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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W05
審判 全部無効 外観類似 無効としない W05
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W05
管理番号 1303064 
審判番号 無効2014-890076 
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-10-14 
確定日 2015-06-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5663625号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5663625号商標(以下「本件商標」という。)は、「ULTECT」の欧文字を標準文字で表してなり、平成25年11月25日に登録出願、第5類「衛生マスク」を指定商品として、同26年3月17日に登録査定、同年4月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第5031814号商標(以下「引用商標」という。)は、「フルテクト」の片仮名及び「FLUTECT」の欧文字を二段に横書きしてなり、平成18年7月26日に登録出願、第5類「衛生マスク」を指定商品として、同19年3月9日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出している。
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標は、「ULTECT」の欧文字を、標準文字を用いて横書きにしてなるところ、該文字は、英和辞典、仏和辞典、独和辞典(甲4ないし甲6)にも掲載されておらず、固有の観念を有しない造語からなるものである。一般に欧文字からなる造語商標は、わが国で最も親しまれている英語風の読み方をもって発音されるのが通例といえる。
これを本件商標について検討すると、例えば、「超」を意味する平易な英単語である「ultra」の文字が、これを片仮名で表わした「ウルトラ」の語とともに日常語としても使用され、広く親しまれているように、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標中の「UL」の部分を「ウル」と発音し、本件商標全体をもって「ウルテクト」と発音するのが自然であるといえる。
したがって、本件商標からは「ウルテクト」の称呼が生じる。
他方、引用商標は、「フルテクト」の片仮名と「FLUTECT」の欧文字を二段書きにしてなり、その構成文字に相応した「フルテクト」の称呼が生じる。
(2)本件商標から生じる「ウルテクト」の称呼と引用商標から生じる「フルテクト」の称呼を比較すると、5音という構成音数を共通にし、語頭の「ウ」と「フ」の音にのみ差異を有し、その余の「ル」、「テ」、「ク」及び「ト」の音を共通にしている。差異音である「ウ」と「フ」の音は、「フ」の音の子音「f」が無声摩擦音で弱く発音され、発音の際、母音「u」に吸収されがちであることから、「ウ」の音と非常に似通った音として聴取される。また、これらの近似音が位置する場所は語頭であるものの、有声の弾音であって強音として明瞭に響く「ル」の音の前に位置することから、これらの差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものといえる。
したがって、「ウルテクト」と「フルテクト」の両称呼をそれぞれ一連に称呼したときは、全体の語調、語感が近似したものとなって、相紛らわしく、互いに聴き誤るおそれがあるものといえる。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼において類似する。
なお、本件商標と引用商標の場合と同様に、「ウ」と「フ」の音にしか差異を有しない商標が互いに類似すると判断された審決例が存在する(甲7ないし甲10)。
(3)本件商標と引用商標は、いずれも欧文字、あるいは片仮名と欧文字の二段書きをありふれた字体で横書きしたものにすぎず、外観において特段に強い印象を与えるものではない。加えて、観念においても、本件商標と引用商標は、固有の意味合いを有するものではないから、この点において両商標を比較することはできない。
したがって、本件商標と引用商標における外観及び観念は、称呼における上記の類似性を凌ぐものではない。
(4)そうとすれば、本件商標と引用商標は、全体的に観察して彼此相紛れるおそれのある類似の商標である。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一である。
2 取引の実情について
請求人は、請求人の抗ウイルス加工不織布「フルテクト」を用いて製造した「フルテクトマスク」を、2008年以降現在に至るまで、ウイルス、細菌、花粉対策用のマスクとして製造し、各種マスク販売メーカー、備蓄用として用いる企業、問屋、一般消費者向けに継続して販売している(甲16)。その販売数量の推移は、2009年の新型インフルエンザの世界的流行時には1千500万枚を売り上げたほか、インフルエンザの流行が収まった以降も継続して販売され、2014年現在も約145万枚を販売している(甲17)。
甲第18号証ないし甲第22号証は、2009年及び2010年に取り上げられた「フルテクトマスク」に関連した新聞記事であり、甲第23号証は、「フルテクトマスク」に関して2012年及び2013年に雑誌に掲載された広告記事の写しである。
このように、引用商標は、衛生マスクに約6年間継続して使用されており、請求人の商品に係る商標であると取引者、需要者に愛好されているといえる。
そのため、このような状況において、衛生マスクの市場で新たに本件商標が付されたマスクが流通した場合、商標が互いに紛らわしいために出所の混同が生じる可能性が高いといえる。例えば、ウェブ検索サイト「Google」で「ウルテクトマスク」と検索すると、関連する検索キーワードとして「フルテクトマスク」や「シキボウフルテクトマスク」が表示されることからも窺える(甲24)。
したがって、本件商標は引用商標との間で、現実の取引の場においても混同を生ずるおそれが大きいといえる。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標とは類似の商標であり、また、その指定商品も同一である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効にされるべきである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出している。
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標と引用商標とを外観上比較した場合、欧文字の構成において、本件商標は「ULTECT」、引用商標は「FLUTECT」であり、両者はアルファベットの文字数において異なり、また語頭の「F」の文字の有無において異なる。さらに、引用商標は「フルテクト」の片仮名を伴うものであるから、外観上、本件商標と引用商標とは、十分に識別可能であることは明らかである。
(2)本件商標と引用商標とを観念上比較した場合、本件商標は特定の観念を生じない造語であり、他方、引用商標は、インフルエンザを意味する「FLU」(乙1)と「プロテクト(防御)」を略したと理解し得る「テクト(TECT)を組み合わせた造語であり、「インフルエンザ防止」といった意味を暗示する造語として理解可能であるから、本件商標と比較した場合に、商標全体の有する意味合いにおいて大きく異なる。
(3)本件商標と引用商標とを称呼上比較した場合、本件商標からは「ウルテクト」の称呼が生じ、引用商標からは「フルテクト」の称呼が生じるところ、両称呼は、称呼における識別上重要な要素を占める語頭にあって、母音である「ウ」の音と無声摩擦音(f)の子音に母音(u)を伴った「フ」の音に、聴別し得る音の差異を有するものであるから、この差異が両称呼全体に及ぼす影響は大きく、それぞれ一連に称呼した場合にも、語感が異なり、互いに紛れて聴取されるおそれはない。
また、引用商標については、「FLU」の文字部分から「インフルエンザ」のイメージが想起されるものであるから、英語でインフルエンザを意味する引用商標の語頭音「フル」と、全くの造語である本件商標の語頭音「ウル」の相違は、より印象に残りやすいといえる。
(4)そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、類似とすべき根拠がないため、その指定商品の類否に関わらず非類似の商標であって、商標法第4条第1項第11号の適用対象外であるから、請求人の主張する無効理由には該当しない。
2 審決例及び他の並存登録例について
(1)請求人は、過去の審決例を根拠に「ウ」と「フ」の音がきわめて類似する旨の主張をしているが、それらの審決は最も新しい審決でも平成6年(1994年)のものであり、今から20年前の審決である。
商標の類否判断は、時代とともに変化し得るものであり、請求人が提示した審決は、現在の審査実務に合致していない。
(2)新しい年代の審決例及び併存例を考慮すれば、引用商標についてのみ、これらの並存例とは異なる過大な後願排除効を認めるべき特段の理由もなく、審査の公平性の観点からは、本件商標もこれらの並存例と同様に扱われるべきである。商標の類否判断は、時代とともに変化し得るものであり、請求人の挙げる20年以上前の審決よりも、近年の審決の傾向及び現在の審査実務に基づく並存登録例をより重視して、類否判断を行うのが妥当である。
3 取引の実情について
(1)被請求人が本件商標を使用しているのはクリーンルーム用の簡易マスクであって(乙12)、微粒子よりも細かいメッシュ構造のナノファイバーからなるフィルターをマスクの内部構造に含んでおり、フィルターが捕集できる粉塵の割合が98%と非常に高いことが特徴である。
(2)マスクの国内市場規模については、日本衛生材料工業連合会の統計によれば、2013年の産業用・医療用・家庭用のすべての国内在庫量でいうと14億400万枚である(乙13)。一方、2013年の請求人の「フルテクトマスク」の販売数量は19万5千枚である(甲17)。
そして、家庭用マスクの市場を示す統計(乙14)によれば、2012年の売上高は166億円、2013年の見込みは206億円である。マスクの分野において、輸入品(主に中国からの輸入品)を100%とした場合の国産品の比率は、2013年において約27%、2012年において約20%である(乙13)。また、一般消費者の購入価格の平均値でいうと、マスク単価を高めに設定しても、国産品の単価が15円/1枚、輸入品が10円/1枚程度である。そして、2012年から2013年にかけては、家庭用マスクのマーケット全体の売上高は24%向上しており、価格の高い国産品の占める割合が低いにも関わらず、売上高が大きく伸びていることは、売上枚数が大きく伸びていることの証左でもある。
以上のとおり、いかなる統計数値と比較しても、請求人の販売数量はわずかなシェアしか占めていない。
そのような状況において、商標が外観、称呼及び観念いずれの点からも引用商標とは類似とすべき理由のない本件商標と、衛生マスクのマーケットにおいて占める割合が極めて少ない引用商標とが、現実の取引の場において混同を生じるおそれが大きいという請求人の主張は、その根拠を欠くものである。
(3)請求人はインターネット検索エンジンGoogleの検索結果(甲24)をもって混同のおそれの根拠としているが、検索キーワードの選択は検索エンジンの機械的言語処理によってなされるのであるから、市場における混同のおそれを立証する証拠としては不適当である。
4 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ULTECT」の欧文字からなるところ、その綴りが、外国語の辞書等には見られない綴りであるから、親しまれた既成の観念を有しない一種の造語として、認識し、把握されるものである。
そして、本件商標は、我が国で親しまれた外国語である英語の読みに倣って称呼するに、例えば、「ultra」が「ウルトラ」の如く発音され、「protect」が「プロテクト」と発音される例に倣い、本件商標は「ウルテクト」の称呼を生ずるものといえる。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「フルテクト」の片仮名及び「FLUTECT」の欧文字からなるところ、欧文字と片仮名を併記した構成からなる商標においては、その片仮名部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるときは、片仮名部分から生じる称呼が、当該商標より生じる自然の称呼とみるのが相当であるから、引用商標も「フルテクト」の称呼のみを生じるものといえる。
また、引用商標は、外国語の辞書等には見られない綴りの欧文字とその表音からなるものであるから、親しまれた既成の観念を有しない一種の造語として認識し把握されるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを対比するに、本件商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、それぞれの構成に照らすならば、両商標は、外観上、判然と区別し得る差異を有するものである。 また、本件商標と引用商標の欧文字部分「FLUTECT」とを対比してみても、両者は綴りを異にするものであって、その構成中、看者の注意を惹く語頭部分において「UL」と「FLU」の文字が相違することにより、全く別異の印象を与えるものであるから、時と処を別にして両者を観察したとしても、外観上、相紛れるおそれはないものというべきである。
次に、本件商標から生じる「ウルテクト」の称呼と引用商標から生じる「フルテクト」の称呼を対比するに、両者は、称呼の識別において重要な語頭音が「ウ」の音と「フ」の音とで相違するものであり、しかも、相違する両音は、「ウ」の音が、「母音の一つ。前舌面を下歯の歯ぐきにわずかに触れ
る程度に後退させ、後舌面を高め、唇を尖らせ、口腔の狭い部分から声を出すことによって発する。」ものであるのに対し、「フ」の音が、「両唇を接近させて、その間から発する無声摩擦音(F)と母音(u)との結合した音節。」であって、それぞれの調音方法や発声方法が異なるものである。そして、かかる差異が冗長とはいえない全体の称呼に及ぼす影響は、決して少なくなく、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の音感、音調が異なったものとなり、相紛れることなく聴別し得るものといえる。
さらに、本件商標と引用商標は、特定の観念を有しないものであるから、観念において相紛れるおそれがあるということはできないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標ということができる。
なお、請求人が挙げる審決例は、対比される商標の構成が本件とは異なり、事案を異にするものであるから、本件の審理判断に影響を及ぼすものではない。
(4)したがって、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、その指定商品が同一のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-04-14 
結審通知日 2015-04-17 
審決日 2015-05-11 
出願番号 商願2013-92255(T2013-92255) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (W05)
T 1 11・ 261- Y (W05)
T 1 11・ 263- Y (W05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2014-04-11 
登録番号 商標登録第5663625号(T5663625) 
商標の称呼 アルテクト、ウルテクト 
代理人 江森 健二 
代理人 長門 侃二 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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