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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X0942
管理番号 1298290 
審判番号 取消2013-300486 
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2015-02-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5266105号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5266105号商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・その他の記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守の分野における助言・相談,コンピュータシステムの設計又は保守,コンピュータシステムに関する助言,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ)の貸与,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5266105号商標(以下「本件商標」という。)は、「A-CACHE」の欧文字と「エーキャッシュ」の片仮名とを2段に横書きしてなり、平成19年12月27日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・その他の記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守の分野における助言・相談,コンピュータシステムの設計又は保守,コンピュータシステムに関する助言,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ)の貸与,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」を指定商品及び指定役務として、同21年9月18日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成25年7月3日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び平成26年4月16日付け上申書により、要旨次のように述べ、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM・その他の記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守の分野における助言・相談,コンピュータシステムの設計又は保守,コンピュータシステムに関する助言,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ)の貸与,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」について、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、上記指定商品及び指定役務について、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)弁駁の主旨
被請求人は、使用商標と本件商標の具体的な対比をしないばかりか、使用商標の特定すらしていないので、提出に係る証拠のうち、いずれの表示をもって本件商標又はこれと社会通念上同一の商標と主張したいのか不明といわざるを得ないものであり、商標法第2条第3項各号のいずれに該当する使用を立証しようとするのかも不明である。
したがって、被請求人の主張は、全体として不明確といわざるを得ないが、審判事件答弁書において、「『電子計算機用プログラム』等について、被請求人が本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用していることは同書証(乙第4号証)からも明らかである」及び「『電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守』等の役務も顧客に提供している」との記載があることから、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」についての使用を立証しようとするものと推測する。
しかしながら、提出された証拠を見る限り、被請求人が本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用している事実は認められず、第9類「電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」について使用しているとも認められない。
(2)本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が使用されている事実がないことについて
ア 本件商標は、上段に「A-CACHE」の欧文字を、下段に「エーキャッシュ」の片仮名を2段に書してなるが、提出された証拠には「A-CACHE」と「エーキャッシュ」がまとまりよく2段に書されたものは一切存在しない。
したがって、商標権者が登録商標そのものを使用していないことは明らかである。
イ 欧文字と片仮名を2段に書してなる商標のいずれか一方が使用された場合、該使用をもって登録商標と社会通念上同一の商標についての使用と認められることがあることは請求人も承知しているが、これが常に認められるとは限らず、「特段の事情がない限り」(甲1)であって、ここにいう「特段の事情」とは、経験則上、「登録商標から生じる称呼及び観念に異同がない」こととされている(甲2及び甲3)。
(ア)欧文字「A-CACHE」は、乙第2号証及び乙第3号証に記載されているが、これらの書面は第三者の作成に係る書面であって、「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」(商標法第50条第2項)が本件商標の使用をしていることの証明に該当しないことは明らかである。
したがって、商標権者等が、欧文字「A-CACHE」を使用している事実は立証されていない。
(イ)片仮名「エーキャッシュ」は、乙第4号証において使用の事実が確認できるものであるが、本件商標は、上段からも下段からも「エーキャッシュ」の称呼を生じ、特別な観念を生じないものと認められる一方、使用商標「エーキャッシュ」は、乙第4号証の冒頭において「『INFINI Availability Cache』(以下、「エーキャッシュ」という)」と明示されていることから、「Availability Cache(入手可能なデータ)」の短縮形として取引者、需要者に認識、理解され(「Cache」=「データ」について甲4)、「Availability Cache(入手可能なデータ)若しくはその短縮形」の観念を生じることになる。
そうすると、「エーキャッシュ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない本件商標と、「エーキャッシュ」の称呼を生じ、「Availability Cache若しくはその短縮形」の観念が生じる使用商標とでは、称呼は共通であるものの、観念が異なることから、「特段の事情」があるといわざるを得ない。
(ウ)日本人にとっては、「キャッシュ」といえば、「cache」のほかにも、身近な英単語として、「cash」が存在する(甲5)から、片仮名「エーキャッシュ」に接する取引者、需要者は、該「エーキャッシュ」をもって「A-cash」の表音として理解する可能性もある。
そうとすれば、片仮名「エーキャッシュ」は、欧文字「A-CACHE」だけでなく、欧文字「A-cash」とも理解され得るのであって、「cache」と「cash」の意味するところが明確に異なる以上、両者に通じる片仮名「エーキャッシュ」が「登録商標から生じる観念に異同がない」商標といえないことは明らかであるから、片仮名「エーキャッシュ」は、観念において、本件商標と社会通念上同一の商標には該当しない。
ウ 以上述べたように、提出された全証拠を確認しても、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用していた事実は立証されていない。
(3)本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務について使用されている事実がないことについて
ア 被請求人の主張によると、(ア)被請求人は、航空券の予約や発券等を行なうための包括的なシステムとしてINFINIシステムを開発し、管理・所有しているが、(イ)該INFINIシステムのホストサーバーあてになされた空席照会結果や飛行スケジュールをデータ化し、該データを旅行会社及び旅行ポータルデータサイトに提供するシステムとの関係で「A-CACHE」を使用し、該システムを実際に顧客に提供しており、(ウ)自己の業務に係るホストサーバーから各航空会社のスケジュール及び空席情報を取得し、その情報をデータベースに貯蔵することで迅速に各ユーザーにこれを提供することを可能にするシステムの名称として「A-CACHEシステム」を採用していた、とあることから、被請求人は「自ら管理・所有するコンピュータシステムを介して顧客に空席情報等の提供を行なうサービス」をしており、ユーザーは「A-CACHEシステム」を介して空席情報等を迅速に取得することができるというものである。
イ 第9類「電子計算機用プログラム」とは、ダウンロードしたり、あるいは、媒体に記憶させることで「プログラム」自体が流通する場合に該当するものであるところ、被請求人の全証拠を見ても、「A-CACHEシステム」がダウンロード可能な、あるいは、パッケージ化されたプログラムであることを証明するものはない。
なお、一部に「ダウンロードにて提供を行なう」旨の記載はあるが(乙4)、これは「データ」の提供方法であって、「プログラム」ではないから、本件審判の請求に係る指定商品そのものではない。
ウ 第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」とは、「他人のため」に「他人の所有物たる」電子計算機のプログラム又はコンピュータシステムを設計・作成し、そうした「他人の所有物たる」電子計算機のプログラム又はコンピュータシステムを「他人に代わって」保守するサービスが該当するところ、自らが所有するためのプログラムを自ら設計及び作成したり、保守したりする行為は、「他人の所有物」について「他人のために」行なうものではない以上、商標法上の役務には該当しない。
エ 被請求人が提供するサービスは、商標法上の観点によれば、第39類「オンラインを通じた航空機の空席状況情報の提供」(甲7)、あるいは、第42類「オンラインを通じた航空機の空席状況情報の提供用の電子計算機用プログラムの提供」(甲8)に該当するものであり、そのためのシステムを自ら設計及び作成し、保守するとしても、それが「自らが管理・所有している」システムである以上、その行為は、商標法上の役務の提供には該当しない。
なお、被請求人は、「『フォーマットについてINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する』との記載がある」ことを根拠に、「電子計算機プログラムの設計」に該当すると主張するが、仮に被請求人が電子計算機のカスタマイズサービスに個別に応じたとしても、それは、被請求人の所有するシステムの利便性を高めるためのものであって、上記「オンラインを通じた航空機の空席状況情報の提供」又は「オンラインを通じた航空機の空席状況情報の提供用の電子計算機用プログラムの提供」に付随して行なわれるにすぎないから、上記被請求人の主張は失当である。
オ 以上述べたように、被請求人は、第9類「電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」のいずれにも「A-CACHE」を使用していない。
3 口頭審理陳述要領書における陳述
(1)指定商品との関係での使用について
被請求人は、乙第4号証により、商標「エーキャッシュ」が付されたコンピュータシステム及び該システムを構築するためのコンピュータプログラムが顧客に対して提供されていると主張する。
しかし、被請求人が自ら認めるように、商標「エーキャッシュ」は、「INFINIシステムのホストサーバーあてになされた、空席照会結果や飛行スケジュールをデータ化し、該データを旅行会社及び旅行ポータルデータサイトに提供するシステム」との関係で使用されているのであるから、「INFINI Availability Cache使用許諾契約書」(乙4)の第2条における「【提供方法】」も、「データ」のダウンロードと解するのが無理のない解釈である。
したがって、被請求人の上記主張は、ほかの主張及び証拠との整合性に欠けるものであり、信憑性がない。
なお、仮にそのようなプログラムが存在するのであれば、より具体的な証拠の提出が不可欠である。
(2)指定役務との関係での使用について
被請求人は、乙第4号証中に「フォーマットについてINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する」との記載があることを根拠に、「電子計算機用プログラム」の設計変更等のサービスも提供していることが理解できると主張する。
しかし、自ら所有するコンピュータシステムについて、顧客の求めに応じてカスタマイズしたとしても、それは、被請求人の所有するシステムの利便性を高めるためのものであって、それ自体独立して提供されるものではないから、このような行為が商標法上の役務といえないことは明らかである。
(3)本件商標の使用について
被請求人は、乙第2号証及び乙第3号証における「A-Cache」又は「A-cache」なる商標の使用が商標法第2条第3項第8号の使用に該当すると主張するが、乙第2号証及び乙第3号証は、沖電気工業株式会社(以下「沖電気」という。)が作成したものであり、沖電気は、商標法第50条第2項において求められている商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれにも該当しないのであるから、被請求人による上記主張は失当である。
(4)本件商標と同一又はこれと社会通念上同一の商標について
被請求人は、審判便覧の記載を根拠に、「A-CACHE」及び「エーキャッシュ」からは「エーキャッシュ」の称呼のみが生じるとともに、両者とも特定の観念を生じないいわゆる造語として認識されるものであるから、「A-CACHE」及び「エーキャッシュ」を2段書きした本件商標と「エーキャッシュ」とは、社会通念上同一の商標であると主張する。
しかし、「エーキャッシュ」からは、「A-CACHE」のほかに、「A-cash」も容易に想到し得ることから、表音と欧文字とが一対一で対応するとはいえない事案に該当する。
そして、「キャッシュ」の表音に対応する欧文字は、「CACHE」よりも、むしろ「cash」の方が身近であることを考えれば、「エーキャッシュ」に接する取引者、需要者が、これより、「A-CACHE」に加え、「A-cash」をも想像すると考えることは極めて自然である。
したがって、使用商標「エーキャッシュ」と本件商標とが社会通念上同一と考えなければならない合理的理由は存在しない。
4 平成26年4月16日付け上申書の内容
(1)「A-CACHE」が本件商標と社会通念上同一の商標ではないことについて
ア 本件商標は、その審査段階において、「『CACHE(キャッシュ)』の文字は、本願指定商品・指定役務を取り扱う業界において、『データへの高速なアクセスを可能にするために、使用頻度の高いデータを一時的に保管して再利用する仕組み(機能)』を指称する語として普通に使用されて」おり、本件商標からは「『A』記号のキャッシュ機能を備えた商品またはそれに係る役務ほどの意味合いを認識させるにとどまる」ので、商標法第3条第1項第6号に該当するとの理由で拒絶された経緯がある。
これに対して、被請求人は、「当該要素に対応する下段部に配された『エーキャッシュ』の片仮名の文字も同書・同大・等間隔で横一連に表されていることをも考慮すると、本願商標にあっては、全体を一体不可分のものとしてのみ認識され」るので、その構成全体をもって識別力がある旨の反論を行った(甲9)結果、本件商標は、「A-CACHE」の欧文字と「エーキャッシュ」の片仮名とがー体的にまとまりよく表してなることを認定した上で、「前記のとおり一体的な構成からなる本願商標は(中略)一体不可分の造語として理解される」とし、登録されたものである。
イ 商標法第50条第1項にいう「社会通念上同一」とは、パリ条約第5条C(2)の規定の要請を受け、登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない限度にとどまるものであるときは、その標章の使用をもって同法第50条にいう「登録商標の使用」に該当することを明示したものであるところ、本件商標は、「A-CACHE」のみでは内容表示的であり、また、「エーキャッシュ」のみでは「A-CACHE」なのか「A-CASH」なのかすら分からないという2つの標章が上下にまとまりよく書され、一体となることで、初めて識別性が認められ、登録に至ったものである。
このように、商標全体としての一体性が評価されて登録に至った商標について、その上段部のみ又は下段部のみで使用する行為は、「登録商標の構成において基本をなす部分を変更するもの」にほかならず、「該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない限度」を超えたものといわざるを得ない。
したがって、乙第7号証の1ないし4において使用されている商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(2)「A-CACHE」が「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」に使用されていないことについて
ア 被請求人の主張によれば、本システムは、「従来、顧客が被請求人の有するホストから都度取得する必要があった空席照会の結果について、被請求人側でデータベース化を行ない、旅行会社(中略)が指定した『航空会社』、『区間』、『クラス』、『期間』等の検索条件に基づくデータの取得を可能とする機能を提供すると共に、前記検索条件に基づき取得されたデータをこれらの顧客のために設けられた同システム内の記憶領域に一時的に保存してデータベース化し、ZIPファイル形式にて取得することを可能にする機能を提供するシステム」であって、「Webサーバ、JOBサーバ及びDBサーバから構成され(中略)検索条件を入力することで、指定した条件に基づくデータを取得することが可能となり、その結果、顧客のために設けられたJOBサーバの記憶領域に一時的に保存された上記データがZIP作成機能によって変換され、ZIPファイルの形式でダウンロードがなされる」ものである。
そうすると、被請求人は、自己の所有するWebサーバ、JOBサーバ及びDBサーバにおいて、空席情報等のデータを作成し、該JOBサーバに一時的に該データを保存した上で、これをZIP形式に変換し、該ZIP形式のデータを顧客に提供しているにほかならないから、旅行会社の所有するコンピュータにプログラムの複製が送信され、記録及び保存されることはなく、旅行会社は、(被請求人の)サーバでプログラムが機能した結果を受け取るにすぎない。そして、このように「サーバでプログラムが機能し、その結果を受け取る」行為は、商標法上、「サ-ビス」に該当するとされている(甲10)。
イ 被請求人は、「本システム等は、データを抽出、加工及び変換する機能を有する電子計算機用プログラムとしての側面」があると主張するが、本件審判において争点となっているのは、そのような「プログラム」が「送信され、記録及び保存される」ものなのか、あるいは、単に「サーバでプログラムが機能し、その結果を受け取る」にすぎないのか、という点であるところ、被請求人の説明に基づけば、被請求人のシステム等は、後者であると理解するのが自然であるし、これを覆すような証拠も示されていない。
したがって、被請求人は、本件商標を「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」について使用していたとはいえない。
ウ 被請求人は、新たに乙第8号証を提出し、「本システム等に関して独立して取引が行なわれていること及び本システム等、特に本システムの利用を可能とするコンピュータプログラムが顧客の有するコンピュータ1台毎にダウンロードされているものであることが把握できる」と主張するが、乙第8号証によっては、コンピュータプログラムが「独立して取引が行なわれていること」は証明されておらず、それが「ダウンロードされている」ことも証明されていない。
例えば、特許調査用のコンピュータシステムでは、複数の端末から同時にアクセスするのであれば、端末数分の契約が必要となり、課金もその数に応じて請求されることとなるから、当然に、その請求書には「台数」、「ID数」又は「契約数」等が明示されることになるが、そのことが、該端末にプログラムがダウンロードされていることや、該プログラムが検索システムとは独立して取引されていることと直接結び付くものではない。この場合、需要者は、あくまで第42類「特許調査用コンピュータシステムの提供」サービスに対してシステム使用料を使用台数に応じて支払っているのであるから、乙第8号証のような請求書を示したところで、「プログラムの複製が送信され、記録及び保存される」ことが証明されるわけではなく、また、プログラムが独立して取引されていることが証明されるわけでもない。
したがって、乙第8号証は、本件商標が独立して商取引の対象となる商品「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」について使用されていることの証拠にはならない。
なお、乙第8号証は、その請求書の請求費目が「使用料」であること及び「INFINI AVAILABILITY CACHE」の台数表示が「1-99999台」という不自然な数字であることからすると、「電子計算機用プログラム(システム)の提供」のサービス使用料一式に係る請求書と考えるのが自然であり、とりわけ、「1-99999台」という請求単位は、実際にこれがコンピュータプログラムとして台数ごとに取引され、課金されているのであれば、このような不自然な数字になることは到底考えられないから、本来、システム使用料「一式」とすべきところを、請求書フォーマットの都合上、このように表示しているにすぎないものと推測される。
(3)「A-CACHE」が「電子計算機プログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」に使用されていないことについて
被請求人によるこの点についての主張は、ダウンロードされる「電子計算機用プログラム」の存在が前提となっているが、上記のとおり、被請求人は、データをZIPファイル形式で提供しているだけなので、本件商標が「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守、コンピュータシステムの設計又は保守」に使用されていないことは明らかである。
5 まとめ
被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に第39類「オンラインを通じた航空機の空席状況情報の提供」、あるいは、第42類「オンラインを通じた航空機の空席状況情報の提供用の電子計算機用プログラムの提供」に該当する行為を行なっていたものの、これらの行為は、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務ではない。
また、被請求人が使用していた商標は、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標ではない。
したがって、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、本件審判の請求に係る商品及び役務について、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び平成26年4月2日付け上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標は、要証期間内に、日本国内において、商標権者である被請求人によって、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務について使用されていることが明らかである。
(2)被請求人は、東京都港区赤坂に主たる事業所を有する、1990年に設立された法人であって、その主な事業内容は、日本国内の旅行市場でのGDS(Global Distribution System)サービス及び国際線GDSに係る情報提供サービスの提供である(乙1)。
被請求人は、航空券の予約や発券等を行うための包括的なシステムとして、INFIINI(審決注、「INFINI」の誤記と認める。)システムを開発し、管理・所有しており、以下のとおり、該INIFINI(審決注、「INFINI」の誤記と認める。)システムのホストサーバーあてになされた空席照会結果や飛行スケジュールをデータ化し、該データを旅行会社及び旅行ポータルデータサイトに提供するシステムとの関係で本件商標を使用し、該システムを実際に顧客に提供している(乙2ないし乙4)。
ア 「A-CACHEシステム」仕様書及び納品書
乙第2号証は、空席照会結果や飛行スケジュールをデータ化し、該データを旅行会社等に提供する被請求人の業務に係るシステム(以下「A-CACHEシステム」という。)の発注先である沖電気の作成した「A-CACHEシステム」の仕様書であり、また、乙第3号証の1ないし3は、沖電気から被請求人に送付された「A-CACHEシステム」の納品、再構築及び検収に関する納品書の写しである。
そして、乙第2号証ないし乙第3号証の3により、被請求人が、要証期間内である2012年には既に、自己の業務に係るホストサーバーから各航空会社のスケジュール及び空席情報を取得し、その情報をデータベースに貯蔵することで迅速に各ユーザーにこれを提供することを可能にするシステムの名称として、「A-CACHE」を採用していたという事実がうかがい知れる。
イ 「A-CACHE」システム契約書
上記アによれば、被請求人が、「A-CACHE」システムの仕様書(乙2)を顧客たる旅行会社や旅行ポータルサイト運営会社等に示した上で、同システムの概要を説明し、同システムに関連した商品及びサービスを提供していることは、想像に難くない。
そして、乙第4号証は、「A-CACHEシステム」の提供を受ける顧客との間で締結された契約書の写しであるところ、顧客が「A-CACHEシステム」の提供を受けるための「電子計算機用プログラム」等について、被請求人が本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を使用していることは、同書証からも明らかである。
また、上記契約書の第2頁に「フォーマットについてINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する。」との記載があることからも容易に推認できるとおり、被請求人は、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標の下に、「A-CACHEシステム」や同システムとの関連で利用される電子計算機用プログラム等の設計・作成又は保守、すなわち、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」等の役務も顧客に提供している。
したがって、上記契約書の締結日が2010年12月1日であることも考慮すると、被請求人は、要証期間内に、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品又は指定役務について、我が国において、実際に使用していたといえる。
2 口頭陳述要領書における陳述
(1)指定商品との関係での使用について
乙第4号証は、要証期間内である2010年12月1日を契約締結日とする「INFINI Availabi1ity Cache使用許諾契約書(インフィニシステム使用許諾契約書)」であるところ、その第2頁によれば、被請求人所有の「INFINIシステム」のホストサーバーあてになされた空席照会結果やフライトスケジュールをデータ化し、該データを旅行会社及び旅行ポータルデータサイトに提供するという一連のシステムとの関係で「エーキャッシュ」なる名称が用いられているとともに、該「エーキャッシュ」システムを構築するコンピュータプログラムは、ダウンロード形式にて顧客に提供されているという事実が確認できる。
したがって、乙第4号証により、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「エーキャッシュ」が付されたコンピュータシステム及び該システムを構築するためのコンピュータプログラムが顧客に対して提供されているといえるから、本件商標と同一又はこれと社会通念上同一の商標が本件審判の請求に係る指定商品中の第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」について使用されていることは明らかである。
(2)指定役務との関係での使用について
上記(1)にいう契約書(乙4)の第2頁においては、「エーキャッシュ」システムに関し、「フォーマットについてINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する。」との記載があることから、顧客の利便性の向上等を目的として、その求めに応じて、被請求人が「エーキャッシュ」システムや該システムとの関連でダウンロードされる「電子計算機用プログラム」の設計変更等のサービスも提供していることは、容易に理解できる。
したがって、乙第4号証により、本件商標と同一又はこれと社会通念上同一の商標が本件審判の請求に係る指定役務中の第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」等について使用されていることは明らかである。
(3)使用について
ア 乙第2号証及び乙第3号証においては、「A-Cache」又は「A-cache」なる商標が「A-CACHEシステム」の仕様書及び納品書に表示されていることから、要証期間内である2012年には既に,被請求人が本件商標と同一又はこれと社会通念上同一の商標を上記システムの名称として採用するとともに、その取引書類において該システムを指称するものとして使用していたことが容易に推認できる。
したがって、上記仕様書及び納品書における「A-Cache」又は「A-cache」なる商標の使用は、取引書類に標章を付して頒布する行為であることから、商標法第2条第3項第8号にいう使用行為に該当し得るものである。
イ 上記(1)にいう契約書が取引書類に該当することは明らかであるところ、該契約書は、「エーキャッシュ」システムの提供を受ける需要者と被請求人との間で必ず締結される契約に際し、顧客に対して頒布されるものである。
また、乙第5号証も、乙第4号証と同様に、「エーキャッシュ」システムに関する使用許諾契約書であるところ、取引書類である該契約書においても商標「エーキャッシュ」が被請求人の提供に係る該システム等を指称するために使用されていることが理解できる。
したがって、上記各契約書における被請求人による本件商標と同一又はこれと社会通念上同一の商標「エーキャッシュ」の使用は、取引書類に標章を付して頒布する行為であることから、商標法第2条第3項第8号にいう使用行為に該当することは明らかである。
(4)本件商標と同一又はこれと社会通念上同一の商標について
本件商標は、前記第1のとおりの構成からなる商標であるところ、「審判便覧53-01 登録商標の不使用による取消審判」では、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用にあっては登録商標と社会通念上同一の商標と認められる」旨が記載されている(乙6)。
そして、乙第2号証ないし乙第5号証には、「A-Cache」、「A-cache」又は「エーキャッシュ」なる商標が表示されているところ、これらの商標は、以下のとおり、本件商標と同一の商標とはいえないものの、社会通念上同一の商標に該当するものである。
ア 本件商標は、上段の「A-CACHE」の欧文字及び下段の「エーキャッシュ」の片仮名がそれぞれまとまり良く一体に表されており、また、ハイフン(-)は、その前後に配された文字を強固に結びつける機能を有する符号として使用されるものであることから、本件商標は、「エーキャッシュ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない、いわゆる造語として認識されるものである。
そうすると、本件商標と乙第2号証及び乙第3号証における使用商標「A-Cache」又は「A-cache」とを比較した場合、該使用商標は、本件商標の上段部にある「A-CACHE」との間で、大文字と小文字の差異しかないことから、該使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標の関係にあることは明らかである。
イ 乙第4号証及び乙第5号証における使用商標「エーキャッシュ」は、本件商標の下段部にある「エーキャッシュ」と同一であることから、2段併記の構成からなる場合であって、その一方が使用されている場合に該当するものであり、また、「エーキャッシュ」の文字は、同書、同大、等間隔をもって表されており、本件商標と同様に、何ら特定の観念は認識され得ないものであることから、該使用商標「エーキャッシュ」も本件商標と社会通念上同一の商標に該当すると考えられる。
(5)審判事件弁駁書に対する反論
ア 請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されている事実がないとの主張をしているが、上記(4)のとおり、使用商標「A-Cache」、「A-cache」又は「エーキャッシュ」は、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標に該当するものである。
なお、請求人は、「片仮名『エーキャッシュ』に接する取引者、需要者は、該『エーキャッシュ』をもって『A-cash』の表音として理解する可能性もあり、そうとすれば、片仮名『エーキャッシュ』は、欧文字『A-CACHE』だけでなく、欧文字『A-cash』とも理解され得るのであって、『cache』と『cash』の意味するところが明確に異なる以上、両者に通じる片仮名『エーキャッシュ』が『登録商標から生じる観念に異同がない』商標といえないことは明らかである。」旨主張するが、片仮名「エーキャッシュ」のみからなる使用商標に接する取引者、需要者にあっては、そもそも「エー」と「キャッシュ」を殊更に分離して認識するとは考え難く、しかも、片仮名「エーキャッシュ」から「A-cash」といったような欧文字「A」と「cash」との間にハイフンの符号を配置するような特殊な態様を想定するとは考えられない。
したがって、片仮名「エーキャッシュ」は、その全体をもって造語として把握されるのが当然であり、上記請求人の主張は失当である。
イ 請求人は、「被請求人は『自ら管理・所有するコンピュータシステムを介して顧客に空席情報等の提供を行うサービス』をしており」と主張しているが、被請求人の提供する「A-CACHE」システムは、アプリケーションソフトウェアから構築されるコンピュータシステムであって、インターネットを介して顧客が該システムを構築するコンピュータプログラムをダウンロードする方法により提供されている。
そして、そのようなダウンロードにより顧客が取得するアプリケーションソフトウェア及びこれにより構築されるコンピュータシステムは、正に第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」に該当するものである。
また、上記(1)にいう契約書(乙4)の第2頁においては、上記コンピュータプログラムについて、顧客のカスタマイズ要望に対応する旨の記載があり、これは、顧客の利便性の向上のため、顧客の要望に応じてダウンロードされた該プログラムの設計変更を行うサービスを提供することを示すものであるから、該行為は、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」等の役務に該当するものである。
なお、上記契約書の第2頁の「【提供方法】」に記載されたダウンロード方式により提供されるのは、「A-CACHE」システムを構築するコンピュータプログラムであるから、これをデータであるとする請求人の主張は失当である。
3 平成26年4月2日付け上申書の内容
(1)乙第7号証の1ないし4の提出の趣旨について
請求人は、乙第2号証及び乙第3号証には、欧文字「A-CACHE」が記載されているものの、これらの作成者が商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれにも該当しない沖電気であることを理由として、商標権者が本件商標を使用している事実を証するものではない旨主張する。
しかしながら、発注された納入物の名称をその受注先が決定することは到底考えられないから、被請求人は、乙第2号証及び第3号証に係る書証をもって、商標権者がシステム等の名称として「A-CACHE」を使用していることが十分に把握されると確信しているが、無用の疑念を払拭すべく、乙第7号証の1ないし4を提出する。
すなわち、被請求人が、取引書類である注文書(乙7の1)、該注文書に対する発注請書(乙7の2)、該注文書に基づく納品に対する検査合格書(乙7の3及び4)において、システム及びシステムを構成するプログラム(以下「システム等」という。)との関係で、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「A-CACHE」を使用していることは明らかである。
なお、乙第7号証の1は、被請求人から沖電気への「A-Cache」システム等の発注書であり、被請求人の作成に係る書面であることから、商標権者がシステム等の名称として「A-Cache」の表示を用いていたことは明らかであり、また、乙第7号証の2は、受注先である沖電気の作成に係る書類ではあるが、被請求人及び沖電気間で上記システム等の開発契約が成立していることを証する書面であり、さらに、乙第7号証の3及び4は、該契約に基づき納品された「A-Cache」システム等について、被請求人による検査及び確認がなされた事実を証するものであって、被請求人の作成に係る書面であるから、乙第7号証の1ないし4によっても、商標権者がシステム等の名称として「A-Cache」を使用しているという事実が容易に理解できる。
(2)乙第2号証ないし乙第4号証に記載された日付について
システム等の開発が完了した後に、該システムの仕様書が作成され、システムとともに発注者に引き渡されることは通常想定される取引の実情であることから、「A-Cacheシステム仕様書」(乙2)及び「納品書」(乙3)の日付については、特段の説明を要しないものと思われる。
また、「契約書」(乙4)に記載された日付(2010年12月1日)が、乙第2号証に記載された日付(2012年8月6日等)及び第3号証に記載された日付(2012年3月29日等)に先立つものである点については、コンピュータシステムや電子計算機用プログラムが、情報の処理容量の増加、システム全体の利便性の向上、コンピュータウイルスへの対策等の観点から、基礎となるシステムやプログラムを頻繁に改良、再構築又はバージョンアップすることにより、顧客の要望に迅速に応え、かつ、IP技術の急速な発展に対応していることは周知の事実であるところ、被請求人の業務に係る「A-Cache」システム等も、本件審判の請求の登録の日前の2007年には既に、基礎となるシステム等の開発が完了し、顧客への提供が開始されていたものであり、乙第2号証及び乙第3号証は、2012年に行われた「A-Cache」システム等の再構築に際して締結された開発契約に関連する取引書類である。このことは、乙第3号証中に「A-Cacheシステム再構築」の記載があることからも明らかである。
他方、乙第4号証は、「A-cache」システム等が再構築される前のバージョンの該システム等に関して締結された契約書であることから、その日付が乙第2号証及び乙第3号証に記載されたものと先後することとなったものである。
したがって、乙第2号証ないし乙第4号証に記載された日付が先後することは、いかなる疑念を生じさせるものではないから、取引書類において、要証期間内に商標権者が本件商標と社会通念上同一の商標「エーキャッシュ」を使用していた事実を証する書類として認められて然るべきである。
(3)「A-CACHE」システム等について
ア 「A-CACHE」システム等の概要
「A-CACHE」システム等とは、乙第4号証及び乙第5号証の第1条で定義されるように、「航空会社」、「区間」、「期間」に関して被請求人の保有するINFINIシステムのホストあてになされた空席照会の結果をデータ化し、該データを旅行会社及び旅行ポータルサイトに提供するシステム及び同システムを構成するコンピュータプログラムであるところ、より具体的には、本システム等は、従来、顧客が被請求人の有するホストから都度取得する必要があった空席照会の結果について、被請求人側でデータベース化を行い、旅行会社や旅行ポータルサイトの運営者等の顧客が指定した「航空会社」、「区間」、「クラス」、「期間」等の検索条件に基づくデータの取得を可能にする機能を提供するとともに、上記検索条件に基づき取得されたデータをこれらの顧客のために設けられた同システム内の記憶領域に一時的に保存してデータベース化し、ZIPファイル形式にて取得することを可能にする機能を提供するシステムである。
本システム等は、Webサーバ、JOBサーバ及びDBサーバから構成されるものであり(乙2の第6頁及び第7頁)、顧客は、Webサーバのエージェント機能を利用して「航空会社」、「区間」、「クラス」、「期間」等の検索条件を入力することで、指定した条件に基づくデータを取得することが可能となり、その結果、顧客のために設けられたJOBサーバの記憶領域に一時的に保存された上記データがZIP作成機能によって変換され、ZIPファイルの形式でダウンロードがなされるものである(乙2の第27頁ないし第29頁)。
イ 指定商品との関係での使用について
上述のとおり、「A-CACHE」システム等の有する機能には、顧客が条件に合致した空席照会の結果を取得し、これに関するデータを一時的に保存してデータベース化したZIPファイル形式でダウンロードする機能が含まれているところ、この点に鑑みると、本システム等は、データを抽出、加工及び変換する機能を有する電子計算機用プログラムとしての側面に加え、契約書(乙4及び乙5)の第2条からも明らかなように、ダウンロード方式により提供されるものであることからすると、第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」の商品に該当すると考えられるものである。
したがって、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」について、本件商標と社会通念上同一の商標を取引書類である契約書において使用しており、このような行為が商標法第2条第3項第8号に該当することは明らかである。
ウ 指定役務との関係での使用について
契約書(乙4及び乙5)の第2条には、「フォーマットについてINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する。」との記載があることから、被請求人において、顧客の利便性の向上等を目的として、本システムとの関係でダウンロードされる「電子計算機用プログラム」の設計変更等のサービスも提供していることが理解できる。
したがって、被請求人は、本件審判の請求に係る指定役務中の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」について、本件商標と社会通念上同一の商標を取引書類である契約書において使用しており、このような使用も商標法第2条第3項第8号に該当すると考えられる。
(4)本件商標等が使用された商品「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」が独立して取引されたことについて
乙第8号証は、被請求人が顧客に対して発行した本システム等に関する使用料を含む請求書であって、契約書(乙4及び乙5)の第4条に記載された月額提供料を請求するものである。
そして、乙第8号証は、その内容として「INFINI AVAILABILITY CACHE 1-99999台」が、同じく、請求期間として「13/10/01-13/10/31」がそれぞれ記載されていることから、本システム等に関して独立して取引が行われていること及び、本システム等、特に本システムの利用を可能にするコンピュータプログラムが顧客の有するコンピュータ1台ごとにダウンロードされるものであることが把握できるものであり、これより本システム等に関して独立して取引が行われていることが推認されるものである。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標を、少なくとも、第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」について、商標法第2条第3項第8号にいう使用をしたことは明らかであるから、被請求人にあっては、本件審判の請求は成り立たない旨の審決を希求する次第である。

第4 当審の判断
1 被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標をその請求に係る指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」に使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出しているので、以下検討する。
(1)乙第1号証は、被請求人のホームページ抜粋とされるものであって、2013年(平成25年)8月20日に紙出力されたものであるところ、「Company」の見出しの下、「私たちは旅行関連商材の予約・発券システム【GDS】の国内シェアナンバー1のリーディングカンパニーです。」の記載、「Business」の見出しの下、「日本国内の旅行市場を対象としたGDSサービスの提供ならびに、国際線GDSにかかわる情報提供サービスを行っています。」の記載、及び「Products」の見出しの下、「予約に関するシステム提供、発券に関する機能、データの一元管理に関するシステムなど、プロダクトをご紹介します。」の記載がある。
(2)乙第2号証は、「INFINI様向けA-Cacheシステム仕様書」と題するシステム仕様書であるところ、6頁目「1.概要」の目的には「本システムは、Prime Hostから各航空会社のスケジュール・空席情報を取得し、その情報をデータベースにキャッシュすることで、ユーザに迅速にこれらの情報を提供することを目的とする。」との記載、システム構成図には「本システムは、Webサーバ、DBサーバ、JOBサーバで構成される。ユーザ、INFINI管理者、その他プロダクトなどA-Cacheシステムへのアクセスは、Web経由で行われる。また、A-CacheシステムからINFINI Prime Hostへのアクセスは、Sabre Web Service、もしくは、HostLinkを使用して接続する。」との記載とともに、システム構成の概略図が記載されている。
(3)乙第3号証の1ないし3は、沖電気から被請求人にあてた「納品書」であるところ、請求年月日を2012年3月29日とする納品書(乙3の1)の品名欄には「A-Cacheシステム再構築対応11年度ご検収分」の記載、2012年11月30日とする納品書(乙3の2)の品名欄には「A-Cacheシステム再構築(10月度ご対応分)」の記載、2012年11月30日とする納品書(乙3の3)の品名欄には「A-Cacheシステム再構築(11月度ご対応分)」との記載がある。
なお、沖電気は、本件商標の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれにも当たらない。
(4)乙第4号証及び乙第5号証は、いずれも「INFINI Availability Cache使用許諾契約書」(INFINIシステム使用許諾契約書)(以下、「使用許諾契約書」という。)であって、前者は2010年12月1日を、後者は2011年12月27日を、それぞれ契約日とする被請求人とユーザーとの契約書である。該契約書には、「株式会社○○(「○○」の部分は、黒塗りされている。)と被請求人は、インフィニ所有のINFINIシステムにおける『INFINI Availability Cache』(以下、『エーキャッシュ』という)の運用に関し、以下の通り合意する。」旨の記載の下、第1条(定義)として「『エーキャッシュ』とは、インフィニが設定した『航空会社』、『区間』、『期間』に関するINFINIシステムのホスト宛てになされた空席照会結果をデータ化し、当該データを旅行会社及び旅行ポータルサイトに提供するシステムをいう。」、第2条(提供)として「1.インフィニは、本契約書に基づき、『エーキャッシュ』をユーザーに提供する。」及び「2.インフィニは、下記【提供方法】欄中にユーザーがチェックした方法(×印を付した方法)でユーザーに対して、『エーキャッシュ』を提供する。」、第3条(本機能の利用に際するユーザー側の義務)として「1.ユーザーが『エーキャッシュ』を利用するために必要となる開発(インフィニが『エーキャッシュ』のデータフォーマット等を変更した場合(Multi-Accessの画面変更など)の対応を含む)及びその後の運用は、ユーザーの費用と責任で行う。」、第4条(提供料)として「1.ユーザーはインフィニに対し、『エーキャッシュ』の提供料として下記のとおり初回契約金及び月額提供料を支払うものとする。」等の記載がある。
なお、「エーキャッシュ」の提供方法には、ダウンロード方式、FTP方式又はAPI方式(XML方式)があるとされている。また、ダウンロード方式については、「指定のURLサイトより、ダウンロードにて提供を行う。フォーマットについINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する。」との記載がある。
(5)乙第7号証の1ないし4は、いずれも、被請求人と沖電気との間で取り交わされた、件名を「A-Cacheシステム再構築対応(2012年度分)」とする2012年2月9日付けの注文書(乙7の1)、2012年2月16日付け発注請書(乙7の2)、2012年11月30日付け検査合格書(乙7の3及び4)である。
(6)乙第8号証は、被請求人からユーザーにあてた「御請求書」であるところ、その発行日は「平成25年10月17日」であり、「INFINI端末の2013年10月1日から2013年10月末日の使用料を下記の通り、御請求申し上げます。」との記載とともに、請求金額が記載されている。また、「INFINI使用料明細書」中の店舗名の欄の「共通」と記載された行には、その内容として「INFINI AVAILABILITY CACHE 1-99999台」の記載がある。
2 上記1によれば、被請求人は、日本国内における予約・発券システム【GDS】(コンピュータを利用した旅行関連商材の予約・発券システムの総称。Global Distribution Systemの略(JTB総合研究所のウェブサイトにおける観光用語集))サービスの提供及び国際線GDSにかかわる情報提供サービスを行っている会社(上記1(1))であり、航空券の予約や発券等を行うためのシステムを管理・所有していること、同システムにおいて、各航空会社のスケジュール・空席情報を取得し、その情報をデータベース化し、空席照会等をしてきた旅行会社及び旅行ポータルデータサイト等に対し、その照会等に係る「航空会社、区間、期間」等に関するデータを提供するシステムを「エーキャッシュ」(以下「使用商標」という。)と称していること、被請求人は、ユーザーとの間で、2010年12月1日及び2011年12月27日に、「エーキャッシュ」の運用に関する「使用許諾契約書」の契約を取り交わしたことが認められる。
「エーキャッシュ」は、ユーザーの選択により、ダウンロード方式、FTP方式又はAPI方式(XML方式)のいずれかで提供されるものであり、そのうちのダウンロード方式による提供については、「フォーマットについINFINI形式をベースとするが、カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する。」との記載があることから、提供されるデータは、INFINI形式をベースとするものであっても、ユーザーの要望に即したフォーマットに変更して提供される場合があることが推認できる。
3 判断
(1)使用商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「A-CACHE」の欧文字と「エーキャッシュ」の片仮名とを2段に表した構成からなるものであり、下段の「エーキャッシュ」の文字部分は、上段の「A-CACHE」の欧文字の表音と認められることから、「エーキャッシュ」の称呼が生じ、ハイフンを介して、欧文字の「A」と「貯蔵所、貯蔵物」等の意味を有する「CACHE」からなるものとして把握されるといえる。
他方、使用商標は、「エーキャッシュ」の文字からなるものであるから、これより「エーキャッシュ」の称呼が生じ、また、その構成中の「キャッシュ」の文字部分は、「貯蔵所、貯蔵物」等の意味を有する「cache」の文字を認識する場合があるとしても、「現金」の意味を有する「cash」の欧文字が我が国においては親しまれていることから、使用商標は、本件商標において、欧文字の「A」と「CACHE」(貯蔵所、貯蔵物)と把握されるのとは異なり、直ちに「CACHE」(貯蔵所、貯蔵物)の意味が単一的に想起されるとはいえないものである。
そうとすれば、使用商標は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる商標ということはできないから、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできないものである。
(2)使用に係る商品及び役務について
被請求人は、各航空会社のスケジュール・空席情報を取得し、その情報をデータベース化し、空席照会等をしてきた旅行会社及び旅行ポータルデータサイト等に対し、その照会等に係る「航空会社、区間、期間」等に関するデータを提供するシステムについて「エーキャッシュ」の商標を使用しているとした上で、そのシステムをユーザーに提供することが、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」に該当し、また、「エーキャッシュ」の提供がダウンロード方式による場合において、「フォーマットについ・・・カスタマイズ要望が発生した場合には、柔軟に対応する」との記載があることをもって、本件審判の請求に係る指定役務中の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」についての使用に該当する旨主張している。
しかしながら、上記2のとおり、「エーキャッシュ」とは、各航空会社のスケジュールや空席情報を取得し、その情報をデータベース化し、旅行会社等のユーザーの要求するデータを提供するシステムを表すものと認められ、被請求人が行っているのは、このシステムを利用して航空機の空席状況情報を旅行会社等に提供するものであることから、「航空機の空席状況情報の提供」といった役務に該当するものであり、「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」の商品や「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」の役務とは異なるものとみるのが相当である。
そして、当審における口頭審理において、本件商標が使用された電子計算機用プログラムなどの取消請求に係る指定商品又は指定役務が独立して取引されたことの証明を求めたところ、被請求人は乙第1号証ないし乙第7号証で十分に立証しているとしつつ、乙第8号証として、被請求人が発行した平成25年10月17日を発行日とする「御請求書」を提出したが、乙第7号証は、被請求人が沖電気にあてた「A-CACHEシステム」の開発発注の注文書及び沖電気から被請求人にあてた発注請書であるから、被請求人が顧客として沖電気にシステム開発を発注していたことはうかがえても、被請求人が「エーキャッシュ」に係る電子計算機(用)のプログラムの製造・販売や設計・保守など、取消請求に係る指定商品を生産又は販売したり、指定役務を提供していたことを証するものということはできない。さらに、乙第8号証は、「A-CACHEシステム」に関する使用料の請求書であって、これをもって、上述のユーザーの要求するデータを提供する役務に対する請求書ではなく、「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」等の商品又は「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」等の役務の対価の請求書であるとは認めることができない。
また、商標法上における役務とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいうところ、被請求人は、「エーキャッシュ」をダウンロード形式で提供する際のフォーマットについてユーザーの要求に対応する場合がある旨主張しているのみで、その対応のために、被請求人が、ユーザーに対して、独立した役務として「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」等の提供を行ったことを証する証拠についての提出はなく、「使用許諾契約書」(乙4及び乙5)によっても、取消請求に係る役務が提供されたことを証するものと認めることはできない。
そうとすると、使用商標は、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務中の第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」について使用されたということはできない。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)によれば、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計又は保守」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用を証明したということはできない。
その他、被請求人が、本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについて、要証期間内に本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしたことを認め得る証左も見いだせない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについて、本件商標(社会通念上同一のものを含む。)を使用をしていたことを証明していないものといわざるを得ず、また、被請求人は、その使用をしていないことについて正当な理由があると述べるものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、取消請求に係る「結論掲記の指定商品及び指定役務」について、その登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-11-20 
結審通知日 2014-11-25 
審決日 2014-12-25 
出願番号 商願2007-127768(T2007-127768) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X0942)
最終処分 成立 
前審関与審査官 今田 尊恵中尾 真由美 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
田中 敬規
登録日 2009-09-18 
登録番号 商標登録第5266105号(T5266105) 
商標の称呼 エーキャッシュ、エイキャッシュ、キャッシュ 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 田中 尚文 
代理人 金成 浩子 
代理人 岡部 讓 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 山崎 和香子 
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