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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1300640 
審判番号 取消2014-300466 
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-06-23 
確定日 2015-04-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5149646号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5149646号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5149646号商標(以下「本件商標」という。)は、「お届けねっと」の文字を標準文字で表してなり、平成19年6月20日に登録出願、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成20年7月11日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成26年7月10日である。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出している。
2 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内おいて商標権者、使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
3 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の主張
ア 被請求人は、本件商標を平成20年7月から現在まで一貫していると主張している。
イ また、インターネットでの販売を辞めたことを自認しており、現在はヤマト運輸株式会社(以下「ヤマト運輸」という。)のシステムを用いて会員制で商品のお届けから代金回収までを業務委託していると主張している。
ウ 被請求人の乙各号証についての内容は、次のとおりである。
(ア)乙第1号証
ヤマト運輸からの「ご請求書」という表題の書類4通であり、それぞれにあて先として、「長野県飯田市座光寺5167-1 お届けネット.com 様」と記されており、明細には受付日、原票No.、扱店、個数、運賃合計、運賃、立替金、保険料、消費税額の項目がある。
(イ)乙第2号証
「納品書」という表題の書類であり、宛て先として「寺田厚子様」、出荷日として「2014/8/31」、請求金額として「5,344円」、品名として「豆腐(呉)」、「あずみの豆腐330g」、「淡雪揚豆腐」として記され、それぞれの品番、数量、単価、合計として「0211、5、302、1,510」、「0216、6、302、1,510」、「0211、5、302、1,510」と記されている。そして、右横上部には青字で「お届けネット.com」と記されており、その下には「長野県飯田市座光寺6115」、「TEL 0265-52-3780」、「FAX 0265-52-3754」と記されている。
(2)本件商標が不使用であることの理由
ア 乙第1号証の「ご請求書」と書された3通の書類はヤマト運輸から「お届けネット.com」宛の請求書であることは窺い知れるが、その存在の客観性が不明である。
さらに、これは「お届けネット.com」が発行した書類ではなく、ヤマト運輸が「お届けネット.com」に宛てて発行した書類、すなわちヤマト運輸の役務「貨物車による輸送」に関する取引書類であり、本件商標の役務「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に関する「お届けネット.com」の取引書類ではなく、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を証明しているとはいえない。
なお、乙第1号証の存在の客観性についてさらに言及すれば、乙第1号証の「ご請求書」の宛て先の住所は、本件商標の商標権者の住所である「長野県下伊那郡松川町生田8557」ではなく、「長野県飯田市座光寺5167-1」となっている。
請求人の調査によれば、その住所は甲第2号証に示すように「CAROLINA」という美容院であり、また、甲第3号証の1、2の現地の写真によっても、同地には、上記「CAROLINA」以外の建物は確認できなかった。さらに、甲第4号証のiタウンページによれば、「お届けネット.com」の住所は、「長野県飯田市座光寺6115」となっており、乙第1号証の「ご請求書」の宛て先の住所とは異なる。
イ 乙第2号証の「納品書」という表題の書類は、その存在の客観性が不明である。
仮に、その存在が立証されたとしても、そこに記されている日付は、本件取消審判の予告登録日より後の平成26年8月31日であり、本件審判の要証期間外のものである。
さらに、そこに記されている商標は、本件商標「お届けねっと」ではなく、「お届けネット.com」であり、そこには本件商標は付されておらず、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を証明しているとはいえない。
なお、乙第2号証の存在の客観性については、そこに記されている電話番号は、「お届けネット.com」に関し取得し、公表した電話番号「0265-21-7030」(甲4)ではなく、「0265-52-3780」である。一方、甲第5号証の1、2の現地の写真によれば、商品の配送場所らしい建物は確認できるが、これが「お届けネット.com」であるかは不明である。
ちなみに、甲第4号証に記載のURL(info@otodoke-net.com)は、現在存在しない。
これに関し、請求人は、本件審判の請求に際して慎重を来すべく、審判請求前に聞き取り調査のために前記「お届けネット.com」に関し取得し、公表した「0265-21-7030」に電話をかけたが、出てきたのは「お届けネット.com」ではなく、「信州自然王国」であった。そして、その際に「お届けネット.com」のことを尋ねたところ、現在は行っていないとの回答も得ている。
(3)被請求人提出の乙号証に付されている商標は、本件商標「お届けねっと」ではなく、「お届けネット.com」であり、これらの間には社会通念上の同一性はない。
抽象的な混同の危険が問われる商標の類似の場合は、ある商標の類似に関し、それがあらゆる場面で使用されること、すなわち、伝統的な会員制の商品販売のみならず、それがインターネット通販で使用されることも当然想定される。
一方、商標権者が商標を使用しているかが問われる本件の場合は、現実に使用されている場面のみが土台となり、その土台での商標の社会通念上の同一性が判断されるものと考える。
そのような前提に立った場合、伝統的な会員制の商品販売において商標が使用されていると被請求人が主張される本件の場合、商標に接した需要者、取引者が「.com」の文字に関し前記のような意味を直感すると考えることは不自然である。
反面、「.com」の文字が広く使用されていることは否定し得ない事実であり、この場合は広く一般に馴染みのある「.com」の文字を特定の観念を有しない造語の成分として使用していると考えるのが自然である。
そうした場合、外観上もまとまりよく表された「お届けネット.com」は「.com」の文字を特定の観念を有しない造語の成分として使用した一種の造語として理解、認識されるものというのが相当であり、「.com」部分を識別の用に全く寄与しない付記的部分と考え排除することは誤っていると考える。
一方、本件商標の「お届けネット」も一種の造語であるから、「お届けネット」と「お届けネット.com」間には社会通念上の同一性はないと考える。
(4)なお、仮に「お届けネット.com」がインターネット通販で使用されている場合は、「お届けネット」と類似関係にあることは否定できないが、だからといって社会通念上の同一性があることにはならない。
すなわち、「.com」の文字はインターネット通販において識別力が限りなく弱いとはいえ、他の文字と結合されて初めて完結するものであり、それ単独で完結可能な役務や商品の普通名称の場合とは明らかに異なるからである。
さらに、百歩譲って、インターネット通販において使用される「お届けネット.com」を「お届けネット」の文字に各種企業がインターネットで使用するウェブサイトのアドレスの末尾を結合したものと捉えた場合でも、対する「お届けネット」の文字にはそのような限定はなく、インターネット通販のみならず、対面販売や紙媒体による通販にも使用されると考えられるものであるから、両者間には一義的な対応関係はない。そのようなものに関し社会通念上の同一性を認めることは、造語の綴りからなり欧文商標とカナからなる商標間に一義的な対応関係が無いとして社会通念上の同一性を否定した過去の審決例と矛盾することになると考える。
(5)以上のとおり、被請求人は、本件商標を使用していないので、本件商標の登録は、取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、既に使用していた登録4551235商標をさらに強固にするため、第35類の飲食料品の小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供の役務として平成20年7月に登録したもので、今日まで一貫して使用している商標である。
請求人の使用した事実が存在しない、形跡が見当たらないという理由は、商標権者になんら確認することも無く、単なる憶測で判断しており、商標権者にとって大変迷惑な行為である。
また、インターネットでの販売を被請求人が辞めた理由は、その得意先の複数の通販会社が弊社製品をインターネット上で販売していただいている事を配慮したためで、現在は、ヤマト運輸のシステムを用いて会員制で商品のお届けから代金回収までを業務委託している。
したがって、本件審判の請求は、成り立たない。
2 平成27年1月7日付け上申書
「お届けねっと」の商標は、登録4551235商標として14年3月に登録する以前から使用しており、小売業の役務として登録が許されるようになった平成20年に登録5149646商標(本件商標)として登録したものであり、弊社の業務の一環として対消費者への通販ブランドとして活用している。
弊社は、食品製造卸を主業務としているためHP以外に対企業向け専門サイトを品目別に3サイトも運営しており、その売り上げが弊社売り上げの9割以上を占める事から顧客である通販会社の業務に支障をきたさないためにインターネットでの販売を中止している。
請求人が住所が違うからとして証拠方法に所在地を撮影した写真を添付しているが、権利者である弊社の3か所あった工場を閉鎖、移転しただけの話で何ら商標の権利とは関係ない話である。電話番号も(有)信州自然王国の所有であるから何ら理由とはならない。
不使用取消審判は、何人も請求する事ができるが、請求人が弁理士であることからして商標の不正競争防止法に熟知しており、以前も不使用取消審判に成功している。今回の審判請求があってからネット上で調べたところ、大手のハムメーカーが「お届けネット」の名称で通販サイトを運営している事が分かった。
しかるに万一請求人がハムメーカーの代理人として機能しているとすれば、明らかに商標違反を認知した上での請求としか考えられない。
ハムメーカーに対しては民事上の措置を講じるつもりであるが、請求人が誰の代理人であるか、またその目的を明らかにすべきと考える。
弊社は、ヤマトフィナンシャル株式会社と平成7年8月に個人への商品代金集金委託契約書を交わし、お届けねっととして販売した代金の回収を依頼している。
それ以来毎月欠かすことなく19年余に渡って商品代金集金がなされて振込みされており、ヤマト運輸の請求はその運送役務の請求である。
以上の理由で、弊社の主張立証は、尽くしたと考える。

第4 当審の判断
1 被請求人提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、「ご請求書」の表題がある「ヤマト運輸株式会社」から「お届けネット.com」に宛てた5枚の請求書である。そして、各請求書の請求年月日、請求金額及び個数は、1枚目が、平成25年7月31日、13,729円、22個であり、2枚目は、同年6月30日、12,575円、20個であり、3枚目は、同年5月31日、10,664円、17個であり、4枚目は、同4月30日、8,833円、14個であり、5枚目は、同年3月31日、16,527円、26個である。また、内容として、「受付日」「原票No.」「扱店」「個数」「運賃合計」「運賃」「立替金」「保険料」「消費税額等」の項目が表示されている。
(2)乙第2号証は、出荷日が2014年8月31日付けの「納品書」の表題がある「お届けネット.com」から「寺田厚子」に宛てた納品書である。これには、請求金額として、5,344円の記載がある。また、「品名」「数量」「単価」「合計」の欄があり、1行目には、「豆汁(呉)、5、302、1,510」、2行目には、「あずみの豆腐330g、6、378、2,268」、3行目には、「淡雪揚豆腐、1、378、378」の記載があり、さらに、「お支払い方法」の欄には、「代金引換、ヤマトコレクトサービス」の記載がある。
2 判断
(1)使用の事実の有無について
ア 乙第1号証は、「ヤマト運輸株式会社」から「お届けネット.com」に宛てた5枚の請求書であるところ、本件商標の使用に係る事実は認められない。
イ 乙第2号証によれば、被請求人は、「お届けネット.com」の名称で、出荷日を2014年8月31日とする納品書を発行しているものである。そして、ヤマトコレクトの代金引換の運送サービスを利用して発送された商品は、「豆汁(呉)、あずみの豆腐、淡雪揚豆腐」の食品である。
そうすると、この納品書からすれば、被請求人は、食品の小売りをしているといえるから、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務を行っているものである。
しかし、この請求書には、送付元としての「お届けネット.com」の名称が記載されているとしても、その他には、本件商標が自他役務の識別標識としての商標として付されているところがないものである。
そして、被請求人は、商標登録してから今日まで一貫して使用してきた旨の主張をしているものであるが、上申書において、「弊社の主張立証は、尽くしたと考える。」と述べ、追加の証拠を一切提出しないものである。
(2)本件商標と「お届けネット.com」の名称との社会通念上の同一性の判断
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「お届けネット」の文字からなるところ、これは、「お届け」及び「ネット」の文字を結合したものであるとしても、何ら特定の意味合いを有しない一種の造語として理解されるものであるから、その構成文字に相応して、「オトドケネット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 「お届けネット.com」の名称について
被請求人は、「お届けネット.com」の名称を使用しているところ、これは、「お届け」、「ネット」及び「.com」の文字を結合したものであるとしても、これを構成する文字は、同書、同大、同間隔でまとまりよく結合して表されているものであるから、一連一体の構成として看取され、何ら特定の意味合いを有しない一種の造語と理解されるものであるから、その構成文字に相応して、「オトドケネットドットコム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
してみれば、被請求人の「お届けネット.com」の名称は、その文字全体で把握、看取されるものであって、外観、称呼及び観念のいずれからみても、類似するところはないものであるから、本件商標とは、社会通念上同一の商標ということができない。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その指定役務のいずれかについて、本件商標を使用していることを証明したものということができない。
また、被請求人は、本件指定役務について、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2015-02-09 
結審通知日 2015-02-13 
審決日 2015-02-24 
出願番号 商願2007-63176(T2007-63176) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大井手 正雄 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2008-07-11 
登録番号 商標登録第5149646号(T5149646) 
商標の称呼 オトドケネット 
代理人 保科 敏夫 

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