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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2014900320 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W2930
管理番号 1301749 
異議申立番号 異議2014-900066 
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-03-07 
確定日 2015-05-11 
異議申立件数
事件の表示 商標登録第5499263号に係る防護標章登録第1号の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 商標登録第5499263号に係る防護標章登録第1号の登録を取り消す。
理由 1 本件標章
本件商標登録第5499263号に係る登録第1号防護標章(以下「本件標章」という。)は、「おまめさん」の文字を標準文字で表してなり、第29類「煮豆」を指定商品として平成24年6月8日に設定登録された登録第5499263号商標(以下「原登録商標」という。)の防護標章として、同年9月13日に登録出願され、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」を指定商品として同25年10月7日に登録審決され、同年11月29日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
(1)原登録商標は、1976年(昭和51年)以降使用されており、原登録商標が付された商品が新聞等の広告媒体により紹介されていることは事実であるが、原登録商標が使用されている商品は「煮豆」のみであって、仮に、原登録商標が需要者の間に広く認識されているとしても、あくまで「煮豆」の商品名として広く認識されているにとどまるから、「煮豆」と非類似の商品に付されたとしても出所の混同を来すほどの強い識別力を備えているとはいえない。
(2)2013年(平成25年)6月7日から同月12日にかけて実施したアンケート結果によると、「おまめさん」の文字のみから想起される自由回答の設問に対し、55.7%が「フジッコ」又は「ふじっこ」とは回答しなかったことが認められる(甲2)。この事実は、そもそも原登録商標がその商標権者(以下、原登録商標の商標権者を単に「商標権者」という。)の出所を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていないことを示している。
(3)申立人は、愛知県名古屋市千種区内山三丁目11番17号を本店とし、地域の主なデパート、スーパーマーケットに出店し、「御嘉季処 み乃龜」として「菓子類」の販売を行っており、遅くとも1986年(昭和61年)頃から現在まで、本店を含む全ての出店で商品「豆菓子」の商標として「お豆さん」と「み乃龜お豆さん」を使用しているから(甲3?甲7)、両商標は、長年の使用により周知なものとなっていることが明らかである。よって、「お豆さん」及び「み乃龜お豆さん」の商標と類似している原登録商標を、商品「豆菓子」に使用した場合、申立人の出所を表示するものといえるから、商標権者の出所を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえない。
(4)以上のとおり、本件標章は、商標法第64条第1項の要件を満たさないものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。

3 取消理由通知
当審において、平成26年7月28日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)原登録商標は、商標権者により商品「煮豆」について使用されているものであるが(以下、「おまめさん」の文字からなる商標を使用した煮豆を「使用商品」という。)、煮豆とは非類似の広範な商品について出所混同を来す程の強い識別力を有するまでの著名性を獲得しているものとまでは認められない。
(2)本件標章の指定商品は、前記1のとおり、煮豆との関連性が希薄であって、販売コーナー等も異なる食用油脂、食肉、卵、食用魚介類、茶、氷、菓子、パン、調味料、香辛料、酒かす等を含む広範な食料品である。
(3)以上よりすれば、他人が原登録商標を本件標章の指定商品について使用した場合に、該商品が商標権者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められないから、本件標章は、商標法第64条第1項に定める要件を欠くものである。

4 商標権者の意見
商標権者は、本件標章の登録が維持されるべき理由を要旨次のように主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第166号証を提出した。
(1)原登録商標が単独で取引者及び需要者間で広く知られていることについて
使用商品の包装容器において、自他商品の識別標識として取引者及び需要者の注意を喚起し、かつ、記憶にとどまる表示は「おまめさん」の文字であり、取引者及び需要者はこの「おまめさん」の文字により自他商品を識別している(乙1?7、35、66、76等)。
「フジッコの”おまめさん”」のフレーズ(サウンドロゴ)については、使用商品のコマーシャルが1978年(昭和53年)に開始されて以来36年にわたって使用されているものであって(乙81)、このような継続的なテレビコマーシャルにおいて同一のフレーズが繰り返し使用された結果、本件登録審決時において、取引者及び需要者の記憶には、「『おまめさん』といえば『フジッコ』」という認識が定着している。
本件標章の指定商品の需要者層を対象としたインターネットアンケート調査において、「おまめさん」の文字のみから想起される自由回答の設問に対し、「フジッコ」又は「ふじっこ」との回答が44.3%、「煮豆」との回答が19.1%という結果が得られた(乙152)。
以上のとおり、原登録商標は、単独で、本件標章の指定商品の需要者間において、商標権者の業務に係る商品「煮豆」を表示するものとして広く認識されている著名な商標である。
(2)食料品全体における「煮豆」の位置付け
食料品全体の販売規模に対する「煮豆」の販売額が占める割合は特筆するに値しないかもしれないが、我が国における「煮豆」の市場規模は、2011年の販売額ベースの実績で約735億円という決して小さいとはいえない規模である(乙130、163)。
「煮豆」は副菜として日常生活で普通に食される食材であり、小売単価は高額ではなく、全国の食品スーパーやコンビニエンスストアで購入することができる慣れ親しまれた商品であって、これを購入するのは、各種の食料品も購入する一般消費者であるから、食料品全体の売上規模に対する「煮豆」の市場規模が占める割合が仮に僅少であったとしても、そのことは、原登録商標の著名性を阻却する合理的な理由とはなり得ない。
以上のとおり、使用商品が「煮豆」という極限られた商品であること、及び、「煮豆」が数多くある食料品全体に占める割合が明らかでないことは、原登録商標が本件標章の指定商品について使用された場合に商品の出所について混同を生じさせる程度に著名であることを否定する理由とはなり得ない。
(3)原登録商標の独創性について
原登録商標は、使用商品について長年にわたり使用されており、商標権者の多大な企業努力により使用商品の高いマーケットシェアが維持され、取引者及び需要者間において、「おまめさん」といえば商標権者の業務に係る使用商品が想起される程の強い出所表示機能を備えるに至ったという事実が存するにもかかわらず(乙1?146、152、154?162)、取消理由はこのような事実を捨象し、「おまめさん」の独創性のみに着目して、これを出所識別力の極めて強い語とまではいえないと判断している点で、妥当性を欠くといわざるを得ない。
(4)第三者による「お豆さん」又は「おまめさん」の語の使用について
申立人の提出に係る甲第3号証ないし甲第7号証は、申立人が販売する商品のパンフレットであるところ、これらが本件登録審決時の時点において現に印刷され、頒布されていたかは判然としない。
取消理由が引用する3件のインターネットサイトは、個人が創作したケーキや料理の名称中に原登録商標とは異なる態様である「お豆さん」の文字が使用されている例、豆菓子の紹介文等において、「おまめさん」の文字が僅かに使用されている例にすぎず、これらの使用例は、原登録商標の独創性についての判断材料となる場合があるとしても、その使用例は商標権者による使用商品についての宣伝広告の規模や各種メディアにおける使用商品の紹介の規模とは比較の対象とならないほどの、一個人又は一事業者による極めて規模の小さな使用を示すにすぎず、原登録商標が獲得している著名性を否定又は希釈することを明確に認識し得る根拠となるような内容とはいえない(乙164?166)。
(5)原登録商標の強い識別力について
商標権者の企業努力と、各種メディアにおける使用商品の紹介などの相乗効果が相俟って、使用商品のマーケットシェアは年々拡大し、少なくとも本件登録審決時前の5年間における使用商品のマーケットシェアは30%以上を占める。
身近な商品である「煮豆」のマーケットにおいて、使用商品のシェアが30%以上という圧倒的な数字を維持していることをも併せて勘案すれば、仮に、我が国の食料品市場に数多く存在する食料品全体に占める「煮豆」の割合が高くなかったとしても、そのことをもって、直ちに原登録商標に備わった強い識別力が否定されるものではない。
原登録商標の長年にわたる使用及び使用商品の圧倒的なマーケットシェアを考慮すれば、原登録商標は、その独創性の低さを克服して、商標権者の業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者間に広く認識される、極めて強い識別力を発揮する商標となるに至ったというべきである。
そして、たとえ第三者が豆に関連する商品を説明する語として、「お豆さん」や「おまめさん」を使用しているとしても、それらの事情は、独創性の程度の低さを克服して、商標権者の業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者間に広く認識されるに至った原登録商標が備える強い識別力を否定する合理的な理由とはなり得ない。
(6)本件標章の指定商品と原登録商標の指定商品「煮豆」との関連性について
本件標章の指定商品と原登録商標の指定商品「煮豆」との関連性については、両商品の生産や販売等の実態、及び、商標権者の業務内容を考慮して判断すべきでる。
本件の指定商品は、いずれも原登録商標の指定商品「煮豆」と同様に、スーパーマーケット等の日用品・飲食料品が販売される小売店で取り扱われる一般消費者向けの商品であって、その需要者層は商品「煮豆」と重複する(乙152)。
使用商品を利用した様々な料理やデザートなどのレシピが広く需要者に紹介され、使用商品が販売される食品スーパーのチラシには、使用商品が第29類又は第30類に属する他の商品と一緒に掲載されるという業界の実情もある(乙72?74、100、101、104?106、128、129)。
商標権者は我が国有数の大手食品メーカーであって、主に食品スーパー等で販売される一般消費者向けの食料品を主に取り扱うものであるから、その事業内容は一般消費者向けの食料品の範ちゅうに属する本件標章の指定商品との間で関連性を有しているというべきである(乙122、125?127)。
以上を勘案すれば、原登録商標に係る指定商品「煮豆」と本件標章の指定商品との関連性は決して希薄とはいえず、両者は、他人が本件標章の指定商品について原登録商標と同一の商標を使用した場合には、その商品が、商標権者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれが認められる関係にあるというべきである。
(7)取消理由に対する意見のまとめ
以上のとおり、商標権者が提出する乙各号証から客観的に明らかとなるのは、原登録商標が長年にわたり使用されたことにより、本件審決時において、原登録商標は単独で、商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されているに至っていたという事実である。
そして、「煮豆」が副菜として広く一般に日常的に食されている類の商品であって、食品スーパー等の身近な小売店で入手できる商品であること、我が国の煮豆市場における使用商品のマーケットシェアが本件審決時前の5年間で常に30%を超えていること、さらに、本件標章の指定商品と「煮豆」は、小売店における販売コーナーが異なるとしても、その取引者及び需要者の範囲は一致し、商標権者の事業内容は本件標章の指定商品との関連性を認めるに足るものであるから、これらを総合して勘案すれば、原登録商標は、本件登録審決時において既に、これを他人が本件標章の指定商品について使用した場合に、その商品が商標権者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれが認められるほどの強い識別力を備えていたものというべきである。
(8)その他、本件標章の登録が維持されるべき理由
申立人の主張は、原登録商標が昭和51年から現在に至るまで継続して使用されており、使用商品が30%を超える圧倒的なマーケットシェアを有するという事実から容易に導き得る原登録商標の強い識別力を備えるという事実を、客観的な証拠による裏付けをもって否定又は論破する内容ではなく、「お豆さん」及び「み乃龜お豆さん」の語の使用に係る(しかも発行日さえ不明な)パンフレットをわずかに提出し、申立人自身が出願した商願2013-58388「み乃龜 お豆さん」に対して通知された本件標章を引用した拒絶理由を解消することを目的として、本件標章の指定商品中の「豆菓子」についての登録取消を論拠なく申し述べたにすぎない内容である。
取消理由は、原登録商標が「おまめさん」という独創性の程度が高いとはいえない語であることや、第三者が「おまめさん」や「お豆さん」を使用している例が僅かに認められることなどに殊更に着目して、第三者による商標選択の余地が狭まることや商標使用の確保する必要性といった公益性を重視する一方で、原登録商標の38年の長きにわたる使用と使用商品の30%を超える圧倒的なマーケットシェアを有するという事実を適切に評価することなく通知されたといわざるを得ない。
なお、公益性について敢えて言及するならば、そもそも「豆」を親しみを込めて表現する際には「お豆さん」の語を用いれば足るのであり、「豆」程度の漢字は小学校の低学年でも容易に理解することができるので、わざわざ平仮名で表示しなければならない必要性は見当たらない。
本件異議申立により本件標章の登録が取り消された場合には、商標権者の弛みない企業努力によって原登録商標に蓄積した業務上の信用が害されることになり、防護標章制度の趣旨が没却される。
一方で、その登録取消により満たされるのは、申立人が出願した商標「み乃龜 お豆さん」(商願2013-58388)に対して通知された拒絶理由の解消と、その結果としての商標登録という極めて私的な利益にすぎないので、このような場合には、防護標章制度の趣旨のみならず、異議申立制度の趣旨さえも没却するに等しい結論に帰着することになる。

5 当審の判断
(1)商標法第64条第1項について
ア 防護標章登録の要件を定める商標法第64条第1項については、知的財産高等裁判所の判決(平成21年(行ケ)第10189号、平成22年2月25日判決)において、「同項の規定は、原登録商標が需要者の間に広く認識されるに至った場合には、第三者によって、原登録商標が、その本来の商標権の効力(商標法36条37条)の及ばない非類似商品又は役務に使用されたときであっても、出所の混同をきたすおそれが生じ、出所識別力や信用が害されることから、そのような広義の混同を防止するために、『需要者の間に広く認識されている』商標について、その効力を非類似の商品又は役務について拡張する趣旨で設けられた規定である。そして、防護標章登録においては、(ア)通常の商標登録とは異なり、商標法3条4条等が拒絶理由とされていないこと、(イ)不使用を理由として取り消されることがないこと、(ウ)その効力は、通常の商標権の効力よりも拡張されているため、第三者による商標の選択、使用を制約するおそれがあること等の諸事情を総合考慮するならば、商標法64条1項所定の『登録商標が・・・需要者の間に広く認識されていること』との要件は、当該登録商標が広く認識されているだけでは十分ではなく、商品や役務が類似していない場合であっても、なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること、すなわち、そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すものと解すべきである。」と判示されているところである。
イ 前記判示を踏まえ、原登録商標の著名性について検討するに、商標権者の提出に係る証拠方法(乙1ないし146、152及び154ないし162)によれば、以下の事実が認められる。
(ア)商標権者は、「おまめさん」の文字からなる商標を商品「煮豆」について遅くとも昭和51年頃から現在に至るまで使用している。
(イ)前記「おまめさん」の文字からなる商標を使用した商品「煮豆」(使用商品)は、豆の種類、容量、製法、味付け等毎に異なるパッケージのシリーズとして展開され、現在では27種類の商品となっている(乙122)。
(ウ)使用商品の包装用容器(パッケージ)には、前面上方中央に、各文字を囲むような細線の輪郭内にやや湾曲するように太字の「おまめさん」の文字が表示され、その下方に、これと接するように豆の種類名等が大きく表示されているほか、左上隅に「ふじっ子」の文字が表示されていることが多く、「ふじっ子」の文字が表示されていないものは見当たらない。
(エ)使用商品については、昭和51年の発売以来、新聞、雑誌、テレビ等の各種メディアにより紹介されており、例えば、新聞及び雑誌には、使用商品の新シリーズの発売やテレビコマーシャル等に関する記事が度々掲載されているほか、商標権者の紹介記事や煮豆動向に関する記事、テレビ番組等においては、使用商品が商標権者の主力商品として紹介されている。
(オ)商標権者は、昭和53年から現在に至るまで使用商品について定期的にテレビコマーシャルを行っており、昭和53年から平成23年3月までに80億円を超える金額を投入し(乙82)、平成24年5月1日から6月10にかけては新たに2億2千万円を投じたテレビコマーシャルを放映した(乙83)。上記テレビコマーシャルは「フジッコの”おまめさん”」のフレーズで評判となり、昭和55年には全日本CM協議会主催のCMフェスティバルで「秀作賞」を受賞したこともある(乙126)。
また、平成7年度に「ふじっ子おまめさん」が日本食糧新聞社が制定する「ロングセラー賞」(乙116及び117)を受賞し、平成17年に「おまめさんシリーズ」が前新聞社が主催する第35回食品産業技術功労賞5部門の中の「マーケティング部門」で受賞し(乙118)、2011年(平成23年)10月20日に「おまめさん こんぶ豆」が「『ニッポンの食、がんばれ!』セレクション金賞」を受賞している(乙119)。
さらに、商標権者は、雑誌、新聞等のメディアを通じて使用商品の広告宣伝を定期的に行っているほか、使用商品の販売促進のためのキャンペーンやカタログ、リーフレット配布による広告宣伝も行っている。平成24年11月には、株式会社宝島社から商標権者監修による「フジッコのおまめさんレシピ」と題するレシピ本が発行され、そのことが新聞、インターネット等で紹介された(乙136ないし146)。
(カ)商標権者は、1960年(昭和35年)に創業し、昆布製品を始め、豆製品、総菜製品、デザート製品等を製造販売しており、平成23年度3月期の売上高は522億円(関連会社6社を含めた連結売上高は527億円(乙125))となっている。
また、平成18年10月から同23年9月までの我が国の「煮豆市場」における使用商品のマーケットシェアは毎年30%以上を占めている(乙123)。
ウ 前記イの事実によれば、原登録商標は、商品「煮豆」について使用されているものであり、その多くは「ふじっ子」の文字とともに使用され、また、テレビコマーシャルによる「フジッコの”おまめさん”」のフレーズとともに評判になったといえるものであって、「ふじっ子」の文字に係る商標と一体になって、商標権者の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されているものというべきである。
使用商品は、「煮豆」という極く限られた商品であり、その存在が数多くある食料品全体に占める割合も明らかでなく、もとより、原登録商標の「おまめさん」は、煮豆の原料である「豆」を丁寧かつ親愛の気持ちを込めて称する語であり、それ自体独創性のあるものでなく、出所識別力の極めて強い語とまではいえない。
また、申立人の提出に係る甲第3号証ないし甲第7号証には、豆を使用した豆菓子について、「お豆さん」と称して使用していることが認められる。
さらに、「第17回愛情お料理コンテストレシピ/お豆さんと米粉の素敵な出会い和シフォンケーキ」(http://www.ai-ryori.jp/ai_con/check/020/recipe/003.html)の見出しの下、材料として「豆・・・30g(金時豆・大豆・ひよこ豆・えんどう豆/白いんげんなど)」の記載(乙164)、鎌倉まめやのウェブサイト(http://www.mame-mame.com/18_93.html)には、「季節のおまめさん”青さわさび”(季節の豆菓子)75g/まめやがおすすめの豆菓子を、月替わりでお届けします。」の記載とともにピーナッツ様の図形の右側に「今月のおまめさん」の表示(乙165)、「COOKPAD」のウェブサイト(http://cookpad.com/recipe/2103045)には、「豆腐とはんぺんのふわふわ焼きinお豆さん」の見出しの下、「ダイエット中なのでヘルシー&健康的に☆お豆の消費がしたくて。。。」及び材料として「お豆 100g」の記載(乙166)がある。
そうすると、豆を材料とした商品について、「お豆さん」又は「おまめさん」の語が使用されている実情がうかがえる。
以上からすると、原登録商標は、煮豆とは非類似の広範な商品について出所混同を来す程の強い識別力を有するまでの著名性を獲得しているものとまでは認められない。
そして、本件標章の指定商品は、前記1のとおり、煮豆との関連性が希薄であって、販売コーナー等も異なる食用油脂、食肉、卵、食用魚介類、茶、氷、菓子、パン、調味料、香辛料、酒かす等を含む広範な食料品である。
したがって、他人が原登録商標を本件標章の指定商品について使用した場合に、該商品が商標権者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められないから、本件標章は、商標法第64条第1項に定める要件を欠くものである。
(2)商標権者の意見について
商標権者は、「煮豆」が副菜として広く一般に日常的に食されている類の商品であって、食品スーパー等の身近な小売店で入手できる商品であること、我が国の煮豆市場における使用商品のマーケットシェアが本件審決時前の5年間で常に30%を超えていること、さらに、本件標章の指定商品と「煮豆」は、小売店における販売コーナーが異なるとしても、その取引者及び需要者の範囲は一致し、商標権者の事業内容は本件標章の指定商品との関連性を認めるに足るものであるから、これらを総合して勘案すれば、原登録商標は、本件登録審決時において既に、これを他人が本件標章の指定商品について使用した場合に、その商品が商標権者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれが認められるほどの強い識別力を備えていたものというべきである旨主張する。
しかしながら、上記(1)アのとおり、商標法第64条第1項所定の「登録商標が・・・需要者の間に広く認識されていること」との要件は、原登録商標が広く認識されているだけでは十分ではなく、商品や役務が類似していない場合であっても、なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること、すなわち、そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すものと解すべきところ、上記(1)イ及びウのとおり、原登録商標は、使用商品である「煮豆」との関係においては、その需要者に広く知られているといい得るとしても、本件標章の指定商品は、煮豆との関連性が希薄な商品を多く含む広範な食料品を指定するものであって、かつ、その煮豆の市場が数多くある食料品全体に占める割合も明らかでなく、その割合はさほど高くないと推認するのが相当であることからすれば、原登録商標は、これを本件標章の指定商品中、煮豆との関連性が希薄な商品に使用された場合であっても、なお商品の出所の混同を来す程の強い識別力を備えているものとはいえない。
また、商標権者は、前記3の取消理由は、原登録商標が「おまめさん」という独創性の程度が高いとはいえない語であることや、第三者が「おまめさん」や「お豆さん」を使用している例が僅かに認められることなどに殊更に着目して、第三者による商標選択の余地が狭まることや商標の使用を確保する必要性といった公益性を重視する一方で、原登録商標の38年の長きにわたる使用と使用商品の30%を超える圧倒的なマーケットシェアを有するという事実を適切に評価することなく通知されたものである旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、商標権者が主張する原登録商標の長年の使用や使用商品のマーケットシェアの高さは「煮豆」という極く限られた商品についてのものにすぎないことに加え、上記(1)ウのとおり、原登録商標の「おまめさん」は、煮豆の原料である「豆」を丁寧かつ親愛の気持ちを込めて称する語であり、また、本件標章の指定商品である広範な食料品との関係においても、比較的、豆を原材料とした商品の名称として採択されやすく、かつ、これを商品に使用した場合、需要者に豆が原材料であることを表示したものと認識されやすいものというのが相当であって、独創性の程度が高いとはいえないものである。そして、現に商標権者以外の者によって、豆を材料とした商品について、「お豆さん」又は「おまめさん」の語が使用されている実情がうかがえることをも踏まえれば、前記3の取消理由が事実を適切に評価していないとはいえない。
以上のとおり、商標権者の上記主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件標章の登録は、商標法第64条第1項に違反してされたといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2015-03-31 
出願番号 商願2012-74061(T2012-74061) 
審決分類 T 1 651・ 8- Z (W2930)
最終処分 取消  
前審関与審査官 石井 亮齋藤 貴博茂木 祐輔 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
根岸 克弘
登録日 2013-11-29 
登録番号 商標登録第5499263号(T5499263) 
権利者 フジッコ株式会社
商標の称呼 オマメサン、オマメ、マメサン 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 
代理人 大川 宏 

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