,本件商標の使用をしているものと認めることができない。
イ 使用商標(表示された標章)について
乙第1号証には,「加護ちゃん的留学&アメリカ生活お助け情報サイト」,「加護ちゃん的」などの表示があるところ,これらの表示は,その構成等から,いずれも「加護亜依」の文字からなる本件商標と同一でないことはもとより,社会通念上同一と認められる商標とはいえないものである。
また,タレント「加護亜依」の写真と「加護亜依」の文字からなる本件商標とが,社会通念上同一と認められる商標といえないことも明らかである。
したがって,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用した事実は,証明されていない。
ウ 使用時期(公表,記載された日付)について
乙第1号証が公表された「2014年(平成26年)6月18日」(プリントアウトされた日)は,要証期間経過後である。
エ 使用者(提供する者等)について
乙第1号証を提供する者(掲載した者)は,確認することができない。
オ 小括
以上のとおり,被請求人提出の証拠によっては,本件審判の請求に係る指定役務「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作」について,商標法第50条第2項に係る本件商標の使用を証明したものと認めることはできない。
その他,取消請求請役務について,本件商標の使用をしていることを認め得る証左は見いだせない。
(2)本件商標を使用していないことの正当な理由について
被請求人は,口頭審理陳述要領書において,使用をしていないことについて正当な理由がある旨主張しているので,以下検討する。
ア 商標法第50条第2項の解釈
商標法第50条第2項にいう「正当な理由があること」とは,地震,水害等の不可抗力によって生じた事由,放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由,法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由が発生したために,商標権者等において,登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解するのが相当である。(知財高裁 平成19年11月29日判決 平成19年(行ケ)第10227号)
イ 被請求人の主張は,上記第3 3(2)のとおりであり,要するにタレント「加護亜依」が商標権使用に非協力であったこと,同人がスキャンダルで商標権の使用を不可能にさせたことにあるから,被請求人の不使用には正当な理由がある旨である。
ウ そこで,これを上記アの解釈に沿って判断すると,被請求人の主張する不使用の理由は,上記アの「地震,水害等の不可抗力によって生じた事由」及び「法令による禁止等の公権力の発動に係る事由」のいずれにも該当しないこと明らかである。
そして,上記アの事由中「放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由」及び「その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由」とは,それら以外に挙げられている事由からみて,私人間の契約など私人間の事情は含まれないというのが相当である。
そうすると,被請求人の主張する不使用の理由は,いずれも私人間の事情というべきものであるから,上記アの事由中「放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由」及び「その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由」にも該当しない。
エ したがって,被請求人の主張には理由がないものというべきであり,被請求人が本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたものとは認められない。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人が提出した証拠からは,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その請求に係る指定役務である,第41類「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作」のいずれかについて,本件商標の使用をしていることを証明したものと認めることができない。
また,被請求人は,取消請求役務について,本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたものと認めることもできない。
したがって,本件商標は,その指定役務中,第41類「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,歌唱の上演,ダンスの演出又は上演,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作」について,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2015-02-09 
出願番号 商願2009-10775(T2009-10775) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 綿貫 音哉小松 里美 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2009-12-11 
登録番号 商標登録第5287159号(T5287159) 
商標の称呼 カゴアイ 
代理人 伊関 正孝 
代理人 雪丸 真吾 

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