• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2016890003 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない W41
管理番号 1301713 
審判番号 無効2014-890034 
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-05-09 
確定日 2015-06-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5602221号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5602221号商標(以下「本件商標」という。)は、その構成中に「FRESH LEAGUE」の文字を含む別掲のとおりの構成からなり、平成25年3月6日に登録出願され、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,スポーツの興行の企画・運営又は開催」を指定役務として同年6月27日に登録査定、同年7月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。
1 当事者
(1)請求人は、九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)と称する団体である。請求人は、法人ではないが、いわゆる権利能力なき社団である。すなわち、請求人の前身である九州硬式少年野球連盟は、昭和61年に創設された歴史ある団体であり、規約を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変化にもかかわらず存続している団体であり、組織によって代表の方法、総会の運営、財産管理、その他団体としての主要な点が確定している(甲1)。
したがって、請求人は、本件無効審判の請求人となり得る(商標法77条2項、特許法6条、東京高判平成11年9月30日)。
(2)被請求人は、請求人の傘下団体であった九州東部地区連盟の構成員であった者である。
2 無効事由
(1)本件商標は、商標法第4条第1項8号に該当し、同法46条第1項1号により、その登録を無効にすべきものである。
(2)請求人は、昭和61年九州硬式少年野球連盟(フレッシュリーグ)の名称で成立し、遅くとも、昭和62年中には、自己を表す標章として本件商標の使用を始めた。このことは、請求人の昭和62年度のしおりに、硬式野球ボールの中に九州の形を模したデザインが配置され、更にその周囲に「FRESH LEAGUE 九州硬式少年野球連盟」との文字列の記載のある本件商標と全く同じ標章が印刷されていることからも明らかである(甲3)。
(3)請求人は、遅くとも昭和61年から、本件商標を自己を表す標章として、昭和61年の春季及び秋季のリーグ戦の成績表に使用している(甲4及び甲5)。
また、請求人の平成15年度の「しおり」、平成22年度の「九州硬式少年野球協会規約・大会規定」にも本件商標が使われている(甲1及び甲6)。対外的にも、地元大手スポーツ新聞である「西日本スポーツ」に本件商標が掲載されている(甲7)。
(4)平成20年1月、請求人は、九州硬式少年野球連盟から九州硬式少年野球協会へと名称を変更して現在に至っている。平成22年には、九州硬式少年野球協会の傘下団体の一つであった、北部地区連盟から「九州硬式少年野球協会東部地区連盟」(以下「東部地区連盟」という。)が分離している。
(5)以上のとおり、本件商標は、請求人を指すものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項8号の「他人の名称」に該当することが明白であるので無効とすべきである。
3 本件審判を請求するに至った経緯
(1)請求人の傘下団体である東部地区連盟の構成員らが、請求人の規約違反を繰り返し行った。請求人は、規律に従うように何度も注意を行ったが、東部地区連盟の非違行為は改まらなかった。
(2)それどころか、東部地区連盟の構成員らは、本件商標が商標登録されていなかったことに乗じて、理事の一人である被請求人をして、本件商標を登録したのである。
(3)請求人は、平成25年12月6日、東部地区連盟から、本件商標は既に被請求人名義で商標登録されたので、今後、請求人において本件商標の使用を認めない旨の書面を受領し、初めて、本件商標が被請求人によって商標登録されたことを知ったのである。
(4)以上のとおり、本件商標は、請求人が自己の名称として長年使用してきたことは公知の事実であるのに、請求人の規約に従わない東部地区連盟が、請求人を窮地に追い込むために、東部地区連盟の理事の一人である被請求人名義で商標登録をしたものである。
よって、本件商標を無効にしなければ、請求人らが自由に使用できないばかりか、著しく正義に反することは明らかである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。
1 請求人の名称と略称
請求人は、審判請求書に添付された「別紙当事者目録」の「請求人」の欄及び平成26年6月17日付の「手続補正書(方式)」表紙「2補正をする者」の「氏名」の欄において、請求人の名称は「九州硬式少年野球協会」であると自白している。
請求人の提出に係る甲第1号証の第1頁には、「第1条 この協会は、九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)と称する。」と記載されている。
同じく甲第3号証の第8頁には、「第1条 この連盟は九州硬式少年野球連盟(以下「連盟」という)と称し、通称フレッシュリーグと呼ぶ。」と記載されている。
同じく甲第6号証の第24頁には、「第1条 この連盟は九州硬式少年野球連盟(以下「連盟」という)と称し、通称フレッシュリーグと呼ぶ。」と記載されている。
以上の点から、「九州硬式少年野球協会」(従前「九州硬式少年野球連盟」とあったのを改称。)なる文言は、請求人の名称であり、「フレッシュリーグ」なる文言は、請求人の「通称」であり「名称」ではないし、「雅号、芸名若しくは筆名」ともいえないから、商標法第4条第1項第8号における「略称」に該当する。すなわち、「フレッシュリーグ」は請求人の名称であるという請求人の主張は、事実に反し失当である。
2 商標法第4条第1項第8号について
(1)商標法第4条第1項第8号は、「人格権保護の規定」(工業所有権法逐条解説)であり、「九州硬式少年野球協会」なる文言は請求人の名称であって著名性を要件としない。しかしながら、上述したように「フレッシュリーグ」なる文言は請求人の「略称」であるから、著名性が要件となる。
商標法第4条第1項第8号により他人の商標登録を阻止すべき「略称」の著名性とは、同法第4条第3項より本件商標の登録出願時(平成25年3月6日)において、一地方(九州等)のものでは足らず、全国的なものでなければならない(東京高裁昭和53年(行ケ)216号)ところ、請求人提出の全証拠に照らしても、「フレッシュリーグ」なる略称について、全国的な著名性があるとは到底認められない。
(2)「フレッシュリーグ」なる文言は、本来「入門して間もない初心者あるいは若年者のメンバーから構成されるリーグ」程の意味をなすにすぎない。
被請求人の調査によれば、千葉市では野球について請求人とは全く別異の団体が「千葉市フレッシュリーグ」を運営しており、「3年生以下の子供たちで構成されたチームによる野球大会」を実施している(乙1)。
また、「一般社団法人群馬県サッカー協会」なる団体が、野球ではないがサッカーについて下部リーグとして「フレッシュリーグ」の「AブロックとBブロック」とを運営し、試合を行っている(乙2)。
以上から、「フレッシュリーグ」なる略称は、どこでも使用されるありふれた文言であって顕著性が低いといわざるを得ず、到底請求人のみを先鋭にかつ全国的に示すようなものではない。
よって、商標法第4条第1項第8号に基づき本件商標登録を無効にすべきとする請求人の主張は失当である(東京高裁平成14年(行ケ)219号)。
3 論難に対する反論
請求人は、本審判を請求するに至った経緯として縷々述べ、被請求人をいたずらに論難する。これらの点は、本件商標登録の無効理由の存否に直接関与しない無駄な議論である。しかしながら、以下簡単に被請求人の考え方を述べる。
被請求人は、かねてより請求人側に民主的かつ公正な運営を求め、望ましくは、将来法人化して外部監査等により運営の透明性を高めるべきである。しかしながら、被請求人がこれを拒否し続けてきた。
そもそも現状では、請求人は法人格を有さず権利能力がないため、自ら商標登録出願人になることもできないし、他人から商標権を譲り受けることすらできない。
被請求人は、本件商標が何ら関係のない第三者により登録される事態を避けるため、とりあえず被請求人名(個人名)で出願し商標登録を取得したものである。もちろん、将来しかるべき法人が設立された暁には、右法人へ本件商標権を譲渡することを前向きに検討する所存である。
よって、請求人の論難は全く当たらない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではない。
よって、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 請求人適格について
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、「九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)」と称する団体であり、法人でない社団、いわゆる権利能力なき社団と認められ、団体の規約を設け、代表者を定めているほか、役員、会議及び機関、財産管理等について定めていることが認められる(甲1、甲3及び甲6)。
したがって、請求人は、商標法第77条第2項において準用する特許法第6条の規定に基づき、商標登録の無効の審判を請求することができるものといえる。
よって、請求人は、本件審判の請求人適格を有するものと認められる。
2 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は平成22年4月1日に「九州硬式少年野球連盟」から現在の「九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)」に名称変更したものと認められるところ、平成22年4月1日制定施行の規約第1条には、「この協会は、九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)と称する。」と定められていること、名称変更前に施行されていた昭和62年度及び2003(平成15)年度の各規約第1条には、「この連盟は、九州硬式少年野球連盟(以下「連盟」という)と称し、通称フレッシュリーグと呼ぶ。」と定められていることが認められる(甲1、甲3及び甲6)。
加えて、本件審判請求書及び平成26年6月17日付「手続補正書」には、(審判)請求人として「九州硬式少年野球協会」と記載されていることが明らかである。
以上によれば、請求人の正式名称は「九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)」であり、「フレッシュリーグ」は、請求人の名称の一部に該当するものというべきである。そして、名称の一部が略称とされる場合があることからすれば、該「フレッシュリーグ」の文字が略称でないということはできない。
また、商標法第4条第1項第8号の適用上、名称の略称は著名なものであることを要することは同号の規定から明らかである。
(2)そこで、「フレッシュリーグ」が請求人の略称として著名であるか否かについて検討するに、請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、本件商標と略同一の標章に、「FRESH LEAGUE」の文字が表示された欄内下方に「九州硬式少年野球連盟」又は「九州硬式少年野球協会」の文字を加えた構成からなる標章を使用して活動していることが認められるものの、請求人については、昭和61年9月16日、同月28日、同年10月10日及び昭和62年4月5日の各新聞記事(新聞名は不明)に、「第1回九州硬式野球連盟フレッシュリーグ・後期大会」、「九州硬式野球連盟フレッシュリーグ後期」、「第2回九州硬式野球連盟フレッシュリーグ」等の見出しで試合結果が小さく報道されたこと、2010年(平成22年)12月10日付「西日本スポーツ」新聞に「フレッシュL北部地区発足25周年」の見出し下に紹介されていることが認められるのみである(甲4、甲5及び甲7)。他に、「フレッシュリーグ」の文字を用いて請求人について紹介や報道がされたり、宣伝広告等がされた事実は一切見当たらない。
そうすると、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標中に表示された「FRESH LEAGUE」又は請求人の主張する「フレッシュリーグ」の文字が請求人の略称として本件商標の登録出願時に著名になっていたものとは到底認めることはできない。他に、「FRESH LEAGUE」又は「フレッシュリーグ」の文字が請求人の略称として本件商標の登録出願時に著名になっていたものと認めるに足る証拠はない。
(3)したがって、本件商標は、他人である請求人の名称はもとより、請求人の名称の著名な略称を含むものとは認められないから、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲(本件商標)

審理終結日 2014-11-17 
結審通知日 2014-11-19 
審決日 2014-12-04 
出願番号 商願2013-15858(T2013-15858) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (W41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 今田 三男
田中 亨子
登録日 2013-07-26 
登録番号 商標登録第5602221号(T5602221) 
商標の称呼 フレッシュリーグ 
代理人 羽田野 節夫 
代理人 橘 友一 
代理人 古閑 敬仁 
代理人 陶山 博生 
代理人 平野 一幸 
代理人 山西 信裕 
代理人 諌山 佳恵 
代理人 羽田野 桜子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ