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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W41
審判 全部申立て  登録を維持 W41
管理番号 1301762 
異議申立番号 異議2015-900007 
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-01-09 
確定日 2015-06-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第5709295号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5709295号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5709295号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成26年6月16日に登録出願され,第41類「資格付与のための資格試験の実施及び資格の認定・資格の付与,その他の技芸・武道・スポーツ又は知識の教授,武道・スポーツの競技会の企画・運営又は開催,その他のスポーツの興行の企画・運営又は開催,セミナー・講習会・研修会又はシンポジウムの企画・運営又は開催,録音済み・録画済みのDVD・その他の記録媒体の貸与,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,武道の術技・術芸・演武の演出又は上演及びこれらに関する情報の提供,その他の演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,武道場の提供,その他の運動施設の提供」を指定役務として,同年9月24日に登録査定,同年10月10日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 躰道5条訓について
「躰道5条訓」は,日本の武道として知られる「躰道」の創始者である初代祝嶺正献氏が,躰道を行う上での心構えとして提唱したものであり,躰道を修練する目的を達成するための基本的な心得として,また,相手の攻撃を防ぐために自身が備えておくべき「心・態・気・行・技」を,躰道5条訓として纏めたものである。なお,「躰道5条訓」の最終行に記載された「岳雲」とは,初代祝嶺正献氏自身を示すものである。
「躰道5条訓」は,躰道の道場での稽古の前や,躰道の大会の開会式などで唱和されており,躰道を学ぶ者であれば誰もが熟知しているものである。
躰道は,1965年(昭和40年)に,初代祝嶺正献氏が沖縄で「手(ティー)」を母体にして発祥させた玄制流空手をさらに発展させて創始した新しい武道であり(甲3),約30年前に,躰道の道場等への頒布や貢献者等への授与のために「躰道5条訓」のプレート(甲4)が初代祝嶺正献氏の直筆に基づいて作成されたが,このプレートからも明らかなように,本件商標は,初代祝嶺正献氏の直筆による「躰道5条訓」をそのまま商標として出願したものである(甲1)。
そして,「躰道5条訓」は,道場や稽古場に掲げられる場合もある。
2 印刷物を介した「躰道5条訓」の周知について
「躰道5条訓」は,また印刷物を介して周知されている。例えば,申立人である一般社団法人日本武藝躰道本院の下部組織であるNPO法人日本躰道協会は,毎年様々な躰道の競技会を開催しており,各開催日に配布されるプログラムには,ほぼすべてに「躰道5条訓」が掲載されている(甲6?甲24)。
また,躰道は様々な雑誌で紹介されているが,「躰道5条訓」も同時に掲載されている記事もある(甲25)。
3 商標法第3条第1項第6号について
本件商標の外観は,躰道5条訓というタイトルと,躰道を行う上での五つの心構えを,それぞれ1条毎に行間を挟んで縦書きに書き並べたものであり,一見して唱和すべき一連の訓条として把握される一方,全体として12行にも亘っているために1つの標章としてみた場合には極めて冗長である。したがって,本件商標が例えば第41類のスポーツまたは武道に関連した役務に使用された場合に,「躰道5条訓」を知らない者は,本件商標が何等かのスポーツまたは武道に関する心構え等を表示したものと認識する場合はあっても,本件商標がこれらの業務に係る者を識別する標識であると認識するとは考えられない。
まして,躰道を指導する者や指導を受ける者など,躰道を知っている者であれば,本件商標が表示する内容が,初代祝嶺正献氏が躰道を行う上での心構えとして提唱されたものであり,躰道を行う上でこれを学び,稽古や大会で唱和し,道場や稽古場に掲げられ,大会のプログラム等に掲載されるものであって,躰道に係る者すべてが共有すべき心構えであって,第41類のスポーツまたは武芸に関連した役務に使用された場合に,これらの業務に係る特定の者を識別する標識であると認識することはあり得ないことである。
以上のとおり,本件商標は,その態様から,指定役務に使用しても何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから,商標法第3条第1項第6号の規定に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
申立人である一般社団法人日本武藝躰道本院は,初代祝嶺正献氏が昭和40年に設立した躰道本院が平成24年9月に一般社団法人の許可を取得し現在の名称になったものである(甲26)。申立人は,世界における躰道組織で最も上位に位置する組織であり,その下に世界躰道連盟が位置し,さらにその下にNPO法人日本躰道協会をはじめとする各国の躰道協会が位置している(甲27)。申立人は,躰道における最高機関として,躰道全体を統制し,躰道に関する実技統制・段級位などの審査における資格付与・審査員や審判員の教育や認定を行っている。一方,証拠として提出する躰道に関する様々な競技会のプログラム(甲6?甲24)に示されている通り,これらの競技会を開催し運営しているのは,NPO法人日本躰道協会(甲28)であり,申立人の下部組織である。本件商標の商標権者である一般社団法人躰道本院(甲29)は,申立人及びNPO法人日本躰道協会とはまったく別個の法人である。
したがって,本願商標が識別力を有し登録可能な商標であったとしても,本願商標を構成する「躰道5条訓」は,躰道に係る者すべてが共有すべき躰道における心得であって,本件商標権者のみに対して,本件商標に対する独占的な商標権が付与されることは,本件商標権者以外の躰道の関係者にとって,大きな混乱と困惑をもたらすものであり,社会公共の利益に反することは明らかである。
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
商標法は,同法第2条第1項において「この法律で『商標』とは,文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であつて・・・」と「商標」についての定義をしており,また,同法第3条第1項は,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については,次に掲げる商標を除き,商標登録を受けることができる。」と商標登録の要件を規定し,同項第6号において,「前各号に掲げるもののほか,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」として,同号に該当する商標は,商標登録を受けることができないとしている。
これらの各条文によれば,商標法は,第2条第1項に定める要件を備えたものであれば,これを商標法上の商標としており,その構成・態様について特段の制限を設けてはおらず,上記要件を備えた商標が,自他商品又は役務を区別し一定の出所から流出したものであることを一般に認識させることができるものであれば,同法第3条第1項には該当しないとしていると解するのが相当である。
しかして,同法第3条第1項第1号ないし第5号に掲げる商標のほか,同第6号に該当するとして登録を阻却される商標には,地模様(例えば,模様的なものの連続反覆するもの),標語(例えば,キャッチフレーズ),「Net」,「Gross」等のように,その商品又は役務の数量等を表示する場合に用いられる文字等,現元号をあらわす「平成」の文字などのほか,自他商品又は役務を区別し一定の出所から流出したものであることを一般に認識させることができない商標などが該当するものと解すべきである。
これを本件についてみるに,本件商標は,別掲のとおりの構成よりなるものであるところ,そこには五箇条からなる訓示が箇条書きされており,全体として冗長であって,かつ,これらの部分は,構成が散漫であり,その要部を把握することができないものであるから,自他役務を区別し一定の出所から流出したものであることを一般に認識させることが困難なものといえるものである。
しかしながら,最初の行にある「躰道5条訓」の文字は,これが指定役務に関する内容や役務の質などを表すものとして広く一般に知られているとはいえず,また,最後の行にある「岳雲」の文字も,特定の意味を有しない造語よりなるものというべきである。
そうとすれば,本件商標は,その構成中の「躰道5条訓」の文字ないし「岳雲」の文字が自他役務を区別し一定の出所から流出したものであることを一般に認識させる特徴的な部分であるというべきである。
してみれば,本件商標は,その構成中の「躰道5条訓」の文字ないし「岳雲」の文字部分については,自他役務の識別機能を果たし,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第6号に該当しないというべきである。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は,商標登録を受けることができないと規定している。そして,これに該当する商標には,「(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合等が含まれるというべきである。」と判示した判決がされているところである(知財高裁 平成22年7月15日判決 平成21年(行ケ)第10173号)。
これを本件についてみるに,本件商標は,上記の(a),(c)及び(d)に該当しないことは明らかである。
そこで,本件商標が,上記の(b)あるいは(e)に該当するものであったか否かについてみるに,本件商標権者が,その構成中に「躰道5条訓」ないし「岳雲」の語を有する本件商標を使用することで,これが社会公共の利益に反するというべき証拠ないし事情は認められず,また,本件商標を本件商標権者が使用することが社会の一般的道徳観念に反するということもできないものである。
さらに,本件商標の登録出願の経緯に,申立人との関係で信義則に反するなど何らかの社会的相当性を欠く事情があったとは,証拠上認められず,その他,本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠く事情や商標法の予定する秩序に反する行為があったということもできないものである。
したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできないものである。
この点に関して,申立人は,「本件商標を構成する『躰道5条訓』は,躰道に係る者すべてが共有すべき躰道における心得であって,本件商標権者のみに対して,本件商標に対する独占的な商標権が付与されることは,本件商標権者以外の躰道の関係者にとって,大きな混乱と困惑をもたらすものであり,社会公共の利益に反することは明らかである。」旨を主張している。
しかしながら,本件商標権者である一般社団法人躰道本院は,申立人が提出した商標権者の履歴事項全部証明書(甲29)によれば,その目的に「玄制流空手及び躰道の創作意図と特定実技の内容と形態を厳正,確実に伝授し・・・」とあり,武道(玄制流空手及び躰道)の普及活動・実技指導などを行うことを目的とする社団法人であることから,本件商標権者も「躰道」の文字を構成中に有する商標を採択して使用する蓋然性を有しているということができるものである。
そうであれば,先願登録主義を旨とする我が国の商標登録制度のもとにおいては,本件商標権者以外に本件商標を使用する武道関係者が存在するからといって,本件商標ないし「躰道」,「躰道5条訓」などの商標が,本件商標権者以外の者の使用に係る商標として周知性を獲得しているとの実情のもと,本件商標権者が,その者に無断で登録出願をしたなど特段の事情が認められない限り,本件商標権者が本件商標を登録出願した行為が社会公共の利益に反するということはできないというべきである。そして,上記した実情や事情があることを認め得る証拠は提出されておらず,当審の職権による調査によっても,そのような事情があることを発見することはできなかった。
よって,本件商標は,商標第4条第1項第7号には該当しないというべきである。

3 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第7号に違反してされたものではないから,商標法第43条の3第4項により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。




【別掲】 本件商標

異議決定日 2015-06-02 
出願番号 商願2014-49805(T2014-49805) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W41)
T 1 651・ 16- Y (W41)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
金子 尚人
登録日 2014-10-10 
登録番号 商標登録第5709295号(T5709295) 
権利者 一般社団法人躰道本院
商標の称呼 タイドーゴジョークン、タイドー、ココロメーキョーニシテショギョーノジッソーオウツシ、シンイタダシキオエレバマドワサレルコトナシ、タイタンセーニシテシンギョーノイッタイオハカリ、タイイタダシキオエレバアナドラレルコトナシ、キジューイツニシテセーキオタンデンニハッシ、キイタダシキオエレバオソレオノノクコトナシ、ギョージッセンスルニリンリノジョードーオマモリ、ギョーイタダシキオエレバアヤマリオコナウコトナシ、ギオーヘンニシテシンタイオジザイニウツシ、ギイタダシキオエレバセーサレルコトナシ、ガクウン 
代理人 塩谷 享子 
代理人 佐藤 明子 
代理人 吉澤 和希子 

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