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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2014900191 審決 商標
異議2014900206 審決 商標
異議2013900252 審決 商標

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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W242541
審判 一部申立て  登録を維持 W242541
審判 一部申立て  登録を維持 W242541
審判 一部申立て  登録を維持 W242541
管理番号 1297381 
異議申立番号 異議2014-900214 
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-08-01 
確定日 2015-02-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5665583号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5665583号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5665583号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成25年8月2日に登録出願、第24類「布製身の回り品,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第41類「コンサート又は音楽の演奏の興行の企画又は運営並びにこれらに関する情報の提供,その他の映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営並びにこれらに関する情報の提供,コンサート演奏の形態の娯楽の提供,映画の上映・制作又は配給並びにこれらに関する情報の提供,演芸の上演並びにこれに関する情報の提供,ライブショウ・演劇の演出又は上演並びにこれらに関する情報の提供,音楽の演奏並びにこれらに関する情報の提供,インターネットその他の電子計算機端末による通信又はその他の通信を用いて行う音楽・映像の提供並びにこれらに関する情報の提供,ライブ・コンサートに係る放送番組の制作とその企画並びにこれらに関する情報の提供,その他の放送番組の制作並びにこれに関する情報の提供,ライブによる娯楽及びテレビ番組の制作並びにこれらに関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用のビデオ・磁気テープ・磁気ディスク・コンパクトディスク・光学式ビデオディスクの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)並びにこれらに関する情報の提供,音楽・映像ソフトウエア及びレコードの原盤の制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)並びにこれらに関する情報の提供,放送番組の制作における演出並びにこれに関する情報の提供,書籍の制作並びにこれに関する情報の提供,電子出版物の提供並びにこれに関する情報の提供,図書及び記録の供覧並びにこれらに関する情報の提供,図書の貸与並びにこれに関する情報の提供,音楽に関するセミナーの企画・運営又は開催並びにこれらに関する情報の提供,その他のセミナーの企画・運営又は開催並びにこれらに関する情報の提供,音響用又は映像用のスタジオの提供並びにこれらに関する情報の提供,映画機械器具の貸与並びにこれに関する情報の提供,映写フィルムの貸与並びにこれに関する情報の提供,レコード又は録音済みビデオディスク・コンパクトディスク・ミニディスク・DVD・光ディスク及び磁気テープの貸与並びにこれらに関する情報の提供,録画済み磁気テープ・録画済み磁気ディスク及び録画済み光磁気ディスクの貸与並びにこれらに関する情報の提供,興行場の座席の手配・予約の代理・媒介又は取次ぎ並びにこれらに関する情報の提供,音楽グループによるライブ・パフォーマンスのための施設すなわち劇場及びアリーナの提供並びにこれらに関する情報の提供,娯楽施設の提供並びにこれに関する情報の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,美術品の展示,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),楽器の貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与」を指定商品及び指定役務として、同26年2月3日登録査定、同年4月25日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(5)に掲げるとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1944388号(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和59年12月28日
設定登録日:昭和62年4月30日
指定商品:第25類「被服」並びに第20類、第22類及び第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(2)登録第1980961号(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:昭和59年6月16日
設定登録日:昭和62年8月19日
指定商品:第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」並びに第9類、第20類、第22類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(3)登録第2069823号(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和61年1月27日
設定登録日:昭和63年8月29日
指定商品:第25類「ベルト」並びに第14類、第18類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(4)登録第4296407号(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成10年4月1日
設定登録日:平成11年7月16日
指定商品:第25類「履物」
(5)登録第5146160号(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:ROXY(標準文字)
登録出願日:平成19年8月17日
設定登録日:平成20年6月27日
指定商品:第28類「運動用具,サーフボード,ボディボード,波乗り用ニーボード,波乗り用ウェークボード,波乗り用セールボード,サーフスキー,スノーボード,スキー,水上スキー,スケートボード,波乗り用カイトボード,運動用具用のレッグロープ及び安全用鎖(特に牽引用ロープ及びスキー用ロープとしての運動用具用のロープ),スキービンディング,スキーストック,サーフボード用デッキグリップ,水泳用フィン(ボディボード用水泳用フィンを含む。),サーフスキー用パドル,スキーワックス及びサーフボードワックス,運動用具専用カバー及び専用の保護用バッグ(サーフボード専用・ボディボード専用・波乗り用ニーボード専用・波乗り用ウエイクボード専用・波乗り用セイルボード専用・サーフスキー専用・スノーボード専用・スノースキー専用・水上スキー専用・スケートボード専用及び波乗り用カイトボード専用のカバー及び保護用バッグを含む。)」
(以下、引用商標1ないし同5をまとめて「引用商標」ということがある。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、第25類「全指定商品」について商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第36号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商品の類似性について
本件商標の第25類の指定商品は,「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」である。
これに対し、引用商標は、本件商標の指定商品とそれぞれ同一又は類似の商品を指定商品として登録している。
したがって,指定商品において,本件商標と引用商標が同一又は類似の関係にある。
イ 商標の類似性について
本件商標は、「ROXYPARTY」の文字を逆コの字型の線で囲み、その右にギター状の図形を配してなる。
他方、引用商標1は「ROXY」の欧文字を左横書きしてなり、引用商標2は筆記体状の「Roxy」を左横書きしてなり、引用商標3は引用商標1と同一の態様であり、引用商標4は片仮名「ロキシー」と欧文字「ROXY」を二段に併記してなり、そして、引用商標5は欧文字「ROXY」を標準文字で表してなるものである。
本件商標を構成する欧文字「ROXYPARTY」のうち、「PARTY」は極めて平易な英単語であって、「パーティ(宴会)」の意で広く知られ、もはや日本語化しているといっても過言ではない。
加えて本件商標と引用商標の抵触に係る「被服」や「履物」を始めとする第25類の商品との関係においては、「パーティドレス」「パーティシューズ」などの言葉が用いられているように、「パーティ用のもの」といった商品内容(用途)を表す語として把握される。
よって、「被服」「履物」等の第25類の指定商品について、本件商標中「PARTY」の部分は、商標としての特徴を欠く自他商品識別性の弱い部分と評価するのが穏当である。
他方、「ROXY」の部分については、「ランダムハウス英和大辞典(第2版)」にも女子の名の一として掲載されるのみで、一般語としての意味は特に無い。
標準的な我が国の語学感覚に鑑みて、格別の意味が想起されない単なる造語的語句として看取されると考えられ、「PARTY」と比較して商標としての特徴は圧倒的に強いと見て然るべきである。
したがって、本件商標における「ROXY」と「PARTY」の間には、双方の識別性について大きな差違があるといえる。
この点に関して、第25類の商品を指定する「ROXY」を含む商標を見ると、「エルゴプラクシー/ERGOPROXY」(登録第4953692号)はあるが、別の成語「PROXY」の一部となっており本件とは無関係といえる。これ以外には、本件商標と申立人が有する商標のみである。
かかる登録状況を考慮しても、「被服」他の第25類の商品について、「ROXY」の識別性は非常に高いと評価するのが相当である。
さらに加えて、申立人の使用に係る引用商標の「ROXY」(以下「申立人商標」という。)は、アパレル関係の需要者・取引者の間で広く知られた商標である。
「商標審査基準」によれば、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」とある。
この基準の例外として、該当部分が既成の語の一部となっているものを除くとあるが、「ROXYPARTY」なる既成語は存在しないし、本件商標全体として観念上の繋がりも無い。
よって、かかる基準に従えば、周知商標「ROXY」を含む本件商標は、引用商標に類似するものといわなければならない。
ウ まとめ
以上のように、本件商標は、「ROXY」の部分が商標の要部となって取引に資されるものであり、文字構成及び称呼「ロキシー」を共通にする引用商標と類似であり、かつ、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人商標の周知性について
申立人である「キューエス ホールディングス エス アー アール エル」は、スポーツ系カジュアルファッション(被服)の分野で世界的に著名な存在である「クイックシルバーグループ」の商標や資産の管理を担う法人である。
該グループにおいて、世界的に展開しているアパレル事業の中心を担うのは、米国法人「クイックシルバー インコーポレイテッド」(以下「QS社」という。)であり、その二大ブランドである「QUIKSILVER」及び「ROXY」は、我が国においても広く知られている。
因みに、商標「QUIKSILVER」の周知性については、別件でなされた審決でも既に認められているところである(甲10)。
申立人商標は、1990年に米国において誕生し、「女性的でアクティブなサーブウェア」なるコンセプトの下に、クイックシルバーグループがTシャツや水着といったサーブ系ファッションの商品に使い始めたものである(甲11)。
そして、その後の継続的且つ大々的な使用により、順調に業績を伸ばしながら世界中に販売網を拡大し、現在では世界的なブランドとしての地位を確立するに至っている。
インターネットサイト「Google」等が公開しているQS社の投資情報(財務・経営情報)によれば、QS社の製品は、90力国以上で販売されており、直営店だけでも世界中に829店もの数に上る(甲12)。
QS社は、2009年の実績で20億米ドル(約2100億円)もの巨額の売上を計上している。
また、収益の33%を「ROXY」に係る商品で上げているが、39%の収益を上げる「QUIKSILVER」と同程度の実績といえ、グループの中核となっている基幹ブランドである(甲13)。
勿論、「ROXY」製品の世界的な販売に伴い、商標登録も世界中で行っている。
申立人が所有している「ROXY」関連商標の一覧によれば、米国での商標登録は勿論、日本、韓国、シンガポール、タイ、香港などのアジア諸国、カナダ、メキシコ、ブラジルなどの北中南米の各国、また、フランス、イタリア、英国などの欧州各国といった実際に多くの売上を上げる国々だけでなく、アフリカ諸国や諸島・群島地域に至るまで、実に180以上にも及ぶ国と地域において、「ROXY」とその関連商標を登録しており(甲15)、殆ど世界中をカバーするグローバルブランドであることが窺える。
そして、我が国における「ROXY」ブランドの使用や製品の販売・管理については、グループの日本法人でありQS社の100%子会社である「クイックシルバー・ジャパン株式会社」(以下「QSJ社」という。)が担っている(甲11)。
我が国における「ROXY」製品のこれまでの販売状況を見れば、1990年のブランド誕生当初から、女性向けサーファー風カジュアルウェアといった分野の先駆けとして認知され、予想を遙かに上回る売れ行きとなり、特に90年代中頃からは10代から20代の若い女性を中心として「ROXYブーム」というに相応しい状況を巻き起こした。
人気が盛り上がってきたのは1997年頃からであるが、特に1998年は品切れが続出するほどの売れ行きとなった。
我が国(「QSJ社」)の「ROXY」に係る商品の売上実績(受注ベース)を見れば、1997年におよそ8億円を計上したが、上述した1998年?1999年の大ブームの頃には、実に37億円?43億円もの驚異的な売り上げを記録している。
2000年代前半には大ブームの頃よりは減少したものの、10億円前後の順調な売上で推移した。2002年には大きな組織変革があり、これまで以上に積極的な販売戦略が取られ、2008年には東京都渋谷区に大規模な旗艦店をオープンするなど(甲17)、「ROXY」製品の近年(2009年から2013年)の売上は、35億円?47億円といったブームの頃と同等の実績を誇っている(甲16)。
また、「QSJ社」は、「ROXY」製品と「ROXY」マークの広告宣伝を積極的に行っている。
主な広告媒体としては、女性ファッション誌が挙げられるが、この他にもサーフィンの大会の冠スポンサー(甲18)や、プロサーファー(ROXY SURF TEAM)やプロスノーボーダーのスポンサー活動(甲19及び下述新聞記事)、人気タレントを起用した広告(甲20)、さらには、ブランドイメージを体現する女性「ROXY GIRL」のオーディション(甲21)などを通じ、「ROXY」ブランドの露出に努めている。
広告宣伝費については、年によってバラツキはあるが、近年(2011年ないし2013年)の実績では、概ね毎年1億円前後に上り(甲16)、大体毎年売上の3%前後の広告費を投下している。
甲第22号証及び甲第23号証は、「QSJ社」による「ROXY」製品のカタログ(2013年春及び2014年冬)で、カタログの内容から分かるように、ブランドコンセプトに合致するサーブスタイルを意識した商品ラインナップであるが、商品の種類は、水着、Tシャツ、ショートパンツ、ラッシュガード、パーカー、ワンピース、レギンス、タオル、マフラー、浮き輪、シャツ、ズボン、バッグ、帽子、サンダル、ウェットスーツ(運動用特殊被服)などの他、同じボードライトスポーツとしてサーフィンと共通点のあるスノーボード関連商品への展開も積極的であり、スノーボードウェア、帽子、マフラー、手袋、スノーボード用バッグ(運動用具)、ゴーグルなどに至る多様な商品展開を行っている。
現在、「QSJ社」の直営店、或いは正規代理店として、前述のような「ROXY」製品を取り扱っている実店舗は、北海道から沖縄の全国津々浦々に存在し、合計で約600店にも及んでいる(甲24)。
甲第25号証の1ないし5は、これら店舗(直営店)の様子を示す一例であるが、二大ブランドである「QUIKSILVER」及び「ROXY」のマークを店舗内外に大々的に表示して、積極的なブランドの露出に努めている。
また、公式のオンラインショップも開設され(http://online,roxyjapan.jp/)、インターネットを通じた通販も無論行っているが、「Yahooショッピング」「楽天市場」「Amazon」といった大手ネットショッピングサイトにおけるブランド一覧でも、レディースファッションの代表的存在としてピックアップされており、「ROXY」が人気ブランドの一つであることが窺える(甲26の1ないし3)。
申立人商標の周知性を示すマスコミに登場した記事を以下に示す。
(ア)講談社発行の女性向けファッション雑誌「ViVi」(甲27の1ないし3)
(イ)光文社発行の女性向けファッション雑誌「JJ」(1999年9月号)(甲28)
(ウ)日之出出版発行のカジュアルファッション雑誌「Fine」(1998年8月号、2001年1月号、2003年7月号、及び2012年11月号)(甲29の1ないし4)
(エ)角川春樹事務所発行のファッション雑誌「Popteen」(1998年9月号)(甲30)
(オ)主婦の友社発行「Ray」(2002年6月号)や三栄書房発行「O111e Girls」(2002年6月号)、宝島社発行「mini」(2013年5月号)などの女性向け雑誌(甲31ないし甲33)
因みに、上述(ア)ないし(オ)で紹介した雑誌の掲載記事は、申立人商標が紹介されたものの中のほんの一例に過ぎず、これら以外にも膨大な数の掲載事例が存在する。
(カ)申立人商標の人気ぶりは、ウェブサイト「日経テレコン」が提供する新聞記事検索の結果において、新聞(一般紙)紙上でも取り上げられており、朝日新聞(1998年8月4日)、北日本新聞(2005年6月5日)、日経MJ流通新聞(2007年7月27日)、スポーツニッポン(2006年1月11日)及び日刊スポーツ(2010年5月14日)などがある(甲34)。
(キ)朝日新聞(1999年2月11日、及び同年5月20日)、産経新聞(1999年5月20日)、毎日新聞(1999年2月11日)、読売新聞(1999年5月19日)、東京新聞(1999年5月19日)の各記事は、いずれも申立人商標の偽ブランド品を販売した業者が摘発、書類送検されたことが記事となっている(甲34)。
また、日経流通新聞(2000年11月28日)では、偽造製品の販売が疑われる商品を小売業界で自主回収する内容の記事がある。
(ク)この他、アパレル業界における専門紙「繊研新聞」には、「ROXY」について枚挙に暇がないほどの掲載記事が挙げられる(甲35)。
以上述べたように、申立人商標は、グローバル規模での販売を継続している世界的なブランドであり、日本においても20年以上にも亘る広告・販売実績に加えて、空前の大ヒットをもたらした非常に人気の高いブランドである。
それ故、「ROXY」は、申立人らに係る女性向けカジュアルファッションブランドとして、既に高い信用が化体している価値の高い商標であり、我が国のアパレル関連の需要者・取引者等の間において、周知・著名であることは疑いようのないところである。
そして、上記の数々の雑誌・新聞等の掲載事実に拠れば、遅くとも本件商標が出願された時点において、「ROXY」は既に需要者等の間で広く知られる商標となっていたことは明らかである。
イ 本件商標と申立人商標との混同のおそれについて
本件商標は、申立人の周知商標「ROXY」を構成に含み、「ROXY」部分が要部として観察され得る商標であるから、現実の取引の際、申立人商標と彼此混同されることは十分に想定されるところであるが、さらに付言すると、問題にしている指定商品である「被服」「履物」といったアパレル製品の需要者には、社会経験の全くない中高生の需要者も非常に多く、特に、上述したように「ROXY」は10代から20代の若い女性に人気が高いことから、取引の際必ずしも慎重な考慮がなされているとはいい難い。
このような取引の実情をも勘案して両商標を隔離的に観察するとき、学生を含む特に若年層の一般需要者は、本件商標の前半部に位置する周知商標にまず着目し、「『ROXY』のパーティ用の製品」、若しくは、「『ROXY』の主催(協賛)に係るパーティ」などとあたかも申立人の業務に関わるものかの如く誤認混同するであろうことは想像に難くない。
実際、ファッションとサーフィンを融合させた「ROXY BEACH PARTY」なるイベントを主催した実績もあり、本件商標がかかる催しと同様のものといった混同を招来し易い事情にあるといえる。
加えて、本件商標の指定商品の分野において「ROXY」を含む商標は、上述のとおり申立人商標のみであるから、本件商標が申立人商標のシリーズであるかの如く誤認されるおそれは大きい。
したがって、「ROXY」のような世界的な有名ブランドと類似する本件商標を、同ブランドの使用に係るアパレル製品そのものである指定商品について出願及び使用することは、上述した引用商標の周知・著名性に鑑みると、本件商標の使用が、申立人らの業務との関係で出所の混同を生ずるおそれは決して小さくない。
そればかりか、「ROXY」の周知・著名性を少なからず希釈化させるか、或いは同ブランドに対する信用や顧客吸引力といったものを毀損させるおそれもあるといわざるを得ない。
ウ まとめ
以上の理由から,本件商標は,周知商標「ROXY」が使用されており,出所混同のおそれのある第25類の指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」について,商標法第4条第1項第15号によって取り消されるべきものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、第25類の指定商品について商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり赤地の長方形内に白抜きで「ROXYPARTY」の文字を逆コの字型の線で囲み、その右にギター状の図形を配してなるものである。
ところで、構成中の「ROXYPARTY」の文字は、辞書等への載録もなく、特定の意味で認識されているとは認められないものであり、また、その図形部分も、ギターと思しきものを描いたものといえるところ、該図形部分と文字部分とが何らかの関連性を有するとは認められず、常に一体不可分のものとして把握されるというべき特段の事情も見いだすことができない。
そうすると、本件商標は、独立して自他商品の識別機能を有すると認められる「ROXYPARTY」の文字部分を要部として取引に資するものというべきである。
次に、「ROXYPARTY」の文字部分は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔をもって、逆コの字型の線内にまとまり良く一体に表されているものであり、構成中の「PARTY」の文字部分が我が国において、親しまれた英語であり、「パーティードレス」「パーティーシューズ」の使用例があるとしても、かかる構成態様からすれば、構成中に「PARTY」の文字を有するからといって、これに接する需要者をして商品の用途や品質を表示するものと認識するとはいえないものであって、他に「PARTY」の文字が捨象されるような事情をみいだすこともできず、「ROXYPARTY」の文字部分が一体のものとして認識されるものであるから、「ROXY」又は「PARTY」の文字を分離抽出し、一方の文字部分をもって類否を判断することは許されないというべきである。
そうとすれば、本件商標の要部と認められる文字部分は、特定の観念を生じない一連の造語からなるというのが相当であり、また、構成文字に相応した「ロキシーパーティー」の称呼もよどみなく一気に称呼し得るものであるから、本件商標は、「ロキシーパーティー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標1及び引用商標3は「ROXY」の欧文字を左横書きしてなり、引用商標2は筆記体状の「Roxy」を左横書きしてなり、引用商標4は片仮名「ロキシー」と欧文字「ROXY」を上下二段に書してなり、引用商標5は「ROXY」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して、「ロキシー」の称呼を生ずるものである。
また、「ROXY」及び「ロキシー」の文字は、一般の辞書に掲載されておらず、特定の観念を有しない一種の造語と認められる。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は、前記1及び2で示した構成よりなるところ、外観上、十分に区別し得る差異を有するものである。
そして、称呼においては、上記(1)及び(2)のとおり、本件商標からは「ロキシーパーティー」の称呼のみを生じ、引用商標は「ロキシー」のみの称呼を生ずる。
これらを比較すると、「ロキシーパーティー」の称呼と「ロキシー」の称呼は、「パーティー」の称呼の有無という、構成音、音数において明確な差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼しても、称呼において相紛れるおそれはないものである。
さらに、観念においても本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じることのないものであるから、観念において類似するものということはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標とを類似するものとすべき理由は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人商標の周知性について
申立人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人の主張によれば、申立人は、スポーツ系カジュアルファッション(被服)の分野を扱う「クイックシルバーグループ」の商標や資産の管理を担う法人である。
申立人商標は、1990年に米国において誕生し、クイックシルバーグループがTシャツや水着といったサーブ系ファッションの商品に使い始め(甲11)、2014年1月におけるQS社の製品は90力国以上で販売されており、直営店だけでも世界中に829店もの数に上る(甲12)。
2009年の実績でQS社は20億米ドル(約2100億円)の売上を計上し、また、収益の33%を「ROXY」に係る商品で上げ、グループの中核となっている基幹ブランドである(甲13)。
また、申立人商標に係る商品(以下、「ROXY製品」という場合がある。)の世界的な販売に伴い、180以上にも及ぶ国と地域において、「ROXY」とその関連商標を商標登録している(甲15)。
(イ)我が国においては、「ROXY」ブランドの使用や製品の販売・管理については、グループの日本法人でありQS社の100%子会社であるQSJ社が担っている(甲11)。
QSJ社のROXY製品の売上実績(受注ベース)では、1997年におよそ8億円、1998年?1999年の頃は、年間37億円?43億円、2000年代前半には、10億円前後の売上で推移し、近年(2009年から2013年)の売上は、35億円?47億円となっており(甲16)、2008年には東京都渋谷区に大規模な旗艦店をオープンするなどしている(甲17)。
また、QSJ社は、ROXY製品と「ROXY」マークの広告宣伝を、女性ファッション誌以外にもサーフィンの大会の冠スポンサー(甲18)、プロサーファー(ROXY SURF TEAM)のスポンサー活動(甲19)、人気タレントを起用した広告(甲20)、「ROXY GIRL」のオーディション(甲21)などを通じ行っている。
広告宣伝費については、近年(2011年ないし2013年)の実績では、概ね毎年1億円前後に上る(甲16)。
QSJ社によるROXY製品の種類は、水着、Tシャツ、ショートパンツ、ラッシュガード、パーカー、ワンピース、レギンス、タオル、マフラー、浮き輪、シャツ、ズボン、バッグ、帽子、サンダル、ウェットスーツ(運動用特殊被服)などの他(甲22)、スノーボード関連商品などに至る商品展開を行っている(甲23)。
現在、QSJ社の直営店、或いは正規代理店として、ROXY製品を取り扱っている実店舗は、合計で約600店に及んでおり(甲24)、「Yahooショッピング」「楽天市場」「Amazon」といった大手ネットショッピングサイトにおけるブランド一覧で、レディースファッションの代表的存在として「ROXY」がピックアップされている(甲26の1ないし3)。
(ウ)申立人商標の雑誌等への広告の掲載は、1998年から2013年に至るまで、講談社発行「ViVi」、光文社発行「JJ」や日之出出版発行「Fine」等の主に女性向け雑誌(甲27ないし甲33)を中心に行われている。
また、「日経テレコン」が提供する新聞記事検索の結果によれば、専門誌の繊研新聞だけでなく、朝日新聞、産経新聞や読売新聞等の一般紙においても掲載され、日経流通新聞(2000年11月28日)では、偽造製品の販売が疑われる商品を小売業界で自主回収する内容の記事が掲載されている(甲34及び甲35)。
(エ)前記(ア)ないし(ウ)で認定した事実によれば、申立人商標は、申立人に係る被服の商標として、本件商標の登録出願日(平成25年8月2日)及び登録査定日(平成26年2月3日)の時点において、我が国の需要者の間に一定程度知られていたものと認められる。
イ 出所の混同について
申立人商標は,上記アのとおり,申立人の業務に係る商品の「被服」について、需要者の間に一定程度知られているものと認められる。
しかしながら,本件商標と申立人商標とは、上記(1)において述べた理由と同様の理由により、称呼、観念及び外観のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標を第25類全指定商品について使用した場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情も見いだせない。
そうとすれば、本件商標は、商標権者がこれを第25類全指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、第25類「全指定商品」について商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1(本件商標、色彩は、原本を参照されたい。)




2(引用商標1及び引用商標3)




3(引用商標2)




4(引用商標4)

異議決定日 2015-02-05 
出願番号 商願2013-60293(T2013-60293) 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W242541)
T 1 652・ 262- Y (W242541)
T 1 652・ 271- Y (W242541)
T 1 652・ 263- Y (W242541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 田中 亨子
今田 三男
登録日 2014-04-25 
登録番号 商標登録第5665583号(T5665583) 
権利者 株式会社音
商標の称呼 ロキシーパーティー、ロクシーパーティー、ロキシー、ロクシー 
代理人 一色国際特許業務法人 

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