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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1300655 
審判番号 無効2014-890057 
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2015-04-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5252764号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5252764号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5252764号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成19年6月29に登録出願,同21年6月19日に登録査定,第35類「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,洋服・コート・セーター類・ワイシャツ類・寝巻き類・下着・水泳着・水泳帽・和服・ずきん・すげがさ・ナイトキャップ・帽子・防暑用ヘルメットの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手鏡・家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,携帯電話用ストラップ・携帯電話の液晶画面保護シール・携帯用オーディオプレーヤー用カバー・電球類及び照明用器具・電池・電線及びケーブル・電気通信機械器具・電子応用機械器具及びその部品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器(「刀剣」を除く。)・魚ぐし・針類・刀剣・かな床・はちの巣・手動工具(「すみつぼ類・皮砥・鋼砥・砥石」及び「装飾塗工用ブラシ・おけ用ブラシ・金ブラシ・管用ブラシ・工業用はけ・船舶ブラシ」を除く)・すみつぼ類・研磨紙・研磨布・研磨用砂・人造軽石・つや出し紙・つや出し布・皮砥・鋼砥・砥石・金属製金具・水道蛇口用座金・水道蛇口用ワッシャー・キーホルダー・ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー・かばん金具・がま口口金・蹄鉄・カーテン金具・金属代用のプラスチック製締め金具・くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。)・座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。)・錠(電気式又は金属製のものを除く。)・被服用はとめの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,天然鉱石を用いた入浴剤・薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,筋力トレーニング用機械器具・運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,浮き輪・おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,アロマオイル・香料類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,香料入りろうそく・ろうそくの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,平成21年7月31日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第73号証(枝番号を含む。)を提出した(なお,枝番号のすべてを引用するときは,枝番号を省略する場合がある。)。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることから,商標法第46条第1項の規定により,その登録は無効とされるべきである。
2 請求の利益について
請求人及び請求人の関連会社は,後述のとおり,「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとして「都市名又は地域名」を示す語と「ウォーカー/Walker」の語を結合した商標を使用した雑誌,雑誌の増刊号,ムック,書籍,フリーマガジン等の出版物を多数発行している。
また,この出版事業と関連して,「ウォーカー/Walker」の語を使用したインターネット事業・広告事業・小売事業も行っている。
なお,上記の「関連会社」に関して,現在,雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の出版事業や「ウォーカープラス/Walkerplus」等のウェブサービス事業は,主として請求人が行っている。
請求人は,平成15年(2003年)4月に会社分割により株式会社角川書店を設立し,前記事業を承継させた。株式会社角川書店は,平成18年(2006年)4月に会社分割により株式会社角川クロスメディアを設立し,前記事業を承継させた。株式会社角川クロスメディアは,平成21年(2009年)3月に株式会社角川マーケティングに吸収合併し解散した。株式会社角川マーケティングは,平成22年(2010年)4月に株式会社角川メディアマネジメントに吸収合併して解散し,株式会社角川メディアマネジメントは,その商号を株式会社角川マーケティングに変更した。株式会社角川マーケティングは,平成23年(2011年)7月にその商号を株式会社角川マガジンズに変更し,親会社であった請求人に平成25年10月に吸収合併し解散した。
このような会社の変遷のため,時期によって事業主体の名称が異なる場合があるが,以下の主張において,請求人と記載した場合,関連会社(過去に存在した関連会社)を含めるものとする。
本件商標がその指定役務について使用された場合には,その業務は,請求人によって行われているものと需要者・取引者に誤認混同を与えることがあり,請求人の利益が著しく阻害されるおそれがある。
したがって,請求人は,本件無効の審判の請求をすることについて利害関係を有する者である。
3 本件商標の構成等について
本件商標は,東京都の特別区である「渋谷」を容易に想起させるローマ字「Shibuya」と,英語の「walker」の語を一連に書してなる商標であって,第35類の役務を指定役務とするものである。
本件商標中の「Shibuya」から直ちに想起される「渋谷」の語は,東京都特別区の区名であり,東京副都心の一であり都内有数の繁華街として広く知られた都市名又は地域名である(甲1の3)。また,「walker」の語は,「歩く人」を意味する英語である(甲1の4)。
したがって,本件商標からは,「walker」(「歩く人」等)の文字の前方に都市名又は地域名が付されており,「渋谷という都市又は地域を散歩する人」という観念が生じ,「シブヤウォーカー」の称呼が生ずる。
4 請求人の商標の使用実績及び周知著名性について
(1)請求人の使用する「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標(以下「請求人使用商標」という場合がある。)の著名性は,商標「渋谷ウォーカー」に対する無効審判の審決において,少なくとも平成18年(2006年)8月までは認められている。
(2)請求人は,平成2年(1990年)3月,「東京」を中心とした首都圏の都市情報誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を創刊した。
この雑誌は,「東京のテレビ番組,新作商品,映画,グルメ,ファッション,旅行,ドライブ等,さまざまな分野の情報を網羅して,雑誌を通して読者に提供する」というコンセプトで創刊されたものである。
(3)雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」は,上記コンセプトが需要者のニーズに合致し,破竹の勢いで需要者の人気を獲得し,現在に至っている。
(4)請求人は,雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」の成功を皮切りに,同様のコンセプトで「関西」を中心とした都市情報を提供する雑誌「関西ウォーカー/Kansai Walker」を平成6年(1994年)6月に発刊し現在に至っている。
(5)請求人は,平成6年(1994年)12月「ゲーム情報」に特化した情報誌「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」を発行した。これらの雑誌も好評を得た。
これらの雑誌が好評を得たことから,請求人は「ウォーカー/Walker」の語を含む各種の情報誌(定期刊行物)を現在までに発行した。
(6)請求人は,「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする請求人使用商標のみならず,「○○ウォーカー/Walker」全体のブランド力を高めるために,定期的に発行される上記雑誌等の他に,流行や読者層の興味に沿ったタイムリーな情報を提供すべく,「○○ウォーカー/Walker」という構成からなる商標を使用した雑誌や,ムック,書籍,フリーマガジン等を種々発行している。
(7)請求人は,出版物と他の媒体(インターネット・ラジオ・テレビ等)とを連動させて相乗効果を出すためにマルチメディア戦略を実行している。
「○○ウォーカー/Walker」という構成からなる商標についても,このマルチメディア戦略に則して事業展開を行っている。
すなわち,雑誌で圧倒的な販売部数・発行部数を誇る「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」という構成からなる商標を,雑誌やムック等の出版物の範囲にとどまることなく,ラジオ,テレビ,そしてインターネットにおいても展開し,「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」を含めて「○○ウォーカー/Walker」全体のブランド力を高めている。
(8)請求人は,他の企業から依頼を受けて,又は共同で,他人の商品・役務の広告や販売促進活動の企画のために情報発信・伝達するという,広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務やそれと関連性の高い業務も「○○ウォーカー/Walker」の商標のもとで行っている。
5 請求人による出版物やインターネット事業における使用実績について
(1)出版物の発行・販売の事実及び部数等
甲第3号証より,本件商標の出願時において,定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した定期刊行誌が8誌あり,査定時においては「神戸ウォーカー/Kobe Walker」を除いて7誌あることは明白である。
甲第4号証の1ないし甲第11号証の14等に示されるように,請求人は,「東京ウォーカー/Tokyo Walker」,「北海道ウォーカー/Hokkaido Walker」等の「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語とから構成される商標を商品「雑誌」について長年にわたって継続して使用している。
(2)雑誌の販売部数に関するレポート(写し)及び印刷部数について
甲第13号証の1ないし18は,社団法人日本ABC協会から発行された雑誌の販売部数に関するレポート(1992年?2009年)の写しである。
これらには,「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他4件)の請求人使用商標を使用した雑誌の各年における1号あたりの販売部数が記載されている。
なお,販売部数とは,市場に流通した部数ではなく,実際に需要者に購入された部数である。
また,本件商標の出願の年である平成19年(2007年)においては,『「東京ウォーカー/Tokyo Walker(隔週刊):平均約8万部」+「関西ウォーカー/Kansai Walker(隔週刊):平均約11.1万部」+「東海ウォーカー/Tokai Walker(隔週刊):平均約7.6万部」+「九州ウォーカー/Kyushu Walker(隔週刊):平均約6.7万部」+「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker(隔週刊):平均約7.9万部」=平均約41.3万部』となり,加えて「千葉ウォーカー/Chiba Walker」,「神戸ウォーカー/Kobe Walker」,「北海道ウォーカー/Hokkaido Walker」がそれぞれ各号ごとに発行されていることを考慮すれば,総販売部数は平均50万部前後となり,情報誌の苦戦が伝えられる近年においても上記週刊誌「週刊朝日」(約19.0万部×2=約38万部)よりもはるかに多い。
以上の比較からしても,「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌が大量に発行され,その結果,著名性を獲得していることは疑う余地がない。
(3)「ウォーカークラブ/WalkerClub」等について
甲第16号証の1は,全国の書店で他の地域の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌が購入できる書店である。
各誌の主要な配布地域(例えば,「東京ウォーカー/Tokyo Walker」であれば,主要な配布地域は東京である。)以外の書店(例えば,九州の書店)においても,当該各誌(例えば,「東京ウォーカー/Tokyo Walker」)が購入可能な状態にあり,また一般需要者・取引者の目に触れるところとなっていたことは,この「ウォーカークラブ/WalkerClub」という企画が存在していたことからも明らかである。
(4)増刊号,ムック,書籍,フリーマガジンについて
請求人は,定期的に発行している「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌以外でも,流行や読者層に沿ったタイムリーな情報を提供し,また雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめとする請求人使用商標の使用により形成されたブランド力をさらに高めるために,これらの雑誌の増刊号,ムック,書籍,フリーマガジンを種々発行している(甲26)。
(5)宣伝・広告等の販売促進活動について
ア 店頭等におけるキャンペーンについて
請求人は,「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌について需要者・取引者に広く認識してもらうために,雑誌の創刊時にはキャンペーンを戦略的,かつ,大々的に行ってきた。
また,多くの需要者が見込める時期(例えば,入学時期や入社時期の4月やゴールデンウィーク等)や,雑誌創刊○○周年記念の時期も同様に戦略的,かつ,大々的にキャンペーンを行ってきた(甲30)。
イ 各種媒体での広告等について
請求人は街頭でのキャンペーンの他に,新聞広告・電車の中吊り広告及びラジオやテレビなどの広告等によっても販売促進活動を行ってきた(甲30)。
ウ 請求人が開催するイベントについて
請求人は創刊時だけではなく,販売促進活動の一環として定期的に「東京ウォーカー/Tokyo Walker」や「九州ウォーカー/Kyushu Walker」の商標を使用したイベントを各都市・各地域において開催している。
また,これまで説明してきたように「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌を各都市・各地域に出版していった結果,シリーズの雑誌として全国に拡大することになった。
これに伴い,甲第30号証の5の2,5の7,5の10ないし5の12に示すように,請求人は「全国ウォーカーまつり」,「Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントを開催してきた。
エ 雑誌の誌面について
請求人使用商標を使用した雑誌・増刊号・ムック・フリーマガジン等の出版物は,統一された名称の下,ひとつのまとまったシリーズとして全て同様のコンセプトで発行されている。
それだけではなく請求人使用商標が使用された出版物は,請求人と関係する商品であると需要者・取引者に確実に認識される記事が多数掲載されている。
(ア)創刊記事について
新たな請求人使用商標を使用した雑誌が創刊される際には,必ず既存の請求人使用商標を使用した雑誌にその事実が掲載される。
(イ)合同による懸賞・試写会・企画・イベント開催等の告知について
創刊時における記事の掲載のみならず,「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等の各地域の請求人使用商標を使用した雑誌には,「関西ウォーカー/Kansai Walker」等の他の請求人使用商標を使用した雑誌が存在していることを認識できる記事が多数掲載されている。
オ インターネット上への展開について
(ア)経緯について
請求人は,インターネット上のウェブサイトを出版物と連動させて,相乗効果を生み出すことを平成7年(1995年)ごろから開始しており,現在,「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌の公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」(旧名称「Walkerplus.com」)を,各地域の請求人使用商標を使用した雑誌と連動し,また時には独立したサービスとして展開するに至っている。
(イ)公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」(旧名称「Walkerplus.com」)について
現在,請求人は,「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌の公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」(旧名称「Walkerplus.com」)を,各地域の請求人使用商標を使用した雑誌と連動し,また時には独立したサービスとして展開するに至っている(甲31の2)。
(6)他社とのタイアップによる「ウォーカー/Walker」商標の活用について
近年では,請求人は,請求人側で収集した情報を発信・伝達するだけにとどまらず,他人から依頼を受けて又は共同で,他人の商品・役務を中心とした広告的な性質を有する出版物,さらには販売促進活動の企画のために情報発信・伝達するという,広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務と関連性が高い業務も広く行っている。
そして,請求人は,ここでも請求人使用商標を含む「○○ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等の他人(すなわち広告主)から依頼を受けて又は共同で,これらの業務についても,請求人使用商標を含む「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用して行ってきた。
(7)独立して流通する出版物について
定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標の著名性を利用して,請求人は,「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等から依頼を受けて又は共同で,「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせて,他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した増刊号やフリーマガジンを多数発行している。
これらの出版物の共同発行者(又は依頼者)を見ると,わが国の一般需要者に広く知られた有名企業や,政府機関等が多数含まれている。
(8)別冊付録・綴じ込み冊子等について
「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌には,別冊付録や綴じ込み冊子が含まれているものも多数存在する。
このような綴じ込み冊子や別冊付録の多くは,広告主からの要望で,雑誌とは別に,フリーマガジンとして,単独で需要者に配布される場合も多々ある。
したがって,このような冊子は,実際に独立した紙媒体として広告主の商品等を宣伝・広告することに寄与している。
(9)ラジオ番組・テレビ番組への「○○ウォーカー/Walker」の商標の活用
請求人は,出版物と他の媒体(ラジオ・テレビ等)と連動させて相乗効果を出すというマルチメディア戦略をとっている。
すなわち,雑誌で圧倒的な販売部数を誇る「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を,雑誌やムック等の出版物の範囲にとどまることなく,ラジオ・テレビにおいても展開してきたのである。
また,請求人は,出版・放送等の分野の業種以外の他の業種の企業との提携も積極的に行っており,その事業展開にも多数,請求人使用商標をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を用いている。
(10)その他の事業者との協賛・提携について
請求人は,出版・放送・インターネット等の分野以外の業種の企業とも積極的に提携を進め,さらにその提携後の事業展開でも「ウォーカー/Walker」の語を含む商標を使用してきた。
6 第三者による著名性の評価(調査結果,新聞記事,アンケート等)
(1)甲第36号証の1の1ないし7の3は,株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率ランキング」であり,該社は,テレビ番組の視聴率調査等で有名な,マーケティング調査全般を行う企業である。
また,「閲読」とは,その雑誌がどれだけの人に読まれているかを示すものであり,例えばコンビニエンスストアで立ち読みした場合や知人から借りた場合のように,購入しなくとも読んでいれば「閲読している」ということになり,このような閲読する需要者のパーセンテージを示すものが「閲読率」になる。
すなわち「雑誌閲読率ランキング」における閲読率は,需要者における雑誌の認知度を判断する上で一つの重要な指標となるものである。
(2)新聞・雑誌に掲載された記事について
「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した事業は,全国紙・地方紙問わず多数の新聞媒体にも取り上げられている。
ア 「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」に関する記事
請求人使用商標の使用実績について中心に述べられた新聞記事として,甲第37号証の1の1ないし467,甲第41号証の1ないし57を提出する。
イ 「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」に関する記事
請求人使用商標を使用した雑誌と同様に,「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の雑誌,雑誌の増刊号,ムック,書籍,フリーマガジン等は多数の新聞媒体にも取り上げられている(甲38の1ないし126)。
ウ インターネットでの展開に関する記事
公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」以外の「Walkers Net」をはじめとするパソコン通信やウェブサイトを用いた請求人の事業展開についても,多数の新聞・雑誌媒体に記事が掲載され,「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の請求人使用商標を使用した雑誌と関連して展開されていることや,「ウォーカーズネット/WalkersNet」や「ウォーカープラス/Walkerplus」の公式サイトも,広く需要者・取引者に受け入れられていることが紹介されている(甲39の1の1ないし甲40の93,甲42の21,甲42の25,甲42の30,甲42の37他)。
エ 広告に関する記事
請求人が多大な費用を費やして宣伝・広告してきた事実についても,多数の新聞媒体にも取り上げられている。
オ 他の企業との提携に関する記事
他の企業と提携して「ウォーカー/Walker」の商標を使用してきた事実についても新聞・雑誌に掲載されている。
(3)他社の使用の存在・警告等
請求人は,商標出願された第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」や,実際に市場に流通している第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」,そして市場に流通する可能性があるという情報を得た第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用準備に対して,これらの第三者の使用に対しても強い姿勢で対応しており,地道に使用排除の効果を上げてきた。
(4)インターネットを用いた一般需要者向けのアンケート
甲第49号証は,インターネットを利用した読者アンケートの結果であり,これらのアンケート結果は,平成20年(行ケ)第10363号審決取消請求事件において請求人が提出したものの写しである。
そして,これは,平成20年(2008年)に実施されたものであり,まさに本件の出願時ないし査定時の間での需要者・取引者の認識を証するものである。
この訴訟におけるアンケートの立証の趣旨は,「○○ウォーカー/Walker」の構成からなる商標が角川グループの業務に係るものであると認識するか否かを立証するものであった。
しかしながら,このアンケートの回答結果からも請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」が需要者・取引者にとって著名な商標であることが裏付けられている。
(5)日本有名商標集への掲載等について
以上に述べた使用実績(及び後述の裁判例)が考慮されて,「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の登録商標のうち定期的に発行している8誌に係る登録商標が日本有名商標集に選定されている。
7 裁判所及び特許庁における過去の判断について
冒頭で述べた,「渋谷ウォーカー」に対する無効審判(無効2009-890078,甲66),及び,登録商標「東京ウォーカー/Tokyo Walker」に関して小売等役務の範囲における防護標章登録の可否が争われた拒絶査定不服審判(不服2011-2677,甲67)以外にも,請求人の「○○ウォーカー/Walker」の商標(その中でもとりわけ「東京ウォーカー/Tokyo Walker」)が全国的に周知・著名な商標であることは,特許庁及び裁判所においても認められている。
8 請求人商標の使用実績及び周知著名性についての小括
以上,説明した使用実績・証拠及び過去の裁判例・審決例から,「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする請求人使用商標を使用した各雑誌は,主要配布地域を中心にして多数の需要者に読まれており,著名性を得ていることは明白である。
さらに,各雑誌に掲載された記事内容,「ウォーカープラス/Walkerplus」の公式サイト,雑誌・新聞における紹介記事には,例えば,主として関西地方において流通している「関西ウォーカー/Kansai Walker」には,シリーズとして他の地域(例えば,首都圏)においても同様の請求人使用商標の雑誌(例えば,「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」)が存在していることが掲載されており,その他にも需要者が認識できる記事が多数掲載されている。
したがって,雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」他7誌を実際に目にする機会が,主要な配布地域ほどではない地域であっても,雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」他7誌の存在は,全国の需要者に広く知られるところとなっていることは明らかである。
9 請求人の事業と本件商標の指定役務との関連性の程度について
本件商標の指定役務は,第35類の小売等役務である。
請求人の行っている事業と,本件商標の第35類の小売等役務との関連性が高いことは,既に甲第67号証の審決において認められている。
(1)出版物やインターネット等の媒体を通じて行う情報の発信や伝達の業務と第35類の小売等役務との関連性について
請求人が実際にショッピングサイトを運営し,商品の通信販売を行っていることは既に甲第56号証に示した審決において「請求人は,インターネットを利用して・・・通信販売等の業務を通じて多角経営を図っているということができる。」と認められている。
この他,雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等における誌上通販やショッピングサイトを運営していることを示すものとして甲第71号証(枝番含む。)を提出する。
これらの証拠から,請求人は,単なる通販事業を行うのみならず,雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等と連動している「Walker」の語を用いた「ウォーカーストア/Walker Store」も含め,様々な通販事業を行って生きたことは明白である。また,甲第72号証は,雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」,「関西ウォーカー/KansaiWalker」,「東海ウォーカー/TokaiWalker」,他4誌に掲載する通販サイト「ウォーカーストア/Walker Store」に関する原稿であり,種々の商品を取り扱ってきたことがわかる。
このような取り組みは,新聞でも紹介されている(甲40の123)。
(2)請求人の業務の多角経営化について
商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の判断基準については,最高裁判所平成12年7月11日第三小法廷判決(民集54巻6号1848頁,平成10年(行ヒ)第85号)の判決に判示されており,「当該指定役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信される」といういわゆる「広義の混同」が含まれている。
そして,請求人が多角的な事業を行う事業体であり,この多角経営の中には,第35類の小売等役務の事業も当然行っている事業の一つとして含まれるのであり,請求人は第35類の事業を行っているといえる。
この他,甲第73号証に示すように,請求人自身が出版事業に止まらず映画事業を行うほかには,様々な事業を行う企業が包含又は傘下に含まれている。例えば,ゲームの開発・販売を行う株式会社角川ゲームス,インターネット上のコンテンツを制作する株式会社ブックウォーカー等があり,まさに従来の出版事業にとどまらない多角経営を行っているといえる。
このことから,請求人が,通信販売等の小売等役務に係る業務を行っていることを直接に認識していない需要者であっても,請求人の多角経営の程度及び上述した雑誌やインターネット等の媒体と小売等役務との親和性の高さからすれば,当然にして小売等役務に係る業務も,請求人が行い得る役務として認識されることは疑いがない。
以上から,請求人の事業と本件商標の指定役務との関連性は,強いといえる。
10 被請求人の商標の使用態様について
本件商標は,明らかに請求人使用商標のブランドイメージに,まさにフリーライドするものであり,その登録を維持させることが請求人の利益に反することになるだけでなく,需要者・取引者の利益にも反する。
不正な使用態様で商標を使用し,出願戦略を行う被請求人に本件商標を使用させる権利を付与し続けることは,明らかに請求人のみならず需要者・取引者に出所の混同という不利益を生じさせるものである。
11 無効理由について
(1)最高裁判所の判断基準について
この判断基準に従えば,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについては,本件商標が請求人の使用する商標との類似性の程度だけでなく,請求人の使用する商標全体の周知著名性及び独創性の程度,用途又は目的における関連性の程度及び取引実情等も踏まえて総合的に判断すべきである。
(2)当該商標と他人の表示との類似性の程度
本件商標は,日本でも有名な都市名又は地域名である「渋谷」の語のローマ字と「ウォーカー」の英字とから構成される商標「Shibuyawalker」である。しかも,本件商標を構成する「Shibuya」は,請求人使用商標の中でも旗艦の商標ともいえる「東京ウォーカー/TokyoWalker」の「東京/Tokyo」における代表的な都市名又は地域名であり,また「東京ウォーカー/TokyoWalker」の対象となる地域である。
そこで,両商標を対比すると,請求人使用商標と本件商標は,ともに「都市名又は地域名」と,「ウォーカー/Walker」との組合せからなるものといえ,観念上,同一性を有するかまたは極めて類似性の高い商標といえる。
(3)他人の表示の周知著名性
請求人使用商標のうち,「東京ウォーカー/TokyoWalker」,「関西ウォーカー/KansaiWalker」,「東海ウォーカー/TokaiWalker」,「九州ウォーカー/KyushuWalker」,「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」,「千葉ウォーカー/ChibaWalker」,「神戸ウォーカー/Kobe Walker」,「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」の著名性,及び,請求人が多種多様の請求人使用商標を使用した雑誌を発行している事実については,これまで述べたところからも明らかである。
また,公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」の存在もまた多数の需要者・取引者間において周知性・著名性を獲得している。
そのほかに雑誌・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物や公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」の個別のサイトにおいて多数の「○○ウォーカー/Walker」が使用されている事実は需要者・取引者に広く認識されている。
(4)独創性の程度
請求人の使用する商標の旗艦商標である「東京ウォーカー/Tokyo Walker」は,「東京を散歩する人」のようなイメージを生じさせるものの,全体として既存の名詞や用語などではなく,請求人の独創的な商標,すなわち造語の商標である。
したがって,請求人使用商標である「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」は,造語の商標であり,独創的な商標であることは明らかである。
(5)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度
上述したように請求人の事業と本件の指定役務が含まれる第35類の小売等役務とはきわめて関連性が強いといえる。
(6)商品等の取引者及び需要者の共通性
請求人がターゲットとしている需要者・取引者は,一般消費者及び広告主であり,また,被請求人の出版物も一般消費者及び広告主をターゲットにしていることは,甲第69号証から明らかである。
したがって,商品等の取引者及び需要者は共通するものである。
(7)その他の取引実情
特に考慮すべきその他の取引実情は存在しない。
(8)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力
請求人使用商標は,主として雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物のタイトルや関連するウェブサイトの名称として使用されている。
すなわち,雑誌,ウェブサイトの最も目を引く部分に,請求人使用商標が使用されている。
また,被請求人も請求人と同様にウェブサイトやメールマガジンのタイトルとして目を引く形で本件商標を使用していることは,甲第69号証に示したとおりである。
12 総合的な検討
以上のとおり,請求人使用商標の使用実績から,需要者・取引者間において,請求人使用商標は,雑誌が対象とする都市名又は地域名によって「都市名又は地域名」の部分を変えて,シリーズ化された雑誌を請求人が発行し,またその関連で増刊号やムック・フリーマガジンを請求人が発行しているということは十分に認識されている。
そして,本件商標は,「Shibuya(渋谷)」という「東京」の中でも極めて有名な都市名又は地域名と,「ウォーカー」の語とを結合させた造語商標ということができ,また,請求人が長年にわたって使用してきた商標「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる請求人使用商標と同じコンセプトに基づく商標といえる。
また,請求人の雑誌・ムック・フリーマガジン等を含む商品「印刷物」についての「○○ウォーカー/Walker」の使用実績や,公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」の使用実績,そして請求人の業務と本件商標の指定役務との関連性の高さ等の様々な実情を考慮すれば,本件商標が,その指定役務に使用された場合,それに接する需要者・取引者は,本件商標が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」というコンセプトで構成された商標であるという点に強い印象を受ける。
さらには,本件商標を構成する「Shibuya(渋谷)」は,請求人使用商標の中でも旗艦の商標ともいえる「東京ウォーカー/TokyoWalker」の「東京/Tokyo」における代表的な都市名又は地域名であり,また「東京ウォーカー/TokyoWalker」の対象となる地域であることからすれば,その役務が請求人若しくは請求人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは必定である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
請求人は,本件商標がその指定役務について使用された場合,その業務が請求人によるものと需要者・取引者に誤認混同を与えることがあり,請求人の利益が著しく阻害されるおそれがある旨主張するのに対し,被請求人はこれについて争っておらず,かつ,請求人が本件審判を請求することについて利益があるものと認められるので,以下,本件について検討する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人提出の証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 請求人は,1990年(平成2年)3月に,東京のテレビ番組,新作作品,映画,ファッション,旅行,ドライブ等の東京を中心とする首都圏の様々な情報を掲載する都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を創刊し,その後,同様のコンセプトで,「関西ウォーカー/KansaiWalker」,「東海ウォーカー/TokaiWalker」,「九州ウォーカー/KyusyuWalker」(後継誌は「福岡ウォーカー」),「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」,「千葉ウォーカー/ChibaWalker」,「神戸ウォーカー/KobeWalker」及び「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」などのタイトルを付した各都市,各地域の総合情報誌を続々と創刊していった(甲3ないし甲12等)。
イ 上記各情報誌における毎号の平均販売部数は,1992年版ないし2009年版の「雑誌公査レポート」(社団法人日本ABC協会発行:甲13)によれば,「東京ウォーカー/TokyoWalker」は,1992(平成4)年は約28万部,1993(平成5)年は約38万部,1994(平成6)年と1995(平成7)年は約42万部,1996(平成8)年は約40万部,1997(平成9)年は約37万部,1998(平成10)年は約29万部,1999(平成11)年は約24万部,2000(平成12)年は約17万部,2001(平成13)年は約14万部,2002(平成14)年は約11万部,2003(平成15)年は約24万部,2004(同16)年と2005(平成17)年の1月?6月期は約10万部,2006(平成18)年は約9万部,2007(平成19)年は約8万部,2008(平成20)年は約7万部,2009(平成21)年は約6万部となっている。
また,その他の雑誌の毎号の平均販売部数は,本件商標の登録出願前の平成19(2007)年ないし査定時の平成21(2009)年の3年間に限っても,「関西ウォーカー/KansaiWalker」が約11万部(2007年),約9万部(2008年),約8万部(2009年),「東海ウォーカー/TokaiWalker」が約8万部(2007年),約6万部(2008年),約6万部(2009年),「九州ウォーカー/KyushuWalker」が約7万部(2007年),約5万部(2008年),約5万部(「福岡Walker」2009年),「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」が約8万部(2007年),約7万部(2008年),約6万部(2009年)となっており,上記平均販売部数は「雑誌公査レポート」に掲載の雑誌の中でも上位に位置するものであって,長年にわたり相当の販売部数を維持していることが認められる。
そして,各雑誌は「東京ウォーカー/TokyoWalker」が東京,埼玉,神奈川,千葉及び茨城,「関西ウォーカー/KansaiWalker」が大阪,兵庫,京都,奈良,滋賀及び和歌山,「東海ウォーカー/TokaiWalker」が愛知,岐阜,三重及び静岡,「九州ウォーカー/KyushuWalker」が福岡,佐賀ほか九州全てと山口,及び「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」が神奈川及び東京の各地域を中心に配本されているほか,多くはないものの広く全国各地に配本されていることが認められる(甲13の12及び14)。
ウ 請求人は,上記の各情報誌の販売促進活動として,その創刊時,発行号数や周年記念の時期などのキャンペーン(甲30の1),新聞広告(甲30の2),電車の中吊り広告(甲30の3),屋外広告(甲30の4の3ないし5)を行い,また,「全国ウォーカーまつり」,「全国Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントの開催(甲30の5)や「Walkers’Festival’98秋」での各地のFM局と連動したラジオの特別番組の放送(甲30の6)を行うなど,多種多様の販売促進活動を大々的に行ったことが認められる。
また,「ウォーカー」各紙の創刊に関する宣伝費について,新聞各紙に,「関西ウォーカー」について「角川書店がウォーカーの関西進出につぎ込んだ宣伝費は三億円強といわれ,・・・」(甲37の41:平成6年10月4日付け毎日新聞),「九州ウォーカー」について「テレビCMなどを含めた宣伝費の総額は,三億五千万円にのぼるという。」(甲37の85:平成9年6月12日付け朝日新聞),「北海道ウォーカー」について「角川書店は,創刊PRのための広告費三億円を投入。」(甲37の247:平成12年8月26日付け北海道新聞)との記事が掲載されている。
そして,新聞各紙等(甲37ないし甲42)には,「九州ウォーカー」創刊の記事(平成9年3月28日付け産経新聞:甲37の75)及び同記事に関連して「東京,関西,東海の『ウォーカー』は,それぞれの地区で情報誌の発行部数ナンバーワンの座にある。」との記載(平成9年5月21日付け朝日新聞:甲37の82),あるいは「千葉ウォーカー」(平成11年6月6日付け毎日新聞:甲37の159),「台北ウォーカー」(平成11年9月16日付け産経新聞:甲37の177),「神戸ウォーカー」(平成12年2月1日付け日本工業新聞:甲37の206)創刊の記事や「北海道ウォーカー」の創刊1周年の記事(平成13年6月24日付け北海道新聞:甲37の291)等の多数の記事が掲載され(甲37ないし甲41),また,雑誌や書籍においても「いまや〈ウォーカーシリーズ〉は数ある情報誌の中の一大ブランド。」(雑誌「宣伝会議」平成9年8月号(108頁ほか):甲42の8),「今のところ角川書店『ウォーカー』シリーズが快進撃で一人勝ち?」(雑誌「創」平成11年10月号(50頁ほか):甲42の16)の記載や,株式会社角川書店の事業内容・特色として「・・・ウォーカーシリーズは同社の看板雑誌で,『横浜ウォーカー』・・・『台北ウォーカー』と,いずれも定番情報誌として人気を誇っている。」(マスコミ就職読本2001(74頁):甲42の63)などと説明されるなど,「東京ウォーカー」創刊の平成2年4月頃から本件商標の登録後である平成21年まで,請求人に係る「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとして「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」に関する記事が多数掲載されていたことが認められる。
エ また,各情報誌には,当該情報誌名とは別にそれぞれの特集記事やそのとじ込み別冊などのベージ見出しや表題あるいはエリアNEWSコーナーの表題として「渋谷ウォーカー」(甲4の8の1),「三軒茶屋ウォーカー/SanchaWalker」(甲4の11の5),「和歌山ウォーカー/WakayamaWalker」(甲4の16の4,甲9の12の6),「札幌ウォーカー」(甲5の5の2),「苗場ウォーカー/NaebaWalker」(甲7の3の1),「岐阜Walker」,「三重Walker」,「浜松・豊橋Walker」及び「浜松・三河Walker」(甲8の7の1,甲8の10の1ないし3),「大阪ウォーカー/OsakaWalker」(甲9の3の1),「北摂Walker」,「尼崎Walker」,「東大阪Walker」,「堺Walker」(甲9の12の6ないし8),「姫路ウォーカー/HimejiWalker」(甲10の4の1),「長崎ウォーカー/NagasakiWalker」(甲11の6の2)などの「都市名又は地域名+Walker」が使用され,さらに,各定期情報雑誌などの増刊号,ムックやフリーマガジン(フリーペーパー)あるいはキャンペーン用の冊子について,「筑後ウォーカー/ChikugoWalker」(甲11の3の3,甲66の7),「広島ウォーカー/HiroshimaWalker」(甲26の20の1及び2),「東北ウォーカー/TohokuWalker」(甲26の25),「静岡ウォーカー/ShizuokaWalker」(甲26の26),「埼玉ウォーカー/SaitamaWalker」(甲26の29),「Akiba Walker」(甲26の31,甲66の1),「京都ウォーカー/KyotoWalker」(甲26の37),「足立区Walker」(甲26の43),「秋葉原/Akiba Walker」(甲26の44),「放出ウォーカー/HanatenWalker」(甲26の45),「荒川ウォーカー/Arakawa Walker」(甲66の3),平成18年3月にフリーマガジン「池袋Walker」(甲26の50),同年6月に「堺市Walker」(甲26の52)及び「湘南鎌倉Walker」(甲26の53),同年7月に「さいたまWalker」(甲26の54),同年9月に「町田相模原Walker」などの「地域名+Walker」を使用したものを継続的に発行している(甲26の55ないし72)。
オ 請求人は,上記の「地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標を付した雑誌のほかに,「その他の情報を表す語+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標を使用した雑誌を創刊している。
そして,雑誌への広告募集用のパンフレット(甲17の1,2の1,2の2,及び3)には「広告料金表」が掲載され,「角川書店 広告部」の文字のほか,東京本社や各支社などの連絡先が記載されているものである。また,「ウォーカーズ・ネット/WalkersNet」においても,ネット上での広告についての説明がされ,「広告料金表」や広告バナー入稿についての説明等が掲載されている(甲31の1の1)。
カ 加えて,請求人は,各雑誌において,各企業等から依頼を受けて又は共同で「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせ,各企業等の商品やサービスに関する情報を掲載した増刊号やフリーマガジン(フリーペーパー)を多数にわたり発行していることが認められる(甲27及び甲28)。
なお,「角川書店カスタムマガジンのご案内」(甲29の1)には,「●カスタムマガジン編集制作・発行プロセス」として「企画/立案」→…「納品」→→「販売・配布・Web・Mobile・etc…」との記載,また,これらカスタムマガジンは,「顧客満足度の向上,販売促進など各企業様のさまざまな戦力の中で,角川書店の企画,編集力は大いに活用されています。」,「販売促進・顧客サービスに,ご活用ください。」など,販売促進に活用できる旨が記載されている(甲29の1及び2)。
キ 請求人は,雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と連動させて,平成8年に「TokyoWalkerNet」とするホームページを開設し(甲4の8の5),同9年に全国4エリア(東京,東海,関西,九州)の「WalkersNet」をスタートさせた(甲4の9の2,甲4の10の1,甲11の2の3,)。その後,平成12年からは「東京ウォーカー/TokyoWalker」ほかの請求人使用商標の雑誌と連動させ,又は独立したサービスとして,公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」(旧名称「WalkerPlus.com」)を展開するに至っている(甲4の12の6,甲31の2及び3)。
これに関しては,平成12年4月7日付け産経新聞(甲40の4)や同年6月20日付け日経産業新聞(甲40の11)に「・・・インターネットを使った情報提供サービスを始めた。・・・角川書店が発行する雑誌『週刊ウォーカー』に連動した地域情報をメールで配信する。・・・」などとの報道がされている。
ク その他,請求人は,上記した事業以外に,「Tokyo Walker NAVI」とするカーナビ用ソフトを地図大手のゼンリンと共同で開発し(甲37の52及び56),「週刊東京ウォーカー」のエンタテインメント情報を富士通(シャープと共同)の携帯端末向け情報サービスへ提供(甲37の61ないし64),電子商取引の企画会社であるネットプライスと,情報誌と携帯電話を組み合わせた通信販売事業を始め,「ウォーカー」シリーズに掲載した商品を携帯利用者に販売(平成14年10月16日付け日経産業新聞:甲37の323,同様報道,甲37の296,297,311,312,324,338,339及び357等),「東京ウォーカー」など各地域情報誌の新譜情報コーナーと連動させ「DVDやCD」を,携帯電話向けコンテンツを提供するサイバードと組み,携帯電話を使って販売(平成14年11月6日付け日本経済新聞:甲38の325),観光情報をパソコンや携帯電話のサイトでの配信の事業(2008年1月30日の日経速報ニュースアーカイブ:甲37の406,同報道,甲37の407ないし411及び422),地域情報誌の発行(続編を含む)(2008年3月7日付けの日経新聞:甲37の412,同報道,甲37の413,414,415,420,423,434,441),地域グルメの販売等(2008年8月12日付けのエムデータTVウォッチ:甲37の429,同報道,甲37の442),地域情報誌(動画)の発行(2009年4月9日付けプレスリリースIT:甲37の450,同報道,甲37の451,461及び466)をするなどの事業を展開している。
(2)上記(1)によれば,請求人の発行する「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとする請求人使用商標を表題とする都市情報誌は,長年にわたり相当の販売部数を維持していたことが認められ,配本地域も各雑誌名が表す地域及びその周囲が中心ではあるものの,広く全国に配本されていたことが認められる。
また,雑誌名とは別に特集記事や別冊などの表題として,「渋谷」を含む「三軒茶屋,札幌,苗場,浜松,大阪,堺」等の多数の「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせたものが使用されていたことが認められる。
そして,これらの情報誌の広告には相当の宣伝費が使われ,その広告手法も新聞広告,電車の中吊り広告,全国一斉のイベントの開催等,多岐にわたるものであることが認められる。
また,「地域名+ウォーカー/Walker」の語は,上記各情報誌の特集やとじ込み別冊などにおいて使用するばかりでなく,ウェブサイトの表題としても使用され,さらには,テレビ,ラジオ,各種イベント等で紹介されるなど,請求人使用商標は,請求人に係る雑誌やサイトの表題ないし商標として,「ウォーカー/Walker」シリーズの如く記憶し印象され,請求人に係る商標として認識されているものである。
したがって,本件商標の登録出願時である平成19年6月及び登録査定時である同21年7月の時点において,「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとする請求人使用商標を表題とする都市情報誌は,請求人が発行する定期刊行雑誌として,全国で周知著名となっていたと認められるものであって,雑誌に係る識別標識,すなわち「商標」としても機能しているものである。
そして,請求人使用商標に関する周知著名性は,査定時以降も継続していたものと認められる。
また,請求人は,請求人使用商標を表示した雑誌に,例えば,「自転車,時計,メガネ,バッグ,ベルト,スニーカー,Tシャツ,ペンダント,おもちゃ,CDプレーヤー」等の各種商品の通信販売に関する情報を掲載していることが認められる(甲71の1ないし11)。
(3)商標の類似性等について
本件商標は,「Shibuyawalker」の文字からなるところ,その構成中の「Shibuya」の文字は,都内の区名又は繁華街として著名な地域名「渋谷」を意味するものとして,また「walker」の文字は「歩く人,歩行者,散歩する人」を意味する外来語として,それぞれよく知られたものであり,本件商標は「地域名」と「walker」の文字との組み合わせからなるものと容易に理解,認識させるものである。
そして,請求人使用商標である「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」との組合せからなる商標は,既成語として親しまれているものではなく,請求人によって創造された一種の造語として,独創性の高いものというべきである。
そうとすれば,本件商標と,「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」からなる請求人使用商標とは,ともに「都市名又は地域名」と,「ウォーカー/Walker」又は「ウォーカー」との組合せからなるものであり,その採択の意図を同じくするものであって,概念的な観念において,両者は,同一性の高い商標というのが相当である。
(4)本件商標の指定役務と請求人の業務との関係性について
請求人は,前記のとおり,請求人使用商標を表示した雑誌,ムック,書籍等を多数発行し,その情報誌には,各種商品の通信販売に関する情報等が掲載されていることからすれば,本件商標の指定役務と請求人の業務は,関連性が深いものということができる。
(5)出所の混同のおそれ
上記のとおり,本件商標と請求人使用商標とは,概念的な観念において同一性が高い商標であって,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」からなる請求人使用商標は,雑誌の表題あるいは商標として,その周知著名性は全国に及んでいると認められるものであり,また,請求人の業務と本件商標の指定役務とは関連性が深いといえるものであるから,本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する取引者,需要者は,請求人に係る商標を連想・想起し,それらの役務が請求人との間に緊密な営業上の関係又はそのシリーズの表示による事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る役務であると誤認するおそれがあると認められる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,その登録は,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標(色彩の詳細は,原本参照。)





審理終結日 2015-02-03 
結審通知日 2015-02-06 
審決日 2015-02-23 
出願番号 商願2007-72430(T2007-72430) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (X35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 榎本 政実津金 純子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2009-07-31 
登録番号 商標登録第5252764号(T5252764) 
商標の称呼 シブヤウオーカー、ウオーカー 
代理人 西浦 ▲嗣▼晴 
代理人 出山 匡 
代理人 山田 朋彦 
代理人 ▲高▼見 良貴 

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